JP6312963B2 - 合成皮革 - Google Patents

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Description

本発明は、合成皮革に関する。詳しくは、車両用内装材やインテリア資材などの産業資材に適した合成皮革に関する。
従来、合成皮革は、ポリウレタン樹脂層と繊維質基材からなり、天然皮革の代替品として、あるいは、天然皮革以上に良好な物性を備えた皮革素材として、衣料、鞄、靴、インテリア資材、車両用内装材など様々な用途で用いられている。なかでも、使用頻度も高く、厳しい条件下で使用することに対処するために車両用内装材や椅子などの用途においては、耐久性、特には耐摩耗性が要求されている。
合成皮革に耐摩耗性を付与する方法として、例えば、特許文献1には、表面処理層100質量部に対し、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを、ポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合を60〜80:20〜40で共重合させた共重合体の粒子(パウダー)を1.5〜25質量部含有させた表面処理層を設けた合成皮革が開示されている。しかしながら、数平均分子量が30万未満のラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させた共重合体の粒子を用いているため、摩耗によりブリードが発生し、合成皮革表面に白化が生じるという課題がある。また、ポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合割合が60〜80:20〜40であるため、コーティング法によって形成される従来の合成皮革では、耐摩耗性が不十分であるという課題がある。
特開2007−138326号公報
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、車両用内装材やインテリア資材などの産業資材、特には、座席用シートに最適の優れた耐摩耗性を有し、且つ、白化が生じない合成皮革を提供することを目的とする。
本発明は、繊維質基材の一方の面に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層と、ポリウレタン樹脂からなる表面処理層とを順次積層してなる合成皮革であって、該表面処理層は末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子を含有し、該末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの数平均分子量が30万以上であり、且つ、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合割合が95:5〜85:15であることを特徴とする合成皮革である。
本発明によれば、車両用内装材やインテリア資材などの産業資材、特には、座席用シートに最適の優れた耐摩耗性を有し、且つ、白化が生じない合成皮革を提供することができる。
本発明の合成皮革は、繊維質基材の一方の面に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層と、ポリウレタン樹脂からなる表面処理層とを順次積層してなる合成皮革であって、該表面処理層は末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子を含有しており、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの数平均分子量が30万以上であり、且つ、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合割合が95:5〜85:15であるものである。
本発明に用いられる繊維質基材としては、例えば、織物、編物、不織布などの布帛や、天然皮革(床革含む)が挙げられる。また、布帛に、公知の無溶剤系、溶剤系または水系の高分子化合物、例えば、ポリウレタン樹脂やその共重合体を主成分とする液を塗布または含浸し、乾式凝固または湿式凝固にて固化させたものを用いることもできる。布帛において、繊維の素材は特に限定されるものではなく、例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維などを挙げることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。なかでも強度の観点から合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。
また、繊維質基材は、染料または顔料により着色されたものであってもよい。着色に用いられる染料や顔料は特に限定されない。
本発明の合成皮革は、上述の繊維質基材の一方の面に、第1の樹脂層として、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されたものである。
表皮層の形成に用いられるポリウレタン樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、耐摩耗性および耐光性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系、ホットメルト系、溶剤系、水系などを問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、具体的用途に応じて適宜選択することができる。
また、表皮層は、少なくとも一層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の二層以上の樹脂層にて構成することができる。
ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、ウレタン化触媒、架橋剤、熱安定剤、耐光安定剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、レベリング剤などを含有させることができる。
表皮層の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。厚さが5μm以上であることにより、均一な樹脂層を形成しやすくなり、部分的に表皮層が欠落することを防いで、十分な耐摩耗性が得られる。厚さが100μm以下であることにより、風合いが粗硬になる虞を回避することができる。
