JP2015183291A - 銀被覆銅粉及びこれを用いた導電性ペースト - Google Patents
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Description
そうかと言って、銀の被覆率を100%に近づけようとすると、銀の量を増やす必要があるため、コスト高を招いてしまうほか、導電ペースト中の銀元素量に起因するマイグレーションを引き起こす原因となり、半導体搭載基板のビアペーストなど絶縁信頼性が必要な用途の原料には適さないものとなる。
さらに本発明が提案する銀被覆銅粉は、銀の被覆量が銅の含有量の35質量%以下であり、銀量が多い訳でもないにもかかわらず、銀被覆銅粉粒子表面における、Cu(II)のピーク強度に対する、Cu(I)及びCu(0)のピーク強度の比率が極めて小さい、言い換えれば、銀被覆銅粉粒子表面におけるCu及びCu2Oの合計濃度よりも、CuO及びCu(OH)2の合計濃度の方が極めて高いため、導電性ペーストを作製した際に、ペーストが経時的に増粘するのを抑制することができるという特徴を有している。
よって、本発明が提案する銀被覆銅粉は、導電性ペーストなどの材料として好適に用いることができる。
本実施形態に係る銅粉は、芯材としての銅粉粒子が銀で被覆されてなる銀被覆銅粉粒子(「本銀被覆銅粉粒子」と称する)からなる銀被覆銅粉(「本銀被覆銅粉」と称する)である。但し、本銀被覆銅粉粒子は、芯材としての銅粉粒子が銀で完全に被覆されている訳ではなく、銅粉粒子表面が部分的に露出してなる構成を備えた銀被覆銅粉粒子である。
本銀被覆銅粉において、銀の被覆量は、銅の含有量に対して35質量%以下であるのが好ましい。銀の被覆量が、銅の含有量の35質量%以下であれば、貴金属である銀の原料単価に起因する製造コストを低く抑えることができ、経済的に優位であるほか、導電体に含まれる銀元素に起因したマイグレーションを抑制できる点で好ましい。但し、銀被覆量が少なすぎると、本銀被覆銅粒子が重なり合った時に、粒子表面の銀同士が接触する機会が少なるなり導電性を高めることができない可能性が生じる。
かかる観点から、本銀被覆銅粉においては、銀の被覆量は、銅の含有量の1.0〜35質量%であるのがさらに好ましく、中でも3.0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも5.0質量%以上或いは20質量%以下であるのがより一層好ましい。
本銀被覆銅粉においては、X線光電子分光装置(XPS)を用いて銀被覆銅粉粒子の表面を測定して得られるX線光電子分光スペクトルにおいて、Cu(II)のピーク強度に対する、Cu(I)及びCu(0)のピーク強度の比率が0.02〜0.60であることが重要である。
このように、本銀被覆銅粉粒子の表面は、Cu(II)のピーク強度に対する、Cu(I)及びCu(0)のピーク強度の比率が0.60以下であって、このように当該比率が極めて小さいため、言い換えれば、本銀被覆銅粉粒子表面におけるCu及びCu2Oの合計濃度よりも、CuO及びCu(OH)2の合計濃度の方が極めて高いため、導電性ペーストを作製した際に、ペーストが経時的に増粘するのを抑制することができる。他方、前記比率が0.02以上であれば、導電性に深刻な影響を与えることがない。
かかる観点から、本銀被覆銅粉粒子の表面を測定して得られるX線光電子分光スペクトルにおいて、Cu(II)のピーク強度に対する、Cu(I)及びCu(0)のピーク強度の比率は0.02〜0.60であることが重要であり、中でも0.03以上或いは0.25以下であるのが好ましく、その中でも0.04以上或いは0.10以下であるのがさらに好ましい。
また、Cu(I)及びCu(0)のピークとは、Cu及びCu2Oに由来するピークを意味する。これらは同一ピークで検出されるため、両者をそれぞれ区別することはできない。
本銀被覆銅粉粒子の粒子形状は、特に限定するものではない。例えば、少ない量で伝導性を得ることができる観点から言えば、デンドライト状を呈するのが好ましい。
ここで、「デンドライト状」とは、主枝から枝部分が分岐して平面状或いは三次元的に成長してなる形状のものを包含する。
そのほか、伝導性と分散性の両方をあるレベルで兼ね備えることができるという観点からは、略球状、ピーナツ殻状、フレーク状などであるのが好ましい。
本銀被覆銅粉の中心粒径(D50)、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50は、0.5〜20μmであるのが好ましい。
