JP2015147908A - 硬化性樹脂組成物、その硬化皮膜、およびこれを備えた加飾ガラス板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)トリフェニルホスフィンと、(D)ルチル型酸化チタンと、を含有する。(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は10,000〜30,000であることが好ましく、(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は120〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明の樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)トリフェニルホスフィン(以下、「TPP」とも称す)と、(D)ルチル型酸化チタンと、を含有する。従来は、熱硬化触媒としてメラミンやジシアンアミド等が用いられてきたが、これらを用いた場合、硬化皮膜は高温にさらされると黄変してしまう。しかしながら、本発明の樹脂組成物においては、(C)トリフェニルホスフィンを熱硬化触媒として用いており、これにより、得られる硬化皮膜が高温にさらされても黄変することを防止することができる。以下、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(D)ルチル型酸化チタンについて、詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物においては、(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子内にカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合等の感光性基を有さない樹脂を好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物に使用される(B)エポキシ樹脂は、耐熱性を付与するための成分であり、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族骨格を有するエポキシ化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、変性エポキシ樹脂を併用してもよい。
上述のとおり、本発明の樹脂組成物においては、(C)トリフェニルホスフィンを熱硬化触媒として用いている。従来は、熱硬化触媒として、メラミン等が用いられていたが、メラミンを用い樹脂脂組成物は高温にさらされると黄変しやすい。しかしながら、熱硬化触媒として、(C)トリフェニルホスフィンを用いた樹脂組成物は、高温にさらされても黄変することはない。そこで、本発明の樹脂組成物では、(C)トリフェニルホスフィンを熱硬化触媒として用いている。
本発明の樹脂組成物においては、白色顔料として、(D)ルチル型酸化チタンを用いる。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して白色度が高いためによく使用されるが、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、硬化皮膜の変色を引き起こすおそれがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型酸化チタンと比較して若干劣るものの、光活性をほとんど有さないために、安定した硬化皮膜を得ることができる。(D)ルチル型酸化チタンとしては、公知のルチル型のものを使用することができる。具体的には、富士チタン工業社製TR−600、TR−700、TR−750、TR−840、石原産業社製R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、CR−90、チタン工業社製KR−270、KR−310、KR−380等を使用することができる。
本発明の樹脂組成物には、光重合開始剤を含めてもよい。光重合開始剤を加えることにより、本発明の樹脂組成物を、熱硬化以外にも光硬化にも用いることができるようになる。光重合開始剤としては、公知のいずれのものも用いることができるが、中でも、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
光重合開始剤の他、本発明の樹脂組成物においては、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合してもよい。このようなフィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用でき、例えば、硫酸バリウム、球状シリカまたはタルクを用いることができる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために金属酸化物、水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。
本発明の樹脂組成物には、酸化を防ぐために、発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤や、発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤等の酸化防止剤を含有することができる。本発明で用いられる酸化防止剤は、樹脂等の酸化劣化を防止し、黄変を抑制することができる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般に、高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤と酸化防止剤とを併用することで本発明の樹脂組成物より得られる硬化皮膜の安定化が図れる。
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を1種以上配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、組成物の調整の際、粘度調整のため有機溶剤を使用することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
