JP2015158030A - 人工皮革、及び人工皮革の製造方法 - Google Patents

人工皮革、及び人工皮革の製造方法 Download PDF

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伸一 吉本
道憲 藤澤
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道憲 藤澤
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幸治 橋本
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Hideo Sugiura
英夫 杉浦
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Abstract

【課題】繊維基材に深く沈み込まない樹脂層を表面に備えた、しなやかさに優れた人工皮革を提供する。【解決手段】繊維基材と、繊維基材の表面を平滑化する平滑化層と、平滑化層に積層された樹脂表層と、を備え、平滑化層は、塗布工程を経て形成された、高分子弾性体50〜99質量%と充填剤1〜50質量%とを含有する厚さ10〜100μmの層である人工皮革。【選択図】図1

Description

本発明は、しなやかさに優れた人工皮革に関する。
従来から、不織布を含む人工皮革が知られている。人工皮革は天然皮革の代替品として、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌用途などの分野に用いられている。
銀付調の人工皮革(以下単に、人工皮革とも称する)は、例えば、不織布の内部の空隙に高分子弾性体を含浸付与して得られる繊維基材に、銀面調の外観を付与するための樹脂層が積層されて製造される。高分子弾性体は不織布に充実感を付与する。
銀面調の天然皮革は、緻密なコラーゲン繊維を含むためにしなやかさと高い充実感とを兼ね備える。天然皮革の高い充実感は、曲げたときに、丸みを帯びて高級感のある細かな折れ皺を形成させ、また、優れたドレープ性を発現させる。
しかし、天然皮革は、例えば、自動車の内装材のような耐熱性や耐水性が要求される用途には使用することが困難であった。コラーゲン繊維は耐熱性や耐水性に劣るためである。天然皮革に耐熱性や耐水性を付与するために、その表面に樹脂層を形成する方法もある。しかし、樹脂層を形成した場合には、天然皮革本来の銀面層の風合いやしなやかさが失われる。
一方、人工皮革は、天然皮革に比べて、耐熱性、耐水性、品質安定性、耐摩耗性に優れ、また、手入れもしやすい。しかしながら、人工皮革では、天然皮革に似たしなやかさを充分に備えた人工皮革が得られなかった。天然皮革のしなやかさに似せるために、極細繊維から形成された不織布を用いた人工皮革も知られている(例えば下記特許文献1)。しかし、極細繊維から形成された不織布を用いただけでは、天然皮革のしなやかさに充分に似た人工皮革が得られていなかった。
銀付調の人工皮革は、繊維基材の表面に銀面調の樹脂層を形成することにより得られる。繊維基材の表面に銀面調の樹脂層を形成する方法としては、例えば、乾式造面法やダイレクトコート法が用いられる。乾式造面法は、剥離シート上に銀面層を形成するための着色した樹脂を含む塗液を塗布した後、乾燥させることにより皮膜を形成し、皮膜を繊維基材の表面に接着層を介して貼り合わせた後、剥離シートを剥離する方法である。また、ダイレクトコート法は、樹脂を含む塗液を繊維基材の表面に直接、ロールコーターやスプレーコーターにより塗布した後、乾燥させることにより形成する方法である。
従来、一般的には、人工皮革の銀面層は乾式造面による方法で形成されることが多い。乾式造面では、剥離シート上に予め形成された樹脂層を準備する必要があるために製造工程が煩雑になり、また、予め形成された樹脂層を繊維基材の表面に接着して転写するために、膜強度を維持する必要があり、薄い銀面層を形成することが困難であった。
一方、ダイレクトコート法によれば、塗工により銀面層を形成できるために形成工程が簡便であるという長所を有する。しかしながら、ダイレクトコート法により銀面層を形成しようとした場合、塗液が繊維基材の表面の空隙から内部に浸透してしまうために、形成される銀面層が繊維基材に深くまで沈み込んで、繊維基材が固くなり、しなやかな風合いが損なわれるという問題があった。すなわち、ダイレクトコート法では、銀面層が繊維基材に深く沈み込むために、薄い銀面層を有するしなやかな銀付調人工皮革を得ることが困難であった。
WO2008/120702号パンフレット
本発明は、繊維基材に深く沈み込まない樹脂層を表面に備えた、しなやかさに優れた人工皮革を提供する。
本発明の人工皮革は、繊維基材と、繊維基材の表面を平滑化する平滑化層と、平滑化層に積層された樹脂表層と、を備え、平滑化層は、塗布工程を経て形成された、第1の高分子弾性体50〜99質量%と第1の充填剤1〜50質量%とを含有する厚さ10〜100μmの層である。このような構成によれば、平滑化層が繊維基材の表面の空隙を埋めて、繊維基材の表面に空隙の少ない平滑な表面が形成される。このような平滑化層を形成することにより、ダイレクトコート法によって沈み込まない銀面調の樹脂層を形成することができる。
平滑化層は、JISL1907−7.1.1の滴下法に準拠した表面吸水速度が100秒以上であることが、繊維基材に対する樹脂層の沈み込みを充分に抑制できる点から好ましい。
