JP2015178218A - 光硬化性樹脂積層体、偏光板、及び透過型液晶ディスプレイ - Google Patents

光硬化性樹脂積層体、偏光板、及び透過型液晶ディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】基材を薄膜化しても、強度及び位相差を両立させることができる光硬化性樹脂積層体、偏光板、及び透過型液晶ディスプレイを提供する。また、光硬化性樹脂積層体を有する液晶ディスプレイにおいて、視認性の良好な液晶表示装置を提供する。また、基材を薄型化した場合における塗工プロセス時の搬送効率を向上させる。
【解決手段】本発明の光硬化性樹脂積層体は、基材と、基材の少なくとも1つの面に積層された光硬化性樹脂層とを備える光硬化性樹脂積層体であって、光硬化性樹脂層は、紫外線硬化性樹脂を含み、紫外線硬化性樹脂の60重量%以上は、分子量が800以上、15000以下であり、ウレタン骨格を有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を2個または3個含有し、光硬化性樹脂積層体の引張強度は80N/mm以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロクロミック表示装置、発光ダイオード表示装置、EL表示装置などや、タッチパネルなどの表示装置部品などの保護フィルムとして使用でき、また、機能性フィルムとして使用できる光硬化性樹脂積層体(光硬化性樹脂塗布フィルム)に関する。
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルムや、有機ELディスプレイ等に用いられる偏光板の保護フィルムは、様々な機能を持たせるために樹脂層が形成されている。樹脂層としては、例えば帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、反射を抑えるための反射防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層といったものが形成される。特に、ハードコート層についてはディスプレイ用途では必要不可欠な要素になっており、単層で用いるだけでなく反射防止層の下層にもなる。
液晶表示装置は、液晶分子の複屈折性を利用した表示素子である。液晶表示装置を構成する部材においては、液晶、位相差板、偏光板以外のものは位相差をもたないものとして設計することが多い。液晶、位相差板、偏光板以外の部材において、微小ながらも位相差を有する場合には、液晶表示装置特有の視認性、特に斜め視認性が悪化する。そのため、液晶表示装置などで使用される基材(支持体)や、塗布膜は極力位相差を有さないものが望ましい。
光学フィルムの基材(支持体)として使用されるトリアセチルセルロース(TAC)やポリエチレンテレフタレート(PET)などは、基材の材料による性質、またはその基材)の製造過程により位相差が発生する。たとえば、これらを液晶ディスプレイのハードコートの基材(支持フィルム)として使用した場合には、視認性の低下が生じやすくなるため、近年では、基材の位相差を低減させる検討も試みられている(非特許文献1)。
位相差は式(1)にてあらわされ、膜厚に比例して大きくなる。また、複屈折率は、式(2)にてあらわされる。式(1)より、位相差を有する基材について、膜厚の薄いものを使用する方が視認性は良化することが分かる。
Rth=Δn×d ・・・式(1)
Δn=(2π/45kT)×{(ND+2)/ND}×(σ‖−σ⊥)×σ
・・・式(2)
Δn :複屈折率
ND :平均屈折率
σ‖−σ⊥ :主分極差
σ :応力
k :ボルツマン定数
T :絶対温度
Rth :厚み方向位相差
d :膜厚
また、基材に塗工する塗液についても、位相差の小さいものであることが望ましい。特に、熱硬化性の樹脂においては、収縮が大きいものを用いると、上記式(2)に記載の応力σが大きくなり、結果として位相差が大きくなる。
また、近年では、フィルムにおいても薄型化の要求が多くなされている。液晶ディスプレイ用光学機能フィルムから成る基層フィルムに耐衝撃性を向上させるための粘着層を塗布する検討などがなされている(特許文献1)。
一方で、液晶表示装置において、ハードコートフィルムには従来の厚さ(60〜120μm程度)の半分程度の厚さを有する基材の使用が望まれている。このような薄い基材に、従来通りのハードコート層を形成すると、ハードコート層の硬化収縮により、ハードコートフィルムにさらに大きなカールが発生する。その結果、表面保護フィルムとして使用することが困難となる。また、基材が薄くなることにより、基材自体の強度が低下し、塗工プロセスにおいて、搬送時に基材が破断しやすくなるといった問題が生じる。
特に、トリアセチルセルロース(TAC)などにおいては、塗膜を形成する際、塗液に含まれる溶剤により、基材が溶解もしくは膨潤することにより、脆さが生じやすくなることもある(特許文献2)。
特開2007−156066号公報 特開2008−133352号公報
鈴木亮、「低複屈折光学フィルムの開発と動向」、月刊ディスプレイ、テクノタイムズ社、2012年4月
このように、従来は、光硬化性樹脂積層体(ハードコートフィルム)に使用される基材を薄膜化した場合に、光硬化性樹脂積層体で生じる位相差と、光硬化性樹脂積層体の強度とを両立させることが困難であった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、基材を薄膜化しても、強度及び位相差を両立させることができる光硬化性樹脂積層体を提供する。また、光硬化性樹脂積層体を有する液晶ディスプレイにおいて、視認性の良好な液晶表示装置を提供する。また、基材を薄型化した場合における塗工プロセス時の搬送効率を向上させる。
本発明に係る光硬化性樹脂積層体は、基材と、基材の少なくとも1つの面に積層された光硬化性樹脂層とを備える光硬化性樹脂積層体であって、光硬化性樹脂層は、紫外線硬化性樹脂を含み、紫外線硬化性樹脂の60重量%以上は、分子量が800以上、15000以下であり、ウレタン骨格を有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を2個または3個含有し、光硬化性樹脂積層体の引張強度は80N/mm以上である。