本発明の硬化皮膜は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化してなるものである。本発明の樹脂組成物は(C)トリフェニルホスフィンを含有しているため、熱により硬化させることができる。この際、(C)トリフェニルホスフィンは、高温にさらしても黄変が生じないという利点を有している。なお、本発明の硬化皮膜は、本発明の熱硬化組成物を熱硬化させたもののみならず、選択的に光硬化させ不要な未露光部分を現像により除去する写真現像法も含まれるが、この場合であっても、光硬化後に、さらに熱硬化させることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化により、十分な硬化特性を発揮することができるからである。
本発明の加飾ガラス板は、ガラス基板上に本発明の樹脂組成物の硬化皮膜が備えられてなるものであり、上述のとおり、電子機器のタッチパネル部のカバーガラスとして好適に好適である。加飾パターンとしては、印刷法を用いて容易に形成することができ、特にスクリーンインキを用いたスクリーン印刷法により任意のパターンをカバーガラス1の片面上に形成できる。額縁パターン等の光遮蔽性の高い厚膜形成にはスクリーン印刷法が最も適しているが、これに限定されるものではなく、必要により他の印刷法やフォトリソグラフィー法や転写法等も利用できる。
攪拌機と冷却管を備えた2,000mlのフラスコに、メチルプロピレントリグリコール377gを入れ、窒素気流下で90℃に加熱した。スチレン104.2g、メタクリル酸246.5g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製:V−601)20.7gを混合溶解したものを、4時間かけてフラスコに滴下した。このようにして、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このカルボキシル基含有樹脂溶液は、固形分酸価が120mgKOH/g、固形分が50%、分子量は20,000である。なお、得られたカルボキシル基含有樹脂の質量平均分子量は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804,KF−803,KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
下記表1、2に示す組成を有する硬化性樹脂組成物を調製した。なお、同表中の各成分の単位は質量部であり、カルボキシル基含有樹脂としては、上記のカルボキシル基含有樹脂溶液の合成で合成したものを用いた。次に、得られた各硬化性樹脂組成物を、厚さ1.0mmのソーダライムガラス(セントラル硝子社製)上にスクリーン法にて塗布した。その後、90℃にて10分間乾燥させて有機溶媒を除去した。この操作を3回繰り返し、白色加飾層をガラス基板上に印刷した。
(B)エポキシ樹脂1:三菱化学社製 JER828(ビスフェノールA型)
(B)エポキシ樹脂2:三菱化学社製 YX−8034(水添ビスフェノールA型)
(B)エポキシ樹脂3:DIC社製 RN−695(クレゾールノボラック型)
(C)トリフェニルホスフィン
熱硬化剤1:ジシアンジアミド
熱硬化剤2:メラミン
(D)ルチル型酸化チタン1:石原産業社製 CR−58(塩素法ルチル型酸化チタン)
(D)ルチル型酸化チタン2:堺化学工業社製 R42(硫酸法ルチル型酸化チタン)
(D)ルチル型酸化チタン3:デュポン社製 R931(塩素法ルチル型酸化チタン)
(D)ルチル型酸化チタン4:石原産業社製 A−100(アナターゼ型酸化チタン)
消泡剤:信越化学工業社製:KS−66(シリコン系消泡剤)
湿潤分散剤: ビックケミー社製 BYK−111
酸化防止剤:BASF社製 IRGANOX1010
有機溶剤:日本乳化剤社製 MFTG(メチルプロピレントリグリコール)
カルボキシル基含有樹脂溶液:<カルボキシル基含有樹脂溶液の合成>で製造したカルボキシル基含有樹脂溶液 100質量部(固形分50質量%)
エポキシ樹脂:三菱化学社製 JER828(ビスフェノールA型) 8質量部
トリフェニルホスフィン 0.6質量部
黒色顔料:四三酸化コバルト粉 75質量部
ルチル型酸化チタン:石原産業社製 CR−58(塩素法ルチル型酸化チタン) 75質量部
有機溶剤:日本乳化剤社製 MFTG(メチルプロピレントリグリコール) 12質量部
消泡剤:信越化学工業社製シリコン系消泡剤 KS−66 3質量部
湿潤分散剤: ビックケミー社製 BYK−111 6質量部
サンプルをガラス基板側から見て、黒色遮光層が見えない場合を○、黒色遮光層が見えた場合を×とした。得られた結果を表3、4に併記する。
JISK5400に準拠して、各サンプルの皮膜に、1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った碁盤目の数を調べた。評価基準は以下のとおりである。得られた結果を表3、4に併記する。
○:碁盤目に剥がれが生じなかった。
×:碁盤目に剥がれが生じた。
各サンプルについて、コニカミノルタ社製色彩色差計CR−400を用い、L*a*b*表色系のL*、a*、b*の初期値を測定した。その後、各サンプルを230℃の熱風循環式箱型乾燥炉に3時間放置して加速劣化させ、再度、コニカミノルタ社製色彩色差計CR−400で各数値を測定しΔE*abで評価した。得られた結果を表3、4に併記する。
ΔE*ab=[(L*2−L*1)2+(a*2−a*1)2+(b*2−b*1)2]1/2
式中、L*1、a*1、b*1は、各々L*、a*、b*の初期値を表し、L*2、a*2、b*2は、各々加速劣化後のL*、a*、b*の値を表す。
Claims (5)
- (A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)トリフェニルホスフィンと、(D)ルチル型酸化チタンと、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
- 前記(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が10,000〜30,000である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価が120〜200mgKOH/gである請求項1または2記載の硬化性樹組成物。
- 請求項1〜3のうちいずれか一項記載の硬化性樹組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化皮膜。
- 請求項4記載の硬化皮膜を備えてなることを特徴とする加飾ガラス板。
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