また、繊維基材は、繊度0.9dtex以下の極細繊維の不織布を含むことが、より緻密な平滑化層を形成することができる点から好ましい。また、繊維基材は、不織布等の繊維構造体を形成する繊維間の空隙に含浸付与された、不揮発性油と第2の充填剤とを含むことが好ましい。繊維構造体中には、高分子弾性体で充填されていない空隙が存在するために、人工皮革は天然皮革に比べて緻密さ及び充実感が劣る。そのために、人工皮革は、曲げたときに、天然皮革のように丸みを帯びて曲がらず、ボキ折れとも称されるように屈して折れ曲がる。このような折れ曲がり方は高級感がない。また、繊維構造体の空隙に高分子弾性体を高い割合で充填した場合、反発感が高くなってゴムライクな剛直な風合いになる。一方、上述したように、繊維構造体の空隙に不揮発性油と第2の充填剤とを含む改質剤を付与した場合には、しなやかさと充実感とを兼ね備えた風合いが得られる。不揮発性油は、繊維構造体に対して0.5〜10質量%含まれることが好ましい。また、第2の充填剤は、繊維構造体に対して1〜60質量%含まれることが好ましい。
また、繊維基材は、不織布等の繊維構造を形成する繊維間の空隙に含浸付与された高分子弾性体を含むものであってもよい。
また、本発明の人工皮革の製造方法は、繊維基材の表面に第1の塗液を塗工した後、乾燥させることにより厚さ10〜100μmの平滑化層を形成する工程と、前記平滑化層の表面に第2の塗液を塗工した後、乾燥させることにより樹脂表層を形成する工程とを備え、第1の塗液は、固形分として高分子弾性体50〜99質量%と充填剤1〜50質量%とを含有し、25℃の温度下で、B型回転粘度計を用いて回転数0.6回転/秒で計測したときの粘度η0.6と回転数3回転/秒で計測したときの粘度η3.0との比(η0.6/η3.0)であるチクソトロピー指数が2〜4である。このような平滑化層を形成したのち、ダイレクトコート法により樹脂層を形成することにより、銀面層の沈み込みの少ない、しなやかな銀面調の人工皮革が得られる。
本発明によれば、繊維基材に深く沈み込まない樹脂層を備えた、しなやかさに優れた銀面調の人工皮革が得られる。
図1は本発明に係る一実施形態の人工皮革10の模式断面図である。 図2は実施例1において得られた繊維基材の平滑化層の形成前の斜断面のSEM写真である。 図3は実施例1において得られた繊維基材の平滑化層を形成した後の斜断面のSEM写真である。 図4は実施例1における、人工皮革の厚み方向の断面をSEMで観察したときの断面写真である。 図5は比較例1において得られた繊維基材の平滑化層を形成した後の斜断面のSEM写真である。 図6は比較例1における、人工皮革の厚み方向の断面をSEMで観察したときの断面写真である。 図7は実施例9において得られた繊維基材の平滑化層を形成した後の斜断面のSEM写真である。 図8は実施例9における、人工皮革の厚み方向の断面をSEMで観察したときの断面写真である。
図1は本発明に係る一実施形態の銀付調の人工皮革10の模式断面図である。銀付調の人工皮革10は、繊維基材1と、平滑化層2と、平滑化層2に積層された樹脂層3と、を備える。平滑化層2は、繊維基材1の表面を平滑化する、塗布工程を経て形成された、高分子弾性体50〜99質量%と充填剤1〜50質量%とを含有する厚さ10〜100μmの層である。
以下、本実施形態の人工皮革をその製造方法の一例に沿って詳しく説明する。
繊維基材としては、不織布,織布,織物,編物等の繊維構造体を含み、必要に応じて繊維構造体の空隙に高分子弾性体やその他の改質剤を含浸付与したものが特に限定なく用いられる。繊維構造体の中では、不織布、とくには極細繊維の不織布が好ましい。極細繊維の不織布は繊維密度が緻密であるために繊維の粗密ムラが小さく、均質性が高い。そのためにしなやかさと高い充実感にとくに優れた人工皮革が得られる。本実施形態では、極細繊維の不織布を繊維構造体として含む繊維基材を用いる場合について、代表例として詳しく説明する。
極細繊維の不織布は、例えば、海島型(マトリクス-ドメイン型)複合繊維のような極細繊維発生型繊維を絡合処理し、極細繊維化処理することにより得られる。なお、本実施形態においては、海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。なお、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維等が挙げられ、極細繊維を形成しうる繊維であれば特に限定されずに用いられる。
極細繊維の不織布の製造においては、はじめに、選択的に除去できる海島型複合繊維の海成分(マトリクス成分)を構成する熱可塑性樹脂と、極細繊維を形成する樹脂成分である海島型複合繊維の島成分(ドメイン成分)を構成する熱可塑性樹脂とを溶融紡糸し、延伸することにより海島型複合繊維を得る。
海成分の熱可塑性樹脂としては、島成分の樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンエチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、などが挙げられる。
島成分を形成し、極細繊維を形成する樹脂成分である熱可塑性樹脂としては、海島型複合繊維及び極細繊維を形成可能な樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6−12等のポリアミド;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
極細繊維の不織布の製造方法としては、例えば、海島型複合繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維を形成するような方法が挙げられる。ウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維ウェブを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、緻密さ及び充実感に優れている点から長繊維ウェブが特に好ましい。また、形成されたウェブには形態安定性を付与するために融着処理を施してもよい。
なお、長繊維とは、紡糸後に意図的にカットされた短繊維ではない、連続的な繊維であることを意味する。さらに具体的には、例えば、繊維長が3〜80mm程度になるように意図的に切断された短繊維ではない繊維を意味する。極細繊維化する前の海島型複合繊維の繊維長は100mm以上であることが好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。なお、後述する絡合時のニードルパンチや、表面のバフィングにより、製造工程において不可避的に長繊維の一部が切断されて短繊維になることもある。
