JP2015168583A - ルツボ支持体、及び単結晶の製造方法 - Google Patents

ルツボ支持体、及び単結晶の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特殊な形状のルツボを用いなくても、双晶の発生を抑制することができるルツボ支持体及び単結晶の製造方法を提供する。【解決手段】ルツボ支持体20は、中心軸10aに沿って、種結晶101を収容する収容部11と、収容部11に連続する円錐台形状の肩部12と、肩部12に連続し、収容部11よりも大きな直径を有する直胴部13とを有し、種結晶101に融液100を接触させて肩部12を経由して直胴部13の方向にGaAs単結晶300を成長させるルツボ10を、肩部12と接触して支持するルツボ支持体20であって、異方性の熱伝導率を有し、中心軸10aに沿う方向から見て融液100が結晶化するときの等温度線20aが略多角形状になるように構成される。【選択図】図4

Description

本発明は、ルツボ支持体、及び単結晶の製造方法に関する。
GaAsやInPをはじめとするIII−V族化合物半導体は、例えば高周波電子デバイスや光デバイスなどに広く利用されている。また、近年のデバイスの高性能化に伴い、デバイスに用いられるGaAsやInP等の化合物半導体で形成された基板には、より低転位密度であることが要求されてきている。
例えば、高周波電子デバイスにおいては、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor))では、電子が狭いチャネル領域を基板面に平行な方向に流れるので、転位の影響はそれほど大きくない。一方、近年需要が伸びてきているヘテロバイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)では、キャリアがある程度広い領域を基板面に垂直な方向に流れるので、転位の存在がデバイス特性に影響を与えやすい。そのため、ヘテロバイポーラトランジスタは、低転位密度の基板の上に作製されるのが通常である。
これらのデバイスに用いられる化合物半導体の結晶成長法としては、回転するルツボ内の結晶融液に種結晶を接触させ、種結晶を回転させながらゆっくりと引き上げて結晶のインゴットを得る引き上げ法、ルツボ内の一方に設置した種結晶に融液を接触させ、温度勾配のついた領域内をルツボごと空間的に移動させてルツボ内で結晶を成長させる垂直ブリッジマン(VB:Vertical Bridgeman)法、ルツボの位置を固定したまま温度を低下させてルツボ内で結晶を成長させる垂直温度勾配成長(VGF:Vertical Gradient Freeze)法、又は垂直ブリッジマン法と垂直温度勾配成長法とを複合させた方法等がある。
垂直ブリッジマン法、垂直温度勾配成長法等は、一般的に、結晶中に生じる転位密度を小さくできることから、低転位密度が要求される基板を製造する方法の主流となっている。
垂直ブリッジマン法、垂直温度勾配成長法等において転位密度を小さくできるのは、温度勾配の小さい中で結晶の成長を行っているためである。しかし、温度勾配の小さい中での結晶の成長は、ルツボ周囲のガス対流による温度ゆらぎ等のわずかな温度環境の変化の影響を受けやすく、そのために結晶中に双晶(ツイン)が発生しやすいという問題がある。
この双晶の発生を抑制する対策として、結晶の(100)面と肩部がなす角度を特定の範囲にした熱分解窒化ホウ素(PBN:Pyrolytic Boron Nitride)から形成されたルツボを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、双晶の発生を抑制するために、断面が円形でないルツボを用いる方法、及び内側に溝を設ける等の特殊な形状のルツボを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
特開2006−213549号公報 特開平9−110575号公報 特開2011−251891号公報
しかし、特許文献1に記載された製造方法では、結晶の(100)面とルツボの肩部とのなす角がルツボの周方向で一定ではないため、ルツボの周方向で結晶が成長する条件が異なることを起因として結晶の成長が安定しないという問題がある。
また、特許文献2及び特許文献3に記載された製造方法では、特殊な構造のルツボを使用する必要がある。このルツボの材質には、一般的に熱分解窒化ホウ素が用いられるが高価であり、かつ、ルツボは、消耗品である。そのため、この特殊な構造のルツボを用いる方法では、化合物半導体の基板を製造するコストが高くなることが容易に想定される。
