JP2017155289A - 表面処理アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム合金板自体が製造されてから自動車パネル等の製造工程に入るまでの期間が長くなっても、脱脂性、化成処理性および接着性に優れるアルミニウム合金板を得ることができる表面処理アルミニウム合金板の製造方法を提供する。
【解決手段】マグネシウムを含有するアルミニウム合金基板を作製する基板作製工程S1と、400〜580℃に加熱してアルミニウム合金基板の表面に酸化皮膜を形成する加熱工程S2と、ハロゲンおよびリンを含有せず、濃度が0.005〜5g/L、pHが1〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用い、冷却速度が100℃/分以上で100℃以下まで冷却する冷却処理と表面処理とを同時に行って、酸化皮膜の表面に表面処理皮膜を形成する冷却表面処理工程S3と、冷却表面処理工程S3終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱する再加熱工程S4と、を含む。
【選択図】図1
【解決手段】マグネシウムを含有するアルミニウム合金基板を作製する基板作製工程S1と、400〜580℃に加熱してアルミニウム合金基板の表面に酸化皮膜を形成する加熱工程S2と、ハロゲンおよびリンを含有せず、濃度が0.005〜5g/L、pHが1〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用い、冷却速度が100℃/分以上で100℃以下まで冷却する冷却処理と表面処理とを同時に行って、酸化皮膜の表面に表面処理皮膜を形成する冷却表面処理工程S3と、冷却表面処理工程S3終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱する再加熱工程S4と、を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は表面処理が施されたアルミニウム合金板の製造方法に係り、自動車用、特に自動車パネルに好適に使用することができる表面処理アルミニウム合金板の製造方法に関する。
周知の通り、従来から、自動車、船舶、航空機あるいは車両等の輸送機、機械、電気製品、建築、構造物、光学機器、器物の部材や部品用として、各種アルミニウム合金板が、合金毎の各特性に応じて汎用されている。そして、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車車体の軽量化による燃費の向上が追求されていることから、従来使用されていた鉄鋼材料に代わって、比重が鉄の約1/3であり、優れたエネルギー吸収性を有するアルミニウム合金板の自動車車体への使用が増加している。
アルミニウム合金板を自動車パネルとして用いる場合には、成形性、溶接性、接着性、化成処理性、塗装後の耐食性、美観等が要求される。アルミニウム合金板を用いて自動車パネルを製造する方法は、1)成形(所定寸法への切り出し、所定形状へのプレス成形)、2)接合(溶接および/または接着)、3)化成処理(洗浄剤による脱脂→表面調整→リン酸亜鉛処理)、4)塗装(電着塗装による下塗り→中塗り→上塗り)、であり、従来の鋼板を用いる場合と基本的に同じである。
一方で、自動車部品のモジュール化が進行しつつあり、アルミニウム合金板自体が製造されてから、前記の自動車パネルの製造工程や車体製造工程に入るまでの期間がこれまでより長くなる傾向がある。自動車部品のモジュール化とは、自動車メーカーにおいて車体に直接取り付けていた個々の部品を、部品会社において事前にサブアセンブリーしてから車体に取り付ける方法である。自動車メーカーにおける難作業を簡素化して生産効率を上げることが主な目的であり、生産工程の短縮、仕掛品を削減する効果もある。自動車部品のモジュール化により、部品会社の負担は増加するが、自動車会社と部品会社の全体としてのコスト低減に効果があり、結果的に自動車のコスト削減に寄与している。
そして、アルミニウム合金板自体が製造されてから前記の製造工程に入るまでの期間がこれまでより長くなるため、アルミニウム合金板の表面保護の観点から、アルミニウム合金板に防錆油を塗油する処理が行われる。しかし、このような場合、どうしてもアルミニウム合金板の表面特性が経時変化し、アルミニウム合金板の脱脂性、化成処理性へ悪影響を及ぼすことが問題となっている。すなわち、アルミニウム合金板の表面特性の経時変化に伴い、化成処理時の脱脂性が悪化し、化成処理皮膜が付着し難くなり、結果的に塗装後の耐食性に影響を及ぼすこととなる。加えて、接着剤で接合したアルミニウム合金製自動車パネルでは、使用中に水分や酸素、あるいは塩分等が接合部に侵入することで、接着剤とアルミニウム合金板との界面が経時劣化して界面剥離が発生し、接着強度が低下することが問題となっている。
このため、従来、自動車用アルミニウム合金板の製造方法としては、特許文献1に記載されているように、アルミニウム合金板の表面に形成された酸化皮膜を酸洗浄等で除去することによって、脱脂性、化成処理性および接着性を向上させることが行われている。しかしながら、酸化皮膜を完全に除去することは難しく、表面特性の経時変化が少ない表面安定性に優れたものを得ることは困難であった。また、酸化皮膜を完全に除去するには強力に洗浄する必要があるため、生産性に劣り、経済的ではなかった。
そこで、特許文献2、3に記載されているように、アルミニウム合金基板の表面に形成された酸化皮膜を硝酸ジルコニウム水溶液で表面処理して、酸化皮膜の表面にジルコニウムを含有する表面処理皮膜を形成することによって、脱脂性、化成処理性および接着性を向上させることが行われている。
しかしながら、従来の製造方法では、酸化皮膜に対する表面処理皮膜の付着力が低下し易く、目的とする脱脂性、化成処理性および接着性を有するアルミニウ合金板が得られないという問題がある。
