JP6748502B2 - 船舶 - Google Patents
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Description
ダクト装置は、プロペラの吸い込みの影響と船尾部外側を流れる水の流れにより、ダクト装置の半径方向内側向きに発生するエネルギーを効率良く回収して推進性能を向上させる。
ダクト装置の効果を最大限に発揮させるためには、船体の生成するダクト配置位置の水の流速分布だけでなく、プロペラの作動によって変化する流速や圧力場の変化を加味し、プロペラとダクト装置との間の距離と、を十分に考慮することが重要となる。
特許文献1には、プロペラの直径をDとした場合、プロペラの前縁からダクト装置の後縁までの距離を、直径Dの15%以下、好ましくは直径Dの10%以下となるように、プロペラとダクト装置とを近接配置させることが好ましいことが開示されている。
これにより、プロペラ翼の前縁の前方に形成される負圧領域とダクト装置の後縁との干渉が抑制され、ダクト装置自体が抵抗になることがなくなるため、ダクト装置により推進性能の低下を抑制することができる。
また、ダクト装置の前縁をプロペラ翼の前縁からプロペラの軸線方向に0.5D以内の距離で配置させることにより、ダクト装置によりプロペラの吸い込みの影響を取り込むことが可能となるので、ダクト装置の発生する推力が増加し、推進性能の向上が期待できる。
Ct=T/(rho・Ap・V2)・・・(1)
但し、Tは前記プロペラの推力(N)、rhoは前記液体の密度(kg/m3)、Apは前記プロペラの半径をrとしたときに2πr2で得られるプロペラ面積(m2)、Vは前記船体の移動速度(m/s)である。
これにより、プロペラ翼の前縁の前方に形成される負圧領域とダクト装置の後縁との干渉が抑制されて、ダクト装置自体が抵抗になることがなくなるため、推進性能の低下を抑制できる。
また、プロペラの半径をRとしたとき、プロペラの0.7Rの位置におけるダクト装置の前縁をプロペラ翼の前縁から軸線方向の船首側にD・(0.675・Ct+0.27)未満の位置に配置することで、プロペラの荷重度の無次元値Ctを考慮した上で、ダクト装置の推力発生効果にプロペラの吸い込みの影響を取り込むことが可能となるため、推進性能を向上させることができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る船舶の船尾部を拡大した側面図である。図1において、Cはプロペラ13の軸線(以下、「軸線C」という)、Xは軸線Cが延在する所定方向(以下、「軸線方向X」)、Dはプロペラ13の直径(以下、「直径D」という)、rはプロペラ13の半径(以下、「半径r」という)、L1はプロペラ翼22の前縁13Aからダクト装置15の後縁15Bまでの距離(以下、「距離L1」という)、L2はプロペラ翼22の前縁13Aからダクト装置15の前縁15Aまでの距離(以下、「距離L2」という)をそれぞれ示している。
船体11は、船体11の船首を構成する船首部(図示せず)と、船舶11の船尾を構成する船尾部17と、を含む。船尾部17は、後端に配置された支持部挿入部18を有する。
プロペラ翼22は、回転支持部21の外側に配置されている。プロペラ13の半径r、及び直径Dは、適宜設定することが可能である。
上記構成とされたプロペラ13は、軸線C回りに回転する。
図3は、図2に示すダクトのF1−F2線方向の断面図である。図3は、ダクト24の後縁24Bから前縁24Aに延在する平面(仮想平面)で切断されたダクト24の上部の断面図である。図3において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
ダクト24は、船尾部17のうち、プロペラの13よりも船体11の船首部側に位置する部分に設けられている。ダクト24は、プロペラ13の軸線方向Xに延在している。
ダクト24は、筒状の部材を半割した湾曲形状とされている。ダクト24の内面は、船尾部17の外面17aと対向している。
ダクト装置15の後縁15Bは、軸線方向Xにおける距離L1が0.2D(=0.2×直径D)以上となる位置に配置されている。
なお、軸線方向Xにおける距離L1において、プロペラ翼22の前縁13Aの基準位置は、プロペラ13の半径をRとしたとき、プロペラ13の0.7Rの位置である。
これにより、ダクト装置15を十分に機能させることが可能となるので、プロペラ効率を向上できる。
言い換えれば、軸線方向Xにおける距離L2において、プロペラ翼22の前縁13Aの基準位置は、プロペラ13の半径をRとしたとき、プロペラ13の0.7Rの位置である。
