JP2015147532A - 船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置 - Google Patents

船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2015147532A
JP2015147532A JP2014022274A JP2014022274A JP2015147532A JP 2015147532 A JP2015147532 A JP 2015147532A JP 2014022274 A JP2014022274 A JP 2014022274A JP 2014022274 A JP2014022274 A JP 2014022274A JP 2015147532 A JP2015147532 A JP 2015147532A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cover
thruster
opening
tunnel
ship
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014022274A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6234834B2 (ja
Inventor
隆司 雲石
Takashi Unseki
隆司 雲石
周平 栗林
Shuhei Kuribayashi
周平 栗林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Heavy Industries Ltd filed Critical Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority to JP2014022274A priority Critical patent/JP6234834B2/ja
Publication of JP2015147532A publication Critical patent/JP2015147532A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6234834B2 publication Critical patent/JP6234834B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B63SHIPS OR OTHER WATERBORNE VESSELS; RELATED EQUIPMENT
    • B63HMARINE PROPULSION OR STEERING
    • B63H25/00Steering; Slowing-down otherwise than by use of propulsive elements; Dynamic anchoring, i.e. positioning vessels by means of main or auxiliary propulsive elements
    • B63H25/46Steering or dynamic anchoring by jets or by rudders carrying jets
    • B63H2025/465Jets or thrusters substantially used for steering or dynamic anchoring only, with means for retracting, or otherwise moving to a rest position outside the water flow around the hull
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T70/00Maritime or waterways transport
    • Y02T70/10Measures concerning design or construction of watercraft hulls

Landscapes

  • Lining And Supports For Tunnels (AREA)

Abstract

【課題】トンネルの開口部にカバーを設けて航行中の抵抗を低減させるとともに、カバー開放時の突出量を小さくすることができるようにした、船舶のスラスターを提供する。【解決手段】船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが設置されたスラスタートンネル61と、スラスタートンネル61の開口部63を塞ぐカバー64と、カバー64を外板1aに沿ってスライド開閉するように案内するガイド機構と、カバー64を開閉駆動する駆動手段75と、を備える。【選択図】図4

