JP2015145936A - 高反射膜、高反射膜付き基板及び高反射膜の製造方法 - Google Patents

高反射膜、高反射膜付き基板及び高反射膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】銀膜とその基板側又は基板逆側に成膜された膜との間の密着力を向上させると同時に、銀膜における硫化及びマイグレーションを防ぐことが可能な高反射膜、高反射膜付き基板及び高反射膜の製造方法を提供する。【解決手段】基板10上に設けられ、銀膜30と、銀膜30上に銀膜30に接して設けられた誘電体多層膜40と、を備えた高反射膜である。誘電体多層膜40は、低屈折率の無機誘電体膜40bと高屈折率の無機誘電体膜40aが、少なくとも2層以上交互に積層されることにより形成されている。誘電体多層膜40のうち、銀膜30に隣接する層は、低屈折率の無機誘電体膜40bであって、SiO2を主成分としてZnOを含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、銀膜を使用した高反射膜、高反射膜付き基板及び高反射膜の製造方法に関する。
カメラ、望遠鏡、顕微鏡、複写機、投影機、プロジェクター、携帯端末、レーザー機器をはじめ、軍事用、医療用、民生用、産業用等の多方面で光学機器は使用されている。
これらの光学機器の中で反射鏡は、その数も多く種類や形状も多種多様であり、用途が広範囲であるため反射率は勿論のこと、あらゆる環境下での耐久性も合わせて要求される。
反射鏡の中でも、特定波長に対する反射率が重要となるレーザーミラーや、特定波長帯のみを選択反射させる光学フィルターには、低屈折率と高屈折率の誘電体膜を交互に積層する方法によるものや、さらには中間屈折率を持つ誘電体膜を適宜選定して組み合わせて積層する誘電体多層膜がある。これらの反射鏡は、積層膜が十数層から数十層、場合によっては百層にも及ぶ。
また、反射鏡のその他のタイプとして、アルミニウム(Al)や銀(Ag)等の金属膜を形成した後、その上に金属膜の特性を大きく損なわないように保護膜を形成する方法もある。また、金属膜の上に、数層の屈折率の異なる誘電体膜を積層することにより増反射効果を促して、より反射率を高めることができる金属高反射膜がある。これらの反射鏡は、層数が少なくて済むうえに安価に作製することができる。このため、赤外域や紫外域等の特殊用途を除いては、AlやAg及びこれらの合金の膜を用いた高反射膜が、反射鏡の多数を占めている。
薄膜化したアルミニウム膜の反射率は可視域で略90%であり、同様に薄膜化した銀膜は、可視域での平均反射率が略95〜96%である。何れの薄膜を使用した反射鏡においても、より反射率の向上を図る目的で、薄膜化した金属膜上に低屈折率と高屈折率の薄膜を交互に複数積層して、使用する波長の反射帯を中心にした光学設計により増反射処理を施して高反射率を確保している。
Al又はAl合金からなるアルミニウム膜は、安価でその取り扱いも比較的容易であることから、広範囲で使用されている。それに対し、Ag又はAg合金からなる銀膜は、反射材料として使用した場合に、アルミニウム膜と比較して高反射率を確保できるというメリットがある。
しかし、銀膜は硫化し易く、硫化の程度によっては銀膜表面が黄化してさらには黒化に至る。また、マイグレーションも起こり易いため、銀膜の基板側又は基板逆側に隣接して設けられた薄膜中に、Agイオンが拡散したり、離脱する電子の影響等により独特な粒成長や突起物を形成したり、化合物を生成させたりする。このため、銀膜特有の高い反射率は低下し易い。
また、多くの金属では、薄膜形成過程における成膜初期段階で、多数の核形成から次第に薄膜が成長して、金属の薄膜が形成されるが、Agは、このような多くの金属とは異なる薄膜成長過程を辿る。つまり、銀膜は、成膜初期段階の少ない核形成から、瞬時に二次元的に薄膜が成長して形成されるため、いろいろな基板との密着力が特に弱い。
銀膜を使用した反射鏡におけるこれらの課題解決を目的として、基板と銀膜との間、或いは、銀膜とその上に成膜された低屈折率膜と高屈折率膜の多層膜との間に、密着性を高める等の目的で、下地層や中間層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜6)。
特許文献1には、特定の添加材料を含む銀合金膜と低屈折率膜であるSiO膜との間に中間層を形成して密着力を確保する方法が記載されている(特許文献1の段落0028等)。
