JP2015193249A - 転写シート及び化粧材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 その目的とするところは意匠性が高く、高級感のある表面に凹凸が設けられた発泡タイプの化粧材及びその化粧材に用いる転写シートを提供することを課題とするものである。
【解決手段】 転写基材上に、発泡抑制インキによりパターン状に形成された発泡抑制層と、絵柄印刷層を有する転写シートであって、
前記発泡抑制層の前記発泡抑制インキが、下記の成分(1)〜(3)のいずれかを含むことを特徴とする転写シートである。
(1)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及びシリカ
(2)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及び沈降性硫酸バリウム
(3)アミノトリアゾール系発泡抑制剤、シリカ、及び沈降性硫酸バリウム
【選択図】 図1

Description

本発明は、壁装材、クッションフロアと呼ばれる床材等の表面に用いる化粧材及び化粧材の表面に絵柄模様等を形成する転写シートに関し、詳しくは、発泡樹脂層の発泡が部分的に抑制されることで表面に凹凸が設けられる発泡タイプの化粧材、及び、発泡タイプの化粧材に発泡抑制層と絵柄印刷層を形成する転写シートに関する。
従来、発泡タイプの化粧材としては、発泡樹脂層の表面に凹凸模様を設けたものが広く知られている。この表面凹凸模様は、機械的に形成するメカニカルエンボス加工や、上記の発泡樹脂層の発泡を部分的に抑制することで凹凸を形成するケミカルエンボス加工等で形成されるものであり、化粧材に高級感を付与している。
ケミカルエンボス加工は、例えば、紙、ガラス繊維、合成樹脂シート等の裏打ち材の上に発泡剤入りの塩ビペーストを所定量塗布した後、高温(180〜230℃程度)下でキュアーしてゲル化させ、次いで、発泡抑制剤を混入したインキをその表面の一部に直接印刷するか又は予め発泡抑制剤を混入したインキでパターンを形成した発泡抑制層を備えた転写シートを用いて転写法にて発泡抑制層を印刷した後、全体を発泡させることにより表面に凹凸模様を付与するものである。ケミカルエンボス加工により表面に凹凸模様が形成され、さらにその表面には通常、保護層が設けられている。
転写シートとしては、紙若しくはオレフィン、又は紙とオレフィンとを積層したシート、又はポリエステルフィルム等の耐熱性を有するフィルム基材からなる転写シート用の基材シート表面に、転写性を有し且つ被転写材の発泡に対する発泡抑制剤を添加した適宜パターンの発泡抑制インキ層を少なくとも1層具備し、前記発泡抑制剤として融点が160℃以上300℃未満のトリアゾール系発泡抑制剤が添加された転写シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上記従来のトリアゾール系発泡抑制剤は、発泡抑制剤自体が昇華性を有しているために、エンボス効果及び発泡抑制効果の持続性が不十分であり、これら従来技術により製造された発泡床材シートは、意匠性や高級感が不十分であった。
また、発泡被覆材料にケミカルエンボス加工を施すために用いられる発泡抑制剤として、ベンゼン環に特定の置換基を有すると共に、ジアルキルアミノメチル基を有するベンゾトリアゾール誘導体も開示されている(例えば、特許文献2参照)。ベンゾトリアゾール誘導体を発泡抑制剤として、発泡被覆材料のケミカルエンボス加工に用いることにより、エンボス効果及び発泡抑制効果の持続性が改良され、発泡被覆材料の意匠性、高級感は向上した。しかしながら、ベンゾトリアゾール誘導体を有する発泡抑制剤は、融点が高いため塩化ビニル等の発泡被覆基材への浸透力が低い上に、タック性を有するために転写基材の発泡抑制剤を添加した発泡抑制インキ層を形成して巻取としたときに、そのタック性のために発泡抑制インキ層が転写基材の発泡抑制インキ層の形成された反対側の面と保管中に密着し巻き戻したとき発泡抑制インキ層が転写基材の前記反対側の面に転移する現象(以下、ブロッキングという。)を引き起こすことがあるという問題がある。エンボス効果及び発泡抑制効果の持続性があり、加工適性のある意匠性の高い、高級感のある発泡タイプの化粧材の開発が望まれている。
特開2005−22373号公報 特開平11−267407号公報
そこで本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは意匠性が高く、高級感を有する表面に凹凸が設けられた発泡タイプの化粧材及びその化粧材に用いる転写シートを提供することを課題とするものである。
本発明は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明は、転写基材上に、発泡抑制インキによりパターン状に形成された発泡抑制層と、絵柄印刷層を有する転写シートであって、前記発泡抑制層の前記発泡抑制インキが、下記の成分(1)〜(3)のいずれかを含むことを特徴とする転写シートである。
