船舶建造で又は、例えば、電気エネルギーを生み出すための定置装置で好ましく使用されるような、クロスヘッド構造の大型ディーゼル・エンジンは、このエンジンのフレームを形成する3つの大きなハウジング部分を含んでいる。ベースプレートの上に、支持板によって分離されたいわゆるスタンドが配置されるが、このベースプレートは、クランクシャフトを受けるためのクランクシャフト主軸受を有する軸受サドルに加えて、横方向支持要素を有する。先行技術から知られたスタンドは、大型ディーゼル・エンジンのシリンダの本数に従って複数の対向配置された支持体を具備するが、それぞれの支持体は、プッシュロッドを介してクランクシャフトに連結される2つの隣接するクロスヘッドを案内するために、垂直に延びる滑動表面を有する。この点に関して、垂直に延びる2つの対向配置された滑動表面が、中心壁によって追加的に支持される。個々の支持体は、一般に共通のカバープレートによって相互に連結される。次いでシリンダ部分(しばしばシリンダ・ジャケットとも呼ばれる)がスタンドの上方でカバープレートに配置され、そのシリンダ部分は複数のシリンダ・ライナを受け入れるのに適している。ベースプレート、スタンド、及びシリンダ部分は、この連結では、タイロッドによって相互に連結されるが、これらのタイロッドは、タイロッドが実質的に予張力が掛けられてベースプレートの中へ又はそれにねじ留めされる点で、一般にスタンド領域内の支持体の内部に延びる。
ピストン機械のクロスヘッド滑動軌道用の支持部を有し、この支持部が二重壁を備えて作製されるスタンドが、独国特許第3512347号(C1)から知られている。シリンダ・ライナを受け入れるためにシリンダ・ジャケットが上に設置されるスタンドは、ベースプレート上のベースシートの上に配置されるが、このベースシートは、斜めに延びる外壁及び垂直の滑動表面と共に、断面が台形を成して共通のカバープレートによって相互に連結される2つのフレームを形成する。これらの台形のフレームは、二重壁設計の支持体が結果的に支持部となるように、横方向支持壁によって外壁と滑動表面との間に埋め込まれる。ベースプレートは、下部軸受シェルと、軸受カバーを有する上部軸受シェルとを有する軸受サドルを具備するが、その軸受シェルの中で、クランクシャフトはベースプレートの軸受サドルの中に軸支される。エンジンのシリンダ・ジャケット、スタンド、及びベースプレートは、軸受サドルに又はその中でクランクシャフトの下に予張力が掛けられて取り付けられるタイロッドによって一体に保持される。
2本のタイロッドが案内される、三角形断面を有する二重壁支持体が、欧州特許第0774061号に開示されている。
このような公知の大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンでは、スタンドの二重壁設計の支持体が、ベースプレートにおける二重壁設計と同様に支持要素上で支持される。これは、スタンド及びベースプレートが共に、横方向支持壁によって二重壁に作製されていることを意味する。
しかし、この点で、ベースプレートが、単壁設計である横方向支持壁によって形成される大型ディーゼル・エンジンも先行技術から知られている。本出願人は、数年前に欧州特許第1382829号(B1)において、このような改善策を既に提案した。
この先行技術から知られた大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンの構造は、この点で幾つかの深刻な欠点を有する。支持体は溶接シームによってスタンドの中に取り付けられる。支持体が2つの対向配置された壁によって二重壁設計から作製されるとき、スタンドの中の二重壁支持体を形成する2つの壁間の溶接シームは裏溶接され得ず、したがってそれに対応して強度及び/又は安定性に関わる問題が生じる。ベースプレートをスタンドに対して位置合わせすることは、ベースプレートの支持要素の壁が、スタンド中の支持体の支持壁に対して面一に配置されなければならないので難しい。