また、特許文献2には、金を含む銀合金膜の基板逆側に成膜される低屈折率膜を窒化珪素膜とし、さらに基板と銀合金膜との間に密着改善層としてZnO、SnO、In、Al、及びTiO、ZnOにGa、Sn、Si、Tiの1種類以上を含む膜を形成する技術が開示されている(特許文献2の段落0035、0050〜0052)。
特許文献3には、銀膜表面に、耐湿性、耐硫黄性向上を目的として窒化珪素膜を形成し、さらにその上に硬質炭素膜を積層する方法(特許文献3の段落0019)が、また、基板と銀膜との密着性向上を目的として、基板と銀膜との間にTiO膜を形成する方法(特許文献3の段落0014)が開示されている。
特許文献4には、銀又はAPC合金の上に酸化防止層としてITOあるいはZnO膜を形成し、その上に高屈折率膜と低屈折率膜を形成する方法が開示されている(特許文献4の請求項1〜4、図2)。
特許文献5には、耐湿性、耐硫化性を目的として最表層にカーボン膜を、基板と銀膜との間に密着層として、酸素欠損の酸化チタンターゲットによる酸化チタン膜を形成する構成が開示されている(特許文献5の段落0019、0021、0024、0025)。
特許文献6には、金属又は金属酸化物からなる密着層を、基板と銀合金膜との間に形成し、さらに銀合金層の上にITO、Al、Gaのいずれかを添加したZnO膜を密着層として形成する方法が開示されている(特許文献6の段落0036、0055、0056)。
特開2009−98650号公報 国際公開第WO2007/013269号公報 国際公開第WO2007/007570号公報 特開2006−215290号公報 特開2006−309102号公報 特開2007−310335号公報
しかしながら、上記特許文献のように密着層を設けるには、密着層を形成するための蒸発源やこれに伴った電源を、別途新たに附加する必要がある。また、密着層を形成するため、その分、成膜時間が長くなり、工程全体としての管理負荷が増大するとともに生産性が低下する。
基板と銀膜との間や、銀膜と誘電体多層膜との間に、バリア膜や密着力を向上させる膜など、何らかの機能を有する薄膜を成膜する必要があるが、銀膜は、酸素プラズマによって酸化が促進されたり、化合物を形成したりするなど、酸素プラズマの影響を受け易い性質を持っているため、バリア膜や密着力を向上させる膜などを成膜する際には、できるだけ酸素プラズマの影響が少ない製造方法が必要となる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、銀膜とその基板側又は基板逆側に成膜された膜との間の密着力を向上させると同時に、銀膜における硫化及びマイグレーションを防ぐことが可能な高反射膜、高反射膜付き基板及び高反射膜の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、増反射設計を可能にする低屈折率の誘電体薄膜を見出して、耐硫化、耐マイグレーション、密着力、反射率の全てにおいて実用上十分な高反射膜を得ることが可能な高反射膜、高反射膜付き基板及び高反射膜の製造方法を提供することにある。
前記課題は、請求項1の高反射膜によれば、基板上に設けられ、銀膜と、該銀膜上に前記銀膜に接して設けられた誘電体多層膜と、を備えた高反射膜であって、前記誘電体多層膜は、低屈折率の無機誘電体膜と高屈折率の無機誘電体膜が、少なくとも2層以上交互に積層されることにより形成され、前記誘電体多層膜のうち、前記銀膜に隣接する層は、前記低屈折率の前記無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有すること、により解決される。
このように、誘電体多層膜のうち、銀膜に隣接する層が、SiOを主成分としてZnOを含有する膜からなるため、銀膜と誘電体多層膜との密着性を向上させることができる。
SiOを主成分としてZnOを含有する膜は、SiO膜よりも屈折率が若干高くなるが、誘電体多層膜全体の構成としては、反射率を著しく低下させることなく、実用上十分な高い反射率を維持できる。従って、実用上十分な反射率を保ちつつ、誘電体多層膜と銀膜との密着性を向上させることができる。
また、誘電体多層膜のうち、銀膜に隣接する層は、低屈折率の無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有しているため、高反射膜の構成(設計)において、低屈折率層と密着層の二つの機能を兼ね備える膜となる。従って、新たな密着層を設けてソースの増強を行う必要が無く、装置負荷を増大させずに成膜工程の短縮ができる。
誘電体多層膜の銀膜に隣接する低屈折率の無機誘電体膜として、SiOを主成分とする層を、密着層として利用するため、SiO膜が従来から持ち備えるAgの耐硫化性、耐マイグレーション性はそのまま維持した状態で密着性を確保できる。
