JP4999384B2 - 船尾ダクト及びそれを取り付けた船舶 - Google Patents

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本発明は、船舶のプロペラ前方に取り付ける船尾ダクト及びそれを取り付けた船舶に関するものである。
近年、環境問題の観点から、地球温暖化防止や大気汚染防止等が分野を問わず最重要課題となっている(たとえば、非特許文献1参照)。船舶に関しても、エネルギー効率の向上や温室効果ガス(二酸化炭素)の排出抑制が強く求められている。船舶のエネルギー効率、つまり船舶の推進効率の向上を図るために、省エネ推進装置や省エネデバイスと呼ばれる装置を船体に取り付ける場合が増加している(たとえば、非特許文献2参照)。たとえば、タンカーやバルクキャリアー等の船舶において、推進効率の向上を図るために船尾のプロペラ前方に省エネ推進装置である船尾ダクトを取り付けたものが従来から存在している。
このような船尾ダクトは、プロペラ作動時における吸い込み作用によってダクト自身に発生する推力と、プロペラ面に流入する流体の流速分布の改善とによって推進効率を向上させるものである。このような理由から、ダクトは、その断面形状を翼形または流線型にすることが一般的となっている。つまり、ダクトの断面形状をダクト内側に曲面を有するような形状とすることで、より揚力が大きく、より整流作用の高いものとすることができた。
そのようなものとして、「船体の船尾部とプロペラとの間に、側面視形状がほぼ逆三角形状のリング状ノズルを設け、かつこのノズル後端部の直径がプロペラ直径の50〜80%の大きさとなるようにするとともに、ノズル後端面とプロペラ外周先端部との水平距離がプロペラ直径の10〜30%となるようにしたことを特徴とする船舶」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この船舶に設けられたノズル(ダクト)は、断面形状が翼形となっている。
また、「船体と、この船体の船尾に取り付けたプロペラと、このプロペラの前方側に取り付けたダクトと、を有する船尾ダクト付き船舶であって、前記ダクトの軸心を、前記プロペラの軸心より該プロペラの直径に対して、0〜25%、好ましくは5〜20%だけ上方に高くするとともに、前記ダクトの断面形状を、その内側に凸形状としたことを特徴とする船尾ダクト付き船舶」が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この船舶は、推進効率向上のために、ダクトの取り付け方(高さ方向の取り付け位置及び角度)を工夫したものである。
実開平3−17996号公報 特開平9−175488号公報 「近年の省エネ推進装置」TECHNO MARINE 2005.5 p40−p48 「船舶の省エネルギー装置SILD」住友重機械技報 Vol.44 No.131 1996.8 p48
特許文献1及び特許文献2に記載されているノズル及びダクトでは、そのノズル及びダクトの現状のコンセプトに従ったままで、その形状の改良や変更を多少加えたとしても、大きな推進効率の向上に寄与しないということが水槽試験の結果等から明らかになっている。また、このようなノズル及びダクトを製造するには、多くの手間、時間及びコストが要求される。したがって、手間、時間及びコストをそれ以上増やさないようにすることで生産効率を維持するのが望ましい。
さらに、非特許文献1及び非特許文献2の記載内容からは、船舶のプロペラ前方に装着された船尾ダクトの改良によって、船舶の推進効率向上を改善する余地が多くあると考えられる。したがって、船尾ダクトの生産効率を維持しつつ、船舶の推進効率向上を図るように改良することが望ましい。つまり、推進効率においては船舶のエネルギー消費を、生産効率においては手間、時間及びコストをそれぞれ考慮して、船尾ダクトを改良しなければならない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、従来から存在する翼型の船尾ダクトに容易に施工できる構成としたことでコストパフォーマンスを高めるとともに、省エネルギー効果を向上させて船舶の推進効率向上を改善した船尾ダクト及びそれを取り付けた船舶を提供するものである。
