JP2015166101A - アルミニウム材の接合方法及びアルミニウム材の接合体 - Google Patents

アルミニウム材の接合方法及びアルミニウム材の接合体 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム材容器の内側にアルミニウム材の犠牲陽極材を接合する方法において、犠牲陽極材の配置や形状の自由度が高い接合方法を提供する。
【解決手段】一方のアルミニウム材からなる容器と、当該容器の内側に配置され、前記一方のアルミニウム材よりも低い自然電位を有する他方のアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを接合する方法において、前記一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材のMg含有量が0.5質量%以下に規制され、前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となる温度において、フッ化物系又は塩化物系のフラックスが接合部に塗布された状態で非酸化性雰囲気中において接合することを特徴とするアルミニウム材の接合方法。
【選択図】図1

Description

本発明はアルミニウム材の接合方法、ならびに、当該接合方法によって接合される接合体に関し、詳細は、アルミニウム材からなる容器と、この容器の内側に配置され、前記アルミニウム材よりも低い自然電位を有するアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを接合する方法、ならびに、当該接合方法によって接合される接合体に関する。
アルミニウム材はその比強度の高さと熱伝導性が良好なことから、熱交換器や配管の材料として用途を拡大している。熱交換器や配管は様々な環境において暴露されるため、その耐食性が重要となる。一般に、アルミニウム材は常温で速やかに不動態皮膜を形成することにより、錆び難く高耐食性であると言われている。しかしながら、使用環境中に塩素などのイオンが存在する場合は不動態皮膜が破壊され、破壊された部分が集中的に腐食して孔食が発生することも知られている。このような腐食に対する対策の代表的なものに、犠牲防食法が挙げられる。犠牲防食法では、防食対象となる基材よりも卑な金属を、ろう付方法、溶射方法、めっき方法などにより金属的に基材に接合することで、犠牲陽極材を優先的に腐食させて基材の寿命を高めている。
しかしながら、従来の犠牲陽極材の接合方法では犠牲陽極材の形状や配置に制約があり、耐食性や設計性に限界があった。例えば、溶射、めっき、クラッドろう付などの方法によって犠牲陽極材を配置する際には、犠牲陽極材は基材の表面にごく薄くしか形成されない。そのため、耐食性の向上に限界があった。また、基材の変質が大きく、犠牲陽極材の数が多い場合は生産性も悪化する。熱交換器の製造では、フィンを犠牲陽極材として用いてろう付で配置する手法が用いられる。この場合、犠牲陽極材の形状や位置は比較的自由に設計することができる。しかしながら、フィン特性の観点から犠牲陽極材の厚さが200μm以下と非常に薄くなり、耐食性の向上にはやはり限界があった。また、ろう付方法を用いるために、微細な流路に適用することは困難であり熱設計の上でも限界があった。
このようなろう付などの接合方法に代わって、ネジやタブなどを用いた物理的な接合方法や溶接方法では、その原理上、被接合部材の形状において接合に適用不可能なものが多い。特に熱交換器のような微細な形状を有する製品や、容器内部への犠牲陽極材の配置は困難であった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、アルミニウム材容器の内側にアルミニウム材の犠牲陽極材を接合する際に、犠牲陽極材の配置や形状の自由度が高い接合方法、ならびに、当該接合方法によって接合される接合体を提供することを目的とする。これにより、耐食性の向上に加えて、より自由な製品設計を可能にする。
本発明は請求項1において、一方のアルミニウム材からなる容器と、当該容器の内側に配置され、前記一方のアルミニウム材よりも低い自然電位を有する他方のアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを接合する方法において、前記一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材のMg含有量が0.5質量%以下に規制され、前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となる温度において、フッ化物系又は塩化物系のフラックスが接合部に塗布された状態で非酸化性雰囲気中において接合することを特徴とするアルミニウム材の接合方法とした。
本発明は請求項2において、一方のアルミニウム材からなる容器と、当該容器の内側に配置され、前記一方のアルミニウム材よりも低い自然電位を有する他方のアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを接合する方法において、前記一方のアルミニウム材のMg含有量が2.0質量%以下に規制され、前記他方のアルミニウム材のMg含有量が0.2〜2.0質量%に規制され、前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となる温度において、真空中又は非酸化性雰囲気中において接合することを特徴とするアルミニウム材の接合方法とした。
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記他方のアルミニウム材が、Si:4.5質量%以下、Cu:12質量%以下及びZn:30質量%以下から選択される1種又は2種以上を含有し、Si、Cu及びZnの含有量のうち少なくとも二以上が1.00質量%を超えているか、又は、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10質量%以上であるものとした。
本発明は請求項4では請求項1〜3のいずれか一項において、前記他方のアルミニウム材が、Fe:0.01〜2.0質量%、Mn:0.01〜2.0質量%、Ti:0.01〜0.3質量%及びZr:0.05〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
本発明は請求項5では請求項1〜4のいずれか一項において、前記一方のアルミニウム材の接合後における自然電位から他方のアルミニウム材の接合後における自然電位を差し引いた値が50〜300mVであるものとした。
本発明は請求項6では請求項1〜5のいずれか一項において、前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%である時間が30〜3600秒であるものとした。
本発明は請求項7において、請求項1〜6のいずれか一項のアルミニウム材の接合方法によって接合される接合体であって、前記犠牲陽極材の直方体換算長さが500μm以上であることを特徴とするアルミニウム材の接合体とした。
本発明は請求項8では請求項7において、前記容器の内側に複数の犠牲陽極材が配置されており、犠牲陽極材間の各間隔が50mm以内であるものとした。
本発明に係るアルミニウム材の接合方法では、犠牲陽極材を構成する他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となる温度において、すなわち、当該アルミニウム材を半溶融状態にして接合する。これにより、金属接合に必要な液相を供給しつつ、部材の変形を最小限に抑制することが可能となる。