(1)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及びシリカ
(2)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及び沈降性硫酸バリウム
(3)アミノトリアゾール系発泡抑制剤、シリカ、及び沈降性硫酸バリウム
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の転写シートにおいて、前記転写基材が、紙と、ポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂層が積層されてなり、前記合成樹脂層の表出面に剥離層が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3記載の本発明は、裏打ち材上に、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層が積層され、前記発泡ポリ塩化ビニル樹脂層表出面に、発泡抑制インキによりパターン状に形成された発泡抑制層と、絵柄印刷層が積層されてなり、前記発泡抑制層の発泡抑制インキによりパターン状に形成された部分は発泡が抑制され、前記発泡抑制層の発泡抑制インキによりパターン状に形成されない部分は発泡が抑制されず、表面に第1凹凸模様を備えた化粧材であって、前記発泡抑制層の前記発泡抑制インキが、下記の成分(1)〜(3)のいずれかを含むことを特徴とする化粧材である。
(1)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及びシリカ
(2)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及び沈降性硫酸バリウム
(3)アミノトリアゾール系発泡抑制剤、シリカ、及び沈降性硫酸バリウム
また、請求項4記載の本発明は、請求項3記載の化粧材において、前記発泡抑制層及び前記絵柄印刷層の上を覆い、全面に透明な表面層が積層され、且つ、前記表面層の上に第2凹凸模様が形成されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、意匠性が高く、高級感を有する表面に凹凸が設けられた発泡タイプの化粧材及びその化粧材に用いる転写シートを提供することができる。すなわち、発泡抑制剤としてアミノトリアゾール系発泡抑制剤を用いることにより、ケミカルエンボス加工において優れたエンボス効果が得られ、また、タック性もないので転写シートを巻取としてもブロッキングすることがないので優れた加工適性が得られる。
さらに発泡抑制インキが
(1)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及びシリカ
(2)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及び沈降性硫酸バリウム
(3)アミノトリアゾール系発泡抑制剤、シリカ、及び沈降性硫酸バリウム
のいずれかの成分を含むことにより優れた印刷適性が得られ、柄印刷層として適切なパターン形成が可能となる。
本発明に係る転写シートの一実施形態の断面を示す説明図である。 本発明に係る転写シートのその他の実施形態の断面を示す説明図である。 本発明の転写シートを用いて化粧材を製造する工程の一例を示す説明図であって、(イ)は転写シートと、裏打ち材に発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層が積層された被転写シートとを接着する工程、(ロ)は転写シートの転写基材を剥離除去後、転写面の表面に透明な表面層を形成した未発泡状態の化粧材を製造する工程、(ハ)は発泡させることにより得られた本発明の化粧材の一実施形態の断面を示すものである。
上記の本発明について、図面を参照しながら以下に詳述する。
図1は本発明に係る転写シートの一実施形態の断面を示す説明図、図2は本発明に係る転写シートのその他の実施形態の断面を示す説明図、図3は本発明の転写シートを用いて化粧材を製造する工程の一例を示す説明図であって、(イ)は転写シートと、裏打ち材に発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層が積層された被転写シートとを接着する工程、(ロ)は転写シートの転写基材を剥離除去後、転写面の表面に透明な表面層を形成した未発泡状態の化粧材を製造する工程、(ハ)は発泡させることにより得られた本発明の化粧材の一実施形態の断面を示すものであり、図中の10、10’は転写シート、11は転写基材、11aは紙、11bは合成樹脂層、11cは剥離層、12は発泡抑制層、13は絵柄印刷層、20は被転写シート、21は裏打ち材、22aは発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層、22bは発泡ポリ塩化ビニル樹脂層、30は透明な表面層、40は未発泡化粧材、50は化粧材(発泡)、Tは凸部、Bは凹部、hは発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の凸部の厚さ(ただし、透明な表面層の厚さは除く。)、dは発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の凹部の深さ(ただし、透明な表面層の厚さは除く。)をそれぞれ示す。
