以下、本発明の実施の形態によるブレーキ装置を、四輪自動車に搭載されるブレーキ装置を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図9は本発明の実施の形態に係るブレーキ装置を有するブレーキシステムを概念的に示している。図1において、左,右の前輪1L,1Rと左,右の後輪2L,2Rとは、車両のボディを構成する車体(図示せず)の下側に設けられている。左,右の前輪1L,1Rには、それぞれ前輪側ホイールシリンダ3L,3Rが設けられ、左,右の後輪2L,2Rには、それぞれ後輪側ホイールシリンダ4L,4Rが設けられている。
これらのホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rは、液圧式のディスクブレーキまたはドラムブレーキのシリンダを構成し、夫々の車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)毎に制動力を付与するものである。なお、図3,4中に示すホイールシリンダ3,4は、前輪側ホイールシリンダ3L,3R,後輪側ホイールシリンダ4L,4Rを簡略化して示したものである。
ブレーキペダル5は車体のフロントボード(図示せず)側に設けられ、該ブレーキペダル5は、車両のブレーキ操作時に運転者によって図1中の矢示A方向に踏込み操作される。ブレーキペダル5には、ブレーキスイッチ6と操作量検出センサ7が設けられ、ブレーキスイッチ6は、車両のブレーキ操作の有無を検出して、例えばブレーキランプ(図示せず)を点灯,消灯させるものである。また、操作量検出センサ7は、ブレーキペダル5の踏込み操作量(ストローク量)または踏力を検出し、その検出信号を後述のECU26,32および車両データバス28等に出力する。ブレーキペダル5が踏込み操作されると、マスタシリンダ8には後述するブレーキ装置としての電動倍力装置16を介してブレーキ液圧が発生する。
図2に示すように、マスタシリンダ8は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体9を有している。このシリンダ本体9には、後述のリザーバ14内に連通する第1,第2のサプライポート9A,9Bが設けられ、第1のサプライポート9Aは、後述するブースタピストン18の摺動変位により第1の液圧室11Aに対して連通,遮断される。一方、第2のサプライポート9Bは、後述する第2のピストン10により第2の液圧室11Bに対して連通,遮断される。
シリンダ本体9は、その開口端側が後述する電動倍力装置16のブースタハウジング17に複数の取付ボルト(図示せず)等を用いて着脱可能に固着されている。マスタシリンダ8は、シリンダ本体9と、第1のピストン(後述のブースタピストン18と入力ロッド19)および第2のピストン10と、第1の液圧室11Aと、第2の液圧室11Bと、第1の戻しばね12と、第2の戻しばね13とを含んで構成されている。
この場合、マスタシリンダ8は、前記第1のピストンが後述のブースタピストン18と入力ロッド19とにより構成され、シリンダ本体9内に形成される第1の液圧室11Aは、第2のピストン10とブースタピストン18(および入力ロッド19)との間に画成されている。第2の液圧室11Bは、シリンダ本体9の底部と第2のピストン10との間でシリンダ本体9内に画成されている。
第1の戻しばね12は、第1の液圧室11A内に位置してブースタピストン18と第2のピストン10との間に配設され、ブースタピストン18をシリンダ本体9の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね13は、第2の液圧室11B内に位置してシリンダ本体9の底部と第2のピストン10との間に配設され、第2のピストン10を第1の液圧室11A側に向けて付勢している。
マスタシリンダ8のシリンダ本体9は、ブレーキペダル5の踏込み操作に応じてブースタピストン18(入力ロッド19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9の底部に向かって変位し、第1,第2のサプライポート9A,9Bを遮断したときに、第1,第2の液圧室11A,11B内のブレーキ液によりブレーキ液圧を発生させる。一方、ブレーキペダル5の操作を解除した場合には、ブースタピストン18(および入力ロッド19)と第2のピストン10とが第1、第2の戻しばね12、13によりシリンダ本体9の開口部に向かって矢示B方向に変位していくときに、リザーバ14からブレーキ液の補給を受けながら第1,第2の液圧室11A,11B内の液圧を解除していく。
マスタシリンダ8のシリンダ本体9には、内部にブレーキ液が収容されている作動液タンクとしてのリザーバ14が設けられ、該リザーバ14は、シリンダ本体9内の液圧室11A,11Bにブレーキ液を給排する。即ち、第1のサプライポート9Aがブースタピストン18により第1の液圧室11Aに連通され、第2のサプライポート9Bが第2のピストン10により第2の液圧室11Bに連通している間は、これらの液圧室11A,11B内にリザーバ14内のブレーキ液が給排される。
一方、第1のサプライポート9Aがブースタピストン18により第1の液圧室11Aから遮断され、第2のサプライポート9Bが第2のピストン10により第2の液圧室11Bから遮断されたときには、これらの液圧室11A,11Bに対するリザーバ14内のブレーキ液の給排が断たれる。このため、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内には、ブレーキ操作に伴ってブレーキ液圧が発生し、このブレーキ液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管15A,15Bを介して後述の液圧供給装置30(即ち、ESC30)に送られる。
車両のブレーキペダル5とマスタシリンダ8との間には、ブレーキペダル5の操作力を増大させるブースタとして、また、ブレーキ装置としての電動倍力装置16が設けられている。この電動倍力装置16は、操作量検出センサ7の出力に基づいて後述の電動アクチュエータ20を駆動制御することにより、マスタシリンダ8内に発生するブレーキ液圧を可変に制御するものである。
電動倍力装置16は、車体のフロントボードである車室前壁(図示せず)に固定して設けられるブースタハウジング17と、該ブースタハウジング17に移動可能に設けられ後述の入力ロッド19に対して相対移動可能なピストンとしてのブースタピストン18と、該ブースタピストン18をマスタシリンダ8の軸方向に進退移動させ当該ブースタピストン18にブースタ推力を付与するアクチュエータとしての後述の電動アクチュエータ20とを含んで構成されている。
ブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に開口端側から軸方向に摺動可能に挿嵌された筒状部材により構成されている。ブースタピストン18の内周側には、ブレーキペダル5の操作に従って直接的に押動され、マスタシリンダ8の軸方向(即ち、矢示A,B方向)に進退移動する入力部材としての入力ロッド19が摺動可能に挿嵌されている。入力ロッド19は、ブースタピストン18と一緒にマスタシリンダ8の第1のピストンを構成し、入力ロッド19の後側(一側)端部にはブレーキペダル5が連結されている。シリンダ本体9内は、第2のピストン10とブースタピストン18および入力ロッド19との間に第1の液圧室11Aが画成されている。
ブースタハウジング17は、後述の減速機構23等を内部に収容する筒状の減速機ケース17Aと、該減速機ケース17Aとマスタシリンダ8のシリンダ本体9との間に設けられブースタピストン18を軸方向に摺動変位可能に支持した筒状の支持ケース17Bと、減速機ケース17Aを挟んで支持ケース17Bとは軸方向の反対側(軸方向一側)に配置され減速機ケース17Aの軸方向一側の開口を閉塞する段付筒状の蓋体17Cとにより構成されている。減速機ケース17Aの外周側には、後述の電動モータ21を固定的に支持するための支持板17Dが設けられている。
図2に示すように、入力ロッド19は、蓋体17C側からブースタハウジング17内に挿入され、ブースタピストン18内を第1の液圧室11Aに向けて軸方向に延びている。ブースタピストン18と入力ロッド19との間には、一対の中立ばね19A,19Bが介装されている。ブースタピストン18および入力ロッド19は、中立ばね19A,19Bのばね力によって中立位置に弾性的に保持され、これらの軸方向の相対変位に対して中立ばね19A,19Bのばね力が作用する構成となっている。
入力ロッド19の先端側(軸方向他側)端面は、ブレーキ操作時に第1の液圧室11A内に発生する液圧をブレーキ反力として受圧し、入力ロッド19はこれをブレーキペダル5に伝達する。これにより、車両の運転者にはブレーキペダル5を介して適正な踏み応えが与えられ、良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)を得ることができる。この結果、ブレーキペダル5の操作感を向上することができ、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。また、入力ロッド19は、ブースタピストン18に対して所定量前進したときに、ブースタピストン18に当接してブースタピストン18を前進させることができる構造となっている。この構造により、後述する電動アクチュエータ20や第1のECU26が失陥した場合に、ブレーキペダル5への踏力によりブースタピストン18を前進させてマスタシリンダ8に液圧を発生させることが可能となっている。
電動倍力装置16の電動アクチュエータ20は、ブースタハウジング17の減速機ケース17Aに支持板17Dを介して設けられた電動モータ21と、該電動モータ21の回転を減速して減速機ケース17A内の筒状回転体22に伝えるベルト等の減速機構23と、筒状回転体22の回転をブースタピストン18の軸方向変位(進退移動)に変換するボールネジ等の直動機構24とにより構成されている。ブースタピストン18と入力ロッド19は、それぞれの前端部(軸方向他側の端部)をマスタシリンダ8の第1の液圧室11Aに臨ませ、ブレーキペダル5から入力ロッド19に伝わる踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に伝わるブースタ推力とにより、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧を発生させる。
