JP2008137462A - 船舶のダクト装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】省エネルギー効果の効率が高く、コストダウン可能な船舶のダクト装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プロペラ1の前方の船尾部2に所定形状のダクト3を配置して省エネルギー効果を得るようにした船舶のダクト装置であって、前記ダクト3は、略円錐台形状の筒を中心軸を含む平面で略半分に切断した略半円錐台形状の外殻4と、外殻4を船尾部2に固定する2枚の連結板5と、を備え、外殻4の径の短い方をプロペラ1側に向けるとともに外殻4がプロペラ1の上半分の部分と相対するように外殻4を配置している。
【選択図】図1

Description

本発明は、船舶の省エネ装置の一つであって、船舶のプロペラ直前に配置される船舶のダクト装置に関する。
最近の原油価格高騰やCO2削減の環境問題に対する要求の高まりにより、従来以上に船舶に対する燃費改善への要求が強くなっている。一方、VLCCやバルクキャリア等の肥大船は、その肥瘠度が増加する傾向にあり、要目の最適化や船型改良による推進性能向上が限界に近づきつつある。そこで、船型以外で確実に馬力低減による燃費改善が図れるコストパフォーマンスのよい省エネ装置の実用化が望まれている。
かかる船舶の省エネ装置の一つとして、船舶のプロペラ直前に環状のダクトを配置したダクト装置が既に提案されている。ダクト装置を設置することにより、船尾流場の整流効果による船体抵抗軽減、ダクトによる推力の発生、伴流利得の増加、プロペラ効率の向上等の効果を得ることができ、船舶の省エネを図ることができる。
船尾では通常、ビルジ渦を伴う複雑な流れとなっており、ダクトがこの流れを軸方向に整流することにより船体表面の剥離が抑制され、船体抵抗を軽減することができる(船尾流場の整流効果による船体抵抗軽減)。また、船尾の流れは、主船体に沿った流れとビルジ渦とで形成された斜流になっており、ダクトの迎角及び翼型状を適切に設定することにより、ダクト自体に推力を発生させることができる(ダクトによる推力の発生)。また、ビルジ渦域の遅い流れをプロペラ面へ誘導することにより、伴流利得を得ることができる(伴流利得の増加)。さらに、ダクトから出て行く流れの半径方向成分が軸流に変換され、プロペラ面へ流入する軸方向成分が均一化されてキャビテーション上有利な流場となる。これにより展開面積の低減等が可能になり、結果としてプロペラ効率を向上することができる(プロペラ効率の向上)。
このような省エネ効果を利用したダクト装置には、例えば、特許文献1〜特許文献4に記載されたものが存在している。
特開平8−2486号公報 特開2002−220089号公報 特開昭58−194691号公報 特開2003−11880号公報
特許文献1に記載のダクト装置は、船舶のプロペラの前方に環状のノズルを備えた船舶において、前記ノズルは、その前縁が上部前縁と下部前縁からなり、上部前縁は、下方ほどプロペラ側に接近し、上部前縁と下部前縁とが接合する接合部においてノズル上部前縁の傾斜角と下部前縁の傾斜角が変わり、更に、前記接合部がプロペラ軸軸心を含む水平面の近傍に位置することを特徴とする。
特許文献2に記載のダクト装置は、船舶の船尾部とプロペラとの間に設けられるダクトにおいて、断面長さ(コード長さ)を、上半分ではほぼ一定とし、下半分では下方に向かって除々に小さく形成したことを特徴とする。
特許文献3に記載のダクト装置は、環状に形成され、かつ船に固定してプロペラの前方にプロペラの直径までの水平距離をおいて配置されている、スクリュープロペラ船船尾の水流誘導面に於いて、環状ノズルによって取り囲まれている横断面の重心がプロペラ軸線の上方にあることを特徴とする。
特許文献4に記載のダクト装置は、船尾部の船体両側面に、前後方向及び幅方向に延びる水平フィンを固定し、船尾部のプロペラ前方位置に、円筒の上半部のみからなる半円弧ダクトを配置し、該半円弧ダクトの両下端部を前記水平フィンに固定したことを特徴とする。
