JP2022110998A - ヨウ素型殺菌フィルター及び該フィルターを利用した空気清浄装置 - Google Patents

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高信 須郷
Takanobu Sugo
晃一 鈴木
Koichi Suzuki
恭一 斎藤
Kyoichi Saito
邦夫 藤原
Kunio Fujiwara
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Abstract

【課題】 従来、ヨウ素を吸着担持したヨウ素抗菌繊維は、ヨウ素を放出させないか又はヨウ素を放出させても放出量を制御できない点が問題であった。そのため、ヨウ素抗菌繊維から長期間にわたって、極低濃度のヨウ素を継続的に放出し続けヨウ素型殺菌フィルターの出現に期待がかかっていた。また、ヨウ素型殺菌フィルターを搭載した空間殺菌が可能な空気清浄装置に対する期待も大きかった。【解決手段】 不織布のような有機高分子素材に4級アンモニウム基とN-アルキルアミド基を含有する重合体側鎖を形成させ、該重合体側鎖に三ヨウ化物イオンを担持させたヨウ素型殺菌フィルターにおいて、三ヨウ化物イオンの担持量及び三ヨウ化物イオンの担持量と四級アンモニウム基の含有量との比率を制御することによって、空間に一定期間極低濃度のヨウ素を放出し、殺菌雰囲気を創出できること、また該ヨウ素型殺菌フィルターを搭載した空間殺菌が可能な空気清浄装置を提供する。【選択図】図1

Description

発明の詳細な説明
本発明は空気中又は液体中の微生物やウィルスなどを殺菌できるヨウ素を含有するヨウ素型殺菌フィルター及び該フィルターを利用した空気清浄装置に関する。
新型コロナ等による感染症を予防するため、密閉、密集及び密接の「3密」を避けることが重要である。密閉を避けるには、換気を十分に行う必要がある。そのためには、窓の定期的開閉や空調の能力向上が必要である。しかしながら、窓の定期的開閉は冬場や夏場においては困難な場合が多く、空調も単なる空気循環であり新鮮な外気を取り入れるのではないため、十分効果が上がっているとは言い難い。また、病院や診療所等の医療現場でしばしば起こる感染症は深刻で毎年のように院内感染による死亡例が報告されている。その原因はMRSA等をはじめとする抗生物質耐性菌やカビ、ウィルスなどによる接触感染や空気感染が原因とされている。したがって、感染症の拡大を防ぐには、公共交通機関の客室内や劇場、ホ-ル、商業施設やカラオケハウスなどの閉鎖空間では、室内に滞留する空気を絶えず清浄にする必要がある。
通常、空気中の除菌には、日本工業規格(JIS規格)にて「定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもつHEPAフィルターが使用されている。また、HEPAフィルターよりも性能の高いULPAフィルターが使用される場合もある。これらフィルターは物理的に捕捉する方法が行われている。花粉やMRSAなど微生物に対してはこのポアサイズでも対応できるが、ウィルスのサイズは0.1μm(100nm)と小さく、通り抜けてしまう。ウィルスを充分に除去するためには、フィルターのポアサイズを小さくする必要があるが、フィルターの圧力損失が大きくなり、フィルターへ吸気するための動力費が大きくなるという問題がある。また、フィルターを交換する際には、フィルターに捕捉されている菌類が再飛散するという問題もある。
そこで、フィルターの構成材料として殺菌作用を有する材料を利用した殺菌フィルター材料が種々開発されている。
特許文献1には、羊毛、絹、ナイロンなど窒素原子を含む高分子にヨウ素を担持したヨウ素付加抗菌繊維の技術が開示されている。しかしながら、ペプチド結合の窒素原子と三ヨウ化物イオンとの相互作用は働いているものの、結合力は小さく担持したヨウ素が短時間で放出されるという問題点があった。
特許文献2には、多孔質又は無孔質基材にヨウ素を担持させ、該基材に送風することにより、ヨウ素を徐々に空気中に徐放するヨウ素徐放エレメント技術が提案されている。ここで、ヨウ素を担持させた材料としては、陰イオン交換樹脂にヨウ素を担持させものをさらに100ミクロン以下の小粒子に粉砕したものを不織布や厚紙等に接着させた徐放エレメントが提案されている。このヨウ素徐放エレメントに使用されるヨウ素担体のイオン交換樹脂と三ヨウ化物イオン(I )との吸着力は強いため、ヨウ素を放出させるには多量に三ヨウ化物イオンを吸着させなければならない。また、イオン交換樹脂のような粒状担体は既存の空気清浄装置に組込むことが難しい。
発明者らは放射線グラフト重合法をベース技術として様々な応用開発を行ってきた。その中に、原子力事故に伴い発生した放射性ヨウ素の除去剤の開発がある。そして、その技術を改良し特許文献3(WO00/64264)及び特許文献4(特開2008-307253)に示すヨウ素型殺菌材料を提案してきた。
