JP2015206117A - 表面処理アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
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以下、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板について、図1を参照して具体的に説明する。図1に示すように、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板10は、基板1と、この基板1の表面に形成された皮膜2とを備えている。なお、皮膜2は、後記するように、製造方法においては、初めに酸化皮膜を形成し、その後、形成した酸化皮膜の表面に硝酸ジルコニウム(正式名:二硝酸酸化ジルコニウム、慣用名:オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコン等)水溶液を接触させ、冷却とともに表面処理を施すことにより、全体として皮膜2を形成するようにしている。
なお、ここで、基板1の表面とは、基板1の表面の少なくとも一面を意味し、いわゆる表面、裏面が含まれる。
以下、表面処理アルミニウム合金板の各構成について説明する。
基板1は、アルミニウム合金からなり、その板厚は表面処理アルミニウム合金板10の用途に応じて適宜設定される。また、基板1の材料となるアルミニウム合金も、表面処理アルミニウム合金板10の用途に応じて、JISに規定される、またはJISに近似する種々の非熱処理型アルミニウム合金または熱処理型アルミニウム合金から適宜選択される。なお、非熱処理型アルミニウム合金は、純アルミニウム(1000系)、Al−Mn系合金(3000系)、Al−Si系合金(4000系)およびAl−Mg系合金(5000系)であり、熱処理型アルミニウム合金は、Al−Cu−Mg系合金(2000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)およびAl−Zn−Mg系合金(7000系)である。
Mgは、強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が0.2質量%未満では、強度向上の効果が小さい。一方、Mgの含有量が1.5質量%を超えると、成形性が低下しやすくなる。
Siは、強度を向上させる効果がある。Siの含有量が0.3質量%未満では、強度向上の効果が小さい。一方、Siの含有量が2.3質量%を超えると、成形性、熱間圧延性が低下しやすくなる。
Cuは、強度を向上させる効果がある。しかし、Cuの含有量が1.0質量%を超えると、耐食性が低下しやすくなる。
Bは、鋳塊の結晶粒や晶出物を微細にし、成形性を向上させる効果がある。しかし、Bの含有量が0.06質量%を超えると、粗大な晶出物の形成により、成形性が低下しやすくなる。
Mn、Cr、Fe、Zr、Vは、強度を向上させる効果がある。しかし、含有量がそれぞれ、0.8質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.2質量%、0.2質量%を超えると、粗大な晶出物の形成により、成形性が低下しやすくなる。
皮膜2は、脱脂性の向上、化成処理のムラの低減、及び接着性の向上を行なうために、基板1の表面に、所定の成分で所定の膜厚で形成されるものである。なお、皮膜2の形成は、ここでは、酸化皮膜を加熱工程により作成した後に、冷却工程により硝酸ジルコニウム水溶液を用いた冷却工程により酸化皮膜上に表面処理を行い、その表面処理を行った酸化皮膜の全体で皮膜2を形成している。
この皮膜2は、その膜厚を1〜30nmの範囲として基板1に形成している。皮膜2は、その膜厚が1nm未満では、防錆油およびプレス油中のエステル成分の吸着が抑制されるため、表面処理皮膜が無くても脱脂性、化成処理性及び接着性は確保されるが、全体として膜厚を1nm未満に制御するには酸洗浄等が必要となる。そのため、生産性に劣り、実用的ではない。一方、皮膜の膜厚が30nm超の場合,皮膜量が過剰のために表面に凹凸ができ、結果的に化成ムラが生じ、化成性が低下する。なお、膜厚の好適な範囲は10〜20nmである。
皮膜2は、マグネシウム濃度を1〜20原子%の範囲となるようにしている。皮膜2は、基板1にマグネシウムの成分を含んでいた場合には、そのマグネシウム濃度が1原子%未満に抑制することが困難であり、そのための処理が必要になってしまう。一方、マグネシウム濃度が20原子%超の場合,硝酸ジルコニウム水溶液を用いた本発明の処理を行っても脱脂性や化成性等を確保することができない。なお、皮膜2におけるマグネシウム濃度の好適な範囲は2〜15原子%である。また、皮膜2中のマグネシウム濃度は、基板1に含まれるマグネシウム量や製造条件により制御されるが、特に、ここでは、基板1に含まれるマグネシウム量(0.2〜1.5質量%)を制御することと、後記する製造方法により皮膜2のマグネシウム濃度を1〜20原子%の範囲にコントロールしている。
