JP2015168916A - ポリエステル繊維の製造方法、ポリエステル繊維、ヤーン及び織物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエステル繊維及びその織物が染色され難い欠点を改善するために、染色キャリアを添加することなく分散性染料を用いて常圧且つ100℃以下で繊維を染色し、染色度及び色堅牢度に優れたポリエステル繊維の製造方法及びその織物を提供する。
【解決手段】ガラス移転温度(Tg)が20℃超え〜100℃の第1のポリエステル成分99.9〜60重量%と、ガラス移転温度(Tg)が20℃〜−50℃の第2のポリエステル成分0.1〜40重量%とからなる組成物に対し極限粘度0.5〜1.5(dl/g)のものに溶融させてから溶融紡糸を行う方法及び当該繊維を用いた織物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル繊維の製造方法に関し、特に、優れた低温染色性を有するポリエステル繊維の製造方法に関するものである。
従来より、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、以下、「PET」と称すことがある)を始めとするポリエステル材料からなる繊維は、高強力を持ち、防汚性にも優れているなどの長所があるから、衣類に汎用されつつあるが、PET等のポリエステル製品自体の最も欠点としては染色性に劣っている。そのため、分散性染料を用いてPET等のポリエステル製品に対し染色しようとする場合には、130℃以上の高温にて染色せざるを得ず、大量のエネルギーを消耗するばかりでなく、高温環境を達成するために高圧設備の使用によるコストの増大にも繋がる。更に、通常、高圧染色工程はバッチプロセスであるため、染色製品を連続に製造できず、よって加工コストが高くなってしまう。
また、例えばPET等のポリエステル繊維と天然繊維や彈性繊維とからなる混紡布に対し染色しようとすると、天然繊維や彈性繊維自体は耐熱性に限度があるため、高温・高壓下での染色はまず不可能である。このような問題を解決するために、染色工程において染色キャリア(dyeing carrier)又は膨張剤(swelling agent)の添加により染色温度及び染色圧力を低減させる方法が考えられるが、染色工程に染色キャリアや膨張剤を用いると、染色後に排出される廃水は環境を汚染しやすいので、環境保護の観点からその使用をなるべく避けるべきである。
このように、繊維に対する染色は例えば130℃との比較的高温下で行われた場合、PET等のポリエステル繊維と、天然繊維や彈性繊維等の低耐熱性繊維とを同一の染色槽で染色するのが望ましくない。その結果、PET等のポリエステル繊維の適用分野に制限が生じてしまう。一方、ポリエステル繊維と彈性繊維や天然繊維とを同時に染色させるために例えば染色温度を100℃以下に低減する対策も考えられる。
また、PET等のポリエステル繊維の染色性を改善するために、ポリエステル原料に良好な染色性を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリトリメチレンテレフタレート((PTT)を混入して係る繊維を製造することが試されるが、低温(100℃以下)での繊維に対する染色効果はやはり不十分であった。
本発明は、PET等のポリエステル繊維、及びPET等のポリエステル繊維を含んでなる織物が比較的低温で染色され難い欠点を改善するためのポリエステル繊維の製造方法を提供することを目的とする。
又、本明細書において所謂“低温染色”とは、100℃以下の染色温度で繊維を染色することを言う。
上記課題を解決するために、本発明は、ガラス移転温度(Tg)が20℃超え〜100℃の第1のポリエステル成分99.9〜60重量%と、ガラス移転温度(Tg)が20℃〜−50℃の第2のポリエステル成分0.1〜40重量%とからなる組成物を、極限粘度0.5〜1.5(dl/g)のものに溶融させてから紡糸を行うことにより、ポリエステル繊維を製造することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記ポリエステル繊維の製造方法により得られるポリエステル繊維を提供する。
更に、本発明は、前記ポリエステル繊維から形成され、又は前記ポリエステル繊維と他の繊維を複合して形成されるヤーンを提供する。
更に、本発明は、前記ポリエステル繊維又は前記ヤーンからなる織物を提供する。
本発明のポリエステル繊維の製造方法によれば、その製造し得たポリエステル繊維は低温染色性に優れているので、ポリエステル繊維自体の適用分野を拡大することができる。
本発明のポリエステル繊維の製造方法においては、第1のポリエステル成分と第2のポリエステル成分とからなる組成物をポリエステル原料とし、それによりポリエステル繊維を製造する。
本発明の第1のポリエステル成分としては、ガラス移転温度(以下、「Tg」と称することがある)が20℃超え〜100℃のものが用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレングリコールイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコールイソフタレートの共重合体、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、カチオン可染ポリエステル、リサイクルPET及びバイオPETからなる群れから選ばれるものが用いられる。
上記組成物において、第1のポリエステル成分は第2のポリエステル成分よりも多量に含有され、その配合比例としては99.9〜60重量%であるのが好ましい。