即ち、電動倍力装置16のブースタピストン18は、操作量検出センサ7の出力(即ち、制動指令)に基づいて電動アクチュエータ20により駆動され、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を発生させるポンプ機構を構成している。また、ブースタハウジング17の支持ケース17B内には、ブースタピストン18を制動解除方向(図1中の矢示B方向)に常時付勢する戻しばね25が設けられている。ブースタピストン18は、ブレーキ操作の解除時に電動モータ21が逆向きに回転されると共に、戻しばね25の付勢力により図1、図2に示す初期位置まで矢示B方向に戻されるものである。
電動モータ21は、例えばDCブラシレスモータを用いて構成され、電動モータ21には、レゾルバと呼ばれる回転センサ21Aと、モータ電流を検出する電流センサ21B(図3参照)とが設けられている。回転センサ21Aは、電動モータ21(モータ軸)の回転位置を検出し、その検出信号を第1の制御回路であるコントロールユニット(以下、第1のECU26という)に出力する。第1のECU26は、この回転位置信号により、フィードバック制御を行う。また、回転センサ21Aは、検出した電動モータ21の回転位置に基づいて車体に対するブースタピストン18の絶対変位を検出する回転検出手段としての機能を備えている。
さらに、回転センサ21Aは操作量検出センサ7と共に、ブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔX(後述の数1,2式参照)を検出する変位検出手段を構成し、これらの検出信号は、第1のECU26に送出される。なお、前記回転検出手段としては、レゾルバ等の回転センサ21Aに限らず、絶対変位(角度)を検出できる回転型のポテンショメータ等により構成してもよい。減速機構23は、ベルト等に限らず、例えば歯車減速機構等を用いて構成してもよい。また、回転運動を直線運動に変換する直動機構24は、例えばラックーピニオン機構等で構成することもできる。さらに、減速機構23は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、筒状回転体22にモータ軸を一体に設け、電動モータのステータを筒状回転体22の周囲に配置して、電動モータにより直接、筒状回転体22を回転させるようにしてもよい。
第1のECU26は、例えばマイクロコンピュータ等からなっており、電動倍力装置16の一部を構成するとともに、ブレーキ装置の制御手段として構成される。第1のECU26は、第1の制動機構である電動倍力装置16の電動アクチュエータ20を電気的に駆動制御する第1の制御回路を構成している。第1のECU26の入力側は、ブレーキペダル5の操作量または踏力を検出する操作量検出センサ7と、電動モータ21の回転センサ21A及び電流センサ21Bと、例えばL−CANと呼ばれる通信が可能な車載の信号線27と、給電および他の車両機器のECUからの信号の授受を行う車両データバス28等とに接続されている。車両データバス28は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車載向けの多重通信を行うものである。なお、図中、二本の斜線が付された線は信号線や電源線等の電気系の線を表している。
マスタシリンダ8のブレーキ液圧を検出する液圧検出手段としての液圧センサ29は、例えばシリンダ側液圧配管15A内の液圧を検出するもので、マスタシリンダ8からシリンダ側液圧配管15Aを介して後述のESC30に供給されるブレーキ液圧を検出する。本実施の形態において、液圧センサ29は、後述の第2のECU32に電気的に接続されると共に、液圧センサ29による検出信号は、第2のECU32から信号線27を介して第1のECU26にも通信により送られる。なお、液圧センサ29は、マスタシリンダ8のブレーキ液圧を検出することができれば、マスタシリンダ8に直接取付けられるようにしてもよく、また、第2のECU32を介さずに検出信号を直接第1のECU26に入力されるように構成してもよい。
第1のECU26の出力側は、電動モータ21、車載の信号線27および車両データバス28等に接続されている。そして、第1のECU26は、操作量検出センサ7や液圧センサ29からの検出信号に従って電動アクチュエータ20によりマスタシリンダ8内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御すると共に、電動倍力装置16が正常に動作しているか否か等を判別する機能も有している。図4に示すように、第1のECU26は、後述の力ベース液圧指令生成部52、相対位置制御部53、目標SP液圧指令生成部54、液圧制御部55、判定部56、制御切換部57およびモータ指令算出処理部58を含んで構成されている。
電動倍力装置16においては、ブレーキペダル5が踏込み操作されると、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ロッド19が前進し、このときの動きが操作量検出センサ7によって検出される。第1のECU26は、操作量検出センサ7からの検出信号により電動モータ21に起動指令を出力して電動モータ21を回転駆動し、その回転が減速機構23を介して筒状回転体22に伝えられると共に、筒状回転体22の回転は、直動機構24によりブースタピストン18の軸方向変位に変換される。
このとき、ブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ロッド19と一体的に(または、後述の相対変位ΔXをもって)前進し、ブレーキペダル5から入力ロッド19に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生する。また、第1のECU26は、液圧センサ29からの検出信号を信号線27から受取ることによりマスタシリンダ8に発生した液圧を監視することができ、電動倍力装置16が正常に動作しているか否かを判別することができる。
次に、車両の各車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)側に配設されたホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rとマスタシリンダ8との間に設けられた第2の制動機構としての液圧供給装置30(即ち、ESC30)について、図1を参照して説明する。
ESCとしての液圧供給装置30は、電動倍力装置16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)内に発生したブレーキ液圧を、車輪毎のホイールシリンダ圧として可変に制御して各車輪のホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに個別に供給するホイールシリンダ圧制御装置を構成している。
即ち、液圧供給装置30は、各種のブレーキ制御(例えば、前輪1L,1R、後輪2L,2R毎に制動力を配分する制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御等)をそれぞれ行う場合に、必要なブレーキ液圧をマスタシリンダ8からシリンダ側液圧配管15A,15B等を介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給するものである。
ここで、液圧供給装置30は、マスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)からシリンダ側液圧配管15A,15Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部31A,31B,31C,31Dを介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに分配、供給する。これにより、前述の如く車輪(前輪1L,1R、後輪2L,2R)毎にそれぞれ独立した制動力が個別に付与される。液圧供給装置30は、後述の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′と、液圧ポンプ44,44′を駆動する電動モータ45と、液圧制御用リザーバ49,49′等とを含んで構成されている。
第2のECU32は、液圧供給装置30を電気的に駆動制御する第2の制御回路としての液圧供給装置用コントローラである。該第2のECU32は、その入力側が、液圧センサ29、信号線27および車両データバス28等に接続されている。第2のECU32の出力側は、後述の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′、電動モータ45、信号線27および車両データバス28等に接続されている。
ここで、第2のECU32は、液圧供給装置30の各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′および電動モータ45等を後述の如く個別に駆動制御する。これによって、第2のECU32は、ブレーキ側配管部31A〜31Dからホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、ホイールシリンダ3L,3R、4L,4R毎に個別に行うものである。
即ち、第2のECU32は、液圧供給装置30を作動制御することにより、例えば車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知してブレーキペダル5の操作量に拘わらず各車輪に付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、車両前方または後方の障害物との衡突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
液圧供給装置30は、マスタシリンダ8の一方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管15A)に接続されて左前輪(FL)側のホイールシリンダ3Lと右後輪(RR)側のホイールシリンダ4Rとに液圧を供給する第1液圧系統33と、他方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管15B)に接続されて右前輪(FR)側のホイールシリンダ3Rと左後輪(RL)側のホイールシリンダ4Lとに液圧を供給する第2液圧系統33′との2系統の液圧回路を備えている。ここで、第1液圧系統33と第2液圧系統33′とは、同様な構成を有しているため、以下の説明は第1液圧系統33についてのみ行い、第2液圧系統33′については各構成要素に符号に「′」を付し、それぞれの説明を省略する。
液圧供給装置30の第1液圧系統33は、シリンダ側液圧配管15Aの先端側に接続されたブレーキ管路34を有し、ブレーキ管路34は、第1管路部35および第2管路部36の2つに分岐して、ホイールシリンダ3L,4Rにそれぞれ接続されている。ブレーキ管路34および第1管路部35は、ブレーキ側配管部31Aと共にホイールシリンダ3Lに液圧を供給する管路を構成し、ブレーキ管路34および第2管路部36は、ブレーキ側配管部31Dと共にホイールシリンダ4Rに液圧を供給する管路を構成している。
