JP6234835B2 - 船舶のスラスター - Google Patents

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Description

本発明は、船舶のスラスターに関し、特にスラスタートンネルの開口部の抵抗を低減する構造に関する。
従来から、船舶の接岸や離岸を容易にするためにサイドスラスター(以下、単にスラスターという)を備えた船舶が知られている。スラスターは、船体の左右を貫通して設けられたスラスタートンネル(以下、単にトンネルという)と、このトンネルの内部に設置されたスラスタープロペラとを備えており、作動時にはプロペラが回転することで横方向の推力を発生させる。
ところで、スラスターは航行中は使用されないため、航行中にもトンネルの開口部が開放されていると、開口部に沿う水流が乱れて抵抗が増加し、推進に必要な主機関の負荷の増大を招く要因となりかねない。このような事態を回避するために、トンネルの開口部に開閉可能なカバーを設け、スラスター作動時は開口部を開放し、航行中は開口部を閉鎖して抵抗を低減させる構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、トンネルの開口部をカバーで閉鎖する代わりに、航行中にトンネルの開口部を覆う水カーテンを形成して、船体の推進抵抗を低減するようにした技術も提案されている。例えば特許文献2には、トンネルの前縁部の周長外板又はその内部に沿って、航行時にトンネルの開口部を覆う水カーテンを形成するように、海水又は水を噴射する噴射ノズルが配設された船舶が開示されている。この技術では、機関室又は補機室に配置されたポンプによって噴射ノズルに海水又は水を送水している。
実公平7−19998号公報 特開2011−218959号公報
しかしながら、上記の特許文献1の構造では、トンネルの開口部全体をカバーで閉鎖するため、重量が増大し、その分推進に必要な主機関の負荷の増大を招くという課題がある。また、特許文献2の技術は、開口部をカバーで塞ぐ代わりに水カーテンで覆っており重量増大という課題は発生しない。しかし、水カーテンを形成するためにはポンプを駆動しなければならないため、その分の駆動エネルギが必要となり、発電機関の負荷が増加しかねない。発電機関の負荷の増大は燃料消費量の増大に繋がり、運行コストの増加を招来することとなる。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、動力源を設けることなくトンネルの開口部における抵抗を低減することができるようにした、船舶のスラスターを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する船舶のスラスターは、船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが配置されたスラスタートンネルと、前記スラスタートンネルの前記内部と船外とを連通する左右の連通部と、スラスターを使用しない航行時に、前記船外から前記スラスタートンネル内に流体を導入するとともに前記左右の連通部のそれぞれから前記船外へ前記流体を排出する導入管と、を備える。前記導入管は、一端に設けられ、前記船体の没水部に開口した入口と、他端に設けられ、前記スラスタートンネルの内壁であって前記左右の連通部のそれぞれに向かって開口した出口と、航行中に前記入口の方が前記出口よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造と、を有する。
(2)前記スラスターは、前記連通部の船首側の縁部に外方へ突設された突起部を備えることが好ましい。この場合、前記圧力差発生構造として、前記出口が前記突起部により生成される負圧領域内に設けられることが好ましい。
(3)前記突起部は、前記船体の外板に対して略垂直に突設されることが好ましい。
(4)前記突起部は、前記縁部に沿って延設される帯状の板であることが好ましい。
(5)また、前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられることが好ましい。すなわち、前記スラスターは、バウスラスターであることが好ましい。
(6)この場合、前記圧力差発生構造として、前記入口が前記船首部の前端部に設けられ、前記入口の開口面積が前記出口の開口面積よりも大きく形成されていることが好ましい。
(7)また、前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられ、前記圧力差発生構造として前記入口が前記船首部の前端部に設けられるとともに、前記入口は前記船体の船底にも設けられることが好ましい。すなわち、前記導入管の前記入口が、前記船首部の前端部と前記船底の二箇所に設けられることが好ましい。
(8)前記スラスターは、前記船体の外板に開閉可能に設けられ、前記スラスタートンネルの開口部の一部を塞ぐカバーを備え、前記連通部は、前記カバーの全閉時に閉鎖されない前記開口部の他部であることが好ましい。
(9)この場合、前記カバーは、前記開口部のうち船首側を塞ぎ、前記連通部は前記開口部のうち船尾側に位置することが好ましい。
開示の船舶のスラスターによれば、スラスタートンネル内に流体を導入するとともにこの流体を連通部から船外へ排出する導入管を備えているため、スラスターを使用しない航行中において、連通部を通じて船外からスラスタートンネル内に流体が入り込むことを防止することができる。これにより、航行中の連通部で発生する抵抗を低減することができる。
また、導入管は、航行中に入口の方が出口よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造を有し、船体に沿って流れる水流を利用してスラスタートンネル内に流体を導入して、この流体を連通部から船外へ排出する。そのため、例えばポンプのような機械装置等を設ける必要がなく、機械装置等を駆動させるための駆動エネルギが不要となり、より高い燃費低減効果を得ることができる。また、機械装置等のメンテナンス費用などの付加的費用も不要となるため、コストを削減することができる。
さらに、このような導入管による水流効果によって抵抗を低減できるため、スラスタートンネルの開口部をカバーで塞ぐような構造と比較して、重量増を抑制することができる。これにより、発電機関の負荷の増大を抑制することができ、燃料消費量の増大及び運行コストの増加を防ぐことができる。
第一実施形態に係るスラスターを備えた船舶の全体構成を示す模式的な側面図である。 第一実施形態に係るスラスターの構成を説明するための模式図であり、(a)はバウスラスターの縦断面図(図1のA−A矢視断面図)、(b)はスターンスラスターの縦断面図(図1のB−B矢視断面図)である。 第一実施形態に係るバウスラスターの構成を説明するための模式図であり、(a)はバウスラスター周辺の右側面図、(b)は図2(a)及び図3(a)のC−C矢視断面図である。 第一実施形態に係るスターンスラスターの構成を説明するための模式的なスターンスラスター周辺の右側面図である。 第一実施形態に係るバウスラスターの態様例を説明するためのスラスター周辺の右側面図である。 第二実施形態に係るバウスラスターの構成を説明するための模式図であり、(a)はバウスラスター周辺の右側面図、(b)は図6(a)のF−F矢視断面図である。 図6のスラスターに設けられるカバーの開閉構造を説明するための模式図であり、(a)は船外から見たときのカバーの正面図、(b)はトンネル内側から見たときのカバーの正面図(トンネルは断面で示す)である。 図7のカバーの開放動作を説明するための図7(b)のE−E矢視断面図であり、(a)は閉鎖状態、(b)は全開状態である。 第二実施形態に係るスラスターの態様例を説明するためのバウスラスター周辺の右側面図である。 第二実施形態に係るスラスターの態様例を説明するためのスラスター周辺の右側面図である。 バウスラスターのトンネルの開口部における推進抵抗を説明するための模式的な断面図である。
