以下、本発明の実施の形態によるブレーキ制御装置を、四輪自動車に搭載した場合を例に挙げて、添付図面の図1〜図11に従って詳細に説明する。
ここで、図1は本実施の形態に係るブレーキ制御装置を有するブレーキシステムを概念的に示している。図1において、左,右の前輪1L,1Rと左,右の後輪2L,2Rとは、車両のボディを構成する車体(図示せず)の下側に設けられている。左,右の前輪1L,1Rには、それぞれ前輪側ホイールシリンダ3L,3Rが設けられ、左,右の後輪2L,2Rには、それぞれ後輪側ホイールシリンダ4L,4Rが設けられている。これらのホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rは、液圧式のディスクブレーキまたはドラムブレーキのシリンダを構成し、夫々の車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)毎に制動力を付与するものである。
ブレーキペダル5は車体のフロントボード(図示せず)側に設けられている。このブレーキペダル5は、車両のペダル操作時に運転者によって図1中の矢示A方向に踏込み操作される。ブレーキペダル5には、ブレーキスイッチ6と操作量検出器7が設けられ、ブレーキスイッチ6は、車両のブレーキペダル操作の有無を検出して、例えばブレーキランプ(図示せず)を点灯、消灯させるものである。また、操作量検出器7は、ブレーキペダル5の踏込み操作量(ストローク量)または踏力を検出する操作量検出手段を構成し、その検出信号を後述のECU26,32および車両データバス28等に出力する。ブレーキペダル5が踏込み操作されると、マスタシリンダ8には後述の電動倍力装置16を介してブレーキ液圧が発生する。
図2に示すように、マスタシリンダ8は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体9を有している。このシリンダ本体9には、後述のリザーバ14内に連通する第1,第2のサプライポート9A,9Bが設けられている。第1のサプライポート9Aは、後述するブースタピストン18の摺動変位により第1の液圧室11Aに対して連通,遮断される。一方、第2のサプライポート9Bは、後述する第2のピストン10により第2の液圧室11Bに対して連通,遮断される。
シリンダ本体9は、その開口端側が後述する電動倍力装置16のブースタハウジング17に複数の取付ボルト(図示せず)等を用いて着脱可能に固着されている。マスタシリンダ8は、シリンダ本体9と、第1のピストン(後述のブースタピストン18と入力ロッド19)および第2のピストン10と、第1の液圧室11Aと、第2の液圧室11Bと、第1の戻しばね12と、第2の戻しばね13とを含んで構成されている。
この場合、マスタシリンダ8は、プライマリピストン(即ち、Pピストン)としての第1のピストンが後述のブースタピストン18と入力ロッド19とにより構成されている。シリンダ本体9内に形成される第1の液圧室11Aは、セカンダリピストンとしての第2のピストン10とブースタピストン18(および入力ロッド19)との間に画成されている。第2の液圧室11Bは、シリンダ本体9の底部と第2のピストン10との間でシリンダ本体9内に画成されている。
第1の戻しばね12は、第1の液圧室11A内に位置してブースタピストン18と第2のピストン10との間に配設され、ブースタピストン18をシリンダ本体9の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね13は、第2の液圧室11B内に位置してシリンダ本体9の底部と第2のピストン10との間に配設され、第2のピストン10を第1の液圧室11A側に向けて付勢している。
マスタシリンダ8のシリンダ本体9内では、ブレーキペダル5の踏込み操作に応じてブースタピストン18(入力ロッド19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9の底部に向かって変位する。そして、第1,第2のサプライポート9A,9Bがブースタピストン18,第2のピストン10により遮断されたときには、第1,第2の液圧室11A,11B内のブレーキ液によりマスタシリンダ8からブレーキ液圧が発生される。一方、ブレーキペダル5の操作を解除した場合には、ブースタピストン18(および入力ロッド19)と第2のピストン10とが第1、第2の戻しばね12、13によりシリンダ本体9の開口部に向かって矢示B方向に変位していく。このときに、マスタシリンダ8は、リザーバ14からブレーキ液の補給を受けながら第1,第2の液圧室11A,11B内の液圧を解除していく。
マスタシリンダ8のシリンダ本体9には、内部にブレーキ液が収容されている作動液タンクとしてのリザーバ14が設けられている。該リザーバ14は、シリンダ本体9内の液圧室11A,11Bにブレーキ液を給排する。即ち、第1のサプライポート9Aがブースタピストン18により第1の液圧室11Aに連通され、第2のサプライポート9Bが第2のピストン10により第2の液圧室11Bに連通している間は、これらの液圧室11A,11B内にリザーバ14内のブレーキ液が給排される。
一方、第1のサプライポート9Aがブースタピストン18により第1の液圧室11Aから遮断され、第2のサプライポート9Bが第2のピストン10により第2の液圧室11Bから遮断されたときには、これらの液圧室11A,11Bに対するリザーバ14内のブレーキ液の給排が断たれる。このため、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内には、ブレーキ操作に伴ってブレーキ液圧が発生し、このブレーキ液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管15A,15Bを介して後述の液圧供給装置30(即ち、ESC30)に送られる。
車両のブレーキペダル5とマスタシリンダ8との間には、ブレーキペダル5の操作力を増大させるブースタとしての電動倍力装置16が設けられている。この電動倍力装置16は、操作量検出器7の出力に基づいて後述の電動アクチュエータ20を駆動制御することにより、マスタシリンダ8内に発生するブレーキ液圧を可変に制御するものである。電動倍力装置16は、車体のフロントボードである車室前壁(図示せず)に固定して設けられるブースタハウジング17と、該ブースタハウジング17に移動可能に設けられ後述の入力ロッド19に対して相対移動可能なピストンとしてのブースタピストン18と、該ブースタピストン18をマスタシリンダ8の軸方向に進退移動させ当該ブースタピストン18にブースタ推力を付与する後述の電動アクチュエータ20とを含んで構成されている。
ブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に開口端側から軸方向に摺動可能に挿嵌された筒状部材により構成されている。ブースタピストン18の内周側には、ブレーキペダル5の操作に従って直接的に押動され、マスタシリンダ8の軸方向(即ち、矢示A,B方向)に進退移動する入力部材としての入力ロッド19が摺動可能に挿嵌されている。入力ロッド19は、ブースタピストン18と一緒にマスタシリンダ8の第1のピストン(即ち、Pピストン)を構成し、入力ロッド19の後側(軸方向一側)端部にはブレーキペダル5が連結されている。シリンダ本体9内は、第2のピストン10とブースタピストン18(入力ロッド19)との間に第1の液圧室11Aが画成されている。
ブースタハウジング17は、後述の減速機構23等を内部に収容する筒状の減速機ケース17Aと、該減速機ケース17Aとマスタシリンダ8のシリンダ本体9との間に設けられブースタピストン18を軸方向に摺動変位可能に支持した筒状の支持ケース17Bと、減速機ケース17Aを挟んで支持ケース17Bとは軸方向の反対側(軸方向一側)に配置され減速機ケース17Aの軸方向一側の開口を閉塞する段付筒状の蓋体17Cとにより構成されている。減速機ケース17Aの外周側には、後述の電動モータ21を固定的に支持するための支持板17Dが設けられている。
図2に示すように、入力ロッド19は、蓋体17C側からブースタハウジング17内に挿入され、ブースタピストン18内を第1の液圧室11Aに向けて軸方向に延びている。ブースタピストン18と入力ロッド19との間には、一対の中立ばね19A,19Bが介装されている。ブースタピストン18および入力ロッド19は、中立ばね19A,19Bのばね力によって中立位置に弾性的に保持され、これらの軸方向の相対変位に対して中立ばね19A,19Bのばね力が作用する構成となっている。
入力ロッド19の先端側(軸方向他側)端面は、ブレーキ操作時に第1の液圧室11A内に発生する液圧をブレーキ反力として受圧し、入力ロッド19はこれをブレーキペダル5に伝達する。これにより、車両の運転者にはブレーキペダル5を介して適正な踏み応えが与えられ、良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)を得ることができる。この結果、ブレーキペダル5の操作感を向上することができ、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。
また、入力ロッド19は、ブースタピストン18に対して所定量前進したときに、ブースタピストン18に当接してブースタピストン18を前進させることができる構造となっている。この構造により、後述する電動アクチュエータ20や第1のECU26が失陥した場合に、ブレーキペダル5への踏力によりブースタピストン18を前進させてマスタシリンダ8に液圧を発生させることが可能となっている。
電動倍力装置16の電動アクチュエータ20は、ブースタハウジング17の減速機ケース17Aに支持板17Dを介して設けられた電動モータ21と、該電動モータ21の回転を減速して減速機ケース17A内の筒状回転体22に伝えるベルト等の減速機構23と、筒状回転体22の回転をブースタピストン18の軸方向変位(進退移動)に変換するボールネジ等の直動機構24とにより構成されている。ブースタピストン18と入力ロッド19は、それぞれの前端部(軸方向他側の端部)をマスタシリンダ8の第1の液圧室11Aに臨ませ、ブレーキペダル5から入力ロッド19に伝わる踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に伝わるブースタ推力とにより、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧を発生させる。