本発明は、前記課題を解決するものであり、アルミニウム合金板自体が製造されてから自動車パネル等の製造工程に入るまでの期間が長くなっても、脱脂性、化成処理性および接着性に優れるアルミニウム合金板を得ることができる表面処理アルミニウム合金板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、前記課題を解決するものであり、アルミニウム合金板自体が製造されてから自動車パネル等の製造工程に入るまでの期間が長くなっても、脱脂性、化成処理性および接着性に優れるアルミニウム合金板を得ることができる表面処理アルミニウム合金板の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法は、圧延によってマグネシウムを含有するアルミニウム合金基板を作製する基板作製工程と、前記アルミニウム合金基板を400〜580℃に加熱して前記アルミニウム合金基板の表面に酸化皮膜を形成する加熱工程と、前記酸化皮膜が形成された前記アルミニウム合金基板に対し、ハロゲンおよびリンを含有せず、濃度が0.005〜5g/L、pHが1〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用い、冷却速度が100℃/分以上で100℃以下まで冷却する冷却処理と表面処理とを同時に行って、前記酸化皮膜の表面に表面処理皮膜を形成する冷却表面処理工程と、前記酸化皮膜および前記表面処理皮膜が形成された前記アルミニウム合金基板を、前記冷却表面処理工程終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱する再加熱工程と、を含むこととする。また、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金基板が熱処理型アルミニウム合金からなり、前記加熱工程が前記アルミニウム合金基板に溶体化処理を施す溶体化処理工程であって、前記冷却表面処理工程が前記酸化皮膜が形成された前記アルミニウム合金基板に焼入処理を施す焼入工程であることが好ましい。
このような手順によれば、所定温度で加熱する加熱工程を行うことで、アルミニウム合金基板の表面に所定膜厚の酸化皮膜が形成されると共に、表面処理アルミニウム合金板の強度が調整される。また、所定の硝酸ジルコニウム水溶液で冷却および表面処理する冷却表面処理工程を行うことで、酸化皮膜の表面に表面処理皮膜が形成される。また、所定時間内に所定温度で再加熱する再加熱工程を行うことによって、酸化皮膜に対する表面処理皮膜の付着力が大きくなって固定化し、表面処理皮膜が安定化する。
そして、表面処理皮膜の付着量が所定範囲であることで、表面処理皮膜が防錆油の吸着を抑制するため、化成処理工程における脱脂時に防錆油およびプレス油が十分に除去でき、良好な水濡れ性が維持される。その結果、脱脂不良(水濡れ性不良)に起因した化成処理ムラの発生が抑制される。加えて、表面処理皮膜と酸化皮膜が強固に結合されているため、表面処理アルミニウム合金板と接着剤との間で界面剥離が発生することが抑制される。
このように、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法によれば、従来行われていた酸洗浄等を行わずに、脱脂性、化成処理性および接着性が向上する。また、ハロゲンおよびリンを含有しない硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用いるため、製造設備への負荷が軽減されると共に、環境への影響も少なくなる。
本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法は、脱脂性、化成処理性および接着性に優れると共に、製造設備への負荷を軽減でき、環境対応に優れた表面処理アルミニウム合金板を製造できる。また、本発明に係る製造方法は、従来行われていた酸洗浄等を省略できるため、コストダウンを図ることができる。
以下、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
まず、製造される表面処理アルミニウム合金板の構成について説明する。
図2に示すように、製造される表面処理アルミニウム合金板10は、アルミニウム合金基板1と、このアルミニウム合金基板1の表面に形成された酸化皮膜2と、この酸化皮膜2の表面に形成されたジルコニウムを含有する表面処理皮膜3とを備える。なお、ここで、アルミニウム合金基板1の表面とは、アルミニウム合金基板1の表面の少なくとも一面を意味し、いわゆる表面、裏面の一方または両方を示している。
まず、製造される表面処理アルミニウム合金板の構成について説明する。
図2に示すように、製造される表面処理アルミニウム合金板10は、アルミニウム合金基板1と、このアルミニウム合金基板1の表面に形成された酸化皮膜2と、この酸化皮膜2の表面に形成されたジルコニウムを含有する表面処理皮膜3とを備える。なお、ここで、アルミニウム合金基板1の表面とは、アルミニウム合金基板1の表面の少なくとも一面を意味し、いわゆる表面、裏面の一方または両方を示している。
アルミニウム合金基板1は、マグネシウムを含有するアルミニウム合金からなり、その板厚は表面処理アルミニウム合金板10の用途に応じて適宜設定される。また、アルミニウム合金基板1の材料となるアルミニウム合金も、表面処理アルミニウム合金板10の用途に応じて、JISに規定される、またはJISに近似する種々の非熱処理型アルミニウム合金または熱処理型アルミニウム合金から適宜選択される。なお、非熱処理型アルミニウム合金はAl−Mg系合金(5000系)であり、熱処理型アルミニウム合金は、Al−Cu−Mg系合金(2000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)およびAl−Zn−Mg系合金(7000系)である。
