JP2015151641A - 表皮材 - Google Patents

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慎介 南出
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Abstract

【課題】主面が平滑であると共にアルデヒド系化合物の放出質量の少ない内装材を調製可能な表皮材を提供する。
【解決手段】布帛とバインダを含む表皮材であり、表皮材に含まれているバインダの流れ値が0.002cm/sec.以下であり、バインダの流動開始温度が成形温度より高いため、ヒートプレス時など内装材を調製する過程で表皮材が加熱されてバインダが溶融あるいは軟化しても、バインダの流動が発生し難い。その結果、主面にバインダの存在質量の多い部分と少ない部分が生じることに起因する凹凸が発生するのを防止して、主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材。更に、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量がいずれも0.25μg/80cm以下である、アルデヒド系化合物の放出質量が少ない内装材を調製可能な表皮材。布帛の構成繊維がバインダーで結合され、その主面にバインダ及び顔料がプリントされ、模様が付与されている表皮材。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば車両用インシュレーターや車両用天井材などの内装材を調製可能な表皮材である。
従来から、例えば車両用インシュレーターや車両用天井材などの内装材を調製するため、ニードルパンチ不織布に塩化ビニル系バインダ、アクリル系バインダ、或いはポリエステル系バインダを含浸した表皮材が使用されている(例えば、特許文献1など)。
このような表皮材を用いて内装材を調製する場合には、例えばレジンフェルト、段ボール、ポリウレタン発泡体などのプラスチック発泡体、ガラス繊維樹脂複合体、ウッドストック、或いは剛性のある不織布などからなる基材を用意し、表皮材と基材を積層して一対の金型に挟み込んだ状態で熱と圧力を作用させてヒートプレスする。そして、ヒートプレスによって一体化された表皮材と基材の周囲を刃でトリミングして内装材を調製できる。
特公平7−30515号公報(特許請求の範囲、第2頁右欄第8行目〜第14行目など)
本願発明者らは上述のように、ヒートプレスを用いて表皮材と基材を積層一体化して内装材を調製することを試みたところ、調製した内装材における表皮材由来の主面に意図せぬ凹凸が生じて平滑にならず、内装材の品位が低下していることがあった。
本願発明者らがこの問題の発生原因を調査したところ、ヒートプレス時に表皮材が加熱されると、表皮材に含まれているバインダ、特には表皮材の主面に含まれているバインダが溶融あるいは軟化して意図せず流動して、表皮材の主面にバインダの存在質量の多い部分と少ない部分が生じることがあり、その結果、前述した凹凸が発生したことを見出した。
また、近年安全対策の観点から、環境中に存在するホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド系化合物の低量化が求められている。
本願発明者らは前述した安全対策の観点に基づき検討したところ、内装材は車両空間内の広い面積に設けられ使用されることから、車両空間に露出している内装材を構成している表皮材からアルデヒド系化合物が放出され、車両中(車両内環境)のアルデヒド系化合物の濃度が顕著に上昇し易くなることを見出した。
以上から、本発明は、主面が平滑であると共にアルデヒド系化合物の放出質量の少ない内装材を調製可能な、表皮材の提供を目的とする。
本発明は、
(1)「布帛とバインダを含む表皮材であり、
前記バインダは流れ値が0.002cm/sec.以下、流動開始温度が成形温度よりも高く、
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量がいずれも0.25μg/80cm以下である表皮材。」であり、
(2)「布帛の構成繊維がバインダによって結合されている、請求項1記載の表皮材。」であり、
(3)「布帛の主面にバインダ及び顔料がプリントされ、模様が付与されている、請求項1又は請求項2記載の表皮材。」
である。
第一の発明である表皮材は、布帛を含んでいるため柔軟で金型への追従性に優れる。
また、表皮材に含まれているバインダの流れ値が0.002cm/sec.以下であるため、ヒートプレス時など内装材を調製する過程で表皮材が加熱されてバインダが溶融あるいは軟化しても、バインダの意図しない流動が発生し難い。そして、表皮材に含まれているバインダの流動開始温度が成形温度よりも高いため、ヒートプレス時に表皮材が加熱されてもバインダの意図しない流動が発生し難い。
その結果、第一の発明である表皮材は、主面にバインダの存在質量の多い部分と少ない部分が生じることに起因する凹凸が発生するのを防止して、主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材である。
更に、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量がいずれも0.25μg/80cm以下であることから、アルデヒド系化合物の放出質量が少ない内装材を調製可能な表皮材である。