Description

本発明は、スラスタートンネルの開口部を塞ぐカバーを備えた船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置に関する。
従来から、船舶の接岸や離岸を容易にするためにサイドスラスター(以下、単にスラスターという)を備えた船舶が知られている。スラスターは、船体の左右を貫通して設けられたスラスタートンネル(以下、単にトンネルという)と、このトンネルの内部に設置されたスラスタープロペラとを備えており、作動時にはプロペラが回転することで横方向の推力を発生させる。
ところで、スラスターは航行中は使用されないため、航行中にもトンネルの開口部が開放されていると、開口部に沿う水流が乱れて抵抗が増加し、推進に必要な発電機関の負荷の増大を招く要因となりかねない。このような事態を回避するために、トンネルの開口部に開閉可能なカバーを設け、スラスター作動時は開口部を開放し、航行中は開口部を閉鎖して抵抗を低減させる構造が提案されている。
例えば特許文献1には、トンネルの開口部を閉鎖するカバー(同文献では扉と称している)を開閉するスラスタートンネル開閉装置が開示されている。この技術では、カバーの上端部に鎌形状ロッドが取り付けられており、鎌形状ロッドが回転駆動源の出力軸周りに回転することでカバーを外開きに開閉している。また、特許文献2に記載の開閉装置は、トンネルの開口部が、上下方向に三分割されたカバー(同文献では上蓋,中蓋及び下蓋からなる開閉蓋と称している)で閉鎖されており、これら上蓋,中蓋及び下蓋が回転軸を介して回転駆動するように構成されている。このように上下方向に互いに間隔をあけて配設された複数の水平方向軸を中心に回動する複数の蓋羽根からなるスラスタートンネル蓋は、すでに知られている(特許文献3参照)。
特開2010−120396号公報 実公平7−19998号公報 特許第2792843号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜3のような開閉装置の場合、スラスター作動時(すなわちカバー開放時)におけるカバーの船体外板から外方への突出量が大きくなるという課題がある。通常、船舶の離接岸時はアンカーが使用され、アンカー投錨したままスラスターを作動させることが多い。そのため、上記のようにカバーの突出量が大きいと、カバーとアンカーチェーンとが接触する可能性が高くなり、これが懸念されてトンネルの開口部をカバーで塞ぐという構造自体が採用されにくいという実情がある。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、トンネルの開口部にカバーを設けて航行中の抵抗を低減させるとともに、カバー開放時の突出量を小さくすることができるようにした、船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する船舶のスラスターは、船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが設置されたスラスタートンネルと、前記スラスタートンネルの開口部を塞ぐカバーと、前記カバーを前記船体の外板に沿ってスライド開閉するように案内するガイド機構と、前記カバーを開閉駆動する駆動手段と、を備える。
(2)前記ガイド機構は、一端が前記船体側に枢着され他端が前記カバーに枢着された二本のリンクアームを有するリンク機構であることが好ましい。
(3)さらに、前記カバーの開放方向側に位置する一方の前記リンクアームは、前記カバーの開放時に前記スラスタートンネル周辺の前記外板と干渉しないように屈曲形成されていることが好ましい。ここでいう屈曲形成とは、曲げ形状になるように形成されることを意味し、例えば角部を設けるように折り曲げ形成されていてもよいし、曲線状に湾曲形成されていてもよい。また、一体成形されていてもよいし、別部材を組み合わせることで屈曲形状に形成されていてもよい。
(4)前記一方のリンクアームは、前記他端側に設けられ前記カバーの全開時に前記外板に沿う直線部と、前記一端側に設けられ前記カバーの全開時に前記開口部の縁部との接触を回避する湾曲部とを有するJ字状であることが好ましい。すなわち、前記カバーの開放時に前記スラスタートンネル周辺の前記外板と干渉しないように、J字状に湾曲形成されていることが好ましく、このときの湾曲形状は前記外板の開口部の縁部に沿う円弧形状であることが好ましい。
(5)前記カバーの開放方向の逆側に位置する他方の前記リンクアームは、前記他端が前記カバーの開放方向と逆側の前記カバーの端部に接続されることが好ましい。
(6)前記一方のリンクアームは、前記他端が前記カバーの開閉方向の略中央に接続されることが好ましい。
(7)前記スラスターは、前記スラスタートンネルの内壁を貫通して延設され、前記駆動手段により回動される駆動軸を備えることが好ましい。この場合、前記一方のリンクアームは、前記一端が前記スラスタートンネルの内壁近傍で前記駆動軸に結合されることが好ましい。
(8)前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられることが好ましい。すなわち、前記スラスターは、バウスラスターであることが好ましく、この場合、前記カバーの開放方向は、前記船体の下方向であることが好ましい。
(9)前記カバーは、前記開口部の一部を塞ぐことが好ましい。すなわち、前記カバーは、一部に開口を有する一部開口カバーであることが好ましい。
(10)前記カバーは、前記開口部のうち少なくとも船首側を塞ぐことが好ましい。すなわち、前記カバーは、前記開口部のうち船尾側が開いていることが好ましい。
(11)前記スラスターは、前記スラスタートンネル内に流体を導入するとともに、前記スラスタートンネルの内外を連通する連通部から船外へ前記流体を排出する流体供給手段を備えることが好ましい。
(12)前記流体供給手段は、一端が前記船体の没水部に開口し、他端が前記スラスタートンネルの内壁であって前記連通部に向かって開口した導入管であることが好ましい。この場合、前記導入管は、航行中に前記一端の方が前記他端よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造を有することが好ましい。
前記圧力差発生構造としては、例えば前記一端の開口面積が前記他端の開口面積よりも大きく形成されることが挙げられる。また、前記連通部の船首側の縁部に外方へ突設された突起部を設け、前記他端が前記突起部により生成される負圧領域内に設けられることで前記圧力差発生構造が設けられていてもよい。あるいは、前記スラスターがバウスラスターである場合には、前記圧力差発生構造として、前記一端が前記船首部の前端部に設けられることも考えられる。
(13)また、前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられることが好ましく、さらに、前記カバーは、前記スラスタートンネルの内外を連通する連通部との境界をなす縁部が、前記開口部の近傍における水流の流れ方向に対して略直交する傾きとなるように設けられることが好ましい。なお、「前記スラスタートンネルの内外を連通する連通部との境界をなす縁部」とは、前記カバーの船首側又は/及び船尾側の縁部でもある。
(14)前記カバーは、繊維強化プラスチック製であることが好ましい。
(15)また、ここで開示するスラスタートンネルのカバー装置は、船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが設置されたスラスタートンネルの開口部を塞ぐカバーと、前記カバーを前記船体の外板に沿ってスライド開閉するように案内するガイド機構と、前記カバーを開閉駆動する駆動手段と、を備える。
開示の船舶のスラスターによれば、スラスタートンネルの開口部を塞ぐカバーが、スラスター作動時にはガイド機構と駆動手段とによって船体の外板に沿ってスライド開放されるため、カバー開放時における船体外板から外方への突出量を小さくすることができる。これにより、スラスター作動時におけるアンカーチェーンとカバーとの接触を防ぐことができる。このため、スラスタートンネルの開口部をカバーで塞ぐという構造を採用することができる。つまり、スラスターを使用しないときはスラスタートンネルの開口部をカバーで塞ぐことで、開口部の後端側における水流の乱れを防ぎ、抵抗が発生することを抑制することができる。この結果、船舶の発電機関の負荷を低減でき、燃費低減効果を得ることができる。
また、開示のスラスタートンネルのカバー装置によれば、船体の外板に沿ってスライド開閉されるため、開放時における船体外板から外方への突出量を小さくすることができ、スラスター作動時におけるアンカーチェーンとの接触を防ぐことができる。また、閉鎖時はスラスタートンネルの開口部を塞ぐため、開口部の後端側における水流の乱れを防ぎ、抵抗が発生することを抑制することができる。この結果、船舶の発電機関の負荷を低減でき、燃費低減効果を得ることができる。
第一実施形態に係るスラスターを備えた船舶の全体構成を示す模式的な側面図である。 第一実施形態に係るスラスターの構成を説明するための模式図であり、(a)はバウスラスターの縦断面図(図1のA−A矢視断面図)、(b)はスターンスラスターの縦断面図(図1のB−B矢視断面図)、(c)は図2(a)のC−C矢視断面図である。 第一実施形態に係るスラスターのカバーの開閉構造を説明するための模式図であり、(a)は船外から見たときのカバーの正面図、(b)はトンネル内側から見たときのカバーの正面図(トンネルは断面で示す)である。 図3(b)のE−E矢視断面図(カバーの閉鎖状態を示す図)である。 図4のカバーの開放動作を説明する図であり、(a)は開放動作の途中、(b)は全開状態を示す。 第一実施形態に係るスラスターの態様例1−1のカバーの開閉構造を説明するための模式図であり、(a)は船外から見たときのカバーの正面図、(b)はトンネル内側から見たときのカバーの正面図(トンネルは断面で示す)である。 第一実施形態に係るスラスターの態様例1−2のカバーの開閉構造を説明するための模式図であり、(a)は船外から見たときのカバーの正面図、(b)はトンネル内側から見たときのカバーの正面図(トンネルは断面で示す)である。 第一実施形態に係るスラスターの態様例1−3のカバーの開閉構造を説明するための模式図であり、(a)は船外から見たときのカバーの正面図、(b)はトンネル内側から見たときのカバーの正面図(トンネルは断面で示す)である。 第一実施形態に係るスラスターの態様例1−4のカバーの開閉構造を説明するための断面図であり、(a)は図4に対応する図(カバーの閉鎖状態)、(b)は図5(b)に対応する図(カバーの全開状態)である。 第二実施形態に係るスラスターの構成を説明するための模式図であり、(a)はバウスラスター周辺の右側面図、(b)は図10(a)のF−F矢視断面図である。 第二実施形態に係るスラスターの態様例を説明するためのバウスラスター周辺の右側面図であり、(a)は態様例2−1、(b)は態様例2−2である。 第二実施形態に係るスラスターの態様例を説明するためのスラスター周辺の右側面図であり、(a)は態様例2−3、(b)は態様例2−4である。
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
また、以下の説明では、船舶の進行方向(船首側)を前方、逆側(船尾側)を後方とし、前方を基準に左右を定める。また、重力の方向を下方、その逆を上方とし、さらに船体の中心に向かう側を内側、その逆を外側として説明する。
[1.第一実施形態]
[1−1.全体構成]
第一実施形態に係る船舶のスラスターについて、図1〜図5を用いて説明する。本実施形態に係る船舶は、図1に示すように、船体1の船首部1Bにバルバスバウ2を備え、船尾部1Sにスクリュープロペラ3及び舵4を備えている。バルバスバウ2,スクリュープロペラ3,舵4及び後述のスラスター6は、何れも船体1の軽喫水時の喫水線10の下方に設けられる。なお、船舶の喫水線10よりも下方を没水部1Wという。
船首部1Bには、その上部側面にアンカーチェーン5cが通されるホースパイプ(図示略)の一端5hが開口している。アンカーチェーン5cの先端にはアンカー5aが繋がれている。また、船首部1B及び船尾部1Sには、それぞれ喫水線10の下方の位置に、船舶に左右方向(以下、横方向という)の推力を発生させるバウスラスター6B及びスターンスラスター6Sが設けられる。バウスラスター6Bは船底1bの近くに配置され、スターンスラスター6Sはスクリュープロペラ3のプロペラシャフト3aと干渉しないようにプロペラシャフト3aよりも上方に設けられる。
図1には、バウスラスター6Bが一つ設けられ、バウスラスター6Bよりも小さいスターンスラスター6Sが二つ設けられた船舶を例示するが、バウスラスター6B及びスターンスラスター6Sの個数や大きさは特に限定されず、船舶ごとに適宜設定される。また、バウスラスター6B及びスターンスラスター6Sは、大きさや配置位置に違いがあるものの、同様の構成を有する。
そこで、以下の説明では、バウスラスター6B及びスターンスラスター6Sの同様の構成要素を示す符号について、数字は同一とし、バウスラスター6Bには数字の後ろには「B」を付し、スターンスラスターには数字の後ろには「S」を付している。また、バウスラスター6Bとスターンスラスター6Sとを特に区別しない場合には、単にスラスター6と呼び、同様の構成要素に関しても特に区別しない場合には「B」「S」を省略して説明する。
[1−2.スラスターの構成]
次に、スラスター6の構成について説明する。図2(a)はバウスラスター6Bの模式的な縦断面図(図1のカバー64Bの閉鎖時のA−A矢視断面図)であり、図2(b)はスターンスラスター6Sの模式的な縦断面図(図1のカバー64Sの閉鎖時のB−B矢視断面図)、図2(c)は図2(a)のC−C矢視断面図である。なお、図2(c)では、船体左側(図中上方)にはカバー64Bが設けられていない場合の水流WFを示し、船体右側(図中下方)にはカバー64Bが設けられている場合の水流WFを示す。また、図中では、バウスラスター6Bとスターンスラスター6Sとを区別して表現しているが、以下の説明ではこれらを区別せずに(「B」「S」を付けずに)説明する。
スラスター6は、図2(a)〜(c)に示すように、船体1に横方向へ貫通して設けられた円筒状のスラスタートンネル61(以下、単にトンネル61という)と、このトンネル61の内部に設置されたスラスタープロペラ62(以下、単にプロペラ62という)とを備えている。バウスラスター6Bのトンネル61Bは、図2(a)に示すように船体1の膨らんだ部分を貫通するように設けられており、トンネル61Bの下方の部分は窄んだ形状(下方に行くほど細くなる先細の形状)となっている。一方、スターンスラスター6Sのトンネル61Sは、図2(b)に示すように、プロペラシャフト3aよりも上方において船体1を貫通して設けられており、トンネル61Sよりも上方の船体1は外方に拡開した形状となってデッキに繋がっている。
図2(a)〜(c)に示すように、船体1の外板1aに開口したトンネル61の両端(以下、トンネル61の開口部63という)には、それぞれ開閉式のカバー64(スラスタートンネルカバー)が設けられる。すなわち、カバー64は、船体1の左右舷開口にそれぞれ設けられ、同時に開閉駆動される。船体1の外板1aは鋼板製であるのに対し、カバー64はガラス繊維や炭素繊維などを用いた繊維強化プラスチックで成形されている。これにより、カバー64を設けることによる重量増大が抑制され、後述するカバー64を開閉するための構造全体を小型化することができる。なお、図2(a)〜(c)では、船体1の外板1a及びトンネル61の内壁61wの厚さは省略している。
