JP2015148673A - 眼鏡用レンズ - Google Patents
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Abstract
Description
一方、近年は、軽量且つ耐衝撃性に優れ、染色し易いなどの利点から、従来のガラスレンズに代わって、プラスチックレンズが多用されている。また、最近では、このような眼鏡用のプラスチックレンズに染色によって様々な機能を付加することが行われている(例えば、特許文献1〜4を参照。)。
特許文献4には、視感透過率が75%を超え、周辺領域の400〜500nmの波長帯に対する平均透過率を、中心領域の同じ波長帯に対する平均透過率よりも高くして、夜間あるいは暗所において物体がより明瞭に目視でき、なおかつそのような明瞭に目視できる視野が広い夜間用遮光レンズを開示している。
また、特許文献1に開示のプラスチック眼鏡レンズは、主吸収ピークに対応する透過率極小値を小さく、例えば30%以下にしているため、視認性と防眩性の両立を図れるものの、特定波長での分光透過率が低くなり過ぎ、屋内外の使用によっては、その効果が発揮されないし、違和感を生じさせることになるという問題もあった。また、特許文献1は、眼鏡レンズを、有機系色素を配合した樹脂から形成する、またはハードコート層、プライマ層、その他の成分層に有機系色素を含有することを開示するものであり、有機系色素をレンズ基材に染色することを目的とするものではない。
更に、特許文献4に開示の眼鏡レンズは、400〜500nm(青)の波長帯域に対する周辺領域の平均透過率を中央より高くするものであるが、夜間や暗所での使用に限定されるという問題があった。
上記目的や課題を解決するために、更に、鋭意研究を重ねた結果、この先願においては、青色波長領域をカットしてコントラスト向上を図っているため、レンズがオレンジ色や黄色がかって見えてしまい、印象が良くなく、好みでない人もおり、心理的に良く見えないという印象を抱かせてしまったり、特に、年配者には、違和感を抱かせてしまうという問題があることを知見し、本発明に至ったものである。
また、本発明によれば、装用者が屋外で遠くを見る時にも屋内で近くを見る時にも、自然と視認性を向上させることができ、例えば、一方では防眩性を向上させることができ、他方では、コントラストやパソコンの画面の視認性の向上や色味などによる異和感の低減を図ることができ、年配者の目にも好適で、パソコン作業等もより快適に行うことができる。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、また、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。
なお、眼鏡用レンズ10には、左眼用と右眼用があり、左眼用と右眼用とは、左右対称である以外はほぼ同様な構成を有することから、これらを眼鏡用レンズ10としてまとめて説明するものとする。なお、図1及び図2に示す眼鏡用レンズ10は、右眼用である。
レンズ基材12は、この眼鏡レンズ10のレンズ特性を決定する2つのレンズ面12a,12bを有している。これら2つのレンズ面12a,12bのうち、物体側の面(外面という)12aが凸面、眼球側の面(内面という)12bが凹面を形成している。
一方、レンズ基材12には、例えばサングラスや伊達眼鏡などの度数が入っていないものを使用することもできる。なお、このレンズ基材12は、従来より公知の眼鏡用光学プラスチック材料を用いて、従来より公知の製造方法により作製することができる。
また、本実施形態では、レンズ基材12の屈折率(ne)としては、例えば、1.50、1.55、1.60、1.67、1.70及び1.74のうちから選択されたものが用いられる。なお、レンズ基材12の屈折率を1.60以上にする場合、プラスチック材料としては、アリルカーボネート系樹脂、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、及びチオウレタン系樹脂、エピスルフィド系樹脂等を使用することが好ましい。
図2に示す例では、第1の染色部14及び第2の染色部16は、レンズ面12a及び12bの両面に設けられているが、どちらか片面のみに設けられていてもよい。
本発明において、第1の染色部14による可視光の平均透過率を、50〜95%の範囲に限定するのは、50%未満では視認性が低下するし、95%超では、防眩効果を得ることができないからである。
カット率(%)=100%−レンズ透過率(%)・・・(1)