また、第二の発明である表皮材は、布帛の構成繊維がバインダによって結合されているため、ヒートプレスなど内装材を調製する過程で布帛に亀裂や破断が生じるのを防いで、更に、主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材である。
そして、第三の発明である表皮材は、ヒートプレスなど内装材を調製する過程でバインダの意図しない流動が発生し難いため、布帛の主面にバインダ及び顔料がプリントされたことにより付与された、表皮材に印刷された模様が意図せず滲んだり変形したりするのを防止できる。そのため、明確な模様を有する意匠性に優れた内装材を調製可能な表皮材である。
本発明でいう布帛とは、例えば、繊維ウェブや不織布あるいは織物や編物などの繊維構造体を指す。本発明の表皮材は、布帛を含んでいるため、柔軟で金型への追従性に優れる。特に、本発明の表皮材を構成する布帛が不織布であると、更に柔軟で金型への追従性に優れ好ましい。
布帛の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマーを用いて構成できる。
なお、これらの有機ポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機ポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機ポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機ポリマーを混ぜ合わせたものでも良く、特に限定されるものではない。
なお、難燃性が求められる用途に使用できる表皮材が必要な場合には、布帛の構成繊維が難燃性の有機ポリマーを含んでいるのが好ましい。このような難燃性の有機ポリマーとして、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
構成繊維は、一種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも、複数種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機ポリマーから構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
布帛が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、布帛に強度と形態安定性を付与し、毛羽立ちや繊維の飛散を抑制でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(有機ポリマー)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用することができる。
また、布帛が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して金型への追従性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。
なお、布帛が織物や編物である場合、上述の繊維を織るあるいは編むことで調製できる。
布帛が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009−287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
また、繊維ウェブや不織布における繊維の絡合の程度を調整するため、繊維ウェブをニードルパンチ装置や水流絡合装置に供することができる。
布帛の構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、補強効果を高める上では1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましい。他方、均質な地合いであることで主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材となるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。また、布帛の構成繊維の繊維長も特に限定するものではないが、補強効果を高める上では、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、布帛の調製時に繊維塊が形成される傾向があり主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材の提供が困難となるおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。
布帛の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。
布帛の厚さは、0.5〜5mmであるのが好ましく、1〜3mmであるのがより好ましく、1.1〜1.9mmであるのが最も好ましい。また、布帛の目付は、例えば、50〜500g/mであるのが好ましく、80〜300g/mであるのがより好ましく、100〜250g/mであるのが最も好ましい。
なお、本発明において厚さとは20g/cm圧縮荷重時の厚みをいい、目付とは測定対象物の一番広い面(主面)における1mあたりの質量をいう。