海島型複合繊維の海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、絡合処理及び水蒸気による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施すことにより、海島型複合繊維を緻密化することができる。絡合処理としては、例えば、ウェブを5〜100枚程度重ね、ニードルパンチや高圧水流処理する方法が挙げられる。
海島型複合繊維の海成分は、ウェブを形成させた後の適当な段階で溶解または分解して除去される。このような分解除去または溶解抽出除去により海島型複合繊維が極細繊維化されて、繊維束状の極細繊維が形成される。
極細繊維の繊度は特に限定されないが、0.001〜0.9dtex、さらには0.01〜0.6dtex、とくには0.02〜0.5dtexであることが好ましい。繊度が高すぎる場合には、緻密感が不充分な不織布が得られる傾向がある。また、繊度が低すぎる繊維は製造しにくい。また、繊維同士が集束して不織布の剛性が高くなる傾向がある。
このようにして得られた極細繊維の不織布は、必要に応じて厚さ調整及び平坦化処理される。具体的には、スライス処理やバフィング処理が施される。このようにして、繊維構造体である極細繊維の不織布が得られる。
繊維構造体の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μm、さらには300〜2000μm程度であることが好ましい。また、繊維構造体の見かけ密度は、特に限定されないが、0.25〜0.70g/cm3、さらには0.45〜0.65g/cm3、とくには0.55〜0.60g/cm3、程度であることが、充実感としなやかな風合いとを兼ね備えた人工皮革が得られる点から好ましい。
繊維構造体の空隙には、必要に応じて高分子弾性体やその他の改質剤が含浸付与される。一般的な人工皮革の繊維構造体の空隙には、高分子弾性体が含浸付与されているが、本実施形態の人工皮革においては、しなやかさと充実感とを兼ね備え、さらに緻密で平滑性の高い表面を形成できる点から後述するような液状の不揮発性油と充填剤とを含有する改質剤を含浸付与することが好ましい。
はじめに、繊維構造体に液状の不揮発性油と充填剤とを含有する改質剤を含浸付与する工程について説明する。本工程においては、はじめに液状の不揮発性油と充填剤とを含有する分散液を調製する。
分散液は、例えば、水または水とアルコール等の極性溶媒の混合液等の分散媒に、液状の不揮発性油及び充填剤を均質に混合分散させる。
本実施形態における液状の不揮発性油とは、沸点が150℃以上で、且つ、極性溶媒に実質的に溶解しない液体である。具体的には、例えば、流動パラフィン,パラフィン系又はナフテン系のプロセスオイル,鉱物油,シリコーンオイル,フタル酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、流動パラフィンが化学的な安定性に優れ、また、酸化しにくい点から好ましい。
また、本実施形態における充填剤としては無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。
無機フィラー、及び有機フィラーとしては、例えば、金属、金属酸化物、無機化合物、有機化合物等からなる各種フィラーが特に限定なく用いられる。その具体例としては、アルミナ(Al23),二酸化チタン(TiO2),酸化亜鉛(ZnO),二酸化セリウム(CeO2),シリカ(SiO2)等の金属酸化物または半金属酸化物のフィラー;タルク,クレー,水酸化アルミニウム,マイカ,炭酸カルシウム,籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)等の無機化合物のフィラー;ポリリン酸アンモニウム,ジアルキルホスフィン酸アルミニウム,ポリ化リン酸メラミン等の難燃性フィラー;カーボンナノチューブ(CNT),カーボンファイバー(CF),カーボンブラック(CB),グラファイト(GF),アセチレンブラック(AB)とのカーボン系フィラー等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、各種難燃性フィラーが難燃性を同時に付与できる点からとくに好ましい。充填剤の粒子径としては、繊維基材に対する含浸性に優れる点から、平均粒子径が0.1〜15μm、さらには0.5〜10μm程度であることが好ましい。
また、繊維構造体の空隙には、液状の不揮発性油と充填剤に加えて、さらに高分子弾性体を含浸付与することが好ましい。この場合、不揮発性油と充填剤と高分子弾性体とを含有する分散液を用いる。
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリウレタンが耐摩耗性や機械的特性に優れる点から好ましい。
ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンのエマルジョン等の水系ポリウレタンが好ましい。これらのポリウレタンは容易にその分散液が調製され、架橋構造を形成しやすく、また、繊維に密着させすぎずに空隙に存在させることにより柔らかな風合いを発現させやすい点から特に好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、分散液に、界面活性剤や、分散剤、着色剤等の成分を配合してもよい。
分散液中の各成分の濃度は、目的とする特性や、分散液の粘度や安定性等を考慮して適宜調整される。具体的には、分散液中の不揮発性油の割合としては、例えば、1〜50質量%、さらには3〜30質量%程度の範囲で配合することが好ましい。また、分散液中の充填剤及び高分子弾性体の合計の割合は、例えば、5〜99質量%、さらには7〜80質量%程度含有することが好ましい。
