以下、本発明の実施の形態によるブレーキシステムを、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、4個の車輪、例えば左,右の前輪2(FL,FR)と左,右の後輪3(RL,RR)とが設けられている。これらの各前輪2および各後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する回転部材(ディスク)としてのディスクロータ4が設けられている。各前輪2は、液圧式のディスクブレーキ5により各ディスクロータ4が挟持され、各後輪3は、液圧式のディスクブレーキ81により各ディスクロータ4が挟持される。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)毎に制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、制動操作子としてのブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作される。ブレーキペダル6には、ブレーキ操作量としてのペダルストロークを検出するストロークセンサ7が設けられている。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、後述の電動倍力装置21を介して油圧源となるマスタシリンダ11に伝達される。電動倍力装置21は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ11との間に設けられ、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ11に伝える。このとき、電動倍力装置21は、その作動を制御するブースタ用コントローラ33(以下、ブースタ用ECU33という)を有している。ブースタ用ECU33は、電動倍力装置21を駆動制御することによって、マスタシリンダ11にブレーキ液圧(M/C液圧)を発生させる。
マスタシリンダ11に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管34A,34Bを介して後述の液圧供給装置51(以下、ESC51という)に送られる。このESC51は、マスタシリンダ11からの液圧をブレーキ側配管部52A,52B,52C,52Dを介して各ディスクブレーキ5,81に分配、供給する。これにより、前述のように車輪(各前輪2、各後輪3)毎に制動力が付与される。
ESC51は、各ディスクブレーキ5,81とマスタシリンダ11との間に配設されている。ESC51は、ブレーキペダル6の操作に応じなくとも各ディスクブレーキ5,81にブレーキ液を供給することで液圧を付与して、各ディスクブレーキ5,81内の液圧(W/C液圧)を高めるものである。このために、ESC51は、その作動を制御する液圧供給装置用コントローラ53(以下、ESC用ECU53という)を有している。ESC用ECU53は、ESC51を駆動制御することにより、ブレーキ側配管部52A〜52Dから各ディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)に供給するブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、例えば倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、横滑り防止を含む車両安定化制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
この場合、マスタシリンダ11、電動倍力装置21およびESC51は、作動液供給ユニットを構成し、ブレーキペダル6の操作に応じて駆動される電動倍力装置21の電動アクチュエータ27によって、各ディスクブレーキ5,81へ作動液を供給すると共に、作動液の供給によって発生する液圧力をブレーキペダル6に伝達する。
電動駐車ブレーキ機構91(以下、PKB91という)は、例えば後輪3のディスクブレーキ81に設けられた電動機構を構成する。このPKB91は、停車保持操作子としての駐車ブレーキスイッチ96の操作に応じて、ディスクブレーキ5の制動状態と制動解除状態とを切り換える。このとき、PKB91は、その作動を制御する駐車ブレーキ用コントローラ95(以下、PKB用ECU95という)を有している。PKB用ECU95は、PKB91を駆動制御することにより、各ディスクブレーキ81がディスクロータ4を挟持する。これにより、後輪3に制動力が付与される。
ブースタ用ECU33、ESC用ECU53、PKB用ECU95は、後述の回生用ECU36を含めて、車両に搭載された車両データバス8に接続されている。この車両データバス8は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車載向けの多重通信を行うものである。これにより、ECU33,36,53,95は、車両データバス8を介して、各種の信号や情報を相互に授受している。また、ブースタ用ECU33とESC用ECU53は、例えばL−CANと呼ばれる通信が可能な車載の信号線9によって相互に接続されている。
次に、ブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ11について、図2を参照して説明する。
ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって矢示A方向に踏込み操作される。ストロークセンサ7は、ブレーキペダル6の踏込み操作量(ストローク量)または踏力を検出し、その検出信号を後述のECU33,36および車両データバス8等に出力する。ブレーキペダル6が踏込み操作されると、マスタシリンダ11には電動倍力装置21を介してブレーキ液圧が発生する。
マスタシリンダ11は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体12を有している。このシリンダ本体12には、後述のリザーバ17内に連通する第1,第2のサプライポート12A,12Bが設けられている。第1のサプライポート12Aは、後述するブースタピストン23(P-Piston)の摺動変位により第1の液圧室14Aに対して連通,遮断される。一方、第2のサプライポート12Bは、後述する第2のピストン13により第2の液圧室14Bに対して連通,遮断される。
シリンダ本体12は、その開口端側が電動倍力装置21のブースタハウジング22に複数の取付ボルト(図示せず)等を用いて着脱可能に固着されている。マスタシリンダ11は、シリンダ本体12と、第1のピストン(後述のブースタピストン23と入力ロッド24)および第2のピストン13と、第1の液圧室14Aと、第2の液圧室14Bと、第1の戻しばね15と、第2の戻しばね16とを含んで構成されている。
マスタシリンダ11の第1のピストンは、後述のブースタピストン23と入力ロッド24とにより構成されている。シリンダ本体12内に形成される第1の液圧室14Aは、第2のピストン13とブースタピストン23(および入力ロッド24)との間に画成されている。第2の液圧室14Bは、シリンダ本体12の底部と第2のピストン13との間でシリンダ本体12内に画成されている。
第1の戻しばね15は、第1の液圧室14A内に位置してブースタピストン23と第2のピストン13との間に配設され、ブースタピストン23をシリンダ本体12の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね16は、第2の液圧室14B内に位置してシリンダ本体12の底部と第2のピストン13との間に配設され、第2のピストン13を第1の液圧室14A側に向けて付勢している。
マスタシリンダ11のシリンダ本体12は、ブレーキペダル6の踏込み操作に応じてブースタピストン23と第2のピストン13とがシリンダ本体12の底部に向かって変位し、第1,第2のサプライポート12A,12Bを遮断したときに、第1,第2の液圧室14A,14B内のブレーキ液によりブレーキ液圧を発生させる。一方、ブレーキペダル6の操作を解除した場合には、ブースタピストン23と第2のピストン13とが第1,第2の戻しばね15,16によりシリンダ本体12の開口部に向かって矢示B方向に変位していくときに、リザーバ17からブレーキ液の補給を受けながら第1,第2の液圧室14A,14B内の液圧を解除していく。