ブレーキ管路34には、ブレーキ液圧の供給制御弁37が設けられ、該供給制御弁37は、ブレーキ管路34を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第1管路部35には増圧制御弁38が設けられ、該増圧制御弁38は、第1管路部35を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第2管路部36には増圧制御弁39が設けられ、該増圧制御弁39は、第2管路部36を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。
一方、液圧供給装置30の第1液圧系統33は、ホイールシリンダ3L,4R側と液圧制御用リザーバ49とをそれぞれ接続する第1,第2の減圧管路40,41を有し、これらの減圧管路40,41には、それぞれ第1,第2の減圧制御弁42,43が設けられている。第1,第2の減圧制御弁42,43は、減圧管路40,41をそれぞれ開,閉する常閉の電磁切換弁により構成されている。
また、液圧供給装置30は、液圧源である液圧発生手段としての液圧ポンプ44を備え、該液圧ポンプ44は電動モータ45により回転駆動される。ここで、電動モータ45は、第2のECU32からの給電により駆動され、給電停止には液圧ポンプ44と一緒に回転停止される。液圧ポンプ44の吐出側は、逆止弁46を介してブレーキ管路34のうち供給制御弁37よりも下流側となる位置(即ち、第1管路部35と第2管路部36とが分岐する位置)に接続されている。液圧ポンプ44の吸込み側は、逆止弁47,48を介して液圧制御用リザーバ49に接続されている。
液圧制御用リザーバ49は、余剰のブレーキ液を一時的に貯留するために設けられ、ブレーキシステム(液圧供給装置30)のABS制御時に限らず、これ以外のブレーキ制御時にもホイールシリンダ3L,4Rのシリンダ室(図示せず)から流出してくる余剰のブレーキ液を一時的に貯留するものである。また、液圧ポンプ44の吸込み側は、逆止弁47および常閉の電磁切換弁である加圧制御弁50を介してマスタシリンダ8のシリンダ側液圧配管15A(即ち、ブレーキ管路34のうち供給制御弁37よりも上流側となる位置)に接続されている。
液圧供給装置30を構成する各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′、および液圧ポンプ44,44′を駆動する電動モータ45は、第2のECU32から出力される制御信号に従ってそれぞれの動作制御が予め決められた手順で行われる。
即ち、液圧供給装置30の第1液圧系統33は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時において、電動倍力装置16によってマスタシリンダ8で発生した液圧を、ブレーキ管路34および第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに直接供給する。例えば、アンチスキッド制御等を実行する場合は、増圧制御弁38,39を閉じてホイールシリンダ3L,4Rの液圧を保持し、ホイールシリンダ3L,4Rの液圧を減圧するときには、減圧制御弁42,43を開いてホイールシリンダ3L,4Rの液圧を液圧制御用リザーバ49に逃がすように排出する。
また、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ホイールシリンダ3L,4Rに供給する液圧を増圧するときには、供給制御弁37を閉弁した状態で電動モータ45により液圧ポンプ44を作動させ、該液圧ポンプ44から吐出したブレーキ液を第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに供給する。このとき、加圧制御弁50が開弁されていることにより、マスタシリンダ8側から液圧ポンプ44の吸込み側へとリザーバ14内のブレーキ液が供給される。
このように、第2のECU32は、車両運転情報等に基づいて供給制御弁37、増圧制御弁38,39、減圧制御弁42,43、加圧制御弁50および電動モータ45(即ち、液圧ポンプ44)の作動を制御し、ホイールシリンダ3L,4Rに供給する液圧を適宜に保持したり、減圧または増圧したりする。これによって、前述した制動力分配制御、車両安定化制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
一方、電動モータ45(即ち、液圧ポンプ44)を停止した状態で行う通常の制動モードでは、供給制御弁37および増圧制御弁38,39を開弁させ、減圧制御弁42,43および加圧制御弁50を閉弁させる。この状態で、ブレーキペダル5の踏込み操作に応じてマスタシリンダ8の第1のピストン(即ち、ブースタピストン18、入力ロッド19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9内を軸方向に変位するときに、第1の液圧室11A内に発生したブレーキ液圧が、シリンダ側液圧配管15A側から液圧供給装置30の第1液圧系統33、ブレーキ側配管部31A,31Dを介してホイールシリンダ3L,4Rに供給される。第2の液圧室11B内に発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管15B側から第2液圧系統33′、ブレーキ側配管部31B,31Cを介してホイールシリンダ3R,4Lに供給される。
また、電動倍力装置16の失陥によりブースタピストン18を電動モータ21で作動できない場合には、第1,第2の液圧室11A,11B内に発生したブレーキ液圧を第2のECU32に接続された液圧センサ29により検出して、この検出値をブレーキペダル5の操作量として検出値に応じたホイールシリンダ圧となるように各ホイールシリンダを増圧するアシスト制御を行う。アシスト制御では、加圧制御弁50と増圧制御弁38,39とを開弁させ、供給制御弁37および減圧制御弁42,43を適宜開,閉弁させる。この状態で、電動モータ45により液圧ポンプ44を作動させ、該液圧ポンプ44から吐出するブレーキ液を第1,第2管路部35,36を介してホイールシリンダ3L,4Rに供給する。これにより、マスタシリンダ8側で発生するブレーキ液圧に基づいて、液圧ポンプ44から吐出するブレーキ液によってホイールシリンダ3L,4Rによる制動力を発生することができる。
なお、液圧ポンプ44としては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。電動モータ45としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、本実施の形態においては、車載性等の観点からDCモータとしている。
また、液圧供給装置30の各制御弁37,38,39,42,43,50は、その特性を夫々の使用態様に応じて適宜設定することができるが、このうち供給制御弁37および増圧制御弁38,39を常開弁とし、減圧制御弁42,43および加圧制御弁50を常閉弁とすることにより、第2のECU32からの制御信号がない場合にも、マスタシリンダ8からホイールシリンダ3L〜4Rに液圧を供給することができる。従って、ブレーキシステムのフェイルセーフおよび制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましいものである。
車両に搭載された車両データバス28には、電力充電用の回生協調制御装置51が接続されている。回生協調制御装置51は、車両の減速時および制動時等に各車輪の回転による慣性力を利用して、発電機(図示せず)を駆動制御することにより運動エネルギを電力として回収するものである。回生協調制御装置51は、車両データバス28を介して第1のECU26と第2のECU32とに接続され、回生制動制御手段を構成している。
次に、図4を参照して第1のECU26により構成される相対位置制御手段、液圧制御手段および制御切換手段の具体的構成について説明する。図4に示すように、制御手段としての第1のECU26は、力ベース液圧指令生成部52、相対位置制御部53、目標SP液圧指令生成部54、液圧制御部55、判定部56、制御切換部57およびモータ指令算出処理部58を含んで構成されている。なお、これら処理部は、第1のECU26のハードウェアとして回路的に構成されているものではなく、第1のECU26が有する機能の概念として構成されているものである。
この場合、相対位置制御手段は、図4に示す力ベース液圧指令生成部52と相対位置制御部53とにより構成され、モータ指令算出処理部58によって電動アクチュエータ20の電動モータ21の作動を制御する上で、操作量検出センサ7に基づく入力ロッド19のストロークをベースにしてブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔXが目標相対位置となるように電動モータ21の作動を制御(相対位置制御)するものである。液圧制御手段は、図4に示す目標SP液圧指令生成部54と液圧制御部55と判定部56とにより構成され、マスタシリンダ8のブレーキ液圧が目標液圧となるように電動モータ21の作動を制御(液圧制御)するものである。
一方、制御切換手段は、図4に示す判定部56および制御切換部57により構成され、判定部56からの切換信号に従って制御切換部57を相対位置制御部53と液圧制御部55のいずれかに選択的に切換える制御を行うものである。これにより、モータ指令算出処理部58は、相対位置制御部53または液圧制御部55から出力されるモータ回転位置指令に従って、電動モータ21の回転位置を制御し、このときのモータ回転位置は、回転センサ21A、電流センサ21Bからの検出信号によりフィードバック制御されるものである。
ここで、目標SP液圧指令生成部54は、予め設定された基準目標SP特性マップに基づいて操作量検出センサ7から出力されるブレーキペダル5の操作量(ペダルストローク)からマスタシリンダ8内に発生すべき目標液圧を生成して液圧指令値S1として算出する。一方、力ベース液圧指令生成部52は、操作量検出センサ7に基づく入力ロッド19の変位S(IR位置)をベースにしてブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔXが目標相対位置XT(S+ΔX)となるような液圧値を算出して液圧指令値S2を算出する。そして、判定部56は、これらの液圧指令値S1,S2から、後述する判定処理を行い、制御切換部57を相対位置制御部53と液圧制御部55とのいずれに切換えるかを決定する。