スラスター6は、船舶の接岸時又は離岸時に使用される。このとき、トンネル61の両端の二つのカバー64は何れも開放され、内部のプロペラ62が回転することで横方向の推力が発生する。なお、ここではプロペラ62は可変ピッチ式であるものとする。一方、航行中はスラスター6は使用されないため、全てのカバー64は閉じられ、トンネル61の両端の開口部63が塞がれる。
船舶の航行中は、図2(c)中に二点鎖線で示すように、船体1の周辺に海水や水(以下、流体という)の流れWF(以下、水流WFという)が発生し、トンネル61の開口部63の周辺においても、船体1に沿って水流WFが発生する。このとき、仮にトンネル61の開口部63にカバー64がない場合(開口部63が全開の場合)は、図2(c)の船体左側(図中上方)に示すように、開口部63の前縁部63fまで外板1aに沿った水流WFは、開口部63の後端側に行くほどトンネル61の内部に進入する。そして、トンネル61の後端側の内壁61wに衝突して開口部63から船外へ流出する。
そのため、図2(c)中に破線で囲んだ領域D(開口部63の後端側)では、水流WFが干渉し、乱れによって推進抵抗が発生する。本実施形態に係るスラスター6は、このようなトンネル61の後端側で発生する水流WFの乱れを抑制するために、図2(c)の船体右側(図中下方)に示すように、開口部63を塞ぐカバー64を備えている。そして、スラスター6を使用しない航行時には、カバー64を閉鎖することで水流WFの干渉を防ぎ、抵抗を低減する。
本実施形態に係るカバー64の構成を図3(a),(b)及び図4に示す。図3(a)は、船外から見たときのカバー64の正面図(船体1のカバー64周辺の右側面図)、図3(b)はトンネル61内から見たときのカバー64の正面図(トンネル61の縦断面図)である。また、図4は図3(b)のE−E矢視断面図であり、カバー64の閉鎖状態を示す。
図3(a)に示すように、カバー64は、正面視において、円形の開口部63を塞ぐように、開口部63と同一又は略同一の直径を有する円形に形成されており、ここではさらに船尾側の一部が切り欠かれた形状となっている。この船尾側の一部は、カバー64の全閉時でも常にトンネル61の内外を連通する部分であり、以下、この部分を連通部65と呼ぶ。すなわち、連通部65はトンネル61の左右舷の開口部63のうち常に開口している部分である。
すなわち、カバー64は、開口部63のうち船首側を部分的に塞ぐ形状に形成されており、ここでは開口部63の半分以上を塞ぐ大きさに形成されている。なお、カバー64は、その外面形状が船体1の外板1aの曲面に沿うように形成されている。つまり、カバー64は、閉鎖時に外板1aと連続した曲面を形成する。このようにカバー64が開口部63の船首側を塞ぐことで、開口部63の前縁部63fまで外板1aに沿った水流WFは、図2(c)の船体右側(図中下方)に示すように、そのままカバー64の表面64dに沿ってカバー64の後縁部(船尾側縁部)64rまで流れる。
カバー64の後縁部64rから開口部63の船体後方の縁部までの距離(すなわち、連通部65の水流方向の長さ)は短いため、水流WFは連通部65の内部へはほとんど入り込むことなく、開口部63の下流側の外板1aに沿って流れる。つまり、開口部63を全閉する形状(開口部63と同一形状)のカバーでなくても、一部が開口したカバー64によって、水流WFが船体1から離れる位置を下流側にずらすことで抵抗を低減することができる。
カバー64と連通部65との境界をなすカバー64の後縁部64rは、カバー64の円周上の二点P1,P2を結ぶ弦に相当し、ここでは船尾側に設けられるため開口部63の直径よりも短くなっている。カバー64は、この弦(後縁部64r)とこれら二点P1,P2間の船首側の円弧とで囲まれた形状に形成される。一方、連通部65は、この弦(後縁部64r)とこれら二点P1,P2間の船尾側の円弧とで囲まれた形状となる。カバー64の後縁部64rは、垂直方向に対して上方が船尾側に傾いて設けられる。
バウスラスター6Bの開口部63Bの周辺の水流WFは、図3(a)に二点鎖線で示すように水平方向に対して下流側が船底に向かってやや傾斜することが多い。特にバルバスバウ2を備えた船舶の場合、バルバスバウ2の周辺を流れた流体がバウスラスター6Bの開口部63Bの近傍を通り船底に向かう。つまり、カバー64Bの後縁部64Brは、バルバスバウ2から開口部63Bに至る下方傾斜水流に対し、略直交する傾きとなるように設けられる。言い換えると、円周上の二点P1,P2のうち、上方に位置する点P1の方が、下方に位置する点P2よりも後方に設けられる。
なお、ここではスターンスラスター6Sのカバー64Sも、図1に示すようにバウスラスター6Bのカバー64Bと同様、カバー64Sの後縁部64Srが垂直方向に対して上方が船尾側に傾いて設けられたものを例示している。ただし、スターンスラスター64Sの開口部63Bの周辺の水流WFは、水平方向に対して下流側に上方に向かってやや傾斜することが多いため、カバー64Sの後縁部64Srを、垂直方向に対して上方が船首側に傾くように設けて、開口部63Sの近傍における水流WFの流れ方向に対し略直交する傾きとなるように形成してもよい。
カバー64は、図3(a),(b)及び図4に示すように、カバー64の裏面64c(トンネル61の内部側の面,内面)に設けられた後述のリンク機構70により、船体1の外部の下方(矢印OPの方向)に向かって外板1aに沿ってスライド開閉される。すなわち、カバー64の開閉方向は上下方向であり、開放方向OPは下方である。
[1−3.カバーの開閉構造]
次に、図3(a),(b)及び図4を用いて、カバー64の開閉構造(カバー装置)について詳述する。カバー64の裏面64cには、一端が船体1側に枢着され、他端がカバー64側に枢着された二本のリンクアーム71,72を二組(すなわち、リンクアーム71,72をそれぞれ二本ずつ)有するリンク機構70(ガイド機構)が設けられる。このリンク機構70は平行リンク機構であり、油圧シリンダ75(駆動手段)により駆動されることでカバー64を上下方向に開閉する。カバー装置は、これらカバー64とリンク機構70と油圧シリンダ75とを含んで構成される。二組のリンクアーム71,72は、カバー64の開閉方向(上下方向)に延在し、この開閉方向と直交する方向に並設される。
一方のリンクアーム71は、カバー64の開放方向側(すなわち下側)に配設され、図4に示すように一部が曲線状に屈曲した形状に形成されている。ここでは、リンクアーム71は、J字状に湾曲形成されており、以下、リンクアーム71をJアーム71と呼ぶ。これに対して、他方のリンクアーム72は、カバー64の開放方向OPの逆側(すなわち上側)に配設される直線状の直線アームである。以下、他方のリンクアーム72をロッド72と呼ぶ。
Jアーム71は、船体1側の一端(以下、基端部71aという)が、トンネル61の内壁61wを貫通して延設された駆動軸73に固定され、カバー64側の他端(以下、先端部71bという)が、カバー64の裏面64cの上下方向(開閉方向)の略中央に回動可能に接続される。駆動軸73は、油圧シリンダ75により回動される軸であり、開口部63よりも内側において、トンネル61の下部を前後方向に貫通するように略水平に設けられる。
図3(b)及び図4に示すように、二本のJアーム71の各基端部71aは、トンネル61の内壁61wの近傍で駆動軸73に結合される。駆動軸73の一端には、腕部76を介して油圧シリンダ75のピストンロッド75aが接続される。油圧シリンダ75は、基端部(ピストンロッド75aと逆側の端部)を中心に回動可能である。腕部76は、一端に駆動軸73が固定され、他端にピストンロッド75aが接続されている。油圧シリンダ75のピストンロッド75aが伸縮すると、腕部76が回転し、駆動軸73は腕部76と一体で回転するため、駆動軸73に固定されたJアーム71も一体で回転する。
ロッド72は、船体1側の一端(以下、基端部72aという)が、トンネル61の内壁61wを貫通してトンネル61内に突設された支持部74の先端に枢支され、カバー64側の他端(以下、先端部72bという)が、カバー64の裏面64cの上端部(すなわち開放方向OPの逆側の端部)に回動可能に接続される。支持部74は、ロッド72の基端部72aを支持する部分であり、開口部63よりも内側においてトンネル61の上下方向略中央部に設けられる。図3(b)に示すように、二つの支持部74は、トンネル61の内壁61wの前部及び後部からそれぞれ中心に向かって突設される。これにより、二本のロッド72の各基端部72aはトンネル61の内壁61wから離隔して(トンネル61の中心側において)、支持部74に結合される。
ここでは、ロッド72の基端部72aの方がJアーム71の先端部71bよりもトンネル61の中心側に配置される。これにより、ロッド72の先端部72bを、カバー64の上縁部64uに近接させて配置することができる。ロッド72の先端部72bの位置をカバー64の開放方向OPと逆側の縁部に近づけることで、カバー64の全開時に開口部63とカバー64とが重複する面積を小さくすることができる。ロッド72は、Jアーム71の基端部71aと先端部71bとを結んだ直線L(図4中の一点鎖線)の長さと同一又は略同一の長さを有し、直線Lと平行又は略平行に設けられる。
Jアーム71は、カバー64の全開時に外板1aに沿う直線部71cを先端部71b側に有し、カバー64の全開時に開口部63の下縁部63eとの接触を回避する湾曲部71dを基端部71a側に有する。直線部71cは、一端である先端部71bから内側に行くほど直線Lから離隔するように延設され、他端である先端部71bと反対側の端部に湾曲部71dが連続して設けられる。湾曲部71dは、内側に向かって曲線状に凸に形成された部分であり、カバー64の開放時にトンネル61の周辺の外板1aと干渉しないような形状に形成される。
[1−4.動作]
このように構成されたリンク機構70によるカバー64の開放動作と閉鎖動作とについて、図5(a)及び(b)も用いて説明する。図5(a)はカバー64の開放動作の途中を示し、図5(b)はカバー64の全開状態を示す。全てのカバー64は、スラスター6を作動させるときに同時に開放され、スラスター6を停止させるときに同時に閉鎖される。
スラスター6を作動させるときは、図5(a)に示すように、油圧シリンダ75のピストンロッド75aが矢印Mで示すように伸長し、腕部76が回転することで、駆動軸73も矢印Rで示す方向に回転する。これに伴い、Jアーム71及びロッド72は、各基端部71a,72aを中心に各先端部71b,72bが船外に向かって移動する方向へ回転する。ここで、Jアーム71の直線Lとロッド72とは長さが同一又は略同一であるため、各基端部71a,72aを中心とした回転半径は同一又は略同一となる。すなわち、カバー64は閉鎖状態での外板1aに対する傾きを保持したまま、船外に向かって開放される。
油圧シリンダ75のピストンロッド75aがさらに延びると、図5(b)に示すように、Jアーム71は、湾曲部71dが開口部63の下縁部63eとの接触を回避するとともに直線部71cが外板1aとカバー64との間に収まる。これにより、Jアーム71は、その先端部71bが開口部63の下縁部63eよりも下方まで移動するように回転し、これに伴ってロッド72もJアーム71と同一又は略同一の角度だけ回転する。つまり、Jアーム71及びロッド72は、図5(b)中に一点鎖線r1,r2で示す軌跡をそれぞれ辿って下方へ移動する。したがって、カバー64は、外板1aに沿ってスライド開放され、全開状態では開口部63とカバー64との重複部分が小さくなる。リンク機構70は、カバー64を外板1aに沿ってスライド開閉させるガイド機構として機能する。
また、カバー64は、開放動作中に船体1の外板1aから離隔する距離が短く、さらに下方に向かって外板1aに沿ってスライド開放されるため、アンカーチェーン5cとの接触が回避される。スラスター6は、カバー64が開放された後にプロペラ62が回転されることで、横方向の推力を発生する。
一方、スラスター6を停止させるときは、開放動作と逆の閉鎖動作によりカバー64がスライド閉鎖される。すなわち、油圧シリンダ75のピストンロッド75aが収縮して腕部76が開放時と逆方向に回転することで、駆動軸73も開放時と反対方向に回転する。これに伴い、Jアーム71及びロッド72は、各基端部71a,72aを中心に開放時と反対方向に回転し、各先端部71b,72bは図5(b)中に一点鎖線r1,r2で示す軌跡をそれぞれ辿って上方へ移動する。これにより、スラスター6を使用しないときは、開口部63がカバー64により塞がれる。
[1−5.効果]
したがって、上記の船舶のスラスター6によれば、トンネル61の開口部63を塞ぐカバー64が、スラスター6の作動時には、ガイド機構としてのリンク機構70と駆動手段としての油圧シリンダ75とによって船体1の外板1aに沿ってスライド開放されるため、カバー64の開放時の外板1aから外方への突出量を小さくすることができる。これにより、スラスター6の作動時におけるアンカーチェーン5cとカバー64との接触を防ぐことができる。
通常、船舶の離接岸時はアンカー5aを水中に沈めたり水中から引き上げたりなど、アンカー5aを動かしながらスラスター6を作動させることが多いため、カバー64の突出量が大きいと、カバー64がアンカーチェーン5cに接触してしまう可能性がある。これに対して、本スラスター6であれば、カバー64の開放時の突出量を小さくすることができ、アンカーチェーン5cとの接触を回避することができるため、トンネル61の開口部63をカバー64で塞ぐという構造を採用することができる。
これにより、図2(c)の船体右側(図中下方)に示すように、スラスター6を使用しないときはトンネル61の開口部63をカバー64で塞ぐことで、開口部63の後端側(領域D)における水流WFの乱れを防ぎ、抵抗が発生することを抑制することができる。この結果、船舶の発電機関の負荷を低減でき、燃費低減効果を得ることができる。
また、ここではガイド機構として、船体1側とカバー64側とに枢着されたリンクアーム71,72を有するリンク機構70を用いているため、例えば船体1の外板にレールのようなガイド機構を設ける場合のように航行時の抵抗増大となることがない。さらに、リンク機構70によってカバー64のがたつきを防ぎながらカバー64をスムーズに開閉させることができる。
また、リンク機構70の二本のリンクアーム71,72のうち、カバー64の開放方向側に位置する一方のリンクアーム(すなわちJアーム)71は、カバー64の開放時にトンネル61の周辺の外板1aに干渉しないように屈曲形成されている。これにより、カバー64のがたつきやカバー64と外板1aとの接触を防ぎながらカバー64をスムーズに開閉させることができる。
上記のスラスター6は、Jアーム71が、カバー64の全開時に外板1aに沿う直線部71cと、カバー64の全開時に開口部63の縁部との接触を回避する湾曲部71dとを有するJ字状に形成されているため、カバー64の開閉時にカバー64と船体1との干渉衝突を防ぐことができ、カバー64をスムーズに開閉させることができる。また、カバー64の全開時にJアーム71の直線部71cが外板1aに沿うため、カバー64の突出量をさらに小さくすることができる。さらに、Jアーム71は、基端部71a側に内側に向かって曲線状に形成された湾曲部71dを有するため、例えば角部を有するように折り曲げ形成されたようなアームに比べて強度を高めることができる。
