以下、本発明に係る緊急通報システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る緊急通報システム10は、図1に示すように、車両12と外部アクセス群14との間で、ネットワーク16を介して情報通信を行うネットワークシステムとして構築される。特に、緊急通報システム10は、車両12やその乗員であるユーザUが事故等のトラブルに遭った際に、外部に簡単且つ迅速に連絡を行う構成となっている。なお、図1中では、車両12として自動四輪車を図示しているが、緊急通報システム10を利用する車両12は特に限定されないことは勿論である。
緊急通報システム10は、車両12側の構成として、制御部18と、車両12の事故を検出する事故検出部20と、ネットワーク16に接続可能な外部通信手段22とを含む。制御部18は、緊急通報システム10における車両12側の処理を行うものであり、車両12に搭載される車載装置を利用することができる。車載装置としては、例えば、ナビゲーション装置24やディスプレイオーディオ(DA)装置が挙げられる。以下では、ナビゲーション装置24を使用した場合について詳述していく。なお、緊急通報システム10の制御部18は、車載装置と別に設けられてもよい。
ナビゲーション装置24(車載装置)は、筐体内部に図示しない演算処理部、記憶部及び入出力部を有するコンピュータとして構成される。このナビゲーション装置24は、入出力部を介して、車載タッチパネル26、車載スピーカ28(図2参照)、車載マイク30(図2参照)、ルーフモジュール32等、車両12内に搭載される種々の電子機器に電気的に接続されている。また、ナビゲーション装置24は、車両12のナビゲーションを実施するために、GNSS(global navigation satellite system)衛星の信号を受信して車両12の現在位置を測位するGNSS測位部34(図2参照)を有する。
ナビゲーション装置24は、車両12の通常走行時に、GNSS測位部34が測位した車両12の現在位置の情報を地図情報M(図3B参照)に重畳して車載タッチパネル26に表示する。そして、ユーザUが入力した目的地の情報を加味して車両12の移動経路を算出し、地図情報M上に表示すると共に車載スピーカ28から音声案内を出力して車両12のナビゲーションを実施する。このようなナビゲーション装置24の機能は公知であるため、詳細な説明については省略する。
車載タッチパネル26は、比較的大きめの表示画面26a(図3B参照)を有し、車両12の現在位置の情報や地図情報の表示と共に、ナビゲーション装置24の処理下に車両12の走行に利用可能な種々のデータ情報又は操作ボタン等を表示する。また、車載タッチパネル26は、表示画面26aに応じたユーザ操作を検出してナビゲーション装置24に伝達する操作部としても機能する。
そして、車載タッチパネル26は、緊急通報システム10の実施時(緊急通報時)に、制御部18の処理下に緊急通報に伴う種々の表示(例えば、通信状況や操作手順、エラー等)を適宜表示する。
車載スピーカ28は、車室内の所定位置(例えば、フロントドアの両サイドのキックパネル)に設けられ、ナビゲーション装置24の処理下に音情報を出力する。車両12の通常走行時には、例えば、車両12を誘導する音声案内、或いはラジオや音楽等を出力する。緊急通報時には、例えば、ユーザUの操作を誘導する音声、或いは緊急通報センタ58のオペレータOの音声を出力する。
車載マイク30は、車室内の所定位置(例えば、フロントウインドシールドに配置されたバックミラー)に設けられ、ユーザUの音声を検出してナビゲーション装置24に送信する。車両12の通常走行時に、ナビゲーション装置24は、ユーザUの車載タッチパネル26の操作以外に、車載マイク30から検出したユーザUの音声を解析して音声認識に基づく処理を行うとよい。緊急通報時に、例えば、制御部18は、車載マイク30を利用して、音声認識に基づく処理を行う他に、ユーザUが携帯端末44を持たずにオペレータOと対話を行うこと(ハンズフリーモード)を可能とする。
ルーフモジュール32は、例えば、車両12のルーフの車室側且つ車幅方向略中央部に設定される。基本的には、このルーフモジュール32は、図3Aに示すように操作ボタン32aにより車室内の照明の操作等を行うために設けられる。なお、ルーフモジュール32の機能については特に限定されず、サンルーフの開閉等のように種々の操作機構を含むことができる。
