JP2015163725A - Fe基制振合金およびその製造方法ならびにFe基制振合金材 - Google Patents

Fe基制振合金およびその製造方法ならびにFe基制振合金材 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた制振特性を有するFe基制振合金を提供する。【解決手段】Fe基制振合金は、25〜42原子%のMnと、12〜18原子%のAlと、5〜12原子%のNiとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、1100〜1300℃で10分以上加熱保持する初期加熱工程と、加熱された合金を300〜1000℃の温度範囲まで徐冷する徐冷工程と、徐冷された合金を1100〜1300℃で10分以上加熱保持する再加熱工程とによって製造することができる。【選択図】図5

Description

この発明は、制振特性を有するFe基制振合金およびその製造方法ならびにFe基制振合金材に関するものである。
機械の振動・騒音の低減対策の一つとして、制振合金の適用がある。制振合金は外部からの振動エネルギーを内部摩擦によって熱に変換することにより振動を吸収する合金であり、その制振性の発現機構により複合型、強磁性型、転位型及び双晶型の4種類に大別される(例えば非特許文献1参照)。
複合型制振合金は母相と第2相が存在する合金であり、母相と第2相の界面で生じる塑性変形、滑り、粘性的流動等の相互作用によるエネルギー消散を利用するものである。例として鋳鉄やAl−Zn合金があるが、これらの制振特性及び強度はともに低い。
転位型制振合金は、転位が固着点から離脱することに伴う静履歴型エネルギー損失により、制振特性を得るものである。その一例であるMg合金は、制振特性及び重量面では他の合金と比較して優れているものの、一方で強度は低く、加工性にも劣る。
強磁性型制振合金は、磁壁の非可逆的な移動に伴う磁気・機械的静履歴エネルギー損失を利用するものである(例えば特許文献1参照)。これらの合金にはFe−Cr−Al系合金や12Cr鋼など、Fe系合金が多い。これらの制振特性は、歪み振幅の増大と共に向上するが、飽和磁歪量より大きな歪み振幅では、磁壁の移動により吸収される振動エネルギーが飽和するため、制振特性はむしろ低下する(例えば非特許文献2参照)。また、外部磁場の変化が制振特性に影響するという問題も有している。
双晶型制振合金は、変態双晶界面または母相とマルテンサイト相との界面の移動によるエネルギー消散を利用したものであり、主な合金系にはMn−Cu系、Ti−Ni系、Cu−Al−Ni系がある(例えば特許文献2参照)。双晶型制振合金は高い制振特性を有しており、加えて制振合金としては優れた強度特性を兼ね備えていることが特長である。これらの双晶型制振合金の典型例として、ソノストン合金(Mn−37Cu−4Al−3Fe−2Ni)やインクラミュート合金(Cu−45Mn−2Al)があり、この他に制振特性及び加工性に優れるMn−20Cu−5Ni−2Fe合金が開示されている。
近年、特許文献3にて開示されたFe−Mn−Al−Ni系形状記憶合金は、多数の変態双晶を含む熱弾性型マルテンサイト組織を形成することから、Fe基の双晶型制振合金としての応用が期待される。しかしながら、このような超弾性合金を制振用途に用いる場合は、応力誘起マルテンサイトの生成・消滅に伴う静履歴型エネルギー損失により振動を抑制するため、変態誘起臨界応力より低い応力範囲では制振効果が得られない。また、特許文献3で示されている単純な溶体化処理のみでは、十分な粗粒化の効果が得られているとはいえず、より顕著な結晶粒成長を実現することにより、制振特性の向上を図る必要がある。
特開2001−134271号公報 特開2009−174013号公報 国際公開WO2011/046055号公報
:杉本孝一,鉄と鋼,60(1974),No.14,p127. :殷福星,科学と教育,55(2007),No.9,p442.
