JP6263321B2 - 人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体 - Google Patents

人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP6263321B2
JP6263321B2 JP2014127352A JP2014127352A JP6263321B2 JP 6263321 B2 JP6263321 B2 JP 6263321B2 JP 2014127352 A JP2014127352 A JP 2014127352A JP 2014127352 A JP2014127352 A JP 2014127352A JP 6263321 B2 JP6263321 B2 JP 6263321B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
artificial leather
fiber
base material
mass
fiber entangled
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014127352A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016006241A (ja
Inventor
伸一 吉本
伸一 吉本
英夫 杉浦
英夫 杉浦
公輔 横山
公輔 横山
庸善 高井
庸善 高井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2014127352A priority Critical patent/JP6263321B2/ja
Publication of JP2016006241A publication Critical patent/JP2016006241A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6263321B2 publication Critical patent/JP6263321B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
  • Treatment Of Fiber Materials (AREA)
  • Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)
  • Chemical Or Physical Treatment Of Fibers (AREA)

Description

本発明は、接触冷温感性能に優れた人工皮革に関する。
従来から、繊維絡合体である不織布を含む人工皮革が知られている。人工皮革は天然皮革の代替品として、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌用途などの分野に用いられている。
人工皮革は、不織布の内部の空隙に高分子弾性体を含浸付与して得られる人工皮革基材に、所望の外観を付与するための表面処理が施されて製造される。高分子弾性体は不織布に充実感を付与する。人工皮革としては、例えば、銀面調の外観を付与された銀付調人工皮革や、不織布表面の繊維を毛羽立てたスエード調やヌバック調の人工皮革等が知られている。
天然皮革は、緻密なコラーゲン繊維を含むためにしなやかさと高い充実感とを兼ね備える。天然皮革の高い充実感は、曲げたときに、丸みを帯びて高級感のある細かな折れ皺を形成させ、また、優れたドレープ性を発現させる。
しかし、天然皮革は、例えば、自動車の座席シートのような耐熱性や耐水性が要求される用途には使用することが困難であった。コラーゲン繊維は耐熱性や耐水性に劣るためである。
一方、人工皮革は、天然皮革に比べて、耐熱性、耐水性、品質安定性、耐摩耗性に優れ、また、手入れもしやすい。しかし、人工皮革には、不織布中に高分子弾性体で充填されていない空隙が存在するために、天然皮革に比べて緻密さ及び充実感が劣る。そのために、人工皮革は、曲げたときに、天然皮革のように丸みを帯びて曲がらず、ボキ折れとも称されるように屈して折れ曲がる。このような折れ曲がり方は高級感がない。このようなボキ折れを解消するために、不織布中の高分子弾性体の含有割合を高めることにより、空隙を高充填する方法も知られている。しかしながら、高分子弾性体を高充填することにより空隙を低減させた場合、反発感が高くなってゴムライクな剛直な風合いになる。
ところで、人工皮革は、人の皮膚に接する靴、衣料、手袋、シートのような用途に広く用いられている。例えば、人工皮革を用いた靴の表皮には、人工皮革の3次元的な成形体が用いられる。人工皮革靴を履いた人の足は成形された人工皮革と接する。このような靴においては、歩行時に足の体温が靴の内部に蓄熱することにより、人に不快感が与えられることがあった。また、例えば、自動車の座席シートにおいては、座ったときに座面に熱が蓄積されず、人に冷感が与えられるようなシートが求められていた。
下記特許文献1は、自動車用シート等の内装材用途やソファーや椅子のための表皮などのインテリア用途に用いられる表皮材として、極端な温度に曝された場合でもその影響を受けにくく、皮膚に接触しても温度変化を感じにくい、接触冷温感を有する表皮材を開示している。詳しくは、繊維質基材に多孔質断熱層と着色層を順次積層した表皮材であって、表皮材の表面に凹凸を有し、表皮材表面における接触面積割合が65%以下である表皮材を開示している。この技術は、表皮材の熱伝導性を低下させることを目的とする技術である。
特開2014−12914号公報
本発明は、接触冷温感性能に優れた人工皮革を提供する。
本発明の一局面は、繊維絡合体と、繊維絡合体に含浸付与された、熱伝導率1W/mK以上の高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油と、を含み、少なくとも一面の接触冷温感が、最大熱吸収速度(q−max値)として0.25W/cm2以上である人工皮革基材である。このような人工皮革基材は、人がその表面に触ったときに高熱伝導性フィラーが体温を速やかに奪うために冷感を感じさせる。また、液状の不揮発性油は、高分子弾性体のバインダーを用いた場合のように風合いを硬くせず、しなやかさを維持させながら高熱伝導性フィラーを繊維絡合体内に留めることに寄与する。