また、ルーフモジュール32には、ユーザUが外部アクセス群14のうち緊急通報センタ58専用に緊急通報を行うための緊急通報押ボタン38(図2も参照)が設けられている。なお、緊急通報押ボタン38は、オン操作し難くい構成(例えば、意図的に強い押圧力を加えないとオンにならない等)になっているとよい。これにより、ユーザUによる緊急通報システム10の誤操作を防ぐことができる。
図1及び図2に示すように、緊急通報システム10の事故検出部20は、車両12内に設けられる車載安全装置であるエアバッグシステム40を利用することができる。例えば、エアバッグシステム40は、図示しない加速度センサ、エアバッグECU、インフレータ、エアバッグ等を有する。そして、加速度センサが衝撃を検出し、エアバッグECUが加速度センサの検出信号に基づき車両12の衝突を判別すると、インフレータを作動させエアバッグを膨らませてユーザUの安全を確保する。なお、事故検出部20として適用可能な車載安全装置としては、エアバッグシステム40の他に、PUH(ポップアップフード)システム、シートベルトシステム等が挙げられる。
事故検出部20は、上記エアバッグシステム40の構成のうち、例えばエアバッグECUを適用するとよい。すなわち、緊急通報システム10の制御部18は、事故検出部20(エアバッグECU)に接続され、車両12の衝突判別結果であるSRS信号を受信する。そして、受信したSRS信号に基づき、外部通信手段22を用いて外部アクセス群14に対し緊急通報を行う緊急通報処理を実施する。なお、事故検出部20は、エアバッグECUに限らず、例えば、エアバッグシステム40の加速度センサが出力する検出信号を直接受信してもよい。
緊急通報システム10の外部通信手段22は、緊急通報の確実性を高めるために、複数(本実施形態では2つ)の通信装置により構成される。本実施形態において、第1外部通信手段は、車両12自体に取り付けられる専用通信機器42(車載通信手段)であり、第2外部通信手段は、ユーザUが車内に持ち込む携帯端末44(持ち込み通信手段)である(図1及び図2参照)。
専用通信機器42は、車外の基地局54に対しパケット通信方式等によりアクセス可能な無線用アンテナを有し、インターネット等のネットワークを利用して符号データの送受信を行う。つまり、専用通信機器42は、音声応答機能を有するテレマティクスシステムではない簡易な情報通信機能に構成されている。これにより、車両の通信設置コストが軽減される。
この専用通信機器42は、基本的には、ナビゲーション装置24の処理下に通信回線を開くことで、ネットワーク16との間で無線通信を行う。通常走行時に、例えば、ナビゲーション装置24は、外部のナビゲーション情報センタ46に所定時間毎にアクセスして車両12の走行に利用可能なサービス情報を受信する。受信するサービス情報としては、例えば、道路の渋滞情報、駐車場の位置情報、地図の更新情報、気象情報、防災情報、観光スポット等のドライブ情報、システムの更新情報等が挙げられる。また上記のサービス情報の他にも、専用通信機器42は、ネットワーク16を介して利用し得る種々の情報(例えば、車両12側の現在位置の情報、ラジオ、音楽又は映像等のコンテンツ等)を送受信することができる。
なお、専用通信機器42は、ユーザUの任意によりナビゲーション装置24に簡易に着脱可能となっていることが好ましい。例えば、ナビゲーション装置24は、入出力部に接続するUSB端子48(図2参照:接続コネクタ)を、車両12のセンターコンソール内に備えるとよい。ユーザUは、メーカ等から提供された専用通信機器42をUSB端子48に接続することで簡単にデータ通信を行うことが可能となる。
第2外部通信手段である携帯端末44は、専用通信機器42と異なり、外部アクセス群14との間で音声通話を行うことができ、且つ符号のデータ通信を行うことが可能なものが適用される。この種の携帯端末44としては、例えばスマートフォンを含む携帯電話が挙げられる。以下の説明では、スマートフォンを適用した場合について代表的に述べていく。また、携帯端末44は、音声通話機能を有することを条件に、携帯型情報端末(PDA、タブレット端末等)、ラップトップコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ或いは他の情報通信機器を用いることもできる。
さらに、携帯端末44は、外部アクセス群14への無線接続(音声通話接続や符号のデータ通信接続)の他に、車内においてナビゲーション装置24との間でデータを送受信可能なものが適用される。これにより、携帯端末44は、ナビゲーション装置24の情報を受信して使用する、又は携帯端末44の情報をナビゲーション装置24に提供することができる。