繊維構造体に分散液を含浸させる方法は特に限定されない。具体的には、例えば、繊維構造体に分散液をディップニップすることにより含浸させる方法が好ましく用いられる。分散液の粘度は繊維構造体に所望の量を含浸可能な粘度である限り特に限定されない。具体的には、例えば、その溶液粘度としては回転式粘度計で測定した値として10〜1000cp、さらには50〜500cp程度であることが好ましい。
そして、繊維構造体に分散液を含浸させた後、乾燥させることにより、分散液中の分散媒等の揮発成分を乾燥除去する。それにより、分散液中の液状の不揮発性油及び充填剤等が繊維構造体の繊維間の空隙に残る。乾燥条件は特に限定されないが、例えば70〜150℃で1〜10分間程度乾燥させるような条件が挙げられる。このようにして繊維構造体の繊維間の空隙に液状の不揮発性油及び充填剤等が付与される。これらは、例えば、粘土状、またはペースト状で空隙に存在する。
繊維構造体に対する液状の不揮発性油の割合は、0.5〜10質量%、さらには1〜10質量%、とくには3〜8質量%であることが好ましい。繊維構造体に対する不揮発性油の割合が0.5質量%未満の場合にはしなやかな風合いが充分に得られにくい。また、繊維構造体に対する不揮発性油の割合が高すぎる場合には、繊維構造体が不揮発性油を保持できなくなって脱けやすくなる。
繊維構造体に対する充填剤の割合は、特に限定されないが、1〜60質量%であり、10〜50質量%、さらには10〜40質量%であることが好ましい。繊維構造体に対する充填剤の割合が低すぎる場合には充実感が低下する傾向がある。また、繊維構造体に対する充填剤の割合が高すぎる場合には、しなやかな風合いが低下する傾向がある。
また、繊維構造体に対する高分子弾性体の割合は0〜15質量%、さらには1〜14質量%、とくには1〜10質量%であることが好ましい。繊維構造体に対する高分子弾性体の割合が高すぎる場合にはゴム感が強くなって反発性が高くなることにより、しなやかな風合いが低下する傾向がある。なお、高分子弾性体は必須成分ではないが、配合することにより形態安定性を高めたり弾性を調整したりすることができる。
また、液状の不揮発性油、充填剤及び高分子弾性体を合わせた改質剤中の不揮発性油の割合は、特に限定されないが、1〜90質量%、さらには3〜70質量%、とくには10〜50質量%、ことには20〜35質量%であることが、しなやかな風合いと充実感とが得られる点から好ましい。改質剤中の不揮発性油の割合が低すぎる場合にはしなやかな風合いが低下する傾向があり、高すぎる場合には相対的に充填剤の割合が低くなることにより、充実感が低下する傾向がある。
また、改質剤中の充填剤の割合としては、10〜99質量%、さらには30〜97質量%、とくには50〜90質量%であることが好ましい。充填剤の割合が低すぎる場合には充実感が低下する傾向があり、高すぎる場合には相対的に不揮発性油の割合が低くなることによりしなやかな風合いが低下する傾向がある。
改質剤中の高分子弾性体の割合としては、0〜40質量%、さらには1〜20質量%であることが好ましい。高分子弾性体の割合が高すぎる場合にはゴムライクな風合いになる傾向がある。
繊維構造体に対する改質剤の割合は特に限定されないが、1〜60質量%、好ましくは3〜45質量%、とくには10〜40質量%、ことには10〜30質量%であることが好ましい。繊維構造体に対する改質剤の割合を高くしすぎた場合には空隙に充分に含浸させることが難しくなる傾向がある。
このようにして繊維構造体の繊維間の空隙に液状の不揮発性油、充填剤及び必要に応じて高分子弾性体を含む改質剤を含浸付与させた繊維基材が得られる。
次に、繊維構造体に高分子弾性体を含浸付与する工程について説明する。高分子弾性体を含浸付与する方法としては、例えば、繊維構造体に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸し、ロール・ニップ処理を行うような方法が挙げられる。
高分子弾性体の水系エマルジョンとしては、従来から人工皮革を製造する際に使用されているものが特に限定なく用いられうる。高分子弾性体の具体例としては、上述した、改質剤中に配合する高分子弾性体と同様のものが特に限定なく用いられる。
高分子弾性体の水系エマルジョンは、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱ゲル化剤、凝固調節剤、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシルメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物等を含有してもよい。
繊維構造体に含有させる高分子弾性体の量は、特に限定されないが、繊維構造体100質量部に対する高分子弾性体(固形分)の量は、1〜80質量部、さらには2〜60質量部、とくには5〜40質量部であることが好ましい。高分子弾性体の量が少なすぎる場合には、形態安定性が低下する傾向があり、多すぎる場合には、ゴム感が強い人工皮革が得られる傾向がある。
このようにして繊維構造体の繊維間の空隙に高分子弾性体を含浸付与させた繊維基材が得られる。
上述したような方法により得られた繊維基材は、必要に応じてスライス処理またはバフィング処理することにより厚さ調整及び平坦化処理されたり、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
このようにして得られる繊維基材の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μm、さらには300〜2000μm程度であることが好ましい。また、繊維基材の見かけ密度は、特に限定されないが、0.55〜0.85g/cm3、さらには0.60〜0.80g/cm3であることが充実感としなやかな風合いとのバランスに優れる点から好ましい。