また、接合温度において、容器を構成する一方のアルミニウム材は固相の状態にあるので接合時の容器の変質が抑制される。これによって、溶接のように容器の一部の組織が変質することなく容器と犠牲陽極材との接合が可能となる。また、ネジ止めやタブによる接合といった物理的な接合方法のように、容器に穴を設けたりこれを変形させたりする必要もない。
更に、本発明に係る接合法方では、犠牲陽極材が、例えば容器の内壁に面状又は線状に接触しているなど内側に配置される。この条件が満たされていれば、犠牲陽極材の形状や位置は自由に選択することができる。例えば、溶射、めっき、クラッドろう付などの方法では不可能であった厚い犠牲陽極材を配置することが可能となる。また、デッドスペースとなっている場所に犠牲陽極材を配置することや、製品形状に適合した形状を有する犠牲陽極材を配置することが可能となる。
以上のように、本発明に係るアルミニウム材の接合方法は、接合体に優れた耐食性を付与するだけでなく、被接合部材の変形や変質を抑制しつつ、従来技術では達成できなかったより自由な製品設計を可能にする。
2元系共晶合金としてAl−Si合金の状態図を示す模式図である。 本発明に係るアルミニウム材の接合方法における、液相の生成メカニズムを示す説明図である。 本発明に係るアルミニウム材の接合方法における、液相の生成メカニズムを示す説明図である。 本発明に係るアルミニウム材の接合方法において、犠牲陽極材の配置を示す説明図である。 接合率を評価する為の逆T字型接合試験片を示す斜視図である。 変形率を評価する為のサグ試験を説明する斜視図(a)及び側面図(b)である。 容器を構成するアルミニウム材に対する犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の配置関係を示す斜視図である。
以下において、本発明を詳細に説明する。
A.被接合部材
本発明に係るアルミニウム材の接合方法では、被接合部材として、アルミニウム材からなる容器と、この容器の内側に配置され、容器を構成するアルミニウム材よりも低い自然電位を有するアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを用い、これら両被接合部材同士を接合する。ここで、アルミニウム材とは、純アルミニウム材とアルミニウム合金材をいうものとする。
B.液相の生成
本発明に係るアルミニウム材の接合方法では、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比(以下、「液相率」と記す)が5〜35%となる温度で接合する必要がある。液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎてアルミニウム材が形状を維持できなくなり大きな変形が生じる。一方、液相率が5%未満では、生成する液相量が少なく接合が困難となる。好ましい液相率は5〜30%であり、より好ましい液相率は10〜20%である。
加熱中における実際の液相率を測定することは、極めて困難である。そこで、本発明で規定する液相率は平衡計算によって求めるものとする。具体的には、Thermo−Calcなどの熱力学平衡計算ソフトによって合金組成と加熱時の最高到達温度から計算される。
液相の生成メカニズムについて説明する。図1に代表的な2元系共晶合金であるAl−Si合金の状態図を模式的に示す。上記一方のアルミニウム材に、Si濃度がc1である上記他方のアルミニウム材を組み合わせて加熱すると、共晶温度(固相線温度)Teを超えた付近の温度T1で液相の生成が始まる。共晶温度Te以下では、図2(a)に示すように、結晶粒界で区分されるマトリクス中に晶析出物が分布している。ここで液相の生成が始まると、図2(b)に示すように、晶析出物分布の偏析の多い結晶粒界が溶融して液相となる。次いで、図2(c)に示すように、アルミニウム合金のマトリクス中に分散する主添加元素成分であるSiの晶析出物粒子や金属間化合物の周辺が球状に溶融して液相となる。更に図2(d)に示すように、マトリクス中に生成したこの球状の液相は、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。次いで、図1に示すように温度がT2に上昇すると、状態図より液相量は増加する。図1に示すように、他方のアルミニウム材のSi濃度が最大固溶限濃度より小さいc2の場合には、固相線温度Ts2を超えた付近で液相の生成が始まる。但し、c1の場合と異なり、溶融直前の組織は図3(a)に示すように、マトリクス中に小析出物粒子が存在しない場合がある。この場合、図3(b)に示すように粒界でまず溶融して液相となった後、図3(c)に示すようにマトリクス中の局所的に溶質元素濃度が高い場所より液相が発生する。図3(d)に示すように、マトリクス中に生成したこの球状の液相は、c1の場合と同様に、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。温度がT3に上昇すると、状態図より液相量は増加する。このように、本発明の接合方法は、アルミニウム材内部の部分的な溶融により生成される液相を利用するものであり、接合と形状維持の両立を実現できるものである。
C.酸化皮膜の破壊
アルミニウム材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。本発明に係る接合では、酸化被膜を破壊するために以下のC−1又はC−2に示すいずれかの方法が採用される。
C−1.フラックスによる酸化皮膜の破壊
この方法では、酸化皮膜を破壊する為に少なくとも接合部にフラックスを塗布する。フラックスはアルミニウム合金のろう付で用いるKAlFやCsAlFなどのフッ化物系フラックス又は塩化物系フラックスが用いられる。これらフラックスは、接合において液相が溶融する前に又は接合温度に至る前に溶融し、酸化皮膜と反応して酸化皮膜を破壊する。
更にこの方法では、酸化皮膜の形成を抑制するために、窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で接合する。特にフッ化物系のフラックスを用いる場合は、酸素濃度を250ppm以下に抑え、露点を−25℃以下に抑えた非酸化性ガス雰囲気中で接合するのが好ましい。
また、フッ化物系のフラックスを用いる場合、一方及び他方のアルミニウム材中にMgが0.5質量%を超えて含有されると、フラックスとMgが反応してフラックスの酸化皮膜破壊作用が損なわれる。従って、請求項1に規定するように、両方のアルミニウム材において、Mg含有量が0.5質量%(以下において、単に「%」と記す)以下に規制される。なお、Mg含有量が0.5質量%以下の条件を満たせば、アルミニウム合金に含有される他の元素の種類や含有量には制限はない。
C−2.Mgのゲッター作用による酸化皮膜の破壊
アルミニウム材にMgが所定量添加されている場合は、接合部にフラックスを塗布しなくても、酸化被膜が破壊されて接合が可能になる。この場合、真空フラックスレスろう付と同様に、アルミニウム材が溶融し液相が表層に出てくるときに、アルミニウム材中より蒸発するMgのゲッター作用によって酸化皮膜が破壊される。
Mgのゲッター作用により酸化皮膜を破壊する場合、酸化皮膜の形成を抑制するために、真空中又は上記の非酸化性雰囲気中で接合する。但し、面接合や閉塞空間での接合の場合は乾燥した大気であっても接合可能な場合がある。非酸化性雰囲気中や乾燥大気中での接合の場合は、露点を−25℃以下に抑えることが好ましい。