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
また、以下の説明では、船舶の進行方向(船首側)を前方、逆側(船尾側)を後方とし、前方を基準に左右を定める。また、重力の方向を下方、その逆を上方とし、さらに船体の中心に向かう側を内側、その逆を外側として説明する。
[1.第一実施形態]
[1−1.全体構成]
第一実施形態に係る船舶のスラスターについて、図1〜図4を用いて説明する。本実施形態に係る船舶は、図1に示すように、船体1の船首部1Bにバルバスバウ2を備え、船尾部1Sにスクリュープロペラ3及び舵4を備えている。バルバスバウ2,スクリュープロペラ3,舵4及び後述のスラスター6は、何れも船体1の軽喫水時の喫水線10の下方に設けられる。なお、船舶の喫水線10よりも下方を没水部1Wという。
船首部1Bには、その上部側面にアンカーチェーン5cが通されるホースパイプ(図示略)の一端5hが開口している。アンカーチェーン5cの先端にはアンカー5aが繋がれている。また、船首部1B及び船尾部1Sには、それぞれ喫水線10の下方の位置に、船舶に左右方向(以下、横方向という)の推力を発生させるバウスラスター6B及びスターンスラスター6Sが設けられる。バウスラスター6Bは船底1bの近くに配置され、スターンスラスター6Sはスクリュープロペラ3のプロペラシャフト3aと干渉しないようにプロペラシャフト3aよりも上方に設けられる。
図1には、バウスラスター6Bが一つ設けられ、バウスラスター6Bよりも小さいスターンスラスター6Sが二つ設けられた船舶を例示するが、バウスラスター6B及びスターンスラスター6Sの個数や大きさは特に限定されず、船舶ごとに適宜設定される。また、バウスラスター6B及びスターンスラスター6Sは、大きさや配置位置に違いがあるものの、同様の構成を有する。
そこで、以下の説明では、バウスラスター6B及びスターンスラスター6Sの同様の構成要素を示す符号について、数字は同一とし、バウスラスター6Bには数字の後ろには「B」を付し、スターンスラスターには数字の後ろには「S」を付している。また、バウスラスター6Bとスターンスラスター6Sとを特に区別しない場合には、単にスラスター6と呼び、同様の構成要素に関しても特に区別しない場合には「B」「S」を省略して説明する。
[1−2.スラスターの構成]
次に、スラスター6の構成について説明する。図2(a)はバウスラスター6Bの模式的な縦断面図(図1のA−A矢視断面図)であり、図2(b)はスターンスラスター6Sの模式的な縦断面図(図1のB−B矢視断面図)ある。
スラスター6は、図2(a)及び(b)に示すように、船体1に横方向へ貫通して設けられた円筒状のスラスタートンネル61(以下、単にトンネル61という)と、このトンネル61の内部に設置されたスラスタープロペラ62(以下、単にプロペラ62という)とを備えている。スラスター6は、船舶の接岸時又は離岸時に、トンネル61の内部のプロペラ62が回転することで横方向の推力を発生させる。ここでは、プロペラ62は可変ピッチ式であるものとする。
図2(a)に示すように、バウスラスター6Bのトンネル61Bは、船体1の膨らんだ部分を貫通するように設けられており、トンネル61Bの下方の部分は窄んだ形状(下方に行くほど細くなる先細の形状)となっている。また、図2(b)に示すように、スターンスラスター6Sのトンネル61Sは、プロペラシャフト3aよりも上方において船体1を貫通して設けられており、トンネル61Sよりも上方の船体1は外方に拡開した形状となってデッキに繋がっている。トンネル61の両端は、船体1の外板1aに開口している。以下、この開口をトンネル61の開口部63という。トンネル61の左右舷の開口部63は、トンネル61の内部と船外とを連通する連通部として機能する。
ここで、従来構造の船舶の航行中における船体1の周辺(ここではバウスラスターの周辺)の海水や水(以下、流体という)の流れWF(以下、水流WFという)を図11中に二点鎖線で示す。図11に示すように、航行時は船体1に沿って水流WFが生じ、トンネル61Bの開口部63Bの周辺においても船体1に沿って水流WFが発生する。
このとき、トンネル61Bの開口部63Bが開放されていると、開口部63Bの前縁部63Bfまで外板1aに沿った水流WFは、開口部63Bの後端側に行くほどトンネル61Bの内部に進入する。そして、トンネル61Bの後端側の内壁61Bwに衝突して開口部63Bから船外へ流出する。そのため、図11中に破線で囲んだ領域D(開口部63Bの後端側)では、水流WFが干渉し、乱れによって推進抵抗が発生する。なお、スターンスラスターの開口部63Sにおいても同様に推進抵抗が発生する。これらにより、推進に必要な主機関の負荷の増大を招くことがある。
本実施形態に係るスラスター6は、このようなトンネル61の後端側で発生する水流WFの乱れを抑制するために、図3(a),(b)及び図4に示すように、トンネル61内に流体を導入するとともに、この流体を開口部63から船外へ排出する導入管80,90を備えている。そして、スラスター6を使用しない航行時には、船体1に沿って流れる水流WFを利用してトンネル61内に流体を導入して、この流体を開口部63から船外へ排出することで、トンネル61の後端側での水流WFの干渉を防ぎ、抵抗を低減する。
また、本実施形態に係るスラスター6は、トンネル61の後側の内壁61wが、開口部63の近傍において外側に行くほど拡開するように湾曲形成された曲面部61rを有する。曲面部61rは、図3(b)に示すように、トンネル61が開口部63の後方において円弧状に形成された部分である。このような構造により、航行時に船体1に沿う水流WFが開口部63の後端側でトンネル61内に進入しにくいようにし、水流WFがトンネル61の後端側の内壁61wに衝突して乱れることを抑制して、抵抗を低減する。
まず、バウスラスター6Bが備える導入管80について図3(a)及び(b)を用いて説明する。導入管80は、船外の流体をトンネル61B内に取り込むための流通経路であり、船体1の内部において前後方向に延設されている。導入管80の前側の一端81は、船体1の没水部1Wに開口し、導入管80内に船外の流体が入り込む入口(吸込み口)である。一方、導入管80の後側の他端82は、トンネル61Bの内壁61Bwであって開口部63Bに向かって開口し、導入管80内を流通してきた流体がトンネル61B内に出て行く出口(吐出口)ある。以下、導入管80の前側の一端81を入口81ともいい、後側の他端82を出口82ともいう。
導入管80は、入口81から出口82までの間の二箇所に分岐点80a,80bを有する。分岐点80aは、流通経路を左右に分岐させる部分であり、分岐点80bは流通経路を上下方向に分岐させる部分である。ここでは、分岐点80aの方が分岐点80bよりも前方に設けられているが、分岐点80bの方が前方に設けられていてもよい。また、導入管80は、船首部1Bの前端部1fに設けられた一つの入口81と、左右の開口部63Bの近傍に三つずつ設けられた合計六つの出口82とを有する。なお、導入管80の入口81から出口82までの流通経路の形状や入口81,出口82の個数は特に限定されない。
導入管80は、入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられることで航行中に入口81の方が出口82よりも相対的に高圧(すなわち、入口圧力>出口圧力)になり、この構造自体が圧力差発生構造を構成するが、その圧力差が不足する場合は、さらに後述する他の圧力差発生構造を付加する。バウスラスター6Bは、この圧力差発生構造で発生させる圧力差によって、動力源を用いずに導入管80内に流体を流通させる。
次に、スターンスラスター6Sが備える導入管90について図4を用いて説明する。導入管90は、上記の導入管80と同様、船外の流体をトンネル61S内に取り込むための流通経路である。導入管90は、船体1の内部において、船底部からトンネル61Sへ流体を導くために上下方向に延設されている。
