JP2015169519A - 脱進機、時計用ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Abstract
Description
振り座は、アンクルと接触する振り石を備えており、ひげぜんまいに蓄えられた動力により、てんぷとともに回動する。アンクルは、がんぎ車の歯部に対して係脱可能な入りつめ石および出つめ石を備えており、ひげぜんまいの動力が振り石を介して伝達されて、アンクル真周りに回動する。
例えば、特許文献1には、互いに噛み合う第一がんぎ車および第二がんぎ車と、第一がんぎ車および第二がんぎ車から交互に衝撃が与えられる第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石と、を備え、第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石がてんぷの振り石に設けられた時計用の脱進機が記載されている。特許文献1に記載の脱進機では、香箱車のぜんまいから付与される動力は、第一がんぎ車および第二がんぎ車からてんぷの第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石に直接伝達される(いわゆる直接衝撃型)。
とりわけ、従来技術にあっては、てんぷの二振動一周期のうち一振動分の時間で、第二がんぎ車に対するアンクルの係合が解除されている。すなわち、機械式時計の動作時間のうち50%の時間が、第二がんぎ車に対するアンクルの非係合状態の時間、すなわち第二がんぎ車のガタつきが発生し得る時間となる。したがって、第二がんぎ車のガタつき時間の短縮という点で改善が望まれる。
また、本発明の時計は、上述の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする。
以下では、第一実施形態に係る機械式の時計について説明したあと、第一実施形態に係る脱進機の詳細について説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
)を表側からみた平面図である。なお、図1では、てんぷ5のてん輪5aを二点鎖線で図示している。
図1に示すように、時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、基板を構成する地板102を有している。地板102には、巻真案内孔103が形成されている。巻真案内孔103には、巻真104が回転可能に組み込まれている。ムーブメント101の表側(図1における紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車106、三番車107、二番車108および香箱車110が配置されているとともに、表輪列105の回転を制御する脱進機1が配置されている。
二番車108は、三番車107と噛合している。二番車108が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
三番車107は、四番車106と噛合している。三番車107が回転すると、四番車106が回転するように構成されている。
四番車106が回転することにより脱進機1および調速機2が駆動する。脱進機1については、後に詳述する。
てんぷ5は、回動軸であるてん真31と、てん真31に外嵌固定されているてん輪5aと、後述の振り座30と、不図示のひげぜんまいとを有している。
そして、脱進機1および調速機2が駆動することにより、四番車106が1分間に1回転するように制御されるとともに、二番車108が1時間に1回転するように制御される。
図2は、第一実施形態に係る脱進機1の斜視図である。なお、図2において、紙面上側がムーブメント101の表側となっており、紙面下側がムーブメント101の裏側となっている。
図3は、第一実施形態に係る脱進機1の平面図である。なお、図3において、紙面手前側がムーブメント101の表側となっており、紙面奥側がムーブメント101の裏側となっている。また、図3では、後述の振り座30のうち小つば39と振り石36のみを図示している。
ここで、図2および図3では、後述のアンクル40が回動範囲の中間部に位置する状態を図示している。このとき、振り座30(すなわちてんぷ5)の振り角は、0°となっている。
図2および図3に示すように、本実施形態に係る脱進機1は、主に振り座30と、アンクル40と、第一がんぎ車10と、第二がんぎ車20と、を備えている。以下に、脱進機1を構成する各部品について詳細に説明する。
大つば32は、円板状の部材であり、大つば32の軸方向に貫通する貫通孔33を有している。貫通孔33には、振り石36が例えば圧入固定されている。
