JP6102853B2 - 絶縁被膜付き電磁鋼板および積層電磁鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、歪取焼鈍等の熱処理を施しても接着能が維持できる、絶縁被膜付き電磁鋼板および積層電磁鋼板に関するものである。
モーターや変圧器等に使用される電磁鋼板の絶縁被膜には、層間抵抗だけでなく、加工成形時の利便性および保管、使用時の安定性など種々の特性が要求される。電磁鋼板は多様な用途に使用されるため、その用途に応じて種々の絶縁被膜の開発が行われている。
電磁鋼板に打抜加工、せん断加工、曲げ加工などを施すと残留歪みにより磁気特性が劣化するので、これを解消するために700〜800℃程度の温度で歪取焼純を行う場合が多い。従って、この場合には、絶縁被膜が歪取焼鈍に耐え得るものでなければならない。
通常、電磁鋼板をモータやトランス等の鉄心として使用する場合には、所定の形状に打抜きを行った後、積層し、溶接やかしめによって一体化させる方法が用いられる。溶接やかしめによって積層鋼板を一体化させる場合には、鋼板エッジ部の短絡による絶縁性低下や、加工歪みによる磁気特性劣化が懸念される。これを改善する方法として、有機系の接着被膜による熱圧着による積層鋼板の一体化技術が提案され、実用化されている。
例えば、特許文献1には、ガラス転移温度:60℃以上の熱可塑性アクリル樹脂エマルジョンや、エポキシ樹脂ヱマルジョンを主成分とする組成物を塗布し、乾燥して得られた鋼板を、積層し、加熱加圧することで積層鉄心を製造する方法が開示されている。この方法は、接着剤を塗布する工程を省略したものであり、加工歪みの影響を受け難いだけでなく、コイル状に巻いても鋼板の被膜同士が接着して剥がれなくなる、いわゆるブロッキングの発生が抑制できるという利点を有する。しかし、加熱加圧時の温度が樹脂の分解温度を超える場合には、接着能を維持することができない欠点がある。
また、特許文献2では、室温以上300℃以下で軟化する樹脂と示差熱分析法で測定した軟化点温度が1000℃以下である低融点無機成分とを含み、樹脂と低融点無機成分とを混合比率が質量分率で20%以上500%以下となるように混合した耐熱接着性絶縁被膜で被覆した電磁鋼板が開示されている。無機成分を含有するため、低温域のみならず、歪取焼鈍時等の高温域での接着性を改善しているが、被膜マトリクス中に樹脂成分が存在するため、樹脂分解時には被膜全体が劣化してしまうという欠点がある。
特開平2-208034号公報 特開2012-46825号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、歪取焼鈍等の熱処理を施しても接着能が維持できる、絶縁被膜付き電磁鋼板および積層電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、以下を知見した。
絶縁被膜の構成物、絶縁被膜の構成物の一つである有機樹脂層の被覆面積率および付着量を特定することで、歪取焼鈍等の熱処理を施しても接着能が維持できる、焼鈍接着性に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板が得られる。
本発明は上記知見に基づくものであり、特徴は以下の通りである。
[1]無機被膜層と有機樹脂層を含有する絶縁被膜を少なくとも片面に有する電磁鋼板であり、電磁鋼板の表面には無機被膜層からなる下地層を、最表面には有機樹脂層を有し、該有機樹脂層の被覆面積率が50%以上80%以下かつ片面当たりの付着量が0.05g/m2以上4.0g/m2以下である絶縁被膜付き電磁鋼板。
[2][1]に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板において、無機被膜層は、水ガラス由来物と酸化物粒子を含有し、前記水ガラス由来物は、成分として、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Siを含有し、前記酸化物粒子は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有し、(前記無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)/(無機被膜層質量)が0.20〜0.70であり、(前記無機被膜層に含まれるBのB換算の質量)/(前記無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.18〜1.00であり、{(前記無機被膜層に含まれるNaのNaO換算の質量)+(前記無機被膜層に含まれるKのKO換算の質量)}/(前記無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.20〜1.00である。