導入管90の前側の一端91は、船体1の没水部1Wに開口し、導入管90内に船外の流体が入り込む入口である。一方、導入管90の後側の他端92は、トンネル61Sの内壁61Swであって開口部63Sに向かって開口し、導入管90内を流通してきた流体がトンネル61S内に出て行く出口である。以下、導入管90の前側の一端91を入口91ともいい、後側の他端92を出口92ともいう。
導入管90は、入口91から出口92までの間に、左右方向に分岐する分岐点と、上下方向に分岐する分岐点とを有する。またここでは、導入管90は、船尾部1Bの船底1bに設けられた一つの入口91と、左右の開口部63Sの近傍に二つずつ設けられた合計四つの出口92とを有する。なお、導入管90の入口91から出口92までの流通経路の形状や入口91,出口92の個数は特に限定されない。
導入管90は、さらに、航行中に入口91の方が出口92よりも相対的に高圧になるように(すなわち、入口圧力>出口圧力となるように)、圧力差を発生させる後述の圧力差発生構造を有する。スターンスラスター6Sも、この圧力差発生構造で発生させる圧力差によって、動力源を用いずに導入管90内に流体を流通させる。
[1−3.圧力差発生構造]
圧力差発生構造には、入口圧力を高める構造と、出口圧力を負圧にする構造とがある。前者の構造によれば、周辺圧力を基準とすると、入口圧力は高圧になり、出口圧力は周辺圧力と同程度の圧力であるため、入口圧力と出口圧力との間に圧力差が発生する。一方、後者の構造によれば、出口圧力は負圧になり、入口圧力は周辺圧力と同程度の圧力であるため、入口圧力と出口圧力との間に圧力差が発生する。また、これらを組み合わせることにより、入口圧力と出口圧力との圧力差を大きくすることが可能となる。入口圧力を高める構造は導入管80の入口側に設けられ、出口圧力を負圧にする構造は導入管80及び導入管90の各出口側に設けられる。
まず、バウスラスター6Bが有する圧力差発生構造について説明する。バウスラスター6Bは、入口圧力を高める構造として二つの圧力差発生構造を有する。図3(a)及び(b)に示すように、導入管80は、入口81が前方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積が六つの出口82の開口面積の合計よりも大きくなるように形成されている。このような構造により、導入管80の入口圧力が高められる。さらに、導入管80の入口81は、上記したように船首部1Bの前端部1fに設けられ、前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口している。このような構造により、流れの圧力を利用して導入管80の入口圧力がさらに高められる。
一方、図3(a)及び(b)に示すように、出口圧力を負圧にする構造として、導入管80の出口82は、左右方向では開口部63Bの直ぐ内側に配置され、前後方向ではトンネル61Bの内壁61Bwのうち前側の面に配置される。この出口82が配置される位置には、外板1a上に設けられた突起部84により負圧領域Nが生成される。
突起部84は、開口部63Bの前側に位置する前縁部63Bf(船首側縁部)に沿って湾曲して延設されるとともに外方に向かって突設された板で形成されている。ここでは、突起部84は船体1の外板1aに対して略垂直に突設される。図3(b)に示すように、船体1に沿う水流WFの一部は、突起部84の下流側において渦となり、この渦効果によって突起部84の後背部〔図3(b)中の領域N〕には負圧が発生する。言い換えると、突起部84は、図3(b)中に一点鎖線で示すように、その下流側に所定範囲の負圧領域Nを生成する。この負圧領域N内に導入管80の出口82が設けられることで、導入管80の出口圧力が負圧にされる。
次に、スターンスラスター6Sが有する圧力差発生構造について説明する。スターンスラスター6Sは、圧力差発生構造として、バウスラスター6Bと同様の出口圧力を負圧にする構造を有する。すなわち、図4に示すように、導入管90の出口92は、左右方向では開口部63Sの直ぐ内側に配置され、前後方向ではトンネル61Sの内壁61Swのうち前側の面に配置される。この出口92が配置される位置には、外板1a上に設けられた突起部84により負圧領域Nが生成される。突起部84は、開口部63Sの前側に位置する前縁部63Sfに沿って湾曲して延設されるとともに外方に向かって突設された板で形成されている。ここでは、突起部84は船体1の外板1aに対して略垂直に突設される。
このような突起部84により、上述したように突起部84の後背部(図4中の領域N)には負圧が発生する。言い換えると、突起部84は、図4中に一点鎖線で示すように、その下流側に所定範囲の負圧領域Nを生成する。この負圧領域N内に導入管90の出口92が設けられることで、導入管90の出口圧力が負圧にされ、導入管90の入口圧力と出口圧力との間に圧力差が発生する。
なお、スターンスラスター6Sは、導入管90の内部に流体を積極的に導く案内板93を有する。案内板93は、導入管90の入口91の船尾側の縁部に、船底1bから下方に向かってやや前側に傾斜して設けられる。つまり、船底1bに入口91を有する導入管90の場合は、出口圧力を負圧にして圧力差を発生させる構造に加え、入口91から導入管90内に流体が入りやすいようにするガイドを設けることで、導入管90内に流体を流通させる。
[1−4.作用,効果]
上述のように構成されたバウスラスター6Bであれば、バウスラスター6Bを使用しない航行時において、導入管80の一端側では、前端部1fの水流WFの圧力により入口圧力が高くなる。また、導入管80の入口81はラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積の方が出口82の開口面積よりも大きく形成されているため、入口圧力が高くなるとともに入口81から流入した流体の流速が上がり、勢いよく他端側へ流れていく。
一方で、導入管80の他端側では、船体1に沿う水流WFの一部が突起部84の下流側において渦となり、突起部84の後背部に負圧領域Nが生成される。この負圧領域N内に出口82が設けられているため、導入管80の出口圧力が負圧になり、導入管80内を流通する流体がトンネル61B内に吸い込まれるように排出される。トンネル61B内に排出された流体は、開口部63Bから船外へと排出される。
同様に、上述のように構成されたスターンスラスター6Sであれば、スターンスラスター6Sを使用しない航行時において、導入管90の他端側では、船体1に沿う水流WFの一部が突起部84の下流側において渦となり、突起部84の後背部に負圧領域Nが生成される。この負圧領域N内に出口92が設けられているため、導入管90の出口圧力が負圧になり入口圧力よりも低圧になるため、導入管90内に流体を吸い込み、この流体をトンネル61S内に排出する。トンネル61S内に排出された流体は、開口部63Sから船外へと排出される。なお、導入管90の入口91には案内板93が設けられているため、船底1bに沿う流体を導入管90内に積極的に導くことができる。
したがって、上記の船舶のスラスター6によれば、トンネル61内に流体を導入するとともに、この流体をトンネル61の内外を連通する開口部63から船外へ排出する導入管80,90を備えているため、スラスター6を使用しない航行中において、開口部63を通じて船外からトンネル61内に流体が入り込むことを防止することができ、航行中の開口部63抵抗を低減することができる。
また、導入管80,90は、航行中に入口81,91の方が出口82,92よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造を有し、船体1に沿って流れる水流WFを利用してトンネル61内に流体を導入して、この流体を開口部63から船外へ排出する。そのため、例えばポンプのような機械装置等を設ける必要がなく、機械装置等を駆動させるための駆動エネルギが不要となり、より高い燃費低減効果を得ることができる。また、機械装置等のメンテナンス費用などの付加的費用も不要となるため、コストを削減することができる。