即ち、電動倍力装置16のブースタピストン18は、操作量検出器7の出力(即ち、制動指令)に基づいて電動アクチュエータ20により駆動され、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を発生させるポンプ機構を構成している。また、ブースタハウジング17の支持ケース17B内には、ブースタピストン18を制動解除方向(図1中の矢示B方向)に常時付勢する戻しばね25が設けられている。ブースタピストン18は、ブレーキ操作の解除時に電動モータ21が逆向きに回転されるときの駆動力と戻しばね25の付勢力とにより図1、図2に示す初期位置まで矢示B方向に戻されるものである。
電動モータ21は、例えばDCブラシレスモータを用いて構成され、電動モータ21には、レゾルバと呼ばれる回転センサ21Aと、モータ電流を検出する電流センサ21Bとが設けられている。回転センサ21Aは、電動モータ21の回転位置(即ち、モータ位置)を検出し、その検出信号を第1の制御回路であるコントロールユニット(以下、第1のECU26という)に出力する。第1のECU26は、この回転位置信号に従って電動モータ21(即ち、ブースタピストン18)のフィードバック制御を行う。また、回転センサ21Aは、モータ位置検出手段を構成し、検出した電動モータ21の回転位置(モータ位置)に基づいて車体に対するブースタピストン18の絶対変位を検出するピストン位置検出手段としての機能を備えている。
ここで、回転センサ21Aは操作量検出器7と共に、ブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位を検出する変位検出手段を構成し、これらの検出信号は、第1のECU26に送出される。なお、前記モータ位置検出手段(回転検出手段)としては、レゾルバ等の回転センサ21Aに限らず、絶対変位(角度)を検出できる回転型のポテンショメータ等により構成してもよい。
減速機構23は、ベルト等に限らず、例えば歯車減速機構等を用いて構成してもよい。また、回転運動を直線運動に変換する直動機構24は、例えばラック−ピニオン機構等によっても構成することもできる。さらに、減速機構23は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、筒状回転体22にモータ軸を一体に設け、電動モータのステータを筒状回転体22の周囲に配置して、電動モータにより直接、筒状回転体22をロータとして回転させるようにしてもよい。
第1のECU26は、例えばマイクロコンピュータ等からなっており、電動倍力装置16の一部を構成すると共に、電動倍力装置16の制御手段を構成している。第1のECU26は、電動倍力装置16の電動アクチュエータ20を電気的に駆動制御するマスタ圧制御ユニット(即ち、第1の制御回路)を構成している。第1のECU26の入力側は、ブレーキペダル5の操作量または踏力を検出する操作量検出器7と、電動モータ21の回転センサ21A及び電流センサ21Bと、例えばL−CANと呼ばれる通信が可能な車載の信号線27と、他の車両機器のECUからの信号の授受を行う車両データバス28等とに接続されている。
車両データバス28は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車載向けの多重通信を行うものである。さらに、第1のECU26には、後述の電源ライン52を通じて車載バッテリ(図示せず)からの電力が供給される。なお、図1、図2中において、二本の斜線が付された線は信号線や電源線等の電気系の線を表している。
液圧センサ29は、マスタシリンダ8のブレーキ液圧を検出する液圧検出手段を構成している。この液圧センサ29は、例えばシリンダ側液圧配管15A内の液圧を検出するもので、マスタシリンダ8からシリンダ側液圧配管15Aを介して後述のESC30に供給されるブレーキ液圧を検出する。本実施の形態において、液圧センサ29は、後述の第2のECU32に電気的に接続されると共に、液圧センサ29による検出信号は、第2のECU32から信号線27を介して第1のECU26にも通信により送られる。
なお、シリンダ側液圧配管15A,15Bの両方にそれぞれ液圧センサ29を設ける構成としてもよい。また、液圧センサ29は、マスタシリンダ8のブレーキ液圧を検出することができれば、マスタシリンダ8のシリンダ本体9に直接取付けるようにしてもよい。さらに、液圧センサ29は、その検出信号を第2のECU32を介さずに第1のECU26に直接入力できるように構成してもよい。
第1のECU26は、その出力側が電動モータ21、車載の信号線27および車両データバス28等に接続されている。そして、第1のECU26は、操作量検出器7、回転センサ21Aおよび液圧センサ29からの検出信号(即ち、操作量、モータ位置およびブレーキ液圧)に従って電動アクチュエータ20によりマスタシリンダ8内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御すると共に、電動倍力装置16が正常に動作しているか否か等を判別する機能も有している。
電動倍力装置16においては、ブレーキペダル5が踏込み操作されると、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ロッド19が前進し、このときの動きが操作量として操作量検出器7により検出される。第1のECU26は、操作量検出器7からの検出信号により電動モータ21に起動指令を出力して電動モータ21を回転駆動し、その回転が減速機構23を介して筒状回転体22に伝えられると共に、筒状回転体22の回転は、直動機構24によりブースタピストン18の軸方向変位に変換される。
このとき、ブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ロッド19と一体的に(または、後述の如く相対変位をもって)前進し、ブレーキペダル5から入力ロッド19に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生する。また、第1のECU26は、液圧センサ29からの検出信号を信号線27から受取ることによりマスタシリンダ8に発生した液圧を監視することができ、電動倍力装置16が正常に動作しているか否かを判別することができる。
次に、第2の制動機構としての液圧供給装置30(即ち、ESC30)について、図1を参照して説明する。
ESCとしての液圧供給装置30は、車両の各車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)側に配設されたホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rとマスタシリンダ8との間に設けられている。液圧供給装置30は、電動倍力装置16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)内に発生したブレーキ液圧を、車輪毎のホイールシリンダ圧として可変に制御して各車輪のホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに個別に供給するホイールシリンダ圧制御装置を構成している。
即ち、液圧供給装置30は、各種のブレーキ制御(例えば、前輪1L,1R、後輪2L,2R毎に制動力を配分する制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御等)をそれぞれ行う場合に、必要なブレーキ液圧をマスタシリンダ8からシリンダ側液圧配管15A,15B等を介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給するものである。
ここで、液圧供給装置30は、マスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)からシリンダ側液圧配管15A,15Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部31A,31B,31C,31Dを介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに分配、供給する。これにより、前述の如く車輪(前輪1L,1R、後輪2L,2R)毎にそれぞれ独立した制動力が個別に付与される。液圧供給装置30は、後述の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′と、液圧ポンプ44,44′を駆動する電動モータ45と、液圧制御用リザーバ49,49′等とを含んで構成されている。
第2のECU32は、液圧供給装置30を電気的に駆動制御するホイール圧制御ユニット(即ち、第2の制御回路)としての液圧供給装置用コントローラである。該第2のECU32は、その入力側が、液圧センサ29、信号線27および車両データバス28等に接続されている。第2のECU32の出力側は、後述の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′、電動モータ45、信号線27および車両データバス28等に接続されている。
ここで、第2のECU32は、液圧供給装置30の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′および電動モータ45等を後述の如く個別に駆動制御する。これによって、第2のECU32は、ブレーキ側配管部31A〜31Dからホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4R毎に個別に行うものである。
即ち、第2のECU32は、液圧供給装置30(ESC)を作動制御することにより、例えば制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両の挙動を安定させる車両安定化制御、坂道発進補助制御、トラクション制御、車両追従制御、車線逸脱回避制御および障害物回避制御等を実行する。