本発明において、第2の染色部16による560nm〜610nm波長領域中の最大吸収波長の光の平均透過率を、70〜95%の範囲に限定するのは、70%未満では視認性が低下するし、95%超では、コントラスト向上効果やパソコンの画面の視認性の向上効果を得ることができないからである。
さらに、第2の染色部16による波長560〜610nmの光の平均透過率は、特に制限的ではないが、70〜99%であることがより好ましく、80〜95%であることが更に好ましい。
第2の染色部16を形成するために用いられる第1の染色液は、560nm〜610nm波長領域の間に最大吸収波長を持つ染料、バインダ樹脂、及び溶剤(溶媒)を含むものが好ましい。
このような第1の染色液を調整するための染料としては、560nm〜610nm波長領域の間に最大吸収波長を持つ染料であれば、如何なる染料であっても良く、公知の染料を用いることができる。
このような染料としては、約585nm付近の可視光を高度に波長選択的に吸収できるネオジム化合物等の希土類金属化合物や、特開2008―134618号公報に記載の約585nm付近の可視光を高度に波長選択的に吸収できるテトラアザポルフィルン化合物を含む有機系色素等を挙げることができる。
このような有機系色素としては、例えば下記化学式(1)の一般式で表されるテトラアザポルフィリン化合物があり、化学式(1)中、Mは2価の銅であることがより好ましい。具体例としては化学式(2)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体が挙げられ、PD−311S[三井化学(株)製]の品番名に相当する。
また、同様に、585nm付近(概ね585±2nm付近)に吸収ピークを持ち、ピーク線幅がPD−311Sより大きいTY−102[ADEKA ARKLS、ADEKA(株)]も、上げることができる。
その他の公知の染料を1種以上混合してもよい。
[化学式(2)中、Cuは2価の銅を、t-C4H9はターシャリーブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は化学式(1)におけるそれぞれA1とA2、A3とA4、A5とA6及びA7とA8のいずれかひとつの位置に置換されていている位置異性体構造を表す。]
染色液には必要に応じてpH調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、つや消し剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの各種添加材を添加してもよい。
また、第1の染色液中に含有されるバインダ樹脂の含有量は、染料を溶剤中に均一に結合できれば特に制限的ではないが、例えば、1重量%〜50重量%であるのが好ましく、より好ましくは5重量%〜30重量%である。第1の染色液中のバインダ樹脂の含有量が上記範囲よりも少ない場合、十分に染料を結合させることができず、染色されたレンズに色ムラが発生する可能性がある。また、上記範囲よりもバインダ樹脂が多い場合、染色液が固くなり作業性が低下したり、レンズ基材の染色性が低下したりする可能性がある。
第1の染色部14を形成するために用いられる第2の染色液は、染料、界面活性剤、及び水などの溶媒を含むものが好ましい。
ここで、1つの第2の染色液は、1種類の染料、即ち、1色の染料を含有するものであっても良いが、2種類以上の染料、即ち、2色以上の染料を含有する混合染色液であっても良い。
即ち、本発明のレンズ基材12の染色においては、複数の染色液、即ち、それぞれ異なる色を持つ複数の染色液を用い、それぞれ個別に染色に用いても良いが、染色の前に、2色以上の染料を調合した混合染色液を用いても良い。
好ましくは、所望の分光特性に応じて全ての色の染料が調合された混合染色液を用いるのが良い。例えば、レッド(赤)、ブルー(青)、イエロー(黄)、もしくは更に、ブラウン(茶)等の染料を予め調合した混合染色液を調製しておくのが好ましい。
なお、混合染色液を、異なる色の複数の染色液を混合して調整しても良いが、予め複数の染料を調合し、調合された染料から調整しても良い。
即ち、本発明において、第2の染色液に含有させる染料としては、分散染料、反応染料、直接染料、複合染料、酸性染料、金属錯塩染料、建染染料、硫化染料、アゾ染料、蛍光染料、樹脂着色用染料、その他機能性染料等を挙げることができるが、これら以外にも染料であれば特に制限されず使用可能である。これらの染料は1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。