ここで、ブースタピストン18の変位は、電動モータ21の回転センサ21Aから出力される検出信号により求められる。入力ロッド19の変位(IR位置)は、操作量検出センサ7から出力される検出信号(変位S)により求められる。
そして、これらの検出信号の差を演算することによって、ブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔXは求められる。図4に示す力ベース液圧指令生成部52には、入力変数としてばね力が入力されるが、このばね力は、相対変位ΔXに比例した入力値として求められるものである。
ブレーキペダル5の操作力F(推定踏力)は、図2に示す中立ばね19A,19Bの合成ばね定数k、ブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔX、第1の液圧室11Aに対する入力ロッド19の受圧面積Ai、マスタシリンダ8(第1の液圧室11A)の液圧P、戻しばね12,13および戻しばね25によるセット荷重Nに対して、下記の数1式を満たす関係にある。また、液圧Pは、下記の数2式により求められるものである。
このように、ブレーキペダル5の操作力F(推定踏力)は、相対変位ΔXおよび液圧Pに基づいて前記数1式の演算を行うことにより求めることができる。また、数2式の相対変位ΔXを目標相対位置XTに置き換えた場合には、数2式による液圧Pを、力ベース液圧指令生成部52における液圧指令値S2として算出することができる。
即ち、図4に示すように、相対位置制御部53からの制御信号(モータ回転位置指令)により電動モータ21の回転を制御しているときには、マスタシリンダ8内の液圧(M/C液圧)を直接的に制御することはない。しかし、図4に示す力ベース液圧指令生成部52には、現在のマスタシリンダ液圧(M/C液圧)とばね力(相対変位ΔXから求められる値)とが入力されているので、これらの入力値に基づいて目標相対位置XTを目標としている力、即ち液圧に換算した液圧指令値S2として算出することができる。
図3に示すように、第1のECU26は、ROM,RAM等のメモリ26Aが設けられ、該メモリ26Aには、上述の基準目標SP特性マップと、相対位置制御モードと液圧制御モードとのモード選択処理用のプログラムと、図7に示すモード乗継制御用のプログラムとが格納されている。図7に示すモード乗継制御は、相対位置制御モードから液圧制御モードに切換えるときの乗継ぎを滑らかにし、電動モータ21の回転位置制御を安定化するものである。すなわち、相対位置制御モードから液圧制御モードに切換えるときのマスタシリンダ8内の液圧の変動を抑制して、ブレーキペダル5の踏力変動や車両の減速度変動を抑制するためのものである。
このようなモード選択処理は、例えば車両走行時のブレーキ操作において、運転者のペダルフィーリングを向上させるため、さらには、騒音の低減化、省エネルギ(省電力化)を図るため等の理由により、電動モータ21の回転位置を制御する上で、相対位置制御モードと液圧制御モードとのいずれを選択するのがより有効であるかを判定して制御処理を実行するものである。
ここで、相対位置制御モードとは、図4に示す相対位置制御部53からの制御信号(モータ回転位置指令)によりモータ指令算出処理部58を介して電動モータ21の作動を制御するモードであり、ブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔXが目標相対位置XTとなるように電動モータ21の回転位置を制御(相対位置制御)するものである。液圧制御モードとは、図4に示す液圧制御部55からの制御信号(モータ回転位置指令)によりモータ指令算出処理部58を介して電動モータ21の作動を制御するモードであり、マスタシリンダ8のブレーキ液圧(M/C液圧)がペダルストロークに対応して予め決められた基準目標SP特性マップに基づく目標液圧となるように電動モータ21の回転位置を制御(液圧制御)するものである。
図5中に点線で示す特性線59は、ブレーキペダル5の操作量に対応した入力ロッド19の変位S(IR位置)を横軸とし、マスタシリンダ8内に発生する液圧Pを縦軸とした場合のホイールシリンダ3,4の下流剛性の特性を表すものであり、この下流剛性の特性(特性線59)は、ブレーキペダル5の操作量(IR位置)に対してマスタシリンダ8内に発生すべきブレーキ液圧の特性を、過去のデータ、経験値等に基づいて表したものである。図5中に実線で示す特性線60は、ホイールシリンダ3,4の下流剛性が相対的に高くなった場合に相対位置制御(RC)を行ったときの入力ロッド19の変位S(IR位置)と液圧指令値S2との関係を表すSP特性マップである。
図5中に実線で示す特性線61A,61B,61Cは、相対位置制御(RC)モードにおける液圧指令値S2の特性を、ブレーキペダル5の操作速度である踏み速度との関係で表している。ブレーキペダル5の踏み速度は、特性線61A,61B,61Cの順で踏み速度が速くなった場合であり、ブレーキペダル5の踏み速度を速くすることにより、これに応じて力ベース液圧指令生成部52で算出される目標相対位置XTに対応する液圧指令値S2は急激に上昇するものである。
一方、図6中に実線で示す特性線62は、液圧制御(PC)モードにおける液圧指令値S1の特性である。即ち、液圧制御(PC)モードでは、マスタシリンダ8のブレーキ液圧がペダルストローク(IR位置)に対応して予め決められた基準目標SP特性マップに基づく目標液圧となるように制御されるため、特性線62で示すように、IR位置である変位Sが大きくなるに応じて液圧Pは上向きに曲線状に上昇される特性となる。ここで、基準目標SP特性マップは、マスタシリンダ8や電動倍力装置16の仕様、車両諸元等に基づいて予め定められるものである。
本実施の形態によるブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、車両の運転者がブレーキペダル5を踏込み操作すると、これにより入力ロッド19が矢示A方向に押込まれると共に、電動倍力装置16の電動アクチュエータ20が第1のECU26により作動制御される。即ち、第1のECU26は、操作量検出センサ7からの検出信号により電動モータ21に起動指令を出力して電動モータ21を回転駆動し、その回転が減速機構23を介して筒状回転体22に伝えられると共に、筒状回転体22の回転は、直動機構24によりブースタピストン18の軸方向変位に変換される。
これにより、電動倍力装置16のブースタピストン18は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて入力ロッド19とほぼ一体的に前進し、ブレーキペダル5から入力ロッド19に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ20からブースタピストン18に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生する。
また、第1のECU26は、液圧センサ29からの検出信号を信号線27から受取ることによりマスタシリンダ8に発生した液圧を監視し、電動倍力装置16の電動アクチュエータ20(電動モータ21の回転)をフィードバック制御する。これにより、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室11A,11B内に発生するブレーキ液圧を、ブレーキペダル5の踏込み操作量に基づいて可変に制御することができる。また、第1のECU26は、操作量検出センサ7と液圧センサ29との検出値に従って電動倍力装置16が正常に動作しているか否かを判別することができる。
一方、ブレーキペダル5に連結された入力ロッド19は、第1の液圧室11A内の圧力を受圧し、これをブレーキ反力としてブレーキペダル5へと伝える。この結果、車両の運転者には入力ロッド19を介して踏応えが与えられるようになり、これによって、ブレーキペダル5の操作感を向上でき、ペダルフィーリングを良好に保つことができる。
次に、各車輪(前輪1L,1Rおよび後輪2L,2R)側のホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rとマスタシリンダ8との間に設けられた液圧供給装置30は、電動倍力装置16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室11A,11B)内に発生したブレーキ液圧を、シリンダ側液圧配管15A,15Bから液圧供給装置30内の液圧系統33,33′およびブレーキ側配管部31A,31B,31C,31Dを介してホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rへと可変に制御しつつ、車輪毎のホイールシリンダ圧として分配して供給する。これにより、車両の車輪(各前輪1L,1R、各後輪2L,2R)毎にホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rを介して適正な制動力が付与される。
ここで、液圧供給装置30を制御する第2のECU32は、操作量検出センサ7からの検出信号を信号線27から受取ることによりブレーキペダル5の踏込み操作量を監視することができ、液圧センサ29からの検出信号によりブレーキ液圧を監視し続けることができる。そして、ブレーキ操作時には、操作量検出センサ7からの検出信号を通信で受取ることにより、第2のECU32から電動モータ45に制御信号を出力して液圧ポンプ44,44′を作動できると共に、各制御弁37,37′,38,38′,39,39′,42,42′,43,43′,50,50′を選択的に開,閉弁することができる。
このため、車両の制動時等には、ブレーキペダル5の踏込み操作に従ってマスタシリンダ8(及び/又は液圧ポンプ44,44′)からホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rにそれぞれ供給するブレーキ液圧を個別に増圧、保持または減圧でき、ブレーキペダル5の踏込み操作、車両の運転状態等に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ3L,3R、4L,4Rに供給できると共に、車両の制動力制御を高精度に行うことができる。
次に、第1の実施の形態として、第1のECU26によるモード選択処理について、図7乃至図9を参照して説明する。即ち、処理動作がスタートすると、ステップ11では、目標SP液圧指令生成部54が予め設定された基準目標SP特性マップに基づいてブレーキペダル5の操作量である変位S(IR位置)から目標液圧として液圧指令値S1を算出する。次のステップ12では、力ベース液圧指令生成部52がブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔXが目標値となるように目標相対位置XTを算出し、これに対応する液圧指令値S2を算出する。