特許文献3は有機高分子基材(特に繊維基材)に電子線やガンマ線のような放射線を照射した後、照射済み基材をN-ビニルピロリドンと接触させ基材主鎖に対し、N-ビニルピロリドンのグラフト重合体側鎖を成長させ、さらに三ヨウ化物イオンを吸着させた抗菌性繊維を提案している。うがい薬として広く使用されてきたポビドンヨードを繊維に重合体側鎖として固定化した画期的な技術であった。しかしながら、N-ビニルピロリドングラフト重合体側鎖と三ヨウ化物イオンとの相互作用が水素結合であるため、結合力が弱く繊維からはヨウ素が徐々に放出され、比較的短期間にヨウ素特有の茶色が消失し、抗菌性も失われる傾向があった。
特許文献4は特許文献3の改良版であり、重合用モノマーとしてN-ビニルピロリドンの他に四級アンモニウム基を有するモノマー、例えばビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)を加え、共グラフト重合を行っている。このグラフト材料に三ヨウ化物イオンを接触させると、グラフト重合体側鎖におけるN-ビニルピロリドン重合部分では三ヨウ化物イオンと水素結合で吸着し、VBTAC重合部分ではイオン交換で三ヨウ化物イオン(I )を吸着することになる。VBTACと三ヨウ化物イオンとの結合はイオン結合であり、水素結合よりも結合力が強い。したがって、N-ビニルピロリドン重合体側鎖部分に担持した三ヨウ化物イオンから遊離するヨウ素は、N-ビニルピロリドン重合体部分の近傍のVBTACに吸着され、通常の環境下においては基材外への放出量は非常に少ない。
特許文献5(WO2008/153090)は特許文献4と同一の発明者が関与しており、ほぼ同一の技術が開示されている。発明の名称にもあるが、ヨウ素による抗菌効果に加え、マスクや花粉吸着の機能を付加している。グラフト重合体側鎖にVBTACを存在させることにより、四級アンモニウム基に由来する正の荷電でウィルスや花粉などの微粒子を静電吸着し、捕捉されたウィルスや微生物を繊維上で殺菌無害化することを特徴としている。
特開平9-132867 特開2000-135279 WO00/64264 特開2008-307253 WO2008/153090
発明が解決しようとする課題
従来公知のヨウ素抗菌繊維は、ヨウ素を放出させないか又はヨウ素を放出させても放出量を制御できない点が問題であった。感染症が続く今日、空気清浄装置の機能を向上させ、より強力な殺菌空間を創出できる技術への期待が高まっている。そのため、ヨウ素抗菌繊維から長期間にわたって、極低濃度のヨウ素を継続的に放出し続けることが必要であり、そのような特性を有するヨウ素型殺菌フィルター及び該フィルターを搭載した空間殺菌が可能な空気清浄装置を提供することが課題である。
課題を解決するための手段
発明者らは、不織布のような有機高分子素材に4級アンモニウム基とN-アルキルアミド基を含有する重合体側鎖を形成させ、該重合体側鎖に三ヨウ化物イオンを担持させたヨウ素型殺菌フィルターにおいて、三ヨウ化物イオンの担持量及び三ヨウ化物イオンの担持量と四級アンモニウム基の含有量との比率を制御することによって、空気中に一定期間極低濃度のヨウ素を放出し、殺菌雰囲気を創出できること、そしてこのヨウ素型殺菌フィルターを搭載した空気清浄装置は対象とする空間及び装置本体の殺菌が可能なことを見出し本発明に到達した。
本発明は、次の特徴を有するヨウ素型殺菌フィルター及び該フィルターを搭載した空間殺菌が可能な空気清浄装置を提案する。
(1)有機高分子基材を主鎖として、四級アンモニウム基含有モノマーとN-アルキルアミド基含有モノマーとを含むコポリマーとからなる重合体側鎖とが化学的に結合し、該重合体側鎖に三ヨウ化物イオンが吸着されているヨウ素型殺菌フィルターであって、四級アンモニウム基の含有量が0.1~0.6meq/gの範囲であり、かつヨウ素担持量がモル比で四級アンモニウム基の0.6以下に制御されたヨウ素型殺菌フィルター
(2)前記、四級アンモニウム基含有モノマーは、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物(DMAPAA四級化物)から選択される1種以上のモノマーを重合して得られる重合体側鎖である(1)に記載のヨウ素型殺菌フィルター。
(3)前記、N―アルキルアミド基含有モノマーは、N―ビニルピロリドン、1―ビニルー2―ピペリドン、N―ビニルーN―メチルアセタミド、N―ビニルーN―エチルアセタミド、N―ビニルーN-メチルプロピルアミド、N―ビニルーN―エチルプロピルアミド又はこれらから誘導される化合物からなる群から選択される1種以上のモノマーを重合して得られる重合体側鎖である、(1)に記載のヨウ素型殺菌フィルター。
(4)前記、四級アンモニウム基含有モノマーとN-アルキルアミド基含有モノマーとを含むコポリマーとからなる重合体側鎖は、有機高分子基材に電離性放射線を照射した後、四級アンモニウム基含有モノマーとN-アルキルアミド基含有モノマーとを含む混合モノマー液に接触させることによって得られる(1)~(3)のいずれか1に記載のヨウ素型殺菌フィルター