上述した特許文献1〜4は、「環状のダクトに流れ込む流向は、プロペラの回転軸より上の部分ではダクトが推力を発生する向きであるのに対して、プロペラの回転軸より下の部分では抵抗となる向きに流入する。この推力と抵抗の割合を比べると、推力分が大きいため環状のダクトでも省エネルギーの効果はあったが、抵抗分が差し引かれる状態となっていて効率が低下しているのが現状である。」という問題を解決すべく種々の工夫を施したものである。かかる解決手段としては大きく2種類の流れがあり、1つはダクト形状を環状にしたまま、船体長さ方向の幅を変化させたり(例えば、特許文献1、2参照)、ダクトの開口角度を変化させたり(例えば、特許文献1参照)、ダクトの重心をプロペラ軸よりも上方にずらしたり(例えば、特許文献3参照)する方法である。もう1つの方法は、環状のダクト形状から下半分を切り捨てた半円弧ダクトを採用する方法(例えば、特許文献4参照)である。
前者の環状のダクトを採用した方法では、プロペラの回転軸よりも下の部分に必ずダクトが存在することになるため、少なからず抵抗となる部分が存在し、省エネ効果を低減させる要因になるという問題があった。また、その抵抗分を相殺するために開口角度を周方向で変化させる等の工夫を施した場合には、ダクト製作時の工程が複雑となりコストアップの要因になってしまうという問題があった。さらに、本発明者らが鋭意研究したことにより、特許文献4に記載されたダクト装置の水平フィンは、省エネ効果に対する寄与率がそれほど顕著ではないとの知見を得ることができた。
本発明は、上述した問題点及び知見に鑑みなされた発明であり、省エネルギー効果の効率が高く、製造が容易な船舶のダクト装置を提供することを目的とする。
本発明の船舶のダクト装置によれば、プロペラの前方の船尾部に所定形状のダクトを配置して省エネルギー効果を得るようにした船舶のダクト装置であって、前記ダクトは、略円錐台形状の筒を中心軸を含む平面で略半分に切断した略半円錐台形状の外殻と、該外殻を前記船尾部に固定する複数の連結板と、を備え、前記外殻の径の短い方をプロペラ側に向けるとともに前記外殻が前記プロペラの上半分の部分と相対するように前記外殻を配置したことを特徴とする船舶のダクト装置が提供される。
前記外殻の母線の長さは、上端部で最も長く、下端部で最も短くなるように形成してもよい。また、前記外殻の中心軸を含む平面で前記外殻を切断したときの断面が内側に凸な翼形状になるように形成してもよいし、この場合には、上端部の翼弦長がプロペラの半径に対して60%以上100%以下の長さとなるようにし、下端部の翼弦長がプロペラの半径に対して40%以下の長さとなるようにすることが好ましい。
また、前記外殻の中心軸がプロペラの回転軸よりも上方になるように外殻が配置されていてもよい。このとき、中心軸と回転軸の距離がプロペラの半径に対して40%以下の長さとなるようにすることが好ましい。
また、前記外殻の開口角度が10°以上20°以下であることが好ましく、前記外殻の後端位置とプロペラの中心位置との距離がプロペラの半径に対して20%以上60%以下の長さであることが好ましく、前記外殻の後端の径がプロペラの半径に対して50%以上70%以下の長さであることが好ましく、前記外殻を中心軸に垂直な平面で切断したときの外殻の中心角が150°以上210°以下であることが好ましい。
さらに、前記外殻は、中心軸に垂直な平面で外殻を切断したときの両端部を接線方向に延長した延長部を備え、該延長部に前記連結板を接続するようにしてもよい。
上述した本発明の船舶のダクト装置によれば、環状のダクト装置では抵抗となっていた部分を排除した半円錐台形状の外殻を採用したことにより、省エネルギー効果の効率を悪化させていた要因をなくすことができ、省エネルギー効果の効率を高めることができる。また、従来のような抵抗分を相殺する工夫が必要ないこと、及び省エネルギー効果に対して寄与の少ない部分を排除したことにより、ダクトを容易に製造することができるとともに、コストダウンを図ることができる。
以下、本発明の実施形態について図1〜図8を用いて説明する。ここで、図1は本発明の船舶のダクト装置を示す側面図であり、図2は本発明の船舶のダクト装置を示す正面図であり、(A)は図1におけるII−II矢視図、(B)は図2(A)にプロペラの位置を投影した図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態は、プロペラ1の前方の船尾部2に所定形状のダクト3を配置して省エネルギー効果を得るようにした船舶のダクト装置であって、前記ダクト3は、略円錐台形状の筒を中心軸を含む平面で略半分に切断した略半円錐台形状の外殻4と、外殻4を船尾部2に固定する2枚の連結板5と、を備え、外殻4の径の短い方をプロペラ1側に向けるとともに外殻4がプロペラ1の上半分の部分と相対するように外殻4を配置している。この第1実施形態における外殻4は、外殻4の母線の長さが上端部4uで最も長く、下端に向けて徐々に短くなり、下端部4dが最も短くなるように形成されている。すなわち、外殻4は、半円錐台形状の前端4f側を所定の平面で切り取った形状をなしている。本発明において、「略半円錐台形状」とは、図1及び図2に示す外殻4のような半円錐台形状の一部を切り取った形状も含むものとする。