このとき、前記銀膜に隣接する前記無機誘電体膜における、ZnとSiの和に対するZnの含有量の割合Zn/(Zn+Si)が、0.53at%〜18.52at%であるとよい。
このように、SiO膜に一定量以上のZnOを添加した無機誘電体膜にすることにより、SiOのみからなる膜を用いた場合と比較して、銀膜と無機誘電体膜との間の密着性を大きく向上させることができる。
このとき、前記銀膜に隣接する前記無機誘電体膜は、屈折率が、1.480〜1.694であり、消衰係数が、0.086以下であるとよい。
SiOにZnOを添加した膜は、屈折率が、SiO膜の屈折率(1.46)よりは若干高くなるが、屈折率を、1.480〜1.694とし、消衰係数を、0.086以下としているので、反射率特性を著しく低下させることなく実用上十分な増反射特性を維持できる。
このとき、前記銀膜は、前記基板との間に、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はこれらの金属が任意の組み合わせで混合された合金からなる密着性向上膜を、一層以上備えているとよい。
このように構成しているため、基板上に銀膜を直接成膜した場合よりも、基板と銀膜との間の密着性を向上させることができる。
このとき、前記銀膜は、Agを主成分とする膜又はAgとその他の金属との合金膜であるとよい。
このように構成しているため、銀膜を必ずしもAg単体から形成する必要がなく、合金として形成することもできるため、銀膜の構成の自由度が高まる。
このとき、前記銀膜に隣接する前記無機誘電体膜及び前記密着性向上膜が、酸素プラズマにさらされることなく成膜されてなるとよい。
このように、銀膜が両側で隣接する一対の膜を、酸素プラズマにさらすことなく成膜しているため、高反射膜の成膜過程で、酸素プラズマに弱い銀膜をプラズマにさらさずに成膜可能となり、銀膜のマイグレーションや酸化が抑制され、反射率の高い高反射膜が達成される。
前記課題は、請求項7の高反射膜付き基板によれば、基板と、該基板上に設けられた、銀膜と、該銀膜上に前記銀膜に接して設けられた誘電体多層膜と、を備えた高反射膜付き基板であって、前記誘電体多層膜は、低屈折率の無機誘電体膜と高屈折率の無機誘電体膜が、少なくとも2層以上交互に積層されることにより形成され、前記誘電体多層膜のうち、前記銀膜に隣接する層は、前記低屈折率の前記無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有すること、により解決される。
このように、誘電体多層膜のうち、銀膜に隣接する層が、SiOを主成分としてZnOを含有する膜からなるため、銀膜と誘電体多層膜との密着性を向上させることができる。
SiOを主成分としてZnOを含有する膜は、SiO膜よりも屈折率が若干高くなるが、誘電体多層膜全体の構成としては、反射率を著しく低下させることなく、実用上十分な高い反射率を維持できる。従って、実用上十分な反射率を保ちつつ、誘電体多層膜と銀膜との密着性を向上させることができる。
また、誘電体多層膜のうち、銀膜に隣接する層は、低屈折率の無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有しているため、高反射膜の構成(設計)において、低屈折率層と密着層の二つの機能を兼ね備える膜となる。従って、新たな密着層を設けてソースの増強を行う必要が無く、装置負荷を増大させずに成膜工程の短縮ができる。
誘電体多層膜の銀膜に隣接する低屈折率の無機誘電体膜として、SiOを主成分とする層を、密着層として利用するため、SiO膜が従来から持ち備えるAgの耐硫化性、耐マイグレーション性はそのまま維持した状態で密着性を確保できる。
前記課題は、請求項8の高反射膜の製造方法によれば、基板上に、Agを主成分とする膜又はAgとその他の金属との合金膜からなる銀膜を成膜する銀膜成膜工程と、前記銀膜の上に、SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜を、酸素プラズマにさらすことなく成膜する工程と、前記SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜の表面上に、高屈折率の無機誘電体膜と、低屈折率の無機誘電体膜とを、少なくとも1層以上交互に積層する工程と、を備えること、により解決される。