マスタシリンダ11のシリンダ本体12には、作動液タンクとしてのリザーバ17が設けられ、このリザーバ17の内部にはブレーキ液が収容されている。リザーバ17は、シリンダ本体12内の液圧室14A,14Bにブレーキ液を給排するための容器である。即ち、第1のサプライポート12Aがブースタピストン23により第1の液圧室14Aに連通され、第2のサプライポート12Bが第2のピストン13により第2の液圧室14Bに連通している間は、これらの液圧室14A,14B内にリザーバ17内のブレーキ液が給排される。
一方、第1のサプライポート12Aがブースタピストン23により第1の液圧室14Aから遮断され、第2のサプライポート12Bが第2のピストン13により第2の液圧室14Bから遮断されたときには、これらの液圧室14A,14Bに対するリザーバ17内のブレーキ液の給排が断たれる。このため、マスタシリンダ11の第1,第2の液圧室14A,14B内には、ブレーキ操作に伴ってブレーキ液圧が発生し、このブレーキ液圧は、後述のシリンダ側液圧配管34A,34Bを介してESC51に送られる。
次に、電動倍力装置21の具体的な構成について、図2ないし図4を参照して説明する。
電動倍力装置21は、車両のブレーキペダル6とマスタシリンダ11との間に設けられ、ブレーキペダル6の操作力を増大させるブースタとして機能する。この電動倍力装置21は、ストロークセンサ7の出力に基づいて後述の電動アクチュエータ27を駆動制御することにより、マスタシリンダ11内に発生するブレーキ液圧を可変に制御するものである。
電動倍力装置21は、車体1のフロントボードである車室前壁(図示せず)に固定して設けられるブースタハウジング22と、ブースタハウジング22に移動可能に設けられ後述の入力ロッド24に対して相対移動可能なブースタピストン23と、ブースタピストン23をマスタシリンダ11の軸方向に進退移動させてブースタピストン23にブースタ推力を付与する後述の電動アクチュエータ27と、ブースタ用ECU33とを含んで構成されている。
ブースタピストン23は、マスタシリンダ11のシリンダ本体12内に開口端側から軸方向に摺動可能に挿嵌された筒状部材により構成されている。ブースタピストン23の内周側には、ブレーキペダル6の操作に従って直接的に押動され、マスタシリンダ11の軸方向(即ち、矢示A,B方向)に進退移動する入力部材としての入力ロッド24が摺動可能に挿嵌されている。入力ロッド24は、ブースタピストン23と一緒にマスタシリンダ11の第1のピストンを構成し、入力ロッド24の後側(一側)端部にはブレーキペダル6が連結されている。シリンダ本体12内は、第2のピストン13とブースタピストン23および入力ロッド24との間に第1の液圧室14Aが画成されている。
ブースタハウジング22は、後述の減速機構30等を内部に収容する筒状の減速機ケース22Aと、減速機ケース22Aとマスタシリンダ11のシリンダ本体12との間に設けられブースタピストン23を軸方向に摺動変位可能に支持した筒状の支持ケース22Bと、減速機ケース22Aを挟んで支持ケース22Bとは軸方向の反対側(軸方向一側)に配置され減速機ケース22Aの軸方向一側の開口を閉塞する段付筒状の蓋体22Cとにより構成されている。減速機ケース22Aの外周側には、後述の電動モータ28を固定的に支持するための支持板22Dが設けられている。
図2に示すように、入力ロッド24は、蓋体22C側からブースタハウジング22内に挿入され、ブースタピストン23内を第1の液圧室14Aに向けて軸方向に延びている。ブースタピストン23と入力ロッド24との間には、一対の中立ばね25,26が介装されている。これらの中立ばね25,26は、ブースタピストン23と入力ロッド24とを両者の中立位置に向けて弾性的に付勢し、ブースタピストン23と入力ロッド24とが軸方向に相対変位すると、これを抑える方向で中立ばね25,26のばね力が作用する構成となっている。
入力ロッド24の先端側(軸方向他側)端面は、ブレーキ操作時に第1の液圧室14A内に発生する液圧をブレーキ反力として受圧し、入力ロッド24はこれをブレーキペダル6に伝達する。これにより、車両の運転者にはブレーキペダル6を介して適正な踏み応えが与えられ、良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)を得ることができる。この結果、ブレーキペダル6の操作感を向上することができ、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。
また、入力ロッド24は、ブースタピストン23に対して相対移動(所定量前進)したときに、ブースタピストン23に当接してブースタピストン23を前進させることができる構造となっている。この構造により、後述する電動アクチュエータ27やブースタ用ECU33が失陥した場合に、ブレーキペダル6への踏力によりブースタピストン23を前進させてマスタシリンダ11に液圧を発生させることが可能となっている。
電動倍力装置21の電動アクチュエータ27は、ブースタハウジング22の減速機ケース22Aに支持板22Dを介して設けられた電動モータ28と、電動モータ28の回転を減速して減速機ケース22A内の筒状回転体29に伝えるベルト等の減速機構30と、筒状回転体29の回転をブースタピストン23の軸方向変位(進退移動)に変換するボールネジ等の直動機構31とにより構成されている。
ここで、直動機構31は、筒状回転体29の内周側にボールねじを介して軸方向に移動可能に設けられた筒状の直動部材31Aを有し、この直動部材31Aは、ブースタハウジング22の蓋体22Cと筒状回転体29の内周側をブースタピストン23と一体になって軸方向に変位する。そして、ブースタピストン23が戻り位置まで後退したときには、直動部材31Aが蓋体22Cの閉塞端側に当接する(図2参照)。この閉塞端は、直動部材31Aを介してブースタピストン23の戻り位置を規制するストッパとして機能するものである。
ブースタピストン23と入力ロッド24は、それぞれの前端部(軸方向他側の端部)をマスタシリンダ11の第1の液圧室14Aに臨んで配置されている。そして、ブレーキペダル6から入力ロッド24に伝えられる踏力(推力)と電動アクチュエータ27からブースタピストン23に伝えられるブースタ推力とにより、マスタシリンダ11の液圧室14A,14B内にはブレーキ液圧が発生する。
即ち、電動倍力装置21のブースタピストン23は、ストロークセンサ7の出力(即ち、図3中に示すペダルストロークの制動指令)に基づいて電動アクチュエータ27(電動モータ28)により駆動され、マスタシリンダ11内にブレーキ液圧(M/C液圧)を発生させるポンプ機構を構成している。また、ブースタハウジング22の支持ケース22B内には、ブースタピストン23を制動解除方向(図2中の矢示B方向)に常時付勢する戻しばね32が設けられている。ブースタピストン23は、ブレーキ操作の解除(開放)時に電動モータ28が逆向きに回転されると共に、戻しばね32の付勢力により図2に示す初期位置まで矢示B方向に戻されるものである。
電動モータ28は、例えばDCブラシレスモータを用いて構成されている。この電動モータ28には、レゾルバと呼ばれる回転センサ28Aと、モータ電流を検出する電流センサ28B(図3参照)とが設けられている。回転センサ28Aは、電動モータ28のモータ回転位置を検出し、その検出信号をブースタ用ECU33に出力する。ブースタ用ECU33は、モータ回転位置の検出信号により、電動モータ28の回転位置をフィードバック制御する。また、回転センサ28Aは、検出した電動モータ28の回転位置に基づいて車体1に対するブースタピストン23の絶対変位を検出する回転検出手段としての機能を備えている。