本発明の表皮材は、流れ値が0.002cm/sec.以下、流動開始温度が成形温度よりも高い特性を有するバインダを備えている。
本発明のバインダの流れ値が0.002cm/sec.以下であることによって、ヒートプレス時など内装材を調製する過程で表皮材が加熱されてバインダが溶融あるいは軟化しても、バインダの意図しない流動が発生し難い。バインダの流れ値は小さいほど、バインダの意図しない流動が発生し難くなる傾向があるため、バインダの流れ値は0.002cm/sec.以下であるのが好ましく、0.0018cm/sec.以下であるのがより好ましく、0.0015cm/sec.以下であるのが最も好ましい。
なお、本発明でいう流れ値とは、測定対象となるバインダをJIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験法」のB法に記載の測定方法に供し、前記測定方法における測定条件と、前記測定方法によって測定された「試験荷重を加えて流れ試験を開始後、ピストンが0mmから10mmへ硬化する時間の平均値の値」を、「付属書C(参考)熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」の「9.結果の表し方」に記載の数式に代入して算出した値である。
そして、本発明のバインダの流動開始温度が成形温度よりも高いことによって、ヒートプレス時に表皮材が加熱されてもバインダの意図しない流動が発生し難い。バインダの流動開始温度は成形温度よりも高ければ高いほど、バインダの意図しない流動が発生し難くなる傾向があるため、バインダの流動開始温度は成形温度よりも10℃以上高いのが好ましく、20℃以上高いのがより好ましく、30℃以上高いのが最も好ましい。
なお、本発明でいうバインダの流動開始温度とは、測定対象となるバインダを示差走査熱量計へ供し、昇温温度10℃/分で室温から昇温した際に測定された融解吸熱曲線の極大値を与える温度をいう。なお、極大値が2つ以上ある場合には、最も低い温度の極大値をバインダの流動開始温度とする。
また、本発明でいう成形温度とは表皮材を用いて内装材を調製する過程において、表皮材が最も高い温度に加熱された際の温度を指す。
なお、バインダの種類は上述の特性を満足するのであれば適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体[スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、セルロース誘導体[カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど]、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP)、アクリル系樹脂などを使用できる。
ヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れ、浮きや皺を発生することなく基材と一体化できるため、バインダ成分としてアクリル系樹脂を有するバインダであるのが好ましい。
また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子などの添加剤を含んでいてもよい。
本発明の表皮材は上述のバインダを含むため、主面にバインダの存在質量の多い部分と少ない部分が生じることに起因する凹凸が発生するのを防止して、主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材である。
得に、布帛の主面にバインダ及び顔料を含有したプリント液を付与してなる、主面に模様がプリントされた表皮材を調製する場合には、バインダ成分として流れ値が0.002cm/sec.以下、流動開始温度が成形温度よりも高いアクリル系樹脂のみを有するバインダを採用すると、ヒートプレスなど内装材を調製する過程でバインダ(顔料を含んだバインダ)の意図しない流動が発生するのをより防ぐことができて、表皮材に印刷された模様が意図せず滲んだり変形したりするのを効果的に防止でき好ましい。
本発明の表皮材は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量がいずれも0.25μg/80cm以下であることによって、アルデヒド系化合物の放出質量が少ない内装材を調製可能な表皮材である。前記放出質量が少ないほどアルデヒド系化合物の放出質量が少ない内装材を調製可能であることから、前記放出質量は0.2μg/80cm以下であるのが好ましく、0.1μg/80cm以下であるのがより好ましい。
なお、本発明でいうホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量とは、表皮材から切り取った正方形形状の試験片(表面積:80cm、厚さ:1.5mm)を、以下に説明する測定方法へ供し測定した値である。
(ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量測定方法)
(1)ポリフッ化ビニル製バッグ内に5Lの窒素ガスを充填する。
(2)65℃に保った恒温槽へバッグを入れ、バッグを65℃で2時間加熱する。
(3)加熱した後のバッグ内に存在する窒素ガス3Lを採取する。
(4)採取した窒素ガス3LをDNPHカートリッジへ導入し、窒素ガス中に含まれるホルムアルデヒドとアセトアルデヒドをDNPHカートリッジに捕集する。
