JP2015195827A - 抗ウイルス性部材 - Google Patents

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洋平 直原
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大志 早田
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朋和 長尾
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Abstract

【課題】消臭性だけでなく、基体に付着したウイルスをも不活化する機能を兼ね備える抗ウイルス性部材を提供する。
【解決手段】基体と、少なくとも前記基体の一部に導入された消臭性を有する酸性官能基と、該酸性官能基にイオン交換により固定された抗ウイルス性を有する金属イオンと、を有することを特徴とする抗ウイルス性部材であって、該基体に導入された酸性官能基濃度が10meq/m2以上1000meq/m2以下であり、かつ、該基体に導入した酸性官能基数の0.02%以上60.0%以下が抗ウイルス性を有する金属イオンとイオン交換にて結合していることを特徴とする抗ウイルス性部材。
【選択図】なし

Description

本発明は塩基性ガスに対する消臭性を有する官能基を基体表面に導入し、さらに該官能基に、抗ウイルス性を有する金属イオンを結合させた抗ウイルス性部材に関するものである。
国民の生活水準の向上に伴い、健康および衛生に関する意識も高まっており、衣食住の各分野において、消臭加工を施した製品や技術が実用化されている。
一方で、近年、SARS(重症急性呼吸器症候群)やノロウイルス、鳥インフルエンザなどウイルス感染による死者が報告されている。さらに病院、介護老人ホームなどの施設内におけるノロウイルスやインフルエンザの感染症、またMRSAなどの薬剤耐性菌による院内感染などが流行し、それに対する早急な対処策が求められている。これらの背景から、ウイルスや細菌に対する高い不活化機能を有する部材の開発が望まれている。
このような事態に対応するために、消臭性に関しては、繊維表面に放射線グラフト重合によりイオン交換基を導入することにより酸性、塩基性ガス成分を吸着除去できるガス除去材料(特許文献1)などが開発されている。また、殺菌性を有する材料としてはヨウ素吸着サイトとしての第四級アンモニウム基とヨウ素徐放サイトとしてのN−アルキルアミド基を放射線グラフト重合にて基材に導入し、さらにヨウ素を固定することでヨウ素の徐放性を制御した殺菌材料なども開発されている(特許文献2)。
特開2005−211698号公報 特開2008−307253号公報
しかし特許文献1のように、官能基のみを固定した部材では、ガス除去効果はあるものの、ウイルスや細菌に対する不活化能がないため、たとえウイルスや細菌が捕集されても殺すことはできない。従って、捕集されたウイルスや細菌が、再度、使用環境内に排出される恐れがあり、院内感染など感染範囲の拡大につながってしまう可能性がある。また特許文献2のように、殺菌性を付与するためにヨウ素などを固定した場合、部材が黄色く着色してしまったり、ウイルスには効果がない、などの問題があった。
そこで本発明は、上記課題を解決するために、様々なガスに対する消臭性と、付着した細菌だけでなくウイルスの不活化機能とを兼ね備えた抗ウイルス性部材を提供することを目的とする。
すなわち第1の発明は、基体と、少なくとも基体の一部に導入された消臭性を有する酸性官能基と、該酸性官能基にイオン交換により固定された抗ウイルス性を有する金属イオンと、を有することを特徴とする抗ウイルス性部材であって、該基体に導入された酸性官能基濃度が10meq/m2以上1000meq/m2以下であり、かつ、該基体に導入した酸性官能基数の0.02%以上60.0%以下が抗ウイルス性を有する金属イオンとイオン交換にて結合していることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
また第2の発明は、上記第1の発明において、前記消臭性を有する酸性官能基がスルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基から少なくとも1種選択される塩基性ガス吸着能を有する官能基であることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第3の発明は、上記第1または第2の発明のいずれかにおいて、前記消臭性を有する酸性官能基が放射線グラフト重合法にて導入されることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記金属イオンが銅、銀、亜鉛、金、白金、コバルト、ニッケル、スズ、アルミニウム、パラジウムから少なくとも1種選択されることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第5の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、前記基体に導入された消臭性を有する塩基性官能基をさらに有することを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第6の発明は、上記第5の発明において、前記消臭性を有する塩基性官能基が、アミノ基からなる酸性ガス吸着能を有する官能基であることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第7の発明は、上記第1から第6のいずれかの発明において、前記基体の一部にさらに酸性ガス吸着特性を有する無機微粒子および/または塩基性ガス吸着特性を有する無機微粒子を含有することを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第8の発明は、上記第1から第7のいずれかの発明において、前記基体が繊維構造体であることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第9の発明は、上記第1から第7のいずれかの発明において、前記基体が樹脂成形体であることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第10の発明は、上記第1から第7のいずれかの発明において、前記基体がフィルムまたはシートであることを特徴とする抗ウイルス性部材である。