次のステップ13以降に第1のECU26によるモード乗継制御が行われる。ステップ13では、ブースタピストン18の摺動位置が「液圧が発生する位置IRo未満」であるか否か、すなわち、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧が発生し始める位置までブースタピストン18が達したか否かを判定する。なお、この判定においては、ブースタピストン18の摺動位置の検出信号に基づいて行ってもよく、液圧センサ29の検出信号により行うようにしてもよい。
即ち、ブレーキペダル5の踏込み操作を開始した直後では、図2に示す如く、シリンダ本体9の第1,第2のサプライポート9A,9Bがリザーバ14内に連通しているので、第1,第2の液圧室11A,11B内にブレーキ液圧が発生することはない。そして、ブレーキペダル5の踏込み操作によりブースタピストン18(入力ロッド19)と第2のピストン10とがシリンダ本体9の底部に向かって変位し、第1,第2のサプライポート9A,9Bを遮断(即ち、ポート位置に到達)した後に、第1,第2の液圧室11A,11B内にブレーキ液圧が発生する。
このため、ステップ13で「YES」と判定し、ブースタピストン18の摺動位置が「液圧が発生する位置IRo未満」である間は、ステップ14に移って相対位置制御モードのままとして相対位置制御を続け、例えば図4に示す相対位置制御部53で算出した目標ピストン位置をモータ回転位置指令としてモータ指令算出処理部58に出力する。そして、次のステップ15では、ブースタピストン18の摺動位置が目標ピストン位置となるようにモータ指令算出処理部58が電動モータ21を駆動制御する。即ち、電動モータ21は、ブースタピストン18と入力ロッド19との相対変位ΔXが目標相対位置XTとなるように回転制御される。そして、その後はステップ16でリターンする。
一方、ステップ13で「NO」と判定されたときには、ブースタピストン18,第2のピストン10が第1,第2のサプライポート9A,9Bを遮断するポート位置に達し、第1,第2の液圧室11A,11B内にはブレーキ液圧が発生していると判断することができる。そこで、次のステップ17では、目標相対位置に基づく液圧指令値S2が目標液圧による液圧指令値S1より大きいか否かを判定する。
ステップ17で「YES」と判定する間は、図8のIR位置(変位S)が位置IRaよりも左側に示すように、相対位置制御(RC)における特性線64(液圧指令値S2)の方が液圧制御(PC)における特性線63(液圧指令値S1;基準目標SP特性)よりも大きいので、ステップ14に移って相対位置制御モードを続け、次のステップ15では、ブースタピストン18の摺動位置が液圧指令値S2に対応する目標ピストン位置となるようにモータ指令算出処理部58で電動モータ21を駆動制御(相対位置制御)する。
一方、ステップ17で「NO」と判定したときには、例えば図8に示すように、相対位置制御における特性線64による液圧指令値S2が液圧制御における特性線63による液圧指令値S1以下であるか、両者が一致した場合であり、ペダルストロークである変位S(IR位置)が位置IRaに達している。そこで、この場合は、次のステップ18に移って相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行い、例えば図4に示す液圧制御部55により液圧指令値S1に対応する目標ピストン位置を算出する。
そして、次のステップ15では、ブースタピストン18の摺動位置が目標ピストン位置となるようにモータ指令算出処理部58で電動モータ21の回転位置を制御し、これによって、マスタシリンダ8内に発生するブレーキ液圧が目標液圧(目標SP特性)となるように、電動モータ21を制御する。このため、例えば図8に示すように、変位S(IR位置)が位置IRaに達した段階で、電動モータ21の制御モードは、相対位置制御モードから液圧制御モードへと乗継がれ、モード切換え(Change)を円滑に行うことができる。そして、その後はステップ16でリターンし、例えば図8中に実線で示す特性線部63Aに沿って、液圧制御モードによるモータ制御を続けることができる。
これに対し、例えば変位S(IR位置)が、液圧が発生する位置IRoに達した段階で、相対位置制御における特性線部65Aに沿った相対位置制御(RC)モードから特性線部65Bに沿った液圧制御(PC)モードへのモード切換えを行った場合、図9に示す比較例の特性線65のように、特性線部65Cのように、位置IRoで液圧が急激に変動してしまうことになる。
即ち、図9に示す比較例の特性線65は、液圧が発生する位置IRoに達した段階で相対位置制御モードから液圧制御モードへのモード切換え(Change)を即座に行った場合であり、この場合には、特性線部65Cのように液圧が発生する位置IRoで液圧が急変することにより、ブレーキペダル5に作用する反力が変動したり、車両の減速度が変動するため、ペダル操作を行っている運転者には違和感や不安感を与える虞れがある。
そこで、第1の実施の形態によれば、ブレーキペダル5の操作開始からブースタピストン18がマスタシリンダ8内にブレーキ液圧が発生し始める位置に達するまで相対位置制御モードでモータ制御を行い、液圧制御手段により算出される液圧指令値S1と相対位置制御手段により算出される目標相対位置XTに基づく液圧指令値S2とに基づいて、前記相対位置制御モードから前記液圧制御モードへの制御切換時期を設定する構成としている。
特に、第1の実施の形態では、このような制御切換時期として、図8に示すように液圧指令値S2(特性線64)が液圧指令値S1(特性線63)以下であるか、両者が一致した場合を選定し、変位S(IR位置)が位置IRaに達した段階で、相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、相対位置制御モードから液圧制御モードに切換えるときのモード乗継ぎを滑らかにし、電動モータ21の回転位置制御を安定化することができる。従って、相対位置制御と液圧制御との制御切換を円滑に行うことができ、液圧の変動を抑えて運転者の違和感を緩和することができる。即ち、相対位置制御モードから液圧制御モードへの制御切換に伴う違和感を緩和することができる。
次に、図10〜図12は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、例えば急ブレーキ操作時等のようにブレーキペダルの操作速度が速い操作時にもモード乗継を円滑に行うことができるようにする構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図11に示すモード乗継制御では、ステップ21で第1の実施の形態による図6に示すステップ11と同様に、目標SP特性マップに基づいて液圧指令値S1を算出する。
次のステップ22では、第1の実施の形態による図7に示すステップ12と同様に目標相対位置に基づく液圧指令値S2を算出する。但し、この場合にはブレーキペダル5の操作速度が速い操作であるため、マスタシリンダ8内の液圧は急カーブを描くように上昇し、例えば図12中に実線で示す特性線72の特性線部72Aのように、液圧指令値S2が初期から急激に立ち上るように上昇する特性となっている。
次のステップ23では、予め液圧指令値S1よりも大きく設定されている第1の液圧閾値特性S3をメモリ26Aから読み出す。第1の液圧閾値特性S3は、ブレーキペダル5の操作速度が速い場合に早めにモード乗継を行うことができるように、例えば図11に示す特性線73に沿った特性として設定され、これまでの経験値、データ等に基づき操作速度に応じて決められるものである。
次のステップ24は、第1の実施の形態による図7のステップ13と同様にブースタピストン18の摺動位置である変位Sが「液圧が発生する位置IRo未満」であるか否かを判定する。そして、ステップ24で「YES」と判定したときには、ステップ25〜27にわたる処理を前述した図7のステップ14〜16と同様に行い、相対位置制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
一方、ステップ24で「NO」と判定されたときには、マスタシリンダ8の液圧室11A,11B内にブレーキ液圧が発生しているので、次のステップ28に移って液圧指令値S2(図11に示す特性線部72A)が第1の液圧閾値特性S3(図11に示す特性線73)よりも大きいか否かを判定する。ステップ28で「YES」と判定する間は、ステップ25〜27にわたる処理(相対位置制御モード)を継続する。
そして、例えば図11に示すように、特性線部72Aによる液圧指令値S2は、ペダルストローク(IR位置:S)が位置IRbに達したときに、特性線73による第1の液圧閾値特性S3以下となる。この場合には、ステップ28で「NO」と判定されるので、次のステップ29に移って相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ26では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
このため、図11中に実線で示す特性線部72Bのように、ペダルストローク(IR位置)が位置IRbに達した以降では液圧制御モードによるモータ制御が実行される。この液圧制御モードでは、ペダルストローク(IR位置)に対する液圧の特性が特性線部72Bのように、基準目標SP特性マップに基づく位置IRb以降の液圧指令値S1の特性と相似する補正目標SP特性として判定部56で生成される。そして、この補正目標SP特性(特性線部72B)に基づく液圧指令値が判定部56から液圧制御部55に出力されて制御されるものである。
一方、図12に実線で示す特性線74(液圧指令値S2)は、例えば急ブレーキ操作のようにブレーキペダル5の操作速度を速くした状態で、車両の制動に必要なブレーキ液圧Pが変位S(IR位置)に対して高くなる状態、即ちホイールシリンダ3,4の下流剛性が高い場合の特性である。このように下流剛性が高い場合には、ポート位置IRoに達した後に特性線74(液圧指令値S2)が特性線73(第1の液圧閾値特性S3)よりも大きくなり、例えば図10のステップ28では「YES」と判定され、「NO」と判定することはない。