本発明に係る船尾ダクトは、船舶のプロペラ前方に取り付ける筒状の船尾ダクトであって、前記船尾ダクトの後縁にリングを装着して所定の角度を有するナックル部を形成し、前記ナックル部により圧力分布を変化させ、揚力を増大させることを特徴とする。また、本発明に係る船舶は、上記の船尾ダクトを取り付けたことを特徴とする。
本発明に係る船尾ダクトは、船舶のプロペラ前方に取り付ける筒状の船尾ダクトであって、前記船尾ダクトの後縁にリングを装着して所定の角度を有するナックル部を形成し、前記ナックル部により圧力分布を変化させ、揚力を増大させるので、船尾ダクトの推力が向上するように圧力分布を改善することができる。船尾ダクトの推力が向上すれば、船舶に働く推力も大きくすることが可能となり、船舶の推進効率を向上させることができるのである。また、リングを従来から存在するような船尾ダクトに取り付けることができるので、製造に要する手間、時間及び費用は、従来の船尾ダクトとほとんど変わらない。
本発明に係る船舶は、上記の船尾ダクトを取り付けたことを特徴とするので、その船尾ダクトが有する効果を全部有することになる。また、どのような船尾ダクトであっても簡易な作業で取り付けることができるので、低コストで、より推進性能の優れた船舶を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る船尾ダクト(ダクト形状の省エネ推進装置)10を船体1の船尾に取り付けた状態を示す概略図である。図1に基づいて、本発明の実施の形態1に係る船尾ダクト10の作動原理を従来の船尾ダクト100と比較しながら説明する。また、図1(a)は船尾ダクト10を取り付けた状態を、図1(b)は船尾ダクト100を取り付けた状態をそれぞれ示している。
図1に示すように、船尾ダクト10及び船尾ダクト100は、船体1の船尾であって、プロペラ2の前方(船首側)に取り付けられるようになっている。このように、船尾ダクト10及び船尾ダクト100を取り付けることで、プロペラ2の吸い込み作用によって船尾ダクト10及び船尾ダクト100自身の周囲に発生する流体の循環(循環水流)で得た揚力(矢印C)を船舶の推力(矢印D)として利用できるようになっている。
また、船尾ダクト10及び船尾ダクト100を取り付けることによって、船体1の前方からの流体の流れ(矢印A)を整流してからプロペラ2に送り込むことになり(矢印B)、摩擦伴流の拡散を防止できるようになっている。つまり、船尾ダクト10及び船尾ダクト100は、プロペラ2の作動中における流体の吸い込み作用によって船尾ダクト10及び船尾ダクト100自身の周囲に発生する循環水流を利用して得た推力と、船体1の前方からの流体の流れを整流しプロペラ2面にもたらす伴流利得とによって船舶全体の推進効率を向上させるようになっている。
船尾ダクト10と船尾ダクト100との大きな相違点は、船尾ダクト10の後縁にリング11を装着していることである。すなわち、船尾ダクト10の後縁にリング11を装着して所定の角度を有するナックル部12を形成したことである(図4(b)参照)。このように、船尾ダクト10の後縁にナックル部12を形成すると、船尾ダクト100の周囲に生じる圧力分布よりも船尾ダクト10の周囲に生じる圧力分布を変化させることが可能になる。また、後に詳述するが、船尾ダクト10に働く力(推力)を大きくすることも可能になる。
図2は、船尾ダクト10の全体形状を示す立体図である。図2に基づいて、船尾ダクト10の形状について説明する。船尾ダクト10は、上述したように、船舶の推進効率の向上を図るために、船舶の船尾部であって、船舶のプロペラの前方(船首側)に取り付けられるようになっている。また、船尾ダクト10は、正面形状がリング状(筒状)であって、前縁と後縁とを結ぶコードラインの長さを下方に向かって徐々に短くしたものである。なお、図2には、船尾ダクト100の全体形状を併せて示している。
図2に示すように、船尾ダクト10には、リング11が装着されており、この点で船尾ダクト100と相違している。つまり、船尾ダクト10は、リング11を装着することによってナックル部12が形成されている。このナックル部12は、船尾ダクト10の周囲に生じる圧力分布を大きく変化させるようになっているのである。船尾ダクト10の周囲に生じる圧力分布が大きく変化することによって、船尾ダクト10に生じる推力を大きくしている(図4(b)参照)。