したがって、本発明は、特殊な形状のルツボを用いなくても、双晶の発生を抑制することができるルツボ支持体、及び単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、下記の[1]〜[5]を提供する。
[1]中心軸に沿って、種結晶を収容する収容部と、前記収容部に連続する円錐台形状の肩部と、前記肩部に連続し、前記収容部よりも大きな直径を有する直胴部とを有し、前記種結晶に融液を接触させて前記肩部を経由して前記直胴部の方向に単結晶を成長させるルツボを、前記肩部に接触して支持するルツボ支持体であって、異方性の熱伝導率を有し、前記中心軸に沿う方向から見て前記融液が結晶化するときの等温度線が略多角形状になるように構成された、ルツボ支持体。
[2]前記中心軸と直交する第1の方向の熱伝導率が前記中心軸及び前記第1の方向と直交する第2の方向の熱伝導率よりも低い第1の部材と、前記第1の部材とともに、前記中心軸の周りに環状に配置され、前記第2の方向の熱伝導率が前記第1の方向の熱伝導率よりも低い第2の部材とを有する、前記[1]に記載のルツボ支持体。
[3]2つの前記第1の部材及び2つの前記第2の部材を用いて、前記等温度線が略矩形状になるように構成された、前記[2]に記載のルツボ支持体。
[4]前記中心軸に垂直な前記種結晶の面を(100)面としたとき、前記第2の方向は、前記種結晶の[01−1]方向と平行な方向であり、前記第1の方向は、前記種結晶の[011]方向と平行な方向となるように、前記中心軸の周りに交互に配置される、前記[3]に記載のルツボ支持体。
[5]前記[1]から[4]のいずれかに記載のルツボ支持体を用いて前記融液を結晶化する工程を含む、単結晶の製造方法。
本発明によれば、特殊な形状のルツボを用いなくても、双晶の発生を抑制することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長炉の一例を示す断面図である。 図2は、ルツボの形状の一例を示す断面図である。 図3は、ルツボを支持している状態のルツボ支持体の一例を示す断面図である。 図4は、図3のA−A線断面図である。 図5は、ルツボ支持体の一例を示す図3のB−B線断面図である。 図6は、GaAs単結晶を示す模式図であり、(a)は、GaAs単結晶の横断面図、(b)は、GaAs単結晶を下方(種結晶側)から見た図である。 図7は、本発明の第2の実施の形態のルツボ支持体の一例を示す、図3のA−A線断面図である。 図8は、本発明の実施例に係るルツボの肩部におけるGaAs単結晶のストリエーションの概要を示す模式図である。 図9は、本発明の変形例に係るルツボ支持体の一例を示す断面図である。 図10は、比較例に係るルツボ支持体の一例を示す断面図である。 図11は、比較例に係るルツボの肩部におけるGaAs単結晶のストリエーションの概要を示す模式図である。
[実施の形態の要約]
本実施の形態のルツボ支持体は、中心軸に沿って、種結晶を収容する収容部と、前記収容部と連続する円錐台形状の肩部と、前記肩部と連続し、前記収容部よりも大きな直径を有する直胴部とを有し、前記種結晶に融液を接触させて前記肩部を経由して前記直胴部の方向に単結晶を成長させるルツボを前記肩部と接触して支持する構成部材を備え、前記構成部材は、異方性の熱伝導率を有する材料から形成され、前記中心軸に沿う方向から見て前記融液が結晶化するときの等温度線が略多角形状になるように配置される。ここで、「略多角形状」は、四角形以上の多角形を含む。また、異方性の熱伝導率とは、方向によって熱伝導率が異なることをいう。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長炉の一例を示す断面図である。
(結晶成長炉)
この結晶成長炉1は、原料であるGaAs結晶が融解した融液100を収容するルツボ10と、ルツボ10を支持するルツボ支持体20と、ルツボ支持体20を回転可能に保持する駆動軸30と、ルツボ10の外周に配置されてルツボ10を側面から加熱するヒータ40と、ヒータ40が発する熱が結晶成長炉1の外部に伝達するのを抑制する断熱部材50と、これらを収容する容器60とを備える。
ルツボ支持体20は、駆動軸30により保持されて駆動軸30の動作に基づいてルツボ10を上昇、下降及び回転させる。
