JP2011025734A - 舶用複合型省エネ推進装置及び一軸二舵船舶 - Google Patents

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Abstract

【課題】一軸二舵船型において、複数種類の省エネデバイスを組み合わせることにより、各デバイスが有する効果の和以上に大きな省エネ効果をあげること。
【解決手段】プロペラ2前方の船尾部に配置され、翼型断面を有する筒状の船尾ダクト20と、プロペラ2後方に配置される一対の舵3の内側側面にそれぞれ横向きに突出させて設けられたフィンを有するフィン付き舵30とを備える舶用複合型省エネ推進装置10を一軸二舵船舶100に装備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、一軸二舵船型における複合型省エネ推進装置及びこの複合型省エネ推進装置を備える一軸二舵船舶に関する。なお、一軸二舵船舶とは、単一のプロペラの後方に一対の舵を装備した船舶をいう。
船舶における推進効率の向上を図り省エネルギーの効果(馬力低減効果)が得られるデバイス(以下、省エネデバイスという)のひとつとして、プロペラ前方の船尾に筒状のダクトを取り付けたもの(以下、ダクト型省エネデバイスという)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
省エネデバイスのもう一つは、一軸二舵船舶における一対の舵の内側の左右側面にそれぞれフィン(小翼)を取り付けたもの(以下、フィン付き舵という)が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
上記のダクト型省エネデバイスは、船尾部に沿って流れる船尾流れをダクト内を通過させることによって整流化するとともに、ダクトに揚力を発生させて揚力の水平方向成分である推力を生じさせようとする構成となっている。このため、ダクトの断面形状は一般的にキャンバーを有する翼形状となっている。
また、ダクト内部に複数のステーを設けたものも提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
次に、上記のフィン付き舵は、プロペラ後流の旋回流成分を回収して水平方向の力成分(推力)に変換することを目的としたものである。このようなフィン付き舵は二舵に限らず一舵にも用いられている(たとえば、特許文献4参照)。
特開2007−331549号公報 特開2008−189133号公報 特開2008−143488号公報 特開2004−299420号公報
上述した省エネデバイスとしてダクトおよびフィン付き舵は、それぞれ単独で用いることで省エネルギーの効果(以下、省エネ効果と略称する)をあげている。しかし、一軸二舵船型において、複数種類の省エネデバイスを組み合わせたものは開示されていない。
本発明は、一軸二舵船型において、複数種類の省エネデバイスを組み合わせることにより、各デバイスが有する効果の和以上に大きな省エネ効果をあげることを目的としたものである。
本発明に係る舶用複合型省エネ推進装置は、プロペラ前方の船尾部に配置され、翼型断面を有する筒状の船尾ダクトと、プロペラ後方に配置される一対の舵の内側側面にそれぞれ横向きに突出させて設けられたフィンを有するフィン付き舵と、
を備えることを特徴とする。
このように、一軸二舵船型において、船尾ダクトとフィン付き舵とを併用することにより、各省エネデバイスが有する効果の和以上に大きな省エネ効果が得られる。
また、本発明の舶用複合型省エネ推進装置において、前記内部小翼付きダクトのプロペラ軸方向の取付位置は、前記ダクト本体の後端位置がプロペラ位置からプロペラ直径の100%以内となるように配置する。
また、本発明の舶用複合型省エネ推進装置において、前記船尾ダクトの上下方向の取付位置は、ダクト中心の高さがプロペラ軸心の高さよりプロペラ直径の±50%以内となるようにプロペラ軸と同軸または平行に配置する。
また、本発明の舶用複合型省エネ推進装置において、前記フィンは、前記舵の内側側面に横向きに突出させて設けられており、且つ、一対のフィンが段違いに配設され、翼型の多角形または半円形に形成されているものである。