(5)前記、有機高分子基材は、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布及びこれらの加工物から選択される、請求項1~4のいずれか1に記載のヨウ素型殺菌フィルター。
(6)前記、(1)~(5)記載のヨウ素型殺菌フィルターを空気清浄装置のフィルター部に搭載した空間殺菌機能付き空気清浄装置
以下、説明をわかりやすくするため、四級アンモニウム基含有モノマーの代表例として、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)を、N-アルキルアミド基含有モノマーの代表例として、N―ビニルピロリドン(NVP)を例にとり説明する。また、VBTAC及びNVPから得られるコポリマーを、有機高分子基材に重合体側鎖として結合させる手段として、放射線グラフト重合法を例にとり説明する。放射線グラフト重合法は不織布などの有機高分子基材に放射線を照射し、基材の主鎖にラジカルを生成させた後、モノマーを接触させ、ラジカルを起点として重合体側鎖を成長させる重合技術である。基材の形状や特性を生かしながら、重合体側鎖にさまざまな機能を付与することができる高分子改質方法である。繊維の集合体である織布や不織布はフィルターとしてよく利用される有機高分子基材であり、中でも不織布は本発明の用途に好ましい有機高分子基材である。
図1は本発明のヨウ素型殺菌フィルターの製造工程を示す図である。有機高分子基材に放射線照射し、グラフト重合を経て、三ヨウ化物イオンを吸着担持させるまでの工程を記載している。三ヨウ化物イオンがVBTACにもNVPにも吸着している図が記載されているが、三ヨウ化物イオンが吸着していない部分が多く、これは記載していない。
不織布に放射線グラフト重合法により、VBTAC及びNVPの混合液をグラフト重合すると、VBTAC及びNVPが混合したグラフト重合体側鎖が成長する。有機高分子基材の材質にもよるが、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン系の素材の場合は、疎水性であるため、重合初期には親水性の大きなVBTACよりもNVPが多く重合する。ナイロンなどのポリアミド系基材はポリオレフィン系よりも親水性が大きいため、重合初期にはVBTACもある程度重合する。したがって、重合体側鎖の組成は若干基材の材質によって異なり、選択した有機高分子基材の材質や用途を考慮し、適宜グラフト重合条件を最適化する必要がある。
グラフト重合前後の重量増加率をグラフト率と呼ぶ。本発明においては、グラフト率が20%以上から60%が好ましい。グラフト率が20%以下の場合、グラフト重合体側鎖中のVBTACの量がNVPに比べ少なく、ヨウ素を放出しやすくなる。また、60%以上では、グラフト重合体側鎖中のVBTACやNVPの量が大きく、三ヨウ化物イオンを容易に吸着担持できるが、そのためには照射線量やモノマー濃度を大きくしなければならず、コストが嵩む。四級アンモニウム基を含有するモノマー、特にVBTACは非常に高価であるため、実用化のためには、使用量の低減が好ましい。さらに、三ヨウ化物イオンの担持量は一定期間に微量放出できる量でよい。
VBTACとNVPによるグラフト重合体側鎖を放射線グラフト重合により、基材に化学結合した際、VBTACのグラフト重合量はイオン交換容量を測定することにより推定できる。また、NVPの導入量はグラフト率(グラフト重合前後の重量増加率)から、VBTACのイオン交換容量より計算されるVBTACグラフト率を差引き求めることができる。本発明に好適なVBTAC/NVP混合モノマーのモル比を1/1に調製した溶液でグラフト重合を行うことにより、0.1~0.6meq/gのイオン交換容量が得られる。混合モノマー比率の調製は、VBTAC/NVPのモル比1/1を中心にVBTACを減らす方向で実験的に求めることができる。
グラフト物のイオン交換容量の測定はイオン交換樹脂のイオン交換容量測定法に基づき測定できる。VBTACは四級アンモニウム基を有し、強塩基性アニオン交換樹脂であるため、グラフト物1g前後を採取し、水酸化ナトリウムで再生後、NaCl水溶液に浸漬し、CLイオンを吸着させ、アルカリ性となった液を規定濃度の酸で中和滴定することにより、測定できる。イオン交換容量の測定によりVBTACのグラフト率が算出できるため、この値を全体グラフト率から差引けばNVPのグラフト率が求められる。VBTACグラフト率は全体グラフト率の数%~10数%であり、残りがNVPのグラフト率となる。例えば、全体グラフト率が50%の場合、その中の約10%前後がVBTAC、残りの90%がNVPのグラフト重合によると計算される。VBTACの分子量(211)はNVPの分子量(111)の2倍近くあるため、グラフト重合体側鎖中のNVP/VBTACのモル比は溶液の組成と比べ、NVPが非常に多く存在している。
