JP2015184253A - 化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラム - Google Patents

化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】標準試料がない場合やデータベースに収録されていない場合であっても、包括的な規制対象であるカチノン系化合物の検出及び構造解析を行う。
【解決手段】目的試料に対し、EI法によるイオン化の際のα開裂で生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、ベンゼン部をプロダクトイオンとし、官能基R3の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定、付加している官能基R1、R2の質量によってm/zが相違する複数のアミン部をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定、及び、官能基R3の質量によってm/zが相違するベンゾイル部をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定、を繰り返す(S2-S3)。その3種のMS/MS測定で得られたクロマトグラム上のピーク位置の一致性からカチノン系化合物以外を除去し(S5-S7)、MRMトランジションやプロダクトイオンスペクトルのパターンから各官能基の種類を推定してカチノン系化合物の構造を推定する(S9-S12)。
【選択図】図2

Description

本発明は、MS/MS測定が可能である質量分析装置を用いたガスクロマトグラフ質量分析装置、そうしたガスクロマトグラフ質量分析装置によるMS/MS測定と同様の結果が得られる、インソース衝突誘起解離(In-source CID)とMS/MS測定とが可能な液体クロマトグラフ質量分析装置、又は、MSn測定が可能な液体クロマトグラフイオントラップ型質量分析装置などを用いて特定の化合物の構造を推定する化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラムに関する。
麻薬や覚醒剤等の違法薬物の蔓延は世界的な問題となっている。我が国を始め、各国において、覚醒剤や大麻に類似した作用を有する違法薬物(いわゆる脱法ドラッグ)は個別に、つまり化合物毎に規制されているが、近年、その化学構造の骨格の一部を変えたり官能基の種類を変えたりしたアナログ体が次々と出回っており、化合物を個別に規制することは困難な状況となっている。こうした状況から、日本、英国、米国の一部の州などでは、違法薬物を個別に規制するのではなく、化合物の主要骨格について規制を行う、いわゆる包括規制が実施されている。
従来一般に、こうした違法薬物や毒物などの同定は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)を用いて実施されている。具体的には、GC−MSやLC−MSを用いて目的試料を測定することで得られたマススペクトルを、既知の標準試料を実測することにより得られたマススペクトル或いは一般に入手可能なデータベースに収録されているマススペクトルと照合し、スペクトルパターンが一致する又は類似する化合物を探索することにより、目的試料中で検出された化合物を同定するのが一般的である(非特許文献1など参照)。
しかしながら、上述したような化学構造の一部の改変によって新たに出回り始めた違法薬物は、標準試料を入手することが困難である場合が多い。また、そうした薬物に対応するマススペクトルは既存のデータベースには収録されておらず、包括規制の対象となっている多数の化合物全てのマススペクトルを収録したデータベースを作成することも容易ではない。そのため、GC−MSやLC−MSを用いた上記従来方法によって、包括規制の対象となっている違法薬物全てを同定したりその構造を推定したりすることは、かなり困難である。
例えば日本の薬事法包括指定(非特許文献2参照)では、2−アミノ−1−フェニル−プロパン−1−オン(通称:カチノン)を基本骨格とするカチノン系化合物について、その基本骨格の三つの部位に結合する官能基の種類によって異なる495種の化合物が包括規制の対象となっている。図3はこのカチノン系化合物の化学構造である。詳しくは後述するが、R1は水素(H)のほか6種類の置換基のいずれかであり、合計7個のパターンを採り得る。R2は2種の置換基又は置換基なしのいずれかであり、合計3個のパターンを採り得る。R3は8種の置換基(結合する部位が異なる合計23パターン)又は置換基なしのいずれかであり、合計24個のパターンを採り得る。
こうしたカチノン系の多数の化合物に対し、従来法であるマススペクトルのパターン照合による同定手法では、それら化合物が個々にデータベースに登録されていない限り同定したり構造を推定したりすることはできない。
また、GC−MSでは、イオン化法として電子イオン化(EI)法が広く利用されているが、上述したカチノン系化合物に対しEI法を用いて取得したマススペクトルでは分子イオンは殆ど検出されず、フラグメントイオンもアミンのα開裂によるフラグメントイオンが検出されるのみでフラグメント情報も乏しい。そのため、仮に、同定しようとしている目的化合物がデータベースに登録されていたとしても、マススペクトルのパターンが類似しているフェネチルアミン系化合物と精度よく識別することは困難である。このように、フェネチルアミン系化合物との類似性がカチノン系化合物の同定を一層困難にしている。
こうした問題に対し、GC−MSによる分析結果と、核磁気共鳴(NMR)装置や液体クロマトグラフ飛行時間型質量分析装置(LC−TOFMS)などにより求まる高精度の質量情報とを組み合わせることによって構造推定を行う試みもなされている。しかしながら、こうした方法は複数の装置を用意する必要がある上に装置自体も高価であり、また測定作業やデータ解析作業に高度な経験を要する。
土橋均、「SHIMADZU GC/MS Technical Report No.6 「GC/MS法薬毒物データベース」を利用した血清中向精神薬の自動同定と半定量分析」、株式会社島津製作所、[検索日:平成26年3月12日]、インターネット<URL : http://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/support/lib/pdf/c146-0279.pdf> 「薬事法第2条第14項に規定する指定薬物及び同法第76条の4に規定する医療等の用途を定める省令の一部改正について(施行通知)」、厚生労働省、[検索日:平成26年3月17日]、インターネット<URL : http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/kanren-tuchi/yakuji/dl/h251213-01.pdf>
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、入手が容易で且つ比較的安価である装置を用いて、標準試料が存在しない又はデータベースにマススペクトル等の情報が収録されていないカチノン系化合物を確実に検出するとともにその化学構造を高い精度で推定することができる化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラムを提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置を用い、カチノンを基本骨格とするカチノン系化合物を検出するとともにその構造を推定する化合物分析方法であって、
a)分析目的である化合物を含む又はその可能性のある試料をクロマトグラフにより成分分離し、その分離された試料に対し、