ヒータ40は、原料であるGaAs結晶の全部、及び種結晶101の一部が融解するように、図示しない制御装置により出力が制御されてルツボ10を加熱する。
図2は、ルツボ10の形状の一例を示す断面図である。ルツボ10は、GaAs単結晶から形成された種結晶101を収容する有底円筒状の収容部11と、収容部11に連続する円錐台形状の肩部12と、肩部12に連続して形成されて収容部11より直径が大きい円筒状の直胴部13とを有する。ルツボ10の各部11〜13は、熱分解窒化ホウ素から形成されている。ルツボ10は、必要に応じてGaAs単結晶の解離を防止するため、三酸化ホウ素(B)等から形成された液体封止材200を収容する。
図3は、ルツボ10を支持している状態のルツボ支持体20の一例を示す断面図である。図4は、図3のA−A線断面図である。図5は、ルツボ支持体20の一例を示す図3のB−B線断面図である。
ルツボ支持体20は、中心軸10aに沿ってルツボ10の肩部12に接触してルツボ10を支持する円錐台形状の傾斜部21と、中心に有底の開口部22とを有するように複数(本実施の形態では4つ)の構成部材により構成され、ルツボ10の中心軸が鉛直になるようにルツボ10を支持する。
ルツボ支持体20は、中心軸10aの周方向に沿って4分割された構造となっており、内周面25及び外周面26を有する。このルツボ支持体20は、異方性の熱伝導率を有するグラファイトから形成され、図4に示す方向Y(第1の方向)の熱伝導率が中心軸10a及び方向Yと直交する方向X(第2の方向)の熱伝導率よりも低くなるように配置される2つの第1の部材23と、方向Xの熱伝導率が方向Yの熱伝導率よりも低くなるように配置される2つの第2の部材24とを有する。なお、本実施の形態では、第1及び第2の部材23、24は、同一物である。
第1及び第2の部材23、24は、中心軸10aに対する中心角が90°であり、中心軸10aに沿う方向から見て融液100が結晶化するときの等温度線20aが略矩形になるように、中心軸10aの周りに環状に交互に配置される。第1及び第2の部材23、24は、接着剤等で互いに接合される。
方向Xは、中心軸10aに垂直な種結晶101の面を(100)面としたとき、種結晶101の[01−1]方向と平行な方向であり、方向Yは、種結晶101の[011]方向と平行な方向である。
(GaAs単結晶の製造方法)
次に、上記結晶成長炉1を用いたGaAs単結晶の製造方法の一例について工程順に説明する。図6は、GaAs単結晶を示す模式図であり、(a)は、GaAs単結晶の横断面図、(b)は、GaAs単結晶を下方(種結晶側)から見た図である。なお、図6(b)において破線は、肩部に見られる成長跡を模式的に表したものであり、GaAsが同時期に成長したことを示している。
まず、ルツボ10にGaAs単結晶300の原料であるGaAs結晶を投入する。次に、ルツボ10をルツボ支持体20上に設置し、これらを結晶成長炉1の容器60内に配置する。
次に、ヒータ40の出力を制御してルツボ10を加熱してGaAs結晶を溶解させる。GaAs結晶は、ヒータ40により加熱されることにより、融点で溶け始めて融液100となる。
次に、垂直ブリッジマン法によりGaAs単結晶300を成長させる。すなわち、ヒータ40の出力をルツボ10の上下方向で温度勾配が生じるように制御し、温度勾配が生じている状態でルツボ10を降下させて融液100をルツボ10の肩部12から直胴部13に向かって結晶化させる。
融液100を結晶化させる過程において、融液100の温度が融点を下回っても一部が結晶化せずに融液100のままの状態になっていることがある。これを過冷却と呼んでおり、その程度を過冷却度という。この過冷却度は、結晶成長の駆動力を決めている。すなわち、融点と実際に結晶化する温度の差が大きいほど結晶成長の駆動力が大きく、逆に差が小さいと駆動力が小さいことになる。
ここで、GaAs単結晶300の成長跡300aが成す長方形の辺上で成長中の温度が異なることがある。すなわち、長辺の中点a、短辺の中点a、長辺と短辺の交点aは、中心軸10aからの距離がそれぞれ異なることから、各点a、a、aの温度が異なることが予測される。つまり、同時期にGaAs単結晶300が成長する点であっても、それぞれの点における過冷却度及び駆動力が異なるということになる。なお、成長跡300aは、同時期にGaAs単結晶300が成長したことを示している。
また、図6(b)では、長方形の長辺と短辺とが垂直に交わっているように模式的に描かれているが、長辺と短辺との境界は、長辺、短辺の両方の成長がせめぎあって境界があいまいになっていたり、八角形状になっていたりするのが通常である。