このように、ダクト装置15の前縁15Aをプロペラ13の負圧面からプロペラ13の軸線方向Xに0.5D以内の距離に配置させることで、ダクト装置15がプロペラ13の吸い込みの影響を取り込むことの可能な位置にダクト装置15の前縁15Aを配置させることが可能となるため、ダクト装置15に発生する推力が増加して、推進性能の向上が期待できる。
図4を参照するに、ダクト24は、基準線Eからダクト24の前縁24A及び後縁24Bまでの距離がr未満とされており、かつダクト24の前縁24Aの外形の方が後縁24Bの形状よりも大きくなるように構成されている。
基準線Eからダクト24の0度に位置する前縁24Aまでの距離は、基準線Eからダクト24の90度に位置する前縁24Aまでの距離よりも小さい。
また、基準線Eからダクト24の0度に位置する後縁24Bまでの距離は、基準線Eからダクト24の90度に位置する後縁24Bまでの距離よりも小さい。
これにより、0度の位置において、前縁24A及び後縁24Bの半径方向の差が最大となり、90度の位置において、前縁24A及び後縁24Bの半径方向の差が最小となる。
このように、ダクト24の断面形状を内側面が凸となる翼形状とすることにより、液体と相互作用によって効率良く揚力を得ることができる。
ダクト24の後縁24Bから前縁24Aに向かう仮想平面で切断されたステー26の断面形状は、例えば、翼形状であってもよい。
なお、第1の実施形態では、一例として、ダクト24の内側において、水平方向に一対のステー26を配置させた場合を例に挙げて説明したが、ステー26の配設位置は、これに限定されない。
これにより、プロペラ13の負圧面の前方に形成される負圧領域とダクト装置15の後縁15Bとの干渉が抑制されるため、プロペラ効率を向上させることができる。
図5は、第2の実施形態に係る船舶を構成するL1/D(=距離L1/プロペラの直径D)とプロペラの荷重度の無次元値Ctとの関係を示すグラフである。なお、図5では、プロペラの荷重度の無次元値Ctを、単に「荷重度Ct」として記載する。
また、図5の横軸は、シミュレーションに適用した3つの船とプロペラの組み合わせ、即ちシミュレーションのインプットである。また、図5の縦軸は、このシミュレーションで計算された圧力場からよみとって得られた負圧領域の境目、即ちシミュレーションのアウトプットを示している。
図5では、3つのシミュレーション結果から、荷重度Ctと最小L1/Dとの関係を示している。
また、図6の横軸は、シミュレーションに適用した2つの船とプロペラの組み合わせ、即ちシミュレーションのインプットである。図6の横軸は、流速のプロペラ有無間の差が小さくなる位置をシミュレーションから読み取り、算出した値である。図6では、2つのシミュレーション結果から荷重度Ctと最大L2/Dとの関係を示している。
そこで、図1、図5、及び図6を参照して、第2の実施形態の船舶の距離L1,L2の算出方法について説明する。
Q1=0.15・Ct+0.06 ・・・(2)
この近似曲線Q1は、プロペラ13の荷重度Ctが考慮された係数となる。
また、プロペラ13の荷重度Ctは、下記(3)式により算出することが可能である。
Ct=T/(rho・Ap・V2)・・・(3)
但し、Tはプロペラ13の推力(N)、rhoは液体(水や海水等)の密度(kg/m3)、Apはプロペラ13の半径をrとしたときに2πr2で得られるプロペラ面積(m2)、Vは船体11の移動速度(m/s)である。
つまり、距離L1>D・Q1となるように、ダクト装置15の後縁15Bを配置させるとよい。
Q2=0.675・Ct+0.27 ・・・(4)
この近似曲線Q2は、プロペラ13の荷重度Ctが考慮された係数となる。
つまり、距離L2<D・Q2となるように、ダクト装置15の前縁15Aを配置させるとよい。
実施例では、図1に示す船舶10において、距離L1を0.2Dとし、距離L2を0.5Dとした場合において、プロペラ翼22の前縁13Aに形成される負圧領域の位置、及びダクト24の上部における圧力分布線の変化について、シミュレーションした。この結果を図9に模式的に図示する。
図7において、図1に示す船舶10と同一構成部分には、同一符号を付す。図7では、説明の便宜上、ステー26の図示を省略するとともに、ダクト24を断面で図示する。
図7において、A1,A2は負圧領域(以下、「負圧領域A1,A2」という)、B1〜B3は、圧力分布線(以下、「圧力分布線B1〜B3」という)をそれぞれ示している。
このことから、プロペラ翼22の前縁13Aから軸線方向Xに0.2D離間した位置にダクト装置15の後縁15Bを配置することで、負圧領域A1,A2とダクト24との干渉を抑制可能なことが確認できた。