そこで、このように下流剛性が高い場合には、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行うことなく、ステップ25〜27にわたる処理(相対位置制御モード)を継続するようになっている。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様にモード切換えを円滑に行うことができる。特に、第2の実施の形態では、目標相対位置に基づく液圧指令値S2が目標液圧による液圧指令値S1よりも大きな第1の液圧閾値特性S3よりも大きい場合には、その後に該第1の液圧閾値特性S3以下となったときに、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、ホイールシリンダ3,4の下流剛性が高い場合を除き、例えば急ブレーキ操作のようにブレーキペダル5の操作速度を速くした場合でも、液圧指令値S1が第1の液圧閾値特性S3以下となり、ペダルストローク(IR位置)が位置IRbに達した段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへと早めにモード乗継を行うことができる。しかも、相対位置制御モードから液圧制御モードへと早めにモード切換えを行うことにより、例えば第1の実施の形態よりも乗継タイミングを早くすることができるため、例えば回生協調制御に早目に入ることができ、省エネルギ化を図ることができる。
次に、図13、図14は本発明の第3の実施の形態を示し、この第3の実施の形態における特徴は、ブレーキペダルの操作速度が遅い「ゆっくり踏み」の操作時にもモード乗継を円滑に行うことができる構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図13に示すモード乗継制御では、ステップ31で基準目標SP特性マップに基づく液圧指令値S1を算出する。ステップ31の処理は、第1の実施の形態による図7に示すステップ11と同様にブレーキペダル5の操作量(IR位置)に基づいてマスタシリンダ8内に発生すべき目標液圧を、例えば図14中に点線で示す特性線81に沿った液圧指令値S1として算出する。なお、特性線81は、前述した第2の実施の形態による図12に示す特性線71と同じ特性となる。
次のステップ32では、第1の実施の形態による図7に示すステップ12と同様に目標相対位置XTに基づく液圧指令値S2を算出する。但し、この場合にはブレーキペダル5の操作速度が遅い「ゆっくり踏み」操作であるため、マスタシリンダ8内の液圧は徐々に上昇し、例えば図14中に実線で示す特性線82の特性線部82Aのように、ブレーキペダル5の操作量(IR位置)に比例して徐々に上昇している。
次のステップ33では、前記第2の実施の形態で述べた図10のステップ23と同様に予め液圧指令値S1よりも大きく設定された第1の液圧閾値特性S3をメモリ26Aから読み出す。第1の液圧閾値特性S3は、例えば図14に示す特性線83に沿った特性として設定されており、前述した第2の実施の形態による図11に示す特性線73と同じ特性となる。次にステップ34では、予め第1の液圧閾値特性S3より小さく設定された第2の液圧閾値特性S4をメモリ26Aから読み出す。第2の液圧閾値特性S4は、ブレーキペダル5の操作速度が遅い場合にもモード乗継を行うことができるように、例えば図14に示す特性線84に沿った特性として設定され、これまでの経験値、データ等に基づき操作速度に応じて決められるものである。
次のステップ35は、第1の実施の形態による図7のステップ13と同様にブースタピストン18の摺動位置が「液圧が発生する位置IRo未満」であるか否かを判定する。そして、ステップ35で「YES」と判定したときには、ステップ36〜38にわたる処理を前述した図7のステップ14〜16と同様に行い、相対位置制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
一方、ステップ36で「NO」と判定されたときには、マスタシリンダ8の液圧室11A,11B内にブレーキ液圧が発生しているので、次のステップ39に移って液圧指令値S2(図14に示す特性線部82A)が第1の液圧閾値特性S3(図14に示す特性線83)よりも大きいか否かを判定する。しかし、「ゆっくり踏み」のようにブレーキペダル5の操作速度が遅い場合には、液圧指令値S2が液圧閾値特性S3を越えることはないので、ステップ39では「NO」と判定される。
そこで、次のステップ40では、液圧指令値S2(特性線部82A)が第2の液圧閾値特性S4(図14に示す特性線84)以上となっているか否かを判定する。ステップ40で「NO」と判定する間は、液圧指令値S2が第2の液圧閾値特性S4よりも小さいので、ステップ36〜38にわたる処理(相対位置制御モード)を継続する。
しかし、例えば図14に示すように、特性線部82Aによる液圧指令値S2は、変位S(IR位置)が位置IRcに達したときに、特性線84による第2の液圧閾値特性S4以上となる。この場合には、ステップ40で「YES」と判定されるので、次のステップ41に移って相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ37では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
このため、図14中に実線で示す特性線部82Bのように、ペダルストローク(IR位置)が位置IRcに達した以降では液圧制御モードによるモータ制御が実行される。この液圧制御モードでは、ペダルストローク(IR位置)に対する液圧の特性が特性線部82Bのように、基準目標SP特性マップに基づく位置IRc以降の液圧指令値S1の特性と相似する補正目標SP特性として判定部56で生成される。そして、この補正目標SP特性(特性線部82B)に基づく液圧指令値が判定部56から液圧制御部55に出力されて制御されるものである。
図14中に点線で示す特性線部82Cは、特性線部82Aとともに目標相対位置に基づく液圧指令値S2の特性を表している。この場合、特性線部82Aと特性線部82Cとは同一の直線上に配置され、特性線部82Bは、例えばペダルストローク(IR位置)が位置IRcに達した段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えされた特性を示している。
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様にモード切換えを円滑に行うことができる。特に、第3の実施の形態によれば、目標相対位置に基づく液圧指令値S2が目標液圧による液圧指令値S1よりも大きな第1の液圧閾値特性S3よりも小さい場合には、液圧指令値S2が第1の液圧閾値特性S3よりも小さく、かつ液圧指令値S1よりも大きい第2の液圧閾値特性S4以上となったときに、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、例えば「ゆっくり踏み」のようにブレーキペダル5の操作速度が遅い場合でも、第2の液圧閾値特性S4以上となり、ペダルストローク(IR位置)が位置IRcに達した段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへと早めにモード乗継を行うことができる。また、第3の実施の形態によれば、ブレーキペダル5の踏込み操作を「ゆっくり踏み」で繰返す場合でも、特性のバラツキを小さくすることができ、相対位置制御モードから液圧制御モードへと早めにモード切換えを行うことにより、例えば第1の実施の形態よりも乗継タイミングを早くすることができる。
このため、第3の実施の形態では、例えば回生協調制御に早目に入ることができ、省エネルギ化を図ることができる。しかも、液圧指令値S2が第1の液圧閾値特性S3を越える前に液圧制御モードに切換えるため、下流剛性が高い場合でも回生協調制御を行うことができる。
次に、図15、図16は本発明の第4の実施の形態を示し、この第4の実施の形態における特徴は、車両の制動に必要なブレーキ液圧がペダルストロークに対して相対的に低い状態、例えば、ホイールシリンダ3,4の下流剛性が低い状態でも、予め決められたストローク量に達したときにモード切換えを行う構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図15に示すモード乗継制御では、ステップ51で基準目標SP特性マップによる液圧指令値S1を算出する。ステップ51の処理は、第1の実施の形態による図7に示すステップ11と同様に行うもので、例えば図16中に点線で示す特性線91に沿った液圧指令値S1として算出される。なお、特性線91は、前述した第2、第3の実施の形態による図11,図14に示す特性線71,81と同じ特性となる。
次のステップ52では、第1の実施の形態による図7に示すステップ12と同様に目標相対位置XTに基づく液圧指令値S2を算出する。但し、この場合はホイールシリンダ3,4の下流剛性が低く、車両の制動に必要なブレーキ液圧Pが変位Sに対して相対的に低いために、マスタシリンダ8内の液圧変化は緩やかとなり、例えば図16中に実線で示す特性線92の特性線部92Aのように、ブレーキペダル5の操作量である変位S(IR位置)を大きくしても液圧指令値S2が第2、第3の実施の形態のように大きく上昇することはない。
次のステップ53では、前記第2の実施の形態で述べた図10のステップ23と同様に液圧指令値S1よりも大きい第1の液圧閾値特性S3をメモリ26Aから読み出す。第1の液圧閾値特性S3は、例えば図16に示す特性線93に沿った特性として設定され、前述した第2,3の実施の形態による図11、図14に示す特性線73,83と同じ特性となっている。次にステップ54では、第1の液圧閾値特性S3より小さい第2の液圧閾値特性S4をメモリ26Aから読み出す。第2の液圧閾値特性S4は、例えば図16に示す特性線94に沿った特性として設定され、前述した第3の実施の形態による図14に示す特性線84と同じ特性となっている。
次に、ステップ55〜60の処理を前記第3の実施の形態による図13に示すステップ35〜40と同様に行う。しかし、この場合には、ステップ60で「NO」と判定し、液圧指令値S2(特性線部92A)が第2の液圧閾値特性S4(特性線94)よりも小さいときに、次のステップ61に移ってペダルストローク(IR位置:S)が所定値以上かを判定する。
即ち、ステップ61では、ブレーキペダル5と一体に変位する入力ロッド19の位置(IR位置:S)が予め決められた位置IRdに達したか否かを判定する。そして、例えば図16に示すように、IR位置が位置IRdに達したときには、特性線部92Aによる液圧指令値S2が特性線94(第2の液圧閾値特性S4)よりも小さいときでも、ステップ61は「YES」と判定する。
ステップ61で「YES」と判定したときには、次のステップ62に移って相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ57では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。このため、図16中に実線で示す特性線部92Bのように、ペダルストローク(IR位置:S)が位置IRdに達した以降では液圧制御モードによるモータ制御が実行される。この液圧制御モードでは、ペダルストローク(IR位置)に対する液圧Pの特性が特性線部92Bのように、液圧指令値S1にほぼ沿って制御されるものである。