液圧供給装置30は、マスタシリンダ8の一方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管15A)に接続されて左前輪(FL)側のホイールシリンダ3Lと右後輪(RR)側のホイールシリンダ4Rとに液圧を供給する第1液圧系統33と、他方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管15B)に接続されて右前輪(FR)側のホイールシリンダ3Rと左後輪(RL)側のホイールシリンダ4Lとに液圧を供給する第2液圧系統33′との2系統の液圧回路を備えている。ここで、第1液圧系統33と第2液圧系統33′とは同様な構成を有しているため、以下の説明は第1液圧系統33についてのみ行い、第2液圧系統33′については各構成要素に符号に「′」を付し、それぞれの説明を省略する。
液圧供給装置30の第1液圧系統33は、シリンダ側液圧配管15Aの先端側に接続されたブレーキ管路34を有し、ブレーキ管路34は、第1管路部35および第2管路部36の2つに分岐して、ホイールシリンダ3L,4Rにそれぞれ接続されている。ブレーキ管路34および第1管路部35は、ブレーキ側配管部31Aと共にホイールシリンダ3Lに液圧を供給する管路を構成し、ブレーキ管路34および第2管路部36は、ブレーキ側配管部31Dと共にホイールシリンダ4Rに液圧を供給する管路を構成している。
ブレーキ管路34には、ブレーキ液圧の供給制御弁37が設けられ、該供給制御弁37は、ブレーキ管路34を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第1管路部35には増圧制御弁38が設けられ、該増圧制御弁38は、第1管路部35を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第2管路部36には増圧制御弁39が設けられ、該増圧制御弁39は、第2管路部36を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。
一方、液圧供給装置30の第1液圧系統33は、ホイールシリンダ3L,4R側と液圧制御用リザーバ49とをそれぞれ接続する第1,第2の減圧管路40,41を有し、これらの減圧管路40,41には、それぞれ第1,第2の減圧制御弁42,43が設けられている。第1,第2の減圧制御弁42,43は、減圧管路40,41をそれぞれ開,閉する常閉の電磁切換弁により構成されている。
また、液圧供給装置30は、液圧源である液圧発生手段としての液圧ポンプ44を備え、該液圧ポンプ44は電動モータ45により回転駆動される。ここで、電動モータ45は、第2のECU32からの給電により駆動され、給電停止時には液圧ポンプ44と一緒に回転停止される。液圧ポンプ44の吐出側は、逆止弁46を介してブレーキ管路34のうち供給制御弁37よりも下流側となる位置(即ち、第1管路部35と第2管路部36とが分岐する位置)に接続されている。液圧ポンプ44の吸込み側は、逆止弁47,48を介して液圧制御用リザーバ49に接続されている。
液圧制御用リザーバ49は、余剰のブレーキ液を一時的に貯留するために設けられ、ブレーキシステム(液圧供給装置30)のABS制御時に限らず、これ以外のブレーキ制御時にもホイールシリンダ3L,4Rのシリンダ室(図示せず)から流出してくる余剰のブレーキ液を一時的に貯留するものである。また、液圧ポンプ44の吸込み側は、逆止弁47および常閉の電磁切換弁である加圧制御弁50を介してマスタシリンダ8のシリンダ側液圧配管15A(即ち、ブレーキ管路34のうち供給制御弁37よりも上流側となる位置)に接続されている。
液圧供給装置30を構成する各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′、および液圧ポンプ44,44′を駆動する電動モータ45は、第2のECU32から出力される制御信号に従ってそれぞれの動作制御が予め決められた手順で行われる。
即ち、液圧供給装置30の第1液圧系統33は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時において、電動倍力装置16によってマスタシリンダ8で発生した液圧を、ブレーキ管路34および第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに直接供給する。例えば、アンチスキッド制御等を実行する場合は、増圧制御弁38,39を閉じてホイールシリンダ3L,4Rの液圧を保持し、ホイールシリンダ3L,4Rの液圧を減圧するときには、減圧制御弁42,43を開いてホイールシリンダ3L,4Rの液圧を液圧制御用リザーバ49に逃がすように排出する。
また、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ホイールシリンダ3L,4Rに供給する液圧を増圧するときには、供給制御弁37を閉弁した状態で電動モータ45により液圧ポンプ44を作動させ、該液圧ポンプ44から吐出したブレーキ液を第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに供給する。このとき、加圧制御弁50が開弁されていることにより、マスタシリンダ8側から液圧ポンプ44の吸込み側へとリザーバ14内のブレーキ液が供給される。
このように、第2のECU32は、車両運転情報等に基づいて供給制御弁37、増圧制御弁38,39、減圧制御弁42,43、加圧制御弁50および電動モータ45(即ち、液圧ポンプ44)の作動を制御し、ホイールシリンダ3L,4Rに供給する液圧を適宜に保持したり、減圧または増圧したりする。これによって、前述した制動力分配制御、車両安定化制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
一方、電動モータ45(即ち、液圧ポンプ44)を停止した状態で行う通常の制動モードでは、供給制御弁37および増圧制御弁38,39を開弁させ、減圧制御弁42,43および加圧制御弁50を閉弁させる。この状態で、ブレーキペダル5の踏込み操作に応じてマスタシリンダ8の第1のピストン(即ち、ブースタピストン18、入力ロッド19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9内を軸方向に変位するときに、第1の液圧室11A内に発生したブレーキ液圧が、シリンダ側液圧配管15A側から液圧供給装置30の第1液圧系統33、ブレーキ側配管部31A,31Dを介してホイールシリンダ3L,4Rに供給される。第2の液圧室11B内に発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管15B側から第2液圧系統33′、ブレーキ側配管部31B,31Cを介してホイールシリンダ3R,4Lに供給される。
また、電動倍力装置16の失陥によりブースタピストン18を電動モータ21で作動できない場合には、第1,第2の液圧室11A,11B内に発生したブレーキ液圧を第2のECU32に接続された液圧センサ29により検出して、この検出値をブレーキペダル5の操作量として検出値に応じたホイールシリンダ圧となるように各ホイールシリンダを増圧するアシスト制御を行う。アシスト制御では、加圧制御弁50と増圧制御弁38,39とを開弁させ、供給制御弁37および減圧制御弁42,43を適宜開,閉弁させる。この状態で、電動モータ45により液圧ポンプ44を作動させ、該液圧ポンプ44から吐出するブレーキ液を第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに供給する。これにより、マスタシリンダ8側で発生するブレーキ液圧に基づいて、液圧ポンプ44から吐出するブレーキ液によってホイールシリンダ3L,4Rによる制動力を発生することができる。
なお、液圧ポンプ44としては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。電動モータ45としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、本実施の形態においては、車載性等の観点からDCモータとしている。
また、液圧供給装置30の各制御弁37,38,39,42,43,50は、その特性を夫々の使用態様に応じて適宜設定することができるが、このうち供給制御弁37および増圧制御弁38,39を常開弁とし、減圧制御弁42,43および加圧制御弁50を常閉弁とすることにより、第2のECU32からの制御信号がない場合にも、マスタシリンダ8からホイールシリンダ3L〜4Rに液圧を供給することができる。従って、ブレーキシステムのフェイルセーフおよび制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましいものである。
車両に搭載された車両データバス28には、電力充電用の回生協調制御装置51が接続されている。回生協調制御装置51は、第1,第2のECU26,32と同様にマイクロコンピュータ等からなり、車両の減速時および制動時等に各車輪の回転による慣性力を利用して、車両駆動用の駆動モータ(図示せず)を制御することにより、このときの運動エネルギを電力として回収しつつ制動力を得るものである。
ここで、回生協調制御装置51は、車両データバス28を介して第1のECU26と第2のECU32とに接続され、回生制動制御手段を構成している。さらに、回生協調制御装置51は、車載の電源ライン52と接続されている。この電源ライン52は、車載バッテリ(図示せず)からの電力を第1,第2のECU26,32および回生協調制御装置51等に給電するものである。
次に、マスタ圧制御ユニット(即ち、第1のECU26)による電動倍力装置16の制御内容について、図3を参照して説明する。
第1のECU26は、制御入力Sx(Sx=Sa)に対するプライマリピストン(Pピストン)、即ちブースタピストン18の目標位置(以下、目標Pピストン位置という)を、図4に示す特性線58の如く決定する目標ピストン位置算出部53と、制御入力Sx(Sx=Sb)に対する液圧の関係を表す基準液圧特性(図5に示す特性線59参照)を後述の方法により補正し、目標液圧特性(即ち、液圧特性データ)を算出する液圧特性算出手段としての目標液圧特性算出部54と、該目標液圧特性算出部54で算出した目標液圧特性(例えば、図7の特性線61または図8の特性線62による液圧特性データ)から、前記制御入力Sbに対する目標液圧値を算出する目標液圧算出手段としての目標液圧算出部55と、制御切替手段としての制御切替部56と、モータ制御手段としてのモータ制御部57とを備えている。