前述のように、双晶型制振合金においてはMn−Cu系合金、Ti−Ni系合金、Cu−Al−Ni系合金が主な合金系として挙げられる。Feを主要な元素とする低原料コストの制振合金が開発されれば、より実用的な制振合金として様々な分野への応用が期待できるが、現在までにこのような合金系で実用化に至った双晶型制振合金の例はない。Fe系制振合金の候補材としてFe−Mn−Al−Ni合金が有望ではあるものの、制振合金としての応用を実現するには、変態誘起臨界応力より低い応力範囲で制振効果を得る必要があるため、マルテンサイト内の双晶界面移動により、振動のエネルギーを吸収する必要があった。また、単純な溶体化処理のみでは、十分な粗粒化の効果が得られているとはいえず、より顕著な結晶粒成長を可能とする熱処理を行うことにより、制振特性の向上を図る必要がある。
制振合金の利用にあたっては、使用時の重要特性である制振特性も重要であるが、同時に製造時の重要特性である成形加工性とのバランスも考慮する必要がある。しかしながら、前述のソノストン及びインクラミュート合金のように、成形加工性に問題のある合金系も多数存在しており、成形加工性に関しても特性の向上が求められていた。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、Fe基の合金組成を有し、制振特性及び加工性に優れた双晶型制振合金及びその製造方法ならびにFe基制振合金材を提供することを目的とする。
すなわち本発明のFe基制振合金のうち、第1の本発明は、25〜42原子%のMnと、12〜18原子%のAlと、5〜12原子%のNiとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第2の本発明のFe基制振合金は、25〜42原子%のMnと、12〜18原子%のAlと、5〜12原子%のNiとを含有し、さらに0.1〜5原子%のSi、0.1〜5原子%のTi、0.1〜5原子%のV、0.1〜5原子%のCr、0.1〜5原子%のCo、0.1〜5原子%のCu、0.1〜5原子%のMo、0.1〜5原子%のW、0.001〜1原子%のB及び0.001〜1原子%のCからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で15原子%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第3の本発明のFe基制振合金は、前記第1または第2の本発明において、室温から、熱的に誘起されたマルテンサイト組織を呈する温度範囲までを使用温度域とすることを特徴とする。
第4の本発明のFe基制振合金は、前記第1〜第3の本発明において、析出により生じたFCC構造の相を有することを特徴とする。
第5の本発明のFe基制振合金の製造方法は、前記第1または第2の本発明の組成を有する合金に対し、1100〜1300℃で溶体化処理する工程を有することを特徴とする。
第6の本発明のFe基制振合金の製造方法は、前記第5の本発明において、前記組成に調整する工程を有することを特徴とする。
第7の本発明のFe基制振合金の製造方法は、前記第5または第6の本発明において、前記第1または第2の本発明の組成を有する合金に対し、1100〜1300℃で10分以上加熱保持する初期加熱工程と、前記初期加熱工程で加熱された合金を300〜1000℃の温度範囲まで500℃/時間以下の冷却速度で徐冷する徐冷工程と、前記徐冷工程で徐冷された合金を500℃/時間以下の昇温速度で昇温し、1100〜1300℃で10分以上加熱保持する再加熱工程とを具備することを特徴とする。
第8の本発明のFe基制振合金の製造方法は、前記第7の本発明において、前記初期加熱工程後に、前記徐冷工程と前記再加熱工程とを交互に複数回繰り返すようにすることを特徴とする。
第9の本発明のFe基制振合金の製造方法は、前記第5〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記溶体化処理の後に、100〜350℃で時効処理する工程を有することを特徴とする。
第10の本発明のFe基制振合金の製造方法は、前記第7〜第9の本発明のいずれかにおいて、前記再加熱工程の後に、100〜350℃で時効処理する工程を有することを特徴とする。