さらにまた第11の発明は、上記第1から第10のいずれかに記載の抗ウイルス性部材を用いたマスクである。
さらにまた第12の発明は、上記第1から第10のいずれかに記載の抗ウイルス性部材を用いたフィルタである。
本発明によれば、消臭性だけでなく、基体に付着したウイルスをも不活化する機能を兼ね備える抗ウイルス性部材を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳述する。本発明に係る実施形態の抗ウイルス性部材は、基体と、基体の少なくとも一部に導入された消臭性を有する酸性官能基と、該消臭性を有する酸性官能基にイオン交換にて固定された金属イオンと、を備えており、基体に付着した細菌やウイルスを不活化すると共に、消臭性も兼ね備えた抗ウイルス性部材である。
本実施形態の抗ウイルス性部材の基体は、抗ウイルス性と消臭性を付与する基材である。当該基体に用いられる材料としては、特に限定されないが、後述のように放射線グラフト重合法によって酸性官能基を導入する場合には表面の少なくとも一部がポリマーであることが好ましい。アルミニウムやステンレスなどの金属材料や、ガラスおよびセラミックなどの無機材料の場合、その表面に塗膜などによりポリマー層が形成されていれば利用できる。ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタアクリレート、ポリウレタン、ABS、SBC、ラテックスなどが挙げられる。
本実施形態の抗ウイルス性部材に用いられる基体の形状、形態は特に限定されず、織物、編物、不織布、シート、フィルムなどのシート状のものに加え、成形体などの樹脂製品なども使用可能である。したがって、本実施形態の抗ウイルス性部材を用いて、マスク、キャップ(帽子)、シューズカバー、カーテン、ブラインド、エアコン用フィルタ、空気清浄機用フィルタ、掃除機用フィルタ、換気扇用フィルタ、車両用空調フィルタ、空調用フィルタ、人工呼吸器用フィルタ、チューブ、人工鼻、医療用ドレープ(医療用覆布、医療用シート)、使い捨て手袋、医療用手袋、創傷部被覆用部材、インサイズドレープ、サージカルテープ、ガーゼ、壁紙、衣類、寝具、網戸用ネット、鶏舎用ネット、蚊屋などのネット類、などを構成することができる。
さらに、本実施形態の抗ウイルス性部材の表面には、他の部材、例えばフィルムやシートが積層されるようにしてもよい。例えば、防水性を有するフィルムやシートを積層することで抗ウイルス性部材に防水性を付与することができる。当該防水性を備えるシート状の抗ウイルス性部材を用いて、該シートを例えば縫い合わせたり接着したりすることにより、ウイルスや血液が透過するのを防止できる高性能防護服や医療用手袋、また病院や介護用のシーツなどを構成することができる。
積層するフィルムやシートとしては、使用者が快適に過ごせるように、水を遮蔽し、空気(湿気)を透過させる透湿性を備えたものが好適に用いられる。具体的には、一般に市販されているものを使用目的に合わせて選定し使用すればよい。
さらにまた、本実施形態の抗ウイルス性部材の少なくとも一方の主面に接着剤などを積層し、使用者が任意にマスクや壁や床に簡単に接着できるようにすることもできる。具体的には、手持ちのマスクの表面に本発明の抗ウイルス性部材を貼付けることで、ウイルス不活化マスクにすることができる。
また、本実施形態の殺菌・抗ウイルス性部材に係る基体は、通気性を有する構造体に係らず、空気を透過させない、言い換えれば遮気性を備えていてもよい。具体的には基体を、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン−エチレン共重合体などの樹脂、ポリカーボネート樹脂シート・フィルム、塩化ビニルシート、フッ素樹脂シート、ポリエチレンシート、シリコーン樹脂シート、ナイロンシート、ABSシート、ウレタンシートなどの高分子からなるシート、に構成してもよい。また、基体の表面は、塗装や印刷などが施されてあっても良い。
本発明の抗ウイルス性部材が保持された遮気性を有する基体は、例えば、壁紙やシャワーカーテン、ブラインド、デスクマット、食品用保存袋、食品用ラップフィルム、キーボードカバー、タッチパネル、タッチパネルカバー、医療用ドレープ、インサイズドレープ、病院内などのビル用内装材、電車や自動車などの内装材、車両用シート、椅子やソファーのカバー、ウイルスを扱う設備、ドアや床板の防汚シート、人工呼吸器用マスク、人工呼吸器用部品など、様々な分野に利用できる。
次に、本実施形態の抗ウイルス性部材が有する消臭性を有する酸性官能基について説明する。抗ウイルス性部材は、基体の少なくとも一部に消臭性を有する酸性官能基を、その酸性官能基濃度が10meq/m2以上1000meq/m2以下になるように、備えることを特徴とする。これは、酸性官能基濃度が10meq/m2未満であると、消臭性が不十分であり、1000meq/m2より多くなると、基体の強度が劣化してしまうからである。また、基体の少なくとも一部は、ガスに接触可能な部分であればよく、基体の表面でもよいし、基体の内部でもよい。消臭性を有する酸性官能基は、主に塩基性ガスと反応して塩基性ガスを吸着し、塩基性ガスの消臭を行う。消臭性を有する酸性官能基としてはスルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基などが挙げられる。また酸性官能基濃度[m]eq/m2]は以下の式1にて算出される。導入される酸性官能基モル数は、中和滴定により求める。官能基を導入する範囲の面積は、酸性官能基の導入処理を行った部分の面積である。