本発明の合成皮革は、繊維質基材の一方の面に積層されたポリウレタン樹脂からなる表皮層の表面に、さらに、第2の樹脂層として、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子を含有するポリウレタン樹脂からなる表面処理層が積層されたものである。これにより、合成皮革の耐摩耗性が向上する。なお、本発明において表面処理層は、表皮層の表面に形成されて当該表皮層を保護する最外層としての樹脂層の総称をいい、少なくとも一層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の二層以上の樹脂層にて構成することもできる。
表面処理層の形成に用いられるポリウレタン樹脂は、特に限定されるものでなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、耐摩耗性および耐光性の点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、具体的用途に応じて適宜選択することができる。
表面処理層には、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子を含有させる。該共重合体は、表面処理層中で小さな粒子として分散した状態で存在する。該共重合体が液体であると、合成皮革に外圧が加わった場合に、合成皮革の表面に該共重合体が浸み出したり、該共重合体の充填された空間が変形したりして、表面処理層中にわずかな空隙が生じる。これにより、表面処理層中に該共重合体が存在していた部分で光の乱反射が起こるため、白化が生じる。一方、本発明に用いられる末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体は、室温で固体であり、表面処理層中において固形の粒(粒子)として分散した状態で存在する。従って、合成皮革に外圧が加わった場合に、合成皮革の表面に該共重合体が浸み出したり、表面処理層中に分散した該共重合体の充填された空間が変形したりすることが少ない。そのため、車両内装材やインテリア資材などの産業資材に適した耐摩耗性を有し、且つ、該共重合体が浸み出すことによる白化が抑制された合成皮革とすることができる。なお、本発明において「固体」とは、室温で流動性のない状態を指す。なお、本発明でいう室温とは25〜35℃の範囲をいう。
末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの数平均分子量は、30万以上であることが肝要である。数平均分子量が30万以上であることにより、得られる共重合体が固体となるため、摩耗によるブリードが生じにくい。末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの数平均分子量は、より好ましくは40万〜70万である。ここで、ブリードとは、合成皮革と衣服素材を繰り返し摩耗した際に、表面処理層に含まれる粒子のポリオルガノシロキサンが、該表面処理層の表面に浸み出され、合成皮革が白化したり、摩耗した衣服素材にポリオルガノシロキサンが移行したりする現象をいう。なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリエチレングリコール換算の数平均分子量(Mn)である。
末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合(質量比)は、95:5〜85:15であることが肝要である。共重合割合が上述の範囲であることにより、白化を生ずることなく、高い耐摩耗性を向上することができる。ラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの共重合割合が85以上であることにより、その平滑性向上により高い耐摩耗性を得ることができる。(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合が5以上であることにより、ポリウレタン樹脂層に安定して保持され、白化を抑制することができる。末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合は、より好ましくは93:7〜87:13である。
表面処理層のポリウレタン樹脂には、必要に応じて、上述の末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子以外に、本発明の効果を妨げず、且つ、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チクソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、難燃剤、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、艶消し剤、触感向上剤、スリップ改良剤、架橋剤、増粘剤、レベリング剤などの任意成分を、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
表面処理層の厚さは、3〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。厚さが3μm以上であることにより、均一な樹脂層を形成しやすくなり、部分的に表面処理層が欠落することを防いで、十分な耐摩耗性が得られる。厚さが30μm以下であることにより、風合いが粗硬になったり、白化が生じたりする虞を回避することができる。
本発明に係る合成皮革においては、表皮層と繊維質基材との間に接着層を設けることが好ましい。表皮層を繊維質基材に直接積層してもよいが、接着層を介することにより、直接積層した場合に起こり得る、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の繊維質基材への過度の浸み込みや、表皮層内の不均一な孔の形成を抑制することができる。そのため、天然皮革調の触感や風合いを具備することができる。接着層として用いられる接着剤としては、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられ、表皮層に用いられる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
次に、上記の合成皮革の製造方法について説明する。該製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のポリウレタン合成皮革と同様の製造方法を採用することができる。具体的には以下のような工程を順に行うことにより本発明の合成皮革が製造できる。すなわち、該製造方法は、