繊維基材には、以下のような方法により平滑性を付与するための平滑化層が表面に付与される。このように繊維基材の表面に平滑層が付与されることにより、ダイレクトコート法による方法を用いて、繊維基材の表面に塗液を塗布しても内部に浸透しにくくなる。それにより、形成される樹脂層が繊維基材に深く沈み込みにくくなるために、繊維基材のしなやかな風合いが維持される。
本工程においては、図1に示したように、繊維基材1の表層に、表面を平滑化するための平滑化層2を形成する。そして、このような平滑化層2の表面に樹脂層3を形成する。このような平滑化層の形成方法を以下に説明する。
繊維基材の表面に、高分子弾性体と充填剤とを含むチクソトロピー指数が2〜4である塗液を塗工した後、乾燥させることにより平滑化層が形成される。このような塗液は、チクソトロピー指数が2〜4であるためにシェアがかかる塗工時には低粘度になり、シェアの掛からない塗工後には粘度が高くなる。このような方法によれば、塗液が繊維基材の表面の空隙から内部に沈み込みにくくなるために、繊維基材の表面に薄い平滑化層を容易に形成することができる。
平滑化層の形成に用いられる塗液は、高分子弾性体と充填剤とを含むチクソトロピー指数が2〜4である塗液であれば特に限定されない。ここで、「チクソトロピー指数」とは、25℃の温度下で、B型回転粘度計を用いて回転数0.6回転/秒で計測したときの粘度η0.6と回転数3回転/秒で計測したときの粘度η3.0との比(η0.6/η3.0)を意味する。
平滑化層の形成に用いられる塗液は、高分子弾性体と充填剤とを含む。塗液の具体例としては、例えば、高分子弾性体のエマルジョン,サスペンジョン,またはディスパーション等の樹脂液に充填剤を混合した混合液が好ましく用いられる。
高分子弾性体の具体例としては、上述した繊維構造体に含浸付与される高分子弾性体と同様の、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等が挙げられる。樹脂液中の高分子弾性体の濃度は特に限定されないが、例えばエマルジョンの場合、10〜50質量%、さらには、20〜40質量%、とくには25〜35質量%であることが好ましい。また、高分子弾性体としては、非多孔性の高分子弾性体が高い平滑性と皮膜物性が得られる点から好ましい。
充填剤は、塗液にチクソトロピー性を付与するとともに、繊維基材の表面の空隙を埋めて目止めする成分である。充填剤の具体例としては、上述した改質剤中に含有される充填剤と同様の充填剤である中実粒子の他、発泡プラスチックビーズ等の中空粒子が挙げられる。これらの中では、とくに、クレー,水酸化アルミニウム,炭酸カルシウム,中空粒子等がチクソトロピー指数を調整しやすい点から好ましい。
中実粒子の粒子径としては0.1〜15μmであることがチクソトロピー指数を調整しやすい点から好ましい。また、中空粒子の粒子径としては10〜80μmであることがチクソトロピー指数を調整しやすい点から好ましい。
高分子弾性体の配合量としては、塗液の固形分中に、50〜99質量%であり、50〜95質量%、さらには70〜90質量%になるように配合されることが好ましい。
また、充填剤の配合量としては、塗液の固形分中に、1〜50質量%、好ましくは5〜50質量%、さらには10〜30質量%になるように配合されることが好ましい。また、中空粒子である場合の充填剤の配合量としては、塗液の固形分の全体積に対して5〜70%、さらには10〜50%の体積の体積になるように配合されることが好ましい。
また、平滑化層の形成に用いられる塗液は、必要に応じて、チクソトロピー指数や粘度を調節するための増粘剤を含んでもよい。増粘剤の具体例としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸等が挙げられる。増粘剤の配合量としては、高分子弾性体の固形分100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましい。さらに、塗液の安定性を向上させる分散剤や、高分子弾性体を架橋するための架橋剤や、顔料等の着色剤を含んでもよい。分散剤の具体例としては、例えば、低分子量ポリカルボン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。分散剤の配合量としては、第2の高分子弾性体の固形分100質量部に対して、0.2〜2質量部であることが好ましい。
塗液は、高分子弾性体の樹脂液に、充填剤及びその他の必要に応じて配合される増粘剤等の添加剤を添加し、撹拌混合することにより調製される。このようにして調製される塗液の粘度としては、25℃の温度下で、B型回転粘度計を用いて回転数0.6回転/秒で計測したときの粘度η0.6として、100〜600Pa・s(パスカル秒)、さらには150〜350Pa・sであることがこのましい。このような粘度である場合には、塗液の塗工性に優れるとともに、繊維基材の表面の空隙から塗液が内部に浸み込みにくくなる。
また、塗液中の固形分の割合は特に限定されないが、40〜60質量%程度の範囲であることが、チクソトロピー性に優れ、塗布後に適度に増粘する点及び乾燥性に優れる点から好ましい。
繊維基材の表面に、このような塗液を塗工した後、乾燥させることにより平滑化層が形成される。塗工方法としては、リバースコーターやドクターナイフコーター等の各種塗工法が特に限定なく用いられる。塗液は塗工時にはシェアを受けて低粘度化し、塗工後には粘度が増加するために繊維基材の表面の空隙から塗液が内部に浸み込みにくくなる。
そして、塗工された塗液を乾燥することにより、平滑化層が形成される。このようにして形成される平滑化層の平均厚さとしては、10〜100μm、さらには20〜70μmであることが好ましい。平滑化層が厚すぎる場合には、得られる人工皮革のしなやかさが低下する傾向があり、薄すぎる場合には繊維基材の表面の空隙が充分に埋められなくなる傾向がある。また、平滑化層中の充填剤の割合としては、1〜50質量%、さらには5〜50質量%、とくには10〜30質量%であることが好ましい。