さらに、このような導入管80,90による水流効果によって抵抗を低減できるため、開口部63をカバーで塞ぐような構造と比較して、重量増を抑制することができる。これにより、発電機関の負荷の増大を抑制することができ、燃料消費量の増大及び運行コストの増加を防ぐことができる。
上記の船舶のスラスター6は、開口部63の前側の縁部(前縁部)63fに外方へ突設された突起部84を備えており、圧力差発生構造として、この突起部84により生成される負圧領域N内に導入管80,90の出口82,92が設けられている。このように、導入管80,90の出口圧力を負圧にすることで、導入管80,90の入口圧力と出口圧力とに相対的な圧力差を発生させることができ、導入管80,90内に積極的に流体を吸い込む(導入する)ことができる。これにより、開口部63から排出する流体の流量を増大させることができ、航行中に開口部63において水流WFが乱れることを防止し、抵抗をさらに低減することができる。
さらに、突起部84を設ける本圧力差発生構造によれば、出口圧力を負圧にすることができるため、入口圧力を高める構造が設けられていなくてもよい。すなわち、導入管90のように、入口91を船体1の船底1bに設けることも可能である。そのため、本圧力差発生構造を採用することで、導入管80,90の構造の自由度を高めることができる。
また、ここでは突起部84が船体1の外板1aに対して略垂直に突設されるため、突起部84の後背部に負圧を発生させやすくすることができる。これにより、導入管80,90内に流体を導入しやすくすることができ、開口部63から船外へ排出される流体の流量を増大させることができるため、開口部63での抵抗をより低減させることができる。
さらに、突起部84は、開口部63の前縁部63fに沿って延設される帯状の板で構成されているため、広い負圧領域Nを生成することができ、導入管80,90の出口82,92の設置位置の自由度を高めることができる。また、複数の突起部を部分的に設けた場合と比較して、突起部84を帯状に形成することで、乱流の発生を抑制することができる。
また、バウスラスター6Bの場合は、導入管80の入口81を船首部1Bの前方に向いた面に設けることができるため、航行時の流れの圧力を利用しやすく、トンネル61B内に流体を導入しやすくすることができる。
特に本実施形態では、導入管80は、圧力差発生構造として、入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられ、さらに入口81の開口面積が出口82の開口面積よりも大きく形成されている。そのため、流れの圧力を最も効果的に利用して、入口圧力を高めることができる。
また、船外の流体の流れに沿って導入管80を前後方向に延設させることができるため、流体をトンネル61B内にさらに導入しやすくすることができる。これにより、開口部63Bから船外へ排出される流体の流量を増大させることができるため、開口部63Bでの抵抗をより低減させることができる。さらに、本構造の場合、入口81の位置を前端部1fに設定するだけでよいため、構成を簡素化することができ、コストを低減することができる。これに加えて、導入管80の両端の開口面積を変えることによっても圧力差を発生させて導入管80に流体を導入することができるため、簡素な構成でコストを低減しながら、導入管80内に流体を流通させることができる。
また、本実施形態に係るスラスター6は、トンネル61の後側の内壁61wが、開口部63の近傍において外側に行くほど拡開するように湾曲形成された曲面部61rを有しているため、船体1に沿う水流WFがトンネル61内に進入しにくくすることができ、トンネル61の後端側の内壁61wに衝突して乱れることを抑制することができる。これによっても抵抗を低減することができる。
なお、離接岸時においてスラスター6を使用する場合は、導入管80,90の入口81,91と出口82,92との間に圧力差が発生しないため、導入管80,90には流体が流れない。そのため、導入管80,90を設けたとしても、スラスター6による横方向の推力の発生を妨げるようなことはない。
[1−5.態様例]
上記の第一実施形態は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、バウスラスター6Bのトンネル61B内に流体を導入する導入管80′を、船尾部1Sに設けられる導入管90と同様の構造としてもよい。
すなわち、導入管80′が、船体1の内部において上下方向に延設され、前側の一端(入口81′)が船体1の船底1bに開口して設けられていてもよい。なお、導入管80′の出口82は上記実施形態と同一である。すなわち、突起部84により生成される負圧領域N内に出口82が設けられている。なお、導入管80′の入口面積と出口面積とは、同一であってもよいし、入口81′の開口面積が出口82の総開口面積よりも大きく形成されていてもよい。また、入口81′には、上記の案内板93と同様の構成の案内板85が設けられている。
このような構造であっても、航行中に導入管80′の出口圧力が入口圧力よりも相対的に低くなる(入口圧力>出口圧力となる)ため、導入管80′には流体が導入され、トンネル61Bの開口部63Bからこの流体が排出されることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本構造の場合、導入管80′の長さを短くすることができる。また、案内板85を設けることで、積極的に流体を導入管80′内に導くことができる。
なお、突起部84の具体的な形状(例えば、外板1aからの突出量,前縁部63fに沿う長さ,前後方向長さ,平面状か曲面状かなど)は、後背部に生成される負圧領域Nの大きさや導入管80,80′,90の出口82,92の位置、航行中の突起部84による抵抗の大きさ等を考慮して、適宜設定される。また、突起部84が外板1aに対して傾斜して(すなわち略垂直ではない角度で)設けられていてもよいし、あるいは、出口82,92の部分にのみ負圧領域Nを生成するように、出口82,92の個数に合わせて開口部63の前縁部63fに沿って部分的に設けられていてもよい。
また、案内板93,85は、流体を導入管90,80′内に導くことのできる形状であり、入口91,81′の縁部に沿って設けられていることが好ましいが、導入管90,80′の長さや入口と出口の圧力差の大きさから、案内板93,85を設けなくても導入管90,80′に流体を流通させることができる場合は、案内板93,85を省略してもよい。
また、バウスラスター6Bにおいて、出口圧力を負圧にする構造を有する場合、図3(a)に示すように、導入管80に流体を導く入口81を船首部1Bの前端部1fに設けるとともに、図3(a)中に二点鎖線で示すように船底1bにも開口した入口81′から導入管80に繋がる導入管80′を設けてもよい。すなわち、二股に分かれた入口81,81′からそれぞれ外部の流体を導入し、トンネル61B内に排出するように構成してもよい。このように構成された導入管80,80′によっても、第一実施形態及び上記の態様例で説明した効果と同様の効果を得ることができる。なお、船底1bの入口81′に、図5に示す案内板85を設け、入口81′へ積極的に流体を導いてもよい。
[2.第二実施形態]
[2−1.スラスターの構成]
次に、第二実施形態に係る船舶のスラスター8について、図6〜図9を用いて説明する。なお、すでに説明した構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、バウスラスター8Bを例に挙げて説明する。図6(a)は、船首部1Bに設けられたバウスラスター8Bの周辺の右側面図であり、図6(b)は図6(a)のF−F矢視断面図である。