また、人工皮革基材が、そのq−max値が0.25W/cm2以上の面における、JIS L1096の保温性「A法」に準じて測定された保温率が25%以下である場合には、保温性が高すぎないために接触冷温感性能の持続性に優れる点から好ましい。
また、繊維絡合体100質量部に対して、高熱伝導性フィラー3〜30質量部含有する場合には、高熱伝導性フィラーの粒子同士の接触性を充分に保持して熱伝導経路を確保させやすいために、q−max値を0.25W/cm2以上、及び保温率25%以下に調整しやすい点から好ましい。
また、繊維絡合体100質量部に対して、金属元素換算で1質量部以上に相当する量の高熱伝導性フィラーを含有する場合には、特に熱伝導性に優れる点から好ましい。なお、金属元素換算で1質量部以上に相当する量とは、含有される高熱伝導性フィラーの質量部に、高熱伝導性フィラーの種類によって異なる金属元素含有割合を乗じることによって算出される。
不揮発性油としては、流動パラフィン,シリコーンオイル,鉱物油,及びフタル酸エステル類等が好ましく用いられる。
また、0.55g/cm3以上の見かけ密度を有する場合には、熱伝導性を妨げる空壁が少なくなること及び高熱伝導性フィラーの粒子同士の接触性をさらに充分に保持させやすいために、q−max値を0.25W/cm2以上、及び保温率25%以下に調整しやすい点から好ましい。
また、本発明の他の一局面は、上述したような人工皮革基材を含む人工皮革である。
また、本発明の他の一局面は、上述したような人工皮革に、熱プレスにより三次元形状を賦与して得られた皮革調三次元成形体である。上述したような人工皮革基材は熱伝導性に優れているために、熱プレスの際に金型から付与される熱を速やかに放熱するために、人工皮革基材に含まれる繊維絡合体に熱が蓄積されにくくなり、繊維が融着しにくくなる。そのために、熱プレス後に得られる成形体が固くならず、柔らかな風合いが維持されやすくなる。
本発明によれば、接触冷温感性能に優れた人工皮革が得られる。
以下、本発明に係る人工皮革基材の一実施形態について詳しく説明する。本実施形態の人工皮革基材は、繊度0.9dtex以下の極細繊維の繊維絡合体と、繊維絡合体に含浸付与された、熱伝導率1W/mK以上の高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油と、を含み、少なくとも一面の接触冷温感が、最大熱吸収速度(q−max値)として0.25W/cm2以上である。
以下、本実施形態の人工皮革基材をその製造方法の一例に沿って詳しく説明する。
繊維絡合体としては、不織布,織布,織物,編物等の繊維構造体であれば特に限定なく用いられる。これらの中では、不織布、とくには極細繊維の不織布が好ましい。極細繊維の不織布は繊維密度が緻密であるために、その内部に高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油を保持させやすい。また、繊維の粗密ムラが低く、均質性も高い。そのために接触冷温感性能に優れ、且つ、しなやかさと高い充実感に優れた人工皮革が得られる。本実施形態では、繊維絡合体として、極細繊維の不織布を用いる場合について、代表例として詳しく説明する。
極細繊維の不織布は、例えば、海島型(マトリクス-ドメイン型)複合繊維のような極細繊維発生型繊維を絡合処理し、極細繊維化処理することにより得られる。なお、本実施形態においては、海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。なお、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維等が挙げられ、極細繊維を形成しうる繊維であれば特に限定されずに用いられる。
極細繊維の不織布の製造においては、はじめに、選択的に除去できる海島型複合繊維の海成分(マトリクス成分)を構成する熱可塑性樹脂と、極細繊維を形成する樹脂成分である海島型複合繊維の島成分(ドメイン成分)を構成する熱可塑性樹脂とを溶融紡糸し、延伸することにより海島型複合繊維を得る。
海成分の熱可塑性樹脂としては、島成分の樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンエチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、などが挙げられる。
島成分を形成し、極細繊維を形成する樹脂成分である熱可塑性樹脂としては、海島型複合繊維及び極細繊維を形成可能な樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6−12等のポリアミド;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
極細繊維の不織布の製造方法としては、例えば、海島型複合繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維を形成するような方法が挙げられる。ウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維ウェブを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、緻密さ及び充実感に優れている点から長繊維ウェブが特に好ましい。また、形成されたウェブには形態安定性を付与するために融着処理を施してもよい。
なお、長繊維とは、紡糸後に意図的にカットされた短繊維ではない、連続的な繊維であることを意味する。さらに具体的には、例えば、繊維長が3〜80mm程度になるように意図的に切断された短繊維ではない繊維を意味する。極細繊維化する前の海島型複合繊維の繊維長は100mm以上であることが好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。なお、後述する絡合時のニードルパンチや、表面のバフィングにより、製造工程において不可避的に長繊維の一部が切断されて短繊維になることもある。