上記のスラスター6は、ロッド72の先端部72bがカバー64の開放方向OPと逆側のカバー64の端部(ここでは上端部)に接続されるため、カバー64の全開時(すなわち、スラスター6の作動時)にカバー64とトンネル61の開口部63とが重なる部分(重複面積)を小さくすることができる。これにより、スラスター6の推力が減少することを抑制することができる。
上記のスラスター6は、Jアーム71の先端部71bがカバー64の開閉方向の略中央(ここでは上下方向略中央)に接続されるため、カバー64の開閉時に、カバー64を安定して支持することができる。また、Jアーム71の湾曲部71dを小型化することができるため、Jアーム71の重量及び製品コストを低減することができる。
上記のスラスター6は、トンネル61の内壁61wを貫通して延設される駆動軸73を備え、この駆動軸73が油圧シリンダ75により回動されることでリンク機構70が駆動され、カバー64が開閉される。ここで、Jアーム71は、その基端部71aがトンネル61の内壁61wの近傍で駆動軸73に結合されているため、スラスター6の作動時に、Jアーム71や駆動軸73が障害物となってスラスター6の推力が減少することを抑制することができる。
また、トンネル61が船首部1Bに設けられるバウスラスター6Bの場合、船体1の船首部1Bにおけるトンネル61Bの下方の部分は窄んだ形状になっているため、カバー64Bの開放方向OPを船体1の下方向とすることで、カバー64Bの船体1からの突出量をさらに小さくすることができる。言い換えると、カバー64Bを船体1の窄んだ形状の部分に収めるように開放することができ、船体1の膨出した側面よりも内側に配置することができる。これにより、カバー64Bとアンカーチェーン5cとの接触をより確実に防止することができる。
上記のスラスター6は、カバー64が開口部63の一部を塞ぐ形状に形成されているため、カバー64を軽量にすることができ、カバー64を開閉するために必要な駆動エネルギを小さくすることができる。また、開口部63の一部でもカバー64で塞ぐことにより、カバー64を設けない場合と比較して航行中の抵抗を低減することができる。
また、本実施形態では、カバー64が開口部63のうち船首側を塞ぐ形状に形成されているため、開口部63の前縁部63fまで外板1aに沿った水流WFは、そのままカバー64の表面64dに沿ってカバー64の後縁部64rまで流れる。つまり、水流WFが船体1から離れる位置を下流側にずらすことで、水流WFが連通部65の内部へ入り込むことを防ぐことができ、航行中の推進抵抗を低減することができる。したがって、カバー64の軽量化を実現しながら航行中の抵抗を効果的に低減することができる。
また、カバー64の後縁部64rは、開口部63の近傍における水流WFの流れ方向に対して略直交する傾きとなるように設けられる。これにより、水流WFの流れ方向における後縁部64rから開口部63の縁部までの距離を短くすることができる。言い換えると、水流WFの流れ方向に対する連通部65の面積を、後縁部64rの一端側が狭く,他端側が広くなるようなことがなく、連通部65からの流体の入り込みを効果的に抑制することができる。したがって、航行中の連通部65での抵抗を低減することができる。
特に、バウスラスター6Bの場合、バルバスバウ2の周辺を流れた流体がバウスラスター6Bの開口部63Bの近傍を通り船底に向かうため、バルバスバウ2から開口部63Bに至る水流WFは傾きが大きくなりやすい。そのため、バウスラスター6Bのカバー64Bの後縁部64Brを、垂直方向に対して上方が船尾側に傾くように形成することで、連通部65Bからトンネル61B内に流体が入り込むことを防止することができる。
また、上記実施形態では、カバー64が繊維強化プラスチックにより形成されているため、カバー64を設けることによる重量増大を抑制することができ、カバー64を開閉するためのリンク機構70や油圧シリンダ75を小型化することができる。また、リンク機構70を駆動するために必要な駆動エネルギを小さくすることができ、燃費低減効果を得ることができる。さらに、重量増を抑制できるので、発電機関の負荷の増大を抑制することができ、燃料消費量の増大及び運行コストの増加を防ぐことができる。
[1−6.他の態様例]
上記実施形態では、スラスター6のカバー64が、トンネル61の開口部63の船首側を塞ぐ形状で開口部63の半分以上を塞ぐ大きさのものを例示したが、カバー64の形状はこれに限られない。また、カバー64の開閉構造も上記したものに限られず、様々な態様をとることができる。以下、いくつかの態様例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、すでに説明した構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
〔1〕態様例1−1
まず、図6(a)及び(b)を用いて態様例1−1について説明する。図6(a)に示すスラスター6は、トンネル61の開口部63のうち船首側を塞ぐ前側カバー64′と船尾側を塞ぐ後側カバー66とを備えている。なお、図6(a)ではプロペラ62を省略している。前側カバー64′は、上記実施形態のカバー64と同様に開口部63の船首側を塞ぐものであるが、その大きさは上記実施形態のカバー64よりも小さく、開口部63の半分未満を塞ぐ。前側カバー64′の後縁部64r′は、船首側に設けられる。
一方、後側カバー66は、開口部63の半分未満を塞ぐ大きさであり、連通部65との境界をなす前縁部66fが船尾側に設けられる。前側カバー64′の後縁部64r′及び後側カバー66の前縁部66fは、何れも垂直方向に対して上方が船尾側に傾いて設けられる。これにより、船首側の開口部63Bの近傍における水流WFの流れ方向〔図6(a)に二点鎖線で図示〕に対して略直交する傾きとなる。これら前側カバー64′の後縁部64r′及び後側カバー66の前縁部66fの間に、連通部65が形成される。なお、前側カバー64′及び後側カバー66をスターンスラスター6Sに適用する場合には、後縁部64r′及び前縁部66fを垂直方向に対して上方が船首側に傾くように設けて、開口部63Sの近傍における水流WFの流れ方向に対し略直交する傾きとすることが好ましい。
このような前側カバー64′及び後側カバー66には、図6(b)に示すように、それぞれリンク機構70′が設けられており、リンク機構70′により船体1の外部の下方(矢印OPの方向)に開放される。リンク機構70′は、一組のJアーム71及びロッド72から構成される。Jアーム71は、その基端部71aがトンネル61の内壁61wを貫通して突設された駆動軸73′に固定され、先端部71bがカバー64′,66の裏面64c′,66cの上下方向(開閉方向)の略中央に回動可能に接続される。
なお、ここでは駆動軸73′が、トンネル61の内壁61wの前部及び後部からそれぞれ内部へ突設されている。つまり、上記実施形態の駆動軸73とは異なり、駆動軸73′は二本設けられ、油圧シリンダ75及び腕部76も二つずつ設けられる。
また、ロッド72は、その基端部72aがトンネル61の内壁61wを貫通してトンネル61内に突設された支持部74の先端に枢支され、先端部72bがカバー64′,66の裏面64c′,66の上端部(すなわち開放方向OPの逆側の端部)に回動可能に接続される。
このような前側カバー64′及び後側カバー66により開口部63が閉鎖されると、開口部63の前縁部63fまで外板1aに沿った水流WFは、そのまま前側カバー64′の表面64d′に沿って前側カバー64′の後縁部64r′まで流れる。つまり、水流WFが船体1から離れる位置を下流側にずらすことができる。さらに、開口部63の船尾側を塞ぐ後側カバー66を設けることで、開口部63の後縁側における水流WFのトンネル61内への入り込みを防ぐことができる。したがって、カバー全体の軽量化を実現しながら航行中の抵抗を効果的に低減することができる。なお、上記実施形態と同様の構成からは、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
〔2〕態様例1−2
次に、図7(a)及び(b)を用いて態様例1−2について説明する。図7(a)に示すスラスター6は、トンネル61の開口部63のうち船尾側を塞ぐ後側カバー66′を備えている。なお、図7(a)ではプロペラ62を省略している。後側カバー66′は、上記の態様例1−1の後側カバー66と同様に開口部63の船尾側を塞ぐものであるが、その大きさは上記の後側カバー66よりも大きく、開口部63の略半分を塞ぐ。後側カバー66′の前縁部66f′は、やや船尾側に設けられ、開口部63の直径と同一又は略同一か短い長さを有する。
後側カバー66′の前縁部66f′は、垂直方向に対して上方が船尾側に傾いて設けられる。これにより、船首側の開口部63Bの近傍における水流WFの流れ方向〔図7(a)に二点鎖線で図示〕に対して略直交する傾きとなる。この後側カバー66′の前縁部66fの前側に連通部65が形成される。なお、後側カバー66′をスターンスラスター6Sに適用する場合には、前縁部66f′を垂直方向に対して上方が船首側に傾くように設けて、開口部63Sの近傍における水流WFの流れ方向に対し略直交する傾きとすることが好ましい。
このような後側カバー66′には、図7(b)に示すように、リンク機構70′が設けられており、リンク機構70′により船体1の外部の下方(矢印OPの方向)に開放される。リンク機構70′は、態様例1−1と同様、一組のJアーム71及びロッド72から構成される。Jアーム71は、その基端部71aがトンネル61の内壁61wを貫通して突設された駆動軸73′に固定され、先端部71bが後側カバー66′の裏面66c′の上下方向(開閉方向)の略中央に回動可能に接続される。なお、この駆動軸73′は、上記の態様例1−1と同様、トンネル61の内壁61wの後部からトンネル61内に突設されている。
また、ロッド72は、その基端部72aがトンネル61の内壁61wを貫通してトンネル61内に突設された支持部74の先端に枢支され、先端部72bが後側カバー66′の裏面66c′の上端部(すなわち開放方向OPの逆側の端部)に回動可能に接続される。
このような後側カバー66′により開口部63が閉鎖されると、開口部63の前縁部63fまで外板1aに沿った水流WFが前縁部63fの位置で船体1から離れても、開口部63の後縁側においてトンネル61の内部に入り込むことを防ぐことができる。
また、後側カバー66′が開口部63の略半分を塞ぐ大きさであるため、後側カバー66′を開閉するリンク機構70′を一組のJアーム71及びロッド72で構成することができる。したがって、後側カバー66′の軽量化及びリンク機構70の軽量化を実現しながら航行中の抵抗を効果的に低減することができる。また、後側カバー66′を駆動するための駆動エネルギを上記実施形態及び態様例1−1のものよりも低減することができるため、さらなる燃費低減効果を得ることができる。なお、上記実施形態と同様の構成からは、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
〔3〕態様例1−3
次に、図8(a)及び(b)を用いて態様例1−3について説明する。図8(a)に示すスラスター6は、トンネル61の開口部63の全体を塞ぐ全閉カバー67を備えている。すなわち、全閉カバー67は、開口部63の直径と同一の直径を有する円形に形成されており、その外面形状は船体1の外板1aの曲面に沿うように形成されている。また、本態様例では、全閉カバー67は、その裏面67c(トンネル61の内部側の面,内面)に設けられたリンク機構70により、船体1の外部の後方(矢印OPの方向)に向かって外板1aに沿って開閉される。すなわち、全閉カバー67の開閉方向は前後方向であり、開放方向OPは後方である。
リンク機構70は、上記実施形態で詳述したJアーム71及びロッド72を二組有する平行リンク機構と同様の構成となっている。ただし、本態様例では、全閉カバー67の開閉方向が前後方向であるため、図3(b)に示すリンク機構70を図中反時計回りに90度回転させたものとなっている。すなわち、駆動軸73は、トンネル61の後部を上下方向に貫通して延設されており、この駆動軸73に二本のJアーム71の各基端部71aが固定される。また、二本のJアーム71の各先端部71bは、全閉カバー67の裏面67cの前後方向の略中央に回動可能に接続される。
二本のロッド72は、各基端部72aがトンネル61の内壁61wを貫通してトンネル61内に突設された支持部74の先端に枢支され、各先端部72bが、全閉カバー67の裏面67cの前端部(すなわち開放方向OPの逆側の端部)に回動可能に接続される。二つの支持部74は、トンネル61の内壁61wの上部及び下部からそれぞれ中心に向かって突設される。
このような全閉カバー67により開口部63全体が閉鎖されると、トンネル61の内部に水流WFが入り込むことがなく、開口部63における抵抗を確実に防ぐことができる。すなわち、水流WFは、全閉カバー67と外板1aとの連続した曲面に沿って流れることができ、航行中の抵抗を最も効果的に低減することができる。なお、上記実施形態と同様の構成からは、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
〔4〕態様例1−4
次に、図9(a)及び(b)を用いて態様例1−4について説明する。本態様例は、カバー64等を開閉させるリンク機構70,70′の一方のリンクアーム71がJ字状ではなく、図9(a)及び(b)に示すように二分割アーム77として構成されている。二分割アーム77は、二つの直線状のアーム部77c,77dが軸77eによって固定されて一体に旋回するものであり、カバー64等の開放方向側に配設される。
一方のアーム部77dは、二分割アーム77の基端部77a側に設けられ、他方のアーム部77cは先端部77b側に設けられる。一方のアーム部77dの軸77eとは逆側の端部(すなわち、二分割アーム77の基端部77a)は、トンネル61の内壁61wを貫通して延設された駆動軸73に固定される。他方のアーム部77cの軸77eとは逆側の端部(すなわち、二分割アーム77の先端部77b)は、カバー64等の裏面64c等の開閉方向の略中央に回動可能に接続される。このアーム部77cは、カバー64の全開時に外板1aに沿う部分である。
二つのアーム部77c,77dは、図9(b)に示すように、カバー64等の全開時に開口部63の縁部との接触を回避する角度をなして軸77eによって固定されている。すなわち、二分割アーム77は、カバー64等の開放時にトンネル61の周辺の外板1aと干渉しないような形状に形成されている。二分割アーム77の基端部77aと先端部77bとを結んだ直線L(一点鎖線)の長さはロッド72と同一又は略同一の長さを有し、直線Lとロッド72とは平行又は略平行に設けられる。つまり、二分割アーム77とロッド72とは平行リンク機構である。