Mgのゲッター作用により酸化皮膜を破壊する為には、請求項2に規定するように、容器を構成するアルミニウム材のMg含有量を2.0%以下に規制し、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材のMg含有量を0.2〜2.0%に規制する。犠牲陽極材を構成するアルミニウム材のMg含有量が0.2%未満では、十分なゲッター作用が得られず良好な接合が達成されない。一方、2.0%を超えると、表面でMgが雰囲気中の酸素と反応して酸化物(MgO)が多く生成され接合が阻害される。なお、容器を構成するアルミニウム材のMg含有量を2.0%以下としたのは、犠牲陽極材によるMgのゲッター作用が得られれば足りるためである。しかしながら、Mg含有量が多過ぎると、容器に形成される酸化物が厚くなり過ぎてしまう。従って、容器を構成するアルミニウム材のMg含有量は2.0%以下であればよい。また、Mg含有量が上記の条件を満たせば、両アルミニウム材において含有される他の元素の種類や含有量には制限はない。
D.犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の合金組成
本発明において用いる犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の合金組成は、フラックスを用いる場合は、Mg:0.5%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。これに代わってフラックスを用いない場合は、Mg:0.2〜2.0%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。また、いずれの場合においても、Mg成分の他に選択的添加元素として、Si:4.5%以下、Cu:12%以下及びZn:30%以下から選択される1種又は2種以上を含有し、Si、Cu及びZnの含有量のうち少なくとも二以上が1.00%を超えているか、又は、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%以上であるのが好ましい。なお、Si:0.10〜4.5%、Cu:0.02〜12%及びZn:1.50〜30%から選択される1種又は2種以上を含有し、Si、Cu及びZnの含有量のうち少なくとも二以上が1.00%を超えているか、又は、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%以上であるのが更に好ましい。
犠牲陽極材を構成するこのような組成のアルミニウム材において、固相線以上の温度で液相を安定的に生成できるので安定した接合性が得られる。また、上記選択的添加元素は、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の液相率が5%〜35%となる温度範囲を低下させる作用も発揮するので、この温度範囲を容器のアルミニウム材の固相線未満にすることができる。一方、Si、Cu、Znの含有量が上記範囲外の場合には、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の液相率が5%〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が、例えば10℃未満のように小さくなる。その結果、接合操作における温度制御が困難となり安定した接合が得られない。なお、ZnはAlよりも自然電位が卑なので、犠牲陽極材が容器よりも自然電位が卑となる構造とする場合に好適に添加される。
犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の強度や耐食性を向上させるための選択的添加元素として、Fe、Mn、Ti、Zrから選択される1種又は2種以上を下記の含有量で添加してもよい。
Feは、マトリックスに若干固溶して強度を向上させるのに加えて、晶出物として分散して特に高温での変形を防止する。Fe含有量が0.01%未満の場合は、上記効果が十分に得られず、また高純度の地金を使用する必要があるため材料コストが増加する。一方、2.0%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成し、製造性に問題が生じる。更に、接合時の加熱において、再結晶した結晶粒が微細化して粒界密度が増加するため、接合前後における寸法変化が大きくなる。従って、Fe含有量は0.01〜2.0%とするのが好ましく、0.2〜1.0%とするのが更に好ましい。
Mnは、Al−Mn系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、或いは、アルミニウム母相中に固溶して固溶強化として作用して、アルミニウム材の強度を向上させる。Mn含有量が0.01%未満では上記効果が十分に得られない。一方、2.0%を超えると粗大金属間化合物が形成され易くなり、腐食の進行が過度に早くなった場合は犠牲防食期間が短縮される。従って、Mn含有量は0.01〜2.0%とするのが好ましく、0.3〜1.5%とするのが更に好ましい。
Tiは、固溶により強度を向上させる効果を発揮する。Ti含有量が0.01%未満では上記効果が得られず、0.3%を超えると巨大晶出物が発生して成形性を阻害する。従って、Ti含有量は0.01〜0.3%とするのが好ましく、0.1〜0.2%とするのが更に好ましい。
Zrは、Al−Zr系金属間化合物として析出し、分散強化によって接合後の強度を向上させる効果を発揮する。また、Al−Zr系金属間化合物は加熱後の結晶粒粗大化に寄与する。Zr含有量が0.05%未満では上記効果が得られず、0.3%を超えると粗大な金属間化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる。従って、Zr含有量は0.05%〜0.3%とするのが好ましく、0.1〜0.2%とするのが更に好ましい。
犠牲陽極材を構成するアルミニウム材には、更なる特性向上のために、選択的添加元素としてV、Cr及びNiから選択される1種又は2種以上を下記の含有量で添加してもよい。
Vは、固溶により強度を向上させる効果を発揮する。V含有量が0.05%未満では上記効果が得られない。一方、0.3%を超えると巨大晶出物が発生して成形性を阻害する。従って、V含有量は0.05%〜0.3%とするのが好ましく、0.1〜0.2%とするのが更に好ましい。
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系金属間化合物の析出により加熱後の結晶粒粗大化に寄与する。Cr含有量が0.05%未満では上記効果が得られない。一方、0.3%を超えると粗大な金属間化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる。従って、Cr含有量は0.05%〜0.3%とするのが好ましく、0.1〜0.2%とするのが更に好ましい。
Niは、金属間化合物として晶出又は析出し、分散強化によって接合後の強度を向上させる効果を発揮する。Ni含有量は、0.1〜2.0%とするのが好ましく、0.2〜1.0%とするのが更に好ましい。Ni含有量が2.0%を超えると、粗大な金属間化合物を形成し易くなり、加工性を低下させる。Ni含有量が0.1%未満では、強度向上効果が十分に得られない。
また、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の耐食性を更に向上させるための選択的添加元素として、In及びSnの少なくとも一方を下記の含有量で添加してもよい。Sn、Inは、犠牲陽極作用を強化することにより耐食性を向上させる。それぞれの含有量が0.05%以下では上記効果が十分ではなく、0.3%を超えると腐食速度が過度に速くなり犠牲防食期間が短縮する。従って、SnとInの含有量は、それぞれ0.05〜0.3%とするのが好ましく、0.1〜0.2%とするのが更に好ましい。