さらに、回転センサ28Aはストロークセンサ7と共に、ブースタピストン23と入力ロッド24との相対変位を検出する変位検出手段を構成し、これらの検出信号は、ブースタ用ECU33に送出される。回転検出手段としては、レゾルバ等の回転センサ28Aに限らず、絶対変位(角度)を検出できる回転型のポテンショメータ等により構成してもよい。
なお、減速機構30は、ベルト等に限らず、例えば歯車減速機構等を用いて構成してもよい。また、回転運動を直線運動に変換する直動機構31は、例えばラック−ピニオン機構等で構成することもできる。さらに、減速機構30は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、筒状回転体29にモータ軸を一体に設け、電動モータのステータを筒状回転体29の周囲に配置して、電動モータによって直接に筒状回転体29を回転させる構成としてもよい。
ブースタ用ECU33は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、電動倍力装置21の電動アクチュエータ27を電気的に駆動制御するものであり、第1の制御回路を構成している。図3に示すように、ブースタ用ECU33には、フラッシュメモリ、ROM,RAM等のメモリ33Aが設けられ、このメモリ33Aには、例えば電動モータ28の回転位置制御を行うための制御処理プログラム(図示せず)、後述する駐車ブレーキ動作中の制御処理プログラム(図5参照)等が格納されている。
ブースタ用ECU33の入力側は、ブレーキペダル6の操作量または踏力を検出するストロークセンサ7と、電動モータ28の回転センサ28Aおよび電流センサ28Bと、車両データバス8と、信号線9等とに接続されている。
ブースタ用ECU33の出力側は、電動モータ28、車両データバス8および信号線9等に接続されている。そして、ブースタ用ECU33は、ストロークセンサ7や液圧センサ35からの検出信号に従って電動アクチュエータ27によりマスタシリンダ11内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御すると共に、電動倍力装置21が正常に動作しているか否か等を判別する機能も有している。
マスタシリンダ11に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管34A,34Bを介してESC51に送られる。このESC51は、マスタシリンダ11からの液圧を各車輪側のディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)のホイールシリンダに分配して供給する。これにより、車両の各車輪(即ち、左,右の前輪2と左,右の後輪3毎)に制動力が付与される。
液圧センサ35はマスタシリンダ11のブレーキ液圧を検出する。この液圧センサ35は、例えばシリンダ側液圧配管34A内の液圧(即ち、マスタシリンダ11からシリンダ側液圧配管34Aを介してESC51に供給されるブレーキ液圧)を検出する。液圧センサ35は、例えばESC用ECU53に電気的に接続されると共に、液圧センサ35による検出信号は、ESC用ECU53から信号線9を介してブースタ用ECU33にも通信により送られる。
なお、液圧センサ35は、マスタシリンダ11のブレーキ液圧を検出することができればよく、例えばマスタシリンダ11のシリンダ本体12に直接取付けられるようにしてもよい。また、液圧センサ35は、その検出信号をESC用ECU53を介さずに、直接的にブースタ用ECU33に入力されるように構成してもよい。
図3に示すように、ブースタ用ECU33には、車両に搭載された車両データバス8を介して電力充電用の回生協調制御を行う回生用コントローラ36(以下、回生用ECU36という)が接続されている。回生用ECU36は、車両の減速時および制動時等に各車輪の回転による慣性力を利用して、回生用モータ37を駆動制御することにより運動エネルギを電力として回収するものである。回生用ECU36は、車両データバス8を介してブースタ用ECU33とESC用ECU53とに接続され、回生制動制御手段を構成している。
図4に示すように、ブースタ用ECU33は、M/C液圧変換処理部38、偏差演算部39、モータ回転位置変換処理部40およびモータ指令算出処理部41を含んで構成されている。ここで、M/C液圧変換処理部38は、車両運転者の踏込み操作によりストロークセンサ7からペダルストロークが入力されると、このときの操作量(ペダルストローク)に対応する目標液圧としての目標M/C液圧を求める。
M/C液圧変換処理部38から出力されたM/C液圧指令は、液圧センサ35で検出された実際のブレーキ液圧(M/C液圧)に対し、偏差演算部39によって減算され、両者の液圧偏差として算出される。この液圧偏差は、モータ回転位置変換処理部40へ入力される。モータ回転位置変換処理部40は、例えばメモリ33Aに格納されている変換係数に基づいて液圧偏差を位置偏差に変換する。この位置偏差は、ブースタピストン23の目標位置に対する実位置(回転センサ28Aで検出される電動モータ28のモータ回転位置)の偏差として求められる。
モータ回転位置変換処理部40で求められた位置偏差は、モータ指令算出処理部41に入力される。このモータ指令算出処理部41は、位置偏差、回転センサ28Aによるモータ回転位置、モータ回転速度および電流センサ28Bによるモータ電流からモータ駆動電流(モータ動作指令、即ちモータ出力指令)を算出する。このとき、モータ指令算出処理部41は、電動モータ28のモータ回転位置を回転センサ28A、電流センサ28Bからの検出信号によりフィードバック制御するものである。
モータ指令算出処理部41から出力されるモータ駆動電流は、電動倍力装置21の駆動源である電動アクチュエータ27の電動モータ28に供給電力として供給される。電動モータ28の回転駆動によりブースタピストン23がマスタシリンダ11の軸方向に変位すると、これに従ってマスタシリンダ11の液圧室14A,14B内にはブレーキ液圧(M/C液圧)が発生し、この液圧はESC51を介して各ディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)に分配して供給され、車輪毎に制動力が発生する。
次に、ディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)とマスタシリンダ11との間に設けられたESC51について、図2を参照して説明する。
ESC51は、電動倍力装置21によりマスタシリンダ11(第1,第2の液圧室14A,14B)内に発生したブレーキ液圧を、車輪毎のホイールシリンダ圧として可変に制御して各車輪のディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)のホイールシリンダに個別に供給するホイールシリンダ圧制御装置を構成している。
即ち、ESC51は、各種のブレーキ制御(例えば、左,右の前輪2、左,右の後輪3毎に制動力を配分する制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御等)をそれぞれ行う場合に、必要なブレーキ液圧をマスタシリンダ11からシリンダ側液圧配管34A,34B等を介してディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)に供給するものである。
ここで、ESC51は、マスタシリンダ11(第1,第2の液圧室14A,14B)からシリンダ側液圧配管34A,34Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部52A,52B,52C,52Dを介してディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)に分配、供給する。これにより、前述のように車輪(左,右の前輪2、左,右の後輪3)毎にそれぞれ独立した制動力が個別に付与される。ESC51は、後述の各制御弁58,58′,59,59′,60,60′,63,63′,64,64′,71,71′と、液圧ポンプ65,65′を駆動する電動モータ66と、ABSリザーバとしての液圧制御用リザーバ70,70′等とを含んで構成されている。