海島型複合繊維の海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、絡合処理及び水蒸気による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施すことにより、海島型複合繊維を緻密化することができる。絡合処理としては、例えば、ウェブを5〜100枚程度重ね、ニードルパンチや高圧水流処理する方法が挙げられる。
海島型複合繊維の海成分は、ウェブを形成させた後の適当な段階で溶解または分解して除去される。このような分解除去または溶解抽出除去により海島型複合繊維が極細繊維化されて、繊維束状の極細繊維が形成される。
極細繊維の繊度は特に限定されないが、0.9dtex以下、さらには0.01〜0.6dtex、とくには0.02〜0.5dtexであることが好ましい。繊度が高すぎる場合には、緻密感が不充分な不織布が得られる傾向がある。また、繊度が低すぎる繊維は製造しにくい。また、繊維同士が集束して不織布の剛性が高くなる傾向がある。
このようにして得られた極細繊維の不織布は、必要に応じて厚さ調整及び平坦化処理される。具体的には、スライス処理やバフィング処理が施される。このようにして、繊維絡合体である極細繊維の不織布が得られる。
繊維絡合体の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μm、さらには300〜2000μm程度であることが好ましい。また、繊維絡合体の見かけ密度は、特に限定されないが、0.25〜0.70g/cm3、さらには0.45〜0.65g/cm3、とくには0.55〜0.60g/cm3、程度であることが、充実感としなやかな風合いとを兼ね備えた人工皮革基材が得られる点から好ましい。
次に、繊維絡合体の空隙に、熱伝導率1W/mK以上の高熱伝導性フィラー(以下、単に、高熱伝導性フィラーとも称する)と液状の不揮発性油とを含浸付与する工程について説明する。
本工程においては、はじめに高熱伝導性フィラーと不揮発性油とを含有する分散液を調製する。
分散液は、例えば、水または水とアルコール等の極性溶媒の混合液等の分散媒に、高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油を均質に混合分散させる。
本実施形態における高熱伝導性フィラーとしては、熱伝導率1W・cm・℃以上の金属粒子や無機フィラーが挙げられる。
高熱伝導性フィラーの熱伝導率は、繊維絡合体を形成する樹脂成分よりも充分に熱伝導率が高い1W/mK以上であり、10W/mK以上、さらには15W/mK以上であることが好ましい。また、高熱伝導性フィラーの粒子径としては、平均粒子径0.1〜15μm、さらには平均粒子径0.5〜10μm程度であることが好ましい。
熱伝導率1W/mK以上の金属粒子の具体例としては、酸化マグネシウム(45〜60W/mK、MgO),アルミナ(20〜35W/mK、Al23,二酸化チタン(21.9 W/mK、TiO2)),窒化アルミニウム(150〜250W/mK、AlN),酸化亜鉛(25.2W/mK、ZnO),二酸化セリウム(11.3W/mK、CeO2)等の金属化合物またはシリカ(1.38W/mK、SiO2)等の半金属化合物のフィラー等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、アルミナが安価であるとともに熱伝導性にも優れている点から好ましい。
本実施形態における液状の不揮発性油とは、沸点が150℃以上で、且つ、極性溶媒に実質的に溶解しない液体である。具体的には、例えば、流動パラフィン,パラフィン系又はナフテン系のプロセスオイル,鉱物油,シリコーンオイル,フタル酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、流動パラフィンが化学的な安定性に優れ、また、酸化しにくい点から好ましい。
また、繊維絡合体の空隙には、高熱伝導性フィラーと液状の不揮発性油に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに高分子弾性体を含浸付与してもよい。この場合、不揮発性油と高熱伝導性フィラーと高分子弾性体とを含有する分散液を用いる。
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリウレタンが耐摩耗性や機械的特性に優れる点から好ましい。
ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンのエマルジョン等の水系ポリウレタンが好ましい。これらのポリウレタンは容易にその分散液が調製され、架橋構造を形成しやすく、また、繊維に密着させすぎずに空隙に存在させることにより柔らかな風合いを発現させやすい点から特に好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、分散液に、界面活性剤や、分散剤、着色剤等の成分を配合してもよい。
繊維絡合体に分散液を含浸させる方法は特に限定されない。具体的には、例えば、繊維絡合体に分散液をディップニップすることにより含浸させる方法が好ましく用いられる。
そして、繊維絡合体に分散液を含浸させた後、乾燥させることにより、分散液中の分散媒等の揮発成分を乾燥除去する。それにより、分散液中の高熱伝導性フィラー及び不揮発性油が繊維絡合体の繊維間の空隙に残る。乾燥条件は特に限定されないが、例えば70〜150℃で1〜10分間程度乾燥させるような条件が挙げられる。このようにして繊維絡合体の繊維間の空隙に高熱伝導性フィラー及び不揮発性油が付与される。
繊維絡合体に対する高熱伝導性フィラーの含有量は、特に限定されないが、繊維絡合体100質量部に対して、3〜30質量部、さらには5〜20質量部であることが好ましい。繊維絡合体に対する高熱伝導性フィラーの量が少なすぎる場合には繊維内に空隙が多く残りやすくなって接触冷温感が発現されにくくなり、また、充実感が低下する傾向がある。また、繊維絡合体に対する高熱伝導性フィラーの量が多すぎる場合には、しなやかな風合いが低下する傾向がある。