図3は、船尾ダクトに発生する推力のメカニズムを説明するための詳細説明図である。図3に基づいて、船体1に取り付けた船尾ダクトに働く力(推力T)のメカニズムについて詳細に説明する。ここでは、従来の船尾ダクト100の上部断面形状を表し、それを例に推力発生メカニズムを説明する。なお、従来の船尾ダクト100を例に説明するが、船尾ダクト10における推力発生メカニズムについても同様である。
図3には、船体1の船尾に取り付けられた船尾ダクト100の所定位置での断面形状W1を示してある。ここでは、断面形状W1の所定位置が船尾ダクト100の上辺部分に相当する位置である場合を例に示している。この船尾ダクト100の断面形状W1には、船尾ダクト100の前方に位置する船体1の影響によって、船舶の進行方向から迎え角αを有する流体が流入することになる。この迎え角αとは、翼弦線(コードライン)Cが流体の流れとなす角度のことである。また、翼弦線Cとは、船尾ダクト100の前縁と後縁とを結んだ直線のことである。
このように、迎え角αを持った流体が船尾ダクト100内に流入すると、船尾ダクト100の断面形状W1には、揚力(流体の流れの方向に対して垂直に働く力)L及び抗力(流体の流れの方向に対して平行に働く力)Dが発生する。そして、この揚力Lを船体1の進行方向に投影すると、この投影成分は推力(矢印L’)として働くことになる。また、この抗力Dを船体の進行方向に投影すると、この投影成分は抵抗力(矢印D’)として働くことになる。
したがって、船尾ダクト100に働く力(推力T)は、揚力Lの投影成分(矢印L’)から抗力Dの投影成分(矢印D’)を差し引いたものとなる。つまり、この推力Tを大きくすることができれば、船舶の推進効率が向上することにつながる。この推力Tを大きくするためには、図3で説明するように、船尾ダクト100の断面形状W1に働く揚力Lを大きくするか、抗力Dを小さくすることが有効である。
次に、船尾ダクトの周囲に生じる圧力分布について説明する。図4は、船尾ダクト10及び船尾ダクト100の所定位置での断面形状を示す断面図である。図5は、船尾ダクト10及び船尾ダクト100の周囲における圧力係数分布を表す等高線図を併せて示している。図4及び図5に基づいて、船尾ダクト10の特徴を従来の船尾ダクト100と比較しながら説明する。
図4(a)は船尾ダクト100の断面形状W1を、図4(b)は船尾ダクト10の断面形状W2をそれぞれ示しているものとする。ここでは、断面形状W1及び断面形状W2の所定位置が船尾ダクト100及び船尾ダクト10の上辺部分に相当する位置である場合を例に示している。また、図5(a)は船尾ダクト100の周囲における圧力の等高線図を、図5(b)は船尾ダクト10の周囲における圧力の等高線図をそれぞれ示しているものとする。
図5において、縦軸が圧力係数分布(Cp)を、横軸が断面形状W1及び断面形状W2の所定個所をそれぞれ表している。なお、ここでは、迎え角8°に設定した場合を例に説明するものとする。また、図4(a)に示す船尾ダクト100の断面形状W1と図5(a)に示す船尾ダクト100の断面形状W1とを上下逆さまとして示しており、図4(b)に示す船尾ダクト10の断面形状W2と図5(b)に示す船尾ダクト10の断面形状W2とを上下逆さまとして示している。
船尾ダクト100が流体の流れの中におかれると、Back面側(船尾ダクト100の内部面側)が低圧に、Face面側(船尾ダクト100の外側表面)が高圧になる。このことは、図5(a)にも示すように、Back面側の各等高線の間隔が狭くなるとともに圧力係数が相対的にマイナス(低圧)になっており、Face面側の各等高線の間隔が広くなるとともに圧力係数が相対的にプラス(高圧)になっていることからもわかる。すなわち、図4(a)に示すように、Face面側の圧力(P1H)がBack面側の圧力(P1L)よりも高くなっているのである(P1H>P1L)。