振り石36は、例えばルビー等により、軸方向から見て径方向の外側に平坦面を有するとともに、径方向の内側に弧状面を有する半円形状に形成されている。振り石36は、軸方向に沿って設けられており、大つば32からムーブメント101の裏側に向かって突出している。振り石36は、後述するアンクル40に対して接触可能とされる。
アンクル体41には、アンクル真43とは反対側の他方端部に、平面視略U字状に形成されたクワガタ44が設けられている。クワガタ44の内側は、振り座30が回動することにより振り石36が係脱可能なアンクルハコ44aとなっている。
また、クワガタ44の内側には、振り座30の小つば39に向かって突出する剣先44bが設けられている。剣先44bの先端は、振り座30の回動時において、小つば39の外周面のうち、ツキガタ39aを挟んで周方向の両側の一部領域と摺接する。これにより、振り石36がアンクルハコ44aから離脱した状態であっても、アンクル40が回動するのを防止できる。
第一衝撃つめ石保持部42a、第二衝撃つめ石保持部42b、入りつめ石保持部42cおよび出つめ石保持部42dには、それぞれスリットが形成されている。
第一歯車11は、外周面に歯部11aを複数備えている。第一歯車11の歯部11aは、後述の第二がんぎ車20の第二歯車21の歯部21aと噛合している。
がんぎかな12は、表輪列105を構成する四番車106(図1参照)と噛合している。がんぎかな12には、二番車108、三番車107および四番車106を介して、香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力が伝達される。これにより、第一がんぎ車10は、中心軸Q1周りに時計回り方向に回転する。
第二歯車21は、外周面に歯部21aを複数備えている。第二歯車21の歯部21aは、第一がんぎ車10の第一歯車11の歯部11aと噛合している。第二歯車21には、二番車108、三番車107、四番車106および第一がんぎ車10を介して香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力が伝達される。これにより、第二がんぎ車20は、中心軸Q2周りに反時計回り方向に回転する。
図4から図11は、脱進機1の動作説明図である。
続いて、上述のように構成された脱進機1の作用について、図4から図11を用いて説明する。
以下では、てんぷ5の自由振動にともない振り座30が中心軸O周りに反時計回り方向に回動した後、時計回り方向に回動する二振動一周期の動作について、順を追って説明する。また、以下の説明における動作開始状態では、図4に示すように、アンクル40のアンクル体41が第二がんぎ車20側のドテピン45bに当接しているとともに、アンクル40の出つめ石49が第二がんぎ車20の停止用がんぎ歯車26と係合している。このとき、第二がんぎ車20および第二がんぎ車20と噛合する第一がんぎ車10は、回転が停止している。
このとき、第一がんぎ車10は、二番車108、三番車107および四番車106を介して香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力が伝達されて、時計回り方向に回転する。また、第一がんぎ車10と噛合する第二がんぎ車20は、第一がんぎ車10を介して香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力が伝達されて、反時計回り方向に回転する。
続いて、図9に示すように、振り座30が時計回り方向に回動すると、図10に示すように、入りつめ石48と第二がんぎ車20の停止用がんぎ歯車26との係合が解除されて、第一がんぎ車10が時計回り方向に回転し、第一がんぎ車10と噛合する第二がんぎ車20が反時計回り方向に回転する。なお、図9は、入りつめ石48が第二がんぎ車20から離脱する直前の状態(以下、「第一状態」という。)を図示しており、図10は、入りつめ石48が第二がんぎ車20から離脱した後の状態を図示している。
その後、図4に示すように、アンクル40の出つめ石49が第二がんぎ車20の停止用がんぎ歯車26と係合し、アンクル体41がドテピン45bに当接することにより、第二がんぎ車20および第二がんぎ車20と噛合する第一がんぎ車10の回転が停止する。
以降、上述の動作を繰返すことにより、第一実施形態の脱進機1は、第二がんぎ車20と入りつめ石48および出つめ石49との係脱を交互に繰り返し行うとともに、アンクル40を介しててんぷ5に動力を付与する、いわゆる間接衝撃型の脱進機1として動作することができる。