具体例を挙げると、表面処理アルミニウム合金板を自動車用に用いる場合では、0.2%耐力が100MPa以上の高強度の基板であることが好ましい。このような特性を満足する基板を構成するアルミニウム合金としては、通常、この種の構造部材用途に汎用される、5000系、6000系、7000系等の耐力が比較的高い汎用合金であって、必要により調質されたアルミニウム合金が好適に用いられる。優れた時効硬化能や合金元素量が比較的少なくスクラップのリサイクル性や成形性にも優れている点では、6000系アルミニウム合金を用いることが好ましい。
好適なアルミニウム合金の組成の一例として、Mg:0.2〜1.5質量%、Si:0.3〜2.3質量%、Cu:1.0質量%以下を含有し、更に、Ti:0.1質量%以下、B:0.06質量%以下、Be:0.2質量%以下、Mn:0.8質量%以下、Cr:0.4質量%以下、Fe:0.5質量%以下、Zr:0.2質量%以下、V:0.2質量%以下から選択される1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。なお、不可避的不純物としては、Ca、Zn、Ni等が挙げられ、合計量で0.2質量%以下が好ましい。
酸化皮膜2は、アルミニウム合金基板1の表面に形成される凸凹状の多孔質皮膜であり、アルミニウム合金基板1が6000系合金からなる場合には、酸化マグネシウムを主成分とする皮膜である。
そして、酸化皮膜2は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程における熱処理等により、アルミニウム合金基板1の表面に不可避的に形成されるものである。酸化皮膜2の膜厚は1〜30nmであって、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程の加熱工程における加熱温度によって制御する。
そして、酸化皮膜2は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程における熱処理等により、アルミニウム合金基板1の表面に不可避的に形成されるものである。酸化皮膜2の膜厚は1〜30nmであって、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程の加熱工程における加熱温度によって制御する。
酸化皮膜2の膜厚が1nm未満では、防錆油およびプレス油中のエステル成分の吸着が抑制されるため、表面処理皮膜3が無くても脱脂性、化成処理性および接着性は確保されるが、膜厚を1nm未満に制御するには酸洗浄等が必要となる。そのため、生産性に劣り、実用的ではない。一方、酸化皮膜2の膜厚が30nmを超えると、表面処理皮膜3を設けても化成処理性を確保することができない。また、酸化皮膜2の膜厚は、10〜20nmが好ましい。
酸化皮膜2の膜厚の測定方法としては、例えば、高周波グロー放電発光分光分析(Glow Discharge−Optical Emission Spectroscopy、以下、GD−OESと称す)によって測定することができる。具体的には、GD−OESにより測定した、深さ方向プロファイルでの酸素最大濃度の半値の時の深さを酸化皮膜2と表面処理皮膜3との合計厚さ(複合皮膜の厚さ)とし、ジルコニウム濃度が0.1原子%まで低下した時の深さを表面処理皮膜3の厚さと規定することができる。そして、複合皮膜の膜厚から表面処理皮膜3の膜厚を引いた値を酸化皮膜2の膜厚と規定することができる。しかしながら、測定方法は、GD−OESと同精度を持つ測定方法であれば、GD−OESに限定されるものではない。
表面処理皮膜3は、酸化皮膜2の表面に形成されたジルコニウムを含有し、酸化皮膜2に対する付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜100mg/m2である皮膜であって、かつ、ハロゲンおよびリンを含有しない皮膜である。また、表面処理皮膜3の付着量は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程の冷却表面処理工程および再加熱工程における冷却条件および再加熱条件によって制御する。
表面処理皮膜3の付着量が0.01mg/m2未満では、凹凸状の酸化皮膜2を十分にカバーしきれず、また、酸化皮膜2を十分にカバーできても、表面処理皮膜3中のジルコニウム成分が不足するため、脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、表面処理皮膜3を100mg/m2を超えて付着させても、脱脂性の向上効果は飽和し、しかも、付着量が不均一になりやすく、化成処理性および接着性が低下するおそれがある。また、表面処理皮膜3の付着量は、二酸化ジルコニウム換算量で0.1〜10mg/m2が好ましい。
表面処理皮膜3の付着量の測定方法としては、例えば、蛍光X線によって測定することができる。具体的には、蛍光X線によって複合皮膜(表面処理皮膜3)中のジルコニウムを定量し、その値を二酸化ジルコニウム量に換算して、表面処理皮膜3の付着量とする。しかしながら、測定方法は、蛍光X線と同精度を持つ測定方法であれば、蛍光X線に限定されるものではない。
また、表面処理皮膜3がハロゲンおよびリンを含有しないとは、蛍光X線およびGD−OESでハロゲンおよびリンを測定した際、フッ素:0.1原子%未満、塩素:0.1原子%未満、臭素:0.1原子%未満、ヨウ素:0.1原子%未満、アスタチン:0.1原子%未満、リン:0.1原子%未満である。表面処理皮膜3がハロゲンを含有する場合には、製造設備に負荷がかかる。また、表面処理皮膜3がリンを含有する場合には、表面処理液を排液する際に沈殿が生じ易く、環境を汚染し易い。
≪表面処理アルミニウム合金板の製造方法≫
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法について、図1を参照して説明する。なお、表面処理アルミニウム合金板の構成については、図2を参照する。
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法について、図1を参照して説明する。なお、表面処理アルミニウム合金板の構成については、図2を参照する。
表面処理アルミニウム合金板10の製造方法は、基板作製工程S1と、加熱工程S2と、冷却表面処理工程S3と、再加熱工程S4とを含むものである。以下、各工程について説明する。