このように、銀膜の上に、SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜を、酸素プラズマにさらすことなく成膜する工程と、前記SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜の表面上に、高屈折率の無機誘電体膜と、低屈折率の無機誘電体膜とを、少なくとも1層以上交互に積層する工程と、を備えているため、銀膜と誘電体多層膜との密着性を向上させることができる。
SiOを主成分としてZnOを含有する膜は、SiO膜よりも屈折率が若干高くなるが、誘電体多層膜全体の構成としては、反射率を著しく低下させることなく、実用上十分な高い反射率を維持できる。従って、実用上十分な反射率を保ちつつ、誘電体多層膜と銀膜との密着性を向上させることができる。
また、SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜を、酸素プラズマにさらすことなく成膜するため、酸素プラズマに弱い銀膜をプラズマにさらすことを抑制でき、銀膜のマイグレーションや酸化が抑制され、反射率の高い高反射膜が達成される。
このとき、前記銀膜成膜工程の前に、前記基板上に、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はこれらの金属が任意の組み合わせで混合された合金からなる密着性向上膜を、一層以上成膜してもよい。
このように構成しているため、基板上に銀膜を直接成膜した場合よりも、基板と銀膜との間の密着性を向上させることができる。
本発明によれば、誘電体多層膜のうち、銀膜に隣接する層が、SiOを主成分としてZnOを含有する膜からなるため、銀膜と誘電体多層膜との密着性を向上させることができる。
SiOを主成分としてZnOを含有する膜は、SiO膜よりも屈折率が若干高くなるが、誘電体多層膜全体の構成としては、反射率を著しく低下させることなく、実用上十分な高い反射率を維持できる。従って、実用上十分な反射率を保ちつつ、誘電体多層膜と銀膜との密着性を向上させることができる。
また、誘電体多層膜のうち、銀膜に隣接する層は、低屈折率の無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有しているため、高反射膜の構成(設計)において、低屈折率層と密着層の二つの機能を兼ね備える膜となる。従って、新たな密着層を設けてソースの増強を行う必要が無く、装置負荷を増大させずに成膜工程の短縮ができる。
誘電体多層膜の銀膜に隣接するSiO層を、密着層として利用するため、SiO膜が従来から持ち備えるAgの耐硫化性、耐マイグレーション性はそのまま維持した状態で密着性を確保できる。
本発明の一実施形態に係る高反射膜付き基板の断面説明図である。 SiOとZnOを、ZnOの含有量を変化させてスパッタして得た実験例1〜6の低屈折率膜中のZn/(Zn+Si)を示すグラフである。 SiOとZnOを、ZnOの含有量を変化させてスパッタして得た実験例1〜6と対比例1の低屈折率膜の波長550nmにおける屈折率nの測定値を示すグラフである。 SiOとZnOを、ZnOの含有量を変化させてスパッタして得た実験例1〜6と対比例1の低屈折率膜の波長550nmにおける消衰係数kの測定値を示すグラフである。 SiOとZnOを、ZnOの含有量を変化させてスパッタして得た実験例1〜6と対比例1の低屈折率膜の波長400〜700nmにおける屈折率nの測定値を示すグラフである。 SiOとZnOを、ZnOの含有量を変化させてスパッタして得た実験例1〜6と対比例1の低屈折率膜の波長400〜700nmにおける消衰係数kの測定値を示すグラフである。 実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板の成膜後の反射率の測定結果を示すグラフである。 実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板の耐湿試験後の反射率の測定結果を示すグラフである。 実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板の加熱恒温試験後の反射率の測定結果を示すグラフである。
<<高反射膜付き基板1>>
以下、本発明の一実施形態に係る高反射膜付き基板1について、図1〜図9を参照しながら説明する。なお、以下に説明する材料、配置、構成等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変できるものである。
本明細書における高反射膜とは、増反射膜と同義である。
本実施形態の高反射膜付き基板1は、図1に示すように、基板10上に、密着性向上膜20、銀膜30、誘電体多層膜40が形成されたものである。銀膜30、誘電体多層膜40の積層体、又は、密着性向上膜20、誘電体多層膜40の積層体が、特許請求の範囲の高反射膜に該当する。