ナビゲーション装置24と携帯端末44間の接続は、例えば、bluetooth(登録商標)等の通信規格で知られる近距離無線通信を適用することができる。すなわち、携帯端末44の内部には近距離通信インターフェース(図示せず)が設けられ、ナビゲーション装置24にも近距離通信インターフェース50が設けられるとよい。なお、ナビゲーション装置24と携帯端末44の接続は、近距離無線通信に限らず、USBやHDMI(登録商標)等による有線通信でもよい。
携帯端末44には、ナビゲーション装置24との接続にともない処理を行う連動用アプリケーション52(以下、連動用アプリ52と略称する)が動作可能に記憶(インストール)される。連動用アプリ52は、携帯端末44にインストールされることで、携帯端末44内でバックグランド起動するように構成されている。これにより緊急時には、連動用アプリ52が直ちに処理を開始し、ナビゲーション装置24(制御部18)と携帯端末44とを容易に連動させる。
以上のように、外部通信手段22が専用通信機器42と携帯端末44とを含むことで、ネットワーク16と車両12の間では、情報の送受信経路として多様な形態をとり得る。例えば、ナビゲーション装置24と外部アクセス群14の間で符号データの送受信を行う場合は、専用通信機器42から基地局54に無線接続する第1経路と、携帯端末44に近距離無線通信を行い携帯端末44から基地局56に無線接続する第2経路とがある。
ネットワーク16も、上記の2つの外部通信手段22に応じて、複数種類のネットワークを利用することができる。例えば、専用通信機器42の場合は、インターネットプロトコルを利用する無線アクセスシステム16aを介して外部アクセス群14に接続する。無線アクセスシステム16aの基地局54は、符号データの通信に特化しているので設置コストが低減され、通信インフラとして公道付近に多数設けられる。よって、専用通信機器42を利用したデータ通信は比較的容易に行うことができる。
一方、携帯端末44の場合は、音声通話を行うことが可能な基地局56を介して移動体通信網16bに接続し、さらに移動体通信網16bから公衆交換電話網を通して外部アクセス群14に接続する。
なお、ネットワーク16については、車両12と外部アクセス群14の間を情報通信可能なものであれば、その経路や通信方式については特に限定されるものではない。例えば、専用通信機器42と緊急通報センタ58を結ぶ無線アクセスシステム16aは、プライベートネットワークに対応するように構成してもよい。これにより、ネットワークの混雑による通信遅延の防止及び接続率の向上が可能となる。
一方、外部アクセス群14は、ネットワーク16を通じてナビゲーション装置24やユーザUの携帯端末44がアクセス可能な情報管理網であり、ナビゲーション情報センタ46、緊急通報センタ58等が存在する。ナビゲーション情報センタ46は、上述したようにナビゲーション装置24が無線通信することで、走行に利用可能なサービス情報を提供する。
緊急通報センタ58は、車両12からの緊急通報を受け付けて適切な対応を図るための緊急通報の専用機関である。緊急通報センタ58には、ネットワーク16に接続可能なコンピュータ58aが設けられると共に、このコンピュータ58aを使用しつつユーザUとの対話を行うオペレータOが配されている。
コンピュータ58aには、緊急通報時に緊急通報情報UI(通報データ)が車両12から送信される。緊急通報情報UIとしては、GNSS測位部34が測位した車両12の現在位置の情報、所定距離分の走行履歴の位置情報が含まれる。緊急通報センタ58のオペレータOは、コンピュータ58aに表示された緊急通報情報UIやユーザUとの対話に基づき車両12やユーザUのトラブルを判断する。そして状況に応じて、消防署60、警察署62、病院64、ロードサービス機関(図示せず)等に適宜連絡を行い、救急車やパトカー、車両回収車等の出動を要請する。
次に、緊急通報システム10を実施する具体的な構成について説明する。緊急通報システム10の制御部18は、ナビゲーション装置24の演算処理部が記憶部に記憶された緊急通報プログラム66を実施することにより構築される。この制御部18は、車両12やユーザUのトラブル発生時に、緊急通報センタ58との間で緊急通報を行うための機能部として、通報トリガ取得部68(通報トリガ検出手段)、緊急通報処理部70(緊急通報処理手段)を有する。