この点で、支持体はスタンドのほぼ全高にわたって延びるが、そうしたことは、二重壁設計の密閉された支持体の中で溶接する際に、支持体の内部は到達不可能であり、したがってこれらの支持体が裏溶接され得ないので、上述の問題に陥るばかりではない。さらには、ベースプレート上方の支持板とシリンダ部分の下のカバープレートとの間でスタンドのほぼ全高にわたって延びる二重壁支持体は大量の材料を消費する。
これは、知られた支持体が、スタンドの中に取り付けるのに複雑であるばかりでなく、溶接シームに関して安全上の問題に陥る恐れがあることを意味する。また知られた解決策も、高水準の材料消費量によって費用が嵩み、且つスタンドの重量全体がかなり増大することになる。
したがって、先行技術から出発すると、本発明の目的は、スタンドの設計によって知られる欠点が回避される改良大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンを提供することである。特に、より少ない材料消費量で製造可能であり、したがって公知のスタンドよりも重量が遙かに少ないスタンドが提案されるべきである。さらには、本発明によって提案されたスタンドは、組立てがより容易であるべきであり、しかも支持板とカバープレートとの間でスタンドの全高にわたって密閉体として延びる公知のスタンドに必然的に生じる溶接シームに関わる問題が同時に回避される。
これらの目的を果たす本発明の主題は、独立請求項1の特徴構造によって特徴付けられる。
従属請求項は、本発明の特に有利な実施例に関する。
本発明に従えば、かくして、クランクシャフトを受け入れるためのベースプレートと、2つの外壁を含み且つベースプレートの上に配置されるスタンドとを有する大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンが提案される。シリンダ部分がシリンダを受け入れるためにスタンドの上に配置されて、ベースプレート、スタンド、及びシリンダ部分は、スタンドの領域内で横方向支持壁に沿って延びるタイロッドによって相互に連結されている。横方向高さの滑動表面が、上死点と下死点との間で行程経路にわたって往復動可能に配置されるクロスヘッドを支持するために支持壁の上に形成される。本発明に従えば、支持要素が、この支持要素の横方向範囲が滑動表面の横方向高さよりも小さいように、部分的に、支持壁に設けられる。
支持要素が支持壁に部分的にのみ設けられるので、材料の手間がより少なく製造することが可能であり、したがって知られたスタンドよりも遙かに少ない重量を有し且つ製造上の対費用効果のより優れた、大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンのためのスタンドが、本発明によって初めて提案される。
支持要素が部分的においてのみ支持壁に設けられて且つベースシートとカバープレートとの間を通過する支持体が、先行技術で知られたようには使用されないので、本発明に従うスタンドは組立てがより容易であり、しかも完全な密閉体として支持板とカバープレートとの間でスタンドの全高にわたって延びる公知のスタンドに必然的にもたらされる溶接シームに関わる知られた問題が同時に回避される。
つまり、本発明に従う支持要素は、せいぜい部分的に支持壁に設けられるにすぎない。それによって、一般に、二重壁支持要素を備えても支持要素の内部に適切な溶接装置を使用して到達可能であって、この支持要素は裏溶接が可能となり、したがって支持壁に確実に恒久的に連結され得る。
さらには、適切な診断装置を使用して、例えば、超音波装置を使用して溶接後に溶接シームを検査することが可能であり、これまで知られていない非常に高度な品質及び安全性が支持要素の溶接シームに関して保証され得るように、内部溶接シームに発生し得る損傷に関してもさらに信頼性のおけるものである。
この点で、本発明は、クロスヘッドが横方向に沿って移動するときに、このクロスヘッドが滑動軌道に対して及ぼす力が、最初は水平方向に関して幾分顕著に非対称的であり、次いで横方向に沿って大きく変化して、クロスヘッドの上死点の近傍で且つ下死点の上方で共に最大値を有するという認識に基づいている。