導電粒子として大きな粒子であると、ペースト中の導電粒子のネットワークが少なくなるため、導電性能が低下するおそれがある。その一方、粒子径が小さ過ぎると、銀の被覆にムラをなくすためには、銀の含有量を多くする必要があり、経済的に無駄である。
他方、本銀被覆銅粉粒子が、球状、略球状、ピーナッツ殻状、フレーク状などの粒状を呈する場合には、D50は0.5μm〜20μmであるのが好ましく、中でも1.0μm以上或いは15.0μm以下、その中でも2.0μm以上或いは10.0μm以下であるのがさらに好ましい。
本銀被覆銅粉のBET比表面積(SSA)は、本銀被覆銅粉粒子がデンドライト状を呈する場合には、0.2〜2.0m2/gであるのが好ましい。
デンドライト状粒子からなる粉体である場合においてSSAが0.2m2/g〜2.0m2/gであれば、枝が適度に発達しており導通が確保しやすく、且つペースト製造が行いやすい観点から好ましい。
かかる観点から、デンドライト状粒子からなる粉体である場合におけるSSAは0.2m2/g〜2.0m2/gであるのが好ましく、中でも0.35m2/g以上或いは1.6m2/g以下、その中でも0.6m2/g以上或いは1.2m2/g以下であるのがさらに好ましい。
かかる観点から、粒状を呈する場合におけるSSAは0.1〜1.5m2/gであるのが好まく、中でも0.2m2/g以上或いは1.25m2/g以下、その中でも0.3m2/g以上或いは1.0m2/g以下であるのがさらに好ましい。
本銀被覆銅粉のタップ嵩密度(TD)は、本銀被覆銅粉粒子がデンドライト状を呈する場合には、0.5〜2.0g/cm3であるのが好ましい。
デンドライト状粒子からなる粉体である場合においてTDが0.5〜2.0g/cm3であれば、デンドライトの枝が適度に発達しており、少ない充填量で導通を十分確保できる観点から好ましい。
かかる観点から、デンドライト状粒子からなる粉体である場合におけるTDは0.5〜2.0g/cm3であるのが好ましく、中でも0.75g/cm3以上或いは1.75g/cm3以下、その中でも1.0g/cm3以上或いは1.5g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
粒状粒子からなる粉体である場合においてTDが3.0〜6.0g/cm3であれば、最適な充填量で導通を十分確保できる観点から好ましい。
かかる観点から、粒状粒子からなる粉体である場合におけるTDは3.0〜6.0g/cm3であるのが好ましく、中でも3.5g/cm3以上或いは5.5g/cm3以下、その中でも4.0g/cm3以上或いは5.0g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
本銀被覆銅粉は導電特性に優れており、しかもペースト作製時の増粘を抑制することもできるから、本銀被覆銅粉を用いて導電性ペーストや導電性接着剤などの導電性樹脂組成物、さらには導電性塗料など、各種導電性材料の主要構成材料として好適に用いることができる。
溶剤としては、テルピネオール、エチルカルビトール、カルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールアセテート等が挙げることができる。
硬化剤としては、2エチル4メチルイミダゾールなどを挙げることができ、硬化促進剤としては、3級アミン類、3級アミン塩類、イミダゾール類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類等を挙げることができる。
本銀被覆銅粉は、芯材としての銅粉に銀を被覆させた後、所定の酸化処理を施して、粒子表面に存在する銅(Cu)を酸化させるのが好ましい。
芯材としての銅粉の粒子形状及び粒度などは特に限定するものではない。例えば電解法で得られる銅粉であってもよいし、湿式法で得られた銅粉であってもよいし、アトマイズ法により得られた銅粉であってもよい。また、銅粉粒子の形状としては、デンドライト状、球状、略球状、ピーナッツ殻状、フレーク状など任意である。
芯材としての銅粉に銀を被覆させる方法も任意である。
好ましい一例として、芯材としての銅粉を水に分散させ、キレート剤を添加した後、水に可溶な銀塩を加えて置換反応させて銅粉粒子の表面層を銀に置換させた後、得られた銀被覆銅粉を溶液から取り出してキレート剤を用いて洗浄し、乾燥させる方法を挙げることができる。但し、この方法に限定されるものではない。