通報トリガ取得部68は、緊急通報システム10の起動状態で待機し、車両12に設けられている所定の構成から通報トリガTを受信する。通報トリガTとしては、事故検出部20からのSRS信号T1、緊急通報押ボタン38からのON操作の信号T2a、ユーザUの緊急通報を要求する口頭指示T2b等が挙げられる。ユーザUの口頭指示T2bは、車載マイク30を介して音声入力されたものを制御部18が解析することにより認識する。なお、緊急通報押ボタン38のON操作とユーザUの口頭指示の信号T2a、T2bは、SRS信号T1と異なり事故検出に依らないという共通性から、以下、まとめて事故外信号T2という。
通報トリガ取得部68は、制御部18の外部から通報トリガT(SRS信号T1又は事故外信号T2)を受信すると、その旨を緊急通報処理部70に通知する。緊急通報処理部70は、通報トリガ取得部68の通知に基づき緊急通報処理を開始して、緊急通報センタ58への通報準備、緊急通報情報UIの生成等を行う。
緊急通報処理部70の内部には、通報トリガ判別部72と、端末接続判別部74とが構築されている。通報トリガ判別部72は、通報トリガ取得部68の受信した通報トリガTが、SRS信号T1か、事故外信号T2かを判別(判定)する。通報トリガTは、SRS信号T1と事故外信号T2のデータリンク層等を異ならせることで容易に識別することができる。
なお、通報トリガTがSRS信号T1の場合には、制御部18は、図3Bに示すように車載タッチパネル26に緊急通報を行うか否か、ユーザUが選択する確認画面76を表示するとよい。
端末接続判別部74は、ナビゲーション装置24に対する専用通信機器42及び携帯端末44の接続状態を判別(判定)する。専用通信機器42の接続は、端末接続判別部74がUSB端子48の接続状態を確認することで容易に判別することができる。
また、携帯端末44は、ナビゲーション装置24の初期設定時に予め接続設定(bluetoothのペアリング設定)することで、以降に携帯端末44を車両12内に持ち込むと、ナビゲーション装置24と自動的に通信可能になることが望ましい。端末接続判別部74は、ナビゲーション装置24の起動状態で、近距離無線通信の信号を発信して携帯端末44の応答を確認することにより、携帯端末44の接続を判別することができる。
制御部18は、通報トリガ判別部72や端末接続判別部74の判別結果を利用しつつ処理を行うことで、専用通信機器42又は携帯端末44を介して緊急通報センタ58に緊急通報を行う。緊急通報を行う際には緊急通報情報UIを生成する。SRS信号T1を受信した場合に、制御部18は、SRS信号T1に基づく事故情報を付加するとよい。これにより、緊急通報センタ58のオペレータOは、車両12の事故の状況をある程度認識することができる。
本実施形態に係る緊急通報システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用効果について説明する。
ユーザUは、車両12の通常走行時に、ナビゲーション装置24を適宜動作させることで、ナビゲーションサービスを享受する。つまり、ナビゲーション装置24は、車両12の現在位置を測位しつつ、車両12を目的地に誘導するナビゲーション処理を実施している。また、ナビゲーション装置24は、車両12の通常走行時に、専用通信機器42により通信回線を開きネットワーク16を介して外部アクセス群14との間でデータ通信を行う。ナビゲーション装置24は、走行に供する多様なサービス情報(交通情報、気象情報等)を所定時間毎に取得し更新することができ、ユーザUに良好な走行環境を提供する。
また、車両12の通常走行時には、緊急通報システム10の制御部18が起動されて車両12やユーザUのトラブル発生に伴う通報トリガTを受信可能な待機状態となっている。制御部18は、通報トリガTを受け付けることで、図4に示す緊急通報処理フローを開始する。
緊急通報処理フローにおいて、通報トリガ取得部68が通報トリガT(SRS信号T1又は事故外信号T2)を受信すると(ステップS1)、制御部18は、ナビゲーション装置24のナビゲーション処理に対し割り込み処理を行う。なお、通報トリガTがSRS信号T1の場合には、緊急通報システム10の誤動作を防ぐため、SRS信号T1を所定時間(例えば数秒)受信し続けた場合に、以降の緊急通報処理を行うとよい。