このような構造を有するリンク機構70″によっても、上記実施形態と同様、カバー64等をがたつかせることなくスムーズにスライド開閉させることができるため、カバー64等の開放時の外板1aから外方への突出量を小さくすることができる。これにより、スラスター6の作動時におけるアンカーチェーン5cとカバー64等との接触を防ぐことができる。また、例えば船体1の外板にレールのようなガイド機構を設ける場合のように、航行時の抵抗増大となることがない。なお、上記実施形態と同様の構成からは、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
〔5〕その他の態様例
上記実施形態のカバー64の開放方向OPは下方向に限られず、例えば態様例1−3に示すように後方であってもよいし、あるいは、上方や前方や斜め方向であってもよい。カバー64の開放方向OPに応じてリンク機構70の位置を設定すればよい。同様に、態様例1−1の前側カバー64′及び後側カバー66の開放方向OP、態様例1−2の後側カバー66′の開放方向OP、及び、態様例1−3の全閉カバー67の開放方向OPも、上記したものに限られない。
例えば、前側カバー64′は前方へ開放し、後側カバー66,66′は後方へ開放するように構成してもよい。また、態様例1−3の全閉カバー67を、上記実施形態と同様に下方に開放してもよい。なお、上記したように、船体1はスターンスラスター6Sの上方では拡開形状となっているため、カバー64S等の開放方向OPは上方以外が好ましい。
また、上記実施形態のカバー64及び態様例1−3の全閉カバー67を、態様例1−1及び態様例1−2で示したリンク機構70′で開閉してもよい。カバー64,全閉カバー67が繊維強化プラスチック製であれば重量を軽くすることができるため、一組のJアーム71及びロッド72によっても開閉することが可能である。
[2.第二実施形態]
[2−1.スラスターの構成]
次に、第二実施形態に係る船舶のスラスター8について、図10(a)及び(b)を用いて説明する。なお、すでに説明した構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図10(a)は、船首部1Bに設けられたバウスラスター8Bの周辺の右側面図であり、図10(b)は図10(a)のF−F矢視断面図である。
図10(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係るバウスラスター8Bは、第一実施形態に係るバウスラスター6Bに対して、トンネル61B内に流体を導入するとともに、この流体を連通部65Bから船外へ排出する導入管80(流体供給手段)が備えられている。トンネル61Bの開口部63Bは、カバー64Bが閉鎖状態であっても連通部65Bにおいてトンネル61Bの内外が常に連通状態となっている。導入管80は、この連通部65Bを通じてトンネル61Bの内側から船外へ流体を排出することで、船外から連通部65Bを通じてトンネル61B内へ流体が入り込まないようにするためのものである。
導入管80は、船外の流体をトンネル61B内に取り込むための流通経路であり、船体1の内部において前後方向に延設されている。導入管80の前側の一端81は、船体1の没水部1Wに開口し、導入管80内に船外の流体が入り込む入口(吸込み口)である。一方、導入管80の後側の他端82は、トンネル61Bの内壁61Bwであって連通部65Bに向かって開口し、導入管80内を流通してきた流体がトンネル61B内に出て行く出口(吐出口)である。以下、導入管80の前側の一端81を入口81ともいい、後側の他端82を出口82ともいう。
導入管80は、入口81から出口82までの間の二箇所に分岐点80a,80bを有する。分岐点80aは、流通経路を左右に分岐させる部分であり、分岐点80bは流通経路を上下に分岐させる部分である。ここでは、分岐点80aの方が分岐点80bよりも前方に設けられているが、分岐点80bの方が前方に設けられていてもよい。また、導入管80は、船首部1Bの前端部1fに設けられた一つの入口81と、左右の連通部65Bの近傍に二つずつ設けられた合計四つの出口82とを有する。なお、導入管80の入口81から出口82までの流通経路の形状や入口81,出口82の個数は特に限定されない。
導入管80は、さらに、航行中に入口81の方が出口82よりも相対的に高圧になるように(すなわち、入口圧力>出口圧力となるように)、圧力差を発生させる圧力差発生構造を有する。本スラスター8Bは、この圧力差発生構造で発生させる圧力差によって、動力源を用いずに導入管80内に流体を流通させる。
[2−2.圧力差発生構造]
圧力差発生構造には、入口圧力を高める構造と、出口圧力を負圧にする構造とがある。前者の構造によれば、周辺圧力を基準とすると、入口圧力は高圧になり、出口圧力は周辺圧力と同程度の圧力であるため、入口圧力と出口圧力との間に圧力差が発生する。一方、後者の構造によれば、出口圧力は負圧になり、入口圧力は周辺圧力と同程度の圧力であるため、入口圧力と出口圧力との間に圧力差が発生する。また、これらを組み合わせることにより、入口圧力と出口圧力との圧力差を大きくすることが可能となる。本実施形態では、両構造を有するバウスラスター8Bについて説明する。
入口圧力を高める構造は、導入管80の一端側に設けられる。入口圧力を高める構造として二つの圧力差発生構造が設けられている。図10(a)及び(b)に示すように、導入管80は、入口81が前方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積が四つの出口82の開口面積の合計よりも大きくなるように形成されている。このような構造により、導入管80の入口圧力が高められる。さらに、導入管80の入口81は、上記したように船首部1Bの前端部1fに設けられ、前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口している。このような構造により、流れの圧力を利用して導入管80の入口圧力がさらに高められる。
一方、出口圧力を負圧にする構造は、導入管80の他端側に設けられる。図10(a)及び(b)に示すように、導入管80の出口82は、左右方向ではカバー64Bの裏面64Bcの直ぐ内側に配置され、前後方向ではトンネル61Bの内壁61Bwに接するカバー64Bの後縁部64Brの直下流に配置される。この出口82が配置される位置には、カバー64Bの表面64Bdに設けられた突起部83により負圧領域Nが生成される。
突起部83は、連通部65Bの前側に位置する後縁部64Brの上部及び下部において外方に向かって突設されている。ここでは、突起部83は船体1の外板1aに対して略垂直に(言い換えると、カバー64Bの表面64Bdに対して略垂直に)突設される。また、突起部83は、後縁部64Brの上部及び下部において、それぞれ後縁部64Brに沿って突設される。
図10(b)に示すように、船体1に沿う水流WFの一部は、突起部83の下流側において渦となり、この渦効果によって突起部83の後背部〔図10(b)中の領域N〕には負圧が発生する。言い換えると、突起部83は、図10(b)中に一点鎖線で示すように、その下流側に所定範囲の負圧領域Nを生成する。この負圧領域N内に導入管80の出口82が設けられることで、導入管80の出口圧力が負圧にされる。
なお、突起部83の具体的な形状(例えば、カバー64Bの表面64Bdからの突出量,後縁部64Brに沿う長さ,前後方向長さ,平面状か曲面状かなど)は、後背部に生成される負圧領域Nの大きさや導入管80の出口82の位置、航行中の突起部83による抵抗の大きさ等を考慮して、適宜設定される。また、突起部83が外板1aに対して傾斜して(すなわち略垂直ではない角度で)設けられていてもよい。
[2−3.作用,効果]
このように構成されたバウスラスター8Bであれば、バウスラスター8Bを使用しない航行時において、導入管80の一端側では、前端部1fの水流WFの圧力により入口圧力が高くなる。また、導入管80の入口81はラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積の方が出口82の開口面積よりも大きく形成されているため、入口圧力が高くなるとともに入口81から流入した流体の流速が上がり、勢いよく他端側へ流れていく。
一方で、導入管80の他端側では、船体1に沿う水流WFの一部が突起部83の下流側において渦となり、突起部83の後背部に負圧領域Nが生成される。この負圧領域N内に出口82が設けられているため、導入管80の出口圧力が負圧になり、導入管80内を流通する流体がトンネル61B内に吸い込まれるように排出される。トンネル61B内に排出された流体は、カバー64Bにより閉鎖されない連通部65Bから船外へと排出される。
したがって、上記の船舶のバウスラスター8Bによれば、トンネル61B内に流体を導入するとともに、この流体をトンネル61Bの内外を連通する連通部65Bから船外へ排出する導入管80を備えているため、バウスラスター8Bを使用しない航行中において、第一実施形態に記載したカバー64Bによる効果に加え、連通部65Bを通じて船外からトンネル61B内に流体が入り込むことを防止することができ、航行中の開口部63Bでの抵抗をさらに低減することができる。
上記の船舶のバウスラスター8Bでは、導入管80が航行中に入口81の方が出口82よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造を有し、船体1に沿って流れる水流WFを利用してトンネル61B内に流体を導入して、この流体を連通部65Bから船外へ排出する。そのため、例えばポンプのような機械装置等を設ける必要がなく、機械装置等を駆動させるための駆動エネルギが不要となり、より高い燃費低減効果を得ることができる。また、機械装置等のメンテナンス費用などの付加的費用も不要となるため、コストを削減することができる。
上記の船舶のバウスラスター8Bは、圧力差発生構造として、入口81の開口面積が出口82の開口面積よりも大きく形成されている。このように、導入管80の両端の開口面積を変えるだけで圧力差を発生させて導入管80に流体を導入することができるため、構成を簡素化することができ、コストを低減することができる。また、出口82の開口面積が入口81の開口面積よりも小さいため、出口82の流速を上げることができる。これにより、導入管80からトンネル61B内に勢いよく排出された流体を、連通部65Bから船外へ排出させやすくすることができる。
上記の船舶のバウスラスター8Bは、連通部65Bの前側の後縁部64Brに外方へ突設された突起部83を備えており、圧力差発生構造として、この突起部83により生成される負圧領域N内に導入管80の出口82が設けられている。このように、導入管80の出口圧力を負圧にすることで、導入管80の入口圧力と出口圧力とに相対的な圧力差を発生させることができ、導入管80内に積極的に流体を吸い込む(導入する)ことができる。これにより、連通部65Bから排出する流体の流量を増大させることができ、航行中に連通部65Bにおいて水流WFが乱れることを防止し、抵抗をさらに低減することができる。
さらに、突起部83を設ける本圧力差発生構造によれば、出口圧力を負圧にすることができるため、入口圧力を高める構造が設けられていなくてもよい。すなわち、導入管80の入口81の位置は船首部1Bの前端部1fに限られず、例えば船体1の船底1bに設けることも可能である。少なくとも、入口81は没水部1Wに設けられていればよい。また、入口81の開口面積と出口82の開口面積とが同一であってもよい。そのため、本圧力差発生構造を採用することで、導入管80の構造の自由度を高めることができる。
さらに上記の船舶のバウスラスター8Bは、圧力差発生構造として、導入管80の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられている。このように、一端81の開口位置を前端部1fに設定するだけで、航行中の流れの圧力を利用して導入管80に流体を導入することができるため、構成を簡素化することができ、コストを低減することができる。
なお、離接岸時においてバウスラスター8Bを使用する場合は、導入管80の入口81と出口82との間に圧力差が発生しないため、導入管80には流体が流れない。そのため、導入管80を設けたとしても、バウスラスター8Bによる横方向の推力の発生を妨げるようなことはない。
[2−4.他の態様例]
第二実施形態では、上記の第一実施形態で説明したカバー64Bを備えたバウスラスター6Bに、圧力差発生構造を有する導入管80が設けられたものを例示したが、第一実施形態の態様例1−1及び態様例1−2で説明した前側カバー64′や後側カバー66,66′を備えたバウスラスター6Bに、上記と同様の導入管80を設けることも可能である。また、導入管80の構造も上記第二実施形態の構造以外のものにすることもできる。これらについて、以下に四つの態様例を説明する。なお、以下の態様例に係る説明では、すでに説明した構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
〔1〕態様例2−1
まず、図11(a)を用いて第二実施形態の態様例2−1について説明する。本態様例は、上記の第二実施形態に対して、トンネル61Bの開口部63Bを塞ぐカバー64B′,66Bの形状が異なる。これに伴って、本態様例は第二実施形態に対して、突起部83が設けられる位置と導入管80の出口82の位置とが異なる。なお、これら以外の構造は、上記第二実施形態と同一である。
本態様例に係るバウスラスター8Bは、図6(a)及び(b)に示す態様例1−1に係るバウスラスター6Bに対して、上記第二実施形態で示した導入管80が備えられている。図11(a)に示すように、導入管80は、船体1の内部において前後方向に延設されており、前側の一端(入口)81は船首部1Bの前端部1fに開口し、後側の他端(出口)82は、トンネル61Bの内壁61Bwであって連通部65Bに向かって開口している。
導入管80は、圧力差発生構造として、上記第二実施形態と同様の構造を有する。すなわち、導入管80の入口圧力を高める構造として、導入管80の入口81が前方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積が出口82の総開口面積よりも大きくなるように形成されている。さらに、導入管80の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられ、前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口している。
また、出口圧力を負圧にする構造として、導入管80の出口82が、左右方向では前側カバー64B′の裏面の直ぐ内側に配置され、前後方向ではトンネル61Bの内壁61Bwに接する前側カバー64B′の後縁部64Br′の直下流に配置される。この出口82が配置される位置には、前側カバー64B′の表面64Bd′に設けられた突起部83により負圧領域Nが生成される。
突起部83は、連通部65Bの前側に位置する後縁部64Br′の上部及び下部において外方に向かって突設されている。なお、突起部83は上記第二実施形態の突起部83と同一形状を有する。この突起部83により、突起部83の後背部には負圧領域Nが生成され、導入管80の出口82はこの負圧領域N内に設けられることで、導入管80の出口圧力が負圧にされる。これらの構造により、導入管80は入口81が出口82よりも相対的に高圧になるため、導入管80内を流体が流通し、トンネル61B内に排出された流体が連通部65Bから船外へ排出される。