基板10は、硝子、金属、セラミックス、フィルム状、板状の樹脂成形体など、表面に高反射膜を成膜可能なものであればよく、基板10の材質は問わない。また、基板10は、表面が平面、凹凸面のいずれであってもよく、また、フレキシブル基板であってもよい。
基板10は、表面を、できるだけ鏡面に近い状態に仕上げた面とすると好適である。本実施形態では、金属膜を反射膜材料として用いているため、このように構成することにより、より良い反射膜を得ることが可能となる。なお、フロントライト方式の電子ペーパーのように、高い拡散光(散乱光)を必要とする特殊用途では、必要とする反射率を得るために、表面に任意の凹凸を形成するか、梨地処理をして粗に加工してもよい。
基板10は、成膜前に清浄に処理されて使用される。
基板10上には、図1に示すように、基板10と銀膜30との密着性を向上させる目的で、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はこれらの金属が任意の組み合わせで混合された合金からなる密着性向上膜20が成膜されている。密着性向上膜20は、図1に示すように、1層のみでもよいし、2層以上の膜を備えていてもよい。また、密着性向上膜20を備えず、基板10上に直接銀膜30が形成されていてもよい。
密着性向上膜20を備えていることにより、より安定した反射膜とすることができる。
Ti、Cr及びNiは、基板10との密着力及び銀膜30との密着力が高く、銀膜30へのマイグレーションが少ないため、銀膜30内における異常粒子の成長や欠陥を少なくすることができ、その結果、銀膜30の反射率の低下を抑止可能となる。
銀膜30は、Agを主成分とする膜又はAgとその他の金属との合金膜からなる。
Agを主成分とする膜は、Ag単体からなる膜、又は、Agと、Ag以外の微量成分を含む膜である。
また、Agとその他の金属との合金膜は、Agと、金(Au)、パラジウム(Pd)、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、銅(Cu)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)、ネオジム(Ne)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ゲルマニウム(Ge)、亜鉛(Ze)を含む群から選択された一以上の金属との合金からなる膜である。
銀膜30は、膜厚が、一般的に入射光が全反射する100nm以上であると好適であるが、必要以上に厚くする必要はない。但し、入射光が全反射するよう、膜厚100nm以上としても、可視域での平均反射率は、Alで略90%、Agで略96%であり、これ以上の反射率は望めない。
また、銀膜30を半透過膜として使用する場合は、所望の反射率に合わせて膜厚を数十nmとするとよい。
誘電体多層膜40は、図1に示すように、低屈折率膜40bと高屈折率膜40aとが交互に、少なくとも1層ずつ、合計2層以上積層されて構成されている。本実施形態では、低屈折率膜40bと高屈折率膜40aを1層ずつ備えた最もシンプルな構成となっている。
Agよりも高い反射率を持ち備える金属は存在しないため、反射膜に、金属膜又は合金膜単体を用いた場合は、達成可能な反射率は、Ag又はAg合金が固有に備える反射率に依存してしまう。
しかし、反射膜に、より高い反射率を必要とする場合には、屈折率の異なる誘電体等の薄膜を、屈折率の異なるそれぞれの光学膜厚ndが、所望する波長λの1/4に相当するようにして、交互に複数回積層することにより、より高い反射率が達成可能である。但し、λは、所望する波長の中心波長、nは屈折率、dは実際の膜厚である。
銀膜30と誘電体多層膜40の積層体における反射は、積層体に光が入射したときに、誘電体多層膜40の最表面で反射される光と、複数層からなる誘電体多層膜40を通った光が各膜の界面で反射して戻る光と、銀膜30で反射して戻る光とが合成されることにより全体として反射する光の量が増大することによるものである。すなわち、界面での光は、低屈折率から高屈折率の媒体に入射した後に反射してくる場合は位相が反転して戻ってくる。また、高屈折率から低屈折率の媒体に入射した後に反射してくる場合は、位相が反転せずにそのまま戻ってくるので、それぞれの反射光の位相が同一方向に重なることにより振幅が増強されるためである。
従って、高反射率を得るには、最表面層が高屈折率膜40aでなければならない。