<基板作製工程>
基板作製工程S1は、圧延によってアルミニウム合金基板1を作製する工程である。具体的には、以下のような手順でアルミニウム合金基板1を作製することが好ましい。
基板作製工程S1は、圧延によってアルミニウム合金基板1を作製する工程である。具体的には、以下のような手順でアルミニウム合金基板1を作製することが好ましい。
所定の組成を有するアルミニウム合金を連続鋳造により溶解、鋳造して鋳塊を製造し(溶解鋳造工程)、前記製造された鋳塊に均質化熱処理を施す(均質化熱処理工程)。次に、前記均質化熱処理された鋳塊に、熱間圧延を施して熱延板を製造する(熱間圧延工程)。次いで、熱延板に300〜580℃で荒焼鈍または中間焼鈍を行い、最終冷間圧延率5%以上の冷間圧延を少なくとも1回施して、所定の板厚の冷延板(基板1)を製造する(冷間圧延工程)。荒焼鈍または中間焼鈍の温度を300℃以上とすることで、成形性向上の効果がより発揮され、580℃以下とすることで、バーニングの発生による成形性の低下を抑制しやすくなる。最終冷間圧延率を5%以上とすることで、成形性向上の効果がより発揮される。なお、均質化熱処理、熱間圧延の条件は、特に限定されるものではなく、熱延板を通常得る場合の条件でよい。また、中間焼鈍は行わなくてもよい。
<加熱工程>
加熱工程S2は、アルミニウム合金基板1を400〜580℃に加熱して、アルミニウム合金基板1の表面に酸化皮膜2を形成する工程である。また、加熱工程S2は、表面処理アルミニウム合金板10の強度を調整する工程でもある。なお、加熱工程S2は、加熱速度100℃/分以上の急速加熱とすることが好ましい。
加熱工程S2は、アルミニウム合金基板1を400〜580℃に加熱して、アルミニウム合金基板1の表面に酸化皮膜2を形成する工程である。また、加熱工程S2は、表面処理アルミニウム合金板10の強度を調整する工程でもある。なお、加熱工程S2は、加熱速度100℃/分以上の急速加熱とすることが好ましい。
そして、加熱工程S2は、アルミニウム合金基板1が熱処理型アルミニウム合金からなる場合には溶体化処理工程であって、アルミニウム合金基板1が非熱処理型アルミニウム合金からなる場合には、焼鈍工程(最終焼鈍工程)における加熱工程である。
(加熱温度:400〜580℃)
加熱温度400℃以上に急速加熱することで、表面処理アルミニウム合金板10の強度、および、その表面処理アルミニウム合金板10の塗装後加熱(ベーキング)した後の強度がより高くなる。加熱温度580℃以下に急速加熱することで、バーニングの発生による成形性の低下が抑制される。また、加熱温度400〜580℃で加熱することで、アルミニウム合金基板1の表面に所定膜厚(1〜30nm)の酸化皮膜2が形成される。なお、強度を向上させる観点から、保持時間は、3〜30秒が好ましい。
加熱温度400℃以上に急速加熱することで、表面処理アルミニウム合金板10の強度、および、その表面処理アルミニウム合金板10の塗装後加熱(ベーキング)した後の強度がより高くなる。加熱温度580℃以下に急速加熱することで、バーニングの発生による成形性の低下が抑制される。また、加熱温度400〜580℃で加熱することで、アルミニウム合金基板1の表面に所定膜厚(1〜30nm)の酸化皮膜2が形成される。なお、強度を向上させる観点から、保持時間は、3〜30秒が好ましい。
<冷却表面処理工程>
冷却表面処理工程S3は、酸化皮膜2が形成されたアルミニウム合金基板1に対し、ハロゲンおよびリンを含有せず、濃度が0.005〜5g/L、pHが1〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用い、冷却速度100℃/分以上で100℃以下まで冷却する冷却処理と表面処理とを同時に行って、酸化皮膜2の表面に表面処理皮膜3を形成する工程である。冷却表面処理工程S3では、硝酸ジルコニウム水溶液を前記加熱工程S2で高温に保持されたアルミニウム合金基板1の冷却液として用いることによって、硝酸ジルコニウム水溶液が、高温のアルミニウム合金基板1と接触することとなる。その結果、硝酸ジルコニウム水溶液の反応性が向上し、表面酸化皮膜3を形成しやすくなる。なお、硝酸ジルコニウムは、正式名で二硝酸酸化ジルコニウム、慣用名でオキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコン等と称される。
冷却表面処理工程S3は、酸化皮膜2が形成されたアルミニウム合金基板1に対し、ハロゲンおよびリンを含有せず、濃度が0.005〜5g/L、pHが1〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用い、冷却速度100℃/分以上で100℃以下まで冷却する冷却処理と表面処理とを同時に行って、酸化皮膜2の表面に表面処理皮膜3を形成する工程である。冷却表面処理工程S3では、硝酸ジルコニウム水溶液を前記加熱工程S2で高温に保持されたアルミニウム合金基板1の冷却液として用いることによって、硝酸ジルコニウム水溶液が、高温のアルミニウム合金基板1と接触することとなる。その結果、硝酸ジルコニウム水溶液の反応性が向上し、表面酸化皮膜3を形成しやすくなる。なお、硝酸ジルコニウムは、正式名で二硝酸酸化ジルコニウム、慣用名でオキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコン等と称される。
冷却表面処理工程S3は、アルミニウム合金基板1が熱処理型アルミニウム合金からなる場合には焼入処理工程であって、アルミニウム合金基板1が非熱処理型アルミニウム合金からなる場合には、焼鈍工程(最終焼鈍工程)における冷却工程である。
(ハロゲンおよびリンを含有しない)
本発明において、冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液がハロゲンおよびリンを含有しないとは、前記したように、蛍光X線およびGD−OESでハロゲンおよびリンを測定した際、測定できないこと、すなわち、測定限界未満であることを意味する。そして、冷却液がハロゲンを含有する場合には、製造設備に負荷がかかる。また、冷却液がリンを含有する場合には、表面処理液を排液する際に沈殿が生じ易く、環境を汚染し易い。