図1は本発明に係る転写シートの一実施形態の断面を示す説明図である。図1に示すように本発明の転写シート10は、転写基材11上に、発泡抑制インキによりパターン状にが形成された発泡抑制層12と、絵柄印刷層13が積層された構成である。発泡抑制層12と絵柄印刷層13の積層順は図1に示す順または逆の順のいずれでもよいが、発泡抑制層12は発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22a(図3参照)と直接接するように設ける方がより発泡抑制効果が得られやすいので好ましい。あるいは、発泡抑制層12と絵柄印刷層13を同一平面上設けることもでき、この場合、一部が重なって積層されていてもよい。また、発泡抑制層12と絵柄印刷層13は同調させて意匠性を高める方が好ましい。また、被転写シートに転写した際、被転写シートの下地となる発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の色相が化粧材の意匠性に及ぼす影響を少なくしたい場合、絵柄印刷層13の上を全面に覆うように隠蔽性を有する印刷インキを用いて隠蔽層を適宜設けることができる。
本発明の転写シート10は、発泡抑制層12のパターンを形成する発泡抑制インキにアミノトリアゾール系発泡抑制剤と無機材を含むことを特徴とするものであり、アミノトリアゾール系発泡抑制剤を用いることにより、ケミカルエンボス加工において発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aの発泡を抑制する効果が得られる。また、発泡抑制インキに対して一定のチキソ性を確保するために無機材であるシリカ及び/又は沈降性硫酸バリウムを含ませることが肝要であり、そうすることにより発泡抑制インキの印刷適性が確保され、柄印刷層として発泡抑制層12のパターン形成が可能となる。転写基材11は、紙11aと、ポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂層11bが積層された構成である。
図2は本発明に係る転写シートのその他の実施形態の断面を示す説明図であり、本発明の転写シートの一実施形態との違いは、合成樹脂層11bの表出面に剥離層11cが形成されている点であり、その他は一実施形態と同じである。転写シート10’の剥離層11cは必須ではないが、設ける方が好ましい。剥離層11cは発泡抑制層12及び絵柄印刷層13が剥離層11cより容易に剥離できるように形成することも、あるいは合成樹脂層11bと剥離層11cとの間で剥離するように形成することもできる。後者の場合、被転写シートに転写後、転写基材を剥離すると表面に剥離層11cが露出し、その後、透明な表面層30(図3参照)と接することになり剥離層11cは透明な表面層30と発泡抑制層12及び絵柄印刷層13との接着補助の役割も果たすものとなる。
図3は本発明の転写シートを用いて化粧材を製造する工程の一例を示す説明図であって、(イ)は転写シートと、裏打ち材に発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層が積層された被転写シートとを接着する工程、(ロ)は転写シートの転写基材を剥離除去後、転写面の表面に透明な表面層を形成した未発泡状態の化粧材を製造する工程、(ハ)は発泡させることにより得られた本発明の化粧材の一実施形態の断面を示すものである。なお、本発明において、化粧材とは発泡後の状態のものを示し、発泡前の状態のものを未発泡化粧材と称し区別することとする。まず、図3(ハ)に基づき、本発明の化粧材について説明する。
化粧材50は、裏打ち材21上に、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層22bが積層され、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層22bの表出面に絵柄印刷層13と発泡抑制インキによりパターン状に形成された発泡抑制層12が積層されてなり、さらに発泡抑制層12及び絵柄印刷層13の上を覆い、全面に透明な表面層30が積層されている。発泡抑制層12の発泡抑制インキによりパターン状に形成された部分は発泡が抑制されて凹部Bが形成され、発泡抑制層12の発泡抑制インキによりパターン状に形成されない部分は発泡が抑制されず凸部Tが形成され、いわゆるケミカルエンボス加工により表面に第1凹凸模様を備えている。