更に、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材には、接合中の液相の特性改善を図り接合性を更に良好とするための選択的添加元素として、Be:0.0001〜0.1%、Sr:0.0001〜0.1%、Bi:0.0001〜0.1%、Na:0.0001〜0.1%及びCa:0.0001〜0.05%の1種又は2種以上を添加してもよい。これらの微量元素の添加により、第二相粒子の微細分散や液相の流動性の向上等が図られて接合性が更に改善される。これらの微量元素は、上記規定範囲未満では上記効果が不十分であり、上記規定範囲を超えると耐食性低下等の弊害を生じる場合がある。
E.犠牲陽極材の形状
犠牲陽極材の形状は、容器の内側に配置可能であれば特に制限はない。本発明では、犠牲陽極材の形状(寸法)を以下のように規定する。任意形状の犠牲陽極材を収容する最小容積の直方体(立方体を含む)を仮定し、その直方体の六辺のうち最も短い辺の長さ(以下、「直方体換算長さ」と記す)をもって、当該直方体の寸法を規定するものである。本発明では、犠牲陽極材の直方体換算長さを500μm以上とするのが好ましく、1mm以上とするのが更に好ましい。500μm未満では犠牲防食効果が十分に得られない虞がある。500μm以上とすることにより、防食寿命を延ばすことができる。図4に示すように、例えば直方体の筐体からなる容器の内面(底面)に、500μm以上の直方体換算長さを有する犠牲陽極材が配置される。
F.犠牲陽極材の配置
犠牲陽極材は、容器の内面に線状又は面状に接した状態で配置される。配置する位置は、容器との接合が可能であれば容器内部のどこでもよい。例えば、内部に複雑な流路構造を有する容器内部の所望の位置に配置することができる。従って、デッドゾーンとなっているスペースに配置することも、所定間隔をもって配置することも可能である。配置した犠牲陽極材から遠くに離間した位置には、防食効果が及ばない。従って、犠牲陽極材による防食効果が発揮される範囲は、犠牲陽極材から50mm以内とすることが好ましく、10mmとするのが更に好ましい。従って、図4に示すように複数の犠牲陽極材を配置する場合は、その間隔を50mm以内とするのが好ましく、10mm以内とするのが更に好ましい。また、犠牲陽極材の長手方向が容器内面に対して垂直となるように犠牲陽極材を配置すると、犠牲陽極材の腐食が進行した際において、容器内面と接している犠牲陽極材の長手方向先端部が剥がれ易くなる。剥がれた部分は防食作用に寄与しないため、防食効果が低減する。従って、犠牲陽極材の長手方向が容器内面に対して平行となるように、犠牲陽極材を配置するのが好ましい。
G.容器と犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の自然電位
容器を構成するアルミニウム材の接合後における自然電位から、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の接合後における自然電位を差し引いた値が、50〜300mVであるのが好ましい。この値が50mV未満の場合は自然電位差が小さ過ぎて、犠牲陽極材による犠牲防食効果が十分に発揮されない場合がある。一方、この値が300mVを超える場合は自然電位差が大き過ぎて、犠牲陽極材の消耗が激しくなり結果的に防食寿命が短くなる場合がある。
H.容器を構成するアルミニウム材の合金組成
本発明において用いる容器を構成するアルミニウム材は、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材よりも、大きな自然電位を有する合金組成を備える。また、上述のように、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材の液相率が5%〜35%となる温度範囲が、容器を構成するアルミニウム材の固相線以下であるのが好ましい。
容器を構成するアルミニウム材の合金組成は、具体的には、フラックスを用いる場合は、Mg:0.5%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。これに代わってフラックスを用いない場合は、Mg:2.0%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。また、いずれの場合においても、Mg成分の他に選択的添加元素として、下記含有量のSi、Cu、Mn、Fe、Ti、V、Cr、Ni及びZnから選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
Siは、固溶によりAl相を貴化するだけでなく強度も向上させる効果を発揮する。また、Si相が微細に析出することで容器の自己耐食性向上にも寄与する。Si含有量が0.1%未満では上記効果が十分に得られない。一方、SiはAl、Cu、Znと共晶反応を起こすため、含有量が多過ぎる場合は固相線温度の低下を招く。Si含有量が、Alに対する最大固溶限界である1.65%以上の場合は577℃まで固相線温度が低下するため、犠牲陽極材のみをその温度以下において溶融させることが困難になる。Si添加による固相線温度の低下によって犠牲陽極材のみの溶融が阻害されないためには、Si含有量を1.5%以下とするのが好ましい。従って、Si含有量は0.1〜1.5%とするのが好ましく、0.5〜1.0%とするのが更に好ましい。
Cuは、固溶によりAl相を貴化すると共に強度も向上させる効果を発揮する。また、AlCu相を析出させることで析出強化の効果も得られる。Cu含有量が0.1%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が1.6%を超える場合は固相線温度が577℃まで低下する。また、Cu含有量が1.5%を超えると自己耐食性の低下も招く。従って、Cu含有量は0.1〜1.5%とするのが好ましく、0.5〜1.0%とするのが更に好ましい。
Mnは、固溶によりAl相を貴化すると共に強度も向上させる効果を発揮する。また、Al−Mn系金属間化合物として析出させることで析出強化の効果も得られる。Mn含有量が0.1%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると粗大金属間化合物が形成され易くなり製造性に劣る。従って、従って、Mn含有量は0.1〜2.0%とするのが好ましく、0.3〜1.5%とするのが更に好ましい。
Feは、マトリックスに若干固溶して強度を向上させる効果に加えて、晶出物として分散して特に高温での強度低下を防止する効果を発揮する。Fe含有量が0.01%未満の場合には、上記効果が不十分となるだけでなく、高純度の地金を使用する必要から材料コストが増加する。一方、2.0%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成し製造性に劣る。また、接合時の加熱において、再結晶した結晶粒が微細化して粒界密度が増加するため、接合前後において寸法変化が大きくなる。従って、Fe含有率は0.01〜2.0%とするのが好ましく、0.2〜1.0%とするのが更に好ましい。
TiとVは、固溶により強度向上させる効果に加えて、層状に分布して板厚方向の腐食の進行を防止する自己耐食性向上効果を発揮する。従って、TiとVの少なくとも一方を添加するのが好ましい。Ti、Vの含有量がそれぞれ0.05%未満では上記効果が不十分であり、それぞれ0.3%を超えると巨大晶出物が発生して成形性や耐食性を阻害する。従って、TiとVの添加量はそれぞれ、0.05〜0.3%とするのが好ましく、
0.1〜0.2%%とするのが更に好ましい。
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系金属間化合物が析出することにより加熱後の結晶粒粗大化に寄与する。Cr含有量が0.05%未満では上記効果が得られない。一方、0.3%を超えると、粗大な金属間化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる。従って、Cr含有量は0.05〜0.3%とするのが好ましく、