<式1>
酸性官能基濃度(Iex)=n/S
n:基体に導入される酸性官能基モル数(mmol)
S:基体の官能基を導入する範囲の面積(m2
これらの消臭性を有する酸性官能基を基体に導入する方法としては、導入したい消臭性を有する酸性官能基を含む物質を基材と接触させる方法が挙げられる。例えばスルホン酸基を導入する場合を例にすると、無水硫酸、濃硫酸、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、スルファミン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムまたはこれらを組み合わせたものに接触させる。特に、発煙硫酸、亜硫酸ナトリウムなどが好適に用いられる。接触させる方法については、水溶液については、浸漬や塗布など公知の方法が用いられるが、無水硫酸など気化しやすいものについては、気化したガスと基体を接触させる方法を用いることもできる。
また、消臭性を有する酸性官能基を基体に導入する別の方法として、例えば、消臭性を有する酸性官能基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどを用いて後述の放射線グラフト重合を行うことにより、基体に直接、消臭性を有する酸性官能基を導入することもできる。
放射線グラフト重合法とは、基材のポリマー部分に放射線を照射するなどしてラジカルを形成させ、この発生したラジカル部分にビニルモノマーなどの重合性単量体をグラフト反応させた後、目的の官能基を含む物質(本実施形態の場合、消臭性を有する酸性官能基を含む物質)と接触させ、固定するというものである。当該方法は、様々な形状の高分子に機能性官能基を導入することができるので、分離機能性材などで使われている手法である。
基体にラジカルを生成させる方法としては、窒素、アルゴン、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で、基体へ、α線や、β線や、γ線や、電子線等の放射線を照射する方法(放射線照射法)や、紫外線を照射する方法(紫外線(UV)法)、または、コロナ放電を照射する方法(コロナ放電法)や、グロー放電により発生するプラズマを照射する方法(プラズマ法)、あるいは、これらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
また、基体にラジカルを生成させる別の方法として、基体をイソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール類に含浸させた状態で、α線や、β線や、γ線や、電子線や、紫外線を基体へ照射する方法、または、コロナ放電を照射する方法や、グロー放電により発生するプラズマを照射する方法を用いても良い。
また、UV法の光開始剤としてはベンゾフェノン、アントラキノンなどがある。光開始剤が吸収した光のエネルギーが、ポリマーへ移動してラジカルを作る場合と、光開始剤ラジカルがポリマーの水素を引き抜いて、ポリマーにラジカルを作る場合とがある。プラズマ法では、プラズマ中の電子がポリマーにラジカルをつくる場合と、ラジカルを酸素と反応させて過酸化ラジカルとする方法とがある。UV法とプラズマ法とコロナ放電法の特徴は基体の表面近傍のみにラジカル発生が制限される点である。
基体にラジカルを生成させる方法には、上述した放射線照射法や紫外線法(UV法)やコロナ放電法、プラズマ法などに加えて化学開始剤法がある。化学開始剤法には、連鎖移動法、乳化重合法、セリウム塩法などがある。連鎖移動法では、過酸化ベンゾイルのような過酸化物やアゾイソブチロニトリル(AIBN)などが化学開始剤として使用されている。
本発明の抗ウイルス性部材においては、目的、用途に応じて、ラジカル生成方法として、放射線照射法、UV法、プラズマ法、及び、コロナ放電法を適宜選択すれば良いが、エネルギー量の高いα線や、β線や、γ線や、電子線を照射する放射線照射法が好適に用いられる。該放射線照射法には、同時照射法と前照射法がある。同時照射法はポリマーと反応物質の共存下で照射する方法で、前照射法は捕捉ラジカル法ともいわれ、放射線を照射して、ラジカルが生成した後から反応物質と接触させる方法である。放射線照射法の特徴としては、あらゆる形状のポリマーに活用できる点、ポリマー内部までラジカルを生成させることができる点、開始剤等の残存がない点、大量生産できる点等が挙げられる。
上述のラジカル生成方法により生成されるラジカルについてはポリエチレンでは多くの報告があり、放射線照射によってアルキル、アリル、ポリエニル、過酸化ラジカルが生成する。ラジカルは結晶部と非晶部に生成するが、分子鎖の運動が激しい非晶部では、ただちに再結合等の反応で消滅する。観察されるのは結晶部内のラジカルである。アルキルラジカルは反応性がきわめて高く、水素を引き抜きながら結晶部を移動し、非晶部で再結合(橋かけ)や酸化反応、グラフト反応で消費される。
本実施形態において、基体への放射線照射直後、例えば1〜2分以内に、消臭性を有する酸性官能基を導入するような場合には、放射線を照射する際の温度および、照射後に基体を保存する温度については特に制限はない。しかし、ラジカルを生成した後、時間をおいて消臭性を有する酸性官能基を導入する場合などにはラジカルを保存するために、照射も保存も低温で行うことが望ましい。−5℃程度に低温保存すれば、照射20日経過後でも支障なくポリマーラジカルを用いた反応が可能である。