これらの目標ピストン位置算出部53、目標液圧特性算出部54、目標液圧算出部55、制御切替部56およびモータ制御部57は、第1のECU26のハードウェアとして回路的に構成されているものではなく、第1のECU26が有する機能の概念として構成されている。ここで、制御切替部56は、目標ピストン位置算出部53により算出された目標Pピストン位置と、目標液圧算出部55により算出された目標液圧とのいずれかに基づいて電動モータ21の作動を制御するかを決定し、その制御を実行するものである。モータ制御部57は、前記制御切替部56により決定された目標Pピストン位置(または、目標液圧)に従って電動モータ21を駆動制御するものである。
図2に示すように、第1のECU26には、記憶装置としてのメモリ26Aが設けられ、該メモリ26Aは、フラッシュメモリ、EEPROM,ROM,RAM等により構成されている。このメモリ26Aには、例えば図4に示すような、電動倍力装置16が搭載された車両毎に予め決められている基準の下流剛性に対し、ブレーキペダル5の操作量Sとブースタピストン18の目標位置Poとの関係を、特性線58として設定した基準位置の特性データ(マップ)と、図5に示すようなブレーキペダル5の操作量Sと目標液圧Prとの関係を、特性線59として設定した基準液圧の特性データ(マップ)と、例えば図7、図8に示すような特性線61,62による液圧特性データ(マップ)と、後述の図9〜図11に示す制御処理用のプログラム等とが格納されている。
なお、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rの状態である下流剛性とは、車両に制動力を付与するホイールシリンダ3L,3R、4L,4R側でのブレーキ液の必要液量、必要液圧のことを指しており、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rは、使用状況によって目標減速度に対する必要液量、必要液圧が変化することが知られている。具体的には、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに設けられている摩擦パッド(図示せず)が温度や摩耗具合によってその硬さが変わる。例えば、摩擦パッドの温度が上がって軟らかくなった場合には、下流剛性が低くなる傾向にあり、摩擦パッドの摩耗が進んで硬くなった場合には、下流剛性が高くなる傾向にあることが知られている。また、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rのエアブリード(エア抜き作業)を行った場合には、下流剛性がエアブリードを行う前よりも上がる。
目標ピストン位置算出部53は、予め設定されている基準の下流剛性に対し、例えばブレーキペダル5の操作量Sを制御入力Saとして用い、図4に示す基準位置の特性線58による特性データ(ブレーキペダル5の操作量Sに対するブースタピストン18の目標位置Poの関係をマップ化したデータ)をメモリ26Aから読出す。この上で、目標ピストン位置算出部53は、この基準位置の特性データを用い、制御入力Saに対して目標Pピストン位置(即ち、ブースタピストン18の目標位置Po)を算出する。
液圧特性算出手段としての目標液圧特性算出部54は、ブレーキペダル5の操作量S(即ち、図3に示す制御入力Sb)と、目標ピストン位置算出部53から出力される目標Pピストン位置(即ち、モータ位置)と、液圧センサ29から出力されるブレーキ液圧(即ち、液圧Pr)とにより、下流剛性(ホイールシリンダの状態)に応じたブレーキ特性を実現するための前記操作量に対する液圧特性データ(例えば、図7示す特性線61または図8に示す特性線62参照)を算出するものである。
具体的には、目標液圧特性算出部54は、予め設定されている基準の下流剛性に対し、例えばブレーキペダル5の操作量Sを制御入力Sbとして用い、図5に示す基準液圧の特性線59による特性データ(ブレーキペダル5の操作量Sに対する目標液圧Prの関係)をメモリ26Aから読出す。この上で、目標液圧特性算出部54は、この特性データを後述の如く補正して目標の液圧特性データ(例えば、図7の特性線61または図8の特性線62による液圧特性データ)を算出する。そして、目標液圧算出部55は、目標液圧特性算出部54で算出した目標の液圧特性データから、ブレーキペダル5の操作量S(制御入力Sb)に対する目標液圧値を算出する。
制御切替部56は、目標ピストン位置算出部53により算出された目標Pピストン位置と目標液圧算出部55により算出された目標液圧値とのいずれか一方を所定の判定条件に従って選択する。このとき、制御切替部56は、目標Pピストン位置(または、目標液圧値)に対し、その判定条件に応じて制限をかけたり、または補正を行なったりしてもよい。
モータ制御部57は、制御切替部56により選択された目標Pピストン位置(または、目標液圧値)に基づいて、電動モータ21に制御駆動信号を出力する。これにより、三相モータ制御回路であるモータ制御部57は、目標Pピストン位置(または、目標液圧値)が得られるように電動倍力装置16の電動モータ21の作動を制御する。
本実施の形態によるブレーキ制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、車両の運転者がブレーキペダル5を踏込み操作すると、これにより入力ロッド19が矢示A方向に押込まれると共に、電動倍力装置16の電動アクチュエータ20が第1のECU26により作動制御される。即ち、第1のECU26は、操作量検出器7からの検出信号により電動モータ21に起動指令を出力して電動モータ21を回転駆動し、その回転が減速機構23を介して筒状回転体22に伝えられると共に、筒状回転体22の回転は、直動機構24によりブースタピストン18の軸方向変位に変換される。
これにより、電動倍力装置16のブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ロッド19とほぼ一体的に前進し、ブレーキペダル5から入力ロッド19に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生する。
また、第1のECU26は、液圧センサ29からの検出信号を信号線27から受取ることによりマスタシリンダ8に発生した液圧を監視し、電動倍力装置16の電動アクチュエータ20(電動モータ21の回転)をフィードバック制御する。これにより、第1のECU26は、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生するブレーキ液圧を、ブレーキペダル5の踏込み操作量に基づいて可変に制御することができる。また、第1のECU26は、操作量検出器7、回転センサ21Aおよび液圧センサ29からの検出信号に従って電動倍力装置16が正常に動作しているか否かを判別することができる。
一方、ブレーキペダル5に連結された入力ロッド19は、第1の液圧室11A内の圧力を受圧し、これをブレーキ反力としてブレーキペダル5へと伝える。この結果、車両の運転者には入力ロッド19を介して踏み応えが与えられるようになり、これによって、ブレーキペダル5の操作感を向上でき、ペダルフィーリングを良好に保つことができる。
このように、第1のECU26により電動倍力装置16を制御する場合には、操作量検出器7によって検出したブレーキペダル5の操作量(変位量、踏力等)に基づき、電動モータ21を作動させてブースタピストン18の位置を制御して液圧を発生させる。このとき、マスタシリンダ8(第1の液圧室11A)内に発生した液圧は、反力となって入力ロッド19からブレーキペダル5にフィードバックされる。そして、ブースタピストン18と入力ロッド19との受圧面積比及び入力ロッド19に対するブースタピストン18の位置関係によって、ブレーキペダル5の操作量と発生液圧との比である倍力比を調整することができる。
例えば、入力ロッド19の変位に対してブースタピストン18を追従させ、入力ロッド19に対するブースタピストン18の位置関係が等しくなるようにブースタピストン18を制御することにより、入力ロッド19とブースタピストン18との受圧面積比によって決まる一定の倍力比を得ることができる。また、入力ロッド19の変位に対して、比例ゲインを乗じて、入力ロッド19に対するブースタピストン18の位置関係を変化させることにより、倍力比を変化させることができる。
これにより、予め設定されている下流剛性を考慮し、設定されているブレーキペダル5の操作量に対して、必要制動力(液圧)特性を可変とすることができ、車両の運転者が要求するブレーキペダル5の操作量に対する車両減速度を可変とすることができる。さらに、第1のECU26は、車両データバス28を介して回生協調制御装置51(即ち、回生制動システム)からのCAN信号が入力され、この作動信号に基づいて回生制動中か否かを判断し、回生制動時には回生制動分を差引いた液圧を発生させるように倍力比を調整して、回生制動分と液圧による制動力との合計で所望の制動力が得られるようにする回生協調制御を実行することができる。
次に、各車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)側のホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rとマスタシリンダ8との間に設けられた液圧供給装置30は、電動倍力装置16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)内に発生したブレーキ液圧を、シリンダ側液圧配管15A,15Bから液圧供給装置30内の液圧系統33,33′およびブレーキ側配管部31A,31B,31C,31Dを介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rへと可変に制御しつつ、車輪毎のホイールシリンダ圧として分配して供給する。これにより、車両の車輪(各前輪1L,1R、各後輪2L,2R)毎にホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rを介して適正な制動力が付与される。