また、低屈折率膜40bと高屈折率膜40aとを複数組繰り返して2回以上積層する場合、中心波長での反射率は高くなるものの、両端の波長では、低屈折率膜40bと高屈折率膜40aとをそれぞれ1層ずつのみ備えた2層のみの場合よりも、反射率が低くなるので、積層回数は、用途により選定する必要がある。
高屈折率膜40aは、相対的に高屈折率の材料から成膜された膜であり、TiO、Nb、Ce、TaN、ZrO等の材料からなる膜、又は、これらの材料とこれらの材料以外の微量成分を含む膜からなる。
低屈折率膜40bは、相対的に低屈折率の材料から成膜された膜であり、MgF、SiO、Al等の材料からなる膜、又は、これらの材料とこれらの材料以外の微量成分を含む膜からなる。低屈折率膜40bは、耐硫化性が高く、マイグレーションの抑制効果の高いSiOからなると好適である。
低屈折率膜40b及び高屈折率膜40aを、これらの材料から構成すると、低屈折率膜と高屈折率膜率との屈折率の差を大きくすることができ、より効果的な増反射効果を得ることができる。
一以上の低屈折率膜40bのうち、銀膜30の直上の低屈折率膜40bは、SiOに一定量のZnOを添加した膜からなる。
更に具体的には、銀膜30の直上の低屈折率膜40bには、膜中におけるZnとSiの合計に対するZnの含有量の割合、つまり、Zn/(Zn+Si)が、0.53at%〜18.52at%、より好ましくは0.53at%〜16.08at%の範囲となるように、SiOにZnOが添加されている。
銀膜30の直上の低屈折率膜40bをこのように構成することにより、密着力が高く、銀膜30に対する耐硫化性が高く、マイグレーション抑制効果があり、且つ、高反射膜としての要求を満足できる程度の低屈折率を備えた膜を達成することができる。その結果、反射率を低下させることなく、銀膜30と誘電体多層膜40との間の密着性を向上できる。
また、銀膜30の直上の低屈折率膜40bを、このように構成していることにより、誘電体多層膜40とは別個に新たな密着層を設ける必要がなくなるため、最低限の装置構成と最低限の膜構成で、高反射膜を製作可能となり、生産性の面及び価格面において優位な膜構成を達成できる。
SiOに一定量のZnOを添加した膜は、屈折率が、1.480〜1.694の範囲で、消衰係数が0.0086以下、より好ましくは、屈折率が1.480〜1.657の範囲で、消衰係数が0.00498以下である。
<<高反射多層膜の製造方法>>
以上の高反射多層膜及び高反射多層膜付き基板1は、以下の方法により製造される。
まず、基板10を、湿式、乾式、プラズマ、UV、その他の方法、好適には、湿式の超音波洗浄により、清浄化する。
次いで、不図示のスパッタリング装置に、ZnOターゲットを備えたZnO用のカソード、SiOのターゲットを備えたSiO2用のカソード、Agターゲットを備えたAg用のカソード、Ti等の密着性向上膜20成膜用材料のターゲットを備えた密着性向上膜用カソードを、セットする。
次いで、基板10を、装置内の基板ホルダーに設置し、装置内を5.0×E−4Paまで排気する。
装置内にアルゴンガスを2.0×E−1Paになるまで導入し、その状態を保ちながら、Ti等の密着性向上膜20の成膜用材料のターゲットを用い、磁場400GにてDCスパッタリング法により、膜厚50nmのTiからなる密着性向上膜20を成膜する。
次に、同じ真空雰囲気中において、Agターゲットを用いたDCスパッタリング法により、膜厚120nmのAgからなる銀膜30を成膜する。
その後、装置内の圧力が2.2×E−1Paになるまで、アルゴンガスのみを導入し、磁場600Gにて、ZnOカソードに0.1kwの電力と、SiOカソードに1.2kwの電力をそれぞれ投入した2元RFスパッタリング法により、膜厚60.3nmの低屈折率膜40bを成膜する。
装置内のカソード数の制限があるため、低屈折率膜40bまで成膜した基板10を取り出して別のスパッタリング装置に移し、酸化チタン(TiO)等の高屈折率材料のターゲットを用いて、アルゴンガス中に酸素ガスを含む雰囲気で、2.2×E−1Paで、DCスパッタリング法により、膜厚39nmのTiO等の高屈折率材料からなる高屈折率膜40aを成膜する。
以上の方法により、図1に示すように、基板10上に、密着性向上膜20、銀膜30、誘電体多層膜40が積層された4層構成の高反射膜を成膜し、本実施形態の高反射膜付き基板を作製する。
なお、高屈折率膜40aの成膜を、他の膜の成膜と同じスパッタリング装置内で行ってもよい。
また、Ag用のカソードと共に、Ti、Cr及び/又はNiのターゲットを備えたカソードをスパッタリング装置内に設置し、Agターゲット及びTi、Cr及び/又はNiのターゲットを用いたスパッタリングとを同時に行って、銀膜30を、AgとTi、Cr及び/又はNiとの合金としてもよい。