本実施形態の抗ウイルス性部材の基体にラジカルを生成させる際に放射線を照射する方法を用いる場合において、放射線の照射線量は、消臭性を有する酸性官能基を導入させるのに十分なラジカルの生成量が得られ、不必要な架橋や部分的な分解が起こらない経済的な照射線量であれば特に制限はない。ラジカルが均一に生成し、本実施形態の抗ウイルス性部材を構成する基体の剛性や耐薬品性に及ぼす影響も少ないことから、放射線の照射線量は1kGy〜1000kGyの範囲にあることが好ましく、5kGy〜500kGyの範囲にあることがより好ましく、10kGy〜300kGyの範囲にあることが特に好ましい。
上述のように、基体表面に放射線を照射してラジカルを発生させた後、ビニルモノマーなどのモノマー(重合性単量体)を接触させ、基体表面にモノマーを重合体(グラフト鎖)として導入するか、基体表面を、ビニルモノマーなどのモノマー(重合性単量体)と接触させた状態で放射線を照射してラジカルを発生させ、基体表面にモノマーを重合体(グラフト鎖)として導入する。そして導入されたグラフト鎖と消臭性を有する酸性官能基を含む物質とを接触させることで、消臭性を有する酸性官能基がグラフト鎖を構成するモノマーに導入される。その結果、消臭性を有する酸性官能基が、モノマー(グラフト鎖)を介して基体表面に導入されることとなる。
この場合にグラフト重合に用いられるモノマー(重合性単量体)としては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。また、消臭性を有する酸性官能基を含む物質としては、例えば、カルボキシル基を導入できるものとしては、アクリル酸やメタクリル酸が、スルホン基を導入できるものとしては、無水硫酸、濃硫酸、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、スルファミン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。例えば、モノマーとして、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフトによって基体(たとえば不織布基材)に導入し、次に、亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させてスルホン酸基を導入することにより、塩基性ガスの消臭性を有する酸性官能基を導入した基体(不織布)を得ることができる。
本実施形態の抗ウイルス性部材は、さらに抗ウイルス効果を有する成分として少なくとも1種の金属イオンを含むことを特徴とする。金属イオンは上述の消臭性を有する酸性官能基が持つイオン交換能により固定することができる。さらに、本実施形態の抗ウイルス性部材は、導入された酸性官能基への金属イオンの結合率が所定の範囲であることが好ましい。結合率は、基体に導入されている消臭性を有する酸性官能基数に対する金属イオンが結合している酸性官能基数の割合であり、導入される酸性官能基数の0.02%以上60.0%以下に金属イオンが固定されていることが好ましい。これは、金属イオンが固定されている官能基が0.02%未満であると、殺菌、抗ウイルス能が不十分になり、60.0%より多くなると、塩基性ガスと吸着できるフリーの消臭性を有する酸性官能基数が少なくなるため、消臭性が不十分になるからである。これらの酸性官能基数は、基体に接触させる、導入したい消臭性を有する酸性官能基を含む溶液の濃度を制御することによって調整可能である。本実施形態における金属イオンの結合率は対象の抗ウイルス性部材における金属の担持量から算出可能である。まず金属の担持量については、例えばスルホン化の場合、金属イオン担持スルホン化部材(酸性官能基が導入され、その官能基に金属イオンが結合している抗ウイルス性部材)の重量を測定後、硫酸などに浸漬し、結合した金属を抽出した後、ICP発光分析装置にて金属濃度を測定し、抗ウイルス性部材のサンプル重量あたりに担持されている(結合していた)担持量(重量)を算出することで求められる。そして金属の結合率については、導入した酸性官能基に対し金属イオンが飽和状態で担持されているサンプルの金属担持量に対する、求めたいサンプルの金属担持量の割合にて算出できる(基体に導入される消臭性を有する酸性官能基数や、その内の金属イオンが結合している酸性官能基数を直接求めることは難しいため、本実施形態では当該担持量の割合を、抗ウイルス性部材の基体に導入された酸性官能基への金属イオンの結合率とする)。本願における「飽和状態」とは、金属イオンが抗ウイルス性部材の対象サンプルに担持可能な最大量担持されている状態であり、具体的には、担持したい金属イオンの濃度を変えた溶液それぞれに、スルホン化不織布を常温で20分浸漬した場合の、金属イオン担持量(重量)がそれ以上増えないほぼ一定の値になったときの状態を言う。酸性官能基を導入したサンプルを浸漬する溶液の金属イオン濃度を増やしても、サンプルへの金属イオンの担持量がある値より増えなくなった場合に、その値が飽和状態でのサンプルの金属担持量である。
上述のようにして基体に導入された消臭性を有する酸性官能基の一部にウイルスを不活化する金属イオンが導入されることにより、当該基体によって構成される抗ウイルス性部材は、ウイルスの不活化機能と消臭機能との両方を兼ね備えることができる。従って、本実施形態の抗ウイルス性部材は、付着したウイルスの不活化機能と消臭機能の両方を効率よく実現することができる。金属イオンの導入方法は、上述の方法にて基体表面に、消臭性を有する酸性官能基が導入されているので、目的の金属イオンを含む化合物と酸性官能基が導入された基体とを接触させるだけでよい。そして目的の金属イオンを含む化合物の濃度を調整することで、消臭性を有する酸性官能基と結合する金属イオンの量を自由に制御することができる。従って、用途に応じたレベルの消臭性と抗ウイルス性(用途に応じた消臭性と抗ウイルス性の性能や両者のバランス)を備えた抗ウイルス性部材を提供できる。