ESC用ECU53は、ESC51を電気的に駆動制御するものであり、第2の制御回路を構成している。ESC用ECU53は、その入力側が、液圧センサ35、車両データバス8および信号線9等に接続されている。ESC用ECU53の出力側は、後述の各制御弁58,58′,59,59′,60,60′,63,63′,64,64′,71,71′、電動モータ66、車両データバス8および信号線9等に接続されている。
ここで、ESC用ECU53は、ESC51の各制御弁58,58′,59,59′,60,60′,63,63′,64,64′,71,71′および電動モータ66等を後述のように個別に駆動制御する。これによって、ESC用ECU53は、ブレーキ側配管部52A〜52Dからディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、ディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)毎に個別に行うものである。
即ち、ESC用ECU53は、ESC51を作動制御することにより、例えば車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知してブレーキペダル6の操作量に拘わらず各車輪に付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、車両前方または後方の障害物との衡突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
そして、ESC用ECU53は、ブースタ用ECU33と協働して作動液供給ユニット制御装置を構成し、ブレーキペダル6の操作を受けてディスクブレーキ5,81へ供給する作動液の液圧を設定し、ディスクブレーキ5,81の液圧が設定液圧となるように電動倍力装置21の電動アクチュエータ27を制御する。
ESC51は、マスタシリンダ11の一方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管34A)に接続されて左前輪(FL)側のディスクブレーキ5(L)と右後輪(RR)側のディスクブレーキ81(R)とに液圧を供給する第1液圧回路54と、他方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管34B)に接続されて右前輪(FR)側のディスクブレーキ5(R)と左後輪(RL)側のディスクブレーキ81(L)とに液圧を供給する第2液圧回路54′との2系統の液圧回路を備えている。これらの第1液圧回路54と第2液圧回路54′とは、マスタシリンダ11とディスクブレーキ5(R,L),81(R,L)とを接続して作動液を流通させる。
ここで、第1液圧回路54と第2液圧回路54′とは、同様な構成を有しているため、以下の説明は第1液圧回路54についてのみ行い、第2液圧回路54′については各構成要素に符号に「′」を付し、それぞれの説明を省略する。
ESC51の第1液圧回路54は、シリンダ側液圧配管34Aの先端側に接続されたブレーキ管路55を有し、ブレーキ管路55は、第1管路部56および第2管路部57の2つに分岐して、左前輪と右後輪のディスクブレーキ5(L),81(R)にそれぞれ接続されている。ブレーキ管路55および第1管路部56は、ブレーキ側配管部52Aと共に左前輪のディスクブレーキ5(L)に液圧を供給する管路を構成し、ブレーキ管路55および第2管路部57は、ブレーキ側配管部52Dと共に右後輪のディスクブレーキ81(R)に液圧を供給する管路を構成している。
ブレーキ管路55には、ブレーキ液圧の供給制御弁58が設けられ、この供給制御弁58は、ブレーキ管路55を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第1管路部56には増圧制御弁59が設けられ、この増圧制御弁59は、第1管路部56を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第2管路部57には増圧制御弁60が設けられ、この増圧制御弁60は、第2管路部57を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。
一方、ESC51の第1液圧回路54は、ディスクブレーキ5(L),81(R)側と液圧制御用リザーバ70とをそれぞれ接続する第1,第2の減圧管路61,62を有し、これらの減圧管路61,62には、それぞれ第1,第2の減圧制御弁63,64(減圧弁)が設けられている。第1,第2の減圧制御弁63,64は、減圧管路61,62をそれぞれ開,閉する常閉の電磁切換弁により構成されている。
また、ESC51は、液圧源である液圧発生手段としての液圧ポンプ65を備え、この液圧ポンプ65は電動モータ66により回転駆動される。ここで、電動モータ66は、ESC用ECU53からの給電により駆動され、給電停止により液圧ポンプ65と一緒に回転停止される。液圧ポンプ65の吐出側は、逆止弁67を介してブレーキ管路55のうち供給制御弁58よりも下流側となる位置(即ち、第1管路部56と第2管路部57とが分岐する位置)に接続されている。液圧ポンプ65の吸込み側は、逆止弁68,69を介して液圧制御用リザーバ70に接続されている。
液圧制御用リザーバ70は、余剰のブレーキ液を一時的に貯留するために設けられ、ブレーキシステム(ESC51)のABS制御時に限らず、これ以外のブレーキ制御時にもディスクブレーキ5(L),81(R)のシリンダ室から流出してくる余剰のブレーキ液を一時的に貯留するものである。また、液圧ポンプ65の吸込み側は、逆止弁68および常閉の電磁切換弁である加圧制御弁71を介してマスタシリンダ11のシリンダ側液圧配管34A(即ち、ブレーキ管路55のうち供給制御弁58よりも上流側となる位置)に接続されている。
ESC51を構成する各制御弁58,58′,59,59′,60,60′,63,63′,64,64′,71,71′、および液圧ポンプ65,65′を駆動する電動モータ66は、ESC用ECU53から出力される制御信号に従ってそれぞれの動作制御が予め決められた手順で行われる。
即ち、ESC51の第1液圧回路54は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時において、電動倍力装置21によってマスタシリンダ11で発生した液圧を、ブレーキ管路55および第1,第2管路部56,57を介してディスクブレーキ5(L),81(R)に直接供給する。例えば、アンチスキッド制御等を実行する場合は、増圧制御弁59,60を閉じてディスクブレーキ5(L),81(R)の液圧を保持し、これらのディスクブレーキ5(L),81(R)の液圧を減圧するときには、減圧制御弁63,64を開いてディスクブレーキ5(L),81(R)の液圧を液圧制御用リザーバ70に逃がすように排出する。
また、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ディスクブレーキ5(L),81(R)に供給する液圧を増圧するときには、供給制御弁58を閉弁した状態で電動モータ66により液圧ポンプ65を作動させ、液圧ポンプ65から吐出したブレーキ液を第1,第2管路部56,57を介してディスクブレーキ5(L),81(R)に供給する。このとき、加圧制御弁71が開弁されていることにより、マスタシリンダ11側から液圧ポンプ65の吸込み側へとリザーバ17内のブレーキ液が供給される。
このように、ESC用ECU53は、車両運転情報等に基づいて供給制御弁58、増圧制御弁59,60、減圧制御弁63,64、加圧制御弁71および電動モータ66(即ち、液圧ポンプ65)の作動を制御し、ディスクブレーキ5(L),81(R)に供給する液圧を適宜に保持したり、減圧または増圧したりする。これによって、前述した制動力分配制御、車両安定化制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