同様に、船尾ダクト10が流体の流れの中におかれると、Back面側(船尾ダクト10の内部面側)が低圧に、Face面側(船尾ダクト10の外側表面)が高圧になる。このことは、図5(b)にも示すように、Back面側の各等高線の間隔が狭くなるとともに圧力係数が相対的にマイナス(低圧)になっており、Face面側の各等高線の間隔が広くなるとともに圧力係数が相対的にプラス(高圧)になっていることからもわかる。すなわち、図4(b)に示すように、Face面側の圧力(P2H)がBack面側の圧力(P2L)よりも高くなっているのである(P2H>P2L)。
船尾ダクト100及び船尾ダクト10に働く揚力Lは、図3で説明したように、迎え角αの大きさに加えて、Back面側の圧力とFace面側の圧力との差の大きさによって、発生する大きさに差異が生じることになる。つまり、Back面側の圧力とFace面側の圧力との差が大きくなれば、それに伴って揚力Lも大きくなるのである。したがって、船尾ダクトは、Back面側の圧力とFace面側の圧力との差が大きくなるような断面形状であることが望ましい。
実施の形態1に係る船尾ダクト10は、その後縁にリング11を装着していることを特徴としている。そうすると、図4(b)に示すように、断面形状W2にはナックル部12が形成されることになる。つまり、船尾ダクト10は、リング11を装着することによって、ナックル部12を形成し、それに伴ってキャンバーを増加させるだけでなく、船尾ダクト10の周囲に生じる圧力分布をキャンバー増加のみの場合より大きく変化させることによって、その船尾ダクト10のBack面側の圧力とFace面側の圧力との差を大きくすることができるようになっているのである。
図5(a)と図5(b)とを比較すると、船尾ダクト10の圧力係数分布の方が船尾ダクト100の圧力係数分布よりも大きくなっていることがわかる(P2H>P1H、P2L<P1L)。つまり、船尾ダクト10のBack面側の圧力とFace面側の圧力との差を、船尾ダクト100のBack面側の圧力とFace面側の圧力との差よりも大きくすることができるのである。したがって、船尾ダクト10の揚力Lが船尾ダクト100の揚力Lよりも大きくなり、結果として船尾ダクト10の推力Tが船尾ダクト100の推力Tよりも大きくなるのである。
図6は、船尾ダクト100及び船尾ダクト10のダクト表面上における圧力係数分布だけを抽出した圧力分布図である。図6に基づいて、船尾ダクト10のダクト表面上における圧力係数分布が船尾ダクト100のダクト表面上における圧力係数分布よりも大きくなっていることを説明する。図5(a)及び図5(b)に示すように、断面形状W1及び断面形状W2のBack面側の圧力と、Face面側の圧力とには圧力差が生じていることがわかった。
すなわち、図6に示すように、船尾ダクト10のダクト表面上における圧力差は、船尾ダクト100のダクト表面上における圧力差よりも大きいのである。したがって、図6からも明らかなように、船尾ダクト10の方が船尾ダクト100よりも圧力差を大きくすることができるので、それらが取り付けられる船舶の推力Tをより向上させられるのである。
図7は、船舶の推力減少係数を示した説明図である。図7に基づいて、船舶の馬力を推定する1つの要素である推力減少係数について説明する。ここでは、船尾ダクトを取り付けていない低速肥大船(図で示す(a))、従来の船尾ダクト100を取り付けた低速肥大船(図で示す(b))及び船尾ダクト10を取り付けた低速肥大船(図で示す(c))の推力減少係数を示している。なお、ここで示す値は、船型水槽での水槽試験(CFD計算(シミュレーション計算))に基づいて計測したものである。
この推力減少係数は、(1−t)で表される。(t)は、推力減少率と称されているものであり、((T−RT )/T)で表される。ここで、Tはプロペラのスラスト(推力)を、RT は曳航状態での船舶(船体1+船尾ダクト)の抵抗を示している。つまり、(t)が大きいほどプロペラ作動時の船舶抵抗の増加が大きいことを意味している。したがって、推力減少係数(1−t)が大きくなれば、プロペラ作動時の船舶抵抗の増加を抑制することができ、船舶の推進効率も向上することになる。推力減少定数(1−t)を大きくするということは、(t)を小さくするということである。