[3][2]に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板において、前記酸化物粒子は、低融点ガラスである。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板を、前記絶縁被膜を介して、2枚以上を積層し一体化した積層電磁鋼板。
本発明によれば、歪取焼鈍等の熱処理を施しても接着能が維持できる、絶縁被膜付き電磁鋼板および積層電磁鋼板を得ることができる。
歪取焼鈍後も接着状態が保たれるので、磁気特性に優れた積層電磁鋼板を得ることができる。
有機樹脂層の被覆形態を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の電磁鋼板は、絶縁被膜を少なくとも片面に有する電磁鋼板である。絶縁被膜は、無機被膜層と有機樹脂層を含有する。電磁鋼板の表面には無機被膜層からなる下地層を、最表面には有機樹脂層を有し、有機樹脂層の被覆面積率が50%以上80%以下かつ片面当たりの付着量が0.05g/m2以上4.0g/m2以下である。これらは、本発明において重要な要件である。このように、絶縁被膜の構成物、有機樹脂層の構成物の被覆面積率、付着量を特定することで、歪取焼鈍等の熱処理を施しても接着能が維持でき、十分なコア固着性を有する、焼鈍接着性に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板が得られる。
本発明において、素材である電磁鋼板としては、特に制限はなく、従来から公知のものいずれもが適合する。磁束密度の高いいわゆる軟鉄板(電気鉄板)やSPCC等の一般冷延鋼板、また比抵抗を上げるためにSiやAlを含有させた無方向性電磁鋼板、方向性電磁鋼板など、いずれも用いることができる。
電磁鋼板の厚さは特に限定しない。薄厚化に伴い鉄損は向上するが、薄くなりすぎると鋼板の製造コストの負荷に直結する上、形状安定性が劣化するため、50μm以上とするのが好ましい。板厚増加に伴い鉄損は劣化する上、接着皮膜を適用せずともカシメや溶接による加工が十分に可能であるため、板厚の上限は1mm以下、より好ましくは0.5mm以下が好ましい。
本発明の絶縁被膜は、有機樹脂層を含有する。有機樹脂層を含有することで、広い温度領域で十分な接着能を維持することが可能となる。つまり、樹脂軟化点〜樹脂分解温度の温度範囲では、最表面の有機樹脂によって積層鋼板を一体化させることができる。 本発明の絶縁被膜は、無機被膜層からなる下地層を含有する。上記において、樹脂分解温度超えの高温領域(歪取焼鈍時等)では、有機樹脂は分解・気化する。このような場合、本発明においては、有機樹脂に代わり、下地層の無機被膜が軟化・固着し、接着能を維持することができる。無機被膜に樹脂を含有させた1層形式の絶縁被膜では、歪取焼鈍時に分解・気化した樹脂成分が、無機被膜外に放出されにくくなり、溶融した無機被膜層中にとりこまれ、固着後に接着層中に残留物として存在し、被膜を劣化させ、結果として接着強度を低下させる。また、無機成分のみの1層被膜では、積層鋼板を一体化させるのに約700℃以上の高温にする必要があり、歪取焼鈍前に積層鋼板を一体化することができない。