(5)DNPHカートリッジに捕集されたバッグから発生したホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの質量(W、単位:μg)を、JISA1901「建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法−小形チャンバー法」に記載の測定方法に準じて求める。
(6)上述した測定へ供したポリフッ化ビニル製バッグと同一のポリフッ化ビニル製バッグ内へ正方形形状の試験片(表面積:80cm、厚さ:1.5mm)を入れ、バッグ内に5Lの窒素ガスを充填する。
(7)65℃に保った恒温槽へバッグを入れ、バッグならびに正方形形状の試験片を65℃で2時間加熱する。
(8)加熱した後のバッグ内に存在する窒素ガス3Lを採取する。
(9)採取した窒素ガス3LをDNPHカートリッジへ導入し、窒素ガス中に含まれるホルムアルデヒドとアセトアルデヒドをDNPHカートリッジに捕集する。
(10)DNPHカートリッジに捕集されたホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの質量(W、単位:μg)を、JISA1901「建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法−小形チャンバー法」に記載の測定方法に準じて求める。
(11)試験片から放出されたホルムアルデヒドあるいはアセトアルデヒドの質量を、以下に記載する式から算出する。
C=(W−W)×(V/V)/S
C:試験片から放出したホルムアルデヒドあるいはアセトアルデヒドの質量(μg/80cm
W:DNPHカートリッジに捕集されたホルムアルデヒドあるいはアセトアルデヒドの質量(μg)
:DNPHカートリッジに捕集されたバッグから発生したホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの質量(μg)
:バッグ内に充填した窒素ガス量(5L)
:採取した窒素ガス量(3L)
S:試験片の表面積(80cm
表皮材の調製方法は、限定するものではないが、例えば、
1.布帛をバインダ溶液中に浸漬した後、バインダ溶液から引き上げた布帛を乾燥してバインダ溶液中の溶媒を除去する方法、
2.布帛にバインダ溶液あるいは泡立てたバインダ溶液を付与した後、バインダ溶液を付与した布帛を乾燥してバインダ溶液中の溶媒を除去する方法、
3.布帛に粒子状や繊維状あるいはウェブ状のバインダを付与し、バインダを付与した布帛をバインダの融点以上の温度に加熱して、布帛にバインダを溶融一体化させる方法、
4.顔料を含有したバインダ溶液あるいは溶融したバインダをプリント液として用意し、布帛の表面に模様が形成されるように印刷する方法、
などを採用できる。なお、上述した方法を一種類だけ使用して表皮材を調製しても、上述した方法を複数種類使用して表皮材を調製してもよい。
このようにして調製した表皮材では、構成繊維同士がバインダによって結合するため、ヒートプレスなど内装材を調製する過程で布帛に亀裂や破断が生じるのを防いで、更に、主面が平滑な内装材を調製可能な表皮材である。
また、バインダ及び顔料がプリントされ模様が印刷された布帛を含む表皮材は、ヒートプレスなど内装材を調製する過程でバインダの意図しない流動が発生し難いため、表皮材に印刷された模様が意図せず滲んだり変形したりするのを防止できる。そのため、意匠性に優れた内装材を調製可能な表皮材である。
表皮材の形状は適宜調整できるものであり、求める形状の内装材を調製可能なように、切り抜きや打ち抜き、凹凸の形成、部分的に切れ込みを入れるなどして、所望する形状に加工してもよい。
上述したようにして調製した表皮材は、そのまま内装材の調製工程へ供しても良いが、耐久性や剛性あるいは意匠性や難燃性の付与を目的として、例えば、別途用意した布帛、フィルムや発泡体シートなどの基材を用意し、基材と表皮材を積層した状態で内装材の調製工程へ供することで内装材を調製しても良い。
なお、積層方法は適宜選択するが、例えば、ただ重ね合わせる方法、構成成分の有機ポリマーを溶融させることで積層一体化する方法、バインダを介して積層一体化する方法、ニードルパンチ処理や水流絡合処理などに供することで繊維の絡合により積層一体化する方法などを採用できる。
また、剛性や保形性あるいは意匠性に優れた内装材を提供するため、例えば布帛やフィルムあるいは発泡体など別途用意した部材を調製した内装材に積層してもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
ポリエステル繊維(融点:260℃、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)をカード機へ供することで、繊維ウェブ前駆体を調製した。その後、繊維ウェブ前駆体における一方の主面からニードルパンチ処理(針密度:240本/m)を施して繊維ウェブ(目付:150g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
次いで、繊維ウェブにおけるニードルパンチ処理を施した主面とは反対の主面に、泡立てたアクリル系樹脂エマルジョンを塗布した後、温度130℃のキャンドライヤーで乾燥して不織布(目付:165g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。