図7に示した3種類の推力減少係数を比較して、船尾ダクト10を取り付けた船舶の推進効率効果について説明する。ここでは、船尾ダクト10の上部コードライン長の10%に相当する長さのリング11を船尾ダクト10に装着している場合を例に説明する。なお、図5では、船尾ダクトを取り付けていない船舶の推力減少係数を1.000として説明するものとする。
そうすると、水槽試験の結果、従来の船尾ダクト100を取り付けた船舶の推力減少係数は1.010となり、船尾ダクト10を取り付けた船舶の推力減少係数は1.030となることがわかった。つまり、船尾ダクト10を取り付けた場合は、船尾ダクトを取り付けていない場合と比較すると推力減少係数が約3%向上したことになり、従来の船尾ダクト100を取り付けた場合と比較すると推力減少係数が約2%向上したことになる。
推力減少係数が向上すれば、上述したように船舶の推進効率の向上にもつながる。すなわち、低速肥大船において推力減少係数が2%向上すれば、推進効率の大幅な改善につながるのである。たとえば、低速肥大船として20万トンを超える大型バルクキャリアーにこの船尾ダクト10を取り付けたとすると、1日約5万円の燃料費を削減できる計算となる。そして、この低速肥大船の稼働率が年間約270日程度すると、5万円×270日=1350万円の燃料費が削減できることになる。
図8は、船尾ダクト10の後縁に装着したリング11の長さを変更した場合のCFDによる推力減少係数(1−t)のシミュレーション結果を示す説明図である。図8では、縦軸が推力減少係数(1−t)を従来型の船尾ダクト100との比で表しており、横軸がリングの長さを船尾ダクトの上部コードライン長に対する比で表している。図8に示すように、リング11の長さを船尾ダクト10の上部コードライン長の3%〜15%の範囲に設定すれば、従来型の船尾ダクト100よりも推力減少係数が1%以上向上することがわかった。
図7(c)では、船尾ダクト10の上部コードライン長の10%に相当する長さのリング11を有する船尾ダクト10を取り付けた船舶の推力減少係数を例に示して説明したが、図8の結果からもわかるように、リング11の長さを船尾ダクト10の上部コードライン長の10%付近で設定すると推力減少係数を1%以上向上することができ、有意な改善となる。
以上のように、この実施の形態1に係る船尾ダクト10は、従来から存在する船尾ダクトの後縁にリング11を装着するという簡易な作業で容易に施工できるために、船尾ダクト自体を変更、改造する手間や費用を低減することが可能になる。つまり、船尾ダクト10は、コストパフォーマンスの高いものである。したがって、船尾ダクト10は、省エネルギー効果を向上させることが可能になり、船舶の推進効率を更に改善することにもなるのである。
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2に係る船尾ダクト10aを側方から見た形状を示す説明図である。図9に基づいて、本発明の実施の形態2に係る船尾ダクト10aについて説明する。なお、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
実施の形態1に係る船尾ダクト10は、船尾ダクト10の後縁全周に相当するリング11を装着した場合を例に示したが、実施の形態2に係る船尾ダクト10aは、所定の位置で水平に裁断し、船尾ダクト10aの後縁の上方部分に対応する形状としたリング11aを装着するようになっている。つまり、船尾ダクト10aに生じる推力Tは、船尾ダクト10aの後縁の上方部分の影響が大きいために、その後縁の上方部分に相当するリング11aを装着しても同様の効果が認められるのである。
なお、リング11aを水平に裁断する所定の位置を特に限定するものではない。たとえば、船尾ダクト10aの後縁の上側半分の位置で水平に裁断してもよく、更に上方で水平に裁断してもよい。つまり、リング11aの裁断位置は、船尾ダクト10aに生じさせたい推力Tの大きさを考慮して決定するとよい。また、リング11aを裁断してから船尾ダクト10aに装着してもよく、装着してから裁断してもよい。