本発明において、冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液がハロゲンおよびリンを含有しないとは、前記したように、蛍光X線およびGD−OESでハロゲンおよびリンを測定した際、測定できないこと、すなわち、測定限界未満であることを意味する。そして、冷却液がハロゲンを含有する場合には、製造設備に負荷がかかる。また、冷却液がリンを含有する場合には、表面処理液を排液する際に沈殿が生じ易く、環境を汚染し易い。
(濃度:0.005〜5g/L)
冷却液として所定濃度の硝酸ジルコニウム水溶液を用いることで、後記する再加熱工程S4終了後の表面処理皮膜3の付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜100mg/m2となる。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度が0.005g/L未満では、表面処理皮膜3の付着量が少なくなる。一方、濃度が5g/Lを超えると、表面処理皮膜3の付着量が多くなると共に、薬剤コストが嵩む。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度は、0.05〜0.5g/Lが好ましい。
冷却液として所定濃度の硝酸ジルコニウム水溶液を用いることで、後記する再加熱工程S4終了後の表面処理皮膜3の付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜100mg/m2となる。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度が0.005g/L未満では、表面処理皮膜3の付着量が少なくなる。一方、濃度が5g/Lを超えると、表面処理皮膜3の付着量が多くなると共に、薬剤コストが嵩む。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度は、0.05〜0.5g/Lが好ましい。
(pH:1〜5)
冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHが1未満では、表面処理皮膜3が形成されず、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、pHが5を超えると、冷却液の安定性が低下し、冷却液中に沈殿が発生し易くなる。冷却液中に沈殿が発生すると、表面処理アルミニウム合金板10の板表面に沈殿が異物として押し込まれ、外観不良となるため、好ましくない。冷却水としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHは、2〜4が好ましい。また、硝酸ジルコニウム水溶液のpH調整は、従来公知の酸を用い、硝酸が好ましい。また、pH調整に用いられる酸としては、硫酸やリン酸等のジルコンと難溶塩を生成し沈殿する酸は不可である。
冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHが1未満では、表面処理皮膜3が形成されず、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、pHが5を超えると、冷却液の安定性が低下し、冷却液中に沈殿が発生し易くなる。冷却液中に沈殿が発生すると、表面処理アルミニウム合金板10の板表面に沈殿が異物として押し込まれ、外観不良となるため、好ましくない。冷却水としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHは、2〜4が好ましい。また、硝酸ジルコニウム水溶液のpH調整は、従来公知の酸を用い、硝酸が好ましい。また、pH調整に用いられる酸としては、硫酸やリン酸等のジルコンと難溶塩を生成し沈殿する酸は不可である。
(冷却速度100℃/分以上で100℃以下まで冷却)
冷却表面処理工程S3では、100℃以下までの冷却速度を100℃/分以上とすることで、成形性の低下がより抑制されると共に、ベーキング後の強度がより高くなる。また、冷却表面処理工程S3では、冷却時間が1〜30秒であることが好ましい。
冷却表面処理工程S3では、100℃以下までの冷却速度を100℃/分以上とすることで、成形性の低下がより抑制されると共に、ベーキング後の強度がより高くなる。また、冷却表面処理工程S3では、冷却時間が1〜30秒であることが好ましい。
このように、冷却表面処理工程S3において、硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として使用し、加熱後のアルミニウム合金基板1、すなわち、表面に酸化皮膜2が形成されたアルミニウム合金基板1を冷却すると共に表面処理を行うことで、酸洗浄等により表面の酸化皮膜2を除去する必要がないため、従来行われていた酸洗浄等を行う必要がなく、酸洗浄等のラインを省略することができる。さらに、冷却処理と表面処理とを同一工程で行うことができるため、製造コストをさらに削減することができる。
<再加熱工程>
再加熱工程S4は、酸化皮膜2および表面処理皮膜3が形成されたアルミニウム合金基板1を、前記冷却表面処理工程S3終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱する工程である。再加熱工程S4では、アルミニウム合金基板1を再加熱することによって、酸化皮膜2に対する表面処理皮膜3の付着力が大きくなり、表面処理皮膜3が酸化皮膜2の表面に固定化する工程である。その結果、再加熱工程S4では、表面処理皮膜3の付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜100mg/m2となる。また、再加熱工程S4を行うことによって、表面処理アルミニウム合金板10の成形性、および、ベーキング後の強度向上を図ることができる。