一方、電動モータ66(即ち、液圧ポンプ65)を停止した状態で行う通常の制動モードでは、供給制御弁58および増圧制御弁59,60を開弁させ、減圧制御弁63,64および加圧制御弁71を閉弁させる。この状態で、ブレーキペダル6の踏込み操作に応じてマスタシリンダ11の第1のピストン(即ち、ブースタピストン23、入力ロッド24)と第2のピストン13とがシリンダ本体12内を軸方向に変位するときに、第1の液圧室14A内に発生したブレーキ液圧が、シリンダ側液圧配管34A側からESC51の第1液圧回路54、ブレーキ側配管部52A,52Dを介してディスクブレーキ5(L),81(R)に供給される。第2の液圧室14B内に発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管34B側から第2液圧回路54′、ブレーキ側配管部52B,52Cを介してディスクブレーキ5(L),81(R)に供給される。
また、電動倍力装置21の失陥によりブースタピストン23を電動モータ28で作動できない場合には、第1,第2の液圧室14A,14B内に発生したブレーキ液圧をESC用ECU53に接続された液圧センサ35により検出して、この検出値をブレーキペダル6の操作量として検出値に応じたホイールシリンダ圧となるように各ホイールシリンダを増圧するアシスト制御を行う。アシスト制御では、加圧制御弁71と増圧制御弁59,60とを開弁させ、供給制御弁58および減圧制御弁63,64を適宜開,閉弁させる。この状態で、電動モータ66により液圧ポンプ65を作動させ、液圧ポンプ65から吐出するブレーキ液を第1,第2管路部56,57を介してディスクブレーキ5(L),81(R)に供給する。これにより、マスタシリンダ11側で発生するブレーキ液圧に基づいて、液圧ポンプ65から吐出するブレーキ液によってディスクブレーキ5(L),81(R)による制動力を発生することができる。
なお、液圧ポンプ65としては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。電動モータ66としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、本実施の形態においては、車載性等の観点からDCモータとしている。
また、ESC51の各制御弁58,59,60,63,64,71は、その特性を夫々の使用態様に応じて適宜設定することができるが、このうち供給制御弁58および増圧制御弁59,60を常開弁とし、減圧制御弁63,64および加圧制御弁71を常閉弁とすることにより、ESC用ECU53からの制御信号がない場合にも、マスタシリンダ11からディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)に液圧を供給することができる。従って、ブレーキシステムのフェイルセーフおよび制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましいものである。
次に、ディスクブレーキ81に設けられたPKB91の具体的な構成について、図2ないし図4を参照して説明する。
図3に示すように、PKB91が設けられるディスクブレーキ81は、シリンダユニットを構成している。このディスクブレーキ81は、ホイールシリンダを構成するキャリパ82およびホイールピストン83(以下、W/Cピストン83という)を備える。W/Cピストン83は、ディスクロータ4にブレーキバッド84を押圧する押圧部材を構成し、キャリパ82のシリンダ82Aの内周に摺動可能に設けられている。キャリパ82は、ブレーキペダル6の操作に基づく液圧(M/C液圧)によりW/Cピストン83を進出させ、摩擦材としてのブレーキバッド84をディスクロータ4に押圧(推進)する。これにより、ディスクブレーキ81は、後輪3に制動力を付与する。
PKB91は、ピストン92、直動機構93および電動モータ94を備える。ピストン92は、直動機構93を介して電動モータ94に連結され、W/Cピストン83内に摺動可能に設けられる。直動機構93は、電動モータ94の回転をピストン92の進退移動に変換する。これにより、ピストン92は、電動モータ94の回転駆動によってW/Cピストン83内で軸方向に前進または後退する。
駐車ブレーキのアプライ時には、電動モータ94の回転運動がピストン92の並進運動へと変換されてピストン92が前進し、W/Cピストン83を前進方向に押し出すことで、ディスクロータ4に一対のブレーキパッド84が押し付けられる。これにより、PKB91は、駐車ブレーキスイッチ96の操作に応じて、W/Cピストン83を電動モータ94によって移動させてW/Cピストン83を制動状態に保持する。一方、駐車ブレーキのリリース時には、電動モータ94の回転運動がピストン92の並進運動へと変換されてピストン92が後退し、ピストン92による押圧力を解除する。
PKB用ECU95は、例えばマイクロコンピュータ等からなっており、シリンダユニット制御装置を構成している。このPKB用ECU95は、駐車ブレーキスイッチ96の操作に応じてPKB91に電流を供給してディスクブレーキ81を制御する。具体的には、PKB用ECU95は、PKB91の電動モータ94を電気的に駆動制御する。図3に示すように、PKB用ECU95は、メモリ(図示せず)に格納された制御プログラムに従って動作し、PKB91の駆動を制御する。
PKB用ECU95の入力側は、駐車ブレーキスイッチ96および車両データバス8等に接続されている。PKB用ECU95の出力側は、電動モータ94および車両データバス8等に接続されている。そして、PKB用ECU95は、駐車ブレーキスイッチ96からの信号を車両データバス8に出力すると共に、駐車ブレーキスイッチ96からの信号に従って電動モータ94を駆動し、ディスクブレーキ81を制動状態または制動解除状態に切り換える。
図4に示すように、PKB用ECU95は、モータ電流指令作成処理部97およびモータ指令算出処理部98を含んで構成されている。ここで、モータ電流指令作成処理部97は、駐車ブレーキスイッチ96からの入力(SW入力)であるアプライ指令とリリース指令とに応じて、電動モータ94を駆動するためのモータ電流指令を求める。モータ指令算出処理部98は、モータ電流指令作成処理部97からのモータ電流指令と電動モータ94に流れるモータ電流とに基づいて、モータ動作指令としての駆動電流を算出する。このとき、モータ指令算出処理部98は、例えばモータ電流指令とモータ電流との電流偏差に基づいて、駆動電流をフィードバック制御するものである。
モータ指令算出処理部98によって出力された駆動電流は、電動モータ94に入力される。これにより、アプライ時には、電動モータ94によってピストン92を前進させて、W/Cピストン83に推力を発生させ、ブレーキパッド84をディスクロータ4に押付けて、制動力を発生させる。一方、リリース時には、電動モータ94によってピストン92を後退させてW/Cピストン83の推力と制動力を解除する。
次に、駐車ブレーキ動作中の電動倍力装置21の制御処理について、図5および図8を参照して説明する。なお、図5の処理は、所定時間毎に(所定のサンプリング周波数で)繰り返し実行される。
図5の処理動作がスタートすると、ステップ1では、ストロークセンサ7の出力に基づいて、ブレーキペダル6の操作が行われているか否かを判定する。ステップ1で「NO」と判定したときには、ブレーキペダル6が操作されていない状態なので、そのまま待機する。一方、ステップ1で「YES」と判定したときには、ブレーキペダル6が操作されているから、ステップ2に移行する。
ステップ2では、ブースタ用ECU33のM/C液圧変換処理部38によって、ストロークセンサ7から入力されるペダルストロークに応じて、M/C液圧指令を算出する。
続くステップ3では、車両データバス8からブースタ用ECU33に入力される駐車ブレーキスイッチ96の信号に基づいて、PKB91が動作中か否か、即ちPKB91のアプライ動作時またはリリース動作時か、PKB91の停止時かを判定する。ステップ3で「NO」と判定したときには、PKB91の非動作時(停止時)であるから、ステップ8に移行して、PKB91の非動作中における電動倍力装置21の動作処理を行う。即ち、ブースタ用ECU33は、M/C液圧変換処理部38によって算出したM/C液圧指令に基づいて、電動倍力装置21を動作させる。