実験例では、図1に示す船舶10のプロペラ13が有る場合と無い場合において、プロペラ13からの距離Xが0(m)、0.2D(m)、0.5D(m)のときに、水の流速の変化をシミュレーションした。
このシミュレーションは、プロペラ13の作動による水の流速の変化を確認するためのものであり、ダクト24を取り付けていない状態で実施した。このシミュレーションでは、プロペラ13の位置からの距離Xが大きいほど、すなわちプロペラ13から離れるほどプロペラ13の影響が小さくなり、プロペラ13の有無での差異が小さくなる。
なお、距離X=0がプロペラ13の位置となり、距離Xの値が正の場合には、プロペラ13から船首方向の位置であることを意味している。
このとき、シミュレーションソフト及びシミュレーション条件は、上述した実施例と同じソフト及び同じ条件を用いた。
上記シミュレーションの結果を図8〜図10に示す。
図9は、プロペラが有る場合と無い場合において、プロペラからの距離X=0.2Dの場合における水の流速の変化をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図10は、プロペラが有る場合と無い場合において、プロペラからの距離X=0.5Dにおける水の流速の変化をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図8〜図10において、横軸は、プロペラ位置からの前方方向の距離を示しており、縦軸は、水の流速を示している。また、横軸に記載した角度は、図2に示す角度に対応している。
この結果から、距離L1が0〜0.2Dの範囲内では、プロペラ13の吸い込みの影響が大きいことが分かった。
一方、図10を参照するに、距離L1が0.5Dのときには、角度が15度以下の範囲内においては、プロペラ13の有無による水の流速の差がほとんどないことが分かった。
また、上記結果から、ダクト24の後縁24B(ダクト装置15の後縁15B)は、距離L1が0.2D以上となる位置に配置することが好ましいことが確認できた。
Claims (3)
- 船体と、
前記船体の船尾部に設けられており、所定方向に延在する軸線回りに回転するプロペラと、
前記船尾部のうち、前記プロペラよりも前記船体の船首部側に位置する部分に設けられ、前記プロペラの軸線方向に延在して配置されるダクト装置と、
を備え、
前記プロペラは、前記船体の船尾部に設けられ、回転可能な構成とされた回転支持部と、前記回転支持部の外側に配置され、前記回転支持部に支持されたプロペラ翼と、を有し、
前記プロペラの直径をDとしたときに、前記ダクト装置の後縁は、前記プロペラ翼の前縁から前記軸線方向に0.2D以上離間して配置させ、前記ダクト装置の前縁は、前記プロペラ翼の前縁から前記軸線方向に0.5D以内の距離に配置させることを特徴とする船舶。 - 外側下部が水を含む液体と接触する船体と、
前記船体の船尾部に設けられており、所定方向に延在する軸線回りに回転するプロペラと、
前記船尾部のうち、前記プロペラの配設位置よりも前記船体の船首側に位置する部分に設けられ、前記プロペラの軸線方向に延在しており、前縁から流入する前記液体を後縁から前記プロペラに排出するダクト装置と、
を備え、
前記プロペラは、前記船尾部に設けられ、回転可能な構成とされた回転支持部と、前記回転支持部の外側に配置され、前記回転支持部に支持されたプロペラ翼と、を有し、
前記プロペラの直径をD(m)、下記(1)式で示される前記プロペラの荷重度の無次元値をCtとしたときに、前記ダクト装置の後縁は、前記プロペラ翼の前縁から前記軸線方向にD・(0.15・Ct+0.06)以上離間させて配置し、
前記プロペラの半径をRとしたとき、前記プロペラの0.7Rの位置における前記プロペラ翼の前縁から前記軸線方向の船首側にD・(0.675・Ct+0.27)未満の位置に、該ダクト装置の前縁を配置することを特徴とする船舶。
Ct=T/(rho・Ap・V2)・・・(1)
但し、Tは前記プロペラの推力(N)、rhoは前記液体の密度(kg/m3)、Apは前記プロペラの半径をrとしたときに2πr2で得られるプロペラ面積(m2)、Vは前記船体の移動速度(m/s)である。 - 前記ダクト装置は、前記船尾部のうち、前記プロペラの配設位置よりも前記船体の船首側に位置する部分に設けられたダクトと、前記ダクトと前記船尾部とを連結する一対のステーと、を有し、
前記ダクトの後縁から前記ダクトの前縁に延在する平面で切断された前記ダクトの断面形状は、翼形状であることを特徴とする請求項1または2に項記載の船舶。
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