0.1〜0.2%%とするのが更に好ましい。
Niは、金属間化合物として晶出又は析出し、分散強化によって接合後の強度を向上させる効果を発揮する。Ni含有量は、0.1〜2.0%とするのが好ましく、0.2〜1.0%とすることが更に好ましい。Ni含有量が2.0%を超えると、粗大な金属間化合物を形成し易くなり加工性を低下させ、自己耐食性も低下する。一方、Ni含有量が0.1%未満では、十分な強度向上効果が得られない。
Zrは、Al−Zr系金属間化合物として析出し、分散強化によって接合後の強度を向上させる効果を発揮する。また、Al−Zr系金属間化合物は、加熱後の結晶粒粗大化に寄与する。Zr含有量が0.05%未満では、上記効果が得られない。一方、0.3%を超えると、粗大な金属間化合物を形成し易くなり塑性加工性を低下させる。従って、Zr含有量は0.05〜0.3%とするのが好ましく、0.1〜0.2%とするのが更に好ましい。
I.接合方法
I−1.被接合部材の前処理
被接合部材である容器及び犠牲陽極材を構成するアルミニウム材には、板材、押出材、鋳物材などを用いることができる。被接合部材表面の有機物などの付着物等を、接合前に除去しておくのが好ましい。この付着物等は、アセトンなどの溶剤で拭き取って除去し、或いは、超音波洗浄によって除去するのが好ましい。また、アルマイトなどの特殊な表面処理や高温酸化によってアルミニウム材表面に厚い酸化皮膜が形成されている場合は、切削、研磨、化学処理などによって酸化皮膜を除去するのが好ましい。被接合部材であるアルミニウム材の接合前における表面酸化皮膜厚は、400Å以下とするのが好ましく、100Å以下とするのが更に好ましい。
I−2.接合雰囲気
本発明に係るアルミニウム材の接合方法においては、通常、被接合部材は炉中で加熱される。用いる炉の形状に特に制限はなく、例えば1室構造のバッチ炉、自動車用熱交換器の製造などに用いられる連続炉などが好適に用いられる。また、炉中の雰囲気については、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材のMg含有量が少ない場合又は含有されていない場合は、フラックスを使用して非酸化性雰囲気が用いられる。一方、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材のMg含有量が多い場合は、アルミニウム材表面の酸化被膜をMgのゲッター作用により除去することができるので、フラックスを使用しないで真空中又は非酸化性雰囲気が用いられる。非酸化性雰囲気としては、窒素、アルゴンなどのガスが用いられる。また、真空中とは、5〜10torr以下の減圧状態をいう。
I−3.接合時間
本発明の接合方法において、接合部で酸化皮膜が破壊された後、容器と犠牲陽極材の間に液相が充填され接合がなされる。この液相は、犠牲陽極材を構成するアルミニウム材において生成する。液相が接合部に十分に充填される為には、液相率が5〜35%である時間が30秒以上であるのが好ましい。より好ましくは、液相率5〜35%である時間が60秒以上であると更に十分な充填が行われ確実な接合がなされる。なお、本接合では、液相は接合部の極近傍においてしか移動しないので、この充填に必要な時間は接合部の大きさには依存しない。
本発明において、液相を生じる犠牲陽極材を構成するアルミニウム材に発生する液相の液相率が5〜35%である時間は、3600秒以内であるのが好ましい。3600秒を超えると、液相率が35%以下であっても犠牲陽極材が大きく変形するおそれがある。また、容器への元素拡散が進行して、容器の変質が起こってしまい耐食性や強度が低下するおそれもある。液相率が5〜35%である時間は、より好ましくは900秒以内である。この場合には、犠牲陽極材の形状変化と容器の変質とを確実に抑制できる。
J.腐食環境
本発明に係る接合方法によって接合された、容器と犠牲陽極材との接合体は、例えば、容器内部に流体を収容又は流通させるものとして使用される。流体とは、例えば、純水、水道水、海水、淡水、クーラントなどの液体が用いられる。接合体の使用においては、流体の種類、容器及び犠牲陽極材の材質、ならびに、流体の流速や温度などによって、腐食状況が変化する。従って、使用する接合体に適合する耐食設計が必要となる。流体の流速が速い場合や、容器と犠牲陽極材の電位差が小さい場合には、犠牲陽極材による有効な防食効果が発揮される領域が狭くなることに留意する必要がある。流体として上記液体に代えて空気や代替フロンなどの気体を用いることもできるが、気体の場合は液体に比べて犠牲陽極材による有効な防食効果が発揮される領域が狭くなることに留意する必要がある。
以下に、本発明を本発明例と比較例に基づいて詳細に説明する。
実施例1(本発明例1〜21及び比較例22〜45)
表1に、接合に用いた犠牲陽極材の合金組成(合金番号1〜31)を示す。これらの合金は請求項1に規定される、Mg含有量が0.5%以下に規制されるものである。また、請求項3に規定される、Si:0.05〜4.5%、Cu:0.05〜12%及びZn:0.05〜30%から選択される1種又は2種以上を含有し、平衡液相率が5%〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が10℃以上となるもの、及びならないものである。また、表2に、接合に用いた容器の合金組成と固相線温度を示す。表1、表2に示す鋳塊合金を調製した後、熱間圧延及び冷間圧延により厚さ1mmの圧延板を得た。この圧延板をレベラーにかけた後に380℃で2時間焼鈍して、圧延板試料とした。このようにして作製した圧延板試料を用いて、接合率と変形率及び耐食性を評価した。
Figure 2015166101
Figure 2015166101
(1)接合率評価
上記圧延板試料から幅20mm×長さ50mmの二枚の板を切り出し、それぞれの端面をフライスにより平滑にしてアルミニウム材の上板と下板として組み合わせ、図5に示す逆T字型接合試験片を作製した。試験片の上板を犠牲陽極材用のアルミニウム材、下板を容器用のアルミニウム材として、表1、2に示す組成のアルミニウム材を用いた。表3、4に、各試験片の上板と下板の組み合わせを示す。この接合試験片の接合面には、フッ化カリウム系の非腐食性フラックス又はセシウム系の非腐食性フラックスを塗布した。表3、4のフラックスにおいて「F」はKAlFを、「Cs」はCsAlFを、「−」はフラックスを塗布していないことを示す。また表3、4には、窒素又は大気の雰囲気についても示した。図5には、上板と下板の寸法も示す。
Figure 2015166101
Figure 2015166101
上記の試験片を、窒素雰囲気中又は大気中で所定の温度まで昇温しその温度(表3、4に示す接合温度)に180秒間保持した後に、炉中で自然冷却した。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。
接合加熱後の試験片より、接合率を以下のように求めた。超音波探傷装置を用い、接合部での接合がなされている部分の長さを測定した。逆T字試験片の接合部の全長を50mmとして、{接合部での接合がなされている部分の長さ(mm)/50(mm)}×100によって接合率(%)を算出した。接合率が、95%以上を◎とし、90%以上95%未満を○とし、25%以上90%未満を△とし、25%未満を×として判定した。
(2)変形率評価