一方、ステップ3で「YES」と判定したときには、PKB91の動作時(アプライ動作時またはリリース動作時)であるから、ステップ4に移行する。ステップ4では、車両データバス8を介してPKB用ECU95から必要な情報として、アプライ動作状態またはリリース動作状態、駐車制動力であるPKB91の発生推力(PKB Force)、電動モータ94のモータ電流、ピストン92のストローク(Piston Stroke)を取得する。
このとき、ブースタ用ECU33は、例えばメモリ33Aに格納されたPKB91の発生推力とピストン92のストロークとの関係を示すストローク算出マップ99を用いて、PKB91の発生推力からピストン92のストロークを求める(図8参照)。PKB91の発生推力は、例えばM/C液圧による液圧換算値や電動モータ94のモータ電流値に基づいて間接的に検出してもよく、各種のセンサ等によって直接的に検出してもよい。
また、ストローク算出マップ99は、PKB91の発生推力とピストン92のストロークとの関係を示す複数の特性線FS1〜FSnを備える。これら複数の特性線FS1〜FSnは、ブレーキパッド84の剛性変化に応じて適宜選択される。即ち、ブレーキパッド84の剛性が高いときには、ピストン92のストロークに対するPKB91の発生推力の増加率が大きくなるため、例えば特性線FS1が選択される。逆に、ブレーキパッド84の剛性が低いときには、ピストン92のストロークに対するPKB91の発生推力の増加率が小さくなるため、例えば特性線FSnが選択される。
ステップ5では、ステップ4で求めたピストン92のストロークに基づいて、W/Cピストン83の体積変化量を算出する。W/Cピストン83の体積変化量を算出方法について、例えば図8中の特性線FS1が選択された状態でリリース動作を行う場合を例に挙げて具体的に説明する。ブースタ用ECU33は、ブレーキペダル6の操作中にPKB91が動作を開始すると、特性線FS1に基づいて、PKB91の発生推力の現在値F0から、PKB91のピストンストロークの基準値X0を算出し、記憶する。その後、PKB91が動作している間は、発生推力Fから求めたピストンストロークの現在値Xと記憶した基準値X0との差分ΔXを算出する。
なお、アプライ動作時は、基準値X0が現在値Xよりも小さくなるが、それ以外の差分ΔXの算出手順はほぼ同様である。また、ブレーキパッド84の剛性に基づく特性の補正は、例えば予め実験的に求めた特性線FS1〜FSnを用いてもよく、各種の補正演算を行ってもよい。ブレーキパッド84の剛性に基づく特性の補正には、各種の公知技術を適用することができる。
このとき、ピストン92のストロークの差分ΔXがW/Cピストン83の体積変化量に対応する。このため、ステップ5では、差分ΔXからマスタシリンダ11内のM/C液量としてW/C体積変化量(W/Cピストン83の体積変化量)を算出し、ステップ6に移行する。
ステップ6では、W/C体積変化量(M/C液量)に基づいてブースタピストン23の移動量を算出する。ブースタピストン23の移動量は、PKB91の非動作時に比べてブースタピストン23の進め制御または戻し制御するために、ブースタピストン23の目標位置を補正する補正量に対応する。ここで、進め制御とは、入力ロッド24に対して、ブースタピストン23を増圧側に移動させる制御となっており、また、戻し制御とは、入力ロッド24に対してブースタピストン23を減圧側に移動させる制御となっている。
ステップ7では、ステップ6で算出したブースタピストン23の移動量に基づいて、モータ回転位置変換処理部40から出力される位置偏差を補正し、この位置偏差に基づいて電動モータ28の回転を制御する。このとき、PKB91のリリース動作またはアプライ動作によってW/Cピストン83の体積が変化すると、ブースタ用ECU33は、この体積変化に応じてブースタピストン23を変位させる。
具体的に説明すると、PKB91のリリース動作時には、PKB91のリリース動作によってW/Cピストン83の体積減少が生じ、これに伴ってマスタシリンダ11の液圧(M/C液圧)が増加する。このとき、ブースタ用ECU33は、W/Cピストン83の体積減少分だけ、ブースタピストン23を戻した状態で制御する。
一方、PKB91のアプライ動作時には、PKB91のアプライ動作によってW/Cピストン83の体積増加が生じ、これに伴ってマスタシリンダ11の液圧(M/C液圧)が減少する。このため、ブースタ用ECU33は、W/Cピストン83の体積増加分だけ、ブースタピストン23を進めた状態で制御する。
これにより、PKB91の動作に基づくW/Cピストン83の体積変化の影響を、マスタシリンダ11の第1の液圧室14Aの体積変化によって相殺することができる。この結果、ブレーキペダル6の操作中にPKB91を動作させたときでも、マスタシリンダ11の液圧(M/C液圧)の変動を抑制することができる。
なお、駐車ブレーキが解除された状態から駐車ブレーキの制動力が付与された状態に達するまでのピストン92のストロークは、ブレーキパッド84の摩耗量によっても変化する。しかし、ステップ1に示すように、ブレーキペダル6が踏まれておらず、M/C液圧が零の場合には、ブースタピストン23の進め制御および戻し制御は行わない。また、図8に示すように、ピストン92のストロークの差分ΔXは、ブースタピストン23の目標位置を補正するために用いられるものであるが、この差分ΔXは、PKB91の発生推力に基づいて算出する。このため、差分ΔXはピストン92のストロークのオフセット量とは無関係であるから、差分ΔXを算出するに際してブレーキパッド84の摩耗量の影響を考慮する必要はない。
本実施の形態によるブレーキシステムは、上述のような構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、これにより入力ロッド24が矢示A方向に押込まれると共に、電動倍力装置21の電動アクチュエータ27がブースタ用ECU33により作動制御される。即ち、ブースタ用ECU33は、ストロークセンサ7からの検出信号により電動モータ28に起動指令を出力して電動モータ28を回転駆動し、その回転が減速機構30を介して筒状回転体29に伝えられると共に、筒状回転体29の回転は、直動機構31によりブースタピストン23の軸方向変位に変換される。
これにより、電動倍力装置21のブースタピストン23は、マスタシリンダ11のシリンダ本体12内に向けて入力ロッド24とほぼ一体的に前進し、ブレーキペダル6から入力ロッド24に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ27からブースタピストン23に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ11の第1,第2の液圧室14A,14B内に発生する。
また、ブースタ用ECU33は、液圧センサ35からの検出信号を信号線9から受取ることによりマスタシリンダ11に発生した液圧を監視し、電動倍力装置21の電動アクチュエータ27(電動モータ28の回転)をフィードバック制御する。これにより、マスタシリンダ11の第1,第2の液圧室14A,14B内に発生するブレーキ液圧を、ブレーキペダル6の踏込み操作量に基づいて可変に制御することができる。また、ブースタ用ECU33は、ストロークセンサ7と液圧センサ35との検出値に従って電動倍力装置21が正常に動作しているか否かを判別することができる。
一方、ブレーキペダル6に連結された入力ロッド24は、第1の液圧室14A内の圧力を受圧し、これをブレーキ反力としてブレーキペダル6へと伝える。この結果、車両の運転者には入力ロッド24を介して踏応えが与えられるようになり、これによって、ブレーキペダル6の操作感を向上でき、ペダルフィーリングを良好に保つことができる。
このとき、ESC51は、電動倍力装置21によりマスタシリンダ11(第1,第2の液圧室14A,14B)内に発生したブレーキ液圧を、シリンダ側液圧配管34A,34BからESC51内の液圧回路54,54′およびブレーキ側配管部52A,52B,52C,52Dを介してディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)へと可変に制御しつつ、車輪毎のホイールシリンダ圧として分配して供給する。これにより、車両の車輪(前輪2(FL,FR)および後輪3(RL,RR))毎にディスクブレーキ5(L,R),81(L,R)によって適正な制動力が付与される。