つぎに発泡抑制層12の発泡抑制インキによりパターン状に形成された部分の発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の厚さと発泡抑制層12の発泡抑制インキによりパターン状に形成されない部分の発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の厚さの割合を発泡抑制効果と称し、図3(ハ)に示すように発泡抑制層12の発泡抑制インキによりパターン状に形成された部分の発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の凹部Bの深さ(ただし、透明な表面層30の厚さは除く。)をdとし、発泡抑制層12の発泡抑制インキによりパターン状に形成されない部分の発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の凸部Tの厚さ(ただし、透明な表面層30の厚さは除く。)をhとして発泡抑制効果Eを
E=d/h(%)
で表したとき、はっきりとした凹凸意匠性を表現したい場合においては、発泡抑制効果Eが25%以上であることが好ましい。
なお、図3は発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aと発泡抑制層12とは絵柄印刷層13を介した構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、発泡抑制層12と発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aは直接接する構成にする方が好ましい。
化粧材50の意匠性を高めるために透明な表面層30の上に機械的に形成するいわゆるメカニカルエンボス加工によるエンボス模様(図示しない)が形成された構成にすることもできる。なお、本願明細書ではケミカルエンボス加工により形成された凹凸を第1凹凸模様、メカニカルエンボス加工により形成された凹凸を第2凹凸模様と称することとする。
また、本発明の化粧材50は、発泡抑制層12のパターン状に形成する発泡抑制インキにアミノトリアゾール系発泡抑制剤及び無機材を含むことにより、ケミカルエンボス加工において発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aの発泡を抑制し優れた凹凸模様が形成されると共に発泡抑制インキの印刷適性が確保される。
つぎに、図3(イ)〜(ハ)を参照しながら本発明の転写シート10’を用いた化粧材50の製造方法を説明する。
図3(イ)は転写シート10’の絵柄印刷層13と、裏打ち材21に発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aが積層された被転写シート20の発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aとを接着する工程を示す。被転写シート20は裏打ち材21の上に例えば、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂組成物ゾルを塗工して製造される。
その後、転写シート10’の転写基材11を剥離・除去した後、図3(ロ)に示すように、発泡抑制層12及び絵柄印刷層13の上を覆い、全面に透明な表面層30が積層され、未発泡化粧材40が製造される。透明な表面層30は、透明な合成樹脂シートを積層してもよいし、透明塩化ビニル樹脂組成物ゾルを塗工することにより透明塩化ビニル樹脂層を形成してもよい。
その後、この未発泡化粧材40を加熱発泡させることにより図3(ハ)に示す化粧材50を製造する。加熱することにより、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aが発泡し発泡ポリ塩化ビニル樹脂層22bとなり、発泡抑制層12の部分は、発泡が抑制されるので凹部Bを形成し発泡抑制インキによりパターン状に形成されない部分は発泡が抑制されないので凸部Tを形成するので、表面に発泡抑制層12の模様に対応する第1凹凸模様が形成され、優れた意匠性を備えた化粧材50が得られる。なお、加熱発泡処理に際しては、発泡剤の種類、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層の厚みにより、加熱温度、時間が適宜設定される。化粧材50の表面にはメカニカルエンボス加工により第2凹凸模様(図示しない)を形成して意匠性を向上させることもできる。
つぎに本発明の転写シート10、10’の各層について説明する。
(転写基材)
本発明における転写シートの転写基材11としては、発泡抑制層12と絵柄印刷層13の印刷適性と、転写性等を備えておれば特に限定されるものではないが、転写作業性、コスト等を勘案すれば、紙11aと、ポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂層11bが積層された構成が好ましい。
