JP2015168839A - 絶縁被膜付き電磁鋼板および積層電磁鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水ガラス由来物と酸化物粒子を含有する絶縁被膜を少なくとも片面に有する電磁鋼板である。前記水ガラス成分は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Siを含有し、前記酸化物粒子は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有し、前記絶縁被膜は、(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)/(絶縁被膜質量)が0.20〜0.70であり、(前記絶縁被膜に含まれるBのB2O3換算の質量)/(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.18〜1.00であり、{(前記絶縁被膜に含まれるNaのNa2O換算の質量)+(前記絶縁被膜に含まれるKのK2O換算の質量)}/(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.20〜1.00である。
【選択図】なし
Description
歪取焼鈍等の焼鈍処理を施しても接着能を維持し、かつ、焼鈍処理時に接着性を有するために、絶縁被膜は水ガラス由来物と酸化物粒子を含有する。しかし、水ガラス由来物と酸化物粒子を単に含有するだけでは、接着性が不十分であり、十分なコア固着性が得られない。これに対して、水ガラス由来物と酸化物粒子に含まれる特定の成分を特定の比率で含有することにより、接着性が高くなる。その結果、上記課題が有利に解決される。
[1]水ガラス由来物と酸化物粒子を含有する絶縁被膜を少なくとも片面に有する電磁鋼板であって、前記水ガラス由来物は、成分として、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Siを含有し、前記酸化物粒子は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有し、前記絶縁被膜は、(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)/(絶縁被膜質量)が0.20〜0.70であり、(前記絶縁被膜に含まれるBのB2O3換算の質量)/(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.18〜1.00であり、{(前記絶縁被膜に含まれるNaのNa2O換算の質量)+(前記絶縁被膜に含まれるKのK2O換算の質量)}/(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.20〜1.00である絶縁被膜付き電磁鋼板。
[2]前記酸化物粒子の面積率は、35%以上90%以下である上記[1]記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
なお、前記酸化物粒子の面積率とは絶縁被膜全体の面積に対する酸化物粒子の占める面積の割合である。
[3]前記酸化物粒子の平均粒子径は、0.2μm以上35μm以下である上記[1]または[2]記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
[4]前記酸化物粒子は、低融点ガラスである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
[5]前記絶縁被膜は、有機樹脂を15質量%以下含む上記[1]〜[4]のいずれかにに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板を、前記絶縁被膜を介して、2枚以上を積層し一体化した積層電磁鋼板。
溶接、かしめを行うことなく積層電磁鋼板の一体化ができるので、鉄損劣化が回避可能となり、板厚が薄い鋼板に対しても積層可能となる。
また、歪取焼鈍後も接着状態が保たれるので、磁気特性に優れた積層電磁鋼板を得ることができる。
常温で塗装でき平滑面が得られやすい点から、本発明では、絶縁被膜の原料として、Na、Kから選ばれる1種または2種とSiを含有する水ガラスを用いる。水ガラスとしては、例えば、珪酸ソーダ、珪酸カリウムなどが挙げられる。従来、珪酸ソーダは、粒子を含まず薄膜塗装が可能ではあるが、焼鈍時に接着せず剥離する傾向にありコア固着性は不十分であった。しかしながら、本発明では、珪酸ソーダを用いた場合でも、絶縁被膜中に含まれるSi、B、Na、Kの含有比率を特定することで接着性が高くなるので、コア固着性が不十分であるという課題は解決され、珪酸ソーダを好適に用いることができる。
本発明の絶縁被膜は、接着性を発現させるために、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有する酸化物粒子を含有する。