また、SRS信号T1の受信後は、緊急通報センタ58に緊急通報を行うか否かの選択を促す確認画面76(図3B参照)を車載タッチパネル26に表示することが好ましい。そして、ユーザUによる確認画面76のYESボタンの選択に基づき、緊急通報センタ58への緊急通報を開始する。また、事故状況によっては、ユーザUがボタン操作できない可能性もあるので、確認画面76の表示後に所定時間経過した場合に、制御部18はYESボタンが押されたと処理して、以降の処理フローに進むことが好ましい。なお、ユーザUがNOボタンを選択した場合には、ユーザUの意思により緊急通報の中止を指示したと見なすことができるため、緊急通報処理を停止する。
割り込み処理を開始すると、緊急通報処理部70は、緊急通報センタ58への緊急通報の実施可否を確認又は設定する通報準備サブルーチンを実施する(ステップS2)。この通報準備サブルーチンの実施により、制御部18は、緊急通報システム10における複数の外部通信手段22(専用通信機器42又は携帯端末44)による通信経路を効果的に設定することができる。通報準備サブルーチンの処理フローについては後に詳述する。
なお、トラブル発生時における外部通信手段22の接続環境は、通常走行時の接続環境と異なる可能性がある。そのため、通報準備サブルーチンはトラブルの発生に伴い基本的に実施することが望ましいが、処理の迅速性を重視して実施を省略してもよい。例えば、車両12の通常走行時にナビゲーション装置24が専用通信機器42と携帯端末44の接続関係を認識すること等により、図4中の破線で示すように通報準備サブルーチンを飛ばすことができる。
次に、緊急通報処理部70は、緊急通報センタ58に緊急通報を行う処理を実施する。具体的には、専用通信機器42を用いて緊急通報情報UIのデータ通信を行うと共に(ステップS3)、携帯端末44を用いて緊急通報センタ58のオペレータOとの間で音声通話を実施させる(ステップS4)。
以下、図5のシーケンス図を参照して、ステップS3及びS4を含む緊急通報時のより具体的な流れを説明していく。制御部18は、緊急通報の実施に伴い上述したステップS1、S2等の処理フローを行うと、緊急通報センタ58へのアクセスを開始する。
この場合、緊急通報処理部70は、先ず専用通信機器42から緊急通報センタ58にセッション開始信号を無線送信する(ステップS3−1)。無線送信されたセッション開始信号は、車両12の近くの基地局54に受信され、ネットワーク16を通して緊急通報センタ58に送信される。緊急通報センタ58では、サーバ等を介して所定のコンピュータ58aが信号を受け付ける。これにより、緊急通報処理部70は、専用通信機器42と緊急通報センタ58間の接続を確認することができる。
なお、緊急通報処理部70は、緊急通報センタ58にアクセスを開始する際に、図6に示すセッション開始処理フローを行い、緊急通報情報UIの送信の確実性を高めることが好ましい。具体的には、セッション開始処理フローを開始すると、制御部18は、セッション開始信号の送信に基づき、専用通信機器42による通信が可能か否かを判別する(ステップS3−1−1)。セッション開始信号が正常にコンピュータ58aに受け付けられたと判別すると、緊急通報処理部70は、専用通信機器42を使用してデータ通信を行うように設定する(ステップS3−1−2)。
一方、ステップS3−1−1でセッション開始信号を送信できなかった場合、緊急通報処理部70の端末接続判別部74により、ナビゲーション装置24と携帯端末44の接続状態を確認する(ステップS3−1−3)。データ通信の経路を第1経路である専用通信機器42から、第2経路である携帯端末44に替えるためである。なお、専用通信機器42によるセッション開始信号の送信は、失敗しても所定回数(例えば2回)リトライすることが望ましい。リトライしても接続に失敗した場合にステップS3−1−6に進む。
ステップS3−1−3において、ナビゲーション装置24と携帯端末44の接続状態を判別すると、次に携帯端末44の使用が可能か否か(通信可否)を判別する(ステップS3−1−4)。この場合、緊急通報処理部70は、近距離無線通信により携帯端末44を動作させ、携帯端末44からセッション開始信号を緊急通報センタ58に送信する。セッション開始信号が正常にコンピュータ58aに受け付けられたと判別すると、緊急通報処理部70は携帯端末44を使用してデータ通信を行うように設定する(ステップS3−1−5)。
一方、ステップS3−1−3、S3−1−4において携帯端末44の使用不可を判別した場合、緊急通報処理部70は車載タッチパネル26に緊急通報センタ58への接続ができない旨のエラー画面を表示する(ステップS3−1−6)。ステップS3−1−2、S3−1−5、S3−1−6を終了すると、緊急通報処理部70は、セッション開始処理フローを終了し、以降の処理フローを実施する。なお、以下では、専用通信機器42の接続が正常な場合のフローについて説明するが、携帯端末44を用いても同様のフローを実施し得る。