表1に示される犠牲陽極材用のアルミニウム材のみについて、上記圧延板試料から幅10mm×長さ30mmの板を切り出して、変形率測定用の試験片とした。図6(a)に示すように、この試験片を突き出し長さ20mmをもってサグ試験用冶具に取り付けてセットした(図には、3枚の試験片がセットされている)。サグ試験のような片持ち梁の形状での最大応力P(N/m)は、曲げモーメントMと断面係数Zより、以下のように求めた。
P=M/Z=(W×I/2)/(bh/6)
=[(g×ρ×I×b×h/I)×I/2]/(bh/6)
=3×g×ρ×I/h
M:曲げモーメント(N・m)
等分布荷重の片持ち梁の場合W×I/2
Z:断面係数(m
断面形状が長方形の場合bh/6
W:等分布荷重(N/m)
g:重力加速度(m/s
ρ:アルミニウムの密度(kg/m
I:突き出し長さ(m)
b:板幅(m)
h:板厚(m)
なお、最大応力Pは、突き出し部の根元に掛かる。この試験で試験片にかかる最大応力Pは、上式に数値を代入して計算した結果、31kPaであった。このような応力Pは、後述する実施例2〜4においても同じである。この試験片を、窒素雰囲気中又は大気中で所定の温度まで加熱しその温度(表3、4に示す接合温度)に180秒保持した後に、炉中で自然冷却した。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。
加熱後の試験片より、変形率を以下のように求めた。図6(b)に示すように、加熱後における試験片の垂下量を測定した。突き出し長さ(20mm)を用いて、{垂下量(mm)/20(mm)}×100によって変形率(%)変形率を算出した。変形率が50%以下を◎とし、50%を超え70%以下を○とし、70%を超え80%以下を△とし、80%を超えるものを×として判定した。
(3)耐食性評価
上記の接合率評価に用いたものと同様の逆T字型試験片を別途に用意し、耐食性評価用の試験片とした。接合後の試験片を、OY水に比液量3.3mL/cmとなるよう浸漬した状態でサイクル試験に供した。サイクルは24時間サイクルであり、88℃×8時間の後に25℃×16時間の温度条件で行った。40サイクル(960hr)の浸漬後の試験片を観察し、容器用のアルミニウム材である下板の孔食深さが0.5mmを超えているものは×とし、それ以下のものは○とした。なお、OY水とは、溶媒に水を用いて、溶質として、NaCl:0.226g/L、NaSO:0.089g/L、FeCl・6HO:0.145g/L、CuCl・2HO:0.0026g/Lを含有する水溶液である。
(4)総合判定
以上の結果より、接合率、変形率及び耐食性のうち一つでも×があったものは総合判定を×とし不合格とした。×が一つもないものは合格とした。接合率、変形率、耐食性及び総合判定を、接合条件(温度、平衡液相率、容器の合金、容器の固相線)とともに表3、4に示す。
本発明例1〜21では、犠牲陽極材の平衡液相率が5%〜35%であった。そして、前記平衡液相率の範囲における温度範囲の最大値と最小値の差が10℃以上であり、この温度範囲は容器の固相線未満であった。その結果、接合率と変形率が良好となった。また、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を引いた値が50〜300mVであったので、犠牲防食効果が得られ耐食性も良好であった。このように、接合率、変形率及び耐食性が良好であり、総合判定も合格であった。
比較例22、34では、液相率が低過ぎたために接合率が低くなり総合判定が不合格となった。
比較例23、25では、液相率が高過ぎたために変形率が高くなり総合判定が不合格となった。
比較例29、30では、SiとCuの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、犠牲陽極材が平衡液相率5%〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が10℃未満であった。その結果、接合時の液相率を制御できず、接合性、変形性及び耐食性の少なくともいずれかが不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例31では、Siの含有量が多過ぎたため、犠牲陽極材が平衡液相率5%〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が10℃未満であった。その結果、接合時の液相率を制御できず、変形性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例32では、SiとCuの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、犠牲陽極材が平衡液相率5%〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が10℃未満であった。その結果、接合時の液相率を制御できず、接合性及び耐食性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例33では、Cuの含有量が多過ぎたため、犠牲陽極材が平衡液相率5%〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が10℃未満であった。その結果、接合時の液相率を制御できず、接合性及び耐食性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例27、28では、容器のMg含有量が0.5%を超えていた。その結果、フラックスが正常に働かず接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例24では、接合時にフラックスが塗布されていなかった。その結果、酸化皮膜の除去が不十分であるため接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例26では、接合時の雰囲気が大気中であった。その結果、酸化皮膜の除去が不十分であるため接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例35では、CuとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例36では、SiとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例37では、Znの含有量が多過ぎたため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例38では、CuとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例39では、SiとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例40では、CuとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例41では、犠牲陽極材のMg含有量が規定を超えてしまっていたため、フラックスが有効に働かず接合が不十分となり、総合判定が不合格となった。
比較例42〜45では、Fe、Mn、Ti、Zrの含有量がそれぞれ規定を超えているため、割れなどの欠陥が発生し最終形状まで製造することができなかった。
実施例2(本発明例46〜65及び比較例66〜90)
表5に、接合に用いた犠牲陽極材の合金組成(合金番号32〜62)を示す。これらの合金は請求項2に規定される、Mg含有量が0.2〜2.0%に規制されるものを含む。また、請求項3に規定される、Si:0.05〜4.5%、Cu:0.05〜12%及びZn:0.05〜30%から選択される1種又は2種以上を含有し、平衡液相率が5〜35%となる温度範囲の最大値と最小値の差が10℃以上となるもの、及びならないものである。また、表6に、接合に用いた容器の合金組成と固相線温度を示す。表5、6に示す鋳塊合金を調製した後、熱間圧延及び冷間圧延により厚さ1mmの圧延板を得た。この圧延板をレベラーにかけた後に380℃で2時間焼鈍して、圧延板試料とした。このようにして作製した圧延板試料を用いて、接合率と変形率、及び耐食性を評価した。