有機樹脂層の被覆面積率は50%以上80%以下かつ片面当たりの付着量は0.05g/m2以上4.0g/m2以下である。有機樹脂層の被覆面積率を50%以上80%以下に特定することで、無機被膜層上に有機樹脂の無被覆部が形成される。この無被覆部は、歪取焼鈍時に分解・気化した樹脂の通気孔として機能し、固着後の無機接着層中への残留を防止する。被覆面積率が50%未満では、歪取焼鈍時の通気孔としての機能は十分に確保されるが、樹脂軟化点〜樹脂分解温度における樹脂による接着の際に、接着面積が小さくなるため、積層鋼板の固着強度が低下する。被覆面積率が80%を超える場合では、前記通気孔としての機能が十分に確保されなくなる。さらに、付着量が0.05g/m2に満たないと、被覆面積率が上記範囲を満足している場合でも、樹脂軟化点〜樹脂分解温度における十分な層間接着力を得ることができなくなる。付着量が4.0g/m2を超えた場合には無機被膜層上に形成される樹脂による凹凸が大きくなりすぎるため、鋼板を積層・加熱加圧した際に、樹脂同士が十分に密接して接着することができず、接着強度を維持することができない。十分な接着力を確保できるという点からは、付着量は、0.1g/m2以上2.0g/m2以下が好ましい。
さらに、上記有機樹脂層の好ましい被覆形態としては、ストライプ状、格子状、斑点状等が挙げられる(図1参照)。しかし、これらに限定されるものではなく、無機被膜層上に、無秩序に樹脂被覆部が存在している場合でも、上記範囲を満たしていれば本発明の効果は得られる。例えば、ストライプ状の場合、その平均幅は0.1〜10mm、ストライプ間(外縁間)の最短距離の平均(平均間隔)は0.1〜10mmとすることが好ましい。格子状の場合、一つの格子に存在する長辺および短辺の平均幅は両辺とも0.1〜10mm、格子間(外縁間)の最短距離の平均(平均間隔)は縦間隔、横間隔共に0.1〜10mmとすることが好ましい。斑点状の場合、斑点を円に換算してその平均直径は0.1〜10mm、斑点間の間隔は、隣接する斑点の外周間の各最短距離の平均であり、0.1〜10mmとすることが好ましい。
なお、有機樹脂層は、鋼板表面からFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)分析を行い、得られた各ピークの出現位置および強度の様子から、樹脂種を特定することが可能である。また、有機樹脂層の被覆面積率は、絶縁被膜表面から樹脂主用含有成分であるCをEPMA(電子線マイクロアナライザ)分析により測定し、C強度の高い箇所を樹脂被覆部として算出することができる。また、付着量は、樹脂分解温度以上で絶縁被膜付鋼板を加熱する前後での重量減少から求めることが可能である。
有機樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフイン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、尿素樹脂、マレイミド樹脂など、いずれもが有利に適合する。また、有機樹脂としては、水系および溶剤系のどちらでも適用可能である。水系樹脂では、エマルジョン型、ディスパージョン型、水溶性型のいずれもが有利に適合する。
次に、好適な無機被膜層について、説明する。
本発明において、無機被膜層は、水ガラス由来物と酸化物粒子を含有し、水ガラス由来物は、成分として、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Siを含有し、酸化物粒子は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有し、(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)/(無機被膜層質量)が0.20〜0.70であり、(無機被膜層に含まれるBのB換算の質量)/(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.18〜1.00であり、{(無機被膜層に含まれるNaのNaO換算の質量)+(無機被膜層に含まれるKのKO換算の質量)}/(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.20〜1.00であることが好ましい。
水ガラス由来物
常温で塗装でき平滑面が得られやすい点から、本発明では、無機被膜層の原料として、Na、Kから選ばれる1種または2種とSiを含有する水ガラスを用いることが好ましい。水ガラスとしては、例えば、珪酸ソーダ、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが挙げられる。従来、珪酸ソーダは、粒子を含まず薄膜塗装が可能ではあるが、焼鈍時に接着せず剥離する傾向にありコア固着性は不十分であった。しかしながら、本発明では、珪酸ソーダを用いた場合でも、絶縁被膜中に含まれるSi、B、Na、Kの含有比率を特定することで接着性が高くなるので、コア固着性が不十分であるという課題は解決され、珪酸ソーダを好適に用いることができる。