また、第2のポリエステル成分としては、第1のポリエステル成分と異なる成分、特にTgが20℃〜−50℃のものが用いられ、具体的には、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)(Tg:−30℃)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)(Tg:−45℃)、ポリブチレンサクシネート(PBS)(Tg:−32℃)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(PHB)(Tg:9℃)、及びポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)(PHBV)(Tg:2〜−9℃)からなる群れから選ばれるものが用いられる。
第2のポリエステル成分としてTgが20℃〜−50℃のものを使用した理由としては、第2のポリエステル成分のTgが20℃を超えた場合、この第2のポリエステル成分の添加による、染色温度100℃以下での繊維に対する染色効果は不十分となり、一方、第2のポリエステル成分のTgが−50℃未満の場合、その得られた組成物の耐熱性が低くとなり、紡糸工程の進行が困難となるからである。
また、前記組成物における第2のポリエステル成分の配合比例として0.1〜40重量%であるのが好ましい。何故なら、第2のポリエステル成分の含有量が0.1重量%未満である場合、この第2のポリエステル成分の添加による、染色温度100℃以下での繊維に対する染色効果は不十分となり、一方、第2のポリエステル成分の含有量が40重量%を超えた場合、その製造された繊維に対し高い染色効果を付与できるものの、製造コストが高くなり、経済的でないからである。
本発明者は、第1のポリエステル成分と第2のポリエステル成分とを前記の配合比例で混合し組成物を調製する際に、その組成物を溶融させて極限粘度0.5〜1.5(dl/g)のものに調整することで、この紡糸原料により製造された繊維は優れた低温染色性を有することになることを発見した。
本発明のポリエステル繊維を製造する際に、まず前記紡糸原料を加熱して溶融状態にし、紡糸機の紡糸口から紡績速度2500〜3500m/min(POY工程の場合)や紡績速度3500〜6000m/min(HOY工程の場合)にて巻き取りを行い、その後、巻取速度300〜1000m/min、ホットプレート温度160〜280℃、延伸倍率1〜5倍に基づく延伸加工糸(DTY)の工程、若しくはエア加工糸(ATY)の工程により低温染色性を有する延伸加工糸(仮撚加工糸)を製造する。
更に、本発明のポリエステル繊維は、ストレート紡績・延伸工程により製造されることも可能である。具体的には、前記紡糸原料を加熱して溶融状態にし、紡糸機の紡糸口から紡績速度1000〜6000m/min、延伸倍率1.0〜10倍、延伸温度25〜200℃及びヒートセット温度60〜260℃にて紡績、延伸を行い、低温染色性を有する全延伸糸(FDY)を製造する。
上記本発明のポリエステル繊維の製造方法により得られたポリエステル繊維は、そのもの自体で織物に織り成り、若しくはこのポリエステル繊維をその他の繊維(例えば天然繊維など)と混合紡績を経て織物に織り成ることができる。そして、染色キャリア等の添加がないように分散性染料を用いて100℃以下の温度で織物に対し染色を行うことができる。この染色工程は常圧下で操作されるため、安全且つ省エネルギーの操作ができ、染色により発生する廃水を大幅に低減することもできる。
本発明のポリエステル繊維の製造方法によれば、円形状断面、非円形状断面又は複合断面の繊維を製造することができる。
また、本発明のポリエステル繊維の製造方法によれば、長繊維や短繊維を製造することができる。
本発明はポリエステル繊維を製造する過程において、必要に応じてその他の機能性添加剤、例えば燃焼防止剤、蓄熱保温剤、紫外線防止剤、静電防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、消光剤等を添加することも可能である。
実施例1
ポリエチレンテレフタレート85重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15重量%とからなる組成物を285℃で溶融させて極限粘度0.640dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、120d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.65倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標)NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例2
ポリエチレンテレフタレート85重量%と、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)15重量%とからなる組成物を285℃で溶融させて極限粘度0.629dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、129d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.72倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例3
ポリエチレンテレフタレート85重量%と、ポリブチレンサクシネート(PBS)15重量%とからなる組成物を280℃にて溶融させて極限粘度0.64dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、124d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.65倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例4
ポリエチレンテレフタレート95 重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)5重量%とからなる組成物を285℃で溶融させて極限粘度0.640dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、120d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.65倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例5