Figure 2015166101
Figure 2015166101
(1)接合率評価
上記圧延板試料から幅20mm×長さ50mmの二枚の板を切り出し、それぞれの端面をフライスにより平滑にしてアルミニウム材の上板と下板として組み合わせ、図5に示す逆T字型接合試験片を作製した。試験片の上板を犠牲陽極材用のアルミニウム材、下板を容器用のアルミニウム材として、表5、6に示す組成のアルミニウム材を用いた。表7、8に、各試験片の上板と下板の組み合わせを示す。表7、8において、「−」は、接合試料片の接合面にフラックスを塗布していないことを示し、「F」は、フラックスとしてKAlFを塗布したものである。また、表7、8には、真空又は大気の雰囲気も示した。図5には、上板と下板の寸法も示す。
Figure 2015166101
Figure 2015166101
上記の試験片を、真空中又は大気中で所定の温度まで昇温しその温度(表7、8に示す接合温度)に180秒間保持した後に、炉中で自然冷却した。真空雰囲気は、10−5torrに管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。
上記実施例1と同様にして、接合加熱後の試験片の接合率を求めた。判定基準も実施例1と同様とした。
(2)変形率評価
表5に示される犠牲陽極材のアルミニウム材のみ、上記圧延板試料から幅10mm×長さ30mmの板を切り出して、変形率測定用の試験片とした。図6(a)に示すように、この試験片を突き出し長さ20mmをもってサグ試験用冶具に取り付けてセットした(図には、3枚の試験片がセットされている)。この試験片を、真空雰囲気中又は大気雰囲気中で所定の温度まで加熱しその温度(表7、8に示す接合温度)に180秒保持した後に、炉中で自然冷却した。真空雰囲気は、10−5torrに管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。
上記実施例1と同様にして、接合加熱後の試験片の変形率を求めた。判定基準も実施例1と同様とした。
(3)耐食性評価
上記の接合率評価に用いたものと同様の逆T字型試験片を別途に用意し、耐食性評価用の試験片とした。上記実施例1と同様にして、接合加熱後の試験片の耐食性を評価した。
(4)総合判定
上記実施例1と同様に、接合率、変形率及び耐食性のうち一つでも×があったものは総合判定を×とし不合格とした。×が一つもないものは、合格とした。接合率、変形率、耐食性及び総合判定を、接合条件(温度、平衡液相率、容器の合金、容器の固相線)とともに表7、8に示す。
本発明例46〜65では、犠牲陽極材の平衡液相率が5%〜35%であった。そして、前記平衡液相率の範囲における温度範囲の最大値と最小値の差が10℃以上であり、この温度範囲は容器の固相線未満であった。その結果、接合率と変形率が良好となった。また、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を引いた値が50〜300mVであったので、犠牲防食効果が得られ耐食性も良好であった。このように、接合率、変形率及び耐食性が良好であり、総合判定も合格であった。
比較例66〜68では、犠牲陽極材のMg含有量が低かった。その結果、Mgによる酸化皮膜の破壊が不十分なために接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例69、74では、接合時の雰囲気が大気であった。その結果、酸化皮膜が厚くなり過ぎて接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例70、72では、接合面にフラックスを塗布して接合した。その結果、Mgによる酸化皮膜の破壊が十分に作用せず接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例76では、液相率が低過ぎたために接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例73、75では、液相率が高過ぎたために変形率が高くなり、総合判定が不合格となった。
比較例71では、容器のMg含有量が2.0%を超えていた。その結果、酸化皮膜が厚くなり過ぎて接合性が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例77〜79では、犠牲陽極材のMg含有量が2.0%を超えていた。その結果、酸化皮膜が厚くなり過ぎて接合性が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例80では、CuとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例81では、SiとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例82では、CuとZnの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例83では、SiとCuの含有量がそれぞれ1.00%未満であり、かつ、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10%未満であったため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、容器の耐食性が不十分となり総合判定が不合格となった。
比較例84では、陽極犠牲材のSi含有量が規定を超えていたため、平衡液相率5%〜35%となる温度範囲が10℃以下となり、また、50mV〜300mVの範囲にはなかった。その結果、接合性及び耐食性が低下し、総合判定が×となった。
比較例85では、陽極犠牲材のCu含有量が規定を超えていたため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲外となり耐食性が低下し、総合判定が×となった。
比較例86では、陽極犠牲材のZn含有量が規定を超えていたため、接合後の容器の自然電位から接合後の犠牲陽極材の自然電位を差し引いた値が、50mV〜300mVの範囲外となり耐食性が低下し、総合判定が×となった。
比較例87〜90では、Fe、Mn、Ti、Zrの含有量のいずれかが規定を超えているため、割れなどの欠陥が発生し最終形状まで製造することができなかった。
実施例3(本発明例91〜98及び比較例99〜104)
犠牲陽極材の直方体換算長さと配置間隔を変えて、耐食性への影響を評価した。この評価は、実施例1、2の評価において総合評価が合格となる条件を選んで、犠牲陽極材の直方体換長さと配置間隔が耐食性に及ぼす影響を評価したものである。直方体換算長さは、その定義から板の場合においては板厚に相当する。試験片には、表1及び2、ならびに、表5のアルミニウム材を選んで用いた。表1及び5のアルミニウム材では、これらの合金鋳塊を調製した後に、熱間圧延及び冷間圧延により厚さ1mm(1000μm)、0.5mm(500μm)、0.3mm(300μm)の3種類を得た。この圧延板をレベラーにかけた後、380℃で2時間焼鈍した。この圧延板を10mm×10mmにそれぞれ切り出したものを試験片とした。表2のアルミニウム材では、これらの合金鋳塊を調製した後に、切削加工により長さ100mm×幅30mm×厚さ5mmの形状に切り出したものを試験片とした。