したがって、本態様例に係る船舶のバウスラスター8Bであっても、上記態様例1−1に記載した効果に加え、上記第二実施形態に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
〔2〕態様例2−2
次に、図11(b)を用いて第二実施形態の態様例2−2について説明する。本態様例は、上記の第二実施形態に対して、トンネル61Bの開口部63Bを塞ぐカバー66B′の形状が異なる。これに伴って、本態様例は第二実施形態に対して、突起部84の位置及び形状と導入管80の出口82の位置とが異なる。なお、これら以外の構造は、上記第二実施形態と同一である。
本態様例に係るバウスラスター8Bは、図7(a)及び(b)に示す態様例1−2に係るバウスラスター6Bに対して、上記第二実施形態で示した導入管80が備えられている。図11(b)に示すように、導入管80は、船体1の内部において前後方向に延設されており、前側の一端(入口)81は船首部1Bの前端部1fに開口し、後側の他端(出口)82は、トンネル61Bの内壁61Bwであって連通部65Bに向かって開口している。
本態様例では、開口部63Bの船尾側を塞ぐ後側カバー66′が設けられているため、開口部63Bの船首側に連通部65Bが形成される。そのため、導入管80の出口82は、トンネル61Bの内壁61Bwのうち前側の面に設けられる。ここでは、出口82が開口部63Bの円周方向に三つ設けられたものを例示する。
さらに、導入管80は、圧力差発生構造として、上記第二実施形態と同様の構造を有する。すなわち、導入管80の入口圧力を高める構造として、導入管80の入口81が前方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積が出口82の総開口面積よりも大きくなるように形成されている。さらに、導入管80の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられ、前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口している。
また、出口圧力を負圧にする構造として、船体1の外板1aには、連通部65Bの前側の縁部(すなわち開口部63の前縁部63Bf)に沿って外方に突設された突起部84が形成される。突起部84は、開口部63Bの前縁部63Bfに沿って湾曲して延設された帯状の板で形成されている。この突起部84により、突起部84の後背部には負圧領域Nが生成される。導入管80の出口82は、何れもこの負圧領域N内に設けられる。これにより、導入管80の出口圧力が負圧にされる。これらの構造により、導入管80は入口81が出口82よりも相対的に高圧になるため、導入管80内を流体が流通し、トンネル61B内に排出された流体が連通部65Bから船外へ排出される。
したがって、本態様例に係る船舶のバウスラスター8Bであっても、上記態様例1−2に記載した効果に加え、上記第二実施形態に記載した効果と同様の効果を得ることができる。なお、ここでは突起部84が開口部63Bの前縁部63Bfに沿う帯状の板で形成されているが、出口82の部分に負圧領域Nを生成できればよいため、突起部84が三分割にされた形状であってもよい。すなわち、三つの出口82の前側に、それぞれ円周方向長さの短い突起部84が突設されていてもよい。
〔3〕態様例2−3
上記した第二実施形態及び態様例2−1,2−2は、何れも導入管80の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられたものを例示しているが、導入管80の入口81は船首部1Bの前端部1fに限られず、少なくとも没水部1Wに設けられていればよい。図12(a)には、船底1bに入口91が設けられた導入管90を備えたバウスラスター8Bを例示する。なお、本態様例は、上記第二実施形態に対して導入管90の構造のみが異なり、その他の構造は第二実施形態と同一である。
図12(a)に示すように、本態様例に係る導入管90は、一端(入口)91が船底1bに開口し、他端(出口)92がトンネル61Bの内壁61Bwであって連通部65Bに向かって開口している。導入管90は、入口91が出口92よりも前方に設けられており、船体1の内部において船底1bに対して斜めに延設されている。また、導入管90は、入口91が下方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口91の開口面積が出口92の開口面積よりも大きくなるように形成されている。なお、本態様例では、出口92は一つの開口部63Bに対して一つだけ設けられている。
導入管90は、圧力差発生構造として、上記第二実施形態と同様、導入管90の出口92が、カバー64Bの表面64Bdに設けられた突起部83により生成される負圧領域N内に設けられる。これにより、導入管90の出口圧力が負圧にされる。これにより、導入管90は入口91が出口92よりも相対的に高圧になるため、導入管90内を流体が流通し、トンネル61B内に排出された流体が連通部65Bから船外へ排出される。
さらに、導入管90の入口91が船底1bに設けられる場合は、導入管90の入口91の船尾側の縁部に、船底1bから下方に向かってやや前側に傾斜した案内板93が設けられる。これにより、船底1bに沿う流体を導入管90内に積極的に導くことができる。つまり、船底1bに入口91が設けられた導入管90の場合は、出口圧力を負圧にして圧力差を発生させる構造に加え、入口91から導入管90内に流体が入りやすいようにするガイドを設けることで、導入管90内に流体を流通させる。
したがって、本態様例に係る船舶のバウスラスター8Bであっても、上記第二実施形態と同様、導入管90を流通した流体をトンネル61B内に排出し、この流体を連通部65Bから船外へ排出することができるため、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。また、トンネル61Bから船底1bまでの距離が、トンネル61Bから船首部1Bの前端部1fまでの距離よりも短い場合は、導入管90の長さを短くすることができる。
なお、導入管90の流通経路の形状や入口91,出口92の個数は特に限定されず、例えば船底1bに対して直交する方向に延設されていてもよいし、L字状やJ字状に延設されていてもよい。また、導入管90の出口92が、上記の態様例2−1,2−2のように連通部65Bの上下に設けられていてもよい。
〔4〕態様例2−4
上記の第二実施形態及び態様例2−1〜2−3は、全てバウスラスター8Bの構成について説明したが、図12(b)に示すように、スターンスラスター8Sが、上記の態様例2−3に説明した導入管90を備えていてもよい。すなわち本態様例では、トンネル61S〔図2(b)参照〕の開口部63Sの船首側を部分的に塞ぐカバー64Sを備えたスターンスラスター8Sが、トンネル61S内に流体を導入するとともに連通部65Sからこの流体を排出する導入管90を備えている。
導入管90は、上記の態様例2−3と同様、入口91が出口92よりも前方に設けられており、船体1の内部において船底1bに対して斜めに延設されている。また、導入管90は、導入管90の入口91が下方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口91の開口面積が出口92の開口面積よりも大きくなるように形成されている。
また、圧力差発生構造として、上記第二実施形態と同様、導入管90の出口92はカバー64Sの表面64Sdに設けられた突起部83により生成される負圧領域N内に設けられる。これにより、導入管90の出口圧力が負圧にされ、導入管90は入口91が出口92よりも相対的に高圧になるため、導入管90内を流体が流通し、トンネル61S内に排出された流体が連通部65Sから船外へ排出される。
さらに、態様例2−3と同様、導入管90の入口91の船尾側の縁部に、船底1bから下方に向かってやや前側に傾斜した案内板93が設けられる。これにより、船底1bに沿う流体を導入管90内に積極的に導くことができる。したがって、本態様例に係る船舶のスターンスラスター8Sであっても、上記の態様例2−3と同様の効果を得ることができる。
〔5〕その他の態様例
導入管80は、圧力差発生構造として、入口圧力を高める構造を二つ有し、出口圧力を負圧にする構造を一つ有するものを例示したが、圧力差発生構造はこれらのうち少なくとも一つ設けられていればよい。また、これらのうち二つを適宜組み合わせて設けてもよい。例えば、導入管80の入口面積と出口面積とを同一とし、導入管80の入口81を船首部1Bの前端部1fに設け、出口82を突起部83で生成される負圧領域N内に設けるような構造であってもよい。あるいは、入口圧力を高める構造を二つ設け、出口圧力を負圧にする構造(すなわち突起部83)を省略してもよい。
また、入口91が船底1bに開口した導入管90は、圧力差発生構造として出口圧力を負圧にする構造を有していればよく、導入管90の形状は上記したものに限られない。例えば、導入管90の入口91が出口92よりも後方に設けられていてもよいし、導入管90の入口91と出口92の面積が同一であってもよい。また、案内板93は、流体を導入管90内に導くことのできる形状であり、入口91の縁部に沿って設けられていることが好ましいが、導入管90の長さや入口と出口の圧力差の大きさから、案内板93を設けなくても導入管90に流体を流通させることができる場合は、案内板93を省略してもよい。
また、バウスラスター8Bにおいて、出口圧力を負圧にする構造を有する場合、図10(a)に示すように、導入管80に流体を導く入口81を船首部1Bの前端部1fに設けるとともに、図10(a)中に二点鎖線で示すように船底1bにも開口した入口81′を設けてもよい。すなわち、二股に分かれた入口81,81′からそれぞれ外部の流体を導入し、トンネル61B内に排出するように構成してもよい。このように構成された導入管80によっても、第二実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。なお、船底1bの入口81′に、図12(a),(b)に示す案内板93を設け、入口81′へ積極的に流体を導いてもよい。
[3.その他]
以上、本発明の実施形態について様々な例を挙げて説明したが、本発明は上記した実施形態や態様例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、カバー64等を開閉させるリンク機構70,70′,70″は、平行リンク機構でなくてもよい。カバー64等は、船体1の外板1aと連続する曲面を形成して設けられるため、三次元の曲面で形成される。そのため、Jアーム71の直線L又は二分割アーム77の直線Hとロッド72とが厳密に平行かつ同一長さでない方が、カバー64等が外板1aに沿って開閉されることが考えられる。したがって、Jアーム71の直線L,二分割アーム77の直線H及びロッド72の長さや設置角度等は、カバー64等がスムーズに開閉動作できるように適宜設定することが好ましい。
また、Jアーム71の基端部71a,先端部71bの枢着点、二分割アーム77の基端部77a,先端部77bの枢着点、及び、ロッド72の基端部72a,先端部72bの枢着点は、上記したものに限られない。例えば、Jアーム71の先端部71bがロッド72の基端部72aよりもトンネル61の中心側に配置されてもよいし、Jアーム71の基端部71aが、トンネル61の内壁61wから離隔した位置で駆動軸73に結合されていてもよい。各端部の具体的な位置は、カバー64等の開閉動作が最もスムーズに行うことができる位置に適宜設定することが好ましい。
また、カバー64等の開放方向側に配置される一方のリンクアームは、上記したJアーム71や二分割アーム77に限られず、例えば、開閉時に開口部63の縁部との接触を回避する角部を有する折れ曲がり形状であってもよい。このリンクアームは、Jアーム71のように一体ものであってもよいし、二分割アーム77のように別部材を組み合わせたものであってもよい。
また、カバー64等を外板1aに沿ってスライド開閉させる機構はリンク機構70等に限られない。例えば、カバー64等をトンネル61の開口部63から外方へ僅かに押し出し、カバー64等を開閉駆動するアクチュエータ(駆動手段)が設けられ、押し出されたカバー64等が外板1aに沿ってスライド移動するガイド機構としてのレールが外板1aに設けられていてもよい。このようなガイド機構及び駆動手段によっても、カバー64等を外板1aに沿ってスライド開閉させることができるため、カバー64等の開放時の外板1aから外方への突出量を小さくすることができる。
なお、駆動手段は油圧シリンダ75に限られず、リンク機構の基端部側の枢着軸を回転駆動軸として構成してもよい。また、駆動手段は、ガイド機構を駆動してカバー64等を開閉させるものでなくてもよい。すなわち、ガイド機構はカバー64等をスライド開閉するように案内するものであり、駆動手段はカバー64等を開閉駆動するものとして、ガイド機構を介さずに直接カバー64等を駆動するものであってもよい。
また、カバー64等は、繊維強化プラスチック製でなくてもよく、船体1の外板1aと同様に鋼板で成形されていてもよい。カバー64等が同じ大きさの場合、鋼板で成形した方が繊維強化プラスチック製よりも重量が大きくなるが、鋼板の方が安価であるためカバー64等の製品コストを低減することができる。また、トンネル61の開口部63を全て閉鎖しなくても、一部にカバー64等を設けるだけで抵抗を抑制することができるため、鋼板製であってもカバー64等の大きさを小さくすることで重量増を抑制することができる。
また、上記の第二実施形態では、トンネル61の内部に流体を導入するために、圧力差発生構造を有する導入管80,90を用いたものを例示したが、流体をトンネル61内に供給する手段は上記した構造に限られない。例えば、電動ポンプを設けてトンネル61内に流体を供給するような構成にしてもよい。
また、スラスター6の構造は上記したものに限られず、例えばプロペラ62が可変ピッチ式でなくてもよい。
なお、上述の船舶は、バウスラスター6B,8Bとスターンスラスター6S,8Sとを備えたものを例示しているが、何れか一方のスラスター6,8を備えているものであればよい。
1 船体
1B 船首部
1S 船尾部
1W 没水部
1a 外板
1f 前端部
2 バルバスバウ
6,8 スラスター
6B,8B バウスラスター(スラスター)
6S,8S スターンスラスター(スラスター)
61,61B,61S トンネル(スラスタートンネル)
61w,61Bw,61Sw 内壁
62,62B,62S プロペラ
63,63B,63S 開口部
64,64B,64S カバー
64′ 前側カバー(カバー)
64r,64r′ 後縁部(縁部)
65,65B,65S 連通部
66,66′ 後側カバー(カバー)
66f,66f′ 前縁部(縁部)
67 全閉カバー(カバー)
70,70′ リンク機構(ガイド機構)
71 Jアーム(一方のリンクアーム)
71a 基端部(一方のリンクアームの一端)
71b 先端部(一方のリンクアームの他端)
72 ロッド(他方のリンクアーム)
72a 基端部(他方のリンクアームの一端)
72b 先端部(他方のリンクアームの他端)
73 駆動軸
75 油圧シリンダ(駆動手段)
80,90 導入管(流体供給手段)
81,91 入口(導入管の一端)
82,92 出口(導入管の他端)
83,84 突起部
N 負圧領域