ポリエチレンテレフタレート99 重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)1重量%とからなる組成物を288℃で溶融させて極限粘度0.640 dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、120d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.65倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例6
ポリエチレンテレフタレート60重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)40重量%とからなる組成物を280℃にて溶融させて極限粘度0.640dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、120d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.65倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例7
ポリエチレンテレフタレート85重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15重量%とからなる組成物を285℃で溶融させて極限粘度0.640dl/gのものにし、更に紡績速度5000m/min、延伸温度85℃、ヒートセット温度125℃、延伸倍率2.0倍の条件で75d/72fの全延伸糸(FDY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例8
ポリエチレンテレフタレート85重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15重量%とからなる組成物を290℃で溶融させて極限粘度0.92dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、120d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.65倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
実施例9〜12
実施例1の製造方法により得られた編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で夫々90℃(実施例9)、110℃(実施例10)、120℃(実施例11)、130℃(実施例12)まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値を測定した。その結果は実施例1と共に表2に示される。
実施例13〜16
実施例4の製造方法により得られた編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で夫々90℃(実施例13)、110℃(実施例14)、120℃(実施例15)、130℃(実施例16)まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値を測定した。その結果は実施例4と共に表2に示される。
実施例17〜18
ポリブチレンテレフタレート85重量%と、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15重量%とからなる組成物を265℃で溶融させて極限粘度0.900dl/gのものにし、紡績速度2500m/minにて巻き取りを行うことにより110d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度200℃、延伸倍率1.5倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で夫々100℃(実施例17)、130℃(実施例18)まで昇温させて編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。実施例17の結果は表1及び表2に示され、また実施例18の結果は表2に示される。
比較例1
ポリエチレンテレフタレート原料を290℃で溶融させて極限粘度0.64dl/gのものにし、紡績速度3000m/minにて巻き取りを行うことにより、120d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度230℃、延伸倍率1.7倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。その結果は表1に示す。
比較例2〜5
比較例1の製造方法により得られた編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で夫々90℃(比較例2)、110℃(比較例3)、120℃(比較例4)、130℃(比較例5)まで昇温させ編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値を測定した。その結果は比較例1と共に表2に示される。
比較例6〜7
ポリブチレンテレフタレート原料を275℃にて溶融させて極限粘度0.900dl/gのものにし、紡績速度2500m/minにて巻き取りを行うことにより110d/72fの部分延伸糸(POY)を得て、更に巻取速度600m/min、ホットプレート温度200℃、延伸倍率1.5倍に基づく延伸加工工程を経て75d/72fの延伸加工糸(DTY)を製造した。その得られた延伸加工糸を190本のニードルを備える編織機を通して編織物に織り成し、この編織物を分散性染料(TERASIL(登録商標) NAVY GRL−C)及び水を含有する染色浴に入れ(このとき、分散性染料と編織物との重量比が0.15:1、水と編織物との重量比が30:1)、染色浴を40℃から2℃/分の昇温速度で夫々100℃(比較例6)、130℃(比較例7)まで昇温させて編織物を染色した後、編織物を染色浴から移出し、水酸化ナトリウム2g/l、硫酸ナトリウム3g/lを含有する水溶液に入れ(このとき、水と編織物との重量比が30:1)、80℃で20分の還元洗浄を行った。その後、編織物を取り出し、そのK/S値及び色堅牢度を測定した。比較例6の結果は表1及び表2に示され、また比較例7の結果は表2に示される。