また、色も特に制限的では無く、例えば、イエロー(Y)染料、レッド(R)染料、ブルー(B)染料、ブラウン染料、バイオレット染料、オレンジ染料、ブラック染料等を挙げることができ、どれを選ぶかは特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル用分散染料としては、イエロー(Y)染料、レッド(R)染料、ブルー(B)染料の3色の染料を用いるのが一般的である。
具体的には、第2の染色液に用いられる染料としては、例えば、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、ニトロジフェニルアミン系染料、アゾ系染料などの分散染料を用いることができる。分散染料の例としては、例えば、p−アニシジン、アニリン、p−アミノアセトアニリド、p−アミノフェノール、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、o−クロロニトロベンゼン、ジフェニルアミン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、フェノール等のベンゼン系中間物、p−クレシジン(6−メトキシ−m−トルイジン)、m−クレゾール、p−クレゾール、m−トルイジン、2−ニトロ−p−トルイジン、p−ニトロトルエン等のトルエン系中間物、1−ナフチルアミン、2−ナフトール等のナフタレン系中間物、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸(ブロマミン酸)、1−アントラキノンスルホン酸、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジクロロアントラキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン(キニザリン)、1,5−ジヒドロキシアントラキノン(アントラルフィン)、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン(プルプリン)、2−メチルアントラキノン等の無水フタル酸、アントラキノン系中間物などを挙げることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
この他、染色液には必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、つや消し剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を併用してもよい。
また、第2の染色液中に含有される界面活性剤の含有量は、染料を溶媒中に均一に分散できれば特に制限的ではないが、例えば、0.01重量%〜10重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.05重量%〜5重量%である。第2の染色液中の界面活性剤の含有量が上記範囲よりも少ない場合、十分に染料を分散させることができず、染色されたレンズに色ムラが発生する可能性がある。また、上記範囲よりも界面活性剤が多い場合、染色液が泡立ち作業性が低下したり、レンズ基材の染色性が低下したりする可能性がある。
(1)加温した染色液中にレンズ基材12を浸漬してレンズ基材12の表面を染色する方法(ディップ法)。
(2)レンズ基材12の表面に染色液をコーティングした後に加熱してレンズ基材12をその表面から染色する方法(コート法)。
(3)レンズ基材12の表面に昇華性染料をコーティングした後に昇華性染料を加熱浸透させてレンズ基材12の表面を染色する方法(昇華法)。
これら3種の方法のうち、均一に塗布するのが容易である点では、上記(1)のディップ法が好ましいが、染色液の使用量が少なく、生産コストを抑えられる点では、上記(2)のコート法が好ましいので、用途に合わせて適宜選択すればよい。
本発明の眼鏡用レンズ10を得るために、複数の染色液を用いる場合には、複数の染色液による染色を、上記(1)のディップ法、又は上記(2)のコート法で行うのが好ましいが、両者を併用して用いても良い。
コート法による染色において、レンズ基材12になだらかな濃度勾配(グラデーション)をもった染色(着色加工)を行う場合には、染色液をレンズにコートした後、コーティング液面(染色液面)を加熱領域が徐々に変化するようにしながら加熱することにより、レンズ基材内部に前記濃度勾配に対応した量の染料を浸透させることができる。
ディップ法による染色においては、80℃〜95℃に加熱した染色液にレンズ基材を浸漬することが好ましい。