第11の本発明のFe基制振合金材は、前記第1〜第4の本発明のいずれかに記載のFe基制振合金からなる棒状形状を有し、前記Fe基制振合金の平均結晶粒径が前記棒材の半径以上であることを特徴とする。
第12の本発明のFe基制振合金材は、前記第1〜第4の本発明のいずれかに記載のFe基制振合金からなる板材形状を有し、前記Fe基制振合金の平均結晶粒径が前記板材の厚さ以上であることを特徴とする。
次に、本発明で成分範囲を限定した理由を以下に説明する。
Mn:25〜42原子%
Mnはマルテンサイト相の生成を促進する元素である。Mnの含有量を調節することにより、マルテンサイト変態の開始温度(Ms)及び終了温度(Mf)、逆マルテンサイト変態の開始温度(As)及び終了温度(Af)、並びにキュリー温度(Tc)を変化させることができる。Mnの含有量が25原子%未満である場合、母相のBCC構造が安定過ぎるために、使用温度においてマルテンサイト組織が形成されない場合がある。一方、42原子%超である場合、母相がBCC構造とならなくなる。Mnの含有量は、その下限を30原子%とするのが望ましく、上限を40原子%とするのが望ましく、さらに下限を34原子%とするのが一層望ましく、上限を38原子%とするのが一層望ましい。
Al:12〜18原子%
AlはBCC構造を有する母相の生成を促進する元素である。Alの含有量が12原子%未満である場合、母相がFCC構造になる。一方、18原子%超である場合、BCC構造が安定過ぎてマルテンサイト変態を生じない。Alの含有量は、その下限を13とするのが望ましく、上限を17原子%とするのが望ましく、さらに下限を14原子%とするのが一層望ましく、上限を16原子%とするのが一層望ましい。
Ni:5〜12原子%
Niは母相に規則相を析出させ、熱弾性型マルテンサイトの生成を促進する元素である。Niの含有量が5原子%未満である場合、熱弾性型マルテンサイトが得られない。一方、12原子%超である場合、延性が低下してしまう。Niの含有量は、その上限10原子%とするのが望ましく、さらに下限を6原子%とするのが一層望ましく、上限を8原子%とするのが一層望ましい。
Si、Ti、V、Cr、Co、Cu、Mo、W、B及びCからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を、合計で15原子%以下含有することで、延性及び耐食性を向上させるとともに、それらの含有量を調節することによりMs及びTcを変化させることができる。またCoは磁気特性を向上させる作用を有する。これらの元素の合計含有量が15原子%を超えると合金が脆化するおそれがある。これらの元素の含有量は合計で10原子%以下であるのが望ましく、6原子%以下であるのが一層望ましい。
以上のように、本発明では、Fe基合金において多数の変態双晶を含む熱弾性型マルテンサイト組織を生成させ、熱処理によって結晶粒を粗大化させることにより、Fe基双晶型制振合金の提供が可能となった。また、本発明のFe基制振合金において、析出により生じたFCC相は加工性に優れることから、冷却中にFCC相を析出させることにより、良好な成形加工性を得ることが可能となった。
本発明の一実施形態における熱処理(初期加熱工程、徐冷工程及び再加熱工程)時のヒートパターンを示す図である。 本発明の実施例において図1の条件にて熱処理した発明合金2の光学顕微鏡を示すの図面代用写真である。 発明合金2の温度と損失係数の関係を示した図である。 同じく、発明合金2に対して図1の熱処理を行った場合の、徐冷工程の最終温度と結晶粒径の関係を示した図である。 同じく、発明合金2に対し、徐冷工程の最終温度を900℃として図1の熱処理を行い、その後200℃にて6hの時効処理を行った試料の振動減衰特性試験結果である。
[製造方法]
本発明の一実施形態に係るFe基双晶型制振合金は、溶解鋳造、鍛造、熱間加工(熱間圧延等)、冷間加工(冷間圧延、伸線加工等)、プレス加工等により所望の形状に成形した後、溶体化処理を施すことにより製造することができる。合金の溶製、加工に関しては本発明としては特に限定されるものではなく、常法を採用することができる。