各実施例及び各比較例により得られた織物の物性については、下記の方法で測定・評価を行う。
1.極限粘度について
ASTM D2857−87法に基づいて測定する。具体的には、各実施例及び各比較例の紡糸原料を測定対象液に溶融させ、異なる濃度(0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%)の測定対象液と純溶媒が夫々毛細管粘度計であるUbbelohde粘度計内での流動時間を測定し、各測定対象液の固有粘度を算出し、そして固有粘度対濃度のプロットをし、外挿法により測定対象液の濃度が0%に近似した時の粘度を極限粘度とする。
2.染色度(K/S値)について
カラー分析計(東京電色(株)製、TC−1800MK2)を用い、染色された織物の反射率(R)を測定し、下記の算式により染色度を算出する。染色度が大きければ大きいほど染色程度が高いことを意味し、即ち、同一の染色条件で、より染色され易いことになる。
K/S=(1−R)/(2R)
3.色堅牢度について
ISO 105−C06 2010 AIS法に基づいて測定する。具体的には、上記各実施例、比較例により得られた織物を寸法4cm×10cmのものに裁断した後、鋼球10個が入れた體積150ml、温度40℃の水槽中に入れ、30分の水洗を経てから取り出し、水洗前・水洗後の織物の色の差異を見分け、以下のように色堅牢度の評価を行う。
色堅牢度1〜3:肉眼で水洗後の織物を観察し、顕著な色落ちが見える
色堅牢度4:肉眼で水洗後の織物を観察し、やや色落ちが見える
色堅牢度5:肉眼で水洗後の織物を観察し、色落ちが見えない。
Figure 2015168916
上記実施例1〜8、17と比較例1、6との対比から、本発明のポリエステル繊維の製造方法により製造された織物は、従来單一成分のポリエステル繊維から得られた織物に比べて100℃での染色度(K/S値)において非常に優れていることが分かる。また、色堅牢度においても従来のものと同等以上のレベルに維持された。
Figure 2015168916
上記実施例1、9〜12の対比結果、実施例4、13〜16の対比結果、及び実施例17、18の対比結果から、本発明の製造方法により製造された織物では、90℃〜130℃の温度範圍で染色された場合、良好な染色度を達成できることが分かる。更に、実施例9、実施例13及び比較例2の対比結果、実施例1、実施例4及び比較例1の対比結果、実施例10、実施例14及び比較例3の対比結果、実施例11、実施例15及び比較例4の対比結果、実施例12、実施例16及び比較例5の対比結果、更に実施例18及び比較例7の対比結果から、本発明による織物は従来技術による織物に比べて同一の染色温度での染色度が高くなることが分かる。このように、本発明の製造方法によれば、より広い染色条件で低温染色性に優れた繊維・織物を製造することができる。
以上、各実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではなく、当業者であれば特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲内に種々の変形、変更をすることができ、それらも本発明に包含されることは当然である。

Claims (8)

  1. ガラス移転温度(Tg)が20℃超え〜100℃の第1のポリエステル成分99.9〜60重量%と、ガラス移転温度(Tg)が20℃〜−50℃の第2のポリエステル成分0.1〜40重量%とからなる組成物を、極限粘度0.5〜1.5(dl/g)のものに溶融させてから紡糸を行うことにより、ポリエステル繊維を製造することを特徴とする
    ポリエステル繊維の製造方法。
  2. 前記第1のポリエステル成分は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレングリコールイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコールイソフタレートの共重合体、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、カチオン可染ポリエステル、リサイクルPET以及バイオPETからなる群れから選ばれるものであることを特徴とする
    請求項1記載のポリエステル繊維の製造方法。
  3. 前記第2のポリエステル成分は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(PHB)、及びポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)(PHBV)からなる群れから選ばれるものであることを特徴とする
    請求項1記載のポリエステル繊維の製造方法。
  4. 前記ポリエステル繊維の断面は円形状断面、非円形状断面又は複合断面であることを特徴とする
    請求項1記載のポリエステル繊維の製造方法。
  5. 前記ポリエステル繊維は長繊維又は短繊維であることを特徴とする
    請求項1記載のポリエステル繊維の製造方法。
  6. 請求項1から5の何れか一項に記載のポリエステル繊維の製造方法により製造されたポリエステル繊維。
  7. 請求項6に記載のポリエステル繊維からなり、若しくは当該ポリエステル繊維と他の繊維とを複合して形成されたヤーン。
  8. 請求項6に記載のポリエステル繊維又は請求項7に記載のヤーンからなる織物。
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