a1)イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、該ベンゾイル部からカルボニル基が脱離したベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン環に結合している第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定と、イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部について前記第3の官能基の質量の相違に応じた複数種のベンゾイル部をプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定と、のいずれか一方又はその両方、及び、
a2)イオン化の際のα開裂によって生じるアミン部について、該アミン部のそれぞれ異なる位置に結合している第1の官能基と第2の官能基とを合わせた質量の相違に応じた複数種のアミン部をプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定、
である2種類又は3種類のMS/MS測定を繰り返し実行する測定実行ステップと、
b)前記MRM測定及び/又は前記第2のプロダクトイオンスキャン測定、並びに、前記第1のプロダクトイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータに基づいて作成される、その2種類又は3種類の測定にそれぞれ対応したクロマトグラムにおいて同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することによって、カチノン系化合物の存在を判断する化合物存在確認ステップと、
c)前記MRM測定及び/又は前記第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第3の官能基の種類を推定するとともに、前記第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定し、それら推定結果を併せて、前記化合物存在確認ステップにおいて存在が確認されたカチノン系化合物の構造を推定する構造推定ステップと、
を有することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る化合物分析装置は、上記本発明に係る化合物分析方法を実現するための装置であり MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置を含み、カチノンを基本骨格とするカチノン系化合物を検出するとともにその構造を推定する化合物分析装置であって、
a)分析目的である化合物を含む又はその可能性のある試料をクロマトグラフにより成分分離し、その分離された試料に対し、
a1)イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、該ベンゾイル部からカルボニル基が脱離したベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン環に結合している第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定と、イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部について前記第3の官能基の質量の相違に応じた複数種のベンゾイル部をプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定と、のいずれか一方又はその両方、及び、
a2)イオン化の際のα開裂によって生じるアミン部について、該アミン部のそれぞれ異なる位置に結合している第1の官能基と第2の官能基とを合わせた質量の相違に応じた複数種のアミン部をプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定、
である2種類又は3種類のMS/MS測定を繰り返し実行するようにクロマトグラフ質量分析装置を動作させる分析制御部と、
b)前記MRM測定及び/又は前記第2のプロダクトイオンスキャン測定、並びに、前記第1のプロダクトイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータを収集し、該データに基づいてその2種類又は3種類のMS/MS測定にそれぞれ対応したクロマトグラムを作成し、それらクロマトグラム上で同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することによって、カチノン系化合物の存在を判断する化合物存在確認部と、
c)前記MRM測定及び/又は前記第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第3の官能基の種類を推定するとともに、前記第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定し、それら推定結果を併せて、前記化合物存在確認部において存在が確認されたカチノン系化合物の構造を推定する構造推定部と、
を備えることを特徴としている。
さらにまた、上記課題を解決するために成された本発明に係る化合物分析用プログラムは上記本発明に係る化合物分析方法を実現するためのコンピュータ用プログラムであり、カチノンを基本骨格とするカチノン系化合物を検出するとともにその構造を推定するために、MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置の動作を制御するとともに該装置で得られたデータを収集して処理するべく、コンピュータ上で動作する化合物分析用プログラムであって、
a)分析目的である化合物を含む又はその可能性のある試料をクロマトグラフにより成分分離し、その分離された試料に対し、
a1)イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、該ベンゾイル部からカルボニル基が脱離したベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン環に結合している第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定と、イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部について前記第3の官能基の質量の相違に応じた複数種のベンゾイル部をプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定と、のいずれか一方又はその両方、及び、
a2)イオン化の際のα開裂によって生じるアミン部について、該アミン部のそれぞれ異なる位置に結合している第1の官能基と第2の官能基とを合わせた質量の相違に応じた複数種のアミン部をプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定、
である2種類又は3種類のMS/MS測定を繰り返し実行するようにクロマトグラフ質量分析装置を動作させる分析制御機能部と、
b)前記MRM測定及び/又は前記第2のプロダクトイオンスキャン測定、並びに、前記第1のプロダクトイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータに基づいてその2種類又は3種類のMS/MS測定にそれぞれ対応したクロマトグラムを作成し、それらクロマトグラム上で同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することによって、カチノン系化合物の存在を判断する化合物存在確認機能部と、
c)前記MRM測定及び/又は前記第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第3の官能基の種類を推定するとともに、前記第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定し、それら推定結果を併せて、前記化合物存在確認機能部の処理により存在が確認されたカチノン系化合物の構造を推定する構造推定機能部と、