製造工程には、溶体化処理する工程を必須に含む。溶体化処理は、溶解鋳造し、熱間及び冷間加工等により成形したFe基制振合金を固溶化温度まで加熱し、組織を母相(BCC相)にした後、急冷することにより行う。溶体化処理は1100〜1300℃で行うのが望ましく、下限を1200℃、上限を1250℃とするのが一層望ましい。溶体化処理温度が1100℃未満であると、第2相であるFCC相のピン止め効果により、結晶粒成長が進まず、1300℃を超えると、液相が生じるため、十分な制振特性が得られない。
また、溶体化処理は、10分間以上加熱保持するのが望ましい。10分間未満の加熱保持では、十分に溶体化できず、また、結晶粒成長も進まない。
溶体化処理後の冷却における冷却速度は200℃/秒以上が好ましく、500℃/秒以上がより好ましい。冷却は水等の冷媒に入れるか、又は空冷により行うことができる。
また、結晶粒を粗大化させる場合には、上記溶体化処理温度で10分間以上加熱する初期加熱工程と、加熱されたFe基合金を300〜1000℃の温度範囲まで徐冷する徐冷工程と、徐冷されたFe基合金を再加熱保持する再加熱工程からなる溶体化処理により、製造することもできる。該熱処理時のヒートパターンを図1に示す。
初期加熱工程及び再加熱工程は1100〜1300℃で行うのが望ましく、下限を1200℃、上限を1250℃とするのが一層望ましい。
初期加熱工程後の徐冷では、冷却速度を500℃/時間以下とするのが望ましく、10〜50℃/時間とするのが一層望ましい。
徐冷に伴って析出するFCC相はピン止め効果を示すが、再加熱工程ではピン止め効果が減少することによって急激な結晶粒成長が起こる。冷却速度が500℃/時間を超えるとFCC相析出量の低下により粗粒化の効果が得られない。
徐冷では、300〜1000℃のいずれかの温度まで徐冷すればよく、それ以降の冷却速度は特に限定されない。また、徐冷した後、直ちに再加熱工程に移行するものであってもよい。
再加熱後の冷却速度は200℃/秒以上が望ましく、500℃/秒以上が一層望ましい。また、冷却方法も上記同様に、水冷又は空冷により行うことができる。
熱処理の繰り返しについて
結晶粒成長を促進することを目的として、徐冷工程及び再加熱工程を繰り返すこともできるが、その場合の徐冷、再加熱及び再加熱後の冷却時には、上記と同じ条件とすることが望ましい。
NiAlなどの析出によるB2相析出による析出強化作用を得る観点から、溶体化処理後は更に100〜350℃で時効処理を行うのが望ましく、時効処理温度の下限を150℃、上限を250℃とするのが一層望ましい。時効処理時間は組成及び温度により異なるが、5分間以上であるのが望ましい。時効処理時間が5分間未満では効果が不十分であり、一方、長過ぎると(例えば数百時間であると)延性が低下する。同様の理由で、時効処理時間の下限を30分間、上限を24時間とするのが一層望ましい。
[組織]
本発明のFe基制振合金は、BCC構造の母相(α相)からマルテンサイト変態する。Msより高い温度域ではBCC構造の母相組織を有し、Mfより低い温度域ではマルテンサイト組織を有する。本合金では、マルテンサイト組織における双晶境界の移動により振動を抑制することから、多くのマルテンサイト組織が得られる温度域で使用することが好ましい。また、本合金では、冷却中の析出により生じたFCC構造のγ相が少量存在しても良い。γ相は溶体化後又は再加熱工程後の冷却中に粒界を中心に析出したり、溶体化温度又は再加熱温度において析出したりして延性向上に寄与するが、多量に出現すると制振特性を損なう。延性向上のためにγ相を析出させる場合は、体積分率で10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。マルテンサイト相の結晶構造は2M又は8M、10M、14M等の長周期構造である。
使用温度との関係
本発明のFe基制振合金は、室温においてマルテンサイト組織を示す。本発明の使用温度域としては、室温からマルテンサイト組織を示す温度範囲において、制振合金として使用することができる。
B2相の説明
本発明のFe基制振合金では、溶体化処理後の時効処理時に規則相の一つであるB2相が析出する。B2相は高い析出強化作用を示すことから、マルテンサイト相又はBCC相中に、微細なB2相が分散した組織を呈することが望ましい。
[Fe基制振合金からなる部材]