図5に戻り、緊急通報処理部70は、緊急通報情報UIを専用通信機器42から緊急通報センタ58に送信する(ステップS3−2)。この緊急通報情報UIは、上述したように、車両12の現在位置の情報、所定距離分の走行履歴の位置情報等を含み、先に送信されたセッション開始信号と同じ経路を辿って緊急通報センタ58に送信される。なお、専用通信機器42による通信が不可能で携帯端末44を用いる場合、緊急通報処理部70は、近距離無線通信により携帯端末44に緊急通報情報UIを自動送信し、さらに携帯端末44から緊急通報情報UIを送信する。
また、緊急通報情報UIには、車両12に設けられる複数のエアバッグのうち作動箇所の情報、或いは衝撃荷重の検出値等の事故情報が含まれてもよい。さらに、緊急通報情報UIには、緊急通報システム10の登録番号、車両12の識別番号等が含まれることが好ましい。
緊急通報センタ58では、所定のコンピュータ58aと共に待機しているオペレータOが車両12の緊急通報情報UIを確認する。よって例えば、オペレータOは、緊急通報情報UIに含まれる登録番号に基づき、緊急通報センタ58のサーバ(又は外部の情報管理センタ)に登録されているデータベースを検索し、車両情報やユーザ情報を特定する。例えば、車両情報には、車種やナンバー等が含まれ、ユーザ情報には、車両12の所有者の氏名、年齢、識別番号、連絡先等が含まれるとよい。また、オペレータOは、緊急通報情報UIに含まれる車両12の現在位置の情報に基づき、トラブルの発生場所も特定する。
さらに、オペレータOは、発生したトラブルをより詳細に把握するために、ユーザUとのアクセスを図る。具体的には、セッション中に、緊急通報センタ58のコンピュータ58aにより緊急通報応答信号を送信する(ステップS3−3)。この緊急通報応答信号には、オペレータOに直通する電話番号の情報が含まれる。緊急通報応答信号は、ネットワーク16を介して車両12の専用通信機器42に受信され、緊急通報処理部70により認識される。なお、緊急通報応答信号は、オペレータOの操作に依らず、緊急通報情報UIの受信に基づきコンピュータ58aが自動返信する構成であってもよい。
緊急通報処理部70は、緊急通報応答信号の受信に基づき、緊急通報時の専用通信機器42(又は携帯端末44)を用いたデータ通信のセッションを終了する(ステップS3−4)。これにより、緊急通報処理におけるステップS3が終了する。
次に、緊急通報処理部70は、緊急通報応答信号の受信に基づき、緊急通報センタ58が緊急通報を受け付けたことを示す応答画面を車載タッチパネル26に表示する。この応答画面には、緊急通報応答信号に含まれていた電話番号も表示されるとよい。これにより、ユーザUは、携帯端末44を用いてこの電話番号に電話をかけることができる。なお、緊急通報処理部70は、緊急通報応答信号に電話番号が含まれていない場合や緊急通報センタ58への接続失敗の応答が返ってきた場合に、ステップS3−1、S3−2の処理を再び行うことが好ましい。
また、緊急通報処理部70は、ステップS4の処理として、近距離無線通信を用いて携帯端末44に指示信号を送信する(ステップS4−1)。この指示信号には、緊急通報応答信号に付随する電話番号が含まれている。すなわち、緊急通報処理部70は、携帯端末44から移動体通信網16bを介して緊急通報センタ58に自動連絡、換言すれば携帯端末44を用いて指示された電話番号に電話をかけさせる。
これにより、ユーザUとオペレータOが移動体通信網16b及び公衆電話網を通じて通話可能となる(ステップS4−2)。従って、ユーザUは携帯端末44を介してオペレータOにトラブルの詳細な内容を伝えることができる。オペレータOは、ユーザUとの会話内容や緊急通報情報UIに基づきトラブルの適切な対応を判断することが可能となる。
なお、制御部18は、携帯端末44を介して通話を行う際に、車載スピーカ28及び車載マイク30によりオペレータOとの対話を行う、いわゆるハンズフリーモードを実施することができる。ハンズフリーモードでは、ユーザUの音声が車載マイク30→ナビゲーション装置24→携帯端末44の経路を通して携帯端末44から緊急通報センタ58のオペレータOに伝達される。また、オペレータOの音声が携帯端末44→ナビゲーション装置24→車載スピーカ28の経路を通してユーザUに伝達される。