また、本発明の舶用複合型省エネ推進装置において、前記一対のフィンは、非対称または対称の翼型であり、右回りプロペラの場合、左舷側フィンは船首側が下がる方向に傾斜し、右舷側フィンは船首側が上がる方向に傾斜しており、両フィンとも迎角が15゜以下の範囲である。左回りプロペラの場合はこの逆となる。すなわち、左舷側フィンは船首側が上がる方向に傾斜し、右舷側フィンは船首側が下がる方向に傾斜しており、両フィンとも迎角が15゜以下の範囲である。
また、本発明に係る一軸二舵船舶は、上記のいずれかの舶用複合型省エネ推進装置を装備したことを特徴とするものである。
以上のように、本発明に係る舶用複合型省エネ推進装置を一軸二舵船舶に装備することにより、より大きな省エネ効果を上げることができる。
本発明の実施の形態1に係る舶用複合型省エネ推進装置を装備した船舶の船尾部分を示す概略側面図である。 (a)は船尾ダクトを船尾方向から見た正面図、(b)は船尾ダクトの右舷側断面側面図である。 船尾ダクトの作用説明図である。 フィン付き舵の部分を模式的に示す図で、(a)はプロペラとフィン付き舵の上面図、(b)はフィン付き舵を後方から見たときの正面図である。 フィン付き舵を内側から見たときの側面図で、(a)は内側から見たときの図、(b)は外側から投影して見たときの図である。 フィン付き舵の作用説明図で、(a)は左舷側フィン付き舵での推力発生説明図、(b)は右舷側フィン付き舵での推力発生説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る舶用複合型省エネ推進装置10を装備した船舶(一軸二舵船舶)100の船尾部分を示す概略側面図である。
この実施の形態1に係る船舶100は、船体1と、単一のプロペラ2と、一対の舵3とを備える一軸二舵船舶であり、さらに複数種類の省エネデバイスとして、船尾ダクト20と一対のフィン付き舵30とを備える、本発明に係る舶用複合型省エネ推進装置10を装備したものである。
図2は船尾ダクト20を示す図で、(a)は船尾ダクト20を船尾方向から見た正面図、(b)は船尾ダクト20を右舷側から見た断面側面図である。
船尾ダクト20は、ダクト型省エネデバイスと呼ばれているものであり、翼型のキャンバーを持つ断面を有する筒状の形状を有するものとし、船尾方向の端縁であるダクト後端20bの径Ddが船首方向の径より小さい円錐形状の一部をなしている。ダクト20の側面形状は矩形状もしくは台形状となっている。なお、ダクト20の外形及び断面形状は特に限定されない。
船尾ダクト20の各部の寸法関係について、適切な値及び範囲の一例を示すと、次のようになっている。ここで、プロペラ2の直径をDp、ダクト20のダクト後端20bの直径をDd、ダクト20の上部長さをL1、ダクト20の下部長さをL2、ダクト翼型の迎角をαとすると、
Dd=60%Dp
L1=55.7%Dp
L2=7.2%Dp
α=0〜20゜
である。
上記のように構成された船尾ダクト20は、プロペラ2の前方の船体1の船尾部に取り付けられる。この船尾ダクト20のプロペラ軸方向の取付位置は、ダクト後端20bの位置がプロペラ位置からプロペラ2の直径Dpの100%以内となるように配置する。その理由は、この値以下であれば、ダクト20がプロペラ2から離れすぎないので、ダクト20内で整流化された流れを乱されることなくスムーズにプロペラ2に導くことができるからである。なお、本実施形態ではダクト後端20bの位置をプロペラ位置から20%Dpとしている。
また、船尾ダクト20の上下方向の取付位置は、ダクト中心(ダクト後端20bの断面中心)20aの高さがプロペラ軸心2aの高さよりプロペラ2の直径Dpの±50%以内となるようにプロペラ軸と同軸または平行に配置する。本実施形態ではダクト中心20aの高さをプロペラ軸心2aに一致させている。つまり、ダクト20をプロペラ2と同軸に設置している。
上記のように構成された船尾ダクト20を一軸二舵船舶100の船尾に取り付けると、この船尾ダクト20に対して船尾流れが図3に示すように作用する。なお、図3は右舷側を示すが、左舷側も同様である。
ダクト20は、筒状の円錐形状の一部として形成されており、断面がキャンバーを持つ翼形状に形成されているので、船尾流れの流入方向に対して垂直方向に揚力51が発生し、その揚力51の水平方向成分である推力53が発生する。