Fe基制振合金は熱間加工性及び冷間加工性に富むことから、棒や板等の形状に容易に成形加工することができる。
Fe基制振合金からなる棒材は、平均結晶粒径davが板材の半径R以上であるのが好ましく、dav≧2Rであるのがより好ましい。dav≧2Rの条件を満たす棒材は、粒界が竹の節のように位置する構造となり、結晶粒間の拘束力が低減されるので、優れた制振特性を発揮する。
dav≧R又はdav≧2Rの条件を満たしても、結晶粒には粒径分布があるので、半径R未満の粒径dを有する結晶粒も存在する。より良好な制振特性を有するFe基制振合金とするために、結晶粒径dが半径R以上の領域が棒材の全長の30%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましい。
Fe基制振合金からなる板材は、平均結晶粒径davが板材の厚さT以上であるのが好ましく、dav≧2Tであるのがより好ましい。このような結晶粒を有する板材は、個々の結晶粒が板材の表面において粒界から解放された状態になっている。dav≧Tを満たす板材は、結晶粒間の拘束力が低減されるので、優れた制振特性を発揮する。
dav≧T又はdav≧2Tの条件を満たしても、結晶粒には粒径分布があるので、厚さT未満の粒径dを有する結晶粒も存在する。より良好な制振特性を有するFe基制振合金とするために、結晶粒径dが厚さT以上の領域が板材の全面積の30%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましい。
Fe基制振合金からなる棒材及び板材は、その制振特性を利用して旋盤、フライス盤等の工作機械や、各種ポンプ、モーター、コンプレッサー等の産業用機器等に適用することができる。
(実施例1)
表1に、供試材として用意した本発明の成分範囲になる発明鋼と、本発明の成分範囲を外れた比較鋼の化学組成(残部Fe及びその他の不可避不純物)を示す。
供試材は、VIM(vacuum induction melting)で溶製し、熱処理に供した。
熱処理は、図1に示すパターンで行い、初期加熱及び再加熱条件ともに1200℃で1時間の等温保持とした。徐冷時の冷却速度及びその後の昇温速度はそれぞれ、25℃/時間及び50℃/時間とし、冷却から加熱に転じる温度を900℃とした。再加熱後は水冷による冷却を行った。また、これらの熱処理の後、200℃にて6時間の時効処理を行った。
発明合金においては、いずれも徐冷時にFCC相が母相のBCC相中に析出し、これらはその後の昇温過程において再固溶した。このため、これらの合金においては、いずれも著しい結晶粒成長が生じており、G.S.No.−7.5〜−7.0の粗大な結晶粒が観察された。
各供試材の損失係数をJIS G 0602「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」の片端固定打撃試験法で、室温にて測定し、その結果を表1に示した。
発明合金は総じて比較合金よりも高い損失係数を示した。
組織評価
図2に、図1の条件にて熱処理した発明合金2の光学顕微鏡像を示す。試料全面においてマルテンサイト組織が観察され、主な使用温度域である室温で熱弾性型マルテンサイト組織を示すことが確認された。また、粒界において析出したFCC相が観察され、その面分率は約3%であった。同合金の損失係数に相当するtanδを、粘弾性測定装置(DMS)を用いた粘弾性測定により評価した。引張モードで歪振幅1.0×10−4、2.0×10−4及び4.0×10−4、周波数1Hzの条件で行い、室温から−150℃まで冷却した後、200℃まで加熱して測定した。測定結果を図3に示す。tanδは−150〜200℃の範囲で高い値を示していることから、この温度範囲において本発明の合金を制振合金として使用し得る。
(実施例2)
実施例1にて作製した発明合金2の組成から、Feの一部を表2に示す元素に(第5成分)に置換した組成に変更した以外は実施例1と同様の方法で各Fe基合金を作製した。これらの合金の結晶粒度番号および損失係数を実施例1と同様にして測定し、表2に示した。Si、Ti、V、Cr、Co、Cu、Mo、W、B、C等の元素が加えられて耐食性、強度、延性等が改善されたFe基合金は、いずれも発明合金1〜4同様に著しい結晶粒成長を示し、高い損失係数を示した。
(実施例3)