Claims (15)

  1. 船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが設置されたスラスタートンネルと、
    前記スラスタートンネルの開口部を塞ぐカバーと、
    前記カバーを前記船体の外板に沿ってスライド開閉するように案内するガイド機構と、
    前記カバーを開閉駆動する駆動手段と、を備える
    ことを特徴とする、船舶のスラスター。
  2. 前記ガイド機構は、一端が前記船体側に枢着され他端が前記カバーに枢着された二本のリンクアームを有するリンク機構である
    ことを特徴とする、請求項1記載の船舶のスラスター。
  3. 前記カバーの開放方向側に位置する一方の前記リンクアームは、前記カバーの開放時に前記スラスタートンネル周辺の前記外板と干渉しないように屈曲形成されている
    ことを特徴とする、請求項2記載の船舶のスラスター。
  4. 前記一方のリンクアームは、前記他端側に設けられ前記カバーの全開時に前記外板に沿う直線部と、前記一端側に設けられ前記カバーの全開時に前記開口部の縁部との接触を回避する湾曲部とを有するJ字状である
    ことを特徴とする、請求項3記載の船舶のスラスター。
  5. 前記カバーの開放方向の逆側に位置する他方の前記リンクアームは、前記他端が前記カバーの開放方向と逆側の前記カバーの端部に接続される
    ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  6. 前記カバーの開放方向側に位置する一方の前記リンクアームは、前記他端が前記カバーの開閉方向の略中央に接続される
    ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  7. 前記スラスタートンネルの内壁を貫通して延設され、前記駆動手段により回動される駆動軸を備え、
    前記カバーの開放方向側に位置する一方の前記リンクアームは、前記一端が前記スラスタートンネルの内壁近傍で前記駆動軸に結合される
    ことを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  8. 前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられ、
    前記カバーの開放方向は、前記船体の下方向である
    ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  9. 前記カバーは、前記開口部の一部を塞ぐ
    ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  10. 前記カバーは、前記開口部のうち少なくとも船首側を塞ぐ
    ことを特徴とする、請求項9記載の船舶のスラスター。
  11. 前記スラスタートンネル内に流体を導入するとともに、前記スラスタートンネルの内外を連通する連通部から船外へ前記流体を排出する流体供給手段を備える
    ことを特徴とする、請求項9又は10記載の船舶のスラスター。
  12. 前記流体供給手段は、一端が前記船体の没水部に開口し、他端が前記スラスタートンネルの内壁であって前記連通部に向かって開口した導入管であり、
    前記導入管は、航行中に前記一端の方が前記他端よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造を有する
    ことを特徴とする、請求項9記載の船舶のスラスター。
  13. 前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられ、
    前記カバーは、前記スラスタートンネルの内外を連通する連通部との境界をなす縁部が、前記開口部の近傍における水流の流れ方向に対して略直交する傾きになるように設けられる
    ことを特徴とする、請求項9〜12の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  14. 前記カバーは、繊維強化プラスチック製である
    ことを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  15. 船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが設置されたスラスタートンネルの開口部を塞ぐカバーと、
    前記カバーを前記船体の外板に沿ってスライド開閉するように案内するガイド機構と、
    前記カバーを開閉駆動する駆動手段と、を備える
    ことを特徴とする、スラスタートンネルのカバー装置。
JP2014022274A 2014-02-07 2014-02-07 船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置 Active JP6234834B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014022274A JP6234834B2 (ja) 2014-02-07 2014-02-07 船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014022274A JP6234834B2 (ja) 2014-02-07 2014-02-07 船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015147532A true JP2015147532A (ja) 2015-08-20
JP6234834B2 JP6234834B2 (ja) 2017-11-22