以下、本発明を、実施例に基づき、更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
(実験1)
低屈折率膜40bにおけるSiO2に対するZnOの添加量について調査するために、実験1を行った。
実験1では、自社製のスパッタリング装置GRDS800で、到達圧力5.0E−4Pa以下、室温下で、ターゲットサイズ150φの酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO)のターゲットを備えたZnOのカソードとSiO2のカソードを用い、磁場600Gにて、2元RFスパッタリング法により、実験例1〜6の膜厚100nmのSiO2−ZnOの単層膜を成膜した。
このときのZnOのカソードとSiO2のカソードの投入電力は、表1の通りであった。
また、ZnOのカソードには電力を投入せず、SiO2のカソードにのみ、1.30kWの電力を投入して、対比例1の膜厚100nmのSiO2単層膜を成膜した。
実験例1〜6の単層膜について、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)装置(日本電子株式会社製、JPS-9000MC)を用いて、Zn、O、Siの成分分析を行い、エッチング時間2秒、15秒、30秒、50秒、70秒における各成分の含有量(at%)を測定した。
エッチング時間とは、XPS装置を用いた成分分析操作中に、XPS装置に付属のイオン源により、単層膜に対してアルゴンエッチングを行った時間を示す。エッチング時間は、分析目的のために薄膜表面からエッチングした時間であるが、単層膜の深さ方向における分析値を読み取ることができる。
成分分析の測定結果を、表2に示す。
表2の結果より、実験例1から実験例6にかけて、ZnOのカソードに印加するRF電力が増加するに従って、単層膜中のZnの含有量が高くなることが分かった。
次いで、表2の実験例1〜6の単層膜のXPSのエッチング時間におけるZn、Siの成分量測定値から、単層膜中のZn/(Zn+Si)の比率を算出した。算出したZn/(Zn+Si)の計算値を表3に、計算値をプロットしたグラフを図2に示す。
表3、図2の結果より、実験例2〜6では、エッチング時間が長いほど、つまり、単層膜の表面からの深さが深い位置ほど、Znの比率が高くなっていた。
また、分光エリプソメータ(株式会社堀場製作所製、UVISEL/DH10+460-VIS-AGMS-G)を用いて、実験例1〜6及び対比例1の単層膜の屈折率及び消衰係数を測定した。
波長550nmにおける屈折率n、消衰係数kの測定値を表4及び図3、4に、波長350〜750nmにおける屈折率n、消衰係数kの測定値を表5及び図5、6に示す。
表4、5、図3、5の結果より、実験例1〜6の単層膜の屈折率は、実験例1、2では、対比例1と略同程度であったのに対し、実験例3〜6では、対比例1よりも0.1〜0.25程度高くなっていた。
(実施例1)
本実施例では、以下の手順により、本発明の一実施例に係る高反射膜を成膜した。
板厚1.1mm、基板サイズ100mm×100mmの硝子製の基板10を湿式の超音波洗浄により清浄化した。
一方、スパッタリング装置(自社製、GRDS800)内に、複数のカソードを設置し、それぞれのカソードに、Ag、Ti、ZnO、SiOのターゲットをセットした。
基板10を、装置内の基板ホルダーに設置した後、装置内を5.0×E−4Paまで排気した。
装置内にアルゴンガスを2.0×E−1Paになるまで導入し、その状態を保ちながら、Tiターゲットを用い、磁場400GにてDCスパッタリング法により、膜厚50nmのTiからなる密着性向上膜20を成膜した。
次に、同じ真空雰囲気中において、Agターゲットを用いたDCスパッタリング法により、膜厚120nmのAgからなる銀膜30を成膜した。
その後、装置内の圧力が2.2×E−1Paになるまで、アルゴンガスのみを導入し、磁場600Gにて、ZnOカソードに0.1kwの電力と、SiOカソードに1.2kwの電力をそれぞれ投入した2元RFスパッタリング法により、膜厚60.3nmの低屈折率膜40bを成膜した。
装置内のカソード数の制限があるため、低屈折率膜40bまで成膜した基板10を取り出して別装置(シンクロン製 HSC−1000)に移し、続いて酸化チタン(TiOx)のターゲットを用いて、アルゴンガス中に酸素ガスを含む雰囲気で、2.2×E−1Paで、DCスパッタリング法により、膜厚39nmのTiOからなる高屈折率膜40aを成膜した。
以上の方法により、図1に示す、基板10上に、密着性向上膜20、銀膜30、誘電体多層膜40が積層された4層構成の実施例1の高反射膜を作製した。