かくして、このように構成される第4の実施の形態によれば、ホイールシリンダ3,4の下流剛性が低い場合でも、ペダルストローク(IR位置)が所定値としての位置IRd以上となった段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード乗継を円滑に行うことができる。特に、この場合には、下流剛性の低い状態でブレーキペダル5の踏込み操作量が所定量に達したときには、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行うことにより、ホイールシリンダ3,4の下流剛性が低剛性の場合でも回生協調制御を行うことができる。
次に、図17、図18は本発明の第5の実施の形態を示し、第5の実施の形態の特徴は、ブレーキペダルの操作速度SVに基づいて相対位置制御モードから液圧制御モードへのモード乗継を行う構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図17に示すモード乗継制御では、ステップ71でブレーキペダル5の操作速度S5を算出する。この操作速度S5は、操作量検出センサ7からの検出信号によるペダル操作量、踏み力の変化量により求められるもので、例えば図18中に実線で示す特性線101の如く、操作速度S5はブレーキペダル5の操作量(IR位置)に対して変化する特性となっている。
図18中に点線で示す特性線71は、前記第2の実施の形態でも述べたように、ブレーキペダル5の操作量である変位S(IR位置)に基づいてマスタシリンダ8内に発生すべき基準目標SP特性マップに基づく目標液圧の特性を表したもので、目標液圧による液圧指令値S1として算出される。また、同じく点線で示す特性線73は、ブレーキペダル5の操作速度SVが速い場合に早めにモード乗継を行うことができるように、液圧指令値S1よりも大きな特性となる第1の液圧閾値特性S3を設定したものである。
図18中に実線で示す特性線102の特性線部102Aは、目標相対位置XTに基づく液圧指令値S2を算出したもので、この場合の特性線部102Aは、制動操作を開始した初期段階でブレーキペダル5の操作速度SVが速いために、マスタシリンダ8内の液圧Pがブレーキペダル5の操作量である変位S(IR位置)に対して急カーブを描くように上昇している。そして、操作速度が小さくなると、マスタシリンダ8側のばね反力が小さくなっていき、前記相対変位ΔXの偏差が小さくなっていくため、液圧指令の上昇が緩やかになっていく。
次のステップ72では、第1の実施の形態による図7のステップ13と同様にブースタピストン18の摺動位置が「液圧が発生する位置IRo未満」であるか否かを判定する。そして、ステップ72で「YES」と判定したときには、ステップ73〜75にわたる処理を前述した図7のステップ14〜16と同様に行い、相対位置制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
一方、ステップ72で「NO」と判定されたときには、マスタシリンダ8の液圧室11A,11B内にブレーキ液圧が発生しているので、次のステップ76に移って操作速度S5(図18に示す特性線101)が予め決められた第1の速度閾値S6(図18参照)よりも大きいか否かを判定する。そして、ステップ76で「YES」と判定する間は、操作速度S5が速度閾値S6より大きいので、ステップ73〜75にわたる処理(相対位置制御モード)を継続する。
しかし、例えば図18に示すように特性線101による操作速度S5は、ペダルストローク(IR位置)が位置IReに達したときに、速度閾値S6以下となる。この場合には、ステップ76では「NO」と判定されるので、次のステップ77では、相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ74では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
このため、図18中に実線で示す特性線部102Bのように、ペダルストローク(IR位置)が位置IReに達した以降では液圧制御モードによるモータ制御が実行される。この液圧制御モードでは、ペダルストローク(IR位置)に対する液圧Pの特性が特性線部102Bのように、液圧指令値S1(特性線71)の特性と平行な特性となるように制御される。
かくして、このように構成される第5の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様にモード切換えを円滑に行うことができる。特に、第5の実施の形態によれば、ブースタピストン18がマスタシリンダ8内のブレーキ液圧を発生させ始める位置まで移動したときに、ブレーキペダル5の操作速度S5が、所定の速度閾値S6よりも大きい場合には、その後に操作速度S5が所定の速度閾値S6以下となったときに相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、ブレーキペダル5の操作速度S5が速い速踏み時は、その後に応答が落ち着くまで相対位置制御モードでホイールシリンダ3,4の下流剛性に応じたモータ制御を行い、操作速度S5の応答が落ち着いたら、ペダルストロークに対して目標液圧が設定される液圧制御モードにモード乗継ぎを円滑に行い、モード切換え時の液圧変動を抑えて特性のバラツキを低減することができる。
この場合、ブレーキペダル5の踏み速度が速いということは、マスタシリンダ8側のばね反力が大きくなる場合であり、これは前記相対変位ΔXの偏差が大きいことであり、液圧指令が大きいことを意味している。このため、前述した第2の実施の形態に近い効果を得ることができる。しかし、第5の実施の形態では、ペダルストローク(IR位置)が位置IReのときにモード乗継ぎを行い、第2の実施の形態による位置IRbよりも乗継ポイントを遅くし、操作速度S5が落ち着いてからモード乗継ぎを行うようにしているので、ブレーキペダルの踏み方によって生じるペダルストロークと目標液圧との特性のバラツキを小さくすることができる。
次に、図19、図20は本発明の第6の実施の形態を示し、第6の実施の形態の特徴は、ブレーキペダルの操作速度に基づいて相対位置制御モードから液圧制御モードへのモード乗継を行うと共に、ブレーキペダルの操作速度SVが遅い「ゆっくり踏み」の操作時にもモード乗継を円滑に行い得る構成としたことにある。なお、第6の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図19に示すモード乗継制御では、ステップ81〜86にわたる処理を、前記第5の実施の形態による図17のステップ71〜76と同様に行う。しかし、この場合は、ブレーキペダル5の操作速度S5が遅い「ゆっくり踏み」であるため、図20に実線で示す特性線111のように、ブレーキペダル5の操作量(IR位置)に対してゆっくりと変化する特性となっている。
図20中に実線で示す特性線112の特性線部112Aは、目標相対位置に基づく液圧指令値S2を算出したもので、この場合の特性線部112Aは、制動操作を開始した段階でブレーキペダル5の操作速度が遅いために、マスタシリンダ8内の液圧Pがブレーキペダル5の操作量(IR位置:S)に対して緩やかに上昇している。図20中に点線で示す特性線71は、前記第2の実施の形態でも述べたように、基準目標SP特性マップに基づいて算出される目標液圧による液圧指令値S1として算出される。
ここで、ステップ86で「NO」と判定したときには、操作速度S5(図20に示す特性線111)が予め決められた第1の速度閾値S6(図20参照)以下となっている。このため、次のステップ87では、操作速度S5(特性線111)が第1の速度閾値S6よりも小さく設定された他の速度閾値としての第2の速度閾値S7(図20参照)以上となっているか否かを判定する。
ステップ87で「NO」と判定する間は、操作速度S5(特性線111)が第2の速度閾値S7(図20参照)よりも小さく、ペダルストローク(IR位置)は位置IRfには達していないので、ステップ83〜85にわたる処理(相対位置制御モード)を継続する。
一方、ステップ87で「YES」と判定したときには、例えば図20に示すように、ペダルストローク(IR位置)が位置IRfに達し、特性線111による操作速度S5が速度閾値S7以上となっている。このため、次のステップ88では、相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ84では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
このため、図20中に実線で示す特性線部112Bのように、ペダルストローク(IR位置:S)が位置IRfに達した以降では液圧制御モードによるモータ制御が実行される。この液圧制御モードでは、ペダルストローク(IR位置:S)に対する液圧Pの特性が特性線部112Bのように、液圧指令値S1(特性線71)とほぼ平行な特性となるように制御される。
かくして、このように構成される第6の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様にモード切換えを円滑に行うことができる。特に、第6の実施の形態によれば、ブースタピストン18がマスタシリンダ8内のブレーキ液圧を発生させ始める位置まで移動したときに、ブレーキペダル5の操作速度S5が、所定の速度閾値S6よりも小さい場合には、該所定の速度閾値S6よりも小さく設定された他の速度閾値S7以上となったときに、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、ブレーキペダル5の操作速度S5を図20に示す特性線111の如く徐々に上げるような場合でも、ペダルストローク(IR位置)が位置IRfに達した段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへと早めにモード切換えを行うことにより、乗継タイミングを早くすることができ、例えば回生協調制御に早目に入ることができる。
なお、前記第6の実施の形態では、ブレーキペダル5の操作速度S5を図20に示す特性線111の如く徐々に上げ、操作速度S5が速度閾値S7以上となる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば操作速度が第2の速度閾値S7以上とならない場合もあるので、この場合には、例えば第4の実施の形態のように、ブレーキペダルの操作量が予め決められたストローク量に達したときにモード切換えを行う構成としてもよい。