明瞭化する目的のためにこの時点で簡単に述べるべきことであるが、本出願の枠組みの中で大型ディーゼル・エンジンにおける特定の空間的方向に言及するとき、長手方向とは、一般に大型ディーゼル・エンジンのクランクシャフトが配置される方向を意味する。横方向とは、このクランクシャフトに対して垂直な方向であり、且つシリンダ・ライナの長手軸線に対して平行に配置される方向である。したがって、横方向とは、大型ディーゼル・エンジンの高さが、一般に搭載された状態において延びる垂直方向である。この点で、水平方向とは、長手方向上に且つ横方向上に同時に垂直に位置するものであり、即ち、それは通常では、搭載された状態にあるエンジンの水平方向である。
この点で、クロスヘッドが、支持壁の滑動表面に対して及ぼす力の上述の推移が原理的に知られる。それは、図5及び図7aを参照して後段により詳細にさらに説明するように、多少とも魚の輪郭を思わせる特徴的な輪郭を有し、この力の推移の輪郭は、水平方向に関して対称的ではない。これは、大型ディーゼル・エンジンのピストンの圧縮行程時に圧縮圧力のみが燃焼空間内に加えられるが、一方でピストンの膨張行程では、燃料の燃焼によって生成される追加的な燃焼圧力が燃焼空間内で追加的に加えられて、滑動軌道に対して得られる水平力成分も圧縮行程におけるよりも膨張行程における方が大きいことによる。
したがって、この力の推移の輪郭が非対称的に変位することも、エンジンが動作する回転方向に関して特徴的である。例えば、エンジンが、船尾から眺めて、即ち、船舶では当然にスクリュー側であるエンジンの駆動側に向かって眺める方向に関して左側に回転すれば、反時計回りに回転するエンジンについて言っている。エンジンが反時計回りに回転する場合には、より大きな力は、船尾から眺めた場合と同様に、右手水平方向へ及ぼされる。エンジンが時計回りに回転すれば、それに対応して、より大きな力は左手水平方向へ及ぼされる。
即ち、換言すれば、大型ディーゼル・エンジンの排気ガス側は、船尾から眺めて原則的に右側にあるので、且つ燃料供給用などのユニット、即ち、ポンプ側は左側にあるので、時計回りに回転するエンジンでは、より大きな力がポンプ側に加えられ、反時計回りに回転するエンジンでは、より大きな力が排気ガス側に加えられる。
これまで広く行きわたっている全ての考えとは異なって、支持壁は、スタンドの全高にわたって支持体に支持される必要がなく、この支持壁が、滑動表面に対するクロスヘッドの水平力作用の最大値領域内で本発明に従う支持要素で強化されれば、むしろ本質的に十分であることが本発明によって今や証明された。
この点で、支持壁の厚さを全高にわたって強化することは、幾つかの場合において安定性の理由のために有意義なことであり得る。この点で必要とされる強化材の幾何学形状は、個別的な事例で異なる要因に、特に、例えば、エンジンの構造サイズ、エンジンの出力、及び他の要因に依存する。この点で、述べたように、支持壁の強化が全ての場合に必要であるわけではない。
例えば、350mmのシリンダ内径を有する大型ディーゼル・エンジンでの試行では、本発明の支持要素を有利に使用できるためには、支持体によってスタンドの全高にわたって支持される公知の支持壁を元の40mm厚さから60mm厚さに強化するだけで十分であることが証明された。
例えば、より低い出力を有するか又はいずれにしても既に十分な厚さを有するエンジンでは、本発明に従う支持要素も支持壁を強化することなく使用され得ることが判明した。
水平力成分による負荷が、クロスヘッドの上死点で予め設定した量を超過する場合に、例えば、それに従って、スタンドをシリンダ部分から分離するカバープレートの厚さを強化することも、特定の事例では有意義であり得る。また強化ベースシートを使用してベースプレート領域内の繋止を追加的に強化することも当然であるが可能である。
支持要素の横方向の幾何学中心は、クロスヘッドの水平力作用の最大値が支持要素によって有効に補償されることを保証するように、クロスヘッドが下死点から離れる行程経路の好ましくは最大75%のところである。この点で、支持要素の横方向の幾何学中心は、下死点から離れる行程経路の特に好ましくは最大50%のところであり、特定的には最大30%のところである。
支持要素のサイズに関しては、その横方向範囲が、滑動表面の横方向高さの最大75%に達する。