VBTACとNVPの混合モノマーを有機高分子基材にグラフト重合した後、三ヨウ化物イオン(I )を含むヨウ素溶液を接触させると、グラフト重合体側鎖に三ヨウ化物イオンが吸着する。VBTAC及びNVPの重合部において、三ヨウ化物イオンはどちらの部分にも吸着する。VBTACは四級アンモニウム基を有し、三ヨウ化物イオンとはイオン交換により結合する。また、NVPと三ヨウ化物イオンとは、特許文献3(WO00/64264)に記載されるように、水素結合で吸着する。NVP重合体側鎖と三ヨウ化物イオンとはNVP2分子に水素イオン1の割合で水素結合し、この対イオンとして三ヨウ化物イオンが結合する。この水素結合はVBTACと三ヨウ化物イオンとの間に働くイオン結合よりも弱いため、ヨウ素を放出しやすい。
ヨウ素を吸着担持させる場合は、市販のヨウ素溶液をグラフト物に接触させることで容易に実施できる。ヨウ素溶液はヨウ素(I)とヨウ化カリウム(KI)による水溶液であり、I として溶解している。親水性モノマーのVBTACとNVPがグラフト重合した材料は非常に親水性が高く、ヨウ素溶液になじみやすい。ポリエチレンのような疎水性の有機高分子基材を使用しても、VBTAC及びNVPをグラフト重合した後は容易に三ヨウ化物イオンを吸着させることができる。ここで、吸着させる三ヨウ化物イオン総量は、VBTACのイオン交換容量の60%以下にする必要がある。先に述べたように、モル比でNVPの重合体側鎖部分はVBTACの10倍近く存在するため、ヨウ素添着工程では、投入した三ヨウ化物イオンはVBTAC重合体側鎖にも吸着されるが、多くはグラフト重合体側鎖のモル比に応じてNVP重合体側鎖部に吸着される。NVP重合体側鎖部分に三ヨウ化物イオンが吸着する場合は、NVP2分子に1分子の三ヨウ化物イオンが吸着すると考えられるが、その場合でもNVP重合体側鎖部分による三ヨウ化物イオンの吸着量はVBTAC重合部分の吸着量に比べ数倍多い。
したがって、本発明の殺菌フィルターは全体として、ヨウ素を放出する性質があるが、三ヨウ化物イオンの吸着担持量をVBTACのイオン交換容量の0.6以下に抑えることにより、ヨウ素の短期間での放出が抑えられる。空気清浄装置などの空間浄化を行う装置では、通常空気循環を行うことが多い。本発明のヨウ素殺菌フィルターを使用すれば、空間に残留する過剰なヨウ素を再吸着により捕捉することができるため、空間のヨウ素濃度を抑えることができる。ヨウ素の再吸着に利用できる官能基が三ヨウ化物イオンを吸着していないVBTACの重合体側鎖部分である。VBTACモノマーの四級アンモニウム基は塩化物イオン型(CL型)で製造されており、VBTAC重合体側鎖部分は塩化物イオン型又は一部ヨウ化物イオン型となっている。これらVBTACのイオン型はヨウ素を除去でき、本ヨウ素型殺菌フィルターでは三ヨウ化物イオン吸着担持後も40%(モル比で0.4)残るよう設計されている。
VBTACは四級アンモニウム基を有する代表的モノマーであるが、このモノマーの代わりにジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物(DMAPAA四級化物)も利用できる。スチレン、クロロメチルスチレン(CMS)、メタクリル酸グリシジル(GMA)などのように四級アンモニウム基に転換可能な構造を有するモノマーがあり、これらも利用できる。ただし、四級アンモニウム基への転換工程が必要になり、製造工程が複雑となる。そして、これら四級アンモニウム基に転換可能なモノマーは疎水性であるため、N―アルキルアミド基含有モノマーのような親水性のモノマーとのモノマー混合液の調製に工夫を要する。VBTACのようにすでに四級アンモニウム基が導入されたモノマーはN―アルキルアミド基含有モノマーと容易に混ざり合い、四級アンモニウム基導入工程が不要であるため、本発明のヨウ素型殺菌フィルター製造に好適である。
本発明のヨウ素型殺菌フィルターに空気を送風し続けると、フィルターの上流側から三ヨウ化物イオンの黄褐色が徐々に薄れ、下流側に移る現象が認められる。この現象は、ヨウ素がフィルター内を上流から下流に徐々に移動し、外気に放出されているためであり、殺菌空間を創出している。フィルターの上流側において、ヨウ素の黄褐色の薄れた部分は、空気中に残留したヨウ素の再補足に利用され、空間内のヨウ素濃度が高くなるのを抑制している。
VBTACは四級アンモニウム基が塩化物イオン型(Cl型)で市販されている。そのため、グラフト重合後にはCl型で存在するが、その後の三ヨウ化物イオンを吸着担持させる工程でI 型とI型が生成する。グラフト物への三ヨウ化物イオン吸着には、ヨウ素ヨウ化カリウム溶液と接触させる。ヨウ素ヨウ化カリウム溶液は過剰のヨウ化カリウム(KI)溶液にIを溶解して作製しているため、接触後のVBTACには、Cl型、I 型及びI型が混在する。I 型は(I+I)型でもあり、ヨウ素(I)を放出後はI型となる。したがって、VBTACのグラフト率及び吸着時のヨウ素ヨウ化カリウム溶液の濃度と量にもよるが、ヨウ素放出後のヨウ素型殺菌フィルターには多量のヨウ化物イオン型が存在し、三ヨウ化物イオン型ほどではないが未加工の基材と比べ高い抗菌性を示す。