図6(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係るバウスラスター8Bは、第一実施形態に係るバウスラスター6Bに対して、トンネル61Bの開口部63Bの一部を塞ぐ開閉式のカバー64Bが設けられる。すなわち、カバー64Bは、船体1の左右舷開口にそれぞれ設けられ、同時に開閉駆動される。カバー64Bは、ここではガラス繊維や炭素繊維などを用いた繊維強化プラスチックで成形されている。これにより、カバー64Bを設けることによる重量増大が抑制され、後述するカバー64Bを開閉するための構造全体を小型化することができる。カバー64Bは、バウスラスター8Bの使用時は開放され、バウスラスター8Bを使用しない航行時は閉じられる。
本実施形態に係るカバー64Bの構成を図7(a),(b)及び図8(a),(b)に示す。図7(a)は、船外から見たときのカバー64Bの正面図(船体1のカバー64B周辺の右側面図)、図7(b)はトンネル61B内から見たときのカバー64Bの正面図(トンネル61Bの縦断面図)である。また、図8(a)は図7(b)のE−E矢視断面図であってカバー64の閉鎖状態を示し、図8(b)はカバー64Bの全開状態を示す。
図7(a)に示すように、カバー64Bは、正面視において、円形の開口部63Bを塞ぐように、開口部63Bと同一又は略同一の直径を有する円形に形成されており、ここではさらに船尾側の一部が切り欠かれた形状となっている。この船尾側の一部は、カバー64Bの全閉時でも常にトンネル61Bの内外を連通する部分であり、以下、この部分を連通部65Bと呼ぶ。なお、本実施形態では、トンネル61Bには曲面部61Brは設けられていない。
すなわち、カバー64Bは、開口部63Bのうち船首側を部分的に塞ぐ形状に形成されており、ここでは開口部63Bの半分以上を塞ぐ大きさに形成されている。なお、カバー64Bは、その外面形状が船体1の外板1aの曲面に沿うように形成されている。つまり、カバー64Bは、閉鎖時に外板1aと連続した曲面を形成する。
カバー64Bと連通部65Bとの境界をなすカバー64Bの後縁部(船尾側縁部)64Brは、カバー64Bの円周上の二点P1,P2を結ぶ弦に相当し、ここでは船尾側に設けられるため開口部63Bの直径よりも短くなっている。カバー64Bは、この弦(後縁部64Br)とこれら二点P1,P2間の船首側の円弧とで囲まれた形状に形成される。一方、連通部65Bは、この弦(後縁部64Br)とこれら二点P1,P2間の船尾側の円弧とで囲まれた形状となる。カバー64Bの後縁部64Brは、垂直方向に対して上方が船尾側に傾いて設けられる。
バウスラスター8Bの開口部63Bの周辺の水流WFは、図7(a)に二点鎖線で示すように水平方向に対して下流側が船底に向かってやや傾斜することが多い。特にバルバスバウ2を備えた船舶の場合、バルバスバウ2の周辺を流れた流体がバウスラスター8Bの開口部63Bの近傍を通り船底に向かう。つまり、カバー64Bの後縁部64Brは、バルバスバウ2から開口部63Bに至る下方傾斜水流に対し、略直交する傾きとなるように設けられる。
[2−2.カバーの開閉構造と動作]
カバー64Bは、図7(a),(b)及び図8(a),(b)に示すように、カバー64Bの裏面64Bc(トンネル61Bの内部側の面,内面)に設けられたリンク機構70により、船体1の外部の下方(矢印OPの方向)に向かって外板1aに沿ってスライド開閉される。すなわち、カバー64Bの開閉方向は上下方向であり、開放方向OPは下方である。
リンク機構70は、一端が船体1側に枢着され、他端がカバー64B側に枢着された二本のリンクアーム71,72を二組(すなわち、リンクアーム71,72をそれぞれ二本ずつ)有する。このリンク機構70は平行リンク機構であり、油圧シリンダ75により駆動されることでカバー64Bを上下方向に開閉する。二組のリンクアーム71,72は、カバー64Bの開閉方向(上下方向)に延在し、この開閉方向と直交する方向に並設される。
一方のリンクアーム71は、カバー64Bの開放方向側(下側)に配設され、図8(a)に示すように一部が曲線状に屈曲した形状に形成されている。ここでは、リンクアーム71は、J字状に湾曲形成されており、以下、リンクアーム71をJアーム71と呼ぶ。これに対して、他方のリンクアーム72は、カバー64Bの開放方向OPの逆側(上側)に配設される直線状の直線アームである。以下、他方のリンクアーム72をロッド72と呼ぶ。
Jアーム71は、船体1側の一端(以下、基端部71aという)が、トンネル61Bの内壁61Bwを貫通して延設された駆動軸73に固定され、カバー64B側の他端(以下、先端部71bという)が、カバー64Bの裏面64Bcの上下方向(開閉方向)の略中央に回動可能に接続される。駆動軸73は、油圧シリンダ75により回動される軸であり、開口部63Bよりも内側において、トンネル61Bの下部を前後方向に貫通するように略水平に設けられる。
図7(b)及び図8(a)に示すように、二本のJアーム71の各基端部71aは、トンネル61Bの内壁61Bwの近傍で駆動軸73に結合される。駆動軸73の一端には、腕部76を介して油圧シリンダ75のピストンロッド75aが接続される。油圧シリンダ75は、基端部(ピストンロッド75aと逆側の端部)を中心に回動可能である。腕部76は、一端に駆動軸73が固定され、他端にピストンロッド75aが接続されている。油圧シリンダ75のピストンロッド75aが伸縮すると、腕部76が回転し、駆動軸73は腕部76と一体で回転するため、駆動軸73に固定されたJアーム71も一体で回転する。
ロッド72は、船体1側の一端(以下、基端部72aという)が、トンネル61Bの内壁61Bwを貫通してトンネル61B内に突設された支持部74の先端に枢支され、カバー64B側の他端(以下、先端部72bという)が、カバー64Bの裏面64Bcの上端部(すなわち開放方向OPの逆側の端部)に回動可能に接続される。支持部74は、ロッド72の基端部72aを支持する部分であり、開口部63Bよりも内側においてトンネル61Bの上下方向略中央部に設けられる。図7(b)に示すように、二つの支持部74は、トンネル61Bの内壁61Bwの前部及び後部からそれぞれ中心に向かって突設される。これにより、二本のロッド72の各基端部72aはトンネル61Bの内壁61Bwから離隔して(トンネル61Bの中心側において)、支持部74に結合される。
ここでは、ロッド72の基端部72aの方がJアーム71の先端部71bよりもトンネル61Bの中心側に配置される。これにより、ロッド72の先端部72bを、カバー64Bの上縁部64Buに近接させて配置することができる。ロッド72の先端部72bの位置をカバー64Bの開放方向OPと逆側の縁部に近づけることで、カバー64Bの全開時に開口部63Bとカバー64Bとが重複する面積を小さくすることができる。ロッド72は、Jアーム71の基端部71aと先端部71bとを結んだ直線L〔図8(a)中の一点鎖線〕の長さと同一又は略同一の長さを有し、直線Lと平行又は略平行に設けられる。
Jアーム71は、カバー64Bの全開時に外板1aに沿う直線部71cを先端部71b側に有し、カバー64Bの全開時に開口部63Bの下縁部63Beとの接触を回避する湾曲部71dを基端部71a側に有する。直線部71cは、一端である先端部71bから内側に行くほど直線Lから離隔するように延設され、他端である先端部71bと反対側の端部に湾曲部71dが連続して設けられる。湾曲部71dは、内側に向かって曲線状に凸に形成された部分であり、カバー64Bの開放時にトンネル61Bの周辺の外板1aと干渉しないような形状に形成される。
このように構成されたリンク機構70によるカバー64Bの開放動作と閉鎖動作とについて説明する。トンネル61Bの左右のカバー64Bは、バウスラスター8Bを作動させるときに同時に開放され、バウスラスター8Bを停止させるときに同時に閉鎖される。バウスラスター8Bを作動させるときは、図8(b)に示すように、油圧シリンダ75のピストンロッド75aが伸長し、腕部76が回転することで、駆動軸73も図中反時計回りに回転する。
これに伴い、Jアーム71及びロッド72は、各基端部71a,72aを中心に各先端部71b,72bが船外に向かって移動する方向へ回転する。ここで、Jアーム71の直線Lとロッド72とは長さが同一又は略同一であるため、各基端部71a,72aを中心とした回転半径は同一又は略同一となる。すなわち、カバー64Bは閉鎖状態での外板1aに対する傾きを保持したまま、船外に向かって開放される。