平滑化層を形成された繊維基材は、その表面の空隙の大半が埋められて平滑化されていることが好ましい。このような場合には、平滑化層の表面に銀面調の外観を付与するための樹脂液を塗布しても、繊維基材の内部に樹脂液が浸み込みにくい。このような平滑化層を形成された繊維基材を用いることにより、繊維基材のしなやかさを失わない人工皮革を製造することができる。
このような平滑化層は、例えば、JISL1907−7.1.1の滴下法に準拠した表面吸水速度が100秒以上、150秒以上、とくには180秒以上であることが好ましい。表面吸水速度が100秒未満の場合には、空隙が残留しているために樹脂液が内部に浸みこみやすくなる傾向がある。
そして、形成された平滑化層の表面に、樹脂層を形成するための塗液を塗布した後、乾燥するダイレクトコート法により銀面調の樹脂層が形成される。樹脂層を形成するための塗液は、平滑化層の表面に、例えば、スプレーコート、リバースコート等の方法により塗布される。これらの中では、スプレーコートが少量の樹脂を均一に塗布できる点から好ましい。
銀面調の樹脂層を形成するための樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等のエラストマーのエマルジョン,サスペンジョン,ディスパーションまたは溶液等の樹脂液が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリウレタンのエマルジョンが耐摩耗性や機械的特性に優れる点から好ましい。また、銀面層を形成するための樹脂成分には、必要に応じて、着色剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
樹脂層の厚さは10〜1000μm、さらには50〜300μmであることが好ましい。また、樹脂層は、ベースコート層、着色層、トップクリア層のような複数層が適宜積層された積層構造を有していてもよい。また、樹脂層はエンボス加工等により形成されたシボ模様を有することが意匠性の点から好ましい。エンボス加工は、銀面層が未硬化の状態でシボ模様を転写した後、銀面層を完全硬化させるような方法が挙げられる。
また、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
このようにして得られる人工皮革は、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌内装用途などの皮革調素材として好ましく用いられる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
〈不織布の製造〉
海成分として水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)、島成分として変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−トを用い、口金温度260℃に設定された、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成するノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に溶融樹脂を供給し、ノズル孔から吐出させた。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。
そして、吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように吸引装置で吸引することにより延伸し、繊度が2.1dtexの海島型複合繊維の長繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合繊維の長繊維は、可動型のネット上に連続的に堆積され、42℃の金属ロールで軽く押さえ、表面の毛羽立ちを抑えた。そして、海島型複合繊維の長繊維をネットから剥離し、表面温度55℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させた。このようにして、線圧200N/mmで熱プレスして目付31g/m2の長繊維ウェブを得た。
次に、総目付が250g/m2になるようにウェブをクロスラッパー装置を用いて8層に重ね、重ね合わせウェブを作製し、更に針折れ防止油剤をスプレーした。次いで、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmにて両面から交互に3300パンチ/cm2でニードルパンチした。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は550g/m2であった。
絡合ウェブを巻き取りライン速度10m/分で70℃の熱水中に14秒間浸漬して面積収縮を生じさせた。ついで95℃の熱水中で繰り返しディップニップ処理を実施してPVAを溶解除去することにより、繊度0.1dtexの極細長繊維を25本含む繊度2.5dtexの繊維束が3次元的に交絡した不織布を作製した。乾燥後に測定した面積収縮率は52%であった。そして不織布をスライスし、バフィングすることにより厚さ1.05mmに調整した。このようにして得られた繊維構造体である極細繊維の不織布は、目付576g/m2、見掛け密度0.565g/cm3であった。
〈改質剤の含浸付与〉
難燃性フィラー38%owf、流動パラフィン26.25%owf、及び水系ポリウレタン1.67%owfからなる改質剤の成分を水に分散させて分散液を調製した。そして、極細繊維の不織布に80%のピックアップ率で分散液を含浸させた後、水分を乾燥させることにより改質剤を均質に含浸付与した。そして、改質剤を含浸付与した極細繊維の不織布を収縮加工装置(小松原鉄工(株)製、サンフォライジング機)を用いて、その収縮部のドラム温度120℃、ヒートセット部のドラム温度120℃、搬送速度10m/分で処理してタテ方向(長さ方向)に5.5%収縮させて繊維基材を得た。得られた繊維基材は、目付670g/m2、見掛け密度0.635g/cm3であった