ここで、液圧供給装置30を制御する第2のECU32は、操作量検出器7からの検出信号を信号線27から受取ることによりブレーキペダル5の踏込み操作量を監視することができ、液圧センサ29からの検出信号によりブレーキ液圧を監視し続けることができる。そして、ブレーキ操作時には、操作量検出器7からの検出信号を通信で受取ることにより、第2のECU32から電動モータ45に制御信号を出力して液圧ポンプ44,44′を作動できると共に、各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′を選択的に開,閉弁することができる。
このため、車両の制動時等には、ブレーキペダル5の踏込み操作に従ってマスタシリンダ8(及び/又は液圧ポンプ44,44′)からホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rにそれぞれ供給するブレーキ液圧を個別に増圧、保持または減圧することができ、ブレーキペダル5の踏込み操作、車両の運転状態等に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給できると共に、車両の制動力制御を高精度に行うことができる。
次に、第1のECU26による電動モータ21の駆動制御(即ち、ブレーキペダル5の操作量Sに応じた電動モータ21の制御処理)について、図3を参照して説明する。第1のECU26は、電動アクチュエータ20の電動モータ21を制御する手段として、目標ピストン位置に応じてピストン位置を制御するピストン位置制御機能と、目標液圧に応じてブレーキ液圧を制御する液圧制御機能とを備えている。
第1のECU26がピストン位置制御を行う場合は、例えばブレーキペダル5の操作量Sを制御入力Saとして用い、目標ピストン位置算出部53は、ブレーキペダル5の操作量Sに対するブースタピストン18の目標Pピストン位置(即ち、目標位置Po)の関係を表す基準位置特性(図4に示す特性線58)から、制御入力Saに対してブースタピストン18の目標位置Poaを算出する。
第1のECU26が液圧制御を行う場合は、例えばブレーキペダル5の操作量Sを制御入力Sbとして用い、目標液圧特性算出部54は、ブレーキペダル5の操作量Sに対する目標液圧Prの関係を表す基準液圧特性(図5に示す特性線59)を、後述の方法(図6に示す特性線59,60)により補正して目標の液圧特性データを算出する。そして、目標液圧算出部55は、目標液圧特性算出部54で算出した目標の液圧特性データから、制御入力Sb(操作量S)に応じた目標液圧値を算出する。
ここで、ピストン位置制御とは、ブレーキペダル5の操作量Sに対応させてブースタピストン18のピストン位置(即ち、電動モータ21の回転位置)を制御するだけであり、この間のブレーキ液圧が、液圧センサ29の検出信号(検出圧力)に応じてフィードバック制御されることはない。このため、ピストン位置制御によるブレーキ特性は、マスタシリンダ8内に送り込んだブレーキ液の液量に従って発生する液圧の特性となり、この特性(液圧値)は結果的に下流剛性に応じて変化する。これ以降もピストン位置制御を行う場合には、操作量Sに従って発生する液圧は、下流剛性に応じて変化する液圧特性となる。
一方、液圧制御を行う場合は、ブレーキペダル5の操作量Sに対して図5に示す液圧Prを制御(即ち、液圧センサ29からの検出信号に応じてフィードバック制御)するため、操作量Sに対する目標液圧の特性(例えば、特性線59)を固定すると、操作量Sに応じて発生する液圧Pr(即ち、液圧センサ29で検出されるブレーキ液圧)は、下流剛性に拘わりなく固定された液圧特性の液圧値となるように制御される。従って、液圧制御中も下流剛性なりの液圧特性となるように、下流剛性に応じて目標液圧を変化させる必要がある。即ち、本来の目標液圧を実現するためには、下流剛性の変化に応じて必要なブレーキ液量を発生できるように、ブースタピストン18を進退移動させる電動モータ21の回転制御を補正する必要がある。
また、前述の通り、回生協調制御中は回生による制動力と液圧による制動力との合計値が、運転者による所望の制動力と一致するように、マスタシリンダ8からは回生制動分を差し引いた液圧を発生させる必要がある。しかし、ピストン位置制御を行う場合には、このときに発生する液圧(即ち、制動力)が下流剛性に応じて変化するため、ブレーキペダル5の操作量Sに対して発生すべき制動力を決定することが難しくなり、実際には回生協調制御を行うことができなくなる。一方、液圧制御を行う場合は、操作量Sに対して液圧(即ち、制動力)が決められるため、液圧制御時においては回生協調制御を実施することができる。
そこで、第1のECU26は、下流剛性なりの液圧特性としつつ、回生協調制御を実施できるようにするため、下流剛性なりの液圧特性が得られるまでは制御切替部56によってピストン位置制御を行い、下流剛性なりの液圧特性(即ち、後述の図6に実線で示す特性線60の如く下流剛性に応じた液圧特性データ)を算出できるようになった以降は、制御切替部56で液圧制御に切替えるように、目標ピストン位置算出部53と目標液圧算出部55との制御切替えを行う構成としている。このとき、制御切替部56は、目標ピストン位置および目標液圧値に対して、制限または補正を行なってもよい。
モータ制御部57は、制御切替部56によって選択された目標ピストン位置または目標液圧に基づいて、目標ピストン位置または目標液圧値が達成されるように電動倍力装置16の電動モータ21の作動を制御する。このとき、マスタシリンダ8で発生するブレーキ液圧は、ブレーキペダル5の操作に応じた入力ロッド19の移動量(即ち、ペダル操作量)と、電動モータ21の作動に応じたブースタピストン18の移動量とにより増減されるものである。
次に、目標液圧特性算出部54で使用する目標液圧特性(即ち、下流剛性に応じた液圧特性データ)の算出方法について、図3、図5および図6を参照して説明する。
まず、図3に示す目標ピストン位置算出部53で操作量Sに応じたピストン位置制御を行い、マスタシリンダ8で発生するブレーキ液圧が予め設定された切替基準液圧Pkとなったところで、目標液圧特性算出部54は、図5に示す基準液圧特性を用いて特性線59から切替基準液圧Pkに対する切替基準操作量Skを演算する。即ち、液圧センサ29で検出されるマスタシリンダ8のブレーキ液圧が切替基準液圧Pkに達したときに、目標液圧特性算出部54は、図5に示す特性線59から切替基準液圧Pkに対する切替基準操作量Skを演算する。
次に、目標液圧特性算出部54は、図6に示す如く、切替基準操作量Skとブレーキペダル5の実操作量S1(操作量検出器7で検出された実際の操作量)との差分である偏差を、切替操作量偏差△S(ΔS=S1−Sk)として算出する。ブレーキペダル5の実操作量S1は、図3中の目標液圧特性算出部54に入力される制御入力Sbに該当する。
切替基準液圧Pkとしては、切替基準液圧Pk以降の操作量Sの変化に対する液庄の変化特性が、下流剛性による変化を許容できるような液圧値に設定しておく。この場合、切替基準液圧Pkの具体例としては、図2に示す第1のサプライポート9Aがブースタピストン18により第1の液圧室11Aから遮断され、第2のサプライポート9Bが第2のピストン10により第2の液圧室11Bから遮断されて、マスタシリンダ8からブレーキ液圧が発生し始めていることを、液圧センサ29により検出できるような液圧値に設定することができる。
この上で、目標液圧特性算出部54は、図6中に点線で示す特性線59を切替操作量偏差△S分だけ操作量Sの方向にオフセットさせた液圧特性を、図6中に実線で示す特性線60のように目標の液圧特性データとして算出する。また、前述の如く演算して求めた切替操作量偏差△Sと特性線60による液圧特性データとは、メモリ26Aに更新可能に記憶させる。なお、特性線60により例示した液圧特性データが、実際にピストン位置制御で液圧を発生させた際の特性と一致しない場合は、実際にピストン位置制御で液圧を発生させた際の特性と一致するように、前記液圧特性データを補正してもよい。
ここで、目標液圧特性算出部54は、図6に例示した特性線60による液圧特性データの算出処理を所定の条件を満たした場合にのみ実施し、これ以外のとき(例えば、下流剛性が実質的に変化していない場合)は、既に算出されている前回までの液圧特性データを用いる構成としている。これにより、目標液圧特性算出部54で液圧特性データの算出処理を実施する場合には、図7に実線で示す特性線61のように、ブレーキペダル5の操作に伴って液圧が切替基準液圧Pkとなるまではピストン位置制御を行い、これ以降は、前述の如く算出された目標の液圧特性データ(例えば、図6に示す特性線60に沿った目標の液圧特性データ)に基づいて液圧制御を行うように、制御切替部56で目標ピストン位置算出部53と目標液圧算出部55との制御切替えを行う。
一方、目標液圧特性算出部54で目標の液圧特性データの算出処理を実施しない場合(即ち、前述した所定の条件を満たしていない場合であり、一例としては下流剛性が実質的に変化していない場合)のペダル操作時は、図8に実線で示す特性線62のように、既に算出された目標の液圧特性データを用いてペダル操作の開始直後から液圧制御を行うように、目標液圧算出部55への制御切替えを制御切替部56により行う。
なお、図8に示す特性線62による目標の液圧特性データに従って液圧制御を実施した場合、操作量Sに対して液圧Prが零となる領域では、ブースタピストン18がマスタシリンダ8の軸方向に移動せず、液圧が発生した瞬間にブースタピストン18が急に動き始める可能性も考えられる。このようなブースタピストン18の動きを防ぐために、必要に応じては、液圧が発生するまではビストン位置制御でブースタピストン18を移動させてもよい。
而して、本実施の形態では、運転者がブレーキペダル5を踏込み操作する度毎(即ち、電動倍力装置16による倍力操作時)に、目標液圧特性算出部54で液圧特性データの算出処理を実施するか否かを、所定の条件(例えば、下流剛性が変化したか否かの判定基準)に従って決める。そして、目標となる液圧特性データを新しく算出する必要がない場合には、これまでのブレーキペダル操作時に用いた前回の液圧特性データまたは過去データを、目標液圧算出部55(図3参照)により目標の液圧特性データとして採用する。