したがって、右舷側では上記推力53が発生し、左舷側でも同様に推力53(不図示)が右舷側と同じ方向に発生するので、船尾ダクト20を取り付けていない船舶に比べて、より大きな省エネ効果(馬力低減効果)が得られることになる。
なお、図示は省略するが、船尾ダクト20の変形例として、ダクト後端20b側にリング状の突出部を設ける場合もある。リング状の突出部によって、船尾ダクト20内を通過する流れをより整流化することができる。
次に、本発明に係る舶用複合型省エネ推進装置10のもう一つの省エネデバイスを構成する一対のフィン付き舵30について、図4から図6を参照して説明する。
図4はフィン付き舵30の部分を模式的に示す図で、(a)はプロペラ2とフィン付き舵30の上面図、(b)はフィン付き舵30を後方から見たときの正面図である。図5はフィン付き舵を右舷側から見たときの側面図で、(a)は内側から見たときの図、(b)は外側から投影して見たときの図である。また、図6はフィン付き舵の作用説明図で、(a)は左舷側フィン付き舵での推力発生説明図、(b)は右舷側フィン付き舵での推力発生説明図である。
一対のフィン付き舵30の舵3は、プロペラ2の後方において、船体中心(プロペラ軸心2a)に対し左右対称の鉛直面内に配置される。この一対の左舷側舵3pと右舷側舵3sとの内側の側面にそれぞれ翼型のフィン31p、31sを突出させて設けることで、一対のフィン付き舵30を構成する。
フィン31p、31sは、左舷側を上キャンバー、右舷側を下キャンバーを持つ非対称翼、もしくは両者とも対称翼のいずれでもよい。本実施形態では、翼前縁からコード長の40%の位置で最大翼厚を持つ非対称翼としている。
フィン31p、31sの迎角βは、船型により最適な角度を選ぶこととし、15゜以下の範囲で決定する。本実施形態では、右回りプロペラであるため、フィン31p、31sの迎角βは4゜としている。また、右回りプロペラであるため、左舷側フィン31pは船首側(前縁)が下がる方向(下向き)に傾斜し、右舷側フィン31sは船首側(前縁)が上がる方向(上向き)に傾斜している。
また、フィン31p、31sの上下方向の取付位置は、プロペラ軸心2aの高さより±30%Dpの範囲とし、後方から見たとき段違いに配置する。さらに、フィン31p、31sの上面から見たときの平面形状は、対の舵3p、3sに対し干渉しない範囲において最大半円形状に内接する多角形のうち、できるだけ平面積を大きくするため台形形状に形成されている。つまり、各々のフィンの可動範囲において、干渉しない範囲で最大限の平面積を得る平面形状とする。したがって、台形等の多角形に限らず半円形の形状でもよい。本実施形態のフィン31p、31sの形状によれば、平面積を大きくすることができるので、揚力を増加でき、より大きな推力を得ることができる(図6参照)。
図6に示すように、左舷側フィン31pに対してはプロペラ2が右回りプロペラの場合、旋回流が斜め上方に向かって流入するので、その流入方向に対して垂直方向に揚力55pが発生し、その揚力55pの水平方向成分である推力56pが発生する。
同様に、右舷側フィン31sに対してはプロペラ2からの旋回流が斜め下方に向かって流入するので、その流入方向に対して垂直方向に揚力55sが発生し、その揚力55sの水平方向成分である推力56sが発生する。
したがって、左舷側フィン31pに発生する推力56pと右舷側フィン31sに発生する推力56sとは同じ方向であるので、この二つの推力56p、56sによって省エネ効果(馬力低減効果)が得られる。左回りプロペラの場合は上記の左舷側および右舷側フィンの迎角が逆向きとなる。
表1及び表2は、船型試験水槽における一軸二舵船型の模型試験による省エネ効果(馬力低減効果)を満載状態と軽荷状態について確認した結果である。水槽試験は一軸二舵船型を用いて下記の4つのケースについて実施した。なお、カッコ内は表中の記載を示す。
・省エネデバイス無し
・船尾ダクトのみ(ダクト型)
・フィン付き舵のみ(フィン型)
・船尾ダクトとフィン付き舵(ダクト型+フィン型)
また、表中の省エネ効果は、省エネデバイス無しの場合の馬力に対する馬力低減率をあらわしたものである。
Figure 2011025734