アルミニウム合金材(基板10)の板表面の皮膜2中の元素濃度(マグネシウム濃度、ジルコニウム濃度、ハロゲン、リン等の濃度)は、GD−OES(グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy))よって測定され、皮膜2の膜厚さ測定後、深さ方向プロファイルにおいて所定元素濃度の平均値を算出することができる。また、GD−OESは、皮膜2の膜厚についても測定することが可能である。すなわち、GD−OESにより測定した、深さ方向プロファイルでの最大ジルコニウム濃度の半値の時の深さを皮膜の厚さとすることができる。なお、元素濃度および膜厚は、皮膜2表面における数箇所の測定結果の平均値とすることができるのはいうまでもない。
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法について、図2を参照して説明する。なお、表面処理アルミニウム合金板の構成については、図1を参照する。
以下、各工程について説明する。
基板作製工程S1は、圧延によって基板1を作製する工程である。具体的には、以下のような手順で基板1を作製することが好ましい。
加熱工程S2は、基板1を400〜580℃に加熱して、基板1の表面に酸化皮膜を形成する工程である。また、加熱工程S2は、表面処理アルミニウム合金板10の強度を調整する工程でもある。なお、加熱工程S2は、加熱速度100℃/分以上の急速加熱とすることが好ましい。
加熱温度400℃以上に急速加熱することで、表面処理アルミニウム合金板10の強度、および、その表面処理アルミニウム合金板10の塗装後加熱(ベーキング)した後の強度がより高くなる。加熱温度580℃以下に急速加熱することで、バーニングの発生による成形性の低下が抑制される。また、加熱温度400〜580℃で加熱することで、基板1の表面に所定膜厚(1〜30nm)の酸化皮膜が形成される。なお、強度を向上させる観点から、保持時間は、3〜30秒が好ましい。
冷却工程S3は、酸化皮膜が形成された基板1を冷却して、酸化皮膜の表面に表面処理を行っている、すなわち、冷却処理と表面処理とを同時に行なう工程である。なお、冷却工程S3は、冷却速度100℃/分以上で100℃まで急速冷却することが好ましい。100℃までの冷却速度を100℃/分以上とすることで、成形性の低下がより抑制されると共に、ベーキング後の強度がより高くなる。
本発明において、冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液がハロゲンおよびリンを含有しないとは、前記したように、蛍光X線およびGD−OESでハロゲンおよびリンを測定した際、測定できないこと、すなわち、測定限界未満であることを意味する。そして、冷却液がハロゲンを含有する場合には、製造設備に負荷がかかる。また、冷却液がリンを含有する場合には、表面処理液を排液する際に沈殿が生じ易く、環境を汚染し易い。
冷却液として所定濃度の硝酸ジルコニウム水溶液を用いることで、表面処理を行うことで皮膜2のジルコニウム濃度が所定範囲(0.2〜10原子%)となる。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度が0.005g/L未満では、表面処理によるジルコニウム濃度が小さく(0.1原子%未満)、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、硝酸ジルコニウム水溶液の濃度が5g/Lを超えると、表面処理によるジルコニウム濃度が大きく(ジルコニウム濃度10原子%を超える)、脱脂性、化成処理性および接着性の向上効果が飽和する。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度は、0.05〜0.5g/Lが好ましい。
冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHが1未満では、表面処理が適正にできず、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、pHが5を超えると、冷却液の安定性が低下し、冷却液中に沈殿が発生し易くなる。冷却液中に沈殿が発生すると、表面処理アルミニウム合金板10の板表面に沈殿が異物として押し込まれ、外観不良となるため、好ましくない。冷却水としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHは、2〜4が好ましい。
その他、例えば表面処理アルミニウム合金板10の板表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板10にプレス油を塗布する方法について説明する。
プレス油の塗布の方法としては、例えば、エステル成分としてオレイン酸エチルを含有するプレス油に、表面処理アルミニウム合金板10を浸漬させるだけでよい。エステル成分を含有するプレス油を塗布する方法や条件は、特に限定されるものではなく、通常のプレス油を塗布する方法や条件が広く適用できる。また、エステル成分もオレイン酸エチルに限定されるものではなく、ステアリン酸ブチルやソルビタンモノステアレート等、様々なものを利用することができる。