酸化物粒子としては、低融点ガラスを用いることが好ましい。低融点ガラスの融点または軟化点は鉄芯が使用される温度より高く、歪取焼鈍温度より低い温度である。このため、通常の鉄芯を取扱う環境では溶融または軟化することがなく問題なく使用でき、歪取焼鈍により溶融または軟化して接着できる効果を有することになる。低融点ガラスの組成としては、R:アルカリ金属として、SiO2-B2O3-R2O系、P2O5-R2O系、SiO2-PbO-B2O3系、B2O3-Bi2O3系、SiO2-B2O3-ZnO系、SnO-P2O5系、SiO2-B2O3-ZrO2系などが上げられ、これらのうちから選ばれる一種または二種以上を添加することができる。中でも、SiO2-B2O3-R2O系が鉛を含まないため好適に用いられる。しかしながら、単に、例えば、SiO2-B2O3-R2O系低融点ガラスを使用しただけでは十分なコア固着性を得ることができない。上述したように、加えて、絶縁被膜に含まれるSi、B、Na、Kの含有比率を特定することが重要である。
絶縁被膜全体の面積に対する酸化物粒子の占める面積の割合、すなわち、酸化物粒子の面積率は35%以上90%以下であることが好ましい。35%以上であれば接着性が不足することがなく十分なコア固着性が得られる。90%以下であれば、絶縁被膜同士の接着性の低下による剥離が生じることがなく、十分なコア固着性が得られる。
なお、酸化物粒子の面積率は、埋込研磨断面観察、凍結破断面観察またはFIB断面観察により、求めることができる。巾40μm以上の範囲で平均化して代表値とすることができる。
絶縁被膜間において十分に接触し、接着性を高めるために、酸化物粒子の平均粒子径を規定することは重要である。
酸化物粒子の平均粒子径は、0.2μm以上35μm以下であることが好ましい。0.2μm以上とすることで、本発明の効果がより一層得られる。35μm以下であれば、積層板が剥離することがなく、十分なコア固着性が得られる。さらに好ましくは、0.3μm以上30μm以下である。
平均粒子径は、原料としての酸化物粒子の粒子径で代表できる。もしくは、埋込研磨断面観察、凍結破断面観察、FIB断面観察において、島状に分散している粒子の粒子径を10ヵ所以上測定し、それを平均することで代表値とすることができる。断面での形態は丸、楕円、多角形など様々なものがありうるが、粒子径としては面積から計算により円形に換算して代表値とすることができる。
0.20未満では、絶縁被膜同士の十分な接着性が発現されず、電磁鋼板の表面に濃化するSi酸化物やAl酸化物との密着性が低下する。0.70を超えると、焼鈍時に軟化しにくくなり、絶縁被膜同士の接着性が低下する。
{(絶縁被膜に含まれるNaのNa2O換算の質量)+(絶縁被膜に含まれるKのK2O換算の質量)}/(絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.20〜1.00
本発明者らは、SiO2-B2O3-R2O系低融点ガラス及び水ガラスを混合した処理液を電磁鋼板の表面に塗装し、焼き付けて製造した絶縁被膜付き電磁鋼板を用いて、コア固着性について検討した。その結果、Si、B、Na、Kの含有比率を特定することでコア固着性が高くなることを見出した。また、低融点ガラスの代わりにコロイダルシリカなどにNa化合物、K化合物、B化合物を加えたものを、水ガラスと混合し電磁鋼板に塗布、焼き付けた場合にも同様の効果が見られることがわかった。
絶縁被膜中に有機樹脂を含有させることにより、さらに打抜き性などの絶縁被膜性能を向上させることができる。本発明において、有機樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されている公知のものいずれもが有利に適合する。例えば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフイン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等の水性樹脂(エマルジョン、ディスパーション、水溶性)が挙げられる。特に好ましくはアクリル樹脂やエチレンアクリル酸樹脂のエマルジョンである。
本発明では、素材である電磁鋼板の前処理については特に規定しない。すなわち、未処理でもよいが、アルカリなどの脱脂処理、塩酸、硫酸、リン酸などの酸洗処理を施すことは好ましく用いられる。
<密着性>
製品板および焼鈍板1について、供試材表面にセロテープ(登録商標)を貼り、φ10mm内曲げ後セロテープ(登録商標)を剥離し、絶縁被膜の残存状態を目視で観察して評価した。
(判定基準)
◎:残存率 90%以上
○:残存率 60%以上、90%未満
△:残存率 30%以上、60%未満
×:残存率 30%未満
<コア固着性>
絶縁被膜付き電磁鋼板(製品板)を30×50mmにせん断し、100枚積層した後、歪取焼鈍(窒素雰囲気中750℃×2時間)を行い、積層固着させた。この積層固着させたサンプル(焼鈍板2)を高さ1mから20mm厚みの鋼板に落下させ、サンプルの剥離状況を目視評価した。