紙11aとしては、上質紙、クラフト紙等が挙げられる。坪量は20〜100g/m2 程度である。この紙11aの上に合成樹脂層11bのポリオレフィン樹脂がエクストルージョン法により押出ラミネートされるか、あるいはポリオレフィン樹脂シートをドライラミネーション法によりラミネートされる。合成樹脂層11bのポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリメチルペンテン等の樹脂を1種または2種以上混合したものが好ましい。厚さは10〜50μm程度である。
(剥離層)
剥離層11cとしては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ゴム樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合体樹脂等の単独もしくは2種以上を混合して使用できる。
剥離層11cは発泡抑制層12及び絵柄印刷層13が剥離層11cより容易に剥離できるように形成することも、あるいは合成樹脂層11bと剥離層11cとの間で剥離するように形成することもできる。
後者の場合、被転写シートに転写後、転写基材を剥離すると転写表面を形成する層となるので、被転写シートの転写表面に設けられる透明な表面層30との接着性を考慮して樹脂を選定することが必要であり、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ゴム樹脂等の1種または2種を含むことが好ましい。なお、転写基材にポリオレフィン樹脂を選択した場合においては、剥離性の点においてアクリル系樹脂を用いることが特に好ましい。また、剥離層11cは無色透明層であるが、意匠性を高めるために着色剤を添加した透明着色層としてもよい。
(発泡抑制層)
発泡抑制層12のパターン状に形成する発泡抑制インキには、被転写シート20を構成する発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aの発泡性ポリ塩化ビニル樹脂の発泡を抑制するための発泡抑制剤と、発泡抑制インキの印刷適性を付与するためのシリカが含まれている。
発泡抑制インキのバインダーとしては、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合体樹脂等の1種又は2種以上を混合して使用することが好ましい。中でも剥離層としてアクリル系樹脂を選択した場合、剥離層11cとの接着性を考慮すると、アクリル系樹脂がより好ましい。
発泡抑制剤の性能としては、裏打ち材に積層された発泡性ポリ塩化ビニル樹脂が通常180〜200℃の温度で加熱発泡されるので沸点が200℃を超えること、融点が180℃以下であること、転写シートのブロッキングを防止するために60℃以下で少なくとも液体ではないこと等が要求される。このような性能面、比較的安価で入手できるという経済面から、発泡抑制剤としては、3−アミノ1.2.4−トリアゾール等のアミノトリアゾール系発泡抑制剤が好ましい。
印刷適性を付与するための材料としては任意の無機材が使用できるが、無機材としては、無色に近く、且つ、吸油性が低い性質が要求され、中でもシリカが好ましい。そして無機材の粒径としては粒度分布測定法(例えば、レーザー回折散乱法)で算出した平均粒径が1〜8μm以下(好ましくは5μm以下)の大粒径と300nm以下の小粒径の両方を含むことが好ましい。大粒径の無機材を添加することで印刷工程時のガイドロールへの付着感やロール状態にした際の付着感を防ぐブロッキングに効果があり、小粒径の無機材を添加すると発泡抑制剤の再凝集を防ぐという効果が得られる。
発泡抑制インキは上記材料を主成分とし、これに希釈溶剤を配合してインキ化される。
発泡抑制インキの主成分の組成を以下に示す。
バインダー(例えば、アクリル樹脂):20〜70重量%
発泡抑制剤(例えば、3−アミノ1.2.4−トリアゾール):20〜60重量%
無機材(例えば、シリカ):3〜30重量%
さらに、発泡抑制インキに任意の着色剤を意匠性に影響を及ぼさない範囲で少量配合し着色することが好ましく、発泡抑制層12と絵柄印刷層13との同調が容易となる。また、発泡抑制インキには、上記組成に加え、必要により添加剤を配合することもできる。
(絵柄印刷層)
絵柄印刷層13は建築物等の内装材や床材等の表面を化粧し意匠性や高級感を付与するために設けられるものであり、絵柄としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。また、単色ベタ柄であってもよい。絵柄印刷層13は有機顔料、無機顔料等の着色剤、バインダー(樹脂)、補助添加剤、溶剤等を含む印刷インキを使用してグラビア印刷法等の公知の方法で設けられる。絵柄印刷層13を形成する印刷インキのバインダーとしては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合体樹脂等の1種又は2種以上を混合して使用する。なお、絵柄模様層は発泡抑制インキの上に設けられていても、設けられていなくてもよい。