難燃性フィラーとしては、平均粒子径5μmのジアルキルホスフィン酸アルミニウムの分散液(固形分40%)を配合した。また、水系ポリウレタンとしては、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなる架橋タイプのポリウレタン(固形分30質量%、融点180〜190℃、損失弾性率のピーク温度−15℃、130℃での熱水膨潤率が35%)のエマルジョンを用いた。
〈平滑化層の形成〉
得られた繊維基材の表面に次のようにして充填剤を30質量%含有する平滑化層を形成した。ポリウレタンエマルジョン(DIC(株)製 LCCバインダーUB1770 固形分30質量%)の固形分100質量部に対して、充填剤(平均粒子径5μmの炭酸カルシウム)42.9質量部を配合し、増粘剤を添加して撹拌混合することにより平滑化層用塗液を調製した。なお、得られた平滑化層用塗液は、25℃の温度下で、B型回転粘度計を用いて回転数0.6回転/秒で計測したときの粘度η0.6が240Pa・sであり、回転数3回転/秒で計測したときの粘度η3.0が75Pa・sであり、η0.6/η3.0が3.2であった。なお、ポリウレタンエマルジョンのみの場合は、粘度η0.6が4.2Pa・sであり、粘度η3.0が3.0Pa・sであり、η0.6/η3.0が1.4であった。繊維基材の表面に、リバースコーターを用いて、上記平滑化層用塗液を乾燥後の平均厚みが45μmになるように塗布し、乾燥することにより平滑化層を形成した。
〈銀面層の形成〉
形成された平滑化層の表面にカラーコート液をGemata製STARPLUSを用いて塗布量70g/m2でスプレーコートすることにより膜厚14μmのカラーコート層を形成した。なお、カラーコート液としては、ポリウレタンエマルジョン(DIC(株)製 LCCバインダーUB1770 固形分30%)を岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30mPa・sになるように調整したものを用いた。そして、さらに40〜50℃で2〜4時間空打ち処理を行った。そして、125℃,50kg/cm2のエンボスロールを用いてライン速度7.0m/分で表層にエンボス処理を施した。そしてその表面に、岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30mPa・sに調整したトップコート塗料((株)トウペ製のクリアー塗料)を塗布し、膜厚13.5μmのトップコートを形成した。このようにして目付670g/m2、見かけ密度0.635g/cm3の銀付調の人工皮革が得られた。図2に実施例1において得られた繊維基材の平滑化層の形成前の斜断面のSEM写真を、図3に平滑化層の形成後の斜断面のSEM写真を示す。また、図4に実施例1で得られた銀付調の人工皮革の厚み方向の断面のSEM写真を示す。
〈繊維基材及び人工皮革の評価〉
繊維基材及び人工皮革を以下の評価方法に従って評価した。
(表面吸水速度)
JISL1907−7.1.1の滴下法に準じて測定した。具体的には平滑化層を有する繊維基材を約200mm×200mmの大きさに切断して試験片を作製した。作成された試験片を試験片保持枠に取り付け、光源と観察者との間に置き、試験片の平滑化層側の表面からビュレットの先端までが10mmの高さになるように調整した。そして、試験片の平滑化層側の表面にビュレットから水を1滴滴下させ、水滴が試験片の表面に達したときからその試験片が水滴を吸収するにつれて鏡面反射が消え,湿潤だけが残った状態までの時間をストップウォッチで測定した。
(沈み込み量の評価)
平滑化層を形成する際の塗布量と実際に形成された皮膜厚さの差から沈み込み量(g/m2)を算出した。ただし、0より小さい値となった場合は0とした。
(樹脂層のコート性)
A:樹脂層の沈み込みが少なく、平滑で滑らかな表面が形成された。
B:樹脂層の沈み込みが少しあり、表面の繊維のざらつきが少し感じられた。
C: 樹脂層がほとんど沈み込み、表面が繊維で露出して毛羽立っていた。
(剛軟度)
ソフトネステスター(皮革ソフトネス計測装置ST300:英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いて剛軟度を測定した。具体的には、直径25mmの所定のリングを装置の下部ホルダーにセットした後、下部ホルダーに人工皮革をセットした。そして、上部レバーに固定された金属製のピン(直径5mm)を銀付調人工皮革に向けて押し下げた。そして、上部レバーを押し下げて上部レバーがロックしたときの数値を読み取った。なお、数値は侵入深さを表し、数値が大きいほどしなやかであることを表す。
(風合い)
人工皮革を20×20cmに切りだしたサンプルを調製した。そして、中央部を境にして内側に曲げたときの外観や掴んだときの外観を以下の基準で判定した。
A:曲げたときに丸みを帯びたように曲がり、また、緻密で細かな折れシボが発生した。また、ドレープ性にも優れていた。
B:曲げたときに屈して折れ曲がり、また、粗いシボや深いシワが発生した。また、ドレープ性にも劣っていた。
C:充実感が著しく低い風合いであった。
これらの結果をまとめて下記表1に示す。
[実施例2〜5]
表1に記載のように、平滑化層中に、充填剤(炭酸カルシウム)をそれぞれ5質量%、10質量%、20質量%、40質量%含有されるように配合した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗液を調製した。平滑化層用塗液として、このように調製された平滑化層用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6〜8]
表1に記載のように、平滑化層の厚さをそれぞれ20μm、31μm、54μmに変更した以外は実施例1と同様にして平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