次に、ルツボ10を徐々に冷却した後、GaAs単結晶300が得られたルツボ10を結晶成長炉1から取り出す。
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ルツボ支持体20に異方性の熱伝導率を有する第1及び第2の部材23、24を用いることにより、ルツボ支持体20における温度分布を矩形状にすることができる。これにより、GaAs単結晶300が同時期に成長する箇所の過冷却度及び駆動力の差を低減することが可能となり、GaAs単結晶300に双晶が発生することを抑制できる。
(2)ルツボ10の形状を変更することなくGaAs単結晶300に双晶が発生するのを抑制できるので、特殊な形状のルツボを用いずに低転位密度の基板を得ることができる。そのため、低転位密度の基板の製造コストを低減することが可能となる。
(3)GaAs単結晶300に双晶が発生するのを抑制できることから、低転位密度であり、かつ、高品質なGaAs単結晶300から形成された基板を得ることができる。さらに、この基板を用いることで、特性が優れたデバイスを作製することができる。
なお、GaAs単結晶300を垂直温度勾配成長法により成長してもよい。すなわち、垂直温度勾配成長法では、ルツボ10の上下方向の移動を規制した状態でヒータ40の出力を制御することによりルツボ10の温度を低下させて融液100を冷却し、融液100を結晶化させる。
[第2の実施の形態]
図7は、本発明の第2の実施の形態に係るルツボ支持体の一例を示す、図3のA−A線断面図である。
第1の実施の形態のルツボ支持体20は、中心軸10aに対する中心角が同一の第1及び第2の部材23、24により構成したが、本実施の形態のルツボ支持体20は、中心角が異なる第1及び第2の部材23a、24aにより構成されている。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
本実施の形態のルツボ支持体20は、例えば中心角bが100°である2つの第1の部材23aと、中心角bが80°である2つの第2の部材24aとを有し、第1及び第2の部材23a、24aがそれぞれ交互に配置されて接着剤等で接合されている。なお、第1及び第2の部材23a、24aは、構成部材の一例である。
第1の部材23aの中心角bが第2の部材24aの中心角bよりも大きく、かつ、中心角bと中心角bとの和が180°であればよい。なお、中心角b及び中心角bは、b:bの値を1:0.5〜1:2の範囲にするのが好ましい。
ルツボ支持体20を形成する第1の部材23aと第2の部材24aとの中心角を異なる角度とすることにより、図7に示すように、融液100が結晶化するときの等温度線20bが略長方形状になる。
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、融液100が結晶化するときの等温度線20bを略長方形にすることができることから、等温度線20bをGaAs単結晶300が同時期に成長する形状に近づけることが可能となり、双晶の発生をより抑制することができる。
(変形例)
図9は、本発明の変形例のルツボ支持体の一例を示す断面図である。ルツボ支持部材20は、中心角cを有する第1の部材23bと、中心角cを有する第2の部材24bとの間に間隔dを設けてもよい。この場合、例えば、第1及び第2の部材23b、24bの位置を保持する保持部材を用いる。
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。図8は、本発明の実施例のルツボの肩部で生じるGaAs単結晶のストリエーションの概要を示す模式図である。
(ルツボ及びルツボ支持体)
本実施例に係るGaAs単結晶300は、以下のルツボ10及びルツボ支持体20を用いて作製した。すなわち、ルツボ10には、熱分解窒化ホウ素から形成されたものを使用した。このルツボ10の形状は、収容部11の直径が10mm、高さが80mm、肩部12の高さが75mm、直胴部13の直径が160mm、高さが300mmである。ルツボ支持体20の形状は、外径が180mm、高さが200mmである。
本実施例では、ルツボ支持体20として、図7に示す中心角bが100°である第1の部材23aと、中心角bが80°である第2の部材24aとを交互に配置したものを用いた。
