JP2015147909A - 硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板 - Google Patents
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本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)熱硬化性成分と、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンと、(D)熱硬化触媒と、を含有する。白色顔料として、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンを含有することで、薄層であっても、十分な遮蔽性および遮光性を有する加飾層を形成することができる。以下、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタン、および(D)熱硬化触媒について、詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子内にカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合等の感光性基を有さない樹脂を好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、(B)熱硬化性成分は、耐熱性を付与するための成分であり、例えば、エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、またはオキサゾリン化合物を用いることができるが、特にエポキシ化合物が好適である。本発明の樹脂組成物においては、熱硬化性成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、白色顔料として、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンを含有する。ここで、多処理加工とは、ルチル型酸化チタンの表面をアルミナやシリカで被覆することを意味する。この(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンは吸油量が多いため、これを用いた硬化皮膜はドライハイド効果により高い隠蔽性が得られる。そのため、加飾部の厚みを薄くすることができる。ここで、ドライハイド効果とは、白色顔料である酸化チタン粒子を包む層が空気(屈折率1.0)と樹脂(屈折率1.4〜1.6程度)を含有することで、その平均屈折率(見かけ屈折率)が大幅に減少し、光拡散性能が向上することをいう。また、加熱処理を行うと問題が顕著となる隠蔽性についても、上記酸化チタンを用いることにより、改善することができる。
本発明の樹脂組成物は、(D)熱硬化触媒を含有する。熱硬化触媒としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、これら以外にも、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもできる。特に、トリフェニルホスフィンを熱硬化触媒として用いると、硬化皮膜が200℃以上の高温にさらされても、黄変を防止することができるので好ましい。
本発明の樹脂組成物には、光重合開始剤を含めてもよい。光重合開始剤を加えることにより、本発明の樹脂組成物を、熱硬化以外にも光硬化にも用いることができるようになる。光重合開始剤としては、公知のいずれのものも用いることができるが、中でも、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
光重合開始剤の他、本発明の樹脂組成物においては、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合してもよい。このようなフィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用でき、例えば、硫酸バリウム、球状シリカまたはタルクを用いることができる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために金属酸化物、水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。
本発明の樹脂組成物には、酸化を防ぐために、発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤や、発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤等の酸化防止剤を含有することができる。本発明で用いられる酸化防止剤は、樹脂等の酸化劣化を防止し、黄変を抑制することができる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般に、高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤と酸化防止剤とを併用することで本発明の樹脂組成物より得られる硬化皮膜の安定化が図れる。
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を1種以上配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、組成物の調整の際、粘度調整のため有機溶剤を使用することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
本発明の硬化皮膜は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化してなるものである。本発明の樹脂組成物には(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンを含有しているため、得られる硬化皮膜は、隠蔽性や遮光性に優れている。そのため、本発明の樹脂組成物は、電子機器等のタッチパネル部の加飾部に好適に用いることができる。なお、本発明の硬化皮膜は、本発明の硬化組成物を熱硬化させたもののみならず、選択的に光硬化させ不要な未露光部分を現像により除去する写真現像法も含まれるが、この場合であっても、光硬化後に、さらに熱硬化させることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化により、十分な硬化特性を発揮することができるからである。