また、式(I)で定義される引張り伸度が0.15以上であるとよい。
引張り伸度={(破断時の長さ)−(引っ張り前の初期長さ)}/引張り前の初期長さ・・・式(I)
また、式(II)で定義される厚み方向位相差Rthの絶対値が10以下であるとよい。
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d ・・・式(II)
ここで、式(II)中、Nxは光硬化性樹脂フィルムの平面内のx方向の屈折率、Nyは光硬化性樹脂フィルムの平面内のy方向の屈折率、Nzは光硬化性樹脂フィルムの厚み方向の屈折率を表す。ここで、NxはNx≧Nyとする遅相軸、dは光硬化性樹脂フィルムの厚み(nm)である。
また、基材の厚みは20から40μmであり、光硬化性樹脂層は、10μm以上70μm以下であるとよい。
本発明に係る偏光板は、前述の光硬化性樹脂積層体を備える。
本発明に係る透過型ディスプレイは、前述の光硬化性樹脂積層体を備える。
本発明に係る光硬化型樹脂積層体(光硬化性樹脂フィルム)は、位相差が小さく、光硬化型樹脂積層体を搭載した液晶ディスプレイにおいて視認性を向上させる効果が期待される。また、光硬化型樹脂積層体の基材が薄くても引張り特性が良好で、製造プロセスにおける作業性の向上が期待できる。
本願発明者は鋭意検討した結果、紫外線硬化性樹脂(紫外線硬化性物質)の中に、ウレタン骨格(ウレタン結合)を有し、アクリロイル基、またはメタクリロイル基を2から3個含み、分子量が800以上、15000以下である樹脂を60重量%以上含むことを特徴とする塗液を用いて、基材上に光硬化性樹脂層を形成することを発明した。例えば、この塗液を、厚さが20μm以上、40μm以下の基材(支持体)の片面もしくは両面に、10μm以上70μm以下の厚さで塗工する。これにより、光硬化性樹脂積層体(光硬化性樹脂塗布フィルム)の引張り特性が向上し、さらには、この光硬化性樹脂積層体をハードコートフィルムとして液晶表示装置に搭載することで、視認性良好な液晶ディスプレイを提供できる。
本発明に係る光硬化性樹脂積層体は、基材と、基材の少なくとも1つの面に積層された光硬化性樹脂層とを備える光硬化性樹脂積層体であって、光硬化性樹脂層は、紫外線硬化性樹脂を含み、紫外線硬化性樹脂の60重量%以上は、分子量が800以上、15000以下であり、ウレタン骨格を有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を2個または3個含有し、光硬化性樹脂積層体の引張強度は80N/mm以上である。この光硬化性樹脂層は、紫外線硬化性樹脂と紫外線重合開始剤を含む塗液を用いて形成される。この光硬化性樹脂積層体を液晶表示装置に搭載することで、視認性良好な液晶ディスプレイを実現することができる。
尚、以下の説明の便宜上、「分子量が800以上、15000以下であり、ウレタン骨格を有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を2個または3個含有」という条件を、条件Aということがある。
また、本発明に係る光硬化性樹脂積層体は、後述する式(I)で定義される引張り伸度が15%以上であるとよい。
また、本発明に係る光硬化性樹脂積層体は、後述する式(II)で定義される厚み方向位相差Rthの絶対値が10以下であるとよい。
また、基材の厚みは20以上40μm以下であり、光硬化性樹脂層の厚みは、10μm以上70μm以下であるとよい。
ここで、基材(支持体)を薄膜化することにより、基材の引張り強度、引張り伸度などの機械特性は低減し、塗工プロセスでの搬送時に破断しやすくなるといった問題が生じる。光硬化性樹脂積層体(フィルム)の強度を向上させるため、基材の片面、もしくは両面に塗布して形成した塗膜強度をあげることにより、光硬化性樹脂積層体の強度が向上する。
本発明では、塗布する樹脂に、ウレタン骨格を含み、アクリロイル基、乃至は、メタクリロイル基を2から3個含有し、分子量が800以上、15000以下である樹脂を、全紫外線硬化性樹脂中60重量%以上含ませることで、フィルムの靭性を向上させることができる。なお、分子量は、800以上、10000以下であってもよい。
本発明で使用される紫外線硬化性樹脂(紫外線硬化性物質)とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする樹脂のことをいう。
本発明で使用される紫外線硬化性樹脂として、ウレタンアクリレート(メタクリレート)系のモノマーを用いることができる。ウレタンアクリレート(メタクリレート)系のモノマーとしては、ウレタン骨格を有し、分子量が800〜15000、2個から3個のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有するもので、UF−8001G(共栄社化学社製)、UA−122P(新中村化学工業社製)、UV−3520(日本合成化学工業社製)、UV−7000B(日本合成化学工業社製)などを用いることができる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。
上記、ウレタンアクリレート系のモノマーとあわせて、これ以外のモノマーを用いることも出来る。ウレタンアクリレート系のモノマーとあわせるモノマーとして、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリオールアクリレート系等を用いることができる。これらの紫外線硬化性樹脂(電離放射線硬化型樹脂)は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシアクリレート、又は2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させ容易に形成されるものを用いることができる。
エポキシアクリレートとしては、エポキシ樹脂のエポキシ基を開環しアクリル酸でアクリル化することにより得られるアクリレートであり、芳香環、脂環式のエポキシを用いたものを用いることができる。