また、駐車ブレーキスイッチ96が駐車ブレーキのアプライ指令を出力すると、PKB91は、電動モータ94によってピストン92を前進させる。これにより、W/Cピストン83に推力を発生させ、ブレーキパッド84をディスクロータ4に押付けて、駐車制動力を発生させる。
一方、駐車ブレーキスイッチ96が駐車ブレーキのリリース指令を出力すると、PKB91は、電動モータ94によってピストン92を後退させてW/Cピストン83の推力と駐車制動力を解除する。
ここで、ブレーキペダル6の操作中にPKB91を動作させると、W/Cピストン83の体積が変化する。このため、液圧回路54,54′内の液量が変化してM/C液圧が変化し、ブレーキペダル6の反力(Pedal Force)も変化する傾向がある。これに対し、本実施の形態では、電動倍力装置21の駆動を制御して、W/Cピストン83の体積変化を相殺するように、マスタシリンダ11の第1の液圧室14Aの体積を変化させる。
このような本実施の形態による電動倍力装置21の制御処理について、図6および図7を参照して説明する。なお、図6および図7は、いずれも時刻t1において、ドライバがブレーキペダル6をランプ状に踏み込んだ後に、一定のペダルストロークで保持する状態を想定している。
図6は、ブレーキペダル6を操作した状態でPKB91のリリース動作を行った場合を示している。時刻t2でPKB91のリリース動作を行うと、W/Cピストン83の体積減少が生じる。このとき、図6中に破線で示す比較例では、PKB91のリリース動作によるW/Cピストン83の体積減少に伴って、W/C液圧(W/C Pressure)およびM/C液圧が上昇する。この結果、時刻t2から時刻t3までの間でブレーキペダル6の反力(Pedal Force)が増加して、ペダルフィーリングに違和感が生じる。
これに対し、本発明では、図6中に実線で示すように、電動倍力装置21は、PKB91のリリース動作中に、ブースタピストン23の位置を減力側に動作させる。即ち、時刻t2から時刻t3までの間にPKB91のリリース動作によるW/Cピストン83の体積減少が生じても、電動倍力装置21は、第1の液圧室14Aが拡大するようにブースタピストン23を動作させる。これにより、W/Cピストン83の体積減少を第1の液圧室14Aの体積増加によって補償し、M/C液圧増加の影響を相殺することができる。その後、時刻t3で、電動倍力装置21は、ブースタピストン23をW/Cピストン83の体積減少分だけ戻した状態で制御する。
図7は、ブレーキペダル6を操作した状態でPKB91のアプライ動作を行った場合を示している。時刻t2でPKB91のアプライ動作を行うと、W/Cピストン83の体積増加が生じる。このとき、図7中に破線で示す比較例では、時刻t2でPKB91のアプライ動作によるW/Cピストン83の体積増加に伴って、W/C液圧およびM/C液圧が低下する。この結果、時刻t2から時刻t3までの間でブレーキペダル6の反力が低下して、ペダルフィーリングに違和感が生じる。
これに対し、本発明では、図7中に実線で示すように、電動倍力装置21は、PKB91のアプライ動作中に、ブースタピストン23の位置を増力側に動作させる。即ち、時刻t2から時刻t3までの間にPKB91のアプライ動作によるW/Cピストン83の体積増加が生じても、電動倍力装置21は、第1の液圧室14Aが縮小するようにブースタピストン23を動作させる。これにより、W/Cピストン83の体積増加を第1の液圧室14Aの体積減少によって補償し、M/C液圧減少の影響を相殺することができる。その後、時刻t3で、電動倍力装置21は、ブースタピストン23をW/Cピストン83の体積増加分だけ進めた状態で制御する。
この結果、ブレーキペダル6の操作時にPKB91を動作させても、ブレーキペダル6における反力の変動を抑制することができるから、PKB91の動作に伴うペダルフィーリングの違和感を解消することができる。
かくして、第1の実施の形態では、ブースタ用ECU33は、ディスクブレーキ81にM/C液圧が付与されている状態で、PKB用ECU95によってPKB91が作動するときに、PKB91への電流値(PKB91の発生推力)に応じて液圧回路54,54′内の液量が一定となるように電動倍力装置21の電動アクチュエータ27を制御する。これにより、PKB91の動作に伴うW/Cピストン83の体積変化を相殺するように、ブースタピストン23を制御することができる。この結果、ブレーキペダル6を操作した状態でPKB91を動作させても、ブレーキペダル6における反力の変動を抑制することができるから、PKB91の動作に伴うペダルフィーリングの違和感を解消することができる。
また、ペダルフィーリングの違和感を抑制するためには、ディスクブレーキ81のホイールシリンダの液量が所定の特性となるように、アキュムレータまたはESC51によって液量を増加または減少させるようにしてもよい。しかしながら、このようにした場合には、PKB91の動作応答と同等の液圧応答性能を確保する必要があり、製造コストが上昇する傾向がある。
これに対し、本実施の形態では、PKB91の動作応答とほぼ同等の応答性を有する電動倍力装置21を用いて、PKB91の動作に伴うW/Cピストン83の体積変動を補償する。このため、電動倍力装置21の電動モータ28を制御することによって液量の調整を行うため、ブレーキシステムのレイアウト変更が不要である。これに加えて、例えば液圧応答性の高い新たな部品を使用する必要がなく、製造コストの上昇を抑えることができる。
次に、図1ないし図5、図9は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、電動駐車ブレーキ機構の動作電流情報に基づいてピストンのストローク量を算出することにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態によるブースタ用ECU101は、第1の実施の形態によるブースタ用ECU33とほぼ同様に構成される。但し、ブースタ用ECU101は、駐車ブレーキ動作中の電動倍力装置21の制御処理を行うときに、図5中のステップ4で、図9に示すストローク算出マップ102を用いて、PKB91の動作電流(PKB Current)からピストン92のストロークを求める。この点で、ブースタ用ECU101は、第1の実施の形態によるブースタ用ECU33とは異なる。
ここで、ブースタピストン23の移動量を算出するためには、PKB91により発生した推力(液圧)と、PKB91のピストン92のストローク量との2つのパラメータが必要である。このうち、PKB91の発生推力は、PKB91の動作電流から、PKB91のピストン92を動作するために必要な電流量を差し引くことによって換算が可能である。
このため、ブースタ用ECU101は、例えばメモリ33Aに格納されたPKB91の動作電流とピストン92のストロークとの関係を示すストローク算出マップ102を用いて、PKB91の動作電流からピストン92のストロークを求める(図9参照)。このとき、PKB91の動作電流は、電動モータ94のモータ電流に対応するものであり、PKB用ECU95から車両データバス8を介して取得する。
また、ストローク算出マップ102は、PKB91の動作電流とピストン92のストロークとの関係を示す複数の特性線CS1〜CSnを備える。これら複数の特性線CS1〜CSnは、ブレーキパッド84の剛性変化に応じて適宜選択される。即ち、ブレーキパッド84の剛性が高いときには、ピストン92のストロークに対するPKB91の動作電流の増加率が大きくなるため、例えば特性線CS1が選択される。逆に、ブレーキパッド84の剛性が低いときには、ピストン92のストロークに対するPKB91の動作電流の増加率が小さくなるため、例えば特性線CSnが選択される。