また、繊維絡合体100質量部に対する高熱伝導性フィラーの含有量としては、金属元素換算で1質量部以上、さらには3質量部以上に相当する量の高熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。このような量の金属元素を含有する量に相当する高熱伝導性フィラーを含有する場合には、特に熱伝導性に優れる点から好ましい。なお、金属元素換算で1質量部以上に相当する量とは、含有される高熱伝導性フィラーの質量部に、高熱伝導性フィラーの種類によって異なる金属元素含有割合を乗じることによって算出される。具体的には、例えば、アルミナ(Al2O3)の場合、金属元素含有割合は52%である。この場合、アルミナ10質量部は、金属元素換算で5.2質量部になる。
繊維絡合体に対する不揮発性油の配合量は、特に限定されないが、繊維絡合体100質量部に対して、2〜20質量部、さらには3〜10質量部であることが好ましい。繊維絡合体に対する不揮発性油の量が少なすぎる場合には、風合いが硬くなる傾向がある。また、繊維絡合体に対する不揮発性油の量が多すぎる場合には、繊維絡合体が不揮発性油を保持できなくなって脱けやすくなる傾向がある。
また、繊維絡合体に対する高分子弾性体の配合量は、特に限定されないが、繊維絡合体100質量部に対して、0〜15質量部、さらには1〜14質量部、とくには1〜10質量部であることが好ましい。繊維絡合体に対する高分子弾性体の量が多すぎる場合にはゴム感が強くなって反発性が高くなることにより、しなやかな風合いが低下する傾向がある。高分子弾性体は必須成分ではないが、配合することにより形態安定性を高めたり弾性を調整したりすることができる。
また、高熱伝導性フィラー、不揮発性油及び高分子弾性体の合計量中の高熱伝導性フィラーの割合としては、10〜99質量%、さらには30〜97質量%、とくには50〜90質量%であることが好ましい。高熱伝導性フィラーの割合が低すぎる場合には接触冷温感が充分に発現されにくくなる傾向があるとともに、充実感が低下する傾向がある。また、高すぎる場合には相対的に不揮発性油の割合が低くなることによりしなやかな風合いが低下する傾向がある。
また、高熱伝導性フィラー、不揮発性油及び高分子弾性体の合計量中の不揮発性油の割合は、特に限定されないが、1〜90質量%、さらには3〜70質量%、とくには10〜50質量%、ことには20〜35質量%であることが、しなやかな風合いと充実感とが得られる点から好ましい。不揮発性油の割合が低すぎる場合にはしなやかな風合いが低下する傾向があり、高すぎる場合には相対的に高熱伝導性フィラーの割合が低くなることにより、接触冷温感が充分に発現されにくくなるとともに、充実感が低下する傾向がある。
高熱伝導性フィラー、不揮発性油及び高分子弾性体の合計量中の高分子弾性体の割合としては、0〜40質量%、さらには1〜20質量%であることが好ましい。高分子弾性体の割合が高すぎる場合には、q−max値が0.25W/cm2以上未満になりやすくなるとともに、ゴムライクな風合いになる傾向がある。
このようにして繊維絡合体の繊維間の空隙に高熱伝導性フィラー、不揮発性油及び必要に応じて高分子弾性体を含浸付与させた人工皮革基材が得られる。このような人工皮革基材は、必要に応じてスライス処理またはバフィング処理することにより厚さ調整及び平坦化処理されたり、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
人工皮革基材の充実感としなやかさを調整する目的で、高熱伝導性フィラー、不揮発性油及び必要に応じて高分子弾性体を含浸付与させた人工皮革基材に柔軟加工することが好ましい。柔軟加工の方法は特に限定されないが、人工皮革基材を弾性体シートに密着させてタテ方向(製造ラインのMD)に機械的に収縮させ、その収縮状態で加熱処理してヒートセットする方法が好ましい。本方法を採用することで、表面の平滑性を向上させながら柔軟化することが可能である。
本実施形態の人工皮革基材は、少なくとも一面の接触冷温感が、最大熱吸収速度(q−max値)として0.25W/cm2以上であり、好ましくは0.28W/cm2以上、さらに好ましくは0.3W/cm2以上である。このように最大熱吸収速度(q−max値)が0.25W/cm2以上である場合には、熱伝達効率が高くなり、例えば、肌に接したときに冷感が得られる。なお、接触冷温感とは、人が物体に触ったときに感じられる冷たいまたは暖かいというような温度に関する皮膚感覚であり、皮膚から物への熱の移動量の差によって変化する、最大熱吸収速度(q−max値)で評価される。q−max値が大きいほど、熱伝導が速いことを示し、人が触ったときの冷感が大きく感じられる。
また、本実施形態の人工皮革基材は、上記q−max値が0.25W/cm2以上の面における、JIS L1096の保温性「A法」に準じて測定された保温率が30%以下、さらには25%以下、とくには20%以下であることが好ましい。保温率は、吸収した熱を保持する指標であり、保温率が低いほど熱を放出しやすい。すなわち、人工皮革基材の保温率が低いほど、吸収した熱を速やかに放出するために、冷感の持続性に優れる。
人工皮革基材の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μm、さらには300〜2000μm程度であることが好ましい。また、人工皮革基材の見かけ密度は、特に限定されないが、0.55〜0.85g/cm3、さらには0.60〜0.80g/cm3であることが充実感としなやかな風合いとのバランスに優れる点から好ましい。
人工皮革基材は、表面に所望の外観を付与するための処理が施されることにより人工皮革に仕上げられる。人工皮革としては、例えば、人工皮革基材の表面をバフィング処理して繊維を立毛または起毛させることにより毛羽立てた外観を付与した起毛調人工皮革(スエード、ヌバック、ベロア、バックスキン)や、人工皮革基材の表面に銀面調の樹脂層を付与した銀付調人工皮革や、等が挙げられる。
起毛調人工皮革(スエード、ヌバック、ベロア、バックスキン)は、人工皮革基材の表層をサンドペーパーなどを用いてバフィング処理して起毛処理または立毛処理することにより得られる。