これに対し、キレート剤を用いて洗浄することで、置換反応後に銅の再吸着を防止することができるため、粒子表面に残留する銅イオンを抑制することができ、その結果、粒子表面に酸化銅の被膜が出来ることを抑制して、導電性を高めることができる。
キレート剤を用いて洗浄した場合、キレート剤が残留する可能性があるため、純水などを用いて洗浄するのが好ましい。
置換反応終了後は、銀粉粒子を十分に洗浄し、乾燥させるのが好ましい。
芯材としての銅粉に銀を被覆させて銀被覆銅粉を得た後、銀被覆銅粉に所定の酸化処理を施して、粒子表面に存在する銅(Cu)を酸化させるのが好ましい。
また、銀被覆銅粉を水蒸気中で加熱する方法を挙げることもできる。具体的には、スチーム養生装置内に銀被覆銅粉を静置して、60〜155℃で3時間〜18時間加熱する方法を挙げることができる。
また、酸化剤で銀被覆銅粉を処理する方法などを挙げることができる。具体的には、クロム酸、二クロム酸、過酸化水素、過マンガン酸、次亜塩素酸などの酸化剤を溶解してなる水溶液中に銀被覆銅粉を入れて処理したり、或いは、銀被覆銅粉をオゾンと接触させて酸化したりする方法を挙げることができる。
なお、酸化処理の方法を上記方法に限定するものではない。
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
X線光電子分光分析(X−rayPhotoelectronSpectroscopy、XPS)により、実施例・比較例で得た銀被覆銅粉(サンプル)の粒子表面の分析を行った。
X線源として、Al−Kα線(1486.8eV)を用いて、17KV×0.023Aで操作した。
帯電補正:SiO2の結合エネルギーを103.2eVとして帯電補正を行った。
なお、X線光電子分光装置(XPS)は、粒子表面から約十nmまでの深さの元素成分について定量分析を行うことができる。
実施例・比較例で得た銀被覆銅粉(サンプル)について、ICP発光分光分析により、銀量を測定した。
銀被覆銅粉(サンプル)を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。
この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて体積累積粒径D50を測定した。
比表面積(SSA)は、マウンテック社製モノソーブにて、BET一点法で測定した。
実施例・比較例で得た銀被覆銅粉(サンプル)のタップ嵩密度(g/cm3)は、試料200gを用いてパウダーテスターPT−E型(ホソカワミクロン製)により測定した。
実施例・比較例で得られた銀被覆銅粉(サンプル)90質量部と、エポキシ樹脂4.7質量部と、エポキシ樹脂硬化剤2.6質量部、硬化促進剤2.6質量部とを混錬してエポキシ系導電ペーストを得た。
得られたエポキシ系導電ペーストを、25℃、大気環境下に72時間保存し、保存前と保存後の粘度を測定し、増粘率を評価した。この際、粘度計としてThermo Scientific社の粘度計「RheoStress6000」を用いて、室温(25℃)で、測定システムにコーン・プレート型を取り付けた時に、速度30rpmにおいて測定される値を用いた。
シリコーンシーラント(スリーボンド社製、型番5211)に対し、銀被覆銅粉(サンプル)を70質量%の比率で配合し、さらに銀被覆銅粉(サンプル)と同じ質量のトルエンを添加し、シンキー社製あわ取り練太郎(型番AR−100)を用いて十分に混合した後、ガラス板状にスクリーン印刷により1cm×10cmの帯状のパターンを印刷した。そのペーストを大気中にて70℃で60分間乾燥させ後、デジタルボルトメーター(YOKOGAWA ELECTRIC WORKS製)にて電気抵抗を測定した。
また、マイクロメーターにて膜厚を測定し、比抵抗(Ω・cm)=幅(cm)×膜厚(μm)×電気抵抗(Ω)/(長さ(cm)×104)という式にて、導電性ペーストの導電性(比抵抗)を算出した。
芯材としての電解銅粉(純度99%以上、デンドライト、D50:13μm)25kgを、50℃に保温した純水50L中に投入してよく攪拌させた。これとは別に、純水5Lに硝酸銀4.5kg投入して硝酸銀溶液を作製した。前記の銅粉を溶解した溶液に、硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。