第一実施形態によれば、入りつめ石48および出つめ石49と係脱可能な停止用がんぎ歯車26を有し、第一がんぎ車10と噛合される第二がんぎ車20を備えているので、第一がんぎ車10および第二がんぎ車20の回転および停止を第二がんぎ車20により制御できる。ここで、第二がんぎ車20は、入りつめ石48および出つめ石49のいずれかが停止用がんぎ歯車26に係合されるので、従来技術と比較して第二がんぎ車20に対するアンクル40の非係合状態の時間を削減できる。これにより、第二がんぎ車20のガタつき時間を大幅に削減できるので、脱進機1の動作の安定性を確保しつつ、動力伝達効率の低下を抑制できる。
なお、第一実施形態においては、第一がんぎ車10には、香箱車110内のぜんまい111の動力が伝達されるようになっている。しかし、第一がんぎ車10に伝達される動力はこれに限定されず、例えば、香箱車110以外に設けられたぜんまいから、第一がんぎ車10に動力が伝達されるようにしてもよい。
図12は、第一実施形態の変形例に係る脱進機1の平面図である。
続いて、第一実施形態の変形例に係る脱進機1ついて説明する。
実施形態では、第二がんぎ車20は、第二衝撃つめ石47と接触可能な第二衝撃用がんぎ歯車25と、入りつめ石48および出つめ石49と係脱可能な停止用がんぎ歯車26と、を有していた(図2参照)。
これに対して、図12に示すように、第一実施形態の変形例では、第二衝撃用がんぎ歯車25と停止用がんぎ歯車26とが第二がんぎ歯車24として一体形成されている点で、実施形態とは異なっている。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略する。
なお、第一がんぎ車10の第一衝撃用がんぎ歯車15について、形状は第一実施形態に限定されない。したがって、第一実施形態の変形例のように、第一衝撃用がんぎ歯車15の第一衝撃歯部15aは、第二がんぎ歯車24の第二がんぎ歯部24aと同様に、例えば軸方向に沿って立設されていてもよい。
また、第一実施形態の変形例のように、アンクル40に長孔が形成されており、ドテピン45が長孔内に遊挿されることで、アンクル40の回動量が規制される形態としてもよい。
続いて、第二実施形態に係る脱進機1について説明する。
図13は、第二実施形態に係る脱進機1の平面図である。
第一実施形態では、アンクル40に第一衝撃つめ石46および第二衝撃つめ石47が設けられており、いわゆる間接衝撃型の脱進機1を構成していた。
これに対して、図13に示すように、第二実施形態に係る脱進機1は、振り座30に第一衝撃つめ石46および第二衝撃つめ石47が設けられており、いわゆる直接衝撃型の脱進機1を構成している点で、第一実施形態とは異なっている。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略する。
なお、第二実施形態のように、アンクル40に貫通孔が形成されており、入りつめ石48が貫通孔内に挿入固定される形態としてもよい。
また、振り石36や第一衝撃つめ石46、第二衝撃つめ石47、入りつめ石48、出つめ石49等の固定方法は、各実施形態に限定されない。
Claims (6)
- てんぷに動力を付与するための第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石と、
入りつめ石と、出つめ石とを有し、アンクル真周りに回動可能なアンクルと、
動力が伝達され、前記第一衝撃つめ石と接触可能な第一衝撃用がんぎ歯車を有する第一がんぎ車と、
前記第二衝撃つめ石と接触可能な第二衝撃用がんぎ歯車と、前記入りつめ石および前記出つめ石と係脱可能な停止用がんぎ歯車と、を有し、前記第一がんぎ車と噛合される第二がんぎ車と、
を備えたことを特徴とする脱進機。 - 請求項1に記載の脱進機であって、
前記第二衝撃用がんぎ歯車と前記停止用がんぎ歯車とは、一体形成された第二がんぎ歯車であることを特徴とする脱進機。 - 請求項1または2に記載の脱進機であって、
前記アンクルには、前記第一衝撃つめ石および前記第二衝撃つめ石が設けられていることを特徴とする脱進機。 - 請求項1または2に記載の脱進機であって、
前記てんぷには、前記第一衝撃つめ石および前記第二衝撃つめ石が設けられていることを特徴とする脱進機。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の脱進機を備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
- 請求項5に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
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