前記プロペラ1は、船体6の船尾部2の後方に配置されており、船尾分2及び船体6内に回転可能に支持されたシャフトを介してエンジンやモーター等の動力源に接続されている。また、プロペラ1の回転軸をCp、プロペラ1の半径をRpで表示している。なお、プロペラ1の後方には、一般的に舵7が配置されることが多い。
前記外殻4は、図1において破線で示すように、その中心軸Cdを含む平面で切断したときの断面が内側に凸な翼形状に形成されている。この場合、上述した外殻4の上端部4u及び下端部4dの長さの条件を母線から翼弦長に読み替えるようにしてもよい。すなわち、外殻4の上端部4uの翼弦長Luが最も長く、下端に向けて徐々に短くなり、下端部4dの翼弦長Ldが最も短くなるように形成されている。なお、翼弦長とは、翼形状の前端と後端を結んだ線分の長さを意味する。なお、ここで「徐々に」とは必ずしも一定の割合である必要はない。
前記外殻4の上端部の翼弦長Lu及び下端部の翼弦長Ldの長さは、経験的に、次の条件を満たすように設計するのが好ましいと考えられる。なお、1.0Rpとは、プロペラ1の半径Rpに対して100%の長さであることを示している。
外殻4の上端部の翼弦長Lu:0.6Rp≦Lu≦1.0Rp
外殻4の下端部の翼弦長Ld:0≦Ld≦0.4Rp
前記外殻4の中心軸Cdは、プロペラ1の回転軸Cpよりも上方になるように配置されている。これは、外殻4の開口部の径を大きくしようとすると、外殻4の全体を大きくしなければならないこと、外殻4の両端部は省エネ効果の寄与率が低いこと等に鑑みたものであり、外殻4の中心軸Cdをプロペラ1の回転軸Cpよりも上方になるように配置することにより、外殻4の大きさを変えることなく省エネ効果を高めることができる。この中心軸Cdと回転軸Cpの距離Lcは、0≦Lc≦0.4Rpの範囲で設定するとよい。これは、一般的なプロペラ1の半径Rpから算出すると、距離Lcが0.4Rpを越えると外殻4の両端が船尾部2から離れすぎてしまい、連結板5を長くしたり太くしたりしなければならず、構造的又は強度的に好ましくないためである。
前記外殻4の開口角度αは、経験的に、10°≦α≦20°の範囲で設定するとよい。この開口角度は、図1に示すように、断面翼形状の外殻4を採用した場合には、翼弦(翼形状の前端と後端を結ぶ線分)と中心軸Cdとの角度であるが、簡易的に又は断面翼形状ではない場合には、外殻4の母線と中心軸Cdとの角度としてもよい。本発明において、開口角度αは外殻4の周に渡って均一に設定されている。したがって、外殻4にひねりや捩れが存在せず、外殻4の製造が容易になる。
前記外殻4の後端位置とプロペラ1の中心位置の回転軸Cp上における距離Lpは、0.2Rp≦Lp≦0.6Rpの範囲で設定するとよい。これはダクト装置を船体6に付加した場合のプロペラ1に生じる変動圧力を計測し、省エネ効果に有利な範囲を設定したものである。このような設定方法は、従来の環状のダクト装置の場合と同じであるため、詳細な説明は省略する。
前記外殻4の後端の径Rdは、0.5Rp≦Rd≦0.7Rpの範囲で設定するとよい。これはダクト装置を船体6に付加した場合のプロペラ面に流入する平均流速を計測し、プロペラ1が最も力を発揮する半径付近の流入速度が遅くなるようにするためである。このような設定方法は、従来の環状のダクト装置の場合と同じ設定方法であるため、詳細な説明は省略する。
前記連結板5は、図1及び図2に示すように、外殻4と船尾部2とを連結し、外殻4を船尾部2に固定する部材である。第1実施形態においては、図2に示すように、外殻4の両端部にのみ連結板5を設置しているため、2枚の連結板を使用している。また、ここでは連結板5を平板状に成形し、船尾部2に水平に固定するようにしているが、ダクト3の内部、外部又は内外部に凸な翼形状に成形してもよいし、径方向に厚さが変化するように成形(例えば、連結板5と船尾部2とが滑らかに接続されるように径方向中心側を末広がりした形状にする等)されていてもよい。連結板5は、外殻4と船尾部2を連結することを本質的な機能とするが、ダクト装置3を通る水流に対して抵抗となりにくい形状である方が好ましい。