また、銀付調人工皮革は、人工皮革基材の表面に銀面調の樹脂層を形成することにより得られる。人工皮革基材の表面に銀面調の樹脂層を形成する方法は特に限定されず、例えば、乾式造面法やダイレクトコート法が用いられる。乾式造面法は、剥離シート上に銀面層を形成するための着色した樹脂を含む塗液を塗布した後、乾燥させることにより皮膜を形成し、皮膜を人工皮革基材の表面に接着層を介して貼り合わせた後、剥離シートを剥離する方法である。また、ダイレクトコート法は、樹脂を含む塗液を人工皮革基材の表面に直接、ロールコーターやスプレーコーターにより塗布した後、乾燥させることにより形成する方法である。
本実施形態の人工皮革は天然皮革のようなしなやかさと高い充実感とを兼ね備えている。具体的には、例えば、ソフトネステスターで測定された剛軟度が2.0mm以上、好ましくは、2.5〜4.0mmのようなしなやかさを示すことが好ましい。また、見掛け密度は、0.55〜0.85g/cm3、さらには0.60〜0.80g/cm3であるような充実感を有することが好ましい。
また、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
このようにして形成された人工皮革は、シート状のまま、または、熱プレスすることにより三次元的に成形された成形体として、各種製品の表皮材として用いることができる。具体的には、例えば、靴や鞄等の皮革製品の表皮材や、自動車の座席シートのような内装材、携帯電話,モバイル機器,家電製品の筐体等の表面に一体化して用いられる表皮材等として用いられる。
三次元的に成形された成形体は、例えば、人工皮革を雄型及び雌型からなる3次元形状のキャビティ―を有する金型を用いて熱プレス成形することにより、得られる。本発明に係る人工皮革基材を含む人工皮革を、熱プレスした場合、人工皮革基材が熱伝導性に優れているために、熱プレスの際に付与される熱を速やかに放熱するために、人工皮革基材に含まれる繊維絡合体が融着しにくくなる。そのために、熱プレス後に得られる成形体が固くならず、柔らかな風合いが維持されやすくなる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
〈不織布の製造〉
海成分として水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)、島成分として変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−トを用い、口金温度260℃に設定された、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成するノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に溶融樹脂を供給し、ノズル孔から吐出させた。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。
そして、吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように吸引装置で吸引することにより延伸し、繊度が2.1dtexの海島型複合繊維の長繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合繊維の長繊維は、可動型のネット上に連続的に堆積され、42℃の金属ロールで軽く押さえ、表面の毛羽立ちを抑えた。そして、海島型複合繊維の長繊維をネットから剥離し、表面温度55℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させた。このようにして、線圧200N/mmで熱プレスして目付31g/m2の長繊維ウェブを得た。
次に、総目付が250g/m2になるようにウェブをクロスラッパー装置を用いて8層に重ね、重ね合わせウェブを作製し、更に針折れ防止油剤をスプレーした。次いで、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmにて両面から交互に3300パンチ/cm2でニードルパンチした。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は550g/m2であった。
絡合ウェブを巻き取りライン速度10m/分で70℃の熱水中に14秒間浸漬して面積収縮を生じさせた。ついで95℃の熱水中で繰り返しディップニップ処理を実施してPVAを溶解除去することにより、繊度0.1dtexの極細長繊維を25本含む繊度2.5dtexの繊維束が3次元的に交絡した不織布を作製した。乾燥後に測定した面積収縮率は52%であった。そして不織布をスライスし、バフィングすることにより厚さ1.05mmに調整した。このようにして得られた繊維絡合体である極細繊維の不織布は、目付576g/m2、見掛け密度0.565g/cm3であった。
〈高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油の含浸付与〉
アルミナ粒子35%owf、不揮発性油(流動パラフィン)15%owf、及び水系ポリウレタン5%owfを含む水分散液を調製した。そして、極細繊維の不織布に85%のピックアップ率で分散液を含浸させた後、水分を乾燥させることによりアルミナ,流動パラフィン,及び水系ポリウレタンを含浸付与した。そして、アルミナ,流動パラフィン,及び水系ポリウレタンを含浸付与した極細繊維の不織布を収縮加工装置(小松原鉄工(株)製、サンフォライジング機)を用いて、その収縮部のドラム温度120℃、ヒートセット部のドラム温度120℃、搬送速度10m/分で処理してタテ方向(長さ方向)に4.0%収縮させて人工皮革基材を得た。得られた人工皮革基材は、極細繊維の不織布100質量部に対して、アルミナ10.5質量部、流動パラフィン4.5質量部、水系ポリウレタン1.5質量部を含有し、目付680g/m2、見掛け密度0.671g/cm3であった。