(隠蔽層)
隠蔽層は被転写シート20の被転写面を隠蔽するために適宜設けられるものであり、隠蔽性を有する印刷インキを用いて、通常ベタ柄で印刷することにより転写シート10、10’において絵柄印刷層13の上に形成される。バインダー、着色剤は絵柄印刷層13と同じ材料を使用することができる。
(被転写シートの裏打ち材)
裏打ち材21としては、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂を塗布することができ、その後、加熱発泡させて発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を形成するのに適した材料が使用される。
具体的には、繊維質基材、合成樹脂シートが用いられ、繊維質基材としては、紙基材やガラス不織布、有機繊維不織布等の各種不織布が用いられる。
紙基材の場合、上質紙、薄葉紙、パルプ主体のシートを難燃化処理した難燃紙、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質含有紙等が使用できる。繊維質基材の厚さとしては50〜300g/m2 程度、好ましくは、50〜200g/m2 程度である。
(被転写シートの発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層)
裏打ち材21に塗工して発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層22aを形成する発泡性ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば、塩化ビニル樹脂に発泡剤、発泡助剤を添加した発泡性ポリ塩化ビニル樹脂組成物ゾルが好ましい。また、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂組成物ゾルには、可塑剤、安定剤、充填剤、着色剤等が適宜配合される。
発泡剤としては、公知の発泡剤が使用できる。具体的にはアゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ系、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のヒドラジド系、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の有機系熱分解型発泡剤や炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系熱分解型発泡剤が挙げられる。
発泡助剤としては、発泡剤の分解促進、発泡開始温度の低下、発泡生成した気泡の均一化(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)等に作用するもので公知の発泡助剤が使用でき、例えば、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜燐酸塩、カルボン酸塩等が単独または2種以上混合して用いられる。
(透明な表面層)
透明な表面層30は、表面層を透して絵柄印刷層13が視認できる透明度を有すると共に、加熱発泡により形成される発泡ポリ塩化ビニル樹脂層22bの凹凸パターンに追従できる柔軟性を有しておれば特に限定されるものではない。透明な表面層30としては、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル系共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが使用できる。透明な表面層30は必須ではないが、耐擦傷性、耐摩耗性等の表面物性が向上するので設ける方が好ましい。
<転写シートの作製>
坪量50g/m2 の上質紙と合成樹脂層として厚さ20μmのポリプロピレン樹脂シートを貼り合わせて転写基材を作製した。
次に、ポリプロピレン樹脂シートの上にアクリル樹脂を主成分とする組成物をグラビア印刷法で塗工し、厚さ1μm(固形分)の剥離層を形成した。
前記剥離層上に発泡抑制インキによりグラビア印刷法によりパターンを形成し厚さ2μm(固形分)の発泡抑制層を形成し、さらに塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂とを混合したバインダーに着色顔料を含むインキを用いてグラビア印刷法により厚さ4μm(固形分)の絵柄印刷層を形成し、転写シートを作製した。なお、発泡抑制層の絵柄は線幅1.5mmの格子状パターンとした。
<化粧材の作製>
厚さ250μmの裏打ち材上に塩化ビニル樹脂に発泡剤、発泡助剤を含む塩化ビニル樹脂組成物を塗布し、厚さ450μmの発泡性塩化ビニル樹脂層を積層し、被転写シートを作製した。
被転写シートの発泡性塩化ビニル樹脂層の上に上記転写シートの絵柄印刷層側を重ねて温度200℃で加熱圧着した後、転写シートの転写基材を剥離し少なくとも発泡抑制層と絵柄印刷層を被転写シートに転写し、未発泡の化粧材を得た。