ヨウ化物イオンが高い抗菌性を示す理由はいくつか考えられる。例えば、イオン交換選択性が非常に強いため、塩基性のアミノ酸(リジン、ヒスチジン、アルギニンなど)や核酸の塩基性窒素に作用し、水素結合のサイトが封鎖され、たんぱく質の致死的変性に至るという考え方がある。また、ヨウ化物イオンの吸着サイトでは、極微量の三ヨウ化物イオンが生成しているとも考えられる。空気清浄機のフィルターとして使用した場合、ヨウ素型殺菌フィルターからヨウ素(I)を放出した後もヨウ化物イオン型(I型)が残存することにより、高い抗菌性を示し、フィルター自体が汚染源となることを防いでいる。
図2は代表的な家庭用空気清浄装置の構成図である。室内の空気14はプレフィルター10、集塵フィルター11、脱臭フィルター12及びファン13を通過し、清浄な空気15となる。目の粗いプレフィルターは比較的大きな粒子やほこりを除去するために設置されている。集塵フィルターはプレフィルターで除去できなかった細かい粒子を除去できるフィルターであり、半導体など精密産業における清浄空間を確保するために使用されるHEPAフィルターなどが使用される。脱臭フィルターは臭いなどガス成分を除去するフィルターであり、触媒や活性炭を含む素材が利用されている。プレフィルターには通気性の良い不織布が使用される場合が多く、本発明のヨウ素型殺菌フィルターも好適に利用できる。
プレフィルターとして本発明のヨウ素型殺菌フィルターを用いることにより、下流の集塵フィルターを極微量のヨウ素に曝露し、微生物等による汚染を抑えることができる。ただし、脱臭フィルターに利用する素材がヨウ素を吸着することを避けるため、活性炭等の素材を使用する場合は注意を要する。
ヨウ素型殺菌フィルターは四級アンモニウム基がグラフト重合体側鎖に存在するため、フィルター全体が正の電荷を有するようになり、負に帯電したウィルスや花粉、微生物の静電吸着にも有効である。この四級アンモニウム基は共有結合で基材に結合したグラフト重合体側鎖に存在するため、半永久的に正の荷電が保持される。
発明の効果
本発明のヨウ素型殺菌フィルター及び該フィルターを搭載した空気清浄装置は空間に極微量のヨウ素を長期間にわたって放出でき、その間添着したヨウ素の放出による空間殺菌が可能である。また、ヨウ素放出濃度を過度に高くすることもない。新型コロナが蔓延している折、空間を長期間殺菌雰囲気にできるため、家庭用、病院、医療施設等の現場において感染者を隔離する空間の浄化にも利用できる。また、イベントハウスやレストランなどの公共の施設においてもより安全な空気環境を提供できる。
本発明のヨウ素型殺菌フィルターの製造工程を示す図である。 空気清浄装置の主要構成を示す図である。 市販の空気清浄機のプレフィルターとしてヨウ素型殺菌フィルターを取付けた図である。 室内空気中のヨウ素濃度を測定するためのヨウ素捕集装置である。
図1は本発明のヨウ素型殺菌フィルターの製造工程を示す。基材1に放射線2を照射し基材にラジカル3を生成させた後、VBTAC4とNVP5の混合モノマーよりなる水溶液に浸漬させ、所定時間グラフト重合反応を行う。グラフト物には、VBTAC4とNVP5の混合モノマーの重合体側鎖が共有結合6で基材に結合されている。このグラフト物にヨウ素ヨウ化カリウム溶液を接触させ、三ヨウ化物イオンを吸着担持する。三ヨウ化物イオンはVBTACの四級アンモニウム基(Cl型)にイオン交換で吸着されると同時にNVP2分子と水素結合で吸着される。
基材としては、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布及びこれらの加工物から選択される高分子基材を好ましく用いることができる。特に、織布/不織布の形態のポリオレフィン系有機高分子基材は、後述する放射線グラフト重合用の基材として好適に用いることができ、軽量で加工しやすく、空気清浄装置にも搭載しやすいため、本発明のヨウ素型殺菌フィルター用の基材として好適である。ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン系基材の他、ポリアミド系やポリエステル系などグラフト重合が可能な材質の有機高分子基材を利用することができる。
市販の有機高分子基材1の特長を生かし、その形状のまま図1に示すように放射線を照射し、重合体側鎖を生成させる方法を放射線グラフト重合法と呼び、側鎖にさまざまな機能を導入できるため、機能性材料の製造方法として本発明の用途には好適である。放射線源2としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができるが、特に、電子線や60Coのγ線などを好ましく用いることができる。電子線と比較すると60Coのγ線は透過深度が大きいが単位時間あたりの放射線強度(線量率)が低い。