浸漬終了後のレンズ基材12を、例えば水洗い、溶剤による拭き取りなどにより洗浄してレンズ外面に付着した染色液を除去することにより、本発明の染色レンズを得ることができる。なお、洗浄によるレンズ外面に付着した染色液の除去は、染色液が変更される毎に行うのが好ましい。
例えば、第1の染色液及び第2の染色液を、それぞれ単独で第2の染色部16及び第1の染色部14を形成することができる液濃度となるように調製しておき、例えば、先に、レンズ基材12の下側半分を第1の染色液で上記の3つの染色方法のいずれかで、例えば(2)のコート法によって染色して第2の染色部16を形成し、次いで、レンズ基材12の上側半分を第2の染色液で上記の3つの染色方法のいずれかで、例えば(1)のディップ法によって染色して第1の染色部14を形成しても良い。もしくは、逆の順序で染色を行って、先に、第1の染色部14を形成して、次いで、第2の染色部16を形成しても良い。
図3は、屈折率が1.67であるレンズ基材12の下側半分を第1の染色液で染色して形成した第2の染色部16の透過率スペクトルの一例のグラフ(分光特性図)である。図3に示す第2の染色部16の極小透過率ピークは、585nm〜590nmの波長において85%であり、半値幅が25nmであることが分かる。
この場合には、本発明の眼鏡用レンズ10においては、レンズ基材12の下側半分では、レンズ基材12の表面からレンズ基材12の内部に第1の染色液の上記染料が浸透、拡散して、585nm〜590nmの波長領域の間の特定の波長において所定の極小透過率ピークを持つ第2の染色部16が形成されるように染色され、レンズ基材12の上側半分では、レンズ基材12の表面からレンズ基材12の内部に第1の染色液の上記染料及び第2の染色液の上記染料の両染料が浸透、拡散して、可視光の平均透過率が所定範囲となる第1の染色部14が形成されるように染色されている。
ハードコート膜としては、特に制限的ではないが、従来公知のハードコート膜を挙げることができ、例えば、ウレタン系耐衝撃性向上コート膜や、シリコン系耐擦傷性向上ハードコート膜等を挙げることができる。
このようなハードコート膜は、例えばシリコン系ハードコート組成物からなるものを適用することができ、その中でも、(A)金属酸化物粒子、(B)有機ケイ素化合物又はその加水分解物、(C)硬化触媒を含むシリコン系ハードコート組成物からなるものを好適に用いることができる。
また、これら金属酸化物微粒子又は複合金属酸化物微粒子については、その粒径が1〜100nmのものを用いることが好ましく、水、メタノール又はその他の有機溶媒に分散したときにゾル化するものを用いることが好ましい。
R1aR2bSi(OR3)4−(a+b) … (2)
(但し、上記式(2)中、R1は、官能基を有する有機基又は不飽和二重結合を有する炭素数4〜14の有機基であり、R2は、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基であり、R3は、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbは、それぞれ0又は1であり、且つa+bは、1又は2である。)
また、上記式(2)で表される有機ケイ素化合物のうち、R1が官能基としてエポキシ基を有するもの以外(a=0のものを含む)としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フエニルトリメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどの各種トリアルコキシシラン、トリアシロキシシラン、トリアルコキシアルコキシシランなどを挙げることができる。
また、有機金属塩では、例えば、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、また、過塩素酸塩では、例えば、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム等が挙げられる。
さらに有機酸又はその無水物の例として、マロン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、O−フタル酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、オキザロ酢酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ナフタル酸等が挙げられる。