その後、未発泡の化粧材を220℃の加熱炉で60秒間加熱発泡させ、図3(ハ)に示すような表面に第1凹凸模様を備えた化粧材を得た。なお、発泡後の発泡塩化ビニル樹脂層の厚さは1600μm程度となるように設定した。
得られた化粧材について印刷パターン形成適性と発泡抑制効果について評価した。
<印刷パターン形成適性>
転写シートの発泡抑制層の線幅1.5mmの格子状パターンの印刷状態について目視検査を行い、格子状パターンに滲みが発生していないものを○、一部に滲みが認められたものを△、それ以外の滲みが認められたものを×として官能評価した。
<発泡抑制効果>
図3(ハ)に示すように発泡抑制インキによりパターンが形成された発泡抑制層12の凹部Bの深さd(ただし、透明な表面層30の厚さは除く。)と、発泡抑制インキによりパターンが形成されない部分の発泡塩化ビニル樹脂層22bの凸部Tの厚さh(ただし、透明な表面層30の厚さは除く。)より発泡抑制効果Eを次の式により算出し発泡抑制効果Eの値が25%以上であるものを○、15%以上25%未満を△、15%未満を×とした。
〔実施例1〜8〕
発泡抑制インキのバインダーであるアクリル樹脂、アミノトリアゾール系発泡剤である3−アミノ1.2.4−トリアゾール、無機材であるシリカ及び/又は沈降性硫酸バリウムの主成分の配合を表1、表2に示す通りとし、実施例1〜8に示す上記転写シートおよび化粧材を作製した。
〔比較例1〕
無機材であるシリカ及び沈降性硫酸バリウムを無添加とした発泡抑制インキを用いて発泡抑制層を形成した以外は、実施例1〜6と同様にして上記転写シートおよび化粧材を作製した。表2に比較例1に用いた発泡抑制インキの主成分の配合を示す。
Figure 2015193249
Figure 2015193249
上記で作製した実施例1〜8、および、比較例1について評価結果を表1、表2に纏めて示した。
10、10’ 転写シート
11 転写基材
11a 紙
11b 合成樹脂層
11c 剥離層
12 発泡抑制層
13 絵柄印刷層
14 隠蔽層
20 被転写シート
21 裏打ち材
22a 発泡性ポリ塩化ビニル樹脂層
22b 発泡ポリ塩化ビニル樹脂層
30 透明な表面層
40 未発泡化粧材
50 化粧材(発泡)
T 凸部
B 凹部
h 発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の凸部の厚さ(ただし、透明な表面層の厚さは除く。)
d 発泡ポリ塩化ビニル樹脂層の凹部の深さ(ただし、透明な表面層の厚さは除く。)

Claims (4)

  1. 転写基材上に、発泡抑制インキによりパターン状に形成された発泡抑制層と、絵柄印刷層を有する転写シートであって、
    前記発泡抑制層の前記発泡抑制インキが、下記の成分(1)〜(3)のいずれかを含むことを特徴とする転写シート。
    (1)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及びシリカ
    (2)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及び沈降性硫酸バリウム
    (3)アミノトリアゾール系発泡抑制剤、シリカ、及び沈降性硫酸バリウム
  2. 前記転写基材が、紙と、ポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂層が積層されてなり、前記合成樹脂層の表出面に剥離層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の転写シート。
  3. 裏打ち材上に、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層が積層され、前記発泡ポリ塩化ビニル樹脂層表出面に、発泡抑制インキによりパターン状に形成された発泡抑制層と、絵柄印刷層が積層されてなり、前記発泡抑制層の発泡抑制インキによりパターン状に形成された部分は発泡が抑制され、前記発泡抑制層の発泡抑制インキによりパターン状に形成されない部分は発泡が抑制されず、表面に第1凹凸模様を備えた化粧材であって、
    前記発泡抑制層の前記発泡抑制インキが、下記の成分(1)〜(3)のいずれかを含むことを特徴とする化粧材。
    (1)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及びシリカ
    (2)アミノトリアゾール系発泡抑制剤及び沈降性硫酸バリウム
    (3)アミノトリアゾール系発泡抑制剤、シリカ、及び沈降性硫酸バリウム
  4. 前記発泡抑制層及び前記絵柄印刷層の上を覆い、全面に透明な表面層が積層され、且つ、前記表面層の上に第2凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項3記載の化粧材。
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