酸化物粒子
本発明の無機被膜層は、接着性を発現させるために、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有する酸化物粒子を含有することが好ましい。
酸化物粒子としては、低融点ガラスを用いることがさらに好ましい。低融点ガラスの融点または軟化点は鉄芯が使用される温度より高く、歪取焼鈍温度より低い温度である。このため、通常の鉄芯を取扱う環境では溶融または軟化することがなく問題なく使用でき、歪取焼鈍により溶融または軟化して接着できる効果を有することになる。低融点ガラスの組成としては、R:アルカリ金属として、SiO2-B2O3-R2O系、P2O5-R2O系、SiO2-PbO-B2O3系、B2O3-Bi2O3系、SiO2-B2O3-ZnO系、SnO-P2O5系、SiO2-B2O3-ZrO2系などが上げられる。これらのうちから選ばれる1種または2種以上を添加することができる。中でも、SiO2-B2O3-R2O系が鉛を含まないため好適に用いられる。しかしながら、単に、例えば、SiO2-B2O3-R2O系低融点ガラスを使用しただけでは十分なコア固着性を得ることができない場合がある。このような場合は、上述したように、加えて、絶縁被膜に含まれるSi、B、Na、Kの含有比率を特定することが重要である。
(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)/(無機被膜層質量)が0.20〜0.70
0.20以上であれば、絶縁被膜同士の十分な接着性が発現され、電磁鋼板の表面に濃化するSi酸化物やAl酸化物との密着性が低下しない。0.70以下であれば、焼鈍時に軟化しにくくなることがなく、絶縁被膜同士の接着性が低下しない。
(無機被膜層に含まれるBのB換算の質量)/(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.18〜1.00
{(無機被膜層に含まれるNaのNaO換算の質量)+(無機被膜層に含まれるKのKO換算の質量)}/(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.20〜1.00
本発明者らは、SiO2-B2O3-R2O系低融点ガラス及び水ガラスを混合した処理液を電磁鋼板の表面に塗装し、焼き付けて製造した絶縁被膜付き電磁鋼板を用いて、コア固着性について検討した。その結果、Si、B、Na、Kの含有比率を特定することでコア固着性が高くなることを見出した。また、低融点ガラスの代わりにコロイダルシリカなどにNa化合物、K化合物、B化合物を加えたものを、水ガラスと混合し電磁鋼板に塗布、焼き付けた場合にも同様の効果が見られることがわかった。
更に、絶縁被膜が従来の低融点ガラスまたは水ガラス単独である電磁鋼板を複数枚積層し積層電磁鋼板とした場合は、スリットや打抜き積層などのハンドリング中に剥離が起こりやすいのに対し、Si、B、Na、Kの含有比率を特定した本発明の絶縁被膜付きの電磁鋼板を複数枚積層し積層電磁鋼板とした場合は、スリットや打抜き積層などを行った場合に衝撃に強くなり、剥離しにくいことがわかった。
上記のようになった理由について、定かではないが、次のように考えている。水ガラス単独では常温で塗装できる利点がある一方、接着性に乏しい。低融点ガラスを単独とした場合には接着性が出る可能性が高いものの、脆いためハンドリング時や打抜き積層加工時の衝撃で剥離しやすい。これに対して、低融点ガラス、コロイダルシリカ等のSi系粒子と水ガラスを特定の含有比率で混合することで、これらが反応部を作るとともに海島構造をとるため、衝撃による亀裂の伝播が抑制され、ティース浮きなどの剥離が抑制されるものと考えられる。