アルミナ粒子としては、平均粒子径5μmのアルミナ粒子(熱伝導率30W/mK)の水分散液(大京化学(株)製のKTC−18、固形分40%)を用いた。なお、アルミナの金属元素含有割合は52質量%である。また、流動パラフィンとしては、流動パラフィンの水分散液(大京化学(株)製のラステックスLB、固形分30%)を用いた。また、水系ポリウレタンとしては、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなる架橋タイプのポリウレタン(固形分30質量%、融点180〜190℃、損失弾性率のピーク温度−15℃、130℃での熱水膨潤率が35%)のエマルジョンを用いた。
〈銀面層の形成:タンナー処理〉
人工皮革基材の表面にベースコート液をGemata製STARPLUSを用いて塗布量140g/m2でロールコートすることにより膜厚28μmのベースコート層を形成した。なお、ベースコート液としては、ポリウレタンエマルジョン(DIC(株)製 LCCバインダーUB1770 固形分30質量%)をフォードカップNo.4 55Sの粘度195mPa・sになるように増粘剤で調整したものを用いた。そして、形成されたベースコート層の表面にさらにカラーコート液をGemata製STARPLUSを用いて塗布量70g/m2でスプレーコートすることにより膜厚14μmのカラーコート層を形成した。なお、カラーコート液としては、ポリウレタンエマルジョン(DIC(株)製 LCCバインダーUB1770 固形分30%)を岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30mPa・sになるように調整したものを用いた。そして、さらに40〜50℃で2〜4時間空打ち処理を行った。そして、125℃,50kg/cm2のエンボスロールを用いてライン速度7.0m/分で表層にエンボス処理を施した。そしてその表面に、岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30mPa・sに調整したトップコート塗料((株)トウペ製のクリアー塗料)を塗布し、膜厚13.5μmのトップコートを形成した。このようにして目付745.5g/m2、見かけ密度0.697g/cm3の銀付調の人工皮革が得られた。
〈人工皮革の評価〉
得られた人工皮革を以下の評価方法に従って評価した。
(最大熱吸収速度(q−max値)の測定)
接触冷感の評価として、精密迅速熱物性測定装置(KES−F−M7サーモラボII型、カトーテック(株))を用いて最大熱吸収速度(q−max値)を測定した。なお、測定は、人工皮革の銀面層が形成されていない面を測定面とし、室温20℃、湿度65%RHの室内で、温度検出器と人工皮革の測定面との温度差を20℃に設定して測定した。なお、人工皮革の銀面層が形成されていない面のq−max値は、銀面層が形成されていない人工皮革基材の表面のq−max値と実質的に同等になる。
(JIS L1096の保温性「A法」に準じた保温率の測定)
保温性試験機を用いて、一定温度(36±0.5℃)に設定した恒温発熱体に試験片を取り付け、2時間後に試験片を介して放散された熱量(a)を求めた。一方、試験片を取り付けない状態で、2時間後に放散された熱量(b)を求めた。そして、次式:保温率(%)=(1−a/b)×100、により、保温率(%)を算出した。
(接触冷感の官能評価)
室温20℃、湿度65%RHの室内で24時間放置された人工皮革の銀面層が形成されていない面を、10人の一般需要者を被験者として、各被験者に手の平で触れさせた。そして、各被験者が感じた接触冷感を下記の基準に従って判定させた。
A:明らかな冷感が与えられた
B:冷感が得られなかった、または明らかには得られなかった
(剛軟度:ソフトネス)
ソフトネステスター(皮革ソフトネス計測装置ST300:英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いて剛軟度を測定した。具体的には、直径25mmの所定のリングを装置の下部ホルダーにセットした後、下部ホルダーに銀付調人工皮革をセットした。そして、上部レバーに固定された金属製のピン(直径5mm)を銀付調人工皮革に向けて押し下げた。そして、上部レバーを押し下げて上部レバーがロックしたときの数値を読み取った。なお、数値は侵入深さを表し、数値が大きいほどしなやかであることを表す。
(風合い)
人工皮革を20×20cmに切りだしたサンプルを調製した。そして、中央部を境にして内側に曲げたときの外観や掴んだときの外観を以下の基準で判定した。
A:曲げたときに丸みを帯びたように曲がり、また、緻密で細かな折れシボが発生した。また、ドレープ性にも優れていた。
B:曲げたときに屈して折れ曲がり、また、粗いシボや深いシワが発生した。また、ドレープ性にも劣っていた。
C:充実感が著しく低い風合いであった。
(見掛け密度)
JIS L1913に準じて、厚さ(mm)および目付け(g/cm2)を測定し、これらの値から見掛け密度(g/cm3)を算出した。
以上の評価結果を下記表1に示す。
Figure 0006263321
[実施例2〜3]
実施例1において、極細繊維の不織布に対する各成分の配合部数を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、平均粒子径5μmのアルミナ粒子を配合する代わりに、平均粒子径5μmの酸化チタン粒子(熱伝導率21.9W/mK)を配合した以外は実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。なお、酸化チタンの金属元素含有割合は57.9質量%である。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において調製した分散液の組成において、平均粒子径5μmのアルミナ粒子を配合する代わりに、平均粒子径5μmのジアルキルホスフィン酸アルミニウム(組成式C12H30AlO6P3)(熱伝導率10W/mK)を配合した以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。なお、ジアルキルホスフィン酸アルミニウムの金属元素含有割合は20質量%である。