を有することを特徴としている。
本発明に係る化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラムにおいて、クロマトグラフ質量分析装置は、MS/MS測定が可能であるのみならずイオン化の際にα開裂が生じるものである必要がある。そこで典型的には、ガスクロマトグラフとEIイオン源を備えたタンデム四重極型質量分析装置(三連四重極型質量分析装置とも呼ばれる)とを組み合わせたGC−MS/MS、これと同様のMS/MS測定が可能であるGC−TOF/MS、インソース衝突誘起解離によってα開裂の生起が可能であるLC−MS/MS、或いは、MSn測定が可能であるイオントラップ型LC−MS/MSなどを用いるとよい。
本発明に係る化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラムにおいては、第1乃至第3の官能基が、少なくとも非特許文献2に記載されている官能基(置換基)を含むようにすることで、該文献で指定されているカチノン系化合物を包括的に検出することが可能である。
具体的には、第3の官能基は、少なくとも、メチル基、エチル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、の8種類のいずれか、又は官能基が結合しない状態(つまりは水素原子が結合している状態)の9種類である。また、第2の官能基は、少なくとも、メチル基、エチル基の2種類のいずれか、又は官能基が結合しない状態(つまりは水素原子が結合している状態)の3種類である。第1の官能基は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、1−ピロリジニル基の6種類のいずれか、又は官能基が結合しない状態(つまりはアミノ基が結合している状態)の7種類である。
本発明に係る化合物分析方法では、試料中の化合物が質量分析装置に導入されてイオン化される際に、分子イオンが開裂を生じて生成されたイオンをMS/MS測定のプリカーサイオンとする。具体的には、カチノン、即ち2−アミノ−1−フェニル−プロパン−1−オンを基本骨格として有するカチノン系化合物がEI法によりイオン化されると、そのイオン化の際にα開裂が起こり、カルボキシル基やベンゼン環を含むベンゾイル部と、アミン部とに分かれてそれぞれイオンが生成される。
このとき、ベンゾイル部は第3の官能基のみを含む。そこで、第3の官能基を含むベンゾイル部をプリカーサイオンとし、同じく第3の官能基を含むベンゼンをプロダクトイオンとして、第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM(多重反応イオンモニタリング)測定を実施すると、ベンゾイル部及びベンゼン部に共に含まれる第3の官能基の種類に応じたMRMトランジションにおいて元の化合物由来のイオンが検出され、それ以外のMRMトランジションではイオンは不検出である。したがって、例えば各MRMトランジションにおけるマスクロマトグラムを作成し、いずれのクロマトグラムにピークが現れるかを調べれば、第3の官能基の種類を推測することができる。また、フェネチルアミン骨格を有する化合物はいずれのMRMトランジションでも検出されないので、従来法では識別が困難であるカチノン系化合物とフェネチルアミン系化合物とを識別することもできる。
一方、第2のプロダクトイオンスキャン測定では、質量電荷比が互いに異なる、9種類の官能基をそれぞれ含むベンゾイル部由来のイオンをプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を実施する。各プリカーサイオンに対しマススペクトル(プロダクトイオンスペクトル)を作成すると、官能基の種類によって異なるマススペクトルパターンが現れるため、このパターンから第3の官能基の種類を推定することができる。また、一部の官能基については、結合する部位が異なる位置異性体によってマススペクトルパターンに明確な相違が現れるので、第3の官能基の種類の推定だけでなく結合部位も推定することができる。
MRM測定と第2のプロダクトイオンスキャン測定とはいずれも第3の官能基の種類の推定に利用されるため、理論的には、いずれか一方の測定を実施すれば十分である。ただし、通常、ベンゾイル部を対象とするプロダクトイオンスキャン測定ではプロダクトイオンの検出感度があまり高くないため、目的化合物がごく微量である場合にマススペクトルパターンの判定が難しい場合がある。一方で、相対的に高感度の検出が可能であるMRM測定だけでは、第3の官能基の種類が推定できても位置異性体の識別はできない。こうしたことから、好ましくは、MRM測定と第2のプロダクトイオンスキャン測定との両方を実施し、それらの結果を併せて利用するほうがよい。
α開裂により生じる他の一方のアミン部は二つの官能基を含む。非特許文献2に記載されている範囲では、第1の官能基は7種類、第2の官能基は3種類であり、その組み合わせは21種類となるが、両官能基の質量電荷比の和で考えると10種類である。そこで、第1のプロダクトイオンスキャン測定では、両官能基の質量電荷比の和が互いに異なる、10種類の官能基の組み合わせをそれぞれ含むアミン部由来のイオンをプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を実施する。各プリカーサイオンに対しマススペクトル(プロダクトイオンスペクトル)を作成すると、官能基の種類によって異なるマススペクトルパターンが現れるため、このパターンから第1及び第2の官能基の種類を推定することができる。
本発明に係る化合物分析装置により実現される本発明に係る化合物分析方法において、測定実行ステップでは、例えばクロマトグラフで分離された化合物を含む試料に対して上記のように予め定められた2種類又は3種類のMS/MS測定を実行する。上述したように、好ましくは3種類のMS/MS測定を実行するのがよい。目的とするカチノン系化合物が試料に含まれる場合、MRM測定における或る一つのMRMトランジションに対応して得られるマスクロマトグラム、第2のプロダクトイオンスキャン測定において或る一つのプリカーサイオンに対応して得られるトータルイオンクロマトグラム、及び、第1のプロダクトイオンスキャン測定において或る一つのプリカーサイオンに対応して得られるトータルイオンクロマトグラムにおいて、同一保持時間にピークが現れる。そこで、化合物存在確認ステップでは、上記複数のクロマトグラム上で同じ保持時間にピークが存在するか否かを判定し、ピークが検出されればカチノン系化合物が存在するか可能性が高いと判断する。逆に、同一保持時間にピークが現れなければ、少なくともいずれかの官能基が欠けていることを意味するから、カチノン系化合物ではないものと判断する。
カチノン系化合物である可能性が高いと判定された場合、構造推定ステップにおいて、MRM測定のいずれのMRMトランジションでピークが検出されたのかによって及び/又は第2のプロダクトイオンスキャン測定で得られたマススペクトルのピークパターンに基づいて第3の官能基の種類を推定する。また、第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたマススペクトルのピークパターンピークに基づいて第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定する。そして、それら推定結果を併せて、存在が確認されたカチノン系化合物の化学構造を推定する。