Jアーム71は、湾曲部71dが開口部63Bの下縁部63Beとの接触を回避するとともに直線部71cが外板1aとカバー64Bとの間に収まる。これにより、Jアーム71は、その先端部71bが開口部63Bの下縁部63Beよりも下方まで移動するように回転し、これに伴ってロッド72もJアーム71と同一又は略同一の角度だけ回転する。つまり、Jアーム71及びロッド72は、図8(b)中に一点鎖線r1,r2で示す軌跡をそれぞれ辿って下方へ移動する。したがって、カバー64Bは、外板1aに沿ってスライド開放され、全開状態では開口部63Bとカバー64Bとの重複部分が小さくなる。リンク機構70は、カバー64を外板1aに沿ってスライド開閉させるガイド機構として機能する。
また、カバー64Bは、開放動作中に船体1の外板1aから離隔する距離が短く、さらに下方に向かって外板1aに沿ってスライド開放されるため、アンカーチェーン5cとの接触が回避される。バウスラスター8Bは、カバー64Bが開放された後にプロペラ62Bが回転されることで、横方向の推力を発生する。
一方、バウスラスター8Bを停止させるときは、開放動作と逆の閉鎖動作によりカバー64Bがスライド閉鎖される。すなわち、油圧シリンダ75のピストンロッド75aが収縮して腕部76が開放時と逆方向に回転することで、駆動軸73も開放時と反対方向に回転する。これに伴い、Jアーム71及びロッド72は、各基端部71a,72aを中心に開放時と反対方向に回転し、各先端部71b,72bは図8(b)中に一点鎖線r1,r2で示す軌跡をそれぞれ辿って上方へ移動する。これにより、バウスラスター8Bを使用しないときは、開口部63Bがカバー64Bにより塞がれる。
[2−3.圧力差発生構造]
カバー64Bを備えたバウスラスター8Bにも、上記の第一実施形態で説明した導入管80と同様の構成の導入管80が設けられる。すなわち、図6(a)及び(b)に示すように、導入管80は、前側の一端(入口81)が船首部1Bの前端部1fに開口し、後側の他端(出口82)がトンネル61Bの内壁61Bwであって連通部65Bに向かって開口している。
トンネル61Bの開口部63Bは、カバー64Bが閉鎖状態であっても連通部65Bにおいてトンネル61Bの内外が常に連通状態となっている。導入管80は、この連通部65Bを通じてトンネル61Bの内側から船外へ流体を排出することで、船外から連通部65Bを通じてトンネル61B内へ流体が入り込まないようにするためのものである。導入管80は、第一実施形態と同様、航行中に入口圧力が出口圧力よりも相対的に高くなるように圧力差を発生させる圧力差発生構造を有する。
入口圧力を高める構造は、第一実施形態と同一である。すなわち、導入管80の入口81は、船首部1Bの前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口している。また、入口81の開口面積が出口82の総開口面積よりも大きくなるように形成されている。一方、出口圧力を負圧にする構造は、突起部83及び導入管80の出口82の位置が第一実施形態とは異なる。
突起部83は、連通部65Bの前側に位置するカバー64Bの後縁部64Br(船首側縁部)の上部及び下部において、カバー64Bの表面64Bdから外方に向かって突設されている。ここでは、突起部83は船体1の外板1aに対して略垂直に(言い換えると、カバー64Bの表面64Bdに対して略垂直に)突設される。また、突起部83は、後縁部64Brの上部及び下部において、それぞれ後縁部64Brに沿って突設される。
これにより、突起部83の後背部〔図9(a),(b)中の領域N〕には負圧が発生する。導入管80の出口82は、突起部83により生成される負圧領域N内に位置するように、左右方向ではカバー64Bの裏面64Bcの直ぐ内側であって、前後方向ではトンネル61Bの内壁61Bwに接するカバー64Bの後縁部64Brの直下流に配置される。
[2−4.作用,効果]
このように構成されたバウスラスター8Bであれば、バウスラスター8Bを使用しない航行時において、導入管80の一端側では、前端部1fの水流WFの圧力により入口圧力が高くなる。また、導入管80の入口81はラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積の方が出口82の開口面積よりも大きく形成されているため、入口圧力が高くなるとともに入口81から流入した流体の流速が上がり、勢いよく他端側へ流れていく。
一方で、導入管80の他端側では、船体1に沿う水流WFの一部が突起部83の下流側において渦となり、突起部83の後背部に負圧領域Nが生成される。この負圧領域N内に出口82が設けられているため、導入管80の出口圧力が負圧になり、導入管80内を流通する流体がトンネル61B内に吸い込まれるように排出される。トンネル61B内に排出された流体は、カバー64Bにより閉鎖されない連通部65Bから船外へと排出される。
したがって、上記の船舶のバウスラスター8Bによれば、トンネル61Bの開口部63Bの一部を塞ぐカバー64Bが設けられているため、トンネル61の内外を連通する連通部65Bの面積を小さくすることができる。これにより、導入管80によって得られる上記第一実施形態の効果に加えて、航行中の抵抗をさらに低減することができる。また、連通部65Bの面積が小さくなるため、連通部65Bから船外へ排出する流体の流量を、第一実施形態の構成よりも少なくすることができる。これにより、導入管80や突起部83の大きさを小さくすることができる。
また、カバー64Bは開口部63Bのうち船首側を塞ぐため、連通部65Bは開口部63Bの船尾側に形成されることになる。そのため、開口部63Bの前縁部63Bfまで外板1aに沿った水流WFは、そのままカバー64Bの表面64Bdに沿ってカバー64Bの後縁部64Brまで流れる。つまり、カバー64Bによって水流WFが船体1から離れる位置を下流側にずらすことができ、効果的に抵抗を低減することができる。
また、連通部65Bが船尾側に形成されることで、導入管80によりトンネル61B内に導入された流体は、トンネル61Bの内周面に沿って開口部63Bの船尾側(すなわち連通部65B)からスムーズに流れ出ることができる。言い換えると、カバー64Bが、導入管80による水流効果を妨げるようなことがないため、導入管80による水流効果に加えて、カバー64Bによって抵抗を低減させることができる。
なお、上記のバウスラスター8Bであれば、トンネル61Bの開口部63Bを塞ぐカバー64Bが、バウスラスター8Bの作動時には、リンク機構70によって船体1の外板1aに沿ってスライド開放されるため、カバー64Bの開放時の外板1aから外方への突出量を小さくすることができる。船舶の離接岸時はアンカー投錨したままバウスラスター8Bを作動させることが多いが、カバー64Bの突出量を小さくすることができるため、バウスラスター8Bの作動時におけるアンカーチェーン5cとカバー64Bとの接触を防ぐことができる。
また、リンク機構70の二本のリンクアーム71,72のうち、カバー64Bの開放方向側に位置するJアーム71は、カバー64Bの開放時にトンネル61Bの周辺の外板1aに干渉しないようにJ字状に湾曲形成されている。すなわち、Jアーム71は、カバー64Bの全開時に外板1aに沿う直線部71cと、カバー64Bの全開時に開口部63Bの下縁部63Beとの接触を回避する湾曲部71dとを有する。これにより、カバー64Bの開閉時にカバー64Bと船体1との干渉衝突を防ぐことができ、カバー64Bをスムーズに開閉させることができる。また、カバー64Bの全開時にJアーム71の直線部71cが外板1aに沿うため、カバー64Bの突出量をさらに小さくすることができる。