グラフト重合に必要な照射線量は一般的に10~300kGy程度である。放射線グラフト重合法には、有機高分子基材に予め放射線を照射した後、モノマーを接触させて重合体側鎖を導入する前照射グラフト重合法と、有機高分子基材とモノマーとの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあり、いずれの方法も本発明において用いることができる。図1は前照射グラフト重合法の例である。
また、有機高分子基材とモノマーとの接触態様により、モノマーの溶液に有機高分子基材を浸漬させたまま重合させる液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に有機高分子基材を接触させて重合させる気相グラフト重合法、有機高分子基材をモノマーの溶液に浸漬させた後でモノマー溶液から取り出して気相中で重合させる含浸気相グラフト重合法などがあり、いずれの方法も本発明において用いることができる。本発明において、織布/不織布の形態の有機高分子基材を用いる場合には、モノマーの溶液を保持しやすい含浸気相グラフト重合法や液相グラフト重合法が好適である。
四級アンモニウム基含有モノマーとしては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物(DMAPAA四級化物)から選択されるモノマー又はスチレン、クロロメチルスチレン(CMS)、メタクリル酸グリシジル(GMA)から選択される四級アンモニウム基に転換可能な構造を有するモノマーをから選択して利用できる。この中ではビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)が好ましい。
N―アルキルアミド基含有モノマーとしては、N―ビニルピロリドン、1―ビニルー2―ピペリドン、N―ビニルーN―メチルアセタミド、N―ビニルーN―エチルアセタミド、N―ビニルーN-メチルプロピルアミド、N―ビニルーN―エチルプロピルアミド又はこれらから誘導される化合物から選択できるが、N―ビニルピロリドン(NVP)が好ましい。
VBTACは粉末でNVPは溶液であるが、VBTACは水に溶けやすくNVPとは容易に混ざりあい混合モノマー水溶液とすることができる。しかしながら、本発明に必要なヨウ素型殺菌フィルターにとって、VBTACの導入量は大きくする必要はなく、四級アンモニウム基の導入量を示す中性塩分解容量が0.1~0.6meq/gであればよい。四級アンモニウム基含有モノマーは親水性が大きくN―アルキルアミド基含有モノマーと比べ、有機高分子基材に対して重合しにくい。したがって、本発明のヨウ素型殺菌材料の用途に適したグラフト率20~60%(グラフト重合前後の重量増加率)を得るには、VBTAC及びNVPとの併用が必要である。モノマー組成としてVBTAC/NVPのモル比が1以下で、グラフト重合を行うことで目標の中性塩分解容量0.1~0.6meq/gが得られ、ヨウ素の担持放出を担うNVP重合体側鎖部分もVBTACの十倍以上と十分に導入することができる。
ヨウ素添着工程は、グラフト物をヨウ素ヨウ化カリウム溶液に所定時間浸漬することにより行う。このとき、ヨウ素投入量は、VBTAC導入量及びNVP導入量の1/2の和より計算できる。三ヨウ化物イオン吸着のためのヨウ素化槽において、上記計算値の60%を目安にヨウ素ヨウ化カリウム溶液を投入することによって、本発明のヨウ素型殺菌材料、即ち四級アンモニウム基の含有量が0.1~0.6meq/gの範囲であり、かつヨウ素担持量がモル比で四級アンモニウム基の0.6以下に制御されたヨウ素型殺菌フィルターにできる。また、計算値よりも、ビーカー試験等により、ヨウ素ヨウ化カリウム溶液の投入量と三ヨウ化物イオンの担持量との関係を予め求めておくこともでき、簡単で確実である。
ヨウ素の担持量は、一定の大きさのヨウ素型殺菌材料に規定の濃度のチオ硫酸ナトリウムを正確に加え、一定時間放置した後、チオ硫酸ナトリウムの残量を規定のヨウ素ヨウ化カリウム溶液で逆滴定することにより、算出できる。
ヨウ素型殺菌フィルターは基材として、繊維の集合体である不織布を選定することができる。目付(単位面積当たりの重量)の小さい不織布は空気清浄装置のプレフィルターとして粗い粒子を除去することに使用される。この基材に対し、本発明のヨウ素型殺菌材料の製造方法を適用し、三ヨウ化物イオンを吸着担持させても、圧力損失が大きく通気性が損なわれることはない。放射線グラフト重合法は単なる浸み込ませや塗布とは異なり、基材の内部にまでラジカルを生成させ、基材の内部にグラフト重合体側鎖を形成することができる。したがって、繊維径や不織布厚みがやや大きくなるが、20~60%のグラフト率では通気性や圧力損失に大きな変化はない。
以下、実施例及び比較例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ヨウ素型殺菌フィルタ-材料の製造