前記連結板5は、外殻4から径方向外方にはみ出さないように成形されている。したがって、第1実施形態における各連結板5は、台形状の平板により形成されており、上底を後端とし下底を前端とするように配置されている。また、ここでは、連結板5の上に外殻4の両端部が載置される状態で外殻4と連結板5とが接続されているが、連結板5の側面と外殻4の内面とを接触させて接続するようにしてもよいことは勿論である。なお、第1実施形態においては、外殻4の上端部4u近傍の前端側が船体6に設けられた切込み6sに差し込まれているため、2枚の連結板5の間に別の連結板を設けなくても外殻4を安定して固定することができるようになっている。
次に、本発明の船舶のダクト装置の第2実施形態について説明する。ここで、図3は本発明の第2実施形態を示す側面図であり、図4は本発明の第2実施形態を示す正面図であり、(A)は図3におけるIV−IV矢視図、(B)は図4(A)にプロペラの位置を投影した図である。
図3及び図4に示した第2実施形態は、図1及び図2に示した第1実施形態の外殻4が船体6に支持されていない代わりに、3枚目の連結板5mを中間部に設けて船尾部2に固定したものである。この中間部に配置された連結板5mは、荒天時のピッチングによる衝撃荷重や旋回時の横力等に対して十分な強度を持つとともに振動も十分に共振が回避できるようにするという機能を有する。したがって、好ましくは、有限要素解析法(FEM)等を用いてダクト装置全体の強度計算を行い、それに基づいて最適な連結板5mの形状や本数を設計することが好ましいが、図3及び図4に示すように、外殻4からはみ出さない形状の平板であれば、一般的な船舶の場合には強度的に十分な結果を示すことが多い。また、水流の抵抗を低減するために翼形状のものを採用してもよい。連結板5m以外の部分については、第1実施形態に示したものと同じであるため、重複した説明を省略する。
続いて、図5及び図6を用いて、上述した第1実施形態及び第2実施形態のようなダクト形状を採用した原理について簡単に説明する。ここで、図5はプロペラ面における肥大船の伴流分布例を示す図であり、図6はダクトに流入する船体伴流の流速及び流入角度の周方向分布図である。
図5に示すプロペラ面は、例えば、図1に示すプロペラ1が回転する範囲をその後方から眺めたものである。本図において、色が濃いほど流速が遅い状態を示している。また、図中の矢印は、水流の方向を示している。本図から、強いビルジ渦がプロペラ軸上方部に流入しており、プロペラ面の上半分側、特にプロペラ軸を通る水平線からの角度が15°〜60°の範囲のプロペラ先端部に流速の遅い部分が形成されていることが分かる。プロペラ先端部は、最も推力を発生する部分であり、この部分の整流化が必要であることが分かる。
また、図6は、ダクト設計に必要な情報を収集するために、ダクト取り付け位置における流場を計測したものである。本計測では、プロペラ1が作動している自航試験時にL字型ピトー管を用いて実施した。図6は、0.7Rpの位置で計測された流速及び流入角度の周方向分布図を示している。本図から、プロペラ1の回転軸上方、特にθ=0°〜70°の付近で流入角度が大きくなり、また流入速度も大きくなっていることが分かる。
図5及び図6の結果から、ダクトが有効に推力を発生し、かつ整流効果を高めるためには、ダクト上部の適切な設計が重要である事が分かる。そこで、本発明は、船尾ビルジ渦の強い位置にダクトを配置することで整流効果を高める、流入角度の大きい位置にダクトを配置して前進方向のダクト推力を増加させる、プロペラが最も力を出す0.5Rp〜0.7Rp付近の流入速度が遅くなるようにダクト径を0.5Rp〜0.7Rp程度に設定する、一般的にビルジ渦が強いのはプロペラ軸上方であることから環状のダクトではなく下半分をカットした形状とする、製作上の観点からひねりや捩れのない形状とする等のコンセプトのもとに創案したものである。
かかるコンセプトによれば、本発明は、図1〜図4に示した第1実施形態及び第2実施形態に加えて、図7に示すような実施形態も考えることができる。ここで、図7は、本発明の他の実施形態を示す図であり、(A)は第3実施形態、(B)は第4実施形態、(C)は第5実施形態を示している。