本発明の加飾ガラス板は、ガラス基板上に本発明の樹脂組成物の硬化皮膜が備えられてなるものであり、上述のとおり、電子機器等のタッチパネル部のカバーガラスとして好適に好適である。加飾パターンとしては、印刷法を用いて容易に形成することができ、特にスクリーンインキを用いたスクリーン印刷法により任意のパターンをカバーガラス1の片面上に形成できる。額縁パターン等の光遮蔽性の高い厚膜形成にはスクリーン印刷法が最も適しているが、これに限定されるものではなく、必要により他の印刷法やフォトリソグラフィー法や転写法等も利用できる。
攪拌機と冷却管を備えた2,000mlのフラスコに、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル377gを入れ、窒素気流下で90℃に加熱した。スチレン104.2g、メタクリル酸246.5g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製:V−601)20.7gを混合溶解したものを、4時間かけてフラスコに滴下した。このようにして、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このカルボキシル基含有樹脂溶液は、固形分酸価が120mgKOH/g、固形分が50%、分子量は20,000である。なお、得られたカルボキシル基含有樹脂の質量平均分子量は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804,KF−803,KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
下記表1、2に示す組成を有する硬化性樹脂組成物を調製した。なお、同表中の各成分の単位は質量部であり、カルボキシル基含有樹脂としては、上記のカルボキシル基含有樹脂溶液の合成で合成したものを用いた。次に、得られた各硬化性樹脂組成物を、厚さ1.0mmのソーダライムガラス(セントラル硝子社製)上にスクリーン法にて塗布した。その後、90℃にて10分間乾燥させて有機溶媒を除去した。この操作を2回繰り返し、白色加飾層をガラス基板上に印刷した。
(B)熱硬化性成分1:三菱化学社製 JER828(ビスフェノールA型)
(B)熱硬化性成分2:三菱化学社製 YX−8034(水添ビスフェノールA型)
(C)多処理加工ルチル型酸化チタン1:吸油量35.9ml/100g
(C)多処理加工ルチル型酸化チタン2:吸油量27〜31ml/100g
ルチル型酸化チタン1:吸油量19ml/100g
ルチル型酸化チタン2:吸油量19〜21ml/100g
(D)熱硬化触媒1: ジシアンジアミド
(D)熱硬化触媒2:メラミン
(D)熱硬化触媒3:トリフェニルホスフィン
消泡剤:信越化学工業社製:KS−66(シリコン系消泡剤)
湿潤分散剤: ビックケミー社製 BYK−111
酸化防止剤:BASF社製 IRGANOX1010
溶剤:日本乳化剤社製 MFTG(メチルプロピレントリグリコール)
カルボキシル基含有樹脂溶液:<カルボキシル基含有樹脂溶液の合成>で製造したカルボキシル基含有樹脂溶液 100質量部(固形分50質量%)
熱硬化性成分:三菱化学社製 JER828(ビスフェノールA型) 8質量部
トリフェニルホスフィン 0.6質量部
黒色顔料:四三酸化コバルト粉 75質量部
ルチル型酸化チタン:石原産業社製 CR−58(塩素法ルチル型酸化チタン) 75質量部
溶剤:日本乳化剤社製 MFTG(メチルプロピレントリグリコール) 12質量部
消泡剤:信越化学工業社製シリコン系消泡剤 KS−66 3質量部
湿潤分散剤: ビックケミー社製 BYK−111 6質量部
黒色遮光層有りの場合と無しの場合(黒色加飾層形成前の場合と後の場合)において、サンプルをガラス基板側から見て色差ΔE*abを算出した。ΔE*abは、L*a*b*表色系において遮光層がある場合と遮光層がない場合の差を算出したもので、数値が小さいほど、遮光層が透けて見えないことを示す。ΔE*abの計算式は以下の通りである。
ΔE*ab=[(L*2−L*1)2+(a*2−a*1)2+(b*2−b*1)2]1/2
式中、L*1、a*1、b*1は、各々遮光層がある場合のL*、a*、b*を表し、L*2、a*2、b*2は、各々遮光層がない場合のL*、a*、b*の値を表す。ΔE*ab<0.5の場合(黒色遮光層が見えない場合に相当)を○、ΔE*ab>2.0の場合(黒色遮光層が見える場合に相当)を×とした。得られた結果を表3、4に併記する。なお、ΔE*abを算出するに当たり、先ずはコニカミノルタ社製色彩色差計CR−400を用い、L*a*b*表色系の遮光層がある場合の試料と遮光層がない場合の試料の各L*、a*、b*値をそれぞれ測定した。
JISK5400に準拠して、各サンプルの皮膜に、1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った碁盤目の数を調べた。評価基準は以下のとおりである。得られた結果を表3、4に併記する。
○:碁盤目に剥がれが生じなかった。
×:碁盤目に剥がれが生じた。
Claims (5)
- (A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)熱硬化性成分と、(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンと、(D)熱硬化触媒と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
- 前記(C)多処理加工されたルチル型酸化チタンの吸油量が、25mL/100g以上である請求項1記載の硬化性樹組成物。
- 前記(B)熱硬化性成分が、エポキシ化合物である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のうちいずれか一項記載の硬化性樹組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化皮膜。
- 請求項4記載の硬化皮膜を備えてなることを特徴とする加飾ガラス板。
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