緊急通報センタ58のオペレータOは、ユーザUとの会話が終了すると回線を切断する(ステップS4−3)。そして、オペレータOは、車両12又はユーザUのトラブルに応じて消防署60、警察署62、病院64、或いはトラブルに対処可能な他の機関(ロードサービス機関)等に適宜連絡する。
一方、車両12側において、緊急通報センタ58からの電話連絡に対し携帯端末44が自動着信を受け付ける自動着信モードを実施させてもよい。自動着信モードでは、例えば、ユーザUが電話の受け取り操作を行わなくても、通話可能な環境が構築される。これにより、例えばオペレータOがユーザUに定期的に話しかけることで、ユーザUの不安を軽減する、又はトラブルの対応方法を知らせる等ができる。
また、車両12側において、緊急通報処理部70は、緊急通報センタ58からのトラブルに対応するための情報を自動的に受信する自動受信モードを実施するとよい。緊急通報処理部70は、受信した情報に応じて車載タッチパネル26に表示、又は車載スピーカ28から出力する等の処理を適宜行う。
以上のように緊急通報システム10は、専用通信機器42を用いて緊急通報情報UIを外部に送信し、さらに携帯端末44を用いて緊急通報センタ58との間で音声通話を行うことで、トラブルの情報をより的確に伝達することができる。例えば、トラブルの発生場所のようにユーザUが具体的に説明することが難しい内容を、緊急通報情報UIに含んで送信する。これにより、緊急通報センタ58のオペレータOは、車両12の位置を簡単に特定することができる。また、トラブルの具体的な内容については、携帯端末44を用いて音声通話を行うことで口頭により説明することができ、オペレータOは会話に基づき適切に対応を行うことができる。従って、車両12やユーザUに生じたトラブルに対し、一層良好な対処を図ることが可能となる。
また、専用通信機器42が通信を行えなかった場合には、専用通信機器42に替えて携帯端末44を用いることで、緊急通報情報UIをより確実に送信することができる。
なお、緊急通報処理部70は、緊急通報センタ58の電話番号が予め分かっていれば、通報トリガTの受信に基づき緊急通報情報UIを緊急通報センタ58に送信すると共に、ユーザUの携帯端末44から自動的に電話をかけさせてもよい。すなわち、図4中のステップS3とステップS4を同時に行うことができる。また、先に携帯端末44により緊急通報センタ58に電話をかけさせ、その後又は通話中に緊急通報情報UIを専用通信機器42から送信することもできる。
次に、図7を参照して、通報準備サブルーチンについて説明する。上述したように、本実施形態に係る緊急通報システム10は、SRS信号T1と事故外信号T2の2つの通報トリガTに基づき緊急通報処理を行い、さらに専用通信機器42と携帯端末44の2つの外部通信手段22により緊急通報センタ58へのアクセスを図る。
ところで、通報トリガTが事故外信号T2の場合は、ユーザUと緊急通報センタ58のオペレータOが直接対話することが重要となる。緊急通報情報UIの送信だけではオペレータOがトラブルの内容を把握することが難しいからである。その一方で、通報トリガTがSRS信号T1(すなわち事故の発生時)の場合は、緊急通報の重要度が高く、通話ができなくても緊急通報情報UIを直ちに送ることが好ましい。以上のことから、通報準備サブルーチンでは、携帯端末44の接続状態及び通報トリガTの種類を識別して、以降のステップS3、S4の処理の適切化を図る。
具体的には、通報準備サブルーチンを開始すると、緊急通報処理部70は、先ず緊急通報システム10の契約状態、すなわち緊急通報を行うことが可能な契約となっているか否かを確認する(ステップS2−1)。契約の確認方法としては、例えば、緊急通報処理部70が緊急通報システム10の契約に伴って提供された所定情報(登録番号等)を読み出すことにより簡単に確認することができる。また例えば、緊急通報システム10の動作をもって契約がなされていると見なすことも可能であり、従ってステップS2−1は実施を省略することもできる。
ステップS2−1において、緊急通報システム10の契約がなされていない場合は、緊急通報システム10の実施が不能であるため、ステップS2−2に進み車載タッチパネル26にエラー画面を表示する。エラー画面としては、緊急通報が未契約のため接続できない旨を表示するとよい。この際、緊急通報システム10の実施機関や緊急通報センタ58の電話番号を表示する等して連絡を促してもよい。また、エラーの報知は、エラー画面の表示に限定されず、例えば車載スピーカ28から音声や警告音を出力してもよい。