図7(A)に示す第3実施形態は、連結板5を水平線から所定角度βだけ傾斜させて船尾部2に固定している。したがって、外殻4の中心角は180°よりも小さくなる。図5の伴流分布図から所定角度βは0°≦β≦15°の範囲に設定される。一方、外殻4の中心角γは、中心軸Cdとプロペラ1の回転軸Cpとの距離Lcを考慮すると、中心軸Cdと回転軸Cpが一致している場合(すなわち、Lc=0の場合)に最小となり、γ=150°となる。なお、角度βの上限を15°としたのは、図5に示した流速の遅い部分が外殻4から外れないようにするためである。
図7(B)に示す第4実施形態は、連結板5を水平(すなわち、β=0°)にして船尾部2の中心部に固定している。したがって、外殻4の中心軸Cdと回転軸Cpの距離Lcを大きくするほど中心角γは180°よりも大きくなる。しかし、この中心角γを大きくし過ぎると、連結板5に比して外殻4が大きくかつ重くなってしまう。そこで、中心角γは最大でも210°程度に抑えておくことが好ましい。なお、外殻4の形状を第4実施形態に示す状態のまま、連結板5を船尾部2に斜めとなるように固定してもよいことは勿論である。
図7(C)に示す第5実施形態は、連結板5を水平(すなわち、β=0°)にして船尾部2の中心部に固定し、外殻4の中心角γを180°に設定したものである。この場合、外殻4の中心軸Cdと回転軸Cpの距離Lcが連結板5の板厚の半分に等しい場合には、そのまま外殻4と連結板5を接続することができるが、距離Lcが連結板5の板厚の半分よりも大きい場合には接続することができなくなってしまう。そこで、外殻4の両端部を接線方向に延長した延長部4eを設けて外郭4と連結板5を接続している。この延長部4eは、外殻4と一体に成型してもよいし、別部材として溶接等により設けるようにしてもよい。この第5実施形態では、外殻4の中心軸Cdと回転軸Cpの距離Lcを大きくしても、第4実施形態のように外殻4の径が大きくならず、外殻4の位置を任意に調整することができる。また、連結板5も船尾部2の中心部に固定することができるので強度的にも好ましい。
最後に、図1に示した第1実施形態の模型を用いて推進性能試験を実施したときの結果について説明する。ここで、図8は、環状型のダクト装着時と本発明のダクト装着時のEHP及びBHPの改善率を比較した図である。なお、EHPは有効馬力、BHPは所要馬力を示している。
推進性能試験は、プロペラを装着しない時の船体抵抗を計測する抵抗試験及びプロペラ作動時の自航要素(プロペラと船体及び舵との干渉係数)を求める自航試験の2つから構成される。また、模型には、大型タンカーの1/46スケール(模型船長7m)のものを使用した。本発明のダクト(外殻)は、翼弦長の上端長さ(Lu)を0.7Rp、翼弦長の下端長さ(Ld)を0.4Rp、開口角度αを15°、後端位置(Lp)を0.4Rp、後端半径(Rd)を0.57Rp、中心軸Cdと回転軸Cpの距離(Lc)を0.08Rpの形状とした。環状型のダクトは、翼弦長の上端長さ及び下端長さを0.4Rp、開口角度を15°、後端位置を0.4Rp、後端半径を0.57Rp、中心軸と回転軸の距離を0.08Rpの形状の形状とした。なお、プロペラの半径Rpは105mmである。
これらのダクトを装着しない状態(裸穀状態)、環状型のダクトを装着した状態、本発明のダクトを装着した状態のそれぞれについて、プロペラ回転数10rps、推進速度1.3m/sの条件で推進性能試験を行い、抵抗試験の結果から船の抵抗及び速度を計測し、EHP(抵抗×速度)を求め、さらに自航試験の結果から自航要素(プロペラと船体及び舵との干渉係数)を求め、BHPと自航要素からEHPを求めた。そして、裸穀状態からのEHP及びBHPの改善率を求めると、図8に示すように、環状型のダクトでは、EHPが約0.7%、BHPが約1.9%の改善率であった。一方、本発明のダクトでは、EHPが約1.7%、BHPが約5.2%の改善率であった。したがって、本発明のダクトは、環状型のダクトよりも、EHPの改善率が約1.0%、BHPの改善率が約3.3%も優れていることがわかる。省エネ効果は、BHPの改善率により論じられるのが一般的であり、本発明のダクト装置は、ダクト装置を付加しない場合よりも約5.2%、環状型のダクト装置を付加した場合よりも約3.3%優れた省エネ効果を有することになる。