基材として、ポリエチレンを鞘、ポリプロピレンを芯とする芯鞘複合繊維からなる目付25g/m、厚み0.2mmの不織布を幅30cm×5mに切取り、窒素雰囲気でガンマ線150kGyを照射した。別に、N-ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)/水=1/2/3(重量比)に調製したモノマー混合液3Lを大型のガラスアンプルに入れ30分間窒素バブリングし、溶存酸素を追い出した。この液に先の照射済み不織布を入れ、恒温槽に50℃で6時間静置し、グラフト重合を行った。予め、10cm角にカットしたグラフト率測定用サンプルの重量増加率からグラフト率は49%であることが分かった。このサンプルの中性塩分解容量を測定すると、0.18meq/g-グラフト物であった。即ち、VBTACが0.18mmol/g―グラフト物、グラフト重合により導入された。重量増加分の残りがNVPであるため、2.7mmol/g-グラフト物と計算され、モルで換算しVBTAC導入量の15倍量導入されたことになる。
(2)ヨウ素の吸着担持
このグラフト済み不織布を純水で5回洗浄した。純水3Lに0.5M/Lのヨウ素ヨウ化カリウム溶液4mlを加え希釈ヨウ素溶液を調製し、グラフト済み不織布を浸漬した。不織布を不織布同士が接触しないよう緩くプラスチックの棒にロール状に巻き、ヨウ素溶液に30秒間浸漬した。その後、不織布を上方に引き上げ10秒間液から取出した。この操作を10回繰り返し、最後は5分間浸漬した。希釈ヨウ素液は調製直後には黄色を呈していたが、三ヨウ化物イオンがグラフト済み不織布に吸着し黄褐色に変化すると同時に溶液は次第に薄くなり、吸着操作の最終段階では透明となった。このことにより、投入したヨウ素はほとんどがグラフト済みの不織布に吸着したと考えられる。
(3)ヨウ素添着量の測定
ヨウ素添着後の不織布20cm×50cmを約5cm角にカットし、0.02mol/Lのチオ硫酸ナトリウム400mlに入れ適宜撹拌しながら1昼夜暗所に静置した。次いで、この液100mlを採取し、分析の都度調製した0.01mol/Lのヨウ素溶液で電位差滴定を行った。この結果、この不織布には31μg/cmのヨウ素が添着されていた。このヨウ素添着量は0.031mmol/gに相当した。したがって、中性塩分解容量0.18meq/gに対する三ヨウ化物イオンの吸着担持量の割合は17.2%であり、モル比でヨウ素担持量は四級アンモニウム基に対し0.6以下の範囲を満たしていた。
(4)空気清浄装置への搭載
市販の空気清浄機(シャープ製、型番KC―G40)の空気吸込み口のプレフィルターの代わりに図3のようにヨウ素型殺菌フィルター17を取り付けた。この空気清浄機を8畳の応接室に置き、風量ボタン「中」(風量2m/hに相当)で、8月に運転を開始した。加湿運転は行わなかった。3カ月間連続運転し、その期間定期的にプレフィルターの色を観察した。また、運転開始前と運転終了後のヨウ素添着量を測定した。結果を表1に示す。
空気清浄機への搭載初期はヨウ素型殺菌フィルターの濃い黄色を呈していたが、運転日数を経過するに従い黄色が薄れ、45日目では薄い黄色、90日目では灰色中にわずかに黄色が残存し、120日目では灰色が残存し、黄色がほぼ消失した。また、120日目のフィルターのヨウ素添着量を測定したが、定量限界以下であった。
Figure 2022110998000002
(5)ヨウ素型殺菌フィルターのウィルス不活化効果
空気清浄機へ搭載する前のヨウ素型殺菌フィルタ―及び空気清浄機へ搭載後120日を経過したフィルター及び未加工の基材不織布から試験用不織布を一部切取り、ウィルス不活化試験を行った。試験ウィルスはインフルエンザウィルスA型(H1N1)を用い、切り取った不織布に滴下後、室温に4時間放置した後、洗い出し液についてウィルス感染価を測定することにより試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2022110998000003
ウィルス感染価はTCID50の対数で表され、この値が小さいほど不活化効果、即ち殺菌効果が大きい。空気清浄機搭載前のヨウ素型殺菌フィルターの不活化効果は0.5以下と高い殺菌効果が得られた。また、120日経過後のフィルターも基材不織布と比べ1000倍ものウィルス不活化効果を有していることが分かった。
ヨウ素型殺菌フィルターはVBTACとNVPの混合モノマーを不織布基材に放射線を利用してグラフト重合体側鎖を形成し、そこに三ヨウ化物イオンを吸着担持しているが、VBTACの一部はヨウ化物イオン型(I型)となり、このイオン形態でも強い抗菌性があることを示している。三ヨウ化物イオン型(I 型)からヨウ素(I)が放出された後のイオン型もヨウ化物イオン型(I型)となり、このイオン型ではヨウ素が放出されないが、強い抗菌性を示すことが分かった。
(5)空気中へのヨウ素放出濃度
室内のヨウ素濃度を測定するため、図4に示すサンプリング装置を使用して空気中のヨウ素を捕集し、ICP-AESでヨウ素濃度を測定した。吸収瓶には吸収液として、0.1%の水酸化ナトリウム及び0.1%のヒドラジン水溶液になるよう調製した吸収液を用いた。運転初日から1週間連続で10L/分の流量で捕集を続けた後、吸収液中のヨウ化物イオン濃度を測定したが、検出限界以下であった。なお、ガステック社のヨウ素用ガス検知管で運転初日から1回/日、7日間ヨウ素濃度を測定したが、いずれも測定範囲(0.5ppm~125ppm)を下回った。