次に、真空ろ過にて銀被覆銅粉スラリーのろ過を行い、ろ過が終わった後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)600gを純水6Lに溶解させた溶液を用いて洗浄し、続いて3Lの純水で残留EDTAを洗浄した。その後、120℃で3時間乾燥させてデンドライト状銀被覆銅粉を得た。
芯材として、電解銅粉(純度99%以上、デンドライト、D50:7.4μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
芯材として、銅粉(純度99%以上、球状、D50:2.5μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
芯材として、電解銅粉(純度99%以上、ピーナツ殻状、D50:6.4μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
芯材として、銅粉(純度99%以上、フレーク状、D50:3.2μm)を使用すると共に、酸化処理方法として、恒温恒湿器を用いて、湿度85%RHで、酸素濃度5vol%の酸化性雰囲気において、150℃で24時間加熱する酸化処理を施した以外は、実施例1と同様にして銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
酸化処理方法として、銀被覆銅粉(50g/L)を水中に入れ、さらに35wt%濃度の過酸化水素水を、銀被覆銅粉に対して10wt%の割合で添加して十分に攪拌した後、脱水、乾燥(120℃、3時間)を行って酸化処理を施した以外は、実施例1と同様にして銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
電解銅粉(実施例1と同様)25kgを純水50L中に投入しよく攪拌させた。これとは別に純水5Lに硝酸銀4.5kg投入して硝酸銀溶液を作製した。前記の銅粉を溶解した溶液に、硝酸銀溶液を一括添加した。この状態で2時間攪拌を行い、銀被覆銅粉スラリーを得た。次に真空ろ過にてろ過を行い、ろ過が終わった後、洗浄を行った。洗浄水は純水6Lを用いた。ろ過後、90℃、3時間乾燥を行ってデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
比較例1で得たデンドライト状銀被覆銅粉(サンプル)を、恒温恒湿器を用いて、湿度85RH%で、酸素濃度21vol%の酸化性雰囲気において、200℃で6時間加熱する酸化処理を施して、銀被覆銅粉(サンプル)を得た。
上記実施例の結果とこれまで発明者が行ってきた試験結果を総合すると、銀の被覆量が、銅の含有量の35質量%以下であっても、銀被覆銅粉粒子表面における、Cu(II)のピーク強度に対する、Cu(I)及びCu(0)のピーク強度の比率が0.02〜0.60であれば、導電性ペーストを作製した際に、ペーストが経時的に増粘するのを抑制することができ、十分な抵抗値を得られることが分かった。
Claims (4)
- 銅粉粒子が銀で被覆されると共に、当該銅粉粒子の表面が部分的に露出してなる構成を備えた銀被覆銅粉粒子からなる銀被覆銅粉であって、
銀の被覆量が銅の含有量の35質量%以下であり、且つ、X線光電子分光装置(XPS)を用いて銀被覆銅粉粒子の表面を測定して得られるX線光電子分光スペクトルにおいて、Cu(II)のピーク強度に対する、Cu(I)及びCu(0)のピーク強度の比率が0.02〜0.60であることを特徴とする銀被覆銅粉。 - レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が2.0μm〜20.0μmであり、BET比表面積が0.2〜2.0m2/gであり、且つタップ嵩密度が0.5〜2.0g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の銀被覆銅粉
- レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が0.5μm〜20.0μmであり、BET比表面積が0.1〜1.5m2/gであり、且つタップ嵩密度が3.0〜6.0g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の銀被覆銅粉
- 請求項1〜3の何れかに記載の銀被覆銅粉を用いてなる導電性ペースト。
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