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、不織布100質量部に対してアルミナ粒子を10.5質量部配合する代わりに、アルミナ粒子を1質量部配合した以外は実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、極細繊維の不織布にアルミナ、流動パラフィン、及び水系ポリウレタンを含有する分散液を含浸付与する代わりに、極細繊維の不織布100質量部に対して固形分で12.5質量部含有されるように実施例1で用いたのと同様の水性ポリウレタン分散液を含浸させ、120℃で乾燥させた以外は同様にして人工皮革を得、評価した。得られた人工皮革基材は、極細繊維の不織布100質量部に対して、水系ポリウレタン12.5質量部を含有した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、極細繊維の不織布にアルミナ、流動パラフィン、及び水系ポリウレタンを含有する分散液を含浸付与する代わりに、極細繊維の不織布100質量部に対して固形分で30質量部含有されるように実施例1で用いたのと同様の水性ポリウレタン分散液を含浸させ、120℃で乾燥させた以外は同様にして人工皮革を得、評価した。得られた人工皮革基材は、極細繊維の不織布100質量部に対して、水系ポリウレタン30質量部を含有した。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、人工皮革基材の代わりに組織がコラーゲン繊維で高充填されている一般的な天然皮革(本革)の評価を行った。結果を表1に示す。
本発明に係る実施例1〜5で得られた人工皮革基材はいずれもq−max値として0.25W/cm2以上であり、保温率が25%以下となり、接触冷感の官能評価において、各被験者が明らかな冷感を得た。また、見掛け密度が0.6g/cm3以上であり、剛軟度も2.0mm以上のしなやかさを有し、充実感としなやかさとを兼ね備えた人工皮革であった。
また、極細繊維の不織布100質量部に対して、アルミナ粒子を1質量部配合して得られた比較例1の人工皮革は、q−max値が0.213W/cm2であり、保温率も25.5%であり、接触冷感の官能評価において、各被験者は明らかな冷感を得なかった。
また、極細繊維の不織布100質量部に対して水系ポリウレタン12.5質量部のみを配合して得られた比較例2の人工皮革は、q−max値が0.225W/cm2であり、保温率25.8%であり、接触冷感の官能評価において、各被験者は明らかな冷感を得なかった。
また、極細繊維の不織布100質量部に対して水系ポリウレタン30質量部のみを配合して得られた比較例3の人工皮革は、q−max値が0.233W/cm2であり、保温率30.9%であり、接触冷感の官能評価において、各被験者は明らかな冷感を得なかった。
なお、比較例4において、コラーゲン繊維で組織が緻密に充填されている一般的な天然皮革(本革)を評価した結果、q−max値は0.291W/cm2であり、保温率21.1%であり、接触冷感の官能評価において、各被験者が明らかな冷感を得た。
以上の実施例から、繊維絡合体と、繊維絡合体に含浸付与された、熱伝導率1W/mK以上の高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油と、を含み、q−max値が0.25W/cm2以上の面を有する人工皮革基材によれば、繊維絡合体の繊維間の空隙に含浸させた高熱伝導性フィラーが速やかに肌の熱を奪うために人に冷感を与える。また、高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油は、風合いと充実感とを人工皮革に付与する。
[実施例6及び比較例5]
実施例1及び比較例2のそれぞれで得られた人工皮革を、表面温度175℃の石鹸箱形状の金型で10秒間熱プレスして三次元的な形状を賦形された成形体を得た。その結果、熱伝導性に優れた実施例1の人工皮革を成形して得られた成形体は、しなやか、または柔軟な風合いを維持していた。一方、比較例3の人工皮革を成形して得られた成形体は、繊維成分及び高分子弾性体が熱プレス時に付与される熱により極細繊維及び高分子弾性体が押し潰されたように融着したような状態になり、しなやか、または柔軟な風合いを失って硬い風合いを有していた。
本発明の人工皮革基材を用いた人工皮革は、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌内装用途などの皮革調素材として用いられる。

Claims (9)

  1. 繊維絡合体と、前記繊維絡合体に含浸付与された、熱伝導率1W/mK以上の高熱伝導性フィラー及び液状の不揮発性油と、を含み、
    少なくとも一面の接触冷温感が、最大熱吸収速度(q−max値)として0.25W/cm2以上であることを特徴とする人工皮革基材。
  2. 前記q−max値が0.25W/cm2以上の面における、JISL1096の保温性「A法」に準じて測定された保温率が25%以下である請求項1に記載の人工皮革基材。
  3. 前記繊維絡合体100質量部に対して、前記高熱伝導性フィラー3〜30質量部含有する請求項1または2に記載の人工皮革基材。
  4. 前記繊維絡合体100質量部に対して、金属元素換算で1質量部以上に相当する量の前記高熱伝導性フィラーを含有する請求項1〜3の何れか1項に記載の人工皮革基材。
  5. 前記不揮発性油が、流動パラフィン,シリコーンオイル,鉱物油,及びフタル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の人工皮革基材。
  6. 0.55g/cm3以上の見かけ密度を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の人工皮革基材。
  7. 前記繊維絡合体が繊度0.9dtex以下の極細繊維の不織布を含む請求項1〜6の何れか1項に記載の人工皮革基材。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の人工皮革基材を含む人工皮革。
  9. 請求項8に記載の人工皮革に、熱プレスにより三次元形状を賦与して得られたことを特徴とする皮革調成形体。