一方、ブレーキペダル操作時に所定の条件(例えば、下流剛性が変化しているような判定条件)を満たした場合には、目標液圧特性算出部54で新しく液圧特性データの算出処理を行うようにし、新しく算出された液圧特性データ(以下、液圧特性算出データという)を、図9〜図11に示す制御処理に従って目標の液圧特性データとして目標液圧算出部55で採用するか否かを決めるようにしている。このため、以下の説明では、目標液圧特性算出部54で算出された液圧特性データを「液圧特性算出データ」とし、目標液圧算出部55で採用された目標となる液圧特性データを「液圧特性保存データ」と区別して表現する。
次に、ブレーキペダル5の踏込み操作時に、目標液圧特性算出部54で算出された液圧特性算出データのうち、いずれを目標液圧算出部55で目標の液圧特性データとして採用(決定)するかの処理手順について、図9〜図11の流れ図を参照して説明する。
まず、図9に示す処理動作がスタートすると、ステップ1で過去の液圧特性保存データを例えばメモリ26Aから読出す。この液圧特性保存データは、予めメモリ26Aに更新可能に保存されている液圧特性データ(例えば、図8に示す特性線62によるデータ)であり、前回のブレーキペダル操作時に目標液圧算出部55で採用された目標となる液圧特性データ、または新車の段階で予め初期データとして更新可能に格納されている液圧特性保存データである。
次のステップ2では、目標液圧特性算出部54によって液圧特性データが算出済であるか否かを判定する。即ち、ステップ2の判定処理は、液圧特性データの算出完了判定手段を構成し、ブレーキペダル5の操作開始時に目標液圧特性算出部54で既に算出された「液圧特性算出データ」が、メモリ26Aに記憶(保存)されているか否かを判定する。ステップ2で「NO」と判定したときには、次のステップ3に移って目標液圧特性算出部54により、例えば図6に示す特性線60のように液圧特性データの算出処理を行い、新たな液圧特性算出データを作成する。
ここで、ステップ2で「NO」と判定される場合とは、車両のエンジン(図示せず)の始動により電動倍力装置16が起動された後に、初回のブレーキペダル操作が行われる場合等が一例として挙げられる。このような場合には、ステップ3で目標液圧特性算出部54により液圧特性算出データの算出処理が完了するまでは、図3に示す制御切替部56により目標ピストン位置算出部53側が選択される。そして、モータ制御部57は、ブレーキペダル5の操作量S(制御入力Sa)に応じてブースタピストン18のピストン位置を制御するピストン位置制御を実施する。
即ち、このような場合は、例えば図7に示す特性線61のように、マスタシリンダ8で発生するブレーキ液圧が切替基準液圧Pkに達するまではピストン位置制御を実施し、切替基準液圧Pkに達した以降(即ち、下流剛性なりの液圧特性を算出できるようになった以降)は、制御切替部56で液圧制御に切替えるように、目標ピストン位置算出部53から目標液圧算出部55へと制御切替えを行う。そして、モータ制御部57は、例えば図7に示す特性線61に沿った目標液圧値となるように電動モータ21の作動を制御する。
但し、ステップ3で目標液圧特性算出部54により液圧特性算出データの算出処理を行っている途中で、運転者によるブレーキペダル操作が終了(ペダル操作が解除)された場合、液圧特性算出データの算出処理は、未完了として判断される。このため、次回のブレーキペダル操作時には、ステップ2で「NO」と判定され、ステップ3以降の処理(即ち、目標液圧特性算出部54による液圧特性算出データの算出処理)が最初から行われることになる。
次に、ステップ3で液圧特性算出データの算出処理が完了したら、ステップ4に移って「差分の絶対値は所定の閾値以内か」否かを判定する。即ち、ステップ4の処理は、差分演算手段としての機能を有し、先にステップ3で算出した液圧特性算出データと過去の液圧特性保存データ(ステップ1参照)との差分を絶対値として演算する。この上で、ステップ4では、前記差分の絶対値が予め決められた所定の閾値の範囲内にあるか否かを判定する。ここで、ステップ4の判定処理は、例えば下流剛性が大きく変化しているか否かを、差分の絶対値によって判断するための処理である。
例えばホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rのキャリパを交換したり、摩擦パッドを交換したり、またはエアブリードを行ったりした場合には、下流剛性が大きく変化する場合があるので、前記差分の絶対値は、所定の閾値よりも大きくなる。従って、この場合は、過去の液圧特性データ(液圧特性保存データを含む)を更新して書き直すために、ステップ4で「NO」と判定され、後述のステップ10では差分大処理を行う。一方、差分の絶対値が所定の閾値以内にある場合には、下流剛性が大きくは変化していないと判断することができ、過去の液圧特性データは、必ずしも更新して書き直す必要はない。
そこで、ステップ4で「YES」と判定した場合は、次のステップ5で電動倍力装置16の起動後に目標液圧特性算出部54により液圧特性算出データの算出処理が完了している(即ち、液圧特性データ算出済み)とし、これ以降にステップ7を経由して行うステップ2の判定処理(算出完了判定手段)では、「YES」と判定されるように設定(例えば、フラグ処理により設定)する。
次のステップ6では、ステップ3で算出された液圧特性算出データと過去の液圧特性保存データ(ステップ1参照)とを比較し、ブレーキ特性が低くなる方(即ち、ブレーキペダル5の操作量Sに対する目標液圧値が低くなる方)の液圧特性データを、目標液圧算出部55で採用する目標の液圧特性データとしてメモリ26Aに書込むようにする。そして、この場合には、制御切替部56でピストン位置制御から液圧制御に切替えて、目標液圧算出部55で採用した液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値に応じた液圧制御を実施する。そして、次のステップ7でリターンする。
即ち、図7に示す特性線61の場合を例に挙げると、マスタシリンダ8で発生するブレーキ液圧が切替基準液圧Pkに達するまでは、前述の如くピストン位置制御を実施し、切替基準液圧Pkに達すると、これ以降は制御切替部56で液圧制御に切替えるように、目標ピストン位置算出部53から目標液圧算出部55へと制御切替えを行う。そして、モータ制御部57は、目標液圧算出部55で採用した液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値となるように電動倍力装置16の電動モータ21の作動を制御する。
ここで、ステップ6の処理でブレーキ特性が低くなる方の液圧特性データを目標液圧算出部55で採用する理由は、この液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値に応じた液圧制御を実施するときに、より安全サイドで液圧制御を行うようにするためである。即ち、ブレーキペダル5の操作に対して液圧制御で電動モータ21を駆動するうちに、仮にブースタピストン18が過大にシリンダ本体9の底部側へと移動してフルストロークに達してしまうと、これ以上に高い目標液圧値が必要なときにも、これ以上の液量をマスタシリンダ8から発生できなくなる。
そこで、このような事態になる可能性を低減するために、ステップ6の処理ではブレーキ特性が低くなる方の液圧特性データを採用し、ブースタピストン18の過大な移動を抑えるようにしている。このため、ステップ6の処理を繰返すことにより、ブレーキ特性が余分に低くなることも考えられる。しかし、このような場合は、例えばステップ10〜13で、後述の如く差分大処理等が行われるので、目標液圧算出部55で採用する液圧特性データは、下流剛性の変化を反映したデータへと漸次補正されるようになる。そして、このように下流剛性の変化を反映した液圧特性データが、目標の液圧特性保存データとしてメモリ26Aに格納されるものである。
一方、ステップ2で「YES」と判定したときには、次のステップ8で、下流剛性が変化しているか否かを判定する。この判定処理については、図11を参照して後述する。しかし、ステップ8で「NO」と判定したときには、下流剛性は実質的に変化していない場合である。このため、次のステップ9では、前回のブレーキペダル操作時に用いた液圧特性保存データを採用する。そして、制御切替部56では液圧制御を選択し、例えば図8に示す特性線62のように、モータ制御部57はブレーキペダル操作開始直後から液圧制御を実施する。
ステップ4で「NO」と判定した場合は、前記差分の絶対値が所定の閾値よりも大きくなり、下流剛性が大きく変化している可能性が高いと判断することができる。即ち、このような場合は、過去の液圧特性保存データを更新して書き直す必要があるので、次のステップ10で後述の差分大処理を実行する。次のステップ11では、ステップ10の判定処理に従って液圧特性算出データが使用可能であるか否かを、後述のフラグ処理等に従って判定する。ステップ11で「NO」と判定する間は、前記ステップ9の処理により前回のブレーキペダル操作時に用いた液圧特性データ(液圧特性保存データを含む)を採用する。この場合には、既にステップ3で目標液圧特性算出部54により液圧特性算出データの算出処理が完了し、ブレーキ液圧が切替基準液圧Pkに達しているので、例えば図7に示す特性線61のように、切替基準液圧Pkに達した以降の液圧制御を前回の液圧特性データに基づいて実施する。
一方、ステップ11で「YES」と判定したときには、前記ステップ3で算出された液圧特性算出データが使用可能と判断することができるので、次のステップ12では、目標液圧特性算出部54により液圧特性算出データの算出処理が完了(即ち、液圧特性データ算出済み)であるとする。次のステップ13では、ステップ3で算出された今回の液圧特性算出データを、目標液圧算出部55で採用する目標の液圧特性データとしてメモリ26Aに書込むようにする。そして、この場合には、制御切替部56でピストン位置制御から液圧制御に切替えて、目標液圧算出部55で採用した液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値に応じた液圧制御を実施する。そして、次のステップ7でリターンする。