次の割合で配合した、バインダを含んだプリント液を用意した。
(1)増粘剤(日本ルーブリゾール株式会社製、カーボポール(登録商標)940):0.45質量%
(2)消泡剤(信越化学工業株式会社製、シンエツシリコーン(登録商標)KM−73):0.5質量%
(3)バインダ成分:アクリル系樹脂バインダ(DIC株式会社製、ボンコート(登録商標)AB−886、Tg:−38℃、流れ値:0.00148cm/sec.、流動開始温度:160℃):20質量%
(4)白色顔料(DIC株式会社製、R.W.WHITE PASTE69:1.5質量%
(5)添加剤(大盛化工株式会社製、アンモニア水25%):1.0質量%
(6)増粘剤(日本カーバイド工業株式会社製、ニカゾール(登録商標)VT−253):1.0質量%
(7)水:75.55質量%

そして、調製した不織布における、アクリル系樹脂エマルジョンを付与した主面に対し、バインダを含んだプリント液を付与して模様を印刷した後、温度160℃のドライヤーで乾燥して、主面が装飾された表皮材(目付:165g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。なお、このようにして調製した表皮材では、不織布の構成繊維同士はプリント液に含まれるアクリル系樹脂バインダによって、結合していた。

このようにして調製した表皮材のホルムアルデヒド放出質量は0.075μg/80cm、アセトアルデヒドの放出質量は0.040μg/80cmであった。
(比較例1)
プリント液に含まれているアクリル系樹脂バインダとして、実施例1と異なるアクリル系樹脂バインダ(中央理化工業株式会社製、リカボンド(登録商標)FK−285、Tg:−40℃、流れ値:0.00120cm/sec.、流動開始温度:105℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表皮材(目付:165g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。

このようにして調製した表皮材のホルムアルデヒド放出質量は0.121μg/80cm、アセトアルデヒドの放出質量は0.024μg/80cmであった。
(比較例2)
プリント液に含まれているアクリル系樹脂バインダとして、実施例1と異なるアクリル系樹脂バインダ(DIC社製、ボンコート(登録商標)DS−23、Tg:-15℃、流れ値:0.00261cm/sec.、流動開始温度:235℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表皮材(目付:165g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。

このようにして調製した表皮材のホルムアルデヒド放出質量は0.018μg/80cm、アセトアルデヒドの放出質量は0.175μg/80cmであった。
(比較例3)
プリント液に含まれているアクリル系樹脂バインダとして、実施例1と異なるアクリル系樹脂バインダ(DIC社製、ボンコート(登録商標)JV−550E、Tg:−30℃、流れ値:0.00098cm/sec.、流動開始温度:140℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表皮材(目付:165g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。

このようにして調製した表皮材のホルムアルデヒド放出質量は1.316μg/80cm、アセトアルデヒドの放出質量は0.057μg/80cmであった。
(内装材の調製方法)
ガラスシート−発泡ウレタン−ガラスシート−ポリエチレンテレフタレートフィルムの順で積層してなる基材を用意し、ポリエチレンテレフタレートフィルムが露出している側の主面上に、上述のようにして調製した表皮材を積層した。そして、基材と表皮材を積層した状態で一対の金型に挟み込み、熱と圧力を作用させてヒートプレス(成形温度:135℃)することで成形して、内装材を調製した。
(内装材における主面の品位の確認)
内装材における模様が印刷されている主面(ヒートプレスによる成形を施した後の表皮材における、プリント液により模様が印刷されている主面)の凹凸を目視によって評価した。
評価の結果、実施例1および比較例3の表皮材を用いて調製した内装材の主面には、凹凸が認められず平滑な主面を備える内装材であった。一方、比較例1−2の表皮材を用いて調製した内装材の主面には、凹凸が認められ平滑な主面を備えていない内装材であった。
また、実施例1および比較例3の表皮材を用いて調製した内装材の主面には、表皮材に印刷された模様が意図せず滲んだり変形したりすることなく保存されており、明確な模様を有する意匠性に優れた内装材であった。一方、比較例1−2の表皮材を用いて調製した内装材の主面には、表皮材に印刷された模様が意図せず滲んだり変形した状態で保存されており、明確な模様を有していない意匠性に劣る内装材であった。
この理由として、本発明にかかるバインダを含む表皮材では、ヒートプレスなど内装材を調製する過程でバインダの意図しない流動が発生し難いため、表皮材に印刷された模様が意図せず滲んだり変形したりするのを防止できたためだと考えられた。

また、実施例1の表皮材は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量が低い表皮材であったのに対し、比較例3の表皮材は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量が高い表皮材であった。
本発明は、例えば車両用インシュレーターや車両用天井材などの内装材を調製可能な表皮材である。

Claims (3)

  1. 布帛とバインダを含む表皮材であり、
    前記バインダは流れ値が0.002cm/sec.以下、流動開始温度が成形温度よりも高く、
    ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放出質量がいずれも0.25μg/80cm以下である表皮材。
  2. 布帛の構成繊維がバインダによって結合されている、請求項1記載の表皮材。
  3. 布帛の主面にバインダ及び顔料がプリントされ、模様が付与されている、請求項1又は請求項2記載の表皮材。
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