一方、金属イオンを基体に固定する方法としては、ゼオライトや活性炭などの無機多孔質体に金属イオンを吸着担持させ、それから基体に固定することで、消臭性と抗ウイルス性を発揮させる方法や、フタロシアニンなどの金属錯体を基体に塗布し、消臭性を付与する方法が開発されているが、無機多孔質を用いる場合は基体からの脱離が問題となり、フタロシアニンを用いる場合は、着色などの問題や、イオン交換と比較すると消臭スピードが遅いなどの問題が生じる。また抗ウイルス効果もないため、消臭と抗ウイルス効果の両方の機能を付与したい場合は別の機能性材料を併用する必要がある。さらに、上述のような無機多孔質を用いる方法や金属錯体を用いる方法で金属イオンを結合する方法では、消臭性と抗ウイルス性のバランスを用途に応じて制御するのが難しい。
しかし本実施形態のように消臭性を有する酸性官能基を基体に導入し、さらに導入された消臭性を有する酸性官能基の一部に金属イオンを結合した構造とすることによって、消臭性と抗ウイルス性の両方を効率良く達成することができるという効果が得られる。さらに、上述のように、基体に導入された消臭性を有する酸性官能基と金属イオンとを接触させるだけで金属イオンを酸性官能基に結合できるので、接触させる金属イオンの濃度を調整することで消臭性と抗ウイルス性のバランスを簡単に制御できるので、用途に応じた設計も容易である。
具体的な抗ウイルス効果を有する金属イオンとしては、Ag、Zn、Cu、Co、Ni、Al、Pt、Au、Pd、Snなどが挙げられ、それぞれの目的に応じて1種あるいは2種以上を組合せて用いる事ができる。特にZnを用いると、フィルタの変色などが抑えられるため好ましい。
本発明の抗ウイルス性部材において不活性化できるウイルスについては特に限定されず、ゲノムの種類や、エンベロープの有無等に係ることなく、様々なウイルスを不活化することができる。例えば、ライノウイルス・ポリオウイルス・口蹄疫ウイルス・ロタウイルス・ノロウイルス・エンテロウイルス・ヘパトウイルス・アストロウイルス・サポウイルス・E型肝炎ウイルス・A型、B型、C型インフルエンザウイルス・パラインフルエンザウイルス・ムンプスウイルス(おたふくかぜ)・麻疹ウイルス・ヒトメタニューモウイルス・RSウイルス・ニパウイルス・ヘンドラウイルス・黄熱ウイルス・デングウイルス・日本脳炎ウイルス・ウエストナイルウイルス・B型、C型肝炎ウイルス・東部および西部馬脳炎ウイルス・オニョンニョンウイルス・風疹ウイルス・ラッサウイルス・フニンウイルス・マチュポウイルス・グアナリトウイルス・サビアウイルス・クリミアコンゴ出血熱ウイルス・スナバエ熱・ハンタウイルス・シンノンブレウイルス・狂犬病ウイルス・エボラウイルス・マーブルグウイルス・コウモリリッサウイルス・ヒトT細胞白血病ウイルス・ヒト免疫不全ウイルス・ヒトコロナウイルス・SARSコロナウイルス・ヒトポルボウイルス・ポリオーマウイルス・ヒトパピローマウイルス・アデノウイルス・ヘルペスウイルス・水痘帯状発疹ウイルス・EBウイルス・サイトメガロウイルス・天然痘ウイルス・サル痘ウイルス・牛痘ウイルス・モラシポックスウイルス・パラポックスウイルスなどを挙げることができる。
(他の実施形態1)
抗ウイルス性部材の実施形態としては、上述の塩基性ガス消臭性以外にも、例えば、酸性ガスの消臭性を付与したい場合などに、さらに酸性ガスを吸着する塩基性官能基(塩基性の消臭性官能基)を基体に導入してもよい。
該酸性ガスを吸着する塩基性官能基としては、アミノ基などが挙げられる。これらの塩基性官能基は上述の放射線グラフト重合にて基体に導入することができる。具体的には、放射線等を基体に照射してラジカルを発生させた後、上述のモノマーと接触、導入させ、例えばアミノ基を導入する場合は、ジエチルアミンなどのアミノ基を含む物質とを接触させればよい。放射線グラフト重合法としては、酸性官能基の場合と同様に前照射法でもよいし同時照射法でもよい。塩基性官能基を導入する際は、基体の塩基性官能基を導入したい部分に対してグラフト重合を行ったり導入する物質との接触処理を行ったりすることで、基体の任意の位置に塩基性官能基を導入できる。
さらに前記酸性ガスを吸着する塩基性官能基には、抗ウイルス効果を有する成分として、金属錯体が固定されていてもよい。用いる金属錯体としては、塩化金酸、塩化白金酸のようなアニオン性の錯イオンを形成するようなものが好ましい。これは、塩基性官能基と、金属錯体の錯イオンが、イオン交換にて固定されるからである。導入方法は、上述の方法にて基体表面に消臭性を有する塩基性官能基が導入されているので、目的の金属イオンを含む金属錯体の水溶液と基体とを接触させるだけでよい。
(他の実施形態2)
抗ウイルス性部材のさらに別の実施形態としては、さらに、塩基性ガスを吸着する無機微粒子および/または酸性ガスを吸着する無機微粒子を含んでもよい。この無機微粒子が基体に固定されることで、さらに消臭効果を向上させることができる。たとえば、基体として上述の消臭性官能基(塩基性官能基あるいは酸性官能基)が導入し難い材質を用いる場合などでも、必要な消臭性能を有する無機微粒子を固定することで、消臭性を補完でき、抗ウイルス性部材全体で十分な消臭性能を確保できる。
具体的に、塩基性ガスを吸着する無機微粒子として、シリカが挙げられ、酸性ガスを吸着する無機微粒子として、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。また上述のように、無機微粒子の表面に塩基性ガスや酸性ガスの吸着能を有する官能基を固定して、塩基性ガスや酸性ガスの吸着能が付与された無機微粒子も使用できる。官能基を有する場合は無機微粒子自体、ガス吸着能を有していなくても有していてもよい。本実施形態の抗ウイルス性部材における酸性ガス/塩基性ガス吸着特性を有する無機微粒子とは、このような無機微粒子の表面に酸性ガスや塩基性ガスを吸着する官能基を導入したものも含む概念である。