使用する上記のウレタンアクリレートの重量としては、紫外線硬化性樹脂の60重量%以上が望ましい。60重量%よりも少ない場合は、ウレタンによる靭性向上効果が低減し、フィルムが切れやすくなる。
本発明では塗液において、溶剤の有無は問わないが、溶剤を使用する場合には光硬化性樹脂を溶解するものであれば何でも使用できる。塗膜形成後の面性を良化させるためには、比較的沸点の高いもののほうが、レベリング性(均一塗布性)が向上する。また、塗膜の膜厚が厚い場合には、塗膜中に溶剤が残りやすくなるため、できるだけ沸点は低いほうがよく、前者と後者のバランスを考慮して溶剤を決定することができる。
また、本発明で塗液に使用される紫外線重合開始剤としては、特に限定されないが、透明樹脂の硬化で、特に着色の少ないIrg184を用いることができる。また、表面硬化系の重合開始剤α−ヒドロキシケトン、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、高いモル吸光係数をもつα−アミノケトンの2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンと内部硬化系の重合開始剤であるアシルフォスフィンオキサイド、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、また、h線に吸収領域を有するα−アミノケトン、例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などを組み合わせて使用してもよい。
また、上記に示されるもの以外にも、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等で、表面硬化系、内部硬化系の特徴を有する開始剤であれば適宜選択できる。
紫外線重合開始剤の使用量は、紫外線硬化性樹脂(感光性着色組成物)の全固形分量を基準として、0.5〜15重量%が好ましく、この範囲より多くても少なくても、膜硬度は低くなる傾向にある。特に、多すぎる場合には、塗膜が着色する可能性もある。
また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いてもよい。
本発明において使用される基材(支持体)としては、たとえば偏光板用途においては、適度な透湿度を有するトリアセチルセルロース(TAC)が多く使用される。その他、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ノルボネン系樹脂(環状オレフィン共重合体)、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリサルフォン等、広範囲な高分子フィルムを用いることができるが、特にこれらに限定されない。
溶剤に紫外線硬化性樹脂および紫外線重合開始剤などを溶解し調製した塗料には、防汚性、滑り性付与、欠陥防止、粒子の分散性向上のために添加剤を添加してもよい。例えば、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー、アクリル系共重合物、ポリエステル変性アクリル含有ポリジメチルシロキサン、シリコン変性ポリアクリル等を用いることができる。
また、上記塗料の基材への塗工方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば、特に限定されない。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。照射条件として、紫外線照射量は、100〜800mJ/cmに設定することができる。
以上のようにして得た光硬化性樹脂層には、ブロッキング防止や硬度付与、防眩性、帯電防止性能付与、または屈折率調整のために無機あるいは有機化合物の微粒子を含ませることができる。
使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、五酸化アンチモンといった酸化物やアンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ等複合酸化物などを用いることができる。その他では、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等も使用することができる。
また、有機微粒子としては、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリル−スチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン樹脂粉末、ポリスチレン系粉末、ポリカーボネート粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末等を用いることができる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、5nm〜20μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましい。また、これらの微粒子は2種類以上を複合して用いることもできる。
本発明で得られる光硬化性樹脂積層体(光硬化性樹脂塗布フィルム)は、必要に応じて、塗布層上に反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、防眩性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、又は色補正性能等を有する機能層を設けてもよい。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。例えば、反射防止層にあっては、低屈折率層単層から構成されても構わないし、低屈折率層と高屈折率層の繰り返しによる複数層から構成されていても構わない。また、機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。
以上説明した光硬化性樹脂積層体を偏光子シート上に設けることで、位相差が小さく、機械的特性も向上した偏光板を実現することができる。