次に、図21、図22は本発明の第7の実施の形態を示し、第7の実施の形態の特徴は、マスタシリンダ内に発生する液圧の検出値に基づいて相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としたことにある。なお、第7の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図22中に点線で示す特性線121は、ブレーキペダル5の操作量(IR位置)に基づいてマスタシリンダ8内に発生すべき目標液圧による液圧指令値S1を表している。図22中に実線で示す特性線122は、目標相対位置に基づいて算出された液圧指令値S2を表している。また、点線で示す特性線123は、液圧指令値S1よりも大きい特性として予め設定された液圧閾値S8を表している。
図22中に実線で示す特性線124は、マスタシリンダ8内に発生するブレーキ液圧の検出値であり、例えば図1〜図3に示す液圧センサ29を用いて検出される。マスタシリンダ8内の液圧Pは、ブレーキペダル5の操作量(IR位置)を大きくするに従って特性線124に沿って上昇している。
図21に示すモード乗継制御では、まず、ステップ91において、第1の実施の形態による図6のステップ13と同様にブースタピストン18の摺動位置が「液圧が発生する位置IRo未満」であるか否かを判定する。そして、ステップ91で「YES」と判定したときには、ステップ92〜94にわたる処理を前述した図7のステップ14〜16と同様に行い、相対位置制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
一方、ステップ91で「NO」と判定されたときには、マスタシリンダ8の液圧室11A,11B内にブレーキ液圧が発生しているので、次のステップ95では、このときのブレーキ液圧(図22に示す特性線124)が液圧指令値S1よりも大きい特性である液圧閾値S8(図22に示す特性線123)よりも大きいか否かを判定する。ステップ95で「YES」と判定する間は、ステップ25〜27にわたる処理(相対位置制御モード)を継続する。
しかし、例えば図22に示すように、ペダルストローク(IR位置)が位置IRgに達したときには、特性線124で示す液圧Pが特性線123による液圧閾値S8以下となっている。この場合には、ステップ95で「NO」と判定されるので、次のステップ96に移って相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ93では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
かくして、このように構成される第7の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様にモード切換えを円滑に行うことができる。特に、第7の実施の形態によれば、ブレーキ操作の開始時に相対位置制御モードによるモータ制御を行い、ブースタピストン18がマスタシリンダ8内のブレーキ液圧を発生させ始める位置まで移動したときに、マスタシリンダ8内のブレーキ液圧が所定の液圧閾値S8よりも大きい場合には、その後に該液圧閾値S8以下となったときに相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、下流剛性が高くなるような場合でも、ペダルストローク(IR位置)が位置IRgに達した段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行うことにより、モード乗継制御を円滑に行うことができる。なお、剛性が高い場合には、相対位置制御モードと液圧制御モードとで特性の傾きが急変することがあり、このような場合には、モード切換えを行わない方が踏込み途中のペダルフィーリングが向上することもある。
次に、図23、図24は本発明の第8の実施の形態を示し、第8の実施の形態の特徴は、ブレーキペダルの操作速度が遅い「ゆっくり踏み」の操作時にも、マスタシリンダ内に発生する液圧の検出値に基づいて相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを早めに行い得る構成としたことにある。なお、第8の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、図24中に点線で示す特性線131は、目標液圧による液圧指令値S1を表し、前記第7の実施の形態で述べた図22に示す特性線121と同じ特性であってもよい。図24中に実線で示す特性線132は、目標相対位置に基づいて算出された液圧指令値S2を表している。また、点線で示す特性線133は、液圧指令値S1よりも大きい特性として予め設定された液圧閾値S8を表している。
図24中に点線で示す特性線134は、前記液圧閾値S8よりも小さい特性として予め設定された他の液圧閾値S9を表している。図24中に実線で示す特性線135は、マスタシリンダ8内に発生するブレーキ液圧の検出値であり、前記第7の実施の形態と同様に、例えば図1〜図3に示す液圧センサ29を用いて検出された液圧Pの特性を表している。
図23に示すモード乗継制御では、ステップ101〜105にわたる処理を、前記第7の実施の形態による図21のステップ91〜95と同様に行い、相対位置制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。ステップ105で「NO」と判定されたときには、特性線135で示す液圧Pが特性線133による液圧閾値S8以下となっている。
そこで、この場合には、次のステップ106に移って特性線135で示す液圧Pが特性線134による他の液圧閾値S9以上であるか否かを判定する。そして、ステップ106で「NO」と判定する間は、特性線135による液圧Pが特性線134による他の液圧閾値S9よりも小さいので、ステップ102〜104にわたる処理(相対位置制御モード)を継続する。
しかし、例えば図24に示すように、ペダルストローク(IR位置:S)が位置IRhに達したときには、特性線135で示す液圧Pが特性線134による液圧閾値S9以上となっている。この場合には、ステップ106で「YES」と判定されるので、次のステップ107に移って相対位置制御(RC)モードから液圧制御(PC)モードへとモード切換え(Change)を行い、例えば図4に示す液圧制御部55により目標ピストン位置を算出する。そして、次のステップ103では、液圧制御モードにより電動モータ21を駆動制御する。
かくして、このように構成される第8の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様にモード切換えを円滑に行うことができる。特に、第8の実施の形態によれば、ブレーキ操作の開始時に相対位置制御モードによるモータ制御を行い、ブースタピストン18がマスタシリンダ8内のブレーキ液圧を発生させ始める位置に移動し、マスタシリンダ8内の液圧Pが所定の液圧閾値S8よりも小さい場合には、該液圧閾値S8よりも小さい他の液圧閾値S9以上となったときに相対位置制御モードから液圧制御モードへとモード切換えを行う構成としている。
このため、ブレーキペダル5の操作速度が遅い「ゆっくり踏み」の場合でも、ペダルストローク(IR位置)が位置IRhに達した段階で、相対位置制御モードから液圧制御モードへと早めにモード乗継を行うことができる。また、第8の実施の形態によれば、下流剛性が高めの場合でも、ブレーキペダル5の踏込み操作が比較的浅い段階でモード切換えを行うことにより、ペダルフィーリングの変化を感じにくくすることができ、回生協調制御を行うことができる。
なお、前記第8の実施の形態では、マスタシリンダ8内のブレーキ液圧が図24に示す特性線135の如く、液圧閾値S9以上となる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブレーキ液圧が液圧閾値S9以上とならない場合もあるので、この場合には、例えば第4の実施の形態のように、ブレーキペダルの操作量が予め決められたストローク量に達したときにモード切換えを行う構成としてもよい。
以上で述べたように、本実施の形態のブレーキ装置によれば、前記制御切換手段は、前記相対位置制御手段により算出される目標相対位置に基づく液圧指令値が、前記液圧制御手段により算出される液圧指令値以下になった後に前記制御切換を行うことを特徴としている。また、前記制御切換手段は、前記相対位置制御手段により算出される目標相対位置に基づく液圧指令値が、前記液圧制御手段により算出される液圧指令値と一致したときに、前記制御切換を行うことを特徴としている。
また、本実施の形態のブレーキ装置によれば、前記制御切換手段は、前記相対位置制御手段により算出される目標相対位置に基づく液圧指令値が、前記液圧制御手段により算出される液圧指令値よりも大きな第1の液圧閾値特性よりも大きい場合に、該第1の液圧閾値特性以下となってから前記制御切換を行うことを特徴としている。一方、前記制御切換手段は、前記相対位置制御手段により算出される目標相対位置に基づく液圧指令値が、前記液圧制御手段により算出される液圧指令値よりも大きく設定される第1の液圧閾値特性よりも小さい場合には、前記第1の液圧閾値特性よりも小さく、かつ前記液圧制御手段により算出される液圧指令値よりも大きく設定される第2の液圧閾値特性以上となってから前記制御切換を行うことを特徴としている。
本実施の形態のブレーキ装置によれば、前記制御切換手段は、前記ピストンが前記マスタシリンダ内のブレーキ液圧を発生させ始める位置まで移動したときに、前記ブレーキペダルの操作速度が、所定の速度閾値よりも大きい場合には、該所定の速度閾値以下となったときに、前記制御切換を行うことを特徴としている。一方、前記制御切換手段は、前記ブレーキペダルの操作速度が、所定の速度閾値よりも小さい場合には、該所定の速度閾値よりも小さく設定された他の速度閾値以上となったときに、前記制御切換を行うことを特徴としている。
本実施の形態のブレーキ装置によれば、前記制御切換手段は、前記ブレーキペダルの操作開始時に前記相対位置制御を行い、前記ピストンが前記マスタシリンダ内のブレーキ液圧を発生させ始める位置まで移動したときに、前記マスタシリンダ内のブレーキ液圧が、所定の液圧閾値よりも大きい場合には、該所定の液圧閾値以下となったときに、前記制御切換を行うことを特徴としている。一方、前記制御切換手段は、前記ブレーキ液圧が、所定の液圧閾値よりも小さい場合には、該所定の液圧閾値よりも小さく設定された他の液圧閾値以上となったときに、前記制御切換を行うことを特徴としている。
本実施の形態のブレーキ装置によれば、前記車両に設けられた回生制動制御手段から回生協調制動要求および回生制動力値を受信し、前記制御切換手段へ前記切換え要求を行う回生演算手段をさらに有し、該回生演算手段は、前記制御切換手段が前記相対位置制御から前記液圧制御への切換えを行うまで、回生協調制動を行わせないようにする構成としている。