上記、説明した本実施形態の無機微粒子は上述の基体に導入する塩基性官能基あるいは酸性官能基である消臭性官能基を基体に導入する前に固定してもよいし、消臭性官能基を基体に導入した後に導入してもよいが、固定するためのバインダーなどで消臭性官能基が覆われてしまうなどの場合は、消臭性官能基を導入する前に固定するのが好ましい。
本実施形態の抗ウイルス性部材に用いられる基体に用いる塩基性ガスや酸性ガスを吸着する無機微粒子は公知のバインダーを用いて固定することができるが、ガスとの接触効率などを考慮すると、少量でも強固に基体と固定できる不飽和結合部を有するシランモノマーを用いた放射線グラフト重合による固定方法が最も好適である。これらの不飽和結合部を有するシランモノマーは、該シランモノマーが有するシラノール基と無機微粒子表面を還流などの方法により無機微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合(共有結合)を形成して結合させることができ、さらに、該シランモノマーが有する不飽和結合部や反応性官能基とが、グラフト重合により化学結合(共有結合)することにより基体上に固定される。
不飽和結合部を有するシランモノマーとしては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、チオール基などの不飽和結合部や反応性官能基を有するものが挙げられる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、Si(OR1)4(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランや、R2XSi(OR3)n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、Xは(4−n)であり、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランや、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
塩基性ガスや酸性ガスを吸着する無機微粒子は、基体の表面に固定するだけではなく、内部に固定されてもよい。たとえば、基体として不織布を用いる場合、不織布の製造工程中に無機微粒子を噴霧することで、糸と共に交絡させて固定されていてもよい。このような塩基性ガスや酸性ガスを吸着する無機微粒子を内部に固定した不織布を用いることで、不織布の表面部分に無機微粒子を固定しなくてもよいため、消臭性官能基を導入する面積を不織布の表面部分においてより多く確保できるため好ましい。
以上のいくつかの実施形態の抗ウイルス性部材は、単層で用いるほか、目的にあわせて複数(2層以上)の積層体として用いる事もできる。
本実施形態の抗ウイルス性部材を単層で用いる場合、部材表面に塩基性ガスを吸着する酸性の消臭性官能基と酸性ガスを吸着する塩基性の消臭性官能基との両方を導入してもよい。塩基性ガスと酸性ガスとの両方を消臭できるように酸性と塩基性の両方の消臭性官能基を導入すれば、フィルタが単層であっても両方のガスについて消臭できる。当該両方の消臭性官能基を導入する場合には、たとえばフィルタの片面側に塩基性ガスを吸着する酸性の消臭性官能基を導入し、もう片面側に酸性ガスを吸着する塩基性の消臭性官能基を導入することができる。あるいは表面や裏面の一部の領域又は複数の領域に対して、それぞれの消臭性官能基を導入することもできる。例えば線状、海島状、ストライプ状などの非連続な状態で酸性と塩基性の消臭性官能基をそれぞれ導入すればよい。
上述のように塩基性ガス・酸性ガスの両方の消臭性官能基を導入する場合には、抗ウイルス性を有する金属イオンまたは金属錯体は、塩基性ガスを吸着する官能基と酸性ガスを吸着する官能基との両方の消臭性官能基に固定されてよい。また、塩基性ガスをより多く消臭したい場合は、酸性官能基をより多く残すために塩基性の消臭性官能基に金属錯体を固定してもよい。酸性ガスをより多く消臭したい場合は、塩基性官能基をより多く残すために酸性の消臭性官能基に金属イオンを固定してもよい。必要な消臭性能等に応じて金属イオンや金属錯体を結合させる官能基を適宜選択すればよい。またこの時、塩基性ガスや酸性ガスを吸着する無機微粒子を、消臭機能向上のために使用環境に合わせてさらに固定してもよい。
本実施形態の抗ウイルス性部材を2層以上の積層体として用いる場合、塩基性ガスを吸着する酸性の消臭性官能基を導入した部材と、酸性ガスを吸着する塩基性の消臭性官能基を導入した部材とを積層することができる。塩基性ガスと酸性ガスの消臭に対応したそれぞれの部材を積層させることで、本実施形態の抗ウイルス性部材は両方のガスを消臭できる。この時、部材にプリーツなどの加工を施す場合、不織布やハニカムなどの芯材を用いる事もできる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<抗ウイルス性部材の作製>
以下、実施例の電子線照射には、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気(株)製 C1000250/15/180L)を用いた。金属濃度の測定にはICP発光分析装置(SIIナノテクノロジー(株)製 SPS3500)を用いた。殺菌・抗ウイルス性部材の実施例および比較例は以下の通り作製した。
(実施例1)