次に、ステップ10の差分大処理について、図10を参照して説明する。図10の処理動作が開始されると、ステップ21において、先のステップ3で算出した液圧特性算出データをメモリ26Aに保存する。なお、ステップ21で保存する液圧特性算出データは、先のステップ1でメモリ26Aから読出した液圧特性保存データとは別のデータであり、予め決められた所定回数(プログラムサイクル)分の過去データとしてメモリ26Aにそれぞれ保存される。
ここで、ステップ21の処理は特性算出データ保存手段を構成し、この特性算出データ保存手段は、ステップ4の前記差分演算手段で演算された差分の絶対値が予め決められた回数だけ連続して前記閾値よりも大きいと判定されている間にわたり、目標液圧特性算出部54によりそれぞれ算出された複数の液圧特性算出データ(前記所定回数分の過去データ)を保存する。
次のステップ22では、前記差分の絶対値が連続して所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。これにより、前記ステップ4で「NO」と判定された後に、前記ステップ10の差分大処理が前回のブレーキペダル操作時も実施されたか否かを判別することができる。そして、ステップ22で「NO」と判定したときには、前記差分の絶対値が前記閾値より連続して大きくはなっていないので、次のステップ23で、前記ステップ3による液圧特性算出データは使用不可として、例えばフラグ処理を行う。そして、次のステップ24でリターンする。
一方、前記ステップ22で「YES」と判定した場合は、前記差分の絶対値が前記閾値より連続して大きくなっている。そこで、次のステップ25では、前記ステップ10の差分大処理が連続して実施された回数は、所定の回数(例えば、3〜10回程度)となったか否かを判定する。ステップ25で「NO」と判定する間は、所定の回数に達していないので、前記ステップ23に移って前記液圧特性算出データは使用不可として、例えばフラグ処理を行う。そして、次のステップ24でリターンする。
一方、ステップ25で「YES」と判定したときは、所定の回数だけ連続して前記差分の絶対値が前記閾値より大きくなっているので、この場合は、ステップ26で、前記ステップ3で繰返し算出されて、前記ステップ21で保存した過去(所定の回数分)の液圧特性算出データのばらつきが所定範囲内であるか否かを判定する。ステップ26で「YES」と判定したときには、所定回数分の過去の液圧特性算出データのばらつきは所定範囲内にあると判断できる。即ち、目標液圧特性算出部54によりそれぞれ算出された複数の液圧特性算出データ(前記所定回数分の過去データ)は、大きく変動することなく、下流剛性の変化を正しく反映した液圧特性算出データであると判断することができる。換言すると、下流剛性なりの液圧特性算出データであるから、次のステップ27では、前記ステップ3で算出された最新の液圧特性算出データは使用可能であるとして、例えばフラグ処理を行う。そして、次のステップ24でリターンする。
一方、前記ステップ26で「NO」、即ち、所定回数分の過去の液圧特性算出データのぱらつきは所定範囲外にあると判定した場合は、前記ステップ3で繰返して算出した液圧特性算出データが、下流剛性を正しく反映して算出されていない可能性がある。そこで、この場合は、前記ステップ23に移って前記液圧特性算出データは使用不可として、例えばフラグ処理を行う。そして、次のステップ24でリターンする。
ここで、図9に示す前記ステップ11の処理について述べると、前記ステップ23で液圧特性算出データは使用不可とのフラグ処理がなされた場合は、ステップ11で「NO」と判定し、この場合は、次のステップ9で前回のブレーキペダル操作時に用いた液圧特性保存データを採用する。これにより、制御切替部56では液圧制御を選択し、例えば図7に示す特性線61のように、モータ制御部57は切替基準液圧Pkに達した以降の液圧制御を前回の液圧特性データに基づいて実施する。
一方、前記ステップ23で液圧特性算出データは使用可とのフラグ処理がなされた場合、ステップ11で「YES」と判定するので、この場合は、前述したステップ12,13の処理を行うようにする。即ち、ステップ3で算出された今回の液圧特性算出データ(即ち、最新の液圧特性算出データ)を液圧特性保存データとして採用し、例えば図7に示す特性線61のように、モータ制御部57は、切替基準液圧Pkに達した以降の液圧制御を前回の液圧特性データに基づいて実施する。
次に、ステップ2で「YES」と判定した場合に、前記ステップ8で行う下流剛性の判定処理について、図11を参照して説明する。ステップ8の処理は、前記ステップ3(液圧特性算出手段)による液圧特性算出データの算出処理を行った後に、下流剛性(ホイールシリンダの状態)が変化しているか否かを判定するホイールシリンダ状態判定手段を構成している。
図11の処理動作が開始されると、まず、ステップ31で下流剛性の比較データを読込む。ここで、ステップ8の処理が行われる時点では、制御切替部56でピストン位置制御と液圧制御のいずれを選択するかが決定しておらず、ブレーキ液圧は発生しないため、下流剛性の比較データとしては、例えば、前回のブレーキペダル操作時にマスタシリンダ8に送り出した液量と発生したブレーキ液圧との特性を用いる。具体的には、ステップ2で算出済であると判定された液圧特性データ(例えば、図8に示す特性線62のような前回のブレーキペダル操作時に用いた液圧特性保存データ)を用いることができる。
但し、前回のブレーキペダル操作時に回生協調制御を実施した場合は、ブレーキペダル操作時でも液圧を発生しない可能性があり、液圧を発生させてない前回データは使用できないことがある。このような場合には、車両の停車中に運転者のブレーキペダル5の操作に依らず、電動モータ21を作動させてブースタピストン18を所定ストローク分だけ移動させ、これによりマスタシリンダ8から発生するブレーキ液圧と、このときのストローク量(即ち、電動モータ21の回転量であり、マスタシリンダ8から送り出される液量に対応)との液圧特性を取得し、これを下流剛性の比較データとしてもよい。
次のステップ32では、後述するステップ36の処理でメモリ26Aに保存した下流剛性の過去データを読込む。なお、ステップ32の処理が最初のプログラムサイクルで行われるような場合には、前記ステップ1で読出した液圧特性保存データを、ステップ32で下流剛性の過去データとして読込んでもよい。
次のステップ33では、ステップ31で読込んだ下流剛性の比較データとステップ32で読込んだ下流剛性の過去データとを比較し、下流剛性が変化しているか否かを判定する。ここで、下流剛性が変化していると判定する条件としては、例えば、下流剛性の比較データと下流剛性の過去データとにおいて、所定の液量をマスタシリンダ8に送り出したときに発生した液圧の差(即ち、ブレーキペダル5の操作量に対する比較データと過去データとの液圧値の差)が、所定値以上となった場合を、下流剛性が変化しているとし、所定値より小さい場合は下流剛性が実質的には変化していないとの判定を行う。
即ち、ステップ33で「NO」と判定した場合は、次のステップ34で「下流剛性変化なし」とする、例えばフラグ処理を行う。そして、次なるステップ35でリターンする。これにより、図9に示すステップ8の判定処理では、ステップ34のフラグ処理に従って、その判定結果を「NO」とする処理が行われる。このように、ステップ8の処理で「NO」と判定された場合は、ステップ9で下流剛性なりの液圧特性として前回ブレーキペダル操作時に用いた液圧特性保存データを採用する。そして、制御切替部56では液圧制御を選択し、ブレーキペダル操作開始直後から液圧制御を実施する。
一方、ステップ33で「YES」と判定した場合は、先にステップ31で読込んだ下流剛性の比較データを、次のステップ36で下流剛性の過去データとしてメモリ26Aに保存する。このステップ36で保存された下流剛性の過去データが、次なるプログラムサイクルのステップ32で読込まれる。そして、次のステップ37では「下流剛性変化あり」とする、例えばフラグ処理を行う。即ち、ステップ8の処理の判定結果を「YES」とする。
ステップ8の処理で「YES」(即ち、下流剛性が変化している)と判定した場合は、前記ステップ2で「NO」と判定した場合と同じ処理がなされる。これにより、車両のエンジンを始動して電動倍力装置16を起動した以降に下流剛性が変化した場合には、ステップ3の処理で下流剛性なりの液圧特性算出データが再度算出されることになる。
なお、前記ステップ36の処理は、ステップ33で「YES」と判定するまで実施されないため、ステップ32で読込む「下流剛性の過去データ」としては、例えば初期値として基準となる下流剛性の液圧特性データを用いる。また、ステップ32の処理を実施するときに、下流剛性の過去データが保存されていない場合は、ステップ31で読込んだ下流剛性の比較データを下流剛性の過去データとして使用し、ステップ8の処理の処理終了後にメモリ26Aに保存することも可能である。
ブレーキペダル操作が終了したとき(即ち、操作量Sが零となったとき)に、制御切替部56で液圧制御が選択されている場合は、制御切替部56で液圧制御からピストン位置制御に切替えるようにする。そして、モータ制御部57は、操作量Sが零に対応したピストン位置となるように、電動モータ21の作動を制御する。また、液圧制御が実施できない場合(例えば、ブレーキペダル5を大きく踏込み操作したときに、ブースタピストン18が先にフルストロークに達して目標液圧を実現するために必要な液量を発生できないような場合)も、制御切替部56で液圧制御からピストン位置制御に切替えるようにする。
このような場合は、液圧特性データが実際の下流剛性(ホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rの状態)を反映したデータではなくなっているので、液圧特性算出データの算出は未実施であるとする。これによって、次回のブレーキペダル操作時には、図9のステップ2で「NO」と判定されることになり、次のステップ3で液圧特性算出データを新しく算出することができる。