表1に記載のように、ポリウレタンエマルジョンの固形分100質量部に対して、充填剤(炭酸カルシウム)を42.9質量部配合する代わりに、充填剤(平均粒子径30μmの塩化ビニリデン・ニトリル系プラスチックバルーン)をポリウレタンエマルジョンの固形分100質量部に対して1.5質量部であって、ポリウレタン固形分の体積比で50%配合した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗液を調製した。平滑化層用塗液として、このように調製された平滑化層用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。図7に実施例9において得られた平滑化層の形成後の斜断面のSEM写真を示す。また、図8に実施例9で得られた銀付調の人工皮革の厚み方向の断面のSEM写真を示す。結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例1において、極細繊維の不織布に改質剤用の分散液を含浸付与する代わりに、極細繊維の不織布に対して固形分で12.5質量%になるように実施例1で用いたのと同様の水性ポリウレタン分散液を含浸させ、120℃で乾燥させた以外は同様にして平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例11〜13]
実施例1において調製した改質剤用の分散液の組成を、表1に示したような組成及び量に変更して調製された改質剤を極細繊維の不織布に含浸付与させた以外は、実施例1と同様にして平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の平滑化層の形成において、平滑化層用塗液として、充填剤を配合してないポリウレタンエマルジョン(DIC(株)製 LCCバインダーUB1770 固形分30質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。図5に平滑化層の形成後の斜断面のSEM写真を示す。また、図6に比較例1で得られた銀付調の人工皮革の厚み方向の断面のSEM写真を示す。
[比較例2]
表1に記載のように、ポリウレタンエマルジョンの固形分100質量部に対して、充填剤(炭酸カルシウム)を3.1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗液を調製した。平滑化層用塗液として、このように調製された平滑化層用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして平滑化層を有する繊維基材及び人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜13で得られた人工皮革はいずれも銀面層の沈み込みが小さく、また、平滑化層の表面吸水速度も低かった。従って、平滑化層を設けることにより繊維基材の表面の銀面調の樹脂層の沈み込みを抑制することができることがわかる。銀面調の樹脂層の沈み込みを抑制することにより、しなやかな風合いを保持する人工皮革が得られる。一方、比較例1のように、平滑化層用塗液として、充填剤を配合しなかったη0.6/η3.0が1.4であるポリウレタンエマルジョンや、比較例2のように、充填剤の配合割合が少なく、η0.6/η3.0が1.6である平滑化層用塗液を用いた場合には樹脂層の沈み込みが見られたことがわかる。
なお、実施例11〜13で得られた繊維基材はいずれも、見掛け密度が0.6g/cm3以上であり、銀付調人工皮革の剛軟度も1.8mm以上のしなやかさを有し、充実感としなやかさとを兼ね備えた人工皮革が得られた。また、従来の代表的な人工皮革である、高分子弾性体を付与することによって不織布に充実感を賦与させた実施例10で得られた人工皮革は、充実感はあったものの、剛軟度は1.65mmであり、しなやかさがやや低かった。
本発明の人工皮革は、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌内装用途などの皮革調素材として用いられる。

Claims (8)

  1. 繊維基材と、前記繊維基材の表面を平滑化する平滑化層と、前記平滑化層に積層された樹脂表層と、を備え、
    前記平滑化層は、塗布工程を経て形成された、第1の高分子弾性体50〜99質量%と第1の充填剤1〜50質量%とを含有する厚さ10〜100μmの層であることを特徴とする人工皮革。
  2. 前記平滑化層は、JISL1907−7.1.1の滴下法に準拠した表面吸水速度が100秒以上である請求項1に記載の人工皮革。
  3. 前記繊維基材は、繊度0.9dtex以下の極細繊維の不織布を含む請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 前記繊維基材は、前記不織布を形成する繊維間の空隙に含浸付与された、液状の不揮発性油と第2の充填剤とを含む請求項1〜3の何れか1項に記載の人工皮革。
  5. 前記不織布に対して、前記第2の充填剤を1〜60質量%含む請求項4に記載の人工皮革。
  6. 前記不織布に対して、前記不揮発性油を0.5〜10質量%含む請求項4または5に記載の人工皮革。
  7. 前記繊維基材は、繊維間の空隙に含浸付与された、第2の高分子弾性体を含む請求項1〜6の何れか1項に記載の人工皮革。
  8. 繊維基材の表面に第1の塗液を塗工した後、乾燥させることにより厚さ10〜100μmの平滑化層を形成する工程と、前記平滑化層の表面に第2の塗液を塗工した後、乾燥させることにより樹脂表層を形成する工程とを備え、
    前記第1の塗液は、
    固形分として高分子弾性体50〜99質量%と充填剤1〜50質量%とを含有し、25℃の温度下で、B型回転粘度計を用いて回転数0.6回転/秒で計測したときの粘度η0.6と回転数3回転/秒で計測したときの粘度η3.0との比(η0.6/η3.0)であるチクソトロピー指数が2〜4であることを特徴とする人工皮革の製造方法。
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