この点で、支持要素の横方向範囲は、滑動表面の横方向高さの好ましくは40%から75%に達する。特別な事例では、支持要素の横方向範囲が、滑動表面の横方向高さの5%と40%との間に、特に30%未満になり得る。
既に上で詳細に説明したように、クロスヘッドは、動作状態で、支持要素が支持壁における横方向力の最大値の範囲内に特に有利に設けられるように、シリンダ・ライナのシリンダ軸に関して非対称的に広がる水平横方向力を横方向支持壁に及ぼす。
この点で、支持要素自体の断面は原理上、それ自体が知られた全体を貫いて延びる支持体の任意の知られた断面形状ばかりでなく、支持壁に対して作用する水平力を適切な態様で吸収するのに適切である他の任意の形状も有し得る。
支持要素は、先行技術から知られた、全体を貫いて延びる支持体におけるように、三角形断面を有する二重壁を備えて作製されることが好ましい。別の実施例では、支持要素が、例えば、長方形断面を有する二重壁を備えて作製される。支持要素は、当然であるが、緊密な支持要素として単壁を備えて作製されてもよい。
全体的な大型ディーゼル・エンジンの安定性に対する要求に応じて、又は支持要素のどの特定の実施例が選択されるかに応じて、1本のタイロッドが支持要素に通して案内される。他の事例では、複数のタイロッドも、好ましくは厳密に2本のタイロッドが支持要素に通して案内され得る。
この点で、本発明の支持要素は、例えば、大型ディーゼル・エンジンの一側の支持壁のみに設けられてもよいし、又はそれぞれの支持要素が、例えば、同じクロスヘッドを案内する2つの水平に対向配置された支持壁に設けられてもよい。水平に作用する力の非対称性がそれほど全体的に顕著ではない特別な事例では、例えば、それぞれの場合において支持要素がクランクシャフトに沿って左側及び右側に交互に設けられて、それによって力の伝達のより高い対称性が、エンジンの全長にわたって実現され得る。
少なくとも2つ以上の支持要素が、恐らくは相互に離間されて、1つの且つ同じ側壁に設けられて、それによって支持壁の剛性がとりわけ増大され得ることも当然ながら可能である。
横方向支持体としてベースプレートのベースシートからスタンドのカバープレートまで全体を貫く態様で延びる、それ自体が知られた支持体を有する支持要素も、本発明の大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンにおいて有利に組み合わされ得ることは自明である。したがって、例えば、それ自体が知られた、全体を貫いて延びる支持体は、より大きな力が、水平力分布の非対称性により滑動軌道に対して作用するクランクシャフトの一側に設けられ、一方で、クランクシャフトの他方の側(この側ではエンジンが動作状態でそれに対応する方向へ回転するので、水平力が比較的により小さい)には、本発明に従う支持要素はそれに作用する水平横断力を有効に補償するのに既に十分であるので、本支持要素が設けられる。
以下に図面を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの図面は模式図で示されている。
以下に参照符号1によって全体として示される本発明に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジンが、例えば、船舶建造で広く使用されるような長手方向の掃気を行う大型ツー・ストローク・ディーゼル・エンジン1として特に設計される。
図1は、ベースプレート2、スタンド5、及びシリンダ部分6を備える、本発明に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1のデザインを模式的に断面で示す。この点で、図1に示した外部デザインは、公知の大型ディーゼル・エンジン1’の外観と実質的に同一である。