なお、本発明に係る化合物分析方法では、3種類の官能基の組み合わせが異なる多数のカチノン系化合物の包括的検出や構造推定が可能であるものの、一部のカチノン系化合物については既存の化合物データベースにマススペクトルが収録されており、そうしたデータベース検索により高い確度でヒットする場合にはその結果を利用したほうが効率的である。また、データベース検索を用いることで、カチノン系化合物以外の化合物の同定や構造解析も可能である。
そこで本発明に係る化合物分析方法において、好ましくは、
上記測定実行ステップでは、試料由来のイオンに対してMS/MS測定ではない通常のスキャン測定を前記2種類又は3種類のMS/MS測定と併せて繰り返し実行し、
上記通常のスキャン測定により得られたデータに基づいて作成されるマススペクトルを化合物データベースと照合することにより化合物を同定するデータベース利用化合物同定ステップをさらに有し、
上記構造推定ステップでは、上記データベース利用化合物同定ステップで同定されなかった未知の化合物について構造推定を実施するとよい。
ここで「MS/MS測定ではない通常のスキャン測定」とは、例えばタンデム四重極型質量分析装置であれば、コリジョンセル内に衝突誘起解離ガスを導入することなく、前段又は後段の四重極マスフィルタのいずれかで質量走査を行うスキャン測定のことである。
上記好ましい化合物分析方法によれば、化合物データベースに収録されている化合物の少なくとも一部についてはマススペクトルに基づくデータベース検索によって同定されるので、カチノン系化合物の同定や構造推定を効率的に行うことができる。また、データベースに収録されているカチノン系化合物以外の化合物も同定することができる。
本発明に係る化合物分析方法、化合物分析装置、及び化合物分析用プログラムによれば、標準試料が入手できず、またマススペクトル等を照合するためのデータベースが整備されていない場合であっても、ガスクロマトグラフ−タンデム四重極型質量分析装置のような比較的廉価な装置を利用して、包括規制の対象であるカチノン系化合物を包括的に検出し、その化学構造を推定することができる。また、本発明に係る化合物分析方法に利用される装置自体は入手が容易であり、測定のための各種設定や操作なども簡便であるので、一部の限られた研究者のみならず、様々な機関や組織などにおいて広く精度のよい分析が可能である。
本発明に係る化合物分析方法を実施する化合物分析装置の一実施例の概略構成図。 本実施例の化合物分析装置におけるカチノン系化合物構造推定処理の手順を示すフローチャート。 構造推定対象であるカチノン系化合物の化学構造を示す図。 MRM測定による検出対象断片の説明図。 MRM測定のMRMトランジションと推定対象である官能基R3の種類との対応関係を示す図。 各MRMトランジションに対して検出されるカチノン系化合物の例と実測マスクロマトグラムを示す図。 各MRMトランジションに対して検出されるカチノン系化合物の例と実測マスクロマトグラムを示す図。 カチノン系化合物とフェネチルアミン系化合物の例と実測マスクロマトグラムを示す図。 第1プロダクトイオンスキャン測定による検出対象断片の説明図。 第1プロダクトイオンスキャン測定のプリカーサイオンの質量電荷比と推定対象である官能基R1、R2との対応関係を示す図。 第1プロダクトイオンスキャン測定において各プリカーサイオン質量電荷比に対して検出されるカチノン系化合物の例と実測マススペクトルを示す図。 第1プロダクトイオンスキャン測定において各プリカーサイオン質量電荷比に対して検出されるカチノン系化合物の例と実測マススペクトルを示す図。 第1プロダクトイオンスキャン測定において各プリカーサイオン質量電荷比に対して検出されるカチノン系化合物の例と実測マススペクトルを示す図。 第2プロダクトイオンスキャン測定による検出対象断片の説明図。 第2プロダクトイオンスキャン測定のプリカーサイオンの質量電荷比と推定対象である官能基R3の種類との対応関係を示す図。 第2プロダクトイオンスキャン測定において各プリカーサイオン質量電荷比に対し検出されるカチノン系化合物の例と実測マススペクトルを示す図。 第2プロダクトイオンスキャン測定において各プリカーサイオン質量電荷比に対し検出されるカチノン系化合物の例と実測マススペクトルを示す図。 第2プロダクトイオンスキャン測定において各プリカーサイオン質量電荷比に対し検出されるカチノン系化合物の例と実測マススペクトルを示す図。
本発明に係る化合物分析方法を実施する化合物分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例による化合物分析装置の概略構成図である。
図1に示すように、この化合物分析装置は、GC部1とMS/MS部2とを含むGC−MS/MSシステムである。GC部1は、微量の液体試料を気化させる試料気化室10と、試料成分を時間方向に分離するカラム12と、カラム12を温調するカラムオーブン11とを備える。一方、MS/MS部2は、図示しない真空ポンプにより真空排気される分析室20の内部に、測定対象である試料を電子イオン化(EI)法によりイオン化するイオン源21と、それぞれ4本のロッド電極から成る前段四重極マスフィルタ22及び後段四重極マスフィルタ25と、内部に多重極型イオンガイド24が配設されたコリジョンセル23と、イオンを検出してイオン量に応じた検出信号を出力する検出器26と、を備える。GC部1とMS/MS部2との間には、カラム12から溶出する成分を含む試料ガスを円滑にイオン源21に導入するために温調を行うインターフェイス部3が設けられている。
分析制御部33は中央制御部34の指示の下に、GC部1及びMS/MS部2の動作をそれぞれ制御する機能を有する。入力部36及び表示部37が接続された中央制御部34は、これらを通したユーザインターフェイスのほか、システム全体の統括的な制御を担う。この中央制御部34に含まれる記憶装置には、特定の化合物について包括的な検出及び構造推定処理を行うための特徴的な制御を実施する特定化合物構造推定用制御プログラム35が格納されており、CPU等がこのプログラム35に従って分析制御部33を通して各部を制御することで、カチノン系化合物等の特定の化合物を包括的に検出するために必要な測定やデータ処理が実行される。また、その際に、検出器26による検出信号(イオン強度信号)はデータ処理部30に入力され、このデータ処理部30に含まれる特定化合物構造推定用データ処理部31は、化合物データベース32に保存されている情報を利用したデータ処理を実行することにより、試料に含まれる特定化合物を包括的に検出するとともに構造推定を行う。
なお、中央制御部34やデータ処理部30はパーソナルコンピュータをハードウエアとして、該コンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより具現化されるものとすることができる。この制御・処理ソフトウエアが本発明に係る化合物分析用プログラムに相当する。この場合、入力部36はキーボードやポインティングデバイス(マウス等)であり、表示部37はディスプレイモニタである。
本実施例の化合物分析装置における基本的な測定動作を概略的に説明する。
試料気化室10内に少量の試料溶液が滴下されると、該試料溶液は短時間で気化し、該試料に含まれる各種化合物はキャリアガス(例えばヘリウム)に乗ってカラム12中に送り込まれる。カラム12は、予め決められた温度プロファイルに従って昇温されるカラムオーブン11により加熱される。このカラム12を通過する間に、試料中の各化合物はそれぞれ異なる時間だけ遅れてカラム12出口に達し、カラム12から出た試料ガスはインターフェイス部3を経てイオン源21に導入される。イオン源21は熱電子を生成するフィラメントを備え、試料ガス中の化合物は熱電子に接触することでイオン化される。このとき、化合物由来のイオンの結合の一部が切断され(つまりは開裂が生じ)、一つの化合物由来の様々なフラグメントイオンが生成される。