再加熱工程S4は、酸化皮膜2および表面処理皮膜3が形成されたアルミニウム合金基板1を、前記冷却表面処理工程S3終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱する工程である。再加熱工程S4では、アルミニウム合金基板1を再加熱することによって、酸化皮膜2に対する表面処理皮膜3の付着力が大きくなり、表面処理皮膜3が酸化皮膜2の表面に固定化する工程である。その結果、再加熱工程S4では、表面処理皮膜3の付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜100mg/m2となる。また、再加熱工程S4を行うことによって、表面処理アルミニウム合金板10の成形性、および、ベーキング後の強度向上を図ることができる。
(冷却表面処理工程終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱)
冷却表面処理工程S3終了後、20分を超えて再加熱、または、再加熱温度が65℃未満であると、酸化皮膜2に対する表面処理皮膜3の付着力が低下する。これでは、処理液未反応分が残留し、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。また、再加熱温度が120℃を超えると、表面処理皮膜3に劣化が生じ、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性および接着性が確保できない。なお、再加熱時間は、8〜36時間が好ましい。
冷却表面処理工程S3終了後、20分を超えて再加熱、または、再加熱温度が65℃未満であると、酸化皮膜2に対する表面処理皮膜3の付着力が低下する。これでは、処理液未反応分が残留し、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。また、再加熱温度が120℃を超えると、表面処理皮膜3に劣化が生じ、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性および接着性が確保できない。なお、再加熱時間は、8〜36時間が好ましい。
表面処理アルミニウム合金板10の製造方法は、以上説明したとおりであるが、表面処理アルミニウム合金板10の製造を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、表面処理アルミニウム合金板10の板表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
そして、製造された表面処理アルミニウム合金板10は、その表面にプレス油が塗布される。プレス油は、エステル成分を含有するものが主に使用される。
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板10にプレス油を塗布する方法について説明する。
プレス油の塗布の方法としては、例えば、エステル成分としてオレイン酸エチルを含有するプレス油に、表面処理アルミニウム合金板10を浸漬させるだけでよい。エステル成分を含有するプレス油を塗布する方法や条件は、特に限定されるものではなく、通常のプレス油を塗布する方法や条件が広く適用できる。また、エステル成分もオレイン酸エチルに限定されるものではなく、ステアリン酸ブチルやソルビタンモノステアレート等、様々なものを利用することができる。
このような製造方法により製造された表面処理アルミニウム合金板10は、自動車用パネル等の製造工程に入るまで、自動車会社(工場等)や部品会社(工場等)、流通会社(倉庫等)で保管される。
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板10にプレス油を塗布する方法について説明する。
プレス油の塗布の方法としては、例えば、エステル成分としてオレイン酸エチルを含有するプレス油に、表面処理アルミニウム合金板10を浸漬させるだけでよい。エステル成分を含有するプレス油を塗布する方法や条件は、特に限定されるものではなく、通常のプレス油を塗布する方法や条件が広く適用できる。また、エステル成分もオレイン酸エチルに限定されるものではなく、ステアリン酸ブチルやソルビタンモノステアレート等、様々なものを利用することができる。
このような製造方法により製造された表面処理アルミニウム合金板10は、自動車用パネル等の製造工程に入るまで、自動車会社(工場等)や部品会社(工場等)、流通会社(倉庫等)で保管される。
次に、本発明の表面処理アルミニウム合金板について、本発明の要件を満たす実施例と、本発明の要件を満たさない比較例と、を対比させて具体的に説明する。
成分が6022規格(Si:0.8〜1.5質量%,Mg:0.45〜0.7質量%,Cu:0.01〜0.11質量%),6016規格(Si:1.0〜1.5質量%,Mg:0.25〜0.6質量%,Cu:0.2質量%以下),6111規格(Si:0.6〜1.1質量%,Mg:0.5〜1.0質量%,Cu:0.5〜0.9質量%)の市販品3種の6000系アルミニウム合金板を用いて、前記した製造方法により、サイズが70mm幅×150mm長さ×1mm厚さのアルミニウム合金基板を作製した。
次に、このアルミニウム合金基板を実体到達温度545℃まで加熱し、加温せずに常温である、硝酸を添加してpHを3に調整した濃度0.2g/Lのハロゲンおよびリンを含有しない硝酸ジルコニウム水溶液に5〜20秒間浸漬して冷却した後、表1、2に示す条件で再加熱を施して、両面に酸化皮膜および表面処理皮膜が形成された表面処理アルミニウム合金板を作製した。この表面処理アルミニウム合金板の両面に、市販自動車用洗浄プレス油(鉱油系、動粘度4cSt)を0.3g/m2塗布して、供試材(No.1〜18)とした。