Figure 2011025734
満載状態では、表1に示すように、各省エネデバイスを単独で使用したときより各省エネデバイスを組み合わせて使用したときの方が省エネ効果が大幅に大きくなっており、さらに各省エネデバイスの単独使用の効果の単純和に比べても1.3%〜3.5%(単純平均で約2%)の省エネ効果の向上が確認された。
軽荷状態では、各省エネデバイスを組み合わせて使用したときの方が各省エネデバイスの単独使用の効果の単純和よりも0.6%〜1.8%(単純平均で約1%)の省エネ効果の向上が確認された。
省エネ効果の値が船型によって相違する理由は次のように考えられる。
船型によって、船尾縦渦(損失エネルギー)の強さが異なるため、船型によって省エネ効果(損失エネルギー回収率)が相違する。つまり、一般的には同じ省エネデバイスで省エネ効果が大きい船型というのは、船型自体のエネルギー損失が大きい船型であると考えられる。
以上のように、本実施形態に係る船舶(一軸二舵船舶)100は、プロペラ前方の船尾に配置された船尾ダクト20と、プロペラ後方に配置された一対のフィン付き舵30とを備えた舶用複合型省エネ推進装置10を装備したので、次のような作用効果がある。
(1)プロペラ前方の船尾に配置された船尾ダクト20は主として船尾縦渦を回収する。このとき、ダクトを通過した流れは、渦成分が回収され、整流した(2次速度ベクトル流れの少ない)流れとなる。
(2)整流した流れは、プロペラ面に流れ込み、プロペラ面を通過した流れは、船体の船尾縦渦影響の少ないきれいな旋回流となる。
(3)一軸二舵船型においては、舵内側に配置されたフィン31p、31sがこの旋回流を回収し、省エネ効果を得る。このとき、船尾縦渦影響が少ない螺旋状となるきれいな流れの方がフィン31p、31sによるエネルギー回収率が大きくなる。
よって、結果として、フィン31p、31sの省エネ効果が向上し、全体の省エネ効果を押し上げることとなる。すなわち、船尾ダクト20とフィン付き舵30とをそれぞれ単独で使用したときの効果の和よりも両者を併用したときの効果の方が大きくなるのである。
1 船体
2 プロペラ
3 舵
2a プロペラ軸心
10 舶用複合型省エネ推進装置
20 船尾ダクト
30 フィン付き舵
20a ダクト中心
20b ダクト後端
31p 左舷側フィン
31s 右舷側フィン
100 一軸二舵船舶

Claims (6)

  1. プロペラ前方の船尾部に配置され、翼型断面を有する筒状の船尾ダクトと、
    プロペラ後方に配置される一対の舵の内側側面にそれぞれ横向きに突出させて設けられたフィンを有するフィン付き舵と、
    を備えることを特徴とする舶用複合型省エネ推進装置。
  2. 前記船尾ダクトのプロペラ軸方向の取付位置は、プロペラ位置からプロペラ直径の100%以内に配置することを特徴とする請求項1記載の舶用複合型省エネ推進装置。
  3. 前記船尾ダクトの上下方向の取付位置は、ダクト中心の高さがプロペラ軸心の高さよりプロペラ直径の±50%以内となるようにプロペラ軸と同軸または平行に配置することを特徴とする請求項1または2記載の舶用複合型省エネ推進装置。
  4. 前記フィンは、前記舵の内側側面に横向きに突出させて設けられており、且つ、一対のフィンが段違いに配設され、翼型の多角形または半円形に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の舶用複合型省エネ推進装置。
  5. 前記一対のフィンは、非対称または対称の翼型であり、右回りプロペラの場合、左舷側フィンは船首側が下がる方向に傾斜し、右舷側フィンは船首側が上がる方向に傾斜しており、両フィンとも迎角が15゜以下の範囲であり、左回りプロペラの場合は、左舷側フィンは船首側が上がる方向に傾斜し、右舷側フィンは船首側が下がる方向に傾斜しており、両フィンとも迎角が15゜以下の範囲であることを特徴とする請求項4記載の舶用複合型省エネ推進装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の舶用複合型省エネ推進装置を装備したことを特徴とする一軸二舵船舶。
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