また、画像表示パネルとバックライトユニットを備えた透過型液晶ディスプレイにおいて、画像表示パネルが本発明に係る光硬化性樹脂積層体を含む偏光板を搭載することで、位相差が小さく、視認性向上効果が期待される。
以下に、実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
光硬化性樹脂フィルム(光硬化性樹脂積層体)の性能は,以下の方法に従って評価した。
光硬化性樹脂フィルムの厚み方向の位相差Rthについては、分光エリプソメーターM220(日本分光社製)を使用して、光硬化性樹脂層(塗膜)が形成された基材(基板)の法線方向から45°傾けた方向よりリタデーションΔ(λ)を測定し、この値を用いて得られる3次元屈折率から、式(3)を用いてRthを算出した。尚、分光エリプソメーターの測定波長は590nmとした。
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d ・・・式(3)
ここで、Nxは光硬化性樹脂層の平面内で定義したX方向の屈折率、NyはY方向の屈折率、Nzは厚み方向の屈折率である。また、NxはNx≧Nyとする遅相軸、dは光硬化性樹脂層の厚みである。
引張り特性の試験は、光硬化性樹脂フィルムから100mm×15mmの短冊状のフィルムサンプルを形成し、島津製作所社製小型卓上試験機LSC−02/30を用い、測定開始時のチャック間距離を50mmとし、引張り速度5mm/minにて試験をおこなった。また、引張り伸度は式(4)を用いて算出した。
引張り伸度={(破断時の長さ)−(引張り前の初期長さ)}/引張り前の初期長さ
・・・式(4)
<実施例1>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UF−8001G(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)は上述の条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は60N/mm、引張り伸度は50%で、位相差Rthは5となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<実施例2>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UA−122P(新中村化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は72N/mm、引張り伸度は23%で、位相差Rthは6となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<実施例3>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−3520(日本合成化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は75N/mm、引張り伸度は30%で、位相差Rthは5となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<実施例4>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−3520(日本合成化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚40μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は80N/mm、引張り伸度は40%で、位相差Rthは6となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<実施例5>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−3520(日本合成化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚70μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は87N/mm、引張り伸度は48%で、位相差Rthは8となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<実施例6>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−7000B(日本合成化学工業) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は90N/mm、引張り伸度は15%で、位相差Rthは7となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<実施例7>
40μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−7000B(日本合成化学工業) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は130N/mm、引張り伸度は19%で、位相差Rthは10となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
<比較例1>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UA−306H(共栄社化学) 60.95重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、UA−306H(共栄社化学)は条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は140N/mm、引張り伸度は1%で、位相差Rthは18となった。塗膜は割れやすく、位相差の大きいフィルムとなった。
<比較例2>
40μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