この第1及び第2の部材23a、24aは、異方性を有するグラファイトで形成した。第1の部材23aは、図7における方向Xの熱伝導率が200W/mK、図7における方向Yの熱伝導率が2.0W/mKであり、第2の部材24aは、方向Yの熱伝導率が200W/mK、方向Xの熱伝導率が2.0W/mKである。
(GaAs単結晶の作製工程)
次に、GaAs単結晶300の作製工程について説明する。本実施例では、以下の工程により作製した。
まず、ルツボ10の収容部11に直径9mm、長さ75mmの円筒形の種結晶101を(100)面が上方を向くように設置した。この種結晶101には、結晶方位が分かるようにマーキングしたものを用いた。
この種結晶101を収容したルツボ10を、種結晶101の結晶方位に合わせてルツボ支持体20に設置した。すなわち、種結晶101の[011]方向を、図7における方向Yと一致するように設置した。
次に、ルツボ10に原料となるGaAsポリ結晶10000gと、液体封止材200である三酸化ホウ素(B)500gを投入した。
次に、ルツボ10及びルツボ支持体20を結晶成長炉1の容器60内に配置し、容器60内部を窒素置換した後、ヒータ40の出力を制御してGaAsポリ結晶を溶融させた。
次に、垂直ブリッジマン法によりGaAs単結晶300の成長を行った。すなわち、6℃/cmの温度勾配になるようにヒータ40の出力を制御するとともに、ルツボ10を5mm/時の速度で降下させて融液100を結晶化させた。
次に、GaAs単結晶300を成長行った後、ルツボ10の温度をゆっくり降温させて結晶成長炉1からGaAs単結晶300をルツボ10ごと取り出した。
(GaAs単結晶の評価方法)
本実施例について、上記工程によりGaAs単結晶300の成長を20回行い、成長したそれぞれのGaAs単結晶300の肩部301に双晶が発生しているか否かを目視で観察して判定した。
また、本実施例において、GaAs単結晶300の肩部301におけるファセット成長の状況を詳しく観察するために、GaAsポリ結晶にSiを2g添加して上記工程と同じ条件でGaAs単結晶300を成長した。このGaAs単結晶300について、双晶の発生の有無を判定した。ここでいうファセット成長とは、GaAs単結晶300の肩部301に見られる、(111)面をおおよその成長界面にするような略[111]方向の成長をいう。
さらに、このSiを添加したGaAs単結晶300について、肩部301の(01−1)面をスライスし、その断面をエッチングして断面に現れるストリエーション300bの様子を観察することにより、ファセット成長の乱れについて評価した。
(実施例の評価結果)
実施例では、20回の成長を行ったGaAs単結晶300の全てにおいて、肩部301に双晶の発生は見られなかった。また、実施例は、Siを添加した場合でも双晶の発生が見られなかった。さらに、このGaAs単結晶300は、図8に示すような均等なストリエーション300bが観察され、乱れの少ない安定したファセット成長がされていたことが確認できた。
(比較例)
図10は、比較例に係るルツボ支持体の一例を示す断面図である。
比較例では、ルツボ支持体20Aを用いて実施例と同様の工程によりGaAs単結晶300を作製した。このルツボ支持体20Aは、図10における方向X及び方向Yの熱伝導率が共に85W/mKである等方性の熱伝導率を有するグラファイトで一体的に形成される。また、このルツボ支持体20Aは、融液100が結晶化するときの等温度線20cが円環状となる。
比較例において、実施例と同様に、上記工程によりGaAs単結晶300の成長を20回行い、成長したそれぞれのGaAs単結晶300の肩部301に双晶が発生しているか否かを目視で観察して判定した。
さらに、実施例と同様にGaAsポリ結晶にSiを2g添加して上記工程と同じ条件でGaAs単結晶300を成長し、このGaAs単結晶300について、双晶の発生の有無を判定した。
(比較例の評価結果)
図11は、比較例のルツボの肩部で生じるGaAs単結晶のストリエーションの概要を示す模式図である。一方、比較例では、20回の成長を行ったGaAs単結晶300の内の3つにおいて肩部301に双晶の発生が見られた。また、比較例のGaAs単結晶300は、Siを添加した場合に双晶の発生は見られなかったが、図11に示すように、ファセット成長が途切れている箇所(点e)が見られ、ファセット成長の乱れが確認できた。
このファセット成長が途切れることが要因となってGaAs単結晶300等の単結晶の成長に乱れを生じさせ、この単結晶中に双晶が発生することが知られている。また、比較例に係るルツボ支持体20Aは、融液100が結晶化するときの等温度線20cが円環状であることから、GaAs単結晶300が同時期に成長する箇所で成長中の温度が異なる。そのため、同時期に成長する箇所で過冷却度及び駆動力が異なる。