シリンダ部分6は、それ自体が公知の態様でシリンダ(図示せず)を受け入れる役目をする。スタンド5(例えば、鋼板を相互に溶接することによって作製された)は、ベースシート12及び2つの外壁4を有し、本図に従えば、垂直に、即ち、横方向に延びる滑動表面9と共に、断面が台形であり、共通のカバープレート13によって相互に連結された2つのフレームを形成する。垂直に延びる2つの対向配置された滑動表面9が、2つの台形フレーム間に配置される中心壁14によって支持される。スタンド5はベースプレート2上のベースシート12と共に配置され、ベースプレート2はクランクシャフト3を軸支するための軸受シェルを有する軸受サドルを含んでいる。軸線Kを有するクランクシャフト3は、それ自体が公知の態様で、図1では示されていないプッシュロッド15を介してクロスヘッド10に連結されている。
本発明をより適切に理解するために、先行技術から公知のスタンドの異なる例が、図2から図4に模式的に示されている。この点で、先行技術を本発明からより適切に区別するために、図2から図4までの特徴構造の参照符号にはダッシュ符号が付けられ、その一方で本発明に従う実施例を表す残りの図における特徴構造は、ダッシュ符号が付かない参照符号を有する。この点で、本発明に従う実施例の特徴構造と公知例の対応する特徴構造とがそれぞれに、上述したようにダッシュ符号の使用又は不使用のみが異なる同じ参照符号によって示されている。
図2は、ベースプレート2’上に配置されるスタンド5’と、スタンド5’上に設置されるシリンダ部分6’とを含む公知例の大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1’の図1の線I−Iに沿った断面を示す。カバープレート13’がスタンド5’とシリンダ部分6’との間に配置され、且つベースシート12’がスタンド5’とベースプレート2’との間に配置されている。シリンダ部分6’は、公知の態様で1本又は複数のシリンダ(図示せず)を受け入れるのに適している。シリンダの内部空間は、シリンダカバー(図示せず)と、ピストンロッド16’によってクロスヘッド10’に連結されてシリンダの中で往復動可能に配置されるピストン(同じく図示せず)と共に、公知の態様で大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1’の燃焼空間を形成する。スタンド5’は、横方向支持壁8’が支持されている支持体11’を含む。支持壁8’は、プッシュロッド15’によってクランクシャフト3’に連結され且つピストンロッド16’によって大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1’のピストン(図示せず)に連結されるクロスヘッド10’を案内するための滑動表面9’を担持する。
この点で、支持体11’が、ベースシート12’とカバープレート13’との間で実質的にスタンド5’の全高HT’にわたって延びるのは先行技術の特徴である。
ベースプレート2’は軸受サドル及び横方向支持要素を含むが、このベースプレートは、クランクシャフト3’を受け入れ且つ軸支するために、ここでは1つの壁のみを備えて作製されている。しかし、それは、別の公知例では二重壁設計でも作製され得る。シリンダ部分6’、スタンド5’、及びベースプレート2’は、タイロッド7’によって予張力が掛けられて相互に連結されている。この点で、タイロッド7’は、二重壁支持体11’の内部の横方向支持壁8’に沿ってスタンド5’の領域内において延び、且つクランクシャフト3’の軸線K’とスタンド5’との間の領域内で、即ち、本図面に従えば、クランクシャフト3’の軸線K’の上方で、ねじ山付き穴の中でベースプレート2’の軸受サドルの中に取り付けられている。
図2に示した実施例では、支持体11’の壁が、シリンダ部分6’の方向へV字形状で延びる。即ち、支持体11’の壁の相互間隔は、シリンダ部分6’に向かう方向へ次第に拡大している。
図2に示した特に好ましい例では、タイロッド7’の長手軸線Z’が、支持体11’の横方向壁間の中心において延びて、ベースプレート2’中の支持体11’がその上に支持されているベースプレート2’の単壁設計の支持要素が、タイロッド7’の長手軸線Z’と面一に配置されている。タイロッド7’は、ねじ山付き穴の中で軸受サドルに取り付けられ、特に、軸受シェルの変形を回避するために、クランクシャフト3’の軸線K’とスタンド5’との間の領域内に、即ち、本図に従えば、クランクシャフト3’の軸線K’の上方に取り付けられる。ベースプレート2’中の単壁支持要素は、タイロッド7’の長手軸線Z’と面一に配置され、したがって支持体11’の壁に対して対称的に配置されるので、ベースプレート2’がそれほど過剰な剛性を有することなく特に高い安定性が得られる。