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、第3実施形態〜第5実施形態において3枚目の連結板を外殻4の中間部に設けるようにしてもよいし、全ての実施形態において外殻4の中間部に2枚以上の連結板を付加してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
本発明の船舶のダクト装置を示す側面図である。 本発明の船舶のダクト装置を示す正面図であり、(A)は図1におけるII−II矢視図、(B)は図2(A)にプロペラの位置を投影した図である。 本発明の第2実施形態を示す側面図である。 本発明の第2実施形態を示す正面図であり、(A)は図3におけるIV−IV矢視図、(B)は図4(A)にプロペラの位置を投影した図である。 プロペラ面における肥大船の伴流分布例を示す図である。 ダクトに流入する船体伴流の流速及び流入角度の周方向分布図である。 本発明の他の実施形態を示す図であり、(A)は第3実施形態、(B)は第4実施形態、(C)は第5実施形態を示している。 環状型のダクト装着時と本発明のダクト装着時のEHP及びBHPの改善率を比較した図である。
符号の説明
1 プロペラ
2 船尾部
3 ダクト
4 外殻
4u 上端
4d 下端
4f 前端
4r 後端
4e 延長部
5,5m 連結板
6 船体
7 舵

Claims (11)

  1. プロペラの前方の船尾部に所定形状のダクトを配置して省エネルギー効果を得るようにした船舶のダクト装置であって、
    前記ダクトは、略円錐台形状の筒を中心軸を含む平面で略半分に切断した略半円錐台形状の外殻と、該外殻を前記船尾部に固定する複数の連結板と、を備え、前記外殻の径の短い方をプロペラ側に向けるとともに前記外殻が前記プロペラの上半分の部分と相対するように前記外殻を配置したことを特徴とする船舶のダクト装置。
  2. 前記外殻の母線の長さが上端部で最も長く下端が最も短く形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の船舶のダクト装置。
  3. 前記外殻の中心軸を含む平面で前記外殻を切断したときの断面が内側に凸な翼形状に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船舶のダクト装置。
  4. 前記外殻の上端部の翼弦長が前記プロペラの半径に対して60%以上100%以下の長さであり、前記外殻の下端部の翼弦長が前記プロペラの半径に対して40%以下の長さである、ことを特徴とする請求項3に記載の船舶のダクト装置。
  5. 前記外殻の中心軸が前記プロペラの回転軸よりも上方になるように前記外殻が配置されている、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の船舶のダクト装置。
  6. 前記中心軸と前記回転軸の距離が前記プロペラの半径に対して40%以下の長さである、ことを特徴とする請求項5に記載の船舶のダクト装置。
  7. 前記外殻の開口角度が10°以上20°以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のダクト装置。
  8. 前記外殻の後端位置と前記プロペラの中心位置との距離が前記プロペラの半径に対して20%以上60%以下の長さである、ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の船舶のダクト装置。
  9. 前記外殻の後端の径が前記プロペラの半径に対して50%以上70%以下の長さである、ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の船舶のダクト装置。
    記載の船舶のダクト装置。
  10. 前記外殻を中心軸に垂直な平面で切断したときの前記外殻の中心角が150°以上210°以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の船舶のダクト装置。
  11. 前記外殻は、前記外殻を中心軸に垂直な平面で切断したときの前記外殻の両端部を接線方向に延長した延長部を備え、該延長部に前記連結板が接続されている、ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の船舶のダクト装置。
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