(判定基準)
◎:剥離及びクラックなし
○:クラックが観察されるが剥離なし
△:2〜5ピースに分離
×:6ピース以上に分離
<打抜性>
一部の絶縁被膜付き電磁鋼板(焼鈍板1)に対して、15mmφスチールダイスを用いて、かえり高さが50μmに達するまで打ち抜きを行い、かえり高さが50μmに達したときの打ち抜き回数で評価した。
(判定基準)
◎:120万回以上
○:100万回以上、120万回未満
○−:70万回以上、100万回未満
△:30万回以上、70万回未満
×:30万回未満
以上により得られた結果を、条件と併せて表1に示す。
2枚の板厚:0.20mmの電磁鋼板に対して、表1実施例3に示す成分からなる絶縁被膜を、それぞれの片面に乾燥被膜重量10g/m2になるようにバーコーターで塗装し、熱風焼付け炉により焼付け温度(到達鋼板温度):200℃、焼付け時間:30秒で焼付けした後、塗装面同士を貼り合わせ、次いで、窒素雰囲気中で750℃、2時間焼鈍して2枚積層鋼板とした。さらに、この2枚積層鋼板の両表面(表裏面)に表1実施例3に示す成分からなる絶縁被膜を乾燥被膜重量10g/m2になるようバーコーターで塗装し熱風焼付け炉により焼付け温度(到達鋼板温度):200℃、焼付け時間:30秒で焼付けし、焼鈍接着可能な2枚積層電磁鋼板を作製した。
上記2枚積層電磁鋼板に対して、実施例1と同様の打抜き試験をおこなったところ、打抜き時間は積層していない1枚の電磁鋼板で同一の鉄芯を作製するために同一速度で打抜いたときの半分に短縮された。
さらに、実施例1と同様のコア固着性試験を行ったところ、剥離及びクラックがなく十分な固着性を有していた。
板厚:0.20mmの電磁鋼板1枚に対して、表1実施例3に示す成分からなる絶縁被膜を、両面にそれぞれ乾燥被膜重量20g/m2になるようバーコーターで塗装し、熱風焼付け炉により焼付け温度(到達鋼板温度):200℃、焼付け時間:30秒で焼付けした。この絶縁被膜付き電磁鋼板を塗装していない(絶縁被膜を有していない)電磁鋼板2枚の間に挟んで3枚積層させ、窒素雰囲気中で750℃、2時間焼鈍して3枚積層電磁鋼板とした。さらに、この3枚積層電磁鋼板の両表面(表裏面)に表1実施例24に示す成分からなる絶縁被膜を乾燥被膜重量10g/m2になるようにバーコーターで塗装し、熱風焼付け炉により焼付け温度(到達鋼板温度):200℃、焼付け時間:30秒で焼付け、焼鈍接着可能な3枚積層電磁鋼板を作製した。
上記3枚積層電磁鋼板に対して、実施例1と同様の打抜き試験をおこなったところ、打抜き時間は積層していない1枚の電磁鋼板で同一の鉄芯を作製するために同一速度で打抜いたときの1/3に短縮された。
さらに、実施例1と同様のコア固着性試験を行ったところ、剥離及びクラックがなく十分な固着性を有していた。
Claims (6)
- 水ガラス由来物と酸化物粒子を含有する絶縁被膜を少なくとも片面に有する電磁鋼板であって、
前記水ガラス由来物は、成分として、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Siを含有し、
前記酸化物粒子は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有し、
前記絶縁被膜は、
(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)/(絶縁被膜質量)が0.20〜0.70であり、
(前記絶縁被膜に含まれるBのB2O3換算の質量)/(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.18〜1.00であり、
{(前記絶縁被膜に含まれるNaのNa2O換算の質量)+(前記絶縁被膜に含まれるKのK2O換算の質量)}/(前記絶縁被膜に含まれるSiのSiO2換算の質量)が0.20〜1.00である
ことを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板。 - 前記酸化物粒子の面積率は、35%以上90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
なお、前記酸化物粒子の面積率とは絶縁被膜全体の面積に対する酸化物粒子の占める面積の割合である。 - 前記酸化物粒子の平均粒子径は、0.2μm以上35μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
- 前記酸化物粒子は、低融点ガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
- 前記絶縁被膜は、有機樹脂を15質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板を、前記絶縁被膜を介して、2枚以上を積層し一体化した積層電磁鋼板。
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