この点で、タイロッド7’がクランクシャフト3’の軸線K’の下に繋止されて、同様に負荷プロファイルに依存して使用され得る例が、先行技術においても完全に知られている。
図3は、公知のスタンド5’の図1の線II−IIに沿った断面を示す。スタンド5’の中で対向して配置され、且つ滑動表面9’間の中心壁14’によって相互に対して支持される支持体11’が示されている。クロスヘッド10’は、ベースシート12’とカバープレート13’との間で本質的にスタンド5’の全高HT’にわたって延びる2つの隣接する支持体11’の2つの対向配置された滑動表面9’間で案内される。厳密に言えば、1本のタイロッド7’が、各支持体11’の中の壁間に延びる。
最後に図4は、公知のスタンド5’の図1の断面II−IIに沿った断面の他の例を示すが、この例は、ここでも当然ながらベースシート12’とカバープレート13’との間で実質的にスタンド5’の全高HT’にわたって延びる支持体11’が、三角形の形態で作製されており、中心壁14’が支持体11’を貫通して、それによってこの支持体に追加的な安定性を与えている点で、図3に従う例とは本質的に異なる。さらには、それによって支持体11’は、それぞれのタイロッド7’が中に延びる2部分の本体に分割される。これは、図3の例とは異なって、図4の三角形の例では、2本のタイロッド7’が各支持体11’に関連している。
図7aでは、水平力が作用する推移、即ち、支持壁8の滑動表面9に対する水平横方向力QKの推移が、横方向高さHに応じて且つクランク角KWに依存して、本発明に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1に関して模式的に示されている。該水平力の作用の推移は、先行技術から公知の大型ディーゼル・エンジン1’における、図5に示す力の推移と基本的にほぼ同一である。
既に最初に示したように、クロスヘッド10が上死点OTPと下死点UTPとの間で行程経路HSにわたって横方向に沿って移動すると、このクロスヘッドが滑動表面9に対して及ぼす水平横方向力QKの推移は、最初はクランク角KWに依存して水平方向に関して幾分顕著に非対称的であり、他方で横方向に沿って、即ち、高さHに沿ってかなり変化して、横方向力QKが、クロスヘッド10の上死点OTPの近傍で且つ下死点UTPの上方で最大値を有する。曲線QKの2つの下方最大値(それは下死点UTPの近傍に位置する)が、曲線QKの非対称性を明確に示すM1及びM2によって標示されている。つまり、中心軸線Aに関して、横方向力QKの最大値M1は、それに対応する最大値M2よりも遙かに大幅に顕著であること、即ち、遙かに大きな横方向力QKに対応するものである。
これは、大型ディーゼル・エンジン1のピストンの圧縮行程時に圧縮圧力のみが燃焼空間内に加えられるが、一方でピストンの膨張行程では、燃料の燃焼によって生成された追加的な燃焼圧力が燃焼空間内で追加的に加えられて、滑動軌道9に対して得られる水平力成分QKも圧縮行程におけるよりも膨張行程における方が大きくなることによる。これは、最大値M1がピストンの膨張行程時に、即ち、ピストンがその上死点から下死点に向かう方向へ移動するときに生じ、一方で最大値M2がピストンの圧縮行程時に生じることを意味する。
横方向力QKは、シリンダ内に行き渡る圧力によって本質的に決まるばかりでなく、長手軸線Aに対するプッシュロッド15の角位置によっても決まるので、図5及び図7aに完全なエンジンサイクルに関して模式的に示した、魚の輪郭を思わせる特徴的な形状が生じる。
この点で、力の推移輪郭QKの非対称的な変位の水平方向、即ち、本図に従えば最大値M1又はM2が右側に又は左側にあるかどうかは、エンジン1における回転方向に関する特徴である。例えば、船尾、即ち、船舶では当然にスクリュー側からエンジン1の駆動側に向かって眺めて、エンジン1が左側に回転すれば、エンジン1は反時計回りに回転すると呼ばれる。エンジン1が反時計回りに回転する場合には、より大きな力QKは、船尾から眺めた場合と同様に、右手水平方向へ加えられ。エンジン1が時計回りに回転すれば、それに対応して、より大きな力QKは左手水平方向へ加えられる。