供試材No.12については,加熱温度590℃、濃度0.05g/Lの硝酸ジルコニウム水溶液を用いて処理を行った。
供試材No.13については,加熱温度500℃、濃度0.004g/Lの硝酸ジルコニウム水溶液を用いて処理を行った。
供試材(No.14、15)については、加熱処理後に酸洗浄、強酸洗浄を行い、本発明の表面処理を行わなかった。
供試材No.16については,加熱温度500℃、濃度6g/Lの硝酸ジルコニウム水溶液を用いて処理を行った。
供試材No.17については,加熱温度590℃、濃度1g/Lの硝酸ジルコニウム水溶液を用いて処理を行った。
供試材(No.18)については、加熱温度500℃とし、硝酸ジルコニウム水溶液の代わりに、濃度が0.5g/Lのリン酸二水素アルミニウム水溶液を用いた。
供試材No.19については、濃度10g/Lのハロゲン含有Zr系水溶液による表面処理を行なった。なお、ここでは、環境および設備への負荷等を考慮して常温で処理を行う一方、反応性を考慮して濃度を高めに設定してある。
<脱脂性(水濡れ面積率)>
各供試材を、15〜35℃で50〜90%RHの環境室内に6ヶ月放置した。そして、6ヶ月後に、市販自動車用の炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)し、30秒間水洗(流水)した後の供試材面積に対する水濡れ面積率(表裏の平均)を測定した(良好な程、高い数値となり、完全に水濡れする場合は100%となる)。これにより、化成処理時の水濡れ性、すなわち、脱脂性を評価することができる。各供試材は、それぞれ3枚とし、水濡れ面積率は、これらの平均値とした。なお、湿潤環境室内に保持する前の初期値は全て100%であった。水漏れ面積率が80%以上のものを、脱脂性が良好、80%未満のものを、脱脂性が不良とした。
各供試材を、炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を脱脂処理した。次に、室温の亜鉛系表面調整浴に1分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)した後、35℃リン酸亜鉛浴に2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を化成処理した。そして、化成処理後の供試材表面に発生する化成処理ムラを目視にて観察し、化成処理性を評価した。化成処理性の評価において、化成処理ムラの発生が無かったものを、表中「なし」と記して、化成処理性が良好とし、化成処理ムラが発生したものを、表中「あり」と記して、化成処理性が不良とした。
構成が同じ2枚の供試材(70mm幅)の端部を、熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤(サンスター技研株式会社製、ペンギンセメント#1086)を介して、ラップ長13mm(接着面積:70mm×13mm=910mm2)となるように重ね合わせた。なお、接着剤層の膜厚が150μmとなるように微量のガラスビーズ(粒径150μm)を接着剤に添加して調節した。重ね合わせてから30分、室温で乾燥させて、次いで、170℃で20分間加熱して接着剤を硬化させた。その後、さらに室温で24時間静置して、接着試験体とした。
凝集破壊率(%)=100−{(試験片Aの界面剥離面積/試験片Aの接着面積)×100}+{(試験片Bの界面剥離面積/試験片Bの接着面積)×100}・・・(1)
一方、供試材No.11〜19(比較例)は、本発明の構成を満たさないため、以下の結果となった。
供試材No.16は、ジルコニウム濃度が上限を超えているため、化成処理性が不良であった。試供材No.17は、マグネシウム濃度が上限を超えているため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。
供試材No.19は、ハロゲンを含むZr系による表面処理を行ったため、脱脂性、化成処理性および接着性は良好であるが、環境及び設備負荷が高くなってしまう。したがって、供試材No.19による表面処理アルミニウム合金板は、経済的ではなく、実用に適さないものであった。
2 皮膜(酸化皮膜)
10 表面処理アルミニウム合金板
Claims (1)
- マグネシウムを含有するアルミニウム合金板と、前記アルミニウム合金板の表面に形成された酸化皮膜とを備えた、使用時に化成処理が施される表面処理アルミニウム合金板であって、
前記酸化皮膜は、膜厚が1〜30nmであり、マグネシウム濃度が1〜20原子%、ジルコニウム濃度が0.2〜10原子%、ハロゲン濃度およびリン濃度がそれぞれ0.1原子%未満であることを特徴とする表面処理アルミニウム合金板。
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