分析制御部33により、前段四重極マスフィルタ22及び後段四重極マスフィルタ25の各ロッド電極にはそれぞれ、特定の質量電荷比を有するイオンを通過させるような電圧が印加される。これにより、化合物由来の各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンが前段四重極マスフィルタ22を通り抜けてコリジョンセル23に導入される。コリジョンセル23内には外部から衝突誘起解離(CID)ガスが導入されており、コリジョンセル23内に導入されたイオンはこのガスに接触して解離する。
この解離により生じた各種プロダクトイオンはイオンガイド24により収束されつつ後段四重極マスフィルタ25に導入され、特定の質量電荷比を有するプロダクトイオンが後段四重極マスフィルタ25を通り抜けて検出器26に到達する。検出器26による検出信号はデータ処理部30に入力され、データ処理部30ではマススペクトルやマスクロマトグラム等が作成されるとともに、後述するような化合物構造推定処理などが実施される。
一般的なGC−MS/MSと同様に、本実施例の装置でも、MS/MS部2におけるMS/MS測定のモードとして、MRM測定、プロダクトイオンスキャン測定、プリカーサイオンスキャン測定、ニュートラルロススキャン測定が用意されている。また、コリジョンセル23内でのイオンの解離を伴わない通常の測定として、Q1スキャン測定、Q3スキャン測定、Q1−SIM測定、Q3−SIM測定などの測定モードが用意されている。以下に説明する包括的化合物構造推定処理では、MS/MS測定としてMRM測定及びプロダクトイオンスキャン測定を使用し、通常の質量分析測定としてQ3スキャン測定を使用する。
以下、本実施例の化合物分析装置を用いて実施される、カチノン系化合物の包括的検出及び構造推定処理について詳しく説明する。図2はこの処理の手順を示すフローチャートである。
すでに述べたように、2−アミノ−1−フェニル−プロパン−1−オン、即ちカチノンを基本骨格として持つカチノン系化合物は図3に示すような化学構造を有する。この基本骨格の2位の位置には官能基R1を含むアミノ基が結合し、3位の位置には官能基R2が結合し、ベンゼン環には官能基R3が結合し得る。非特許文献2に記載の施行通知には、指定薬物に包含される化合物における官能基R1、R2、R3の種類が示されている。このため、このカチノン系化合物を包括的に検出するとともにその構造を推定して化合物を特定するには、三つの官能基R1、R2、R3の種類を特定することが必要となる。
よく知られているように、カチノン系化合物をEI法でイオン化した場合、α開裂が生じ、基本骨格の1位と2位との間の結合が切れる。このα開裂によって生成されるベンゾイル部は三つの官能基R1、R2、R3のうちの一つ、つまり官能基R3のみを含む。一方、α開裂によって生成されるもう一つのアミン部は三つの官能基R1、R2、R3のうちの二つ、つまり官能基R1、R2を含む。そこで、本実施例の化合物分析装置では、α開裂によって生じるイオンをプリカーサイオンとしたMS/MS測定を利用することで、三つの官能基の種類を特定する。具体的には、以下のような3種類のMS/MS測定を実施する。
(1)第1のMS/MS測定:MRM測定
図4に示すように、イオン化の際のα開裂によって生成されるベンゾイル部は官能基R3のみを含む。また、同図に示すように、ベンゾイル部をターゲットとした衝突誘起解離を行うと、官能基R3は残ったままカルボニル基が脱離したベンゼン部が観測される。この場合、ベンゾイル部とベンゼン部はいずれも官能基R3を含み、その官能基R3の種類によってベンゾイル部、ベンゼン部ともに質量電荷比が相違する。そこで、ベンゾイル部をプリカーサイオン、ベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン部のベンゼン環に付加している9種類の官能基R3の質量にそれぞれ対応するようにMRMトランジションを設定したMRM測定を第1のMS/MS測定とした。
このMRM測定におけるMRMトランジションと官能基R3の種類との関係を図5に示す。即ち、このような9種類のMRMトランジションのいずれかにおいてイオンが観測されれば、そのMRMトランジションに対応する官能基が官能基R3である可能性が高いといえる。
(2)第2のMS/MS測定:第1プロダクトイオンスキャン測定
α開裂によって生成されるアミン部は官能基R1、R2を含む。官能基R1、R2の組み合わせによってアミン部の質量は異なるが、官能基R1、R2の質量を合計した質量は10種類のみである。つまり、アミン部の質量が同一であっても官能基R1、R2が相違する構造異性体が存在するが、その構造によって、衝突誘起解離の際の解離の態様は異なる。解離の態様が相違すれば、当然のことながら、プロダクトイオンのマススペクトルにおいてピークの現れ方、つまりピークパターンが異なる筈である。そこで、α開裂によって生じたアミン部において官能基R1、R2の組み合わせによって異なる10種類の質量電荷比をそれぞれプリカーサイオンに設定したプロダクトイオンスキャン測定を第2のMS/MS測定とした。このときのプリカーサイオンの質量電荷比と官能基R1、R2との関係を図10に示す。
(3)第3のMS/MS測定:第2プロダクトイオンスキャン測定
上記MRM測定によって官能基R3の種類は推定可能であるものの、MRM測定結果からでは、ベンゼン環における官能基R3の結合位置を推定するための情報は得られない。こうした情報を得るためにはプロダクトイオンスペクトルのピークパターンが有用である。そこで、α開裂によって生じたベンゾイル部において官能基R3の種類によって異なる9種類の質量電荷比をそれぞれプリカーサイオンに設定したプロダクトイオンスキャン測定を第3のMS/MS測定とした。このときのプリカーサイオンの質量電荷比と官能基R3との関係を図15に示す。
上述した3種類のMS/MS測定の測定条件(測定モードや検出対象の質量電荷比など)は予め決まっているので、そうした測定条件は特定化合物構造推定用制御プログラム35に格納しておけばよい。
或る試料中のカチノン系化合物の一斉検出及び構造推定を行う際に、測定者はまず入力部36から測定条件を設定する(ステップS1)。MS/MS測定の基本的な測定条件は決まっているので、それ以外の測定条件、例えば、GC分離条件やスキャン測定の際のスキャンスピード、コリジョンエネルギなどを必要に応じて設定すればよい。こうした測定条件の設定は全てデフォルト値を用いる或いは決まったメソッドファイルを用いることにより省略することができる。
測定者の指示により測定が開始されると、中央制御部34からの指示に基づき分析制御部33はGC部1及びMS/MS部2を制御し、測定開始時間から測定終了時間までの間、上述した9種類のMRMトランジション(図5参照)を含むMRM測定、10種類のプリカーサイオン質量電荷比(図10参照)に対する第1プロダクトイオンスキャン測定、及び、9種類のプリカーサイオン質量電荷比(図15参照)に対する第2プロダクトイオンスキャン測定、を繰り返し実行し、それぞれデータを収集する(ステップS2)。それぞれの測定によって得られたデータはデータ処理部30内のメモリに格納される。測定終了時間になると(ステップS3でYes)、測定を終了し、引き続いて特定化合物構造推定用データ処理部31がデータ処理を実行する(ステップS4)。
特定化合物構造推定用データ処理部31ではまず、MRM測定のMRMトランジション毎にマスクロマトグラムを作成し、また第1プロダクトイオンスキャン測定及び第2プロダクトイオンスキャン測定のプリカーサイオン毎に、プロダクトイオン強度を積算したトータルイオンクロマトグラムを作成する(ステップS5)。そして、それらクロマトグラム上でそれぞれピーク検出を行い、MRM測定で得られる9個のマスクロマトグラムのうちのいずれか一つ、第1のプロダクトイオンスキャン測定で得られる10個のトータルイオンクロマトグラムのうちのいずれか一つ、及び、第2のプロダクトイオンスキャン測定で得られる9個のトータルイオンクロマトグラムのうちのいずれか一つ、の三つのクロマトグラムにおいて、同じ保持時間に現れるピークを探索する(ステップS6)。