以上の検討の結果、上記効果を有する点から、(無機被膜層に含まれるBのB換算の質量)/(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)を0.18〜1.00、{(無機被膜層に含まれるNaのNaO換算の質量)+(無機被膜層に含まれるKのKO換算の質量)}/(無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)を0.20〜1.00とすることが好ましい。
なお、無機被膜層に含まれる上記成分及び比率は塗液調合時の調合比率から知ることができる。また、絶縁被膜付き電磁鋼板を20質量%NaOH水溶液中で絶縁被膜を加熱溶解し、溶解液中のSi、Na、K、BをICP分析することで測定できる。無機被膜層質量については、上述のとおり絶縁被膜を溶解し、溶解前後の質量変化から測定できる。積層電磁鋼板については層間の分析が難しい場合があるが、最外層の絶縁被膜の分析で層間の絶縁被膜組成を代表することができる。
さらに、本発明では、上記した成分の他、各層にその他の無機化合物や有機化合物等の含有を妨げるものではない。有機化合物としては、無機成分と有機樹脂との接触抑制剤となる有機酸を含有してもよい。有機酸としてはアクリル酸を含有する重合体または共重合体などが例示される。
また、本発明では、上記した成分の他、さらにAl、Ca、Li、F、P、Zn、V、Te、Ge、Ag、Tl、S、I、Br、As、Bi、Cd、Pbの各化合物、顔料などの無機化合物や防錆剤、界面活性剤などを1種または/及び2種以上を各層に添加することができる。このような、添加剤は本発明の効果を損なわない程度に添加できる。(添加物の固形分合計質量)/(絶縁被膜に含まれるSiのSiO換算の質量)で1.0以下であれば、未反応物が絶縁被膜中に残存することがなく、耐水性を低下させない。このため、添加物の含有量は(添加物の固形分合計質量)/(絶縁被膜に含まれるSiのSiO換算の質量)で1.0以下が好ましい。さらに、0.5以下とすることが好ましい。また、添加は可能であるが、As、Bi、Cd、Pbについては添加しないことが環境上好ましい場合がある。
次に、本発明の絶縁被膜の形成方法について説明する。
本発明では、素材である電磁鋼板の前処理については特に規定しない。すなわち、未処理でもよいが、アルカリなどの脱脂処理、塩酸、硫酸、リン酸などの酸洗処理を施すことは好ましく用いられる。
そして、この電磁鋼板の表面に、水ガラス、酸化物粒子、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、必要に応じて添加剤等を所定の割合で配合した無機被膜用処理液を塗布し、焼き付けることにより鋼板の表面には無機被膜層からなる下地層を形成する。
無機被膜用処理液の塗布方法は、一般工業的に用いられるロールコーター、フローコーター、スプレー、ナイフコーター等種々の方法が適用可能である。また、焼き付け方法についても、通常実施されるような熱風式、赤外式、誘導加熱式等が可能である。焼付け温度も通常レベルであればよく、到達鋼板温度で150〜350℃程度であればよい。
次に、有機樹脂、必要に応じて添加剤等を所定の割合で配合した有機樹脂層用処理液を無機被膜層上に塗布し、焼き付けることにより有機樹脂層を形成させる。有機樹脂層用処理液の塗布方法を以下に例示する。ロールコーター・ナイフコーターの場合では、アプリケーターロールおよびナイフロールに、ストライプ間隔の溝を施すことで、被覆形態がストライプ状の有機樹脂層を塗布することができる。また、フローコーター、スプレーの場合には、一定間隔で有機樹脂層用処理液を散布することで被覆形態が斑点状の有機樹脂層を塗布することができる。ロールコーターと可動式のフローコーターを組み合わせることで、被覆形態が格子状の有機樹脂層を塗装することができる。焼付け方法は、無機被膜層と同様の方法で問題なく成膜させることが可能である。
さらに、上記により得られた絶縁被膜付き電磁鋼板を、絶縁被膜を介して、2枚以上を積層し一体化することで積層電磁鋼板を得ることができる。すなわち、絶縁被膜付き電磁鋼板の塗装面同士を重ね合わせて加熱加圧して積層鋼板とし、その表面に更に塗装を施して積層電磁鋼板を得る。加熱温度は、樹脂の軟化点温度以上であれば特に限定されない。具体的には100〜500℃程度、より好ましくは150〜300℃程度の範囲である。加圧条件は5〜50kg/cm2程度が好ましい。処理時間は5分〜48時間の内で実施するのが好ましい。また、この積層電磁鋼板は、歪取焼鈍を施して、例えば、打抜き加工による歪みを除去する場合でも、十分は接着能を維持することができる。