また、ルイス酸では、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウムが挙げられ、また、ハロゲン化金属では、例えば、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化スズ、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化チタン、四塩化チタン、臭化タリウム、塩化ゲルマニウム、塩化ハフニウム、塩化鉛、臭化鉛等が挙げられる。
なお、ハードコート膜を形成する際は、上記(A)〜(C)成分の他にも、コート液の固形分を調整するため溶媒を添加することができる。溶媒の例としては、水、低級アルコール、アセトン、エーテル、ケトン、エステルなどを挙げることができる。
また、その他にも各種の添加剤を併用してもよい。添加剤の例としては、pH調節剤、粘度調節剤、レベリング剤、つや消し剤、染料、顔料、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
反射防止膜層の上には、必要に応じて防曇コート膜層又は汚れ防止膜層を形成させることが可能である。
ここで、本発明の眼鏡用レンズ10を屋外で使用する場合について説明する。
屋外では、例えばスポーツや車の運転などを行っている際に、比較的遠くを見ていることが多い。このとき、太陽や対向車のヘッドランプなどの光で眩しさを感じることがある。
また、本発明の眼鏡用レンズ10のように、第1の染色部14による可視光の平均透過率が50〜95%であれば、十分な防眩効果を得ることが可能である。さらに、第1の染色部14、第2の染色部16のいずれかもしくは両方の重ね合わさって染色されたレンズの設計基準点による可視光の視感度透過率が75%以上であれば、夜間運転時にも使用可能である。
室内では、比較的近い距離にあるパソコンやテレビ、携帯電話等の画面を見ることが多い。パソコンやテレビ、携帯電話には、液晶ディスプレイが多く使用されている。こうしたディスプレイなどの装置が発する光量は増加し、それとともに、眼に対する負担も増加しており、眩しさを感じることによる不快感や、コントラストの低下、眼精疲労などが増す傾向にある。
こうした眼に対する負担を低減させ、出来るだけ明るさを保ちながら、コントラストを向上するには、590nm付近の波長光を効果的に吸収することが有効であると言われている。
したがって、室内で使用する場合は、本発明の眼鏡用レンズ10のように、近用部分Dにおいて波長560nm〜610nmの間の特定の波長、例えば590nm付近に極小透過率ピーク、即ち最大吸収波長を持ち、590nm付近の可視光を減光させる特性を有するものが有効となる。上述したように、本発明の眼鏡用レンズ10では、近用部分Dに形成された第2の染色部16によって560〜610nmの間の特定の波長を波長選択的に減光させることができるため、そのコントラストを高めることが可能である。
以上のように、本発明の眼鏡用レンズ10を使用した場合は、従来のように、屋内用や屋外用といった用途毎に機能の異なった複数の眼鏡を用意し、その都度眼鏡を掛け直すといったことが不要となる。これにより、利便性の更なる向上を図ることが可能である。
また、運転時には、上述した屋外又は屋内といった使用形態に限らず、フロントガラスを通して前方を視認するため遠用部分Uと、メーターパネルを視認するため近用部分Dとを使い分けることになるが、このような場合も、本発明の眼鏡用レンズ10を好適に使用することができる。
具体的に、上記眼鏡用レンズ10では、遠用部分Uに形成された第1の染色部14によって可視光を減光させる機能(防眩効果)と、近用部分Dに形成された第2の染色部16によって590nm付近の可視光を減光させる機能(コントラスト向上効果)とを付加した構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではない。
例えば、上記眼鏡用レンズ10では、第1の染色部14と前記第2の染色部16とが一部重なって形成された構成であってもよい。すなわち、第1の染色部14が遠用部分Uから近用部分Dの一部に亘って形成された構成であってもよく、第2の染色部16が近用部分Dから遠用部分Uの一部に亘って形成された構成であってもよい。さらに、第1の染色部14と第2の染色部16との境界ラインについても、上記水平ラインLの位置に限らず、適宜変更を加えることが可能である。
また、上記眼鏡用レンズ10では、上述した第1及び第2の染色部14及び16の他にも、上記レンズ基材12の表面12a及び12bに、更にハードコート膜や反射防止膜などの機能膜を積部して形成することが可能である。