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3に係る船尾ダクト10bを側方から見た形状を示す説明図である。図10に基づいて、本発明の実施の形態3に係る船尾ダクト10bについて説明する。なお、実施の形態3では実施の形態1及び実施の形態2との相違点を中心に説明し、実施の形態1及び実施の形態2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
実施の形態1に係る船尾ダクト10は、その側面形状がほぼ逆三角形状(非軸対称形状)を有するものである場合を例に示したが、実施の形態3に係る船尾ダクト10bは、上方と下方とが同一寸法で形成された軸対称形状を有するものである場合を例に示している。つまり、リング11bを装着する船尾ダクト10bの形状を特に限定するものではなく、リング11bを船尾ダクト10bの後縁と同様な形状としていればよいのである。したがって、従来の船尾ダクト100のようなものに簡易な施工で装着することができる。
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4に係る船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dを側方から見た形状を示す説明図である。図11に基づいて、本発明の実施の形態4に係る船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dについて説明する。なお、実施の形態4では実施の形態1〜実施の形態3との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜実施の形態3と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
実施の形態1〜実施の形態3に係る船尾ダクト10〜船尾ダクト10bは、その断面形状が翼型(流線型)を有するものである場合を例に示したが、実施の形態4に係る船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dは、その断面形状が翼型(流線型)以外の形状を有しているものである場合を例に示している。つまり、リング11c及びリング11dを装着する船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dの形状を特に限定するものではなく、リング11c及びリング11dを船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dの後縁と同様な形状としていればよいのである。
換言すると、リング11c及びリング11dを装着する船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dの断面形状を特に限定するものではなく、船尾ダクト10c及び船尾ダクト10dの後縁の形状に基づいてリング11c及びリング11dを製造すればよいのである。したがって、従来のような船尾ダクト100や他の形状を有する船尾ダクトに簡易な施工で装着することができる。
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5に係る船尾ダクト10eを側方から見た形状を示す説明図である。図12に基づいて、本発明の実施の形態5に係る船尾ダクト10eについて説明する。なお、実施の形態5では実施の形態1〜実施の形態4との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜実施の形態4と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
実施の形態1〜実施の形態4に係る船尾ダクト10〜船尾ダクト10dは、その後縁が切れ目のないリング状(筒状)を有するものである場合を例に示したが、実施の形態5に係る船尾ダクト10eは、所定の位置で水平に裁断されており、完全なリング状(筒状)ではない場合を例に示している。たとえば、実施の形態2で示したようなリング11aの形状に相当するような船尾ダクト10eであってもよいのである。つまり、リング11eが船尾ダクト10eの後縁と同様な形状であればよいのである。
実施の形態6.