なお、供試材(No.9)の作製では、加熱処理後に硝酸ジルコニウム水溶液による冷却表面処理を施さず、水冷によって冷却し、表面処理皮膜を設けなかった。供試材(No.16、17)の作製では、加熱処理後に酸洗浄を行い、表面処理皮膜を設けなかった。供試材(No.18)の作製では、硝酸ジルコニウム水溶液の代わりに、濃度が0.5g/Lのリン酸二水素アルミニウム水溶液を用い、Pを含有する表面処理皮膜を設けた。
前記のようにして得られた供試材について、酸化皮膜の膜厚を高周波グロー放電発光分光分析(GD−OES(ホリバ・ジョバンイボン社製、型式JY−5000RF))によって測定した。また、表面処理皮膜の付着量(二酸化ジルコニウム換算量)を蛍光X線(島津製作所社製、型式XRF1800)によって測定した。その結果を表1、2に示す。
次に、前記の供試材を用いて、以下の評価を行った。その結果を表1、2に示す。
<脱脂性(水濡れ面積率)>
各供試材を、15〜35℃で50〜90%RHの環境室内に12ヶ月放置した。そして、12ヶ月後に、市販自動車用の炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)し、30秒間水洗(流水)した後の供試材面積に対する水濡れ面積率(表裏の平均)を測定した(良好な程、高い数値となり、完全に水濡れする場合は100%となる)。これにより、化成処理時の水濡れ性、すなわち、脱脂性を評価することができる。各供試材は、それぞれ3枚とし、水濡れ面積率は、これらの平均値とした。なお、湿潤環境室内に保持する前の初期値は全て100%であった。水漏れ面積率が80%以上のものを、脱脂性が良好、80%未満のものを、脱脂性が不良とした。
<脱脂性(水濡れ面積率)>
各供試材を、15〜35℃で50〜90%RHの環境室内に12ヶ月放置した。そして、12ヶ月後に、市販自動車用の炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)し、30秒間水洗(流水)した後の供試材面積に対する水濡れ面積率(表裏の平均)を測定した(良好な程、高い数値となり、完全に水濡れする場合は100%となる)。これにより、化成処理時の水濡れ性、すなわち、脱脂性を評価することができる。各供試材は、それぞれ3枚とし、水濡れ面積率は、これらの平均値とした。なお、湿潤環境室内に保持する前の初期値は全て100%であった。水漏れ面積率が80%以上のものを、脱脂性が良好、80%未満のものを、脱脂性が不良とした。
<化成処理性(化成処理ムラ有無)>
各供試材を、炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を脱脂処理した。次に、室温の亜鉛系表面調整浴に1分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)した後、35℃リン酸亜鉛浴に2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を化成処理した。そして、化成処理後の供試材表面に発生する化成処理ムラを目視にて観察し、化成処理性を評価した。化成処理性の評価において、化成処理ムラの発生が無かったものを、表中「なし」と記して、化成処理性が良好とし、化成処理ムラが発生したものを、表中「あり」と記して、化成処理性が不良とした。
各供試材を、炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を脱脂処理した。次に、室温の亜鉛系表面調整浴に1分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)した後、35℃リン酸亜鉛浴に2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を化成処理した。そして、化成処理後の供試材表面に発生する化成処理ムラを目視にて観察し、化成処理性を評価した。化成処理性の評価において、化成処理ムラの発生が無かったものを、表中「なし」と記して、化成処理性が良好とし、化成処理ムラが発生したものを、表中「あり」と記して、化成処理性が不良とした。
<接着性(凝集破壊率)>
構成が同じ2枚の供試材(70mm幅)の端部を、熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤(サンスター技研株式会社製、ペンギンセメント#1086)を介して、ラップ長13mm(接着面積:70mm×13mm=910mm2)となるように重ね合わせた。なお、接着剤層の膜厚が150μmとなるように微量のガラスビーズ(粒径150μm)を接着剤に添加して調節した。重ね合わせてから30分、室温で乾燥させて、次いで、170℃で20分間加熱して接着剤を硬化させた。その後、さらに室温で24時間静置して、接着試験体とした。
構成が同じ2枚の供試材(70mm幅)の端部を、熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤(サンスター技研株式会社製、ペンギンセメント#1086)を介して、ラップ長13mm(接着面積:70mm×13mm=910mm2)となるように重ね合わせた。なお、接着剤層の膜厚が150μmとなるように微量のガラスビーズ(粒径150μm)を接着剤に添加して調節した。重ね合わせてから30分、室温で乾燥させて、次いで、170℃で20分間加熱して接着剤を硬化させた。その後、さらに室温で24時間静置して、接着試験体とした。
得られた接着試験体を、50℃、95%RHの湿潤雰囲気中に15日間保持した後、引張試験機にて50mm/分の速度で引張り、下記の式(1)に基づいて、接着部分の接着剤層の凝集破壊率(非界面剥離率)を算出した。なお、凝集破壊率は、接着試験体3本の平均値とした。また、式(1)において、接着試験体の一方を試験片A、他方を試験片Bとする。凝集破壊率が80%以上のものを接着性が良好、80%未満のものを接着性が不良とした。
凝集破壊率(%)=100−{(試験片Aの界面剥離面積/試験片Aの接着面積)×100}+{(試験片Bの界面剥離面積/試験片Bの接着面積)×100}・・・(1)