まず、染料としてPD311S(三井化学(株)製) 0.07重量部、バインダ樹脂としてポリビニルアルコール樹脂 10重量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン 80重量部を混合撹拌し、第1の染色液を調整した。
次にレンズ基材12として屈折率1.67の累進レンズであるニコンプレシオアドバンスFA−14、及び単焦点レンズであるニコンライト4AS(いずれもニコン・エシロール製)を用意し、コート法により第1の染色液をコート後、140℃にて1時間加熱し、染料をプラスチックレンズ内に浸透させた。その後、プラスチックレンズを冷却した後、表面のコート層を取り除いた。その結果、レンズ基材12の下側半分には、第2染色部16が形成されたことになる。
次に第2の染色液を93℃に加熱し、すでにコート法により染色されたレンズの上方部(上側半分)を2分浸漬した。こうして、レンズ基材12の上側半分に、第1染色部14を形成した。
得られた眼鏡用レンズ10のレンズ上方部の第1染色部14の色調及び可視波長領域(可視域)の透過率、平均透過率、並びにレンズ下方部の第2染色部16の色調、可視波長領域(可視域)の透過率、最大吸収波長、最大吸収波長における透過率及び最大吸収波長におけるカット率の1/2になるカット率の波長幅等の光学特性を測定した。
図4に、実施例1の眼鏡用レンズ10の第1染色部14及び第2染色部16の可視波長領域(380〜780nm)の透過率(%)の測定結果を示す。
その他の測定結果を表1に示す。
測定結果は、いずれも、本発明の限定範囲を満足するものであった。
その評価結果を合わせて表1に示す。
累進レンズであっても、単焦点レンズであっても、評価結果に違いはなかった。
ここで、官能評価は、以下のように評価した。
まず、視認性については、第1の染色部を通して、遠くを見た際に、屋外の風景やものが、明瞭に見える場合に○、暗すぎて見えにくくなる場合に×とした。
防眩効果については、眩しさを抑えられる効果を得られた場合に○、得られなかった場合には、×とした。
また、見た目の印象については、第2の染色部を通してものを見た際に、見たものの色が違和感なく見えると感じた場合に○、違和感などを感じて印象が悪くなると感じた場合に×と評価した。
一方、40歳代未満の人の場合、視認性及び防眩効果は○であり、屋外で遠くを見た場合、明瞭に見え、かつ眩しさを抑えられ、室内でも暗くなりすぎずに見えるとの評価を得た。また、見た目の印象も○であり、オレンジ系ではなく、ブルー系であり、違和感無く見ることができるという評価を得た。室内の使用では、表1に示すように、パソコンの画面などを見るとコントラスト向上効果は△であり、コントラスト向上効果があることは認められたが、40歳代以上の人ほどの効果ではないとの印象であった。
実施例1で調整した第2の染色液に1.67の累進レンズであるニコンプレシオアドバンスFA−14、及び単焦点レンズであるニコンライト4AS(いずれもニコン・エシロール製)の上方部(上側半分)を1分間浸漬し、第1の染色部14を得た。
次に、溶媒として純水 1000重量部を容器に取り、イエロー染料としてカヤロンポリエステルイエローAL 3.0重量部、レッド染料としてカヤロンポリエステルレッドAUL−S 0.1重量部(いずれも日本化薬製)、及び界面活性剤としてニッカサンソルト#7000 1.0重量部(日華化学製)とを加えたものを撹拌して第1の染色液を得た。
次に、この第1の染色液を93℃に加熱して、既に実施例1と同様に染色して上方部が染色された上述のレンズの下方部(下側半分)を1分間浸漬し、第2の染色部16を得た。
得られた比較例1のレンズについて、実施例1と同様に、上述の光学特性を測定した。
図5に、比較例1の眼鏡用レンズ10の第1染色部14及び第2染色部16の可視波長領域の透過率(%)の測定結果を示す。
この比較例1のレンズをフレームに枠入れし、実施例1と同様に、実際の装用による官能評価を行った。
比較例1の測定結果及び評価結果を表1に示す。
表1からも、本発明の効果は明らかである。
さらに、レンズ基材として屈折率1.67の累進レンズであるニコンプレシオアドバンスFA−14、及び単焦点レンズであるニコンライト4AS(いずれもニコン・エシロール製)に第2の染色部16として実施例1で得られた第1の染色液でコート法により同様の染色をした。
次に、第1の染色部14として実施例1で得られた第2の染色液に30分浸漬して染色し、この染色したレンズに実施例1と同じく、ハードコート膜、及び反射防止膜を施して比較例2のレンズを得た。