その三つのクロマトグラムにおいて同じ保持時間に出現するピークが存在しない場合、その保持時間に現れた化合物は包括規制対象であるカチノン系化合物が持っている部分構造が欠けていることを意味している。そこで、同一保持時間に共通のピークの存在が確認されなかった(ステップS7でNoである)場合には、少なくとも目的とするカチノン系化合物ではないと判断する(ステップS8)。
一方、同一保持時間に共通のピークの存在が確認された(ステップS7でYesである)場合には、目的とするカチノン系化合物である可能性が高い。そこで、MRM測定で得られた9個のマスクロマトグラムのうち上記共通のピークが観測されたMRMトランジションから官能基R3の種類を推定する(ステップS9)。次に、第1のプロダクトイオンスキャン測定で得られた10個のマススペクトルのうち、上記共通のピークが観測されたプリカーサイオン質量電荷比に対するマススペクトルのピークパターンから官能基R1、R2の種類を推定する(ステップS10)。さらに、第2のプロダクトイオンスキャン測定で得られた9個のマススペクトルのうち、上記共通のピークが観測されたプリカーサイオン質量電荷比に対するマススペクトルのピークパターンから官能基R3の種類を推定する(ステップS11)。
そうして推定された官能基R1、R2、R3の種類や、官能基R3が結合している位置などの情報に基づいて、ステップS7で検出されたピークに対応する化合物がカチノン系化合物であるか否かの最終判断を行い、カチノン系化合物である場合にはその化学構造を推定する(ステップS12)。そして、カチノン系化合物である場合には推定された構造式や官能基の種類などの分析結果を、またカチノン系化合物でなかった場合にはその旨を表示部37に表示して測定者に提示する(ステップS13)。なお、検出された化合物が既知の化合物であることが判明した場合には、その化合物名なども併せて表示するとよい。
なお、上に説明した処理では、試料中の化合物の構造推定に際して化合物データベース32を使用していないが、化合物データベース32にマススペクトルが収録されている既知のカチノン系化合物については、従来行われているような単純なデータベース検索を用いたほうが効率的に化合物を特定できる場合がある。
そこで、次のように手順を変更してもよい。即ち、上述したMRM測定やプロダクトイオンスキャン測定とともに通常のスキャン測定(例えばQ3スキャン測定)を繰り返し実行し、マススペクトルを順次取得する。そして、そのスキャン測定で得られたデータに基づくトータルイオンクロマトグラム上で検出されたピークの出現位置のマススペクトルを化合物データベース32中のカチノン系化合物のマススペクトルとパターン照合することで、第1段階の化合物の同定処理を実行する。マススペクトルパターンが一致している化合物がヒットすればカチノン系化合物である可能性が高いものの、仮にカチノン系化合物がヒットしたとしても、上述したようにフェネチルアミン系化合物と識別が難しい場合があるから、そのときには、上記MRM測定の結果を利用してフェネチルアミン系化合物であるかカチノン系化合物であるかを識別すればよい。
上記第1段階の化合物の同定処理に引き続き、上述したステップS5以降の構造推定処理を実施することで、第1段階の化合物同定処理で特定できなかったカチノン系化合物の構造推定を行うようにする。これにより、カチノン系化合物の同定効率が向上する。また、化合物データベース32にカチノン系化合物以外の化合物を収録しておくことで、カチノン系化合物以外の様々な薬物や毒物を同定したりその化学構造を特定したりすることができる。
上述した実施例のカチノン系化合物分析装置による実測例を説明し、該装置による手法がカチノン系化合物の包括的検出や構造解析に有用であることを示す。
測定に使用した装置及び分析条件は以下のとおりである。
・GC−MS/MS:島津製作所製 GCMS-TQ8030
・カラム:レステック(Restek)社製 Rxi-5Sil MS(長さ30m、内径0.25mm、df=0.25μm)
・GC部気化室温度:260℃
・GC部カラムオーブン温度:60℃(2分)→320℃(10分)、ただし昇温10℃/分
・GC部キャリアガス制御:45.6cm/秒線速度一定
・MS部インターフェイス温度:280℃
・MS部イオン源温度:200℃
・MS部測定モード:Q3スキャン/MRM/プロダクトイオンスキャン
・コリジョンガス:Ar(200KPa)
図6及び図7は、α開裂により生じたベンゾイル部の官能基R3がそれぞれ異なる様々なカチノン系化合物を上述したMRMトランジションでMRM測定して得られたマスクロマトグラムの実測例である。図6(a)は、官能基R3が水素(H)であるブフェドロン及びペンテドロンをm/z:105>77のMRMトランジションで測定した結果である。図6(b)は、官能基R3がメチル(CH3)である4−メチルメトカチノン及び4−メチルブフェドロンをm/z:119>91のMRMトランジションで測定した結果である。図6(c)は、官能基R3がメトキシ(OCH3)である4−メトキシエトカチノン及び4−メトキシメトカチノンをm/z:135>107のMRMトランジションで測定した結果である。図7(a)は、官能基R3がエチル(CH2CH3)である4−エチルメトカチノン及び3,4−ジメチルメトカチノンをm/z:133>105のMRMトランジションで測定した結果である。図7(b)は、官能基R3がフッ素(F)である2−フルオロメトカチノン及び4−フルオロメトカチノンをm/z:123>95であるMRMトランジションで測定した結果である。図7(c)は、官能基R3がメチレンジオキシ(OCH2O)であるメチロン及びbk-BDBをm/z:149>121のMRMトランジションで測定した結果である。
図6及び図7から、アミン部の官能基R1、R2の種類とは無関係に、官能基R3の種類に対応したMRMトランジションにおいてクロマトグラム上にピークが観測されており、各化合物が検出されていることが分かる。このように、いずれのMRMトランジションにおいてクロマトグラムピークが観測されたのかを判定することで、官能基R3の種類の識別が可能である。
図8は、カチノン骨格を持つ4−メトキシメトカチノンとフェネチルアミン骨格を持つ以外は4−メトキシメトカチノンと酷似した構造である4−メトキシメタンフェタミンを、m/z:135>107のMRMトランジションでMRM測定して得られたマスクロマトグラムの実測例である。4−メトキシメトカチノンはカチノン骨格を有するためクロマトグラムピークが観測されているが、フェネチルアミン骨格を持つ4−メトキシメタンフェタミンはカルボニル基を有さないためクロマトグラムピークは観測されていない。従来のEI−スキャンのマススペクトルでは4−メトキシメトカチノンと4−メトキシメタンフェタミンとの識別は困難であるが、本方法では、所定のMRMトランジションに対応するマスクロマトグラム上のピークの有無によって、フェネチルアミン系化合物の識別も簡単に行える。
なお、ここで想定している上記9種類以外の官能基R3を持つアナログ体が、将来、違法薬物として流通したとしても、官能基R3の質量を考慮した別のMRMトランジションをMRM測定に追加することにより、そうした官能基R3を持つアナログ体を検出することが可能である。
図11乃至図13は、α開裂により生じたアミン部の官能基R1、R2の組み合わせが異なる様々なカチノン系化合物に対し上述した第1のプロダクトイオンスキャン測定を行って得られたマススペクトル(プロダクトイオンスペクトル)の実測例である。
図11(a)は、4−エチルカチノンに対し質量電荷比m/z:44をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図11(b)は、bk−BDB及びメトカチノンに対し質量電荷比m/z:58をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図11(c)は、デスメチルペンチロン、ブフェドロン、エトカチノン、及び、4−エチル−N,N−ジメチルカチノンに対し質量電荷比m/z:72をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。