抗ウイルス性部材の基体として、PP(ポリプロピレン)基材のメルトブロー不織布(東レ・ファインケミカル(株)製 EM05010)を、窒素雰囲気下にて、電子線を200kVの加速電圧で20Mrad照射した。ついでこの不織布を10%のメタクリル酸グリシジル溶液に浸漬し、グラフト重合反応を行い、さらに、亜硫酸水素ナトリウム水溶液でスルホン化を行った。得られたスルホン化PP不織布を5ppm硫酸亜鉛水溶液に20分間浸漬し、水洗及び水酸化ナトリウムにて中和し、亜鉛イオン担持スルホン化不織布を得た。得られた亜鉛イオン担持スルホン化不織布の酸性官能基濃度を求めるために、水酸化ナトリウムにて中和滴定をし、上述の式より算出したところ、この時の酸性官能基濃度は110meq/m2であった。
続いて、実施例1の亜鉛イオン担持スルホン化不織布を2×4cmに切り取り、硫酸亜鉛溶液に浸漬し、室温で20分反応させ、飽和状態の亜鉛担持スルホン化サンプル(飽和亜鉛担持スルホン化不織布)を得た。このサンプルを純水にて洗浄、乾燥後、重量を測定した後、3M硫酸5mLに30分以上浸漬し、亜鉛を抽出した。この抽出液を、ICP発光分析装置にて測定し、飽和亜鉛担持スルホン化不織布の亜鉛担持量を得た。
実施例1の亜鉛イオン担持スルホン化不織布を2×4cmに切り取り重量を測定した後、3M硫酸5mLに30分以上浸漬し、亜鉛を抽出した。この抽出液を、ICP発光分析装置にて測定し、以下の式にて亜鉛の結合率を算出したところ、0.05%であった。
<式2>
亜鉛結合率(%)=
(各実施例・比較例の亜鉛担持量)/(飽和亜鉛担持スルホン化不織布の亜鉛担持量)
(実施例2)
実施例1の硫酸亜鉛水溶液濃度を500ppmに変えた以外は同じ方法にて亜鉛イオン担持スルホン化不織布を得た。上述の方法にて測定した結果、この時の酸性官能基濃度は110meq/m2、亜鉛の結合率は52%であった。
(実施例3)
実施例1のPP不織布に、窒素雰囲気下にて、電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射した。ついでこの不織布を、窒素雰囲気下にて、30%発煙硫酸に1時間さらし、水洗、中和して、スルホン化を行った。得られたスルホン化PP不織布を、100ppm硫酸銅水溶液に20分間浸漬し、水洗及び乾燥し、銅イオン担持スルホン化不織布を得た。上述の方法にて測定した結果、この時の酸性官能基濃度は18meq/m2、銅の結合率は60%であった。
(実施例4)
抗ウイルス性部材の基体として、PE(ポリエチレン)基材のスパンボンド不織布(ユニチカ(株)製 S1003WDO)を用いた。このPE不織布に、窒素雰囲気下にて、電子線を200kVの加速電圧で20Mrad照射した。ついでこの不織布を10%のメタクリル酸グリシジル溶液に浸漬し、グラフト重合反応を行い、さらに、亜硫酸水素ナトリウム水溶液でスルホン化を行った。得られたスルホン化PP不織布を2000ppm硫酸銀水溶液に20分間浸漬し、水洗、中和し、銀イオン担持スルホン化不織布を得た。上述の方法にて測定した結果、この時の酸性官能基濃度は110meq/m2、銀の結合率は44%であった。
(実施例5)
実施例1のPP不織布に、窒素雰囲気下にて、電子線を200kVの加速電圧で20Mrad照射した。ついでこの不織布を10%のメタクリル酸グリシジル溶液に浸漬し、グラフト重合反応を行い、さらに、ジエチルアミン溶液に、グラフト重合反応を行ったPP不織布を浸漬し、アミノ化を行った。得られたアミノ化PP不織布を1%塩化金酸水溶液に20分間浸漬し、水洗、中和し、金錯体担持アミノ化PP不織布を得た。ついで、この金錯体担持アミノ化PP不織布と、実施例2で作成した亜鉛担持スルホン化PP不織布とを、ホットメルト接着剤としてヘンケルジャパン株式会社製MP843を、ノードソン株式会社製ALTA400シグレチャースプレーガンより糸状に吐出させ、貼り合せることで実施例5の不織布を得た。
(実施例6)
酸性ガスを吸着する無機微粒子として、市販の酸化ジルコニウム微粒子(日本電工株式会社製、PCS-60)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を酸化ジルコニウム微粒子に対して5.0質量%加えてpHを5.0に塩酸で調整した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱してシランモノマーを酸化ジルコニウム微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて薄膜を形成した。得られたシランモノマー被覆酸化ジルコニウム微粒子をメタノールに10.0質量%分散してビーズミルにより平均粒子径18nmに再度粉砕分散した後、メタノールを加えて固形分を5.0質量%に調整しスラリーを得た。その後、得られたスラリーを実施例2の亜鉛イオン担持スルホン化不織布の片面にスプレーにて塗布し、80℃、1分間乾燥した後、電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、シランモノマーで被覆された酸化ジルコニウム微粒子からなる薄膜を不織布に結合させて実施例6の不織布を得た。
(実施例7)
実施例6の亜鉛担持スルホン化+酸化ジルコニウム固定PP不織布と、実施例5の金錯体担持アミノ化PP不織布とを、実施例5の方法にて貼り合わせ、実施例7の不織布を得た。
(比較例1)
実施例1で用いた未加工のPP不織布を比較例1とした。
(比較例2)
実施例4で用いた未加工のPE不織布を比較例2とした。
(比較例3)
実施例1の硫酸亜鉛水溶液濃度を1ppmに変えた以外は同じ方法にて亜鉛イオン担持スルホン化不織布を得、比較例3とした。この時の酸性官能基濃度は110meq/m2、亜鉛の結合率は0.01%であった。
(比較例4)
実施例1の方法にて作成したスルホン化PP不織布(金属担持なし)を比較例4とした。
各実施例、比較例の構成を表1に示す。
Figure 2015195827
<抗ウイルス性の評価>