(6)空間殺菌の検証
ナイロン不織布を10cm角にカットし、1枚を(4)の応接室のテ-ブル上、他の1枚を居室の机上に置き、空気清浄機の運転開始から3週間放置した。3週間後の不織布のウィルス不活化効果を(5)と同様の方法で測定した。LogTCID50/mlの値は、居室の不織布が6.5に対し、応接室に置いた不織布は4とウィルス不活化効果が認められた。ヨウ素型殺菌フィルターから放出されたヨウ素は室内の還元性物質との接触、カーテンや天井塔への吸着、室内空気の換気回数などにより、濃度が低くなるが、室内に放置した不織布がウィルス不活化効果を示したことから、ヨウ素型殺菌フィルター搭載空気清浄機によって、一定期間室内が殺菌雰囲気になったと考えられる。
比較例
実施例1の(1)ヨウ素型殺菌フィルタ-材料の製造において、モノマー混合液のVBTAC濃度を1/2に薄くした以外は同様の条件でグラフト重合を行った。グラフト率は42%であり、中性塩分解容量は0.04meq/g-グラフト物であった。さらに(2)と同様にヨウ素添着を行い、添着量を測定すると30μg/cmであった。このヨウ素添着量は0.033mmol/gに相当した。したがって、中性塩分解容量に対する三ヨウ化物イオンの吸着担持量の割合は83%であった。この不織布を実施例1と同様の空気清浄機に搭載し、観察したところわずか2日間でヨウ素の黄色が消失し、全体が白色であった。ヨウ素添着量を測定したが5μg/cm以下であった。
本発明のヨウ素型殺菌フィルターは、有機高分子繊維に四級アンモニウム基含有モノマー及びN-アルキルアミド基含有モノマーの共グラフト重合を行った後、三ヨウ化物イオンを吸着担持させたものであり、四級アンモニウム基に由来する中性塩分解容量が0.1~0.6meq/gの範囲にあり、かつ三ヨウ化物イオンの吸着担持量が四級アンモニウム基の60%以下に制御されたヨウ素型殺菌フィルターである。このフィルターはごく微量のヨウ素を長期間放出することが可能であり、これを搭載した空気清浄装置は長期間清浄対象となる空間全体を殺菌雰囲気にできる。新型コロナ等感染症の拡大を防止に寄与できる。
1 有機高分子基材
2 放射線
3 ラジカル
4 ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド
5 N-ビニルピロリドン
6 共有結合
7 グラフト重合体側鎖
8 水素結合
9 イオン結合
10 プレフィルター
11 除塵フィルター
12 脱臭フィルター
13 吸引ファン
14 入口空気
15 出口空気
16 空気清浄機
17 ヨウ素型殺菌フィルター
18 吸収瓶
19 吸収液
20 流量計
21 吸引ファン
22 入口空気
23 出口空気

Claims (6)

  1. 有機高分子基材を主鎖として、四級アンモニウム基含有モノマーとN-アルキルアミド基含有モノマーとを含むコポリマーとからなる重合体側鎖とが化学的に結合し、該重合体側鎖に三ヨウ化物イオンが吸着されているヨウ素型殺菌フィルターであって、四級アンモニウム基の含有量が0.1~0.6meq/gの範囲であり、かつヨウ素担持量がモル比で四級アンモニウム基の0.6以下に制御されたヨウ素型殺菌フィルター
  2. 前記、四級アンモニウム基含有モノマーは、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物から選択される1種以上のモノマーである請求項1に記載のヨウ素型殺菌フィルター。
  3. 前記、N―アルキルアミド基含有モノマーは、N―ビニルピロリドン、1―ビニルー2―ピペリドン、N―ビニルーN―メチルアセタミド、N―ビニルーN―エチルアセタミド、N―ビニルーN-メチルプロピルアミド、N―ビニルーN―エチルプロピルアミド又はこれらから誘導される化合物からなる群から選択される1種以上のモノマーである請求項1に記載のヨウ素型殺菌フィルター。
  4. 前記、四級アンモニウム基含有モノマーとN-アルキルアミド基含有モノマーとを含むコポリマーとからなる重合体側鎖は、有機高分子基材に電離性放射線を照射した後、四級アンモニウム基含有モノマーとN-アルキルアミド基含有モノマーを含む混合モノマー液に接触させることによって得られる請求項1~3のいずれかに記載のヨウ素型殺菌フィルター
  5. 前記、有機高分子基材は、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布及びこれらの加工物から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のヨウ素型殺菌フィルター材料。
  6. 前記、請求項1~5記載のヨウ素型殺菌フィルターを空気清浄装置のフィルター部に搭載した空間殺菌機能付き空気清浄装置
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