この場合、層間の絶縁被膜は本発明のものを好適使用することができる。
また、本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、歪取焼鈍を施して、例えば、打抜き加工による歪みを除去することができる。好ましい歪取焼鈍雰囲気としては、N2雰囲気、DXガス雰囲気などの鉄が酸化されにくい雰囲気が適用される。ここで、露点を高く、例えばDp:5〜60℃程度に設定し、表面および切断端面を若干酸化させることで耐食性をさらに向上させることができる。好ましい歪取焼鈍温度としては700〜900℃、より好ましくは700〜800℃である。歪取焼鈍温度の保持時間は長い方が好ましく、1時間以上がより好ましい。
電磁鋼板の両面に本発明の絶縁被膜を有することが好ましい。また、積層電磁鋼板の最外面の両面に本発明の絶縁被膜を有することが好ましい。しかし、目的によっては片面のみでも構わない。また、目的によっては片面のみ本発明の絶縁被膜とし、他面は他の絶縁被膜としても構わない。
本発明の絶縁被膜の厚みとしては特に定めないが、平均で0.1μm以上50μm以下が好ましい。更に好ましくは1μm以上25μm以下である。0.1μm以上であれば接着性が低下することがなく、十分なコア固着性が得られる。一方、50μm以下であれば占積率が低下することがない。積層電磁鋼板とした場合および焼鈍接着した場合、絶縁被膜の厚みは単板より薄くなる傾向にあり、層間の絶縁被膜の厚みは平均で0.1μm以上20μm以下、更に好ましくは0.5μm以上10μm以下が好ましい。上記好ましい範囲であれば、最表面、層間の絶縁被膜厚みは揃わずとも構わない。
以下、実施例により本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
表2〜5に示す成分を絶縁被膜の成分とした。表3〜5の各成分を表1に示す割合にて脱イオン水に添加した無機被膜用処理液1および表1(表2)に示す有機樹脂を脱イオン水に添加した有機樹脂層用処理液2を準備した。なお、成分の質量部は水分、溶媒を除いた有効成分である。なお、脱イオン水量に対する各成分合計の固形分濃度は200g/lとした。
まずは、無機被膜用処理液1を、板厚:0.20mmの電磁鋼板から幅:150mm、長さ:300mmの大きさに切り出した試験片の両面にバーコーターで塗布し、熱風焼付け炉により30秒で焼付け温度(到達鋼板温度):200℃に到達するように焼付けした後、常温に放冷し鋼板の両面に無機被膜層からなる下地層を形成した。次いで、有機樹脂層用処理液2を、上記下地層の上層に塗布し、熱風焼付け炉により30秒で焼付け温度(到達鋼板温度):200℃に到達するように焼付けした後、常温に放冷し、有機樹脂層を両面に形成し絶縁被膜付き電磁鋼板を作製した。なお、有機樹脂層の被覆形態がストライプ状の場合は、アプリケーターロールを用いて、平均幅が0.80〜1.60mm、平均間隔0.20〜1.20mmとなるようにストライプの溝を施した。有機樹脂層の被覆形態が斑点状の場合はスプレーを用いて、平均直径が1.00mm、斑点間の平均間隔が2.00mmとなるように散布した。有機樹脂層の被覆形態が格子状の場合は、ロールコーターと可動式のフローコーターを組み合わせて用い、平均幅0.62mm、格子間の平均間隔0.75mmとなるようにストライプの溝を施したロールコーターと、可動式フローコーターで交互に塗布し、格子状の被覆形態とした。有機樹脂層の被覆形態が層状の場合は、ロールコーターを用い、付着量1.0g/m2となるように塗布した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板(表1において、製品板と称す)について、絶縁被膜特性を調べた。
さらに、上記絶縁被膜付き電磁鋼板に対して、窒素雰囲気中にて750℃、2時間の歪取焼鈍を行った絶縁被膜付き電磁鋼板(表1において、焼鈍板と称す)についても、絶縁被膜特性を調べた。
各特性の評価方法は次のとおりである。
<有機樹脂の被覆面積率>