ステップS2−2の実施後、緊急通報処理部70は緊急通報の停止処理を行う(ステップS2−3)。緊急通報処理部70は、この停止処理により緊急通報の割り込み処理を終了してナビゲーション処理に復帰させる。
一方、ステップS2−1において緊急通報システム10との契約を確認すると、ステップS2−4に進み、端末接続判別部74によりナビゲーション装置24と携帯端末44の接続状態、すなわち携帯端末44が持ち込まれて起動されているか否かを判別する。携帯端末44を用いてユーザUがオペレータOと対話することが可能か否かを先に識別するためである。
上述したように、緊急通報システム10では、携帯端末44がナビゲーション装置24に近距離無線通信(又は有線通信)によりデータ通信可能に接続される。このため、緊急通報処理部70は接続確認信号を送信する等してその結果を判別することで、携帯端末44の接続状態を簡単に確認することができる。
ステップS2−4において携帯端末44が接続されていると判別した場合、緊急通報処理部70は、緊急通報センタ58への緊急通報の実施を設定する(ステップS2−5)。具体的には、緊急通報情報UIを生成し、専用通信機器42を介して緊急通報情報UIを送信する準備を行う。このステップS2−5の実施後は、通報準備サブルーチンを終了し、緊急通報の実施(ステップS3)の処理に移行する。
一方、ステップS2−4において携帯端末44が接続されていないと判別した場合、緊急通報処理部70の通報トリガ判別部72は、次に通報トリガTがSRS信号T1か又は事故外信号T2かを判別する(ステップS2−6)。通報トリガ判別部72は、受信した通報トリガTのデータリンク層に基づきSRS信号T1又は事故外信号T2を容易に識別することができる。
通報トリガTがSRS信号T1であることを判別すると、ステップS2−5に進み緊急通報センタ58への緊急通報の実施を設定する。すなわち、SRS信号T1の場合は、車両12に事故が発生したと識別することができ、緊急通報センタ58への迅速な通報が重要となるため、携帯端末44が接続されていなくても緊急通報情報UIの送信(ステップS3)を実施する。
反対に、通報トリガTがSRS信号T1ではない(事故外信号T2である)ことを判別すると、ステップS2−7に進み車載タッチパネル26にエラー画面を表示する。すなわち事故外信号T2である場合は、ユーザUとオペレータOとの対話によりトラブルを伝える必要があり、携帯端末44を介した通話接続が重要となる。よって、携帯端末44が未接続である場合は、緊急通報センタ58への緊急通報(緊急通報情報UIの送信)を行わず、エラー画面に携帯端末44が接続されていない旨を表示するとよい。また、エラーの報知は、エラー画面の表示に限定されず、例えば車載スピーカ28から音声や警告音を出力してもよい。
ステップS2−7の実施後は、ステップS2−3に進み緊急通報の停止処理を行い、緊急通報システム10を終了する。
なお、緊急通報処理部70は、ステップS2−7の実施後に、携帯端末44の接続状態の確認を再び行い(ステップS2−8)、携帯端末44の接続を認識した場合にはステップS2−5に進み緊急通報センタ58へ緊急通報を実施してもよい。
このように、緊急通報システム10は、通報準備サブルーチンの実施により、車両12の事故検出(SRS信号)と、事故検出以外のユーザUの指示による通報指示(事故外信号)とに応じて適切な緊急通報を行うことができる。すなわち、通報トリガTが事故外信号T2の場合は、緊急通報センタ58のオペレータOに対し携帯端末44を使用して通話を行うことが好ましいため、携帯端末44の接続がなされていない場合に緊急通報情報UIの送信は行わず、緊急通報が行えないことを通知する。その一方で、通報トリガTがSRS信号T1の場合は、緊急通報情報UIを迅速に送信することが好ましいため、携帯端末44が使用不可の場合でも専用通信機器42を用いて緊急通報を行う。これにより、ユーザUやオペレータOは、トラブルの発生時に、より一層効率的且つ適切な対処を図ることができる。
なお、通報準備サブルーチンは、図8の変形例に示すように、携帯端末44の接続確認の処理フローと通報トリガTの種別確認の処理フローを逆転してもよい。つまり、通報トリガTがSRS信号T1か否かを先に判別し(ステップS2−4a)、通報トリガTがSRS信号T1でない場合に携帯端末44の接続状態を判別する(ステップS2−6a)。このように処理フローを構成しても図7に示す通報準備サブルーチンと同様の効果を得ることができる。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。