図12(a)は、ペンテドロン、N−エチルブフェドロン、及びbk−MDDMAに対し質量電荷比m/z:86をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図12(b)は、N−エチルペンテドロン及びN,N−ジメチルペンチロンに対し質量電荷比m/z:100をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。
図13(a)は、α−PPPに対し質量電荷比m/z:98をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図13(b)は、α−PBPに対し質量電荷比m/z:112をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図13(c)は、α−PVPに対し質量電荷比m/z:126をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。
例えば図11(c)に示した4種類の化合物はα開裂したアミン部の質量が同一である構造異性体であるが、プロダクトイオンスキャン測定によるマススペクトルのパターンは全て異なっていることが分かる。他のプリカーサイオン質量電荷比においても同様である。このことから、いずれのプリカーサイオン質量電荷比におけるプロダクトイオンスキャン測定でイオンが検出されるのかを調べるとともに、そのマススペクトルのパターンを調べることで、α開裂したアミン部に含まれる官能基R1、R2の種類を推定し、そのアミン部の構造を推定することができることが分かる。
なお、ここで想定している上記10種類以外の官能基R1、R2の組み合わせを持つアナログ体が、将来、違法薬物として流通したとしても、官能基R1、R2の組み合わせの質量を考慮した別のプリカーサイオン質量電荷比を対象とするプロダクトイオンスキャン測定を追加してマススペクトル情報を収集することにより、そうした官能基R1、R2を持つアナログ体を検出することが可能である。
図16乃至図18は、α開裂により生じたベンゾイル部の官能基R3が異なる様々なカチノン系化合物に対し上述した第2のプロダクトイオンスキャン測定を行って得られたマススペクトル(プロダクトイオンスペクトル)の実測例である。
図16(a)は、ブフェドロンに対し質量電荷比m/z:105をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図16(b)は、4−メチルメトカチノンに対し質量電荷比m/z:119をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図16(c)は、4−メトキシエトカチノンに対し質量電荷比m/z:135をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。
図17は、2−エチルメトカチノン、3−エチルメトカチノン、4−エチルメトカチノン、及び3,4−ジメチルメトカチノンに対し質量電荷比m/z:133をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。
図18(a)は、2−フルオロメトカチノン、3−フルオロメトカチノン、及び4−フルオロメトカチノンに対し質量電荷比m/z:123をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。図18(b)は、メチロンに対し質量電荷比m/z:149をプリカーサイオンとしたプロダクトイオンスキャン測定を行って得られた結果である。
例えば図17に示した4種類の化合物はα開裂したベンゾイル部の質量が同一である位置異性体であるが、プロダクトイオンスキャン測定によるマススペクトルのパターンは異なっていることが分かる。他のプリカーサイオン質量電荷比においても同様である。このことから、いずれのプリカーサイオン質量電荷比におけるプロダクトイオンスキャン測定でイオンが検出されるのかを調べるとともに、そのマススペクトルのパターンを調べることで、α開裂したベンゾイル部に含まれる官能基R3の種類を推定し、その部分構造を推定することができることが分かる。なお、官能基R3がハロゲンであるフッ素や塩素であるの場合には、位置異性体のマススペクトルパターンには大きな差異がないため、位置異性体の識別は難しい。しかしながら、プロダクトイオンピークが検出されるプリカーサイオンの質量電荷比を調べることによって、少なくとも官能基R3の種類の推定は可能である。
なお、ここで想定している上記9種類以外の官能基R3を持つアナログ体が、将来、違法薬物として流通したとしても、官能基R3の質量を考慮した別のプリカーサイオン質量電荷比を対象とするプロダクトイオンスキャン測定を追加してマススペクトル情報を収集することにより、そうした官能基R3を持つアナログ体を検出することが可能である。
以上の実測結果から、本発明に係る化合物分析装置によれば、GC−MS/MSを用いた測定結果から、カチノンを基本骨格とするカチノン系違法薬物の包括的な検出とその構造の推定が可能であることが検証できた。
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で、適宜変更や修正を行えることは明らかである。
例えば上記実施例では、試料中の化合物を分離するためにガスクロマトグラフを用いたが、液体クロマトグラフを用いてもよい。ただし、液体クロマトグラフのカラムから溶出する試料液中の化合物をイオン化するためには一般的に大気圧イオン化法が用いられ、大気圧イオン化法ではイオン化の段階でα開裂は生じにくい。そこで、EI法による開裂と同様のフラグメントイオンが得られるようにインソースCIDの機能を有するイオン源を用いるとよい。
1…GC部
10…試料気化室
11…カラムオーブン
12…カラム
2…MS/MS部
20…分析室
21…イオン源
22…前段四重極マスフィルタ
23…コリジョンセル
24…多重極型イオンガイド
25…後段四重極マスフィルタ
26…検出器
3…インターフェイス部
30…データ処理部
31…特定化合物構造推定用データ処理部
32…化合物データベース
33…分析制御部
34…中央制御部
35…特定化合物構造推定用制御プログラム
36…入力部
37…表示部

Claims (4)

  1. MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置を用い、カチノンを基本骨格とするカチノン系化合物を検出するとともにその構造を推定する化合物分析方法であって、
    a)分析目的である化合物を含む又はその可能性のある試料をクロマトグラフにより成分分離し、その分離された試料に対し、
    a1)イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、該ベンゾイル部からカルボニル基が脱離したベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン環に結合している第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定と、イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部について前記第3の官能基の質量の相違に応じた複数種のベンゾイル部をプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定と、のいずれか一方又はその両方、及び、