かくして、このように構成される本実施の形態では、制御手段である第1のECU26は、ブレーキペダル5の操作量、電動モータ21のモータ位置および液圧センサ29によるブレーキ液圧により下流剛性(ホイールシリンダの状態)に応じたブレーキ特性を実現するための前記操作量に対する液圧特性データを算出する液圧特性算出手段(例えば、図9中のステップ3)を有し、この液圧特性算出手段により前記液圧特性データが算出された以降のブレーキペダル操作時は、前回のブレーキペダル操作時に用いた前記液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値に応じて前記電動モータ21の制御を行う構成としている。
このように、ブレーキペダル操作時に下流剛性に応じた液圧特性データを算出することにより、これ以降のブレーキペダル操作時は、前回ブレーキペダル操作時の液圧特性データを用いることが可能となるので、ブレーキペダル操作の開始直後から回生制動を行うことができ、回生協調制御によるエネルギー回収率を向上することができる。また、前回ブレーキペダル操作時の液圧特性データを用いることにより、ブレーキペダル操作を行う度毎にブレーキ特性の変化が生じることはなくなるため、ブレーキの効き、ペダルフィーリングを安定させることができる。
一方、前回のブレーキ操作時に対して今回のブレーキ操作時に下流剛性が変化した場合(即ち、ホイールシリンダ状態判定手段によりホイールシリンダの状態が変化したと判定した場合)は、新しく液圧特性算出データを算出し直す構成としている。これにより、ブレーキペダルの操作に対し下流剛性の変化を反映したブレーキ特性を実現するために必要な液量を確保すべく、ブースタピストン18を進退移動させる電動モータ21の回転制御を最適化することができ、下流剛性なりのブレーキ特性を実現することができる。
第1のECU26は、前記液圧特性算出データを記憶する記憶装置としてのメモリ26Aを備え、該メモリ26Aは車両エンジンの停止(即ち、当該装置である第1のECU26への通電停止)後も前記液圧特性算出データを、例えば液圧特性保存データとして記憶する構成としている。このため、ECU26のメモリ26Aに先に算出した液圧特性算出データを保存し、次回の液圧特性データを算出する際には、新しく算出した液圧特性算出データと先の液圧特性算出データとのうち、ブレーキペダルの操作量に対する目標液圧値が低くなる方の前記液圧特性データを採用することができる。
この結果、ブレーキ特性が低くなる方の液圧特性データを目標液圧算出部55で採用し、この液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値に応じた液圧制御を、より安全サイドで行うことができ、目標液圧を実現するために必要な液量をマスタシリンダ8から発生できなくなる可能性を低減することができる。また、ブレーキ特性が仮に余分に低くなるような場合には、例えばステップ10〜13で差分大処理等を行うことにより、液圧特性データが下流剛性の変化を反映したデータとなるように漸次補正することができる。
また、第1のECU26は、液圧特性算出手段(例えば、図9中のステップ3)により算出した液圧特性算出データと過去の液圧特性算出データとの差分を絶対値として演算する差分演算手段と、該差分演算手段で演算した差分の絶対値が前記閾値よりも大きいと判定されている間は、前記液圧特性算出手段によりそれぞれ算出された複数の液圧特性算出データを保存する特性算出データ保存手段を備えている。このため、前記差分の絶対値が所定の閾値より大きくなる場合(特に、所定回数連続して差分の絶対値が閾値よりも大きくなり、その間に算出された液圧特性算出データのばらつきが所定の範囲内である場合)には、例えばキャリパの交換やエア抜きが実施されて下流剛性が大幅に変化した場合と判断することができる。
そして、このような場合は、新しく算出された液圧特性算出データを、液圧制御を行うための液圧特性データとして採用することにより、過去の液圧特性データに依らず、最新の下流剛性を反映させた液圧特性データを求めることができるので、液圧制御を行うときには操作量に対する下流剛性なりの目標液圧値に応じて電動モータ21を制御することができ、下流剛性なりのブレーキ特性を実現することができる。
従って、本実施の形態によれば、下流剛性を反映させたマスタシリンダ8の実液圧と目標液圧とに乖離が生じるのを抑えることができ、ブレーキペダル5の操作量と車両減速度との関係を、ほぼ均一な安定した特性の関係とすることができる。この結果、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rの一部を構成するキャリパのばらつき、摩擦パッドの温度、摩耗具合、劣化等による液圧回路の剛性(下流剛性)の変化に応じたブレーキ特性を実現することができる。
しかも、ブレーキペダル操作時に下流剛性に応じた液圧特性データを算出することにより、これ以降のブレーキペダル操作時に下流剛性が変化しない間は、前回ブレーキペダル操作時の液圧特性データを用いることが可能となるので、ブレーキペダル操作の開始直後から回生制動を行うことができ、回生協調制御によるエネルギー回収率を向上することができる。このように、本実施の形態によれば、ブレーキペダルの操作に対する車両減速度の変動の抑制と液圧特性データの算出処理による液圧の発生の抑制とを両立させることができる。
なお、上記実施の形態では、図9のステップ2で電動倍力装置16の起動後に液圧特性算出データを算出済であるかの判定を行い、電動倍力装置16の起動後初回のブレーキペダル操作時に液圧特性算出データを算出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ステップ2の処理(算出完了判定手段)を省略することも可能であり、この場合には、ステップ1の読出し処理の次にステップ8の処理を実施する構成とし、下流剛性が変化した場合にのみ液圧特性算出データの算出処理を行う構成としてもよい。
また、上記実施の形態では、例えば図4、図5に示すような特性線58,59による基準位置、基準液圧の特性データを用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、これらの特性データ(即ち、基準特性)は、電動倍力装置が搭載された車両毎に予め決められている基準の下流剛性に基づいて、各車両の個性として設定するようにすればよい。
さらに、前記実施の形態では、ブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生しているか否かを判定するための液圧として、切替基準液圧Pkを設定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば切替基準液圧Pkを、これ以外の予め決められた所定液圧に設定することもできる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、前記制御手段は、ブレーキペダル操作時に前記液圧特性算出手段による前記液圧特性データが算出されているか否かを判定する算出完了判定手段を有し、この算出完了判定手段により前記液圧特性データが算出されていると判定した以降のブレーキペダル操作時には、前回のブレーキペダル操作時に用いた前記液圧特性データに基づいて算出される目標液圧値に応じて前記電動モータの制御を行う構成としている。これにより、初回のブレーキペダル操作時に、下流剛性に応じた液圧特性データを算出して、以降のブレーキペダル操作時は、前回ブレーキペダル操作時の液圧特性データを用いることで、ブレーキペダルの操作に対する車両減速度の変動の抑制と液圧特性データの算出処理による液圧の発生の抑制とを両立させることができる。また、ブレーキペダル操作開始直後から回生制動が可能となり、回生協調制御によるエネルギー回収率を向上させることができる。また、前回ブレーキペダル操作時の液圧特性データを用いることで、ブレーキペダルの操作ごとにブレーキ特性の変化が生じることがなくなり、ブレーキの効き、ペダルフィーリングが安定する。
また、前記液圧特性算出手段は、前記液圧特性データの算出を複数回行い、新しく算出された液圧特性算出データと過去の液圧特性算出データのうち、前記操作量に対する前記目標液圧値が低くなる方の前記液圧特性データを採用する構成としている。このように、例えば記憶装置に保存された複数の液圧特性データのうち、ブレーキ特性が低くなる方を用いることで、下流剛性の変化によりブレーキ特性を実現するために必要な液量を実現できなくなる可能性を低減することができる。
前記制御手段は、前回の前記液圧特性算出手段による前記液圧特性算出データの算出時から、前記ホイールシリンダの状態が変化しているか否かを判定するホイールシリンダ状態変化判定手段を備え、該ホイールシリンダ状態変化判定手段により前記ホイールシリンダの状態が変化していると判定したときには、次回のブレーキペダル操作時に、前記液圧特性算出手段で前記液圧特性算出データを算出する構成としている。これにより、ホイールシリンダの状態(下流剛性)が変化した場合は、液圧特性データを再算出することで、下流剛性なりのブレーキ特性を実現することができる。
前記制御手段は、前記液圧特性算出手段により算出された液圧特性算出データと過去の液圧特性保存データとの差分を絶対値として演算する差分演算手段を備え、前記差分演算手段で演算された前記差分の絶対値が所定の閾値よりも大きいときには、前回のブレーキペダル操作時に用いた前記液圧特性値を採用する構成としている。また、前記制御手段は、前記差分演算手段で演算された前記差分の絶対値が予め決められた回数だけ連続して前記閾値よりも大きいと判定されている間は、前記液圧特性算出手段によりそれぞれ算出された複数の液圧特性算出データを保存する特性算出データ保存手段を備え、前記差分演算手段による前記差分の絶対値が前記閾値よりも所定の回数連続して大きいと判定され、かつ前記特性算出データ保存手段により保存された前記液圧特性算出データのばらつきが所定の範囲内である場合には、前記特性算出データ保存手段により保存された前記液圧特性算出データを、前記液圧特性データとして採用する構成としている。これにより、前記差分の絶対値が所定の閾値より大きくなる場合(特に、所定回数連続して差分の絶対値が閾値よりも大きくなり、その間に算出された液圧特性算出データのばらつきが所定の範囲内である場合)には、例えばキャリパの交換やエア抜きが実施されて下流剛性が大幅に変化した場合と判断することができ、過去の液圧特性データに依らず、最新の下流剛性を反映させた液圧特性データを求めることができる。