ステップ5では、ステップ4で求めたピストン92のストロークに基づいて、W/Cピストン83の体積変化量を算出する。例えば特性線CS1が選択された状態でリリース動作を行う場合を例に挙げて説明すると、ブースタ用ECU101は、ブレーキペダル6の操作中にPKB91が動作を開始すると、特性線CS1に基づいて、PKB91の動作電流の現在値I0から、PKB91のピストンストロークの基準値X0を算出し、記憶する。その後、PKB91が動作している間は、動作電流Iから求めたピストンストロークの現在値Xと記憶した基準値X0との差分ΔXを算出する。このとき、ピストン92のストロークの差分ΔXがW/Cピストン83の体積変化量に対応するから、ステップ5では、差分ΔXからマスタシリンダ11内のM/C液量としてW/C体積変化量(W/Cピストン83の体積変化量)を算出する。
ステップ6以降の処理について、第1の実施の形態と同様である。これにより、PKB91のリリース動作またはアプライ動作によってW/Cピストン83の体積が変化すると、ブースタ用ECU101は、この体積変化に応じてブースタピストン23を変位させ、W/Cピストン83の体積変化を相殺することができる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図1ないし図4は本発明の第3の実施の形態を示し、この第3の実施の形態における特徴は、電動駐車ブレーキ機構のリリース動作時に液圧供給装置の液圧制御用リザーバによって、W/Cピストンの体積減少による液量を吸収することにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施の形態によるブースタ用ECU111は、第1の実施の形態によるブースタ用ECU33とほぼ同様に構成される。但し、ブースタ用ECU111は、PKB91のアプライ動作時には、W/Cピストン83の体積変化を相殺するように電動倍力装置21を制御するものの、PKB91のリリース動作時には、W/Cピストン83の体積変化を相殺するための制御処理は行わない。この点で、第1の実施の形態によるブースタ用ECU33とは異なる。
PKB91のリリース動作時には、電動倍力装置21に代えて、ESC51の液圧制御用リザーバ70,70′によって、W/Cピストン83の体積減少による液量を吸収する。このため、第3の実施の形態によるESC用ECU112は、PKB91のリリース動作時に、PKB91の動作電流の電流値に応じて第2の減圧制御弁64,64′(減圧弁)を作動させて、液圧回路54,54′の作動液を液圧制御用リザーバ70,70′へ送液する。これにより、PKB91のリリース動作時にESC51の液圧制御用リザーバ70,70′によって、W/Cピストン83の体積減少による液量を吸収して、液量増加によるブレーキペダル6の変動を抑制することができる。
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
なお、前記第3の実施の形態では、PKB91のリリース動作時に、W/Cピストン83の体積減少による液量をESC51によって相殺し、PKB91のアプライ動作時に、W/Cピストン83の体積増加による液量を電動倍力装置21によって相殺するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばPKB91のアプライ動作時に、ESC51の液圧ポンプ65,65′を駆動することによって、W/Cピストン83の体積増加による液量をESC51によって相殺してもよい。
また、PKB91のリリース動作時またはアプライ動作時には、電動倍力装置21とESC51を複合的に動作させて、W/Cピストン83の体積変化を補償してもよい。
前記各実施の形態では、PKB91のリリース動作時とアプライ動作時の両方で、W/Cピストン83の体積変化を補償する構成としたが、PKB91のリリース動作時とアプライ動作時とのうちいずれか一方だけで、W/Cピストン83の体積変化を補償する構成としてもよい。
前記各実施の形態では、作動液供給ユニットは、電動倍力装置21とESC51の両方を備えるものとしたが、ESC51を省く構成としてもよい。即ち、電動倍力装置21によってW/Cピストン83の体積変化を補償する場合には、ESC51を省いて、マスタシリンダ11の液圧室14A,14Bを直接的にディスクブレーキ5,81のホイールシリンダに接続してもよい。この場合、液圧回路は、例えばマスタシリンダ11とディスクブレーキ5,81のホイールシリンダとの間を接続するシリンダ側液圧配管34A,34B等によって構成される。
前記各実施の形態では、左,右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキ81とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、左,右の前輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキにより構成してもよい。さらには、4輪全ての車輪のブレーキを電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキにより構成してもよい。
前記各実施の形態では、常用ブレーキとしての液圧機構と駐車ブレーキとしての電動機構との2つの機構に基づく押圧力が加わる、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ81を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、常用ブレーキとしての液圧機構と駐車ブレーキとしての電動機構との2つの機構に基づく押圧力がブレーキパッドに加わるブレーキ装置であれば、広く適用することができる。
例えば、ブレーキ装置は、ディスクとブレーキパッドとの摩擦係合に基づいて制動力が付与されるディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、ドラムとブレーキシューとの摩擦係合に基づいて制動力が付与されるドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよい。また、例えばブレーキ装置の駐車ブレーキ機構に取付けたケーブルを電動機構で引っ張ることにより駐車ブレーキを作動させるブレーキ装置として構成してもよい。
さらに、制動操作子は、ブレーキペダル6に限らず、例えばブレーキレバーでもよい。また、停車保持操作子は、駐車ブレーキスイッチ96に限らず、例えばペダルやレバーによって構成してもよい。
次に、前記各実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明によれば、作動液供給ユニット制御装置は、シリンダユニットの液圧が付与されている状態で、シリンダユニット制御装置によって電動機構が作動するときに、前記電動機構への電流値に応じて液圧回路内の液量が一定となるように電動アクチュエータを制御する。
これにより、電動機構の動作に伴うシリンダユニットの体積変化を相殺するように、作動液供給ユニットを制御することができる。この結果、制動操作子を操作した状態で電動機構を動作させても、制動操作子における反力の変動を抑制することができるから、電動機構の動作に伴う制動操作子の違和感を解消することができる。
また、本発明によれば、作動液供給ユニットを構成する電動倍力装置は、アプライ時に電動機構の電流値に応じて進め制御を行い、リリース時に電動機構の電流値に応じて戻し制御を行う。このため、電動機構のアプライ時にシリンダユニットの体積が増加しても、液圧回路内の液量が一定となるように、電動倍力装置を進め制御し、シリンダユニットへ作動液の供給を増加させることができる。また、電動機構のリリース時にシリンダユニットの体積が減少しても、液圧回路内の液量が一定となるように、電動倍力装置を戻し制御し、シリンダユニットへ作動液の供給を減少させることができる。
また、本発明によれば、作動液供給ユニットを構成する液圧供給装置は、リリース時に電動機構の電流値に応じて減圧弁を作動させて液圧回路の作動液をABSリザーバへ送液する。このため、電動機構のリリース時にシリンダユニットの体積が減少しても、液圧回路内の液量が一定となるように、液圧回路の作動液をABSリザーバへ送液することができる。