図13は、本発明の実施の形態6に係る船尾ダクト10fを側方から見た形状を示す説明図である。図13に基づいて、本発明の実施の形態6に係る船尾ダクト10fについて説明する。なお、実施の形態6では実施の形態1〜実施の形態5との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜実施の形態5と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
実施の形態1〜実施の形態5に係るリング11〜リング11eは、側方から見た形状が長方形状である場合を例に示したが、実施の形態6に係るリング11fは、側方から見た形状が長方形状以外の四角形状(略台形状)である場合を例に示している。つまり、船尾ダクト10fの後縁にナックル部12が形成されればよく、リング11fの形状を特に限定するものではないのである。
たとえば、リング11f及びリング11f’の側方から見た形状のように左右一辺の長さが異なる略台形状を有するようにリング11f及びリング11f’を形成してもよい。なお、この場合にあっては、上下の角度が同じでもよく、異なっていてもよい。また、リング11f’’の側方から見た形状のように上下一辺の長さが異なる台形状を有するようにしてもよい。なお、図11に示すリング11f〜リング11f’’の側方から見た形状が厳密な台形状を有していなくてもよい。
なお、実施の形態1〜実施の形態6では、船尾ダクトの形状及びそれに装着するリングの形状について例を挙げて説明したが、ここで示す場合に限定するものではない。つまり、船尾ダクトとリングとによってナックル部12を形成できればよく、船尾ダクト及びリングの形状を特に限定するものではない。また、実施の形態1〜実施の形態6で説明した船尾ダクトとリングのいずれかを組み合わせてもよい。さらに、リング11〜リング11f’’の船体1の前後方向の長さを特に限定するものではない。いずれの場合であっても、船尾ダクトに生じる推力T、船尾ダクトの形状、製造に要する手間、時間及び費用を考慮してリングの形状を決定するとよい。したがって、生産効率を向上させつつ、推進効率を向上させることが可能なのである。
実施の形態1に係る船尾ダクトを取り付けた状態を示す概略図である。 船尾ダクトの全体形状を示す立体図である。 発生する推力のメカニズムを説明するための詳細説明図である。 船尾ダクトの所定位置での断面形状を示す断面図である。 船尾ダクトの周囲における圧力係数分布を表す等高線図である。 船尾ダクトのダクト表面上における圧力係数分布だけを抽出した圧力分布図である。 船舶の推力減少係数を示した説明図である。 リングの長さを変更した場合のCFDによる推力減少係数の結果を示す説明図である。 実施の形態2に係る船尾ダクトを側方から見た形状を示す説明図である。 実施の形態3に係る船尾ダクトを側方から見た形状を示す説明図である。 実施の形態4に係る船尾ダクトを側方から見た形状を示す説明図である。 実施の形態5に係る船尾ダクトを側方から見た形状を示す説明図である。 実施の形態6に係る船尾ダクトを側方から見た形状を示す説明図である。
符号の説明
1 船体、2 プロペラ、10 船尾ダクト、10a 船尾ダクト、10b 船尾ダクト、10c 船尾ダクト、10d 船尾ダクト、10e 船尾ダクト、10f 船尾ダクト、11 リング、11a リング、11b リング、11c リング、11d リング、11e リング、12 ナックル部、100 船尾ダクト。

Claims (6)

  1. 船舶のプロペラ前方に取り付ける筒状の船尾ダクトであって、
    前記船尾ダクトの後縁にリングを装着して所定の角度を有するナックル部を形成し、前記ナックル部により圧力分布を変化させ、揚力を増大させる
    ことを特徴とする船尾ダクト。
  2. 前記リングを前記船尾ダクトの後縁と同様な形状とした
    ことを特徴とする請求項1に記載の船尾ダクト。
  3. 船舶の側面から見た前記リングの形状を四角形状とした
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の船尾ダクト。
  4. 前記四角形状を略台形状とした
    ことを特徴とする請求項3に記載の船尾ダクト。
  5. 前記リングを前記船尾ダクトの後縁の上方部分に対応する所定の位置で水平に裁断して形成した
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の船尾ダクト。
  6. 前記請求項1〜5のいずれかに記載の船尾ダクトを取り付けた
    ことを特徴とする船舶。
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