(1)表皮層用樹脂液を離型性基材上に塗布して、ポリウレタン樹脂からなる表皮層を形成する工程、
(2)表皮層と繊維質基材とを貼り合わせる工程、
(3)離型性基材を剥離する工程、及び、
(4)ポリウレタン樹脂および末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子を含有する表面処理層用樹脂液を表皮層上に塗布して、ポリウレタン樹脂からなる表面処理層を形成する工程、
を含むものである。
離型性基材上に表皮層用樹脂液を塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、リバースロールコーター、ナイフコーター、又は、コンマコーターによる塗布が好ましい。
離型性基材は特に限定されるものでなく、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよく、例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。離型性基材は凹凸模様を有していてもよく、このような離型性基材を用いることにより、合成皮革の表面に意匠性を付与することができる。
表皮層用樹脂液の塗布厚は、前記表皮層の厚さに応じて適宜設定すればよい。塗布厚は20〜250μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。塗布厚をこの範囲に設定することにより、好ましくは5〜100μm、より好ましくは20〜50μmの厚さを有する表皮層となる。
表皮層用樹脂液を離型性基材に塗布した後、必要により熱処理を行う。熱処理は、表皮層用樹脂液中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるために行われる。また、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する被膜を形成するために行われる。
熱処理温度は特に限定されるものではなく、任意で用いられる添加剤に応じて適宜設定することができるが、50〜150℃であることが好ましく、60〜130℃であることがより好ましい。熱処理温度が50℃以上であると、熱処理に時間がかかることがないため、工程負荷が大きくなることはなく、さらに樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理温度が150℃以下であると、合成皮革の風合いが粗硬になることを防ぐことができる。また、熱処理時間は2〜20分間であることが好ましく、2〜10分間であることがより好ましい。熱処理時間が2分間以上であると、樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理時間が20分間以内であると、工程負荷が大きくなりすぎることもない。
次いで、表皮層と繊維質基材とを貼り合わせる。貼り合わせに際しては、上記のように、接着層を介してもいいし、直接積層してもよく、好ましくは接着層を介して貼り合わせることである。接着層を設ける場合、表皮層上に接着剤を塗布してから繊維質基材に貼り合わせればよい。
接着剤を塗布する方法は、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。
次いで、表皮層から離型性基材を剥離する。離型性基材を剥離することで、表皮層と繊維質基材との積層体が得られる。
なお、表皮層を複数形成する場合は、離型性基材上に表皮層を形成した後、接着剤を塗布する前に、該表皮層表面にさらにポリウレタン樹脂組成物を塗布して形成する方法や、表皮層から離形成基材を剥離した後、該表皮層表面に、ポリウレタン樹脂組成物を塗布して形成する方法を採用することができる。塗布する方法、および、塗布後の熱処理については、上述の表皮層の形成と同様の方法が採用できる。
最後に、表皮層上に表面処理層を形成する。
表面処理層を形成するために、表面処理層用樹脂液を表皮層に塗布する方法としては、表皮層用樹脂組成物の塗布方法に挙げた方法を用いることができる。なかでも、均一で薄い塗膜の形成が可能という理由から、リバースロールコーター、スプレーコーターによる塗布が好ましい。なかでも、均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、リバースロールコーター、ナイフコーターまたはコンマコーターによる塗布が好ましい。樹脂組成物の塗布厚は、前記表面処理層の厚さに応じて適宜設定すればよい。
次いで、必要により熱処理を行う。熱処理は、表面処理層用樹脂液中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるために行われる。また、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するために行われる。
熱処理温度は50〜150℃であることが好ましく、60〜130℃であることがより好ましい。熱処理温度が50℃以上であると、熱処理に時間がかかることがないため、工程負荷が大きくなることはなく、さらに樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理温度が150℃以下であると、合成皮革の風合いが粗硬になることを防ぐことができる。また、熱処理時間は2〜20分間であることが好ましく、2〜10分間であることがより好ましい。熱処理時間が2分間以上であると、樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理時間が20分間以内であると、工程負荷が大きくなりすぎることもない。
かくして、本発明の合成皮革が得られる。ただし、本発明の合成皮革を製造するための方法は、上記方法に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「%」および「部」は質量基準であるものとする。また、得られた合成皮革の評価は、以下の方法に従った。
[耐白化]
幅37mm、長さ160mmの大きさでタテ、ヨコ各方向からそれぞれ3枚ずつ試験片を採取した。次に、試験片を、JIS L0823の染色堅牢度試験用摩擦試験機II型(学振型染色物摩擦堅牢度試験機:株式会社大栄科学精器製作所製)のテーブルに以下のように固定した。