また、Jアーム71は、先端部71bがカバー64Bの開閉方向の略中央(ここでは上下方向略中央)に接続されるため、カバー64Bの開閉時に、カバー64Bを安定して支持することができる。また、Jアーム71の湾曲部71dを小型化することができるため、Jアーム71の重量及び製品コストを低減することができる。
一方、ロッド72は、先端部72bがカバー64Bの開放方向OPと逆側のカバー64Bの端部(ここでは上端部)に接続されるため、カバー64Bの全開時(すなわち、バウスラスター8Bの作動時)にカバー64Bとトンネル61Bの開口部63Bとが重なる部分(重複面積)を小さくすることができる。これにより、バウスラスター8Bの推力の減少を抑制することができる。
また、バウスラスター8Bは、トンネル61Bの内壁61Bwを貫通して延設される駆動軸73を備え、この駆動軸73が油圧シリンダ75により回動されることでリンク機構70が駆動され、カバー64Bが開閉される。ここで、Jアーム71は、その基端部71aがトンネル61Bの内壁61Bwの近傍で駆動軸73に結合されているため、バウスラスター8Bの作動時に、Jアーム71や駆動軸73が障害物となってバウスラスター8Bの推力が減少することを抑制することができる。
また、船体1の船首部1Bにおけるトンネル61Bの下方の部分は窄んだ形状になっているため、カバー64Bの開放方向OPを船体1の下方向とすることで、カバー64Bの船体1からの突出量をさらに小さくすることができる。言い換えると、カバー64Bを船体1の窄んだ形状の部分に収めるように開放することができ、船体1の膨出した側面よりも内側に配置することができる。これにより、カバー64Bとアンカーチェーン5cとの接触をより確実に防止することができる。
[2−5.態様例]
上記実施形態では、バウスラスター8Bのカバー64Bが、トンネル61Bの開口部63Bの船首側を塞ぐ形状で開口部63Bの半分以上を塞ぐ大きさのものを例示したが、カバー64Bの形状はこれに限られない。なお、以下の態様例に係る説明では、すでに説明した構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
〔1〕第一態様例
例えば、図9(a)に示すように、バウスラスター8Bが、トンネル61Bの開口部63Bのうち船首側を塞ぐ前側カバー64B′と船尾側を塞ぐ後側カバー66Bとを備えていてもよい。前側カバー64B′は、上記第二実施形態のカバー64Bと同様に開口部63Bの船首側を塞ぐものであるが、その大きさは上記のカバー64Bよりも小さく、開口部63Bの半分未満を塞ぐ。前側カバー64B′の後縁部64Br′は、開口部63Bのうち船首側に位置する。
一方、後側カバー66Bは、開口部63Bの半分未満を塞ぐ大きさであり、連通部65Bとの境界をなす前縁部66Bfが開口部63Bのうち船尾側に位置する。前側カバー64B′の後縁部64Br′及び後側カバー66Bの前縁部66Bfの間に、連通部65Bが形成される。このような前側カバー64B′及び後側カバー66Bを備えたバウスラスター8Bには、上記第二実施形態と同様、船体1の内部において前後方向に延設された導入管80が設けられる。
導入管80は、前側の入口81が船首部1Bの前端部1fに開口し、後側の出口82がトンネル61Bの内壁61Bwであって連通部65Bに向かって開口している。導入管80は、圧力差発生構造として、上記第二実施形態と同様の構造を有する。すなわち、導入管80の入口圧力を高める構造として、導入管80の入口81が前方に向かって拡径されたラッパ形状に形成されており、入口81の開口面積が出口82の総開口面積よりも大きくなるように形成されている。さらに、導入管80の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられ、前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口している。
また、出口圧力を負圧にする構造として、導入管80の出口82が、左右方向では前側カバー64B′の裏面の直ぐ内側に配置され、前後方向ではトンネル61Bの内壁61Bwに接する前側カバー64B′の後縁部64Br′の直下流に配置される。この出口82が配置される位置には、前側カバー64B′の表面64Bd′に設けられた突起部83により負圧領域Nが生成される。
突起部83は、連通部65Bの前側に位置する後縁部64Br′(船首側縁部)の上部及び下部において外方に向かって突設されている。なお、突起部83は上記第二実施形態の突起部83と同一形状を有する。この突起部83により、突起部83の後背部には負圧領域Nが生成され、導入管80の出口82はこの負圧領域N内に設けられることで、導入管80の出口圧力が負圧にされる。これらの構造により、導入管80は入口81が出口82よりも相対的に高圧になるため、導入管80内を流体が流通し、トンネル61B内に排出された流体が連通部65Bから船外へ排出される。
したがって、図9(a)に示すバウスラスター8Bであっても、上記第二実施形態に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
〔2〕第二態様例
また、図9(b)に示すように、バウスラスター8Bが、トンネル61Bの開口部63Bのうち船尾側を塞ぐ後側カバー66B′を備えていてもよい。後側カバー66Bb′は、上記の第一態様例の後側カバー66Bと同様に開口部63Bの船尾側を塞ぐものであるが、その大きさは上記の後側カバー66Bよりも大きく、開口部63Bの略半分を塞ぐ。
このような後側カバー66B′を備えたバウスラスター8Bの場合、連通部65Bは開口部63Bの船首側に形成されるため、導入管80の構造及び突起部84の構造は、上記第一実施形態のものと同一にすることができる。すなわち、導入管80は、前側の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられ、前端部1fにおける水流WFの流れ方向に対して垂直に開口し、後側の出口82がトンネル61Bの内壁61Bwであって、連通部65Bに向かって開口している。また、導入管80は、入口81の開口面積が出口82の総開口面積よりも大きくなるように形成され、さらに出口82は突起部84により生成される負圧領域N内に設けられる。
このような後側カバー66B′を備えたバウスラスター8Bであっても、上記第二実施形態と同様の構成から同様の効果を得ることができる。
〔3〕第三態様例
上記第二実施形態及び第一,第二態様例は、何れも導入管80の入口81が船首部1Bの前端部1fに設けられたものを例示したが、第一実施形態の態様例で示したように、船体1の船底1bに入口81′が開口した導入管80′を設けることも可能である。
例えば図10(a)に示すように、開口部63Bに第二実施形態と同一のカバー64Bが設けられたバウスラスター8Bの場合に、カバー64Bの後縁部64Brの下部にのみ突起部83を設け、この突起部83により生成される負圧領域N内に導入管80′の出口82を設ける。このような構造によっても、上記第二実施形態と同様の構成からは同様の効果を得ることができ、さらに導入管80′の長さを短くすることができるという効果を得ることができる。
また、上記第一実施形態の態様例で示したように、出口圧力を負圧にする構造を有する場合に、前端部1fに開口した入口81と船底1bに開口した入口81′とから導入管80内に流体を導入する構成としてもよい。すなわち、導入管80の入口は一つに限られず、複数の入口から導入管80内に流体を導入する構成にしてもよい。また、上記の第一〜第三態様例の構造と組み合わせることも可能である。なお、船底1bに入口81′を設ける場合に、上記した案内板85を入口81′の船尾側の縁部に設け、積極的に流体を導入管80内に案内する構成としてもよい。
〔4〕第四態様例
上記した第二実施形態及び第一〜第三態様例では、バウスラスター8Bにカバー64B等が設けられ、カバー64B等で閉鎖されない連通部65Bを通じてトンネル61B内から流体を排出する構造を説明したが、当該構造をスターンスラスター8Sに適用することも当然可能である。