即ち、換言すれば、大型ディーゼル・エンジン1の排気ガス側は、船尾から又は駆動側から眺めて、一般に右側にあるので、且つ燃料供給用などのユニット、即ち、ポンプ側は左側にあるので、時計回りに回転するエンジン1では、より大きな力がポンプ側に加えられ、反時計回りに回転するエンジン1では、より大きな力が排気ガス側に加えられる。
図6に、本発明に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1の第1の実施例が、一側に支持要素11が配置されて模式的に示されている。
この点で図6は、図2と同様に、本発明に従う図1の大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1を通る線I−Iに沿った断面を示す。図6に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1は、ベースプレート2の上に配置されるスタンド5と、このスタンド5の上に設置されるシリンダ部分6とを含む。カバープレート13が、スタンド5とシリンダ部分6との間に配置され、且つベースシート12が、スタンド5とベースプレート2との間に配置される。シリンダ部分6は、公知の態様で1本又は複数のシリンダ(図示せず)を受け入れるのに適している。シリンダの内部空間は、シリンダカバー(図示せず)と、ピストンロッド16によってクロスヘッド10に連結され且つシリンダ内で往復動可能に配置されるピストン(同じく図示せず)と共に、公知の態様で大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1の燃焼空間を形成する。本発明に従えば、支持要素11が本図の左側の支持壁8に部分として配置されているが、この支持壁では、クロスヘッド10のための滑動表面9は、支持要素11の横方向範囲hが滑動表面9の又はスタンド5の横方向高さHTよりも小さいように設けられる。
図6の実施例では、最大の横方向力QKが、本図に従えば左側の支持壁8に対して作用するので、先行技術から公知の支持体11’も本発明に従う支持要素11も、本図に従えば右側の支持壁8には設けられていない。したがって、本発明に従う支持要素11は、左手支持壁8の安定性を増大させるために設けられ、一方で右手支持壁8では、ここには動作状態で実質的により小さい横方向力QKが作用するので、追加的な支持要素11、支持体11’が完全に割愛され得る。
この点で、支持要素11の横方向範囲hのほぼ半分のところに位置する支持要素11の幾何学中心GMが、支持壁8に対して作用する横方向力QKの最大値M1のほぼ領域内にあるように、支持要素11は支持壁8に配置される。これは、図7aを参照して再び例示される。
既に述べたように、支持壁8は、プッシュロッド15によってクランクシャフト3に連結され且つピストンロッド16によって大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1’のピストン(図示せず)に連結されるクロスヘッド10を案内するための滑動表面9を担持する。
この点で、支持要素11が、先行技術から公知の支持体11’とは異なって、ベースシート12とカバープレート13との間でスタンド5の全高HTにわたって延びるのではなく、滑動表面9の又はスタンド5の横方向高さHTよりも小さい横方向範囲hのみにわたって延びることは本発明の特徴である。
この点で、ベースプレート2は、軸受サドルと、クランクシャフト3を受け入れ且つ軸支するための横方向支持要素(本実施例では単壁のみを備えて示されている)と含む。しかし、本発明に従う別の実施例では、ベースプレート2の中の横方向支持要素が、例えば、二重壁設計でもよい。それ自体が知られているように、シリンダ部分6、スタンド5、及びベースプレート2は、予張力が掛けられたタイロッドによって相互に連結される。この点で、タイロッド7は、横方向支持壁8に沿ってスタンド5の領域内に、且つ本図に従えば支持壁8の中で、二重壁支持要素11の内部に延びる。タイロッド7は、クランクシャフト3の軸線Kとスタンド5との間の領域内で、即ち、本図に従えばクランクシャフト3の軸線Kの上方でベースプレート2の軸受サドル中でねじ山付き穴の中に、それ自体公知の態様で取り付けられる。