以上のようにして作製した試験片を用意し、表1及び5のアルミニウム材を犠牲陽極材とし、表2のアルミニウム材を容器として、図7に示すように容器のアルミニウム材板の上に犠牲陽極材のアルミニウム材板を載置し、不図示の治具を用いて固定しながら接合した。その際、犠牲陽極材のアルミニウム材板は容器のアルミニウム材板の長さ方向に沿って間隔をもって2つ並べて置かれている。この間隔は、10mm、30mm、80mmとした。また、犠牲陽極材のアルミニウム材板の厚さ(すなわち、直方体換算長さ)も、1000μm、500μm、300μmのものを用いた。表9に示すように、接合条件は実施例1、2で総合判定が合格となったものと同様にした。
(耐食性評価)
上記のように接合された試験片について、上記実施例1と同様にして耐食性を評価した。結果を表9に示す。
Figure 2015166101
本発明例91〜98では、犠牲陽極材の直方体換算長さと配置間隔が適切であったため、容器の腐食が抑制され耐食性が良好であった。
比較例99〜102では、犠牲陽極材の直方体換算長さが500μm未満であったため、犠牲防食効果が十分に作用せず耐食性が劣った。
比較例103、104では、犠牲陽極材の配置間隔が50mmを超えたため、犠牲防食効果が十分に作用せず耐食性が劣った。
実施例4(本発明例105〜112及び比較例113〜119)
容器と犠牲陽極材を接合する際の加熱時間を変化させて、接合率と耐食性への影響を評価した。この評価は、実施例1及び2の評価において、総合評価が合格となる条件を選んで、加熱時間が接合率と耐食性に及ぼす影響を評価したものである。試験片は、表1及び2、ならびに、表5のアルミニウム材を選んで用いた。表1及び2、ならびに、表5の合金鋳塊を調製した後、熱間圧延及び冷間圧延により厚さ1mmの圧延板を得た。この圧延板をレベラーにかけた後、380℃で2時間焼鈍した。
(1)接合率評価
上記圧延板試料から幅20mm×長さ50mmの二枚の板を切り出し、それぞれの端面をフライスにより平滑にしてアルミニウム材の上板と下板として組み合わせ、図5に示す逆T字型接合試験片を作製した。試験片の上板を犠牲陽極材用のアルミニウム材、下板を容器用のアルミニウム材として、表1、2、5に示す組成のアルミニウム材を用いた。表10に、各試験片の上板と下板の組み合わせを示す。
液相率5〜35%の時間以外の接合の条件は、実施例1、2で総合判定が合格であったものと同様にした。接合温度において液相率5〜35%の時間は、0〜3600秒の範囲内で選択した。
上記実施例1と同様にして、接合加熱後の試験片の接合率を求めた。判定基準も実施例Iと同様とした。結果を表10に示す。
(2)変形率評価
表1及び5に示される犠牲陽極材用のアルミニウム材のみについて、上記圧延板試料から幅10mm×長さ30mmの板を切り出して、変形率測定用の試験片とした。図6(a)に示すように、この試験片を突き出し長さ20mmをもってサグ試験用冶具に取り付けてセットした(図には、3枚の試験片がセットされている)。この試験片を、真空雰囲気中で所定の温度まで加熱しその温度(表10に示す接合温度)に180秒保持した後に、炉中で自然冷却した。真空雰囲気は、10−5torrに管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とした。
Figure 2015166101
上記実施例1と同様にして、接合加熱後の試験片の変形率を求めた。判定基準も実施例1と同様とした。
(3)総合判定
接合率と変形率の少なくともいずれかが×であったものを総合判定が×とし、不合格とした。いずれも×でないものは合格とした。接合性、変形性及び総合判定を、接合条件(接合温度、平衡液相率、液相率5〜35%の時間)とともに表10に示す。
本発明例105〜112では、材料中の液相率が5%以上となる時間が適切であったため、良好な接合が得られつつ変形が抑制され、総合判定が合格となった。
比較例113、114、117〜119では、材料中の液相率が5%〜35%となる時間が短過ぎて接合率が低くなり、総合判定が不合格となった。
比較例115、116では、材料中の液相率が5%〜35%となる時間が長過ぎて変形率が高くなり、総合判定が不合格となった。
本発明により、アルミニウム材の容器内に犠牲陽極材を配置する際に、形状や位置の自由度が高くなり、より優れた耐食性容器の開発が可能となる。
c・・・Si濃度
c1・・・Si濃度
c2・・・Si濃度
T・・・温度
T1・・・Teを超えた温度
T2・・・Ts2を超えた温度
Te・・・固相線温度
Ts2・・・固相線温度

Claims (8)

  1. 一方のアルミニウム材からなる容器と、当該容器の内側に配置され、前記一方のアルミニウム材よりも低い自然電位を有する他方のアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを接合する方法において、前記一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材のMg含有量が0.5質量%以下に規制され、前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となる温度において、フッ化物系又は塩化物系のフラックスが接合部に塗布された状態で非酸化性雰囲気中において接合することを特徴とするアルミニウム材の接合方法。
  2. 一方のアルミニウム材からなる容器と、当該容器の内側に配置され、前記一方のアルミニウム材よりも低い自然電位を有する他方のアルミニウム材からなる犠牲陽極材とを接合する方法において、前記一方のアルミニウム材のMg含有量が2.0質量%以下に規制され、前記他方のアルミニウム材のMg含有量が0.2〜2.0質量%に規制され、前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%となる温度において、真空中又は非酸化性雰囲気中において接合することを特徴とするアルミニウム材の接合方法。
  3. 前記他方のアルミニウム材が、Si:4.5質量%以下、Cu:12質量%以下及びZn:30質量%以下から選択される1種又は2種以上を更に含有し、Si、Cu及びZnの含有量のうち少なくとも二以上が1.00質量%を超えているか、又は、Si、Cu及びZnの含有量の合計が10質量%以上である、請求項1又は2に記載のアルミニウム材の接合方法。
  4. 前記他方のアルミニウム材が、Fe:0.01〜2.0質量%、Mn:0.01〜2.0質量%、Ti:0.01〜0.3質量%及びZr:0.05〜0.3質量%から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム材の接合方法。
  5. 前記一方のアルミニウム材の接合後における自然電位から他方のアルミニウム材の接合後における自然電位を差し引いた値が50〜300mVである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム材の接合方法。
  6. 前記他方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量の比が5〜35%である時間が30〜3600秒である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム材の接合方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項のアルミニウム材の接合方法によって接合される接合体であって、前記犠牲陽極材の直方体換算長さが500μm以上であることを特徴とするアルミニウム材の接合体。
  8. 前記容器の内側に複数の犠牲陽極材が配置されており、犠牲陽極材間の各間隔が50mm以内である、請求項7に記載のアルミニウム材の接合体。
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