図4は、発明合金2に対して図1の熱処理を行った場合の、徐冷工程の最終温度と結晶粒径の関係を示した図である。図1の熱処理を行うことにより、著しい粗粒化が可能となった。
図5は、発明合金2に対して図1の熱処理を行い、徐冷工程の最終温度を900℃とした試料の振動減衰特性試験結果である。図中には比較のため、固溶化温度及び固溶化時間を変化させて、結晶粒度番号2程度に調整した場合の損失係数も同様に示す。図1の条件で粗粒化することによって、制振特性が向上し、制振合金としての応用が可能となっていることが明らかである。特に100Hz以下の周波数域でより優れた結果を示した。
(実施例4)
実施例1にて作製した発明合金1〜4に対して、室温にて引張試験を行った。試験結果を表3に示す。いずれも約650〜750MPaの引張強さを示し、制振合金としては優れた強度特性を有することが確認された。本合金では時効によってB2相が析出しており、その析出強化作用によって優れた強度が得られた。

Claims (12)

  1. 25〜42原子%のMnと、12〜18原子%のAlと、5〜12原子%のNiとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするFe基制振合金。
  2. 25〜42原子%のMnと、12〜18原子%のAlと、5〜12原子%のNiとを含有し、さらに0.1〜5原子%のSi、0.1〜5原子%のTi、0.1〜5原子%のV、0.1〜5原子%のCr、0.1〜5原子%のCo、0.1〜5原子%のCu、0.1〜5原子%のMo、0.1〜5原子%のW、0.001〜1原子%のB及び0.001〜1原子%のCからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で15原子%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするFe基制振合金。
  3. 室温から、熱的に誘起されたマルテンサイト組織を呈する温度範囲までを使用温度域とすることを特徴とする請求項1または2に記載のFe基制振合金。
  4. 析出により生じたFCC構造の相を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のFe基制振合金。
  5. 請求項1または2に記載の組成を有する合金に対し、1100〜1300℃で溶体化処理する工程を有することを特徴とするFe基制振合金の製造方法。
  6. 前記組成に調整する工程を有することを特徴とする請求項5記載のFe基制振合金の製造方法。
  7. 請求項1または2に記載の組成を有する合金に対し、1100〜1300℃で10分以上加熱保持する初期加熱工程と、前記初期加熱工程で加熱された合金を300〜1000℃の温度範囲まで500℃/時間以下の冷却速度で徐冷する徐冷工程と、前記徐冷工程で徐冷された合金を500℃/時間以下の昇温速度で昇温し、1100〜1300℃で10分以上加熱保持する再加熱工程とを具備することを特徴とする請求項5または6に記載のFe基制振合金の製造方法。
  8. 前記初期加熱工程後に、前記徐冷工程と前記再加熱工程とを交互に複数回繰り返すようにすることを特徴とする請求項7記載のFe基制振合金の製造方法。
  9. 前記溶体化処理の後に、100〜350℃で時効処理する工程を有することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のFe基制振合金の製造方法。
  10. 前記再加熱工程の後に、100〜350℃で時効処理する工程を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のFe基制振合金の製造方法。
  11. 請求項1〜4のいずれかに記載のFe基制振合金からなる棒状形状を有し、前記Fe基制振合金の平均結晶粒径が前記棒材の半径以上であることを特徴とするFe基制振合金材。
  12. 請求項1〜4のいずれかに記載のFe基制振合金からなる板材形状を有し、前記Fe基制振合金の平均結晶粒径が前記板材の厚さ以上であることを特徴とするFe基制振合金材。
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