図6に示した特に好ましい実施例では、タイロッド7の長手軸線Zが支持体11の横断方法壁間の中心を延びて、ベースプレート2中の支持体8が上に支持される、ベースプレート2の単壁設計の支持要素は、タイロッド7の長手軸線Zと面一に配置されている。タイロッド7は、ねじ山付き穴の中で軸受サドルの中に取り付けられ、特に、軸受シェルの変形を回避するために、クランクシャフト3の軸線Kとスタンド5との間の領域内に、即ち、本図に従えばクランクシャフト3の軸線Kの上方に取り付けられる。ベースプレート2の中の単壁支持要素はタイロッド7の長手軸線Zと面一に配置されるので、ベースプレート2がそれほど過剰な剛性を有することなく、特に高い安定性が得られる。
この点で、本発明に従う別の実施例では、タイロッド7がクランクシャフト3の軸線Kの下に繋止されることがどんな場合でも可能である。また本発明のこのような実施例は、同様に負荷プロファイルに依存して有利に使用され得る。
図7bは、本発明に従う支持要素11の第1の実施例を通る、図7aの線III−IIIに沿った断面を示す。
図7bから理解され得るように、特別な実施例における支持要素11は三角形の支持要素11であり、その中に2本のタイロッドが案内され且つ中心壁14が支持要素11に達してその中へ延びて、それによってスタンド5の安定性がさらに増大される。
また他の三角形支持要素11が、どんな場合でも有利に使用され得ることが理解される。例えば、中心壁14が支持要素11の内部に達せずその中へ延びないもの及び/又はそれぞれの場合で1本のタイロッド7のみが各三角形支持要素11に関連するもの。
図7c及び図7dは、本発明に従う支持要素11の第2及び第3の特別な実施例を通る、図7aの線III−IIIに沿った断面を示す。
この点で、支持要素11は、図7bの支持要素と同様に、中空本体として作製されるが、長方形断面を有する。この場合も、例えば、長方形断面が選択されて、1本のみのタイロッド7が、例えば、支持要素11に通して案内され得る。
図7dは、中空本体として設計されていないが、少なくとも1本のタイロッドが貫通して案内される中実な本体として設計される本発明に従う支持要素11の特別な実施例を示す。
図8に、本発明に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1の第2の実施例が、両側に支持要素11が配置されて模式的に示されている。この実施例は、支持壁8に係合する横方向力QKがスタンド5の両側で非常に大きいので、支持要素11が、好ましくは横方向力QKの最大値M1、M2の領域内で、スタンドを安定化するために両側に設けられなければならないときに、特に有利に使用され得る。
実行に非常に重要である、本発明に従う大型クロスヘッド・ディーゼル・エンジン1の第3の実施例が図9に示されているが、この実施例では、それ自体が先行技術から公知のような全体を貫いて延びる横方向支持体110が、スタンド5の一側に、ここでは本図に従えば左側に設けられる。この点で、本発明に従えば、本発明による支持要素11が、それに対向して配置された支持壁8に設けられる。
この非常に特別な図9の実施例は、スタンドの一側で、本図に従えば左の側で横方向力QKが非常に大きくなり得るので、本発明に従う支持要素11による支持では十分でないときに、特に非常に有利に使用される。しかし、それに対向して配置された側では、横方向力QKが遙かにより小さいので、この実施例の場合には部分的に横方向範囲hの本発明に従う支持要素11を設けることだけで十分である。
当業者であれば、本発明は、明示的に論じた実施例のみに限定されものではなく、それに対応する更なる発展型も同様に本発明によって網羅されることを理解しよう。当然のことであるが、特に本発明は、論じられた特別な実施例の全ての適切な組合せに関する。