実施例1〜7、比較例1〜4の各サンプルの抗ウイルス性評価は、MDCK細胞を用いて培養したインフルエンザウイルス(influenza A/北九州/159/93(H3N2))を用いた。ウイルスの懸濁液100μLをプラスチックシャーレ上に滴下し、その上から2cm×2cmに切り取った各フィルタサンプルを載せて、懸濁液をサンプル全面に延ばした後、室温で60分間作用させた。60分後、SCDLP培地 1900μLを添加し、ピペッティングによりウイルスを洗い出し、上清液を回収した。その後、細胞培養培地(MEM)を用いて、回収した上清液の10倍段階希釈系列を作製した。回収した上清液と各希釈段階液0.1mLをMDCK細胞を培養した6穴細胞培養プレートに接種した。60分間静置しウイルスを細胞へ吸着させた後、0.7%寒天培地を重層し、48時間、34℃、5%CO2インキュベータにて培養後、ホルマリン固定、メチレンブルー染色を行い、形成されたプラーク数をカウントして、ウイルスの感染価(PFU/0.1mL,Log10);(PFU:plaque-forming units)を算出した。その試験結果を表2に示す。
Figure 2015195827
以上の結果より、全ての実施例において、高い殺菌性と抗ウイルス性が確認できた。また、基体にスルホン基と亜鉛を導入した比較例3については、殺菌性、抗ウイルス性ともに多少の効果はあったが、亜鉛の担持量が少なかったことから、充分な効果が認められなかった。さらに、スルホン基のみを導入した比較例4では殺菌、抗ウイルス性、共にみられなかったことから、スルホン基に固定した金属イオンにより、殺菌性、抗ウイルス性が発現したことが確認できた。
<消臭性の評価>
実施例1〜7、比較例1〜4の各サンプルを10cm×10cmの大きさに切り取り、サンプリングバッグに入れた後、塩基性ガスとしてアンモニアを60ppm含む空気を、酸性ガスとして酢酸を60ppm含む空気を同サンプリングバッグ内に5L封入し、サンプリングバッグ内の各ガスの残存濃度を所定の時間毎に検知管により測定した。測定時間は、ガス含有空気を封入してから、それぞれ5、15、30分後とし、結果を表3に示した。
Figure 2015195827
以上の結果より、スルホン基のみを導入した実施例1〜4、比較例3、4では、塩基性ガスであるアンモニアガスに対する高い消臭効果が確認できた。特に、金属イオンの担持率が低い実施例1では高い消臭性に加え、短時間での消臭効果も認められたことから、フリーの酸性官能基が即効性に寄与していることが確認できた。また、さらにアミノ基を導入した実施例5、7においては、酸性ガスである酢酸ガスにも高い消臭効果が認められた。また、酸性ガスの吸着能を有する酸化ジルコニウム微粒子を固定した実施例6では、アミノ基ほどではないが、消臭効果が認められた。これらの結果から、本実施形態の抗ウイルス性部材を用いると、消臭、殺菌、抗ウイルス性に優れた製品が提供できる事が確認できた。

Claims (12)

  1. 基体と、
    少なくとも前記基体の一部に導入された消臭性を有する酸性官能基と、
    該酸性官能基にイオン交換により固定された抗ウイルス性を有する金属イオンと、
    を有することを特徴とする抗ウイルス性部材であって、
    該基体に導入された酸性官能基濃度が10meq/m2以上1000meq/m2以下であり、かつ、該基体に導入した酸性官能基数の0.02%以上60.0%以下が抗ウイルス性を有する金属イオンとイオン交換にて結合していることを特徴とする抗ウイルス性部材。
  2. 前記消臭性を有する酸性官能基がスルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基から少なくとも1種選択される塩基性ガス吸着能を有する官能基であることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス性部材。
  3. 前記消臭性を有する酸性官能基が放射線グラフト重合法にて導入されることを特徴とする請求項1または2に記載の抗ウイルス性部材。
  4. 前記金属イオンが銅、銀、亜鉛、金、白金、コバルト、ニッケル、スズ、アルミニウム、パラジウムから少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の抗ウイルス性部材。
  5. 前記基体に導入された消臭性を有する塩基性官能基をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の抗ウイルス性部材。
  6. 前記消臭性を有する塩基性官能基が、アミノ基からなる酸性ガス吸着能を有する官能基であることを特徴とする請求項5に記載の抗ウイルス性部材。
  7. 前記基体の一部にさらに酸性ガス吸着特性を有する無機微粒子および/または塩基性ガス吸着特性を有する無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の抗ウイルス性部材。
  8. 前記基体が繊維構造体であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の抗ウイルス性部材。
  9. 前記基体が樹脂成形体であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の抗ウイルス性部材。
  10. 前記基体がフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の抗ウイルス性部材。
  11. 請求項1から10に記載の抗ウイルス性部材を用いたマスク。
  12. 請求項1から10に記載の抗ウイルス性部材を用いたフィルタ。
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