内径5mm、外径7mm、長さ170mmのシリコンチューブ(ラボランシリコンチューブ、アズワン株式会社製)を試験機のテーブルに取り付け、該シリコンチューブ上に試験片を取り付けた。このとき、試験片の幅が29mmになるように両面テープで固定した。次いで、幅25mm、長さ80mmに裁断した綿帆布(JIS L3102:綿帆布No.10)を摩擦子に取り付けた。該摩擦子に荷重9.8Nをかけて摩擦試験を行った。摩耗子は130mmのストロークで30回/分サイクルにて、10000回摩擦操作を行った。摩擦後の試験片について、下記の評価基準に従って判定した。
○・・・白化は認められない
△・・・やや白化が認められる
×・・・白化が認められる
[耐摩耗性]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片をタテ、ヨコ各方向からそれぞれ1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚み10mmの大きさのウレタンフォームを添えた。ウレタンフォームの下面中央に直径4.5mmのワイヤーを設置した状態で、平面摩耗試験機T−TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定し、綿布(JIS L3102:綿帆布No.6)をかぶせた摩擦子がワイヤー上をワイヤーと平行に往復動するように、該摩擦子に荷重19.6Nをかけて磨耗試験を行った。摩耗子は試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで最大20000回往復させ、表面処理層がはがれるまでの摩耗回数を確認し、下記の基準に従って判定した。
○・・・15000回以上
△・・・10000回以上、15000回未満
×・・・10000回未満
[実施例1]
(表皮層の形成)
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、ジメチルホルムアミド40質量部を加え、粘度を約2,000mPa・s(B型粘度計、ローター:No.3、10rpm、23℃)になるように調整して、第1の表皮層用樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物を離型紙に、コンマコーター(株式会社ヒラノエンテック製、コンマコーター)にて、塗布厚200μmになるように塗布し、乾燥機にて130℃で2分間処理して、第1の表皮層を形成した。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、ジメチルホルムアミド50質量部を加え、粘度を約4,500mPa・s(B型粘度計、ローター:No.3、10rpm、23℃)になるように調整して、接着剤溶液を調製した。調製した接着剤溶液を、上述の第1の表皮層に、コンマコーター(株式会社ヒラノエンテック製、コンマコーター)にて、塗布厚200μmになるように塗布し、乾燥機にて100℃で1分間処理した。接着剤塗布面と繊維質基材のポリエステルトリコット編地表面とを合わせて392.3kPaで4秒間プレス圧着した後、離型紙を剥離した。
次いで、水系ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(粘度約2,000mPa・s)を第2の表皮層用樹脂組成物として、上述の第1の表皮層表面にリバースコーター(商品名「JUMBOSTAR−SR」、Ge.Ma.Ta.SpA製)にて、ウェット塗布量が50g/mになるように塗布し、乾燥機にて130℃で2分間処理した。
(表面処理層の形成)
下記の処方1に従い調製した表面処理層用樹脂組成物を、上述の第2の表皮層表面に、リバースコーター(商品名「JUMBOSTAR−SR」、Ge.Ma.Ta.SpA製)にて、ウェット塗布量63.2g/mになるように塗布し、乾燥機にて130℃で2分間処理した。なお、表面処理層用樹脂組成物の粘度は、5,000mPa・s(B型粘度計、ローター:No.3、10rpm、23℃)であった。
処方1(表面処理層用樹脂組成物)
1)水系ポリカーボネ―ト系ポリウレタン樹脂(固形分20質量%):90質量部
2)水系ポリカーボネ―ト系ポリウレタン樹脂(固形分20質量%):10質量部
3)架橋剤(固形分40質量%):3質量部
4)レベリング剤(固形分100質量%):1質量部
5)末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸
エステルとの共重合体の粒子の水分散体:8質量部
(固形分40質量%、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの数平均分子量40万、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合が90:10)
かくして、実施例1の合成皮革を得た。
得られた合成皮革の第1の表皮層の厚さは30μm、第2の表皮層の厚さは7μmであり、得られた表皮層の厚さは合わせて37μmであった。また、表面処理層の厚さは6μmであった。なお、表皮層の厚さ、表面処理層の厚さは、表面処理層を形成した合成皮革の垂直断面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で観察し、任意の10カ所についての厚さを測定し、これらの平均値を算出した。
得られた合成皮革を評価した結果、耐白化、耐摩耗性が共に良好であった。
[実施例2〜4および比較例1〜3]
末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させた共重合体の粒子の水分散体を表1のように変更した以外は、全て実施例1と同様にして合成皮革を作製した。
作製された合成皮革について、耐白化性、耐摩耗性の評価を行い、結果を表1に記載した。
Figure 0006312963

Claims (1)

  1. 繊維質基材上に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層と、ポリウレタン樹脂からなる表面処理層を順次積層してなる合成皮革であって、
    該表面処理層に末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の粒子を含有し、
    末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンの数平均分子量が30万以上であり、且つ、末端にラジカル重合性基を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合が95:5〜85:15であることを特徴とする合成皮革。
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