例えば、図10(b)に示すように、スターンスラスター8Sが、導入管90を備えるとともに、上記第二実施形態で示したカバー64Sにより開口部63Sの一部を塞がれるものであってもよい。導入管90は、入口91が出口92よりも前方に設けられており、船体1の内部において船底1bに対して斜めに延設されている。また、導入管90は、圧力差発生構造として、導入管90の出口92が上記の第三態様例と同様、カバー64Sの表面64Sdに設けられた突起部83により生成される負圧領域N内に設けられる。これにより、導入管90の出口圧力が負圧にされ、入口圧力と出口圧力との間に圧力差を発生させることができる。
このような構造によって、導入管90は出口92が入口91よりも相対的に低圧になるため、導入管90内を流体が流通し、トンネル61S内に排出された流体が連通部65Sから船外へ排出される。したがって、本態様例に係る船舶のスターンスラスター8Sであっても、上記第二実施形態に記載した効果と同様の効果を得ることができる。なお、船底1bに入口91を設ける場合に、上記した案内板93を入口91の船尾側の縁部に設け、積極的に流体を導入管90内に案内する構成としてもよい。
また、図10(b)では、スターンスラスター8Sのカバー64Sをバウスラスター8Bのカバー64Bと同様、カバー64Sの後縁部64Srが垂直方向に対して上方が船尾側に傾いて設けられたものを例示している。ただし、スターンスラスター64Sの開口部63Bの周辺の水流WFは、水平方向に対して下流側に上方に向かってやや傾斜することが多いため、カバー64Sの後縁部64Srを、垂直方向に対して上方が船首側に傾くように設けて、開口部63Sの近傍における水流WFの流れ方向に対し略直交する傾きとなるように形成してもよい。これにより、水流WFの流れ方向における後縁部64Srから開口部63Sの縁部までの距離を短くすることができ、連通部65Sからの流体の入り込みを効果的に抑制することができる。
〔5〕その他の態様例
なお、カバー64等の開閉構造は、上記したリンク機構70によるものに限られない。例えば、図9(a)及び(b)に示すような前側カバー64B′や後側カバー66B,66B′の裏面側に、一組のJアーム71及びロッド72からなるリンク機構が設けられて、上記リンク機構70と同様の開閉動作を行うように構成してもよい。あるいは、リンク機構によって外板1aに沿うように開閉させるのではなく、カバー64等に回転軸を設け、回転軸回りにカバー64等を回転させることで開閉させる構造としてもよい。なお、リンク機構70を用いた開閉構造であっても、カバー64等の開放方向OPは下方向に限られず、前後方向や上方向であってもよい。
[3.その他]
以上、本発明の実施形態について様々な例を挙げて説明したが、本発明は上記した実施形態や態様例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
導入管80は、圧力差発生構造として、入口圧力を高める構造を二つ有し、出口圧力を負圧にする構造を一つ有するものを例示したが、圧力差発生構造はこれらのうち少なくとも一つ設けられていればよい。また、これらのうち二つを適宜組み合わせて設けてもよい。例えば、導入管80の入口面積と出口面積とを同一とし、導入管80の入口81を船首部1Bの前端部1fに設け、出口82を突起部83,84で生成される負圧領域N内に設けるような構造であってもよい。あるいは、入口圧力を高める構造を二つ設け、出口圧力を負圧にする構造(すなわち突起部83,84)を省略してもよい。
また、船底1bから流体を導入する導入管80′,90の場合、圧力差発生構造として出口圧力を負圧にする構造を有する必要があるが、導入管80′,90の形状は上記したものに限られず、例えば導入管80′,90の入口81′,91を出口82,92よりも後方に設けてもよい。
また、スラスター6,8の構造は上記したものに限られず、例えばプロペラ62が可変ピッチ式でなくてもよいし、トンネル61に曲面部61rが設けられていなくてもよい。また、バウスラスター8Bにはカバー64Bが設けられ、スターンスラスター6Sにはカバーが設けられないなど、前後のスラスター6,8の構成が異なっていてもよい。
なお、上述の船舶は、バウスラスター6B,8Bとスターンスラスター6S,8Sとを備えたものを例示しているが、何れか一方のスラスター6,8を備えているものであればよい。
1 船体
1B 船首部
1S 船尾部
1W 没水部
1a 外板
1b 船底
1f 前端部
2 バルバスバウ
6,8 スラスター
6B,8B バウスラスター(スラスター)
6S,8S スターンスラスター(スラスター)
61,61B,61S トンネル(スラスタートンネル)
61w,61Bw,61Sw 内壁
62,62B,62S プロペラ
63,63B,63S 開口部
64,64B,64S カバー
64′ 前側カバー(カバー)
64r,64r′ 後縁部(縁部)
65,65B,65S 連通部
66,66′ 後側カバー(カバー)
66f,66f′ 前縁部(縁部)
80,80′,90 導入管
81,81′,91 入口
82,92 出口
83,84 突起部
N 負圧領域

Claims (9)

  1. 船体に横方向へ貫通して設けられ、内部にプロペラが配置されたスラスタートンネルと、
    前記スラスタートンネルの前記内部と船外とを連通する左右の連通部と、
    スラスターを使用しない航行時に、前記船外から前記スラスタートンネル内に流体を導入するとともに前記左右の連通部のそれぞれから前記船外へ前記流体を排出する導入管と、を備え、
    前記導入管は、
    一端に設けられ、前記船体の没水部に開口した入口と、
    他端に設けられ、前記スラスタートンネルの内壁であって前記左右の連通部のそれぞれに向かって開口した出口と、
    航行中に前記入口の方が前記出口よりも相対的に高圧になるように圧力差を発生させる圧力差発生構造と、を有する
    ことを特徴とする、船舶のスラスター。
  2. 前記連通部の船首側の縁部に外方へ突設された突起部を備え、
    前記圧力差発生構造として、前記出口が前記突起部により生成される負圧領域内に設けられる
    ことを特徴とする、請求項1記載の船舶のスラスター。
  3. 前記突起部は、前記船体の外板に対して略垂直に突設される
    ことを特徴とする、請求項2記載の船舶のスラスター。
  4. 前記突起部は、前記縁部に沿って延設される帯状の板である
    ことを特徴とする、請求項2又は3記載の船舶のスラスター。
  5. 前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられる
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  6. 前記圧力差発生構造として、前記入口が前記船首部の前端部に設けられ、前記入口の開口面積が前記出口の開口面積よりも大きく形成されている
    ことを特徴とする、請求項5記載の船舶のスラスター。
  7. 前記スラスタートンネルは、前記船体の船首部に設けられ、
    前記圧力差発生構造として、前記入口が前記船首部の前端部に設けられるとともに、
    前記入口は前記船体の船底にも設けられる
    ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  8. 前記船体の外板に開閉可能に設けられ、前記スラスタートンネルの開口部の一部を塞ぐカバーを備え
    前記連通部は、前記カバーの全閉時に閉鎖されない前記開口部の他部である
    ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の船舶のスラスター。
  9. 前記カバーは、前記開口部のうち船首側を塞ぎ、
    前記連通部は前記開口部のうち船尾側に位置する
    ことを特徴とする、請求項8記載の船舶のスラスター。
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