JP2014127352A 2014-06-20 2014-06-20 人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体 Active JP6263321B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014127352A JP6263321B2 (ja) 2014-06-20 2014-06-20 人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014127352A JP6263321B2 (ja) 2014-06-20 2014-06-20 人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016006241A JP2016006241A (ja) 2016-01-14
JP6263321B2 true JP6263321B2 (ja) 2018-01-17

Family

ID=55224806

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014127352A Active JP6263321B2 (ja) 2014-06-20 2014-06-20 人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6263321B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018110468A1 (ja) * 2016-12-14 2018-06-21 株式会社堀場製作所 粒子物性測定装置
EP3633100A4 (en) * 2017-05-31 2021-01-06 Kuraray Co., Ltd. GRAINED ARTIFICIAL LEATHER AND ITS MANUFACTURING PROCESS
CN111719319B (zh) * 2020-05-22 2021-08-06 东风汽车集团有限公司 一种高导热超细纤维聚氨酯合成革及其制备方法和用途

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4198523B2 (ja) * 2002-05-20 2008-12-17 株式会社クラレ 皮革様シートおよびその製造方法
KR101292882B1 (ko) * 2005-04-18 2013-08-02 군제 가부시키가이샤 접촉 냉감이 우수한 섬유
WO2011027732A1 (ja) * 2009-09-03 2011-03-10 東レ株式会社 抗ピリング性人工皮革
JP5665236B2 (ja) * 2011-05-16 2015-02-04 竹本油脂株式会社 塗布型弾性繊維用処理剤、弾性繊維の処理方法及び弾性繊維
CN105026640B (zh) * 2013-02-27 2019-03-08 可乐丽股份有限公司 人造革基材、粒面人造革、以及人造革基材的制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016006241A (ja) 2016-01-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6473412B2 (ja) 人工皮革基材、銀付調人工皮革、人工皮革基材の製造方法、及び人工皮革基材用改質剤
TWI726097B (zh) 粒面調人工皮革
JP5593379B2 (ja) 皮革様シート
KR102444372B1 (ko) 기모 피혁풍 시트 및 그 제조 방법
JP6346873B2 (ja) 人工皮革
KR102188219B1 (ko) 누벅풍 피혁형 시트 및 그 제조 방법
TW201440956A (zh) 硬質薄片及硬質薄片之製造方法
JP6263321B2 (ja) 人工皮革基材、人工皮革、及び皮革調三次元成形体
JP6207717B2 (ja) ヌバック調シート状物およびその製造方法
JP2016044375A (ja) 難燃性人工皮革基材、難燃性銀付調人工皮革及び難燃性銀付調人工皮革の製造方法
JP7089866B2 (ja) 開口部を有するシート状物およびその製造方法
JP6163422B2 (ja) 皮革様シート及びその製造方法
JP2015158030A (ja) 人工皮革、及び人工皮革の製造方法
JP2015034355A (ja) パーフォレーション皮革様シート
JP5959394B2 (ja) 銀付調人工皮革
JP2013067917A (ja) 皮革様シート
TWI769259B (zh) 粒面狀人工皮革及粒面狀人工皮革之製造方法
JP2007002342A (ja) 機能性皮革様シート
JP2012214944A (ja) 皮革様基材、および該皮革様基材を用いた人工皮革,並びに研磨パッド
JP6087073B2 (ja) 銀付調人工皮革及びその製造方法
JP6688593B2 (ja) 人工皮革基材、人工皮革及び人工皮革基材の製造方法
WO2018203494A1 (ja) 人工皮革基材及び銀付調人工皮革
JP2004218164A (ja) 皮革様シート基材およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161121

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20171116

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171128

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171216

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6263321

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150