Family

ID=53891289

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014022274A Active JP6234834B2 (ja) 2014-02-07 2014-02-07 船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6234834B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109094715A (zh) * 2018-08-02 2018-12-28 中国船舶工业集团公司第七0八研究所 一种与船体曲面线型完全一致的防气泡槽道式侧推封盖
CN109292036A (zh) * 2018-11-05 2019-02-01 南京恒兴达机电设备制造有限公司 一种外摆式船舶侧推器封盖总成
CN109305292A (zh) * 2018-11-26 2019-02-05 无锡市东舟船舶设备股份有限公司 船舶侧推盖机构
CN113609578A (zh) * 2021-07-21 2021-11-05 上海外高桥造船有限公司 一种转首角速度预估方法、能效检测方法和系统
CN113859474A (zh) * 2021-10-29 2021-12-31 中船黄埔文冲船舶有限公司 一种船舶侧推封盖的安装方法
KR102351082B1 (ko) * 2021-06-29 2022-01-14 강종용 선박의 조향을 위한 구조 및 방법

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS50112997A (ja) * 1973-12-05 1975-09-04
US4008676A (en) * 1973-12-05 1977-02-22 O & K Orenstein & Koppel Aktiengesellschaft Water craft having sea opening with connecting conduit
JPS5244591U (ja) * 1975-09-25 1977-03-29
JPS54156396U (ja) * 1978-04-22 1979-10-31
JPS58104799U (ja) * 1982-01-11 1983-07-16 川崎重工業株式会社 舶用サイドスラスタ開口部開閉装置
JPS6038282A (ja) * 1983-08-11 1985-02-27 Mac Gregor Far East Ltd 開口の扉
JPS6042188A (ja) * 1983-08-17 1985-03-06 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 船舶のスク−プ装置
JPS6256398U (ja) * 1985-09-30 1987-04-08
JPH0239998U (ja) * 1988-09-09 1990-03-19
JPH1047316A (ja) * 1996-08-05 1998-02-17 Masahisa Shimizu 流体抵抗吸収ダクト
WO2012139172A1 (en) * 2011-04-15 2012-10-18 Austal Ships Pty Ltd Marine growth inhibiting system

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS50112997A (ja) * 1973-12-05 1975-09-04
US4008676A (en) * 1973-12-05 1977-02-22 O & K Orenstein & Koppel Aktiengesellschaft Water craft having sea opening with connecting conduit
JPS5244591U (ja) * 1975-09-25 1977-03-29
JPS54156396U (ja) * 1978-04-22 1979-10-31
JPS58104799U (ja) * 1982-01-11 1983-07-16 川崎重工業株式会社 舶用サイドスラスタ開口部開閉装置
JPS6038282A (ja) * 1983-08-11 1985-02-27 Mac Gregor Far East Ltd 開口の扉
JPS6042188A (ja) * 1983-08-17 1985-03-06 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 船舶のスク−プ装置
JPS6256398U (ja) * 1985-09-30 1987-04-08
JPH0239998U (ja) * 1988-09-09 1990-03-19
JPH1047316A (ja) * 1996-08-05 1998-02-17 Masahisa Shimizu 流体抵抗吸収ダクト
WO2012139172A1 (en) * 2011-04-15 2012-10-18 Austal Ships Pty Ltd Marine growth inhibiting system

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109094715A (zh) * 2018-08-02 2018-12-28 中国船舶工业集团公司第七0八研究所 一种与船体曲面线型完全一致的防气泡槽道式侧推封盖
CN109292036A (zh) * 2018-11-05 2019-02-01 南京恒兴达机电设备制造有限公司 一种外摆式船舶侧推器封盖总成
CN109305292A (zh) * 2018-11-26 2019-02-05 无锡市东舟船舶设备股份有限公司 船舶侧推盖机构
KR102351082B1 (ko) * 2021-06-29 2022-01-14 강종용 선박의 조향을 위한 구조 및 방법
CN113609578A (zh) * 2021-07-21 2021-11-05 上海外高桥造船有限公司 一种转首角速度预估方法、能效检测方法和系统
CN113609578B (zh) * 2021-07-21 2023-12-08 上海外高桥造船有限公司 一种转首角速度预估方法、能效检测方法和系统
CN113859474A (zh) * 2021-10-29 2021-12-31 中船黄埔文冲船舶有限公司 一种船舶侧推封盖的安装方法
CN113859474B (zh) * 2021-10-29 2023-08-29 中船黄埔文冲船舶有限公司 一种船舶侧推封盖的安装方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6234834B2 (ja) 2017-11-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6234834B2 (ja) 船舶のスラスター及びスラスタートンネルのカバー装置
JP2015515413A (ja) 船体の推進及び方向転換装置
CN106379507B (zh) 气动推进的环保节能船
WO2010140357A1 (ja) 二軸船尾双胴型船舶
JP6234835B2 (ja) 船舶のスラスター
JP2011218959A (ja) バウスラスターを備えた船舶、及びこの船舶の航行方法と改修方法
JP6253021B2 (ja) ウォータージェット推進アシスト型プロペラ推進船
KR20120098941A (ko) 덕트 부착 스러스터 및 이를 구비한 선박
KR101225175B1 (ko) 추진장치 및 이를 포함하는 선박
KR101225169B1 (ko) 추진장치 및 이를 구비한 선박
JP2014028551A (ja) 肥大船
JP2011240806A (ja) 省エネルギ船
KR101291178B1 (ko) 회전식 덕트를 구비하는 선박
JP2010120396A (ja) スラスタトンネル開閉装置
JP4246082B2 (ja) 船舶の補助推進力を発生させるドジャー支持体構造
JP5982458B2 (ja) 船舶構造
JP2013252774A (ja) 船舶
JP6748502B2 (ja) 船舶
CN109204759A (zh) 一种船舶及潜艇推进系统
JP2024005893A (ja) 船舶推進装置、及び船舶
KR102573657B1 (ko) 터널 스러스터 구조체 및 이를 포함하는 선박
KR20170108381A (ko) 선박구조
JP6664907B2 (ja) 空気発生装置
JP2023067298A (ja) 船舶の造波抵抗低減システム、船舶及び船舶の造波抵抗低減方法
KR102201248B1 (ko) 아지무스 스러스터의 덕트 구조

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160519

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170314

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170316

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170515

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171010

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171025

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6234834

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350