AT600(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、AT600(共栄社化学)は条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は145N/mm、引張り伸度は11%で、位相差Rthは30となった。塗膜は割れやすく、位相差の大きいフィルムとなった。
<比較例3>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
AH600(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、AH600(共栄社化学)は条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は110N/mm、引張り伸度は4%で、位相差Rthは16となった。塗膜は割れやすく、位相差の大きいフィルムとなった。
<比較例4>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV7000B(共栄社化学) 41.90 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)34.29 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は50N/mm、引張り伸度は5%で、位相差Rthは8となった。塗膜は切れやすく、位相差の小さいフィルムとなった。
<比較例5>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV7000B(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学) 15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.0 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚10μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は40N/mm、引張り伸度は15%で、位相差Rthは7となった。塗膜は切れやすく、位相差の小さいフィルムとなった。
以上の実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例5の評価結果を表1にまとめて示す。
ここで、表1の項目である分子量は、樹脂名に記載された樹脂の分子量である。また、官能基数は、アクリロイル基またはメタクリロイル基の数である。また、重量%(樹脂比率)は、全紫外線硬化性樹脂に対する、樹脂名に記載された樹脂の重量比率である。
Figure 2015178218
表1より、上述の条件Aを満たすウレタンアクリレートを全紫外線硬化性樹脂中に60重量%以上含み、塗布膜厚が20μm以上60μm以下の光硬化型樹脂塗布フィルムにおいては、引張り特性が良好(表1中の「○」)で、位相差も小さくなることがわかる。またそうでない場合は、割れが発生したり切れやすかったりして、引張り特性が良好でない(表1中の「×」)ことがわかる。
本発明の光硬化性樹脂積層体(光硬化型樹脂フィルム)は、位相差が小さく、また、この光硬化性樹脂積層体を搭載した液晶ディスプレイにおいて視認性向上効果が期待される。また、光硬化性樹脂積層体の基材が薄くても引張り特性が良好で、製造プロセスにおける作業性の向上が期待できる。
本発明は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロクロミック表示装置、発光ダイオード表示装置、EL表示装置などや、タッチパネルなどの表示装置部品などの保護フィルムとして使用でき、また、機能性フィルムとして使用できる光硬化性樹脂塗布フィルムなどに利用することができる。

Claims (6)

  1. 基材と、
    前記基材の少なくとも1つの面に積層された光硬化性樹脂層とを備える光硬化性樹脂積層体であって、
    前記光硬化性樹脂層は、紫外線硬化性樹脂を含み、
    前記紫外線硬化性樹脂の60重量%以上は、分子量が800以上、15000以下であり、ウレタン骨格を有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を2個または3個含有する樹脂であり、
    前記光硬化性樹脂積層体の引張強度は80N/mm以上であることを特徴とする、光硬化性樹脂積層体。
  2. 式(I)で定義される引張り伸度が0.15以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂積層体。
    引張り伸度={(破断時の長さ)−(引張り前の初期長さ)}/引張り前の初期長さ・・・式(I)
  3. 式(II)で定義される厚み方向位相差Rthの絶対値が10nm以下である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂積層体。
    Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d ・・・式(II)
    (式(II)中、Nxは光硬化性樹脂積層体の平面内のx方向の屈折率、Nyは光硬化性樹脂積層体の平面内のy方向の屈折率、Nzは光硬化性樹脂積層体の厚み方向の屈折率を表す。ここで、NxはNx≧Nyとする遅相軸方向の屈折率であり、dは光硬化性樹脂積層体の厚み(nm)である。)
  4. 前記基材の厚みは20以上40μm以下であり、
    前記光硬化性樹脂層の厚みは、10μm以上70μm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂積層体。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂積層体を備えることを特徴とする、偏光板。
  6. 請求項1から4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂積層体を備えることを特徴とする、透過型液晶ディスプレイ。
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