得られた比較例2のレンズについて、実施例1と同様に、上述の光学特性を測定した。
図6に、比較例2の眼鏡用レンズ10の第1染色部14の可視波長領域の透過率(%)の測定結果を示す。なお、比較例2の眼鏡用レンズ10の第2染色部16の可視波長領域の透過率(%)の測定結果は、実施例1と同一であったので省略した。
この比較例2のレンズをフレームに枠入れし、実施例1と同様に、実際の装用による官能評価を行った。
比較例2の測定結果及び評価結果を表1に示す。
また、第2の染色部16を作製するために、溶媒として純水1000重量部を容器に取り、ブルー染料としてカヤロンポリエステルブルーAUL−S(日本化薬製)を4.0重量部、及び界面活性剤としてニッカサンソルト#7000(日華化学製)を1.0重量部とを加えたものを撹拌して第1の染色液を得た。
次に、レンズ基材12として屈折率1.67の累進レンズであるニコンプレシオアドバンスFA−14、及び単焦点レンズであるニコンライト4AS(いずれもニコン・エシロール製)を用意し、上記で準備した第1の染色液を93℃に加熱し、レンズ下方部(下側半分)を20秒浸漬した。
次に、実施例1で調整した第2の染色液に上方部(上側半分)を1分間浸漬した。こうして実施例1で準備した第2の染色液でレンズ上方部(上側半分)を同様に染色し、得られた染色レンズにハードコート膜、及び反射防止膜を施した。
得られた比較例3の眼鏡レンズについて、実施例1と同様に、上述の光学特性を測定すると共に、フレームに枠入れして実際の装用による官能評価を行った。
比較例3の測定結果及び評価結果を図7及び表1に示す。
表1に示すように、40歳代未満及び40歳代以上のいずれの人の場合も、実施例1と同様に、視認性及び防眩効果は○であり、屋外で遠くを見た場合、明瞭に見え、かつ眩しさを抑えられ、見た目の印象も○で、見たものの色が違和感なくみえたが、実施例1と異なり、第2の染色部16の最大吸収波長における1/2カット率の波長幅が大きすぎるので、いずれの人の場合も、コントラストの向上効果は×であり、コントラストがクリアレンズと同じであると感じた。
以上から、本発明の効果は明らかである。
12…レンズ基材
14…第1の染色部
16…第2染色部
U…遠用部分
D…近用部分
Claims (7)
- レンズ基材と、
前記レンズ基材を異なる色で染色した第1の染色部及び第2の染色部と、を備え、
前記第1の染色部は、前記レンズ基材の少なくとも装用者が遠くを見るときの遠用部分に形成され、第1の波長領域の光を減光又は遮光する機能を有し、
前記第2の染色部は、前記レンズ基材の少なくとも装用者が近くを見るときの近用部分に形成され、第2の波長領域の内の特定の波長の光を中心として選択的に減光又は遮光する機能を有することを特徴とする眼鏡用レンズ。 - 前記第1の波長領域は、可視光の波長領域であり、
前記第2の波長領域は、560nm〜610nmの波長領域であり、
前記第2の染色部は、透過率スペクトルにおいて、前記560nm〜610nmの間の前記特定の波長に極小透過率ピークを持つことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。 - 前記特定の波長は、最大吸収波長であり、
前記第1の染色部は、前記可視光の平均透過率が50%〜95%であり、
前記第2の染色部は、前記最大吸収波長における透過率が70%〜95%であり、前記最大吸収波長におけるカット率が1/2になるカット率の波長幅が50nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズ。 - 前記特定の波長は、585nm〜600nmの波長領域の間にある請求項2又は3に記載の眼鏡用レンズ。
- 前記レンズ基材の表面には、遠用の瞳位置と近用の瞳位置との間を通る水平ラインを挟んで前記第1の染色部と前記第2の染色部とが形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の眼鏡用レンズ。
- 前記第1の染色部と前記第2の染色部とが一部重なって形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の眼鏡用レンズ。
- 前記第1の染色部及び/又は第2の染色部は、グラデーションを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の眼鏡用レンズ。
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