絶縁被膜表面からEPMAにより、樹脂主要含有元素であるCの強度を以下の条件で面分析した。検出されたC強度の高い箇所をマッピングし、測定面積に対するCマッピング部の割合を、樹脂被覆面積率の代表値とした。
[EPMA装置]
日本電子社製JXA8200
[測定条件]
加速電圧:10 keV
測定面積:15×15mm2
測定回数:5サンプル測定し、5回の平均値を代表面積率とした。
照射ビーム径:10μm
データポイント:400×400
Cマッピング部:X線検出強度の最大値の0.2倍を閾値とし、強度が閾値以上となる領域を有機樹脂の被覆部とした。
<付着量>
有機被膜層質量については、樹脂分解温度以上となる750℃で絶縁被膜付き電磁鋼板を加熱する前後での重量減少から求めた。
また、無機被膜層質量については、有機被膜層除去後の電磁鋼板を20質量%NaOH水溶液中で無機被膜層を加熱溶解し、溶解前後の質量変化から測定した。
<密着性>
製品板および焼鈍板について、供試材表面にセロテープ(登録商標)を貼り、φ10mm内曲げ後セロテープ(登録商標)を剥離し、絶縁被膜の残存状態を目視で観察して評価した。
(判定基準)
◎:残存率 90%以上
○:残存率 60%以上、90%未満
△:残存率 30%以上、60%未満
×:残存率 30%未満
<コア固着性>
絶縁被膜付き電磁鋼板(製品板)を30×50mmにせん断し、100枚積層した後、窒素雰囲気中で到達鋼板温度:200℃、加圧条件:20kg/cm2、焼付け時間:1時間で加熱加圧してコアサンプルを作製した(製品板)。コアサンプルを高さ1mから20mm厚みの鋼板に落下させ、サンプルの剥離状況を目視評価した。
さらに、作製したコアサンプルを歪取焼鈍(窒素雰囲気中750℃×2時間)したもの(焼鈍板)に関しても、同様の評価を行った。
(判定基準)
◎:剥離及びクラックなし
○:クラックが観察されるが剥離なし
△:2〜5ピースに分離
×:6ピース以上に分離
以上により得られた結果を、条件と併せて表1に示す。
表1に示したとおり、本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、いずれも、密着性、コア固着性に優れていた。
これに対し、有機樹脂の付着量・面積率が適正範囲から外れた比較例は、十分なコア固着性を維持することができなかった。

Claims (4)

  1. 無機被膜層と有機樹脂層を含有する絶縁被膜を少なくとも片面に有する電磁鋼板であり、
    電磁鋼板の表面には無機被膜層からなる下地層を、最表面には有機樹脂層を有し、該有機樹脂層の被覆面積率が50%以上80%以下かつ片面当たりの付着量が0.05g/m2以上4.0g/m2以下であることを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板。
  2. 無機被膜層は、
    水ガラス由来物と酸化物粒子を含有し、
    前記水ガラス由来物は、成分として、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Siを含有し、
    前記酸化物粒子は、Na、Kから選ばれる1種または2種と、Si、Bを含有し、
    (前記無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)/(無機被膜層質量)が0.20〜0.70であり、
    (前記無機被膜層に含まれるBのB換算の質量)/(前記無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.18〜1.00であり、
    {(前記無機被膜層に含まれるNaのNaO換算の質量)+(前記無機被膜層に含まれるKのKO換算の質量)}/(前記無機被膜層に含まれるSiのSiO換算の質量)が0.20〜1.00である
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  3. 前記酸化物粒子は、低融点ガラスであることを特徴とする請求項2に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板を、前記絶縁被膜を介して、2枚以上を積層し一体化したことを特徴とする積層電磁鋼板。
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