凝集破壊率(%)=100−{(試験片Aの界面剥離面積/試験片Aの接着面積)×100}+{(試験片Bの界面剥離面積/試験片Bの接着面積)×100}・・・(1)
表1に示すように、供試材No.1〜8(実施例)は、本発明の構成を満たすため、脱脂性、化成処理性および接着性が良好であった。
一方、表2に示すように、供試材No.9〜18(比較例)は、本発明の構成を満たさないため、以下の結果となった。
一方、表2に示すように、供試材No.9〜18(比較例)は、本発明の構成を満たさないため、以下の結果となった。
供試材No.9は、硝酸ジルコニウム水溶液による冷却を行わず、表面処理皮膜を設けていないため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。供試材No.10、11は、再加熱工程での加熱温度が下限値未満であるため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。供試材No.12、13は、再加熱工程での加熱温度が上限値を超えるため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。供試材No.14、15は、移行時間、すなわち、冷却表面処理工程終了時から再加熱工程開始時までの時間が上限値を超えるため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。
供試材No.16は、酸洗浄を行い、表面処理皮膜がないため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。また、酸洗浄を行ったため、生産性も劣っていた。
供試材No.17は、より強力な洗浄である強酸洗浄を行ったもので、脱脂性、化成処理性および接着性は良好であった。しかしながら、強酸洗浄を行ったため、生産性に劣っていた。したがって、この表面処理アルミニウム合金板は、経済的ではなく、実用に適さないものであった。
供試材No.18は、冷却液としてリン酸二水素アルミニウム水溶液を用いたため、脱脂性および化成処理性は良好であったが、接着性が不良であった。また、冷却液が沈殿し易く排液処理性が悪かった。
以上、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて改変・変更等することができることはいうまでもない。
1 アルミニウム合金基板
2 酸化皮膜
3 表面処理皮膜
10 表面処理アルミニウム合金板
S1 基板作製工程
S2 加熱工程
S3 冷却表面処理工程
S4 再加熱工程
2 酸化皮膜
3 表面処理皮膜
10 表面処理アルミニウム合金板
S1 基板作製工程
S2 加熱工程
S3 冷却表面処理工程
S4 再加熱工程
Claims (2)
- 圧延によってマグネシウムを含有するアルミニウム合金基板を作製する基板作製工程と、
前記アルミニウム合金基板を400〜580℃に加熱して前記アルミニウム合金基板の表面に酸化皮膜を形成する加熱工程と、
前記酸化皮膜が形成された前記アルミニウム合金基板に対し、ハロゲンおよびリンを含有せず、濃度が0.005〜5g/L、pHが1〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として用い、冷却速度が100℃/分以上で100℃以下まで冷却する冷却処理と表面処理とを同時に行って、前記酸化皮膜の表面に表面処理皮膜を形成する冷却表面処理工程と、
前記酸化皮膜および前記表面処理皮膜が形成された前記アルミニウム合金基板を、前記冷却表面処理工程終了後、20分以内に65〜120℃で再加熱する再加熱工程と、を含むことを特徴とする表面処理アルミニウム合金板の製造方法。 - 前記アルミニウム合金基板が熱処理型アルミニウム合金からなり、前記加熱工程が前記アルミニウム合金基板に溶体化処理を施す溶体化処理工程であって、前記冷却表面処理工程が前記酸化皮膜が形成された前記アルミニウム合金基板に焼入処理を施す焼入工程であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム合金板の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2016039751A JP2017155289A (ja) | 2016-03-02 | 2016-03-02 | 表面処理アルミニウム合金板の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108559942A (zh) * | 2018-05-14 | 2018-09-21 | 中鼎特金秦皇岛科技股份有限公司 | 一种在锆基合金表面制备黑色陶瓷层的方法 |
JP2020537040A (ja) * | 2017-10-23 | 2020-12-17 | ノベリス・インコーポレイテッドNovelis Inc. | 反応性クエンチング溶液および使用方法 |
-
2016
- 2016-03-02 JP JP2016039751A patent/JP2017155289A/ja active Pending
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US11118253B2 (en) | 2017-10-23 | 2021-09-14 | Novelis Inc. | Reactive quenching solutions and methods of use |
JP7041257B2 (ja) | 2017-10-23 | 2022-03-23 | ノベリス・インコーポレイテッド | 反応性クエンチング溶液および使用方法 |
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CN108559942B (zh) * | 2018-05-14 | 2020-10-20 | 中鼎特金秦皇岛科技股份有限公司 | 一种在锆基合金表面制备黑色陶瓷层的方法 |
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