    a2)イオン化の際のα開裂によって生じるアミン部について、該アミン部のそれぞれ異なる位置に結合している第1の官能基と第2の官能基とを合わせた質量の相違に応じた複数種のアミン部をプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定、
    である2種類又は3種類のMS/MS測定を繰り返し実行する測定実行ステップと、
    b)前記MRM測定及び/又は前記第1のプロダクトイオンスキャン測定、並びに、前記第2のプロダクトイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータに基づいて作成される、その2種類又は3種類の測定にそれぞれ対応したクロマトグラムにおいて同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することによって、カチノン系化合物の存在を判断する化合物存在確認ステップと、
    c)前記MRM測定及び/又は前記第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第3の官能基の種類を推定するとともに、前記第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定し、それら推定結果を併せて、前記化合物存在確認ステップにおいて存在が確認されたカチノン系化合物の構造を推定する構造推定ステップと、
    を有することを特徴とする化合物分析方法。
  2. 請求項1に記載の化合物分析方法であって、
    前記測定実行ステップでは、試料由来のイオンを解離させない通常のスキャン測定を前記2種類又は3種類のMS/MS測定と併せて繰り返し実行し、
    前記通常のスキャン測定により得られたデータに基づいて作成されるマススペクトルを化合物データベースと照合することにより化合物を同定するデータベース利用化合物同定ステップをさらに有し、
    前記構造推定ステップでは、前記化合物データベースに収録されていない未知の化合物についての構造推定を実施することを特徴とする化合物分析方法。
  3. MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置を含み、カチノンを基本骨格とするカチノン系化合物を検出するとともにその構造を推定する化合物分析装置であって、
    a)分析目的である化合物を含む又はその可能性のある試料をクロマトグラフにより成分分離し、その分離された試料に対し、
    a1)イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、該ベンゾイル部からカルボニル基が脱離したベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン環に結合している第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定と、イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部について前記第3の官能基の質量の相違に応じた複数種のベンゾイル部をプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定と、のいずれか一方又はその両方、及び、
    a2)イオン化の際のα開裂によって生じるアミン部について、該アミン部のそれぞれ異なる位置に結合している第1の官能基と第2の官能基とを合わせた質量の相違に応じた複数種のアミン部をプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定、
    である2種類又は3種類のMS/MS測定を繰り返し実行するようにクロマトグラフ質量分析装置を動作させる分析制御部と、
    b)前記MRM測定及び/又は前記第1のプロダクトイオンスキャン測定、並びに、前記第2のプロダクトイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータを収集し、該データに基づいてその2種類又は3種類のMS/MS測定にそれぞれ対応したクロマトグラムを作成し、それらクロマトグラム上で同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することによって、カチノン系化合物の存在を判断する化合物存在確認部と、
    c)前記MRM測定及び/又は前記第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第3の官能基の種類を推定するとともに、前記第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定し、それら推定結果を併せて、前記化合物存在確認部において存在が確認されたカチノン系化合物の構造を推定する構造推定部と、
    を備えることを特徴とする化合物分析装置。
  4. カチノンを基本骨格とするカチノン系化合物を検出するとともにその構造を推定するために、MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置の動作を制御するとともに該装置で得られたデータを収集して処理するべく、コンピュータ上で動作する化合物分析用プログラムであって、
    a)分析目的である化合物を含む又はその可能性のある試料をクロマトグラフにより成分分離し、その分離された試料に対し、
    a1)イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部をプリカーサイオン、該ベンゾイル部からカルボニル基が脱離したベンゼン部をプロダクトイオンとし、ベンゼン環に結合している第3の官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件としたMRM測定と、イオン化の際のα開裂によって生じるベンゾイル部について前記第3の官能基の質量の相違に応じた複数種のベンゾイル部をプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定と、のいずれか一方又はその両方、及び、
    a2)イオン化の際のα開裂によって生じるアミン部について、該アミン部のそれぞれ異なる位置に結合している第1の官能基と第2の官能基とを合わせた質量の相違に応じた複数種のアミン部をプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定、
    である2種類又は3種類のMS/MS測定を繰り返し実行するようにクロマトグラフ質量分析装置を動作させる分析制御機能部と、
    b)前記MRM測定及び/又は前記第1のプロダクトイオンスキャン測定、並びに、前記第2のプロダクトイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータに基づいてその2種類又は3種類のMS/MS測定にそれぞれ対応したクロマトグラムを作成し、それらクロマトグラム上で同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することによって、カチノン系化合物の存在を判断する化合物存在確認機能部と、
    c)前記MRM測定及び/又は前記第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第3の官能基の種類を推定するとともに、前記第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて前記第1の官能基及び第2の官能基の種類を推定し、それら推定結果を併せて、前記化合物存在確認機能部の処理により存在が確認されたカチノン系化合物の構造を推定する構造推定機能部と、
    を有することを特徴とする化合物分析用プログラム。
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