このように、同時期に成長する箇所で駆動力が異なることが、GaAs単結晶300の成長を不安定にしていると考えられる。つまり、少しの温度のゆらぎでもGaAs単結晶300の成長が不安定化し、これによって双晶が発生することが予測される。そのため、比較例では、ルツボ10周囲のガス対流等による少しの温度のゆらぎでもGaAs単結晶300の成長に乱れが生じ、肩部301に双晶が発生し易くなっていると考えられる。
要するに、比較例に係るルツボ支持体20Aは、一般的なルツボ10の形状に対応して可能な限りルツボ10の温度分布が軸対称になるように形成されているため、肩部301に双晶が発生し易くなっているといえる。
これに対し、実施例では、ルツボ支持体20を融液100が結晶化するときの温度分布を略長方形とすることにより、ファセット成長時の過冷却度の差が小さくなり、結晶の成長を安定化できたと考えられる。
[他の実施の形態]
本発明の実施の形態及び実施例は、上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形、実施が可能である。例えば、本発明は、GaAsの他、GaP、GaSb、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、他の化合物半導体にも適用することができる。さらに、酸化物等の単結晶を成長する場合にも適用することができる。
また、ルツボ支持体20には、異方性の熱伝導率を有するグラファイトの他、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の異方性の熱伝導率を有するセラミックを用いてもよい。
また、第1及び第2の部材には、等方性の熱伝導率を有する材料であっても、例えば板状の材料を張り合わせることにより全体として異方性の熱伝導を有するように構成した複合材料を用いてもよい。
また、ルツボ支持体20は、第1、第2の部材の他に第3の部材や第4の部材を有し、融液100が結晶化するときの等温度線を略六角形等の略多角形にしてもよい。
1…結晶成長炉、10…ルツボ、10a…中心軸、11…収容部、12…肩部、13…直胴部、20、20A…ルツボ支持体、20a、20b、20c…等温度線、21…傾斜部、22…開口部、23、23a、23b…第1の部材、24、24a、24b…第2の部材、25…内周面、26…外周面、30…駆動軸、40…ヒータ、50…断熱部材、60…容器、100…融液、101…種結晶、200…液体封止材、300…GaAs単結晶、300a…成長跡、300b…ストリエーション、301…肩部

Claims (5)

  1. 中心軸に沿って、種結晶を収容する収容部と、前記収容部に連続する円錐台形状の肩部と、前記肩部に連続し、前記収容部よりも大きな直径を有する直胴部とを有し、前記種結晶に融液を接触させて前記肩部を経由して前記直胴部の方向に単結晶を成長させるルツボを、前記肩部に接触して支持するルツボ支持体であって、
    異方性の熱伝導率を有し、前記中心軸に沿う方向から見て前記融液が結晶化するときの等温度線が略多角形状になるように構成された、
    ルツボ支持体。
  2. 前記中心軸と直交する第1の方向の熱伝導率が前記中心軸及び前記第1の方向と直交する第2の方向の熱伝導率よりも低い第1の部材と、
    前記第1の部材ととともに、前記中心軸の周りに環状に配置され、前記第2の方向の熱伝導率が前記第1の方向の熱伝導率よりも低い第2の部材とを有する、
    請求項1に記載のルツボ支持体。
  3. 2つの前記第1の部材及び2つの前記第2の部材を用いて、前記等温度線が略矩形状になるように構成された、
    請求項2に記載のルツボ支持体。
  4. 前記中心軸に垂直な前記種結晶の面を(100)面としたとき、前記第2の方向は、前記種結晶の[01−1]方向と平行な方向であり、前記第1の方向は、前記種結晶の[011]方向と平行な方向となるように、前記第1の部材及び前記第2の部材が前記中心軸の周りに交互に配置される、
    請求項3に記載のルツボ支持体。
  5. 前記請求項1から4のいずれか1項に記載のルツボ支持体を用いて前記融液を結晶化する工程を含む、
    単結晶の製造方法。










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