なお、本実施例では、使用した装置の能力に制限があったため、高屈折率膜40aの成膜を、他の膜の成膜とは異なる装置を用いて行ったが、同じ装置内で連続して行ってもよいことは当然である。
(実施例2)
低屈折率膜40b成膜時のZnOカソードの投入電力を0.2kwとし、SiOカソードの投入電力を1.1kwとし、低屈折率膜40bの膜厚を59.8nmとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により、実施例1と同様の基板10上に、図1に示す、密着性向上膜20、銀膜30、誘電体多層膜40が積層された4層構成の実施例2の高反射膜を作製した。
(実施例3〜6)
低屈折率膜40b成膜時のZnOカソード及びSiOカソードの投入電力と、低屈折率膜40bの膜厚を表1の通りとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により、実施例1と同様の基板10上に、図1に示す、密着性向上膜20、銀膜30、誘電体多層膜40が積層された4層構成の実施例3〜6の高反射膜を作製した。
つまり、実施例3〜6において、低屈折率膜40b成膜時のZnOカソード及びSiOカソードの投入電力と、低屈折率膜40bの膜厚は、次の表6の通りとした。
(対比例2)
本対比例では、実施例1〜6の高反射膜との対比のため、低屈折率膜40bを、ZnOを含まないSiO単体の膜とした従来の高反射膜を成膜した。
本対比例では、低屈折率膜40b成膜時に、SiOカソードを稼働せず、ZnOカソードの投入電力を1.3kWとし、ZnOを含まない低屈折率膜40bの膜厚を61nmとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により、実施例1と同様の基板10上に、図1に示す、密着性向上膜20、銀膜30、誘電体多層膜40が積層された4層構成の対比例2の反射膜を作製した。
(対比例3)
本対比例では、実施例3で成膜したTiからなる密着性向上膜20の代わりに、基板10と銀膜30との間に、SiO−ZnO薄膜を成膜した。
清浄化した基板10を不図示のスパッタリング装置内の基板ホルダーに設置した後、装置内を5.0×E−4Paまで排気した。
その後、装置内の圧力が2.2×E−1Paになるまで、アルゴンガスのみを導入し、磁場600Gにて、ZnOカソードに0.3kwの電力と、SiOカソードに1.0kwの電力をそれぞれ投入した2元RFスパッタリング法により、膜厚50nmのSiO−ZnO薄膜を成膜した。
その他は実施例3と同様の方法を実施し、実施例3と同様の基板10上に、SiO−ZnO薄膜、銀膜30、誘電体多層膜40が積層された4層構成の対比例3の反射膜を作製した。
(実施例1〜6及び対比例2、3の成膜後の反射率及び密着性評価)
実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板について、成膜後速やかに、日立ハイテクノロジーズ製の自記分光光度計U−4100を用いて、反射率を測定した。
成膜後の反射率の測定結果を、図7に示す。
成膜後の反射率の測定結果では、図7に示すように、対比例3のほか、実施例6、実施例5に、反射率の低下がみられた。実施例1と対比して、実施例3、4の反射率が若干低く、実施例5、6でさらに低くなっていた。このように、Znの添加量が増加するに従って、分光反射率が低下しており、実施例6のZnの含有量が最も多いSiO−ZnO薄膜で大きな低下がみられた。
実施例6以上のZnOの添加は、さらに反射率の低下を促すことが予想されるため、反射率を維持するためには、実施例6が、SiOに対するZnOの添加量限界と思われる。
また、成膜後の実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板について、ニットーセロハンテープ−No29を基板表面にしっかりと張り付けた後、スナップをきかせてテープを引き剥がすことにより、密着性評価をおこなった。
密着性評価の結果を、表7の左列(成膜後)に示す。
表7に示すように、対比例2、3では、剥離があり、実施例1では、僅かに剥離があったのに対し、実施例2〜6では、剥離がみられなかった。
なお、ここでの「成膜後の」とは、成膜後、速やかに、反射率の測定及び密着性評価を行ったことを意味している。
(実施例1〜6及び対比例2、3の耐湿試験後の反射率及び密着性評価)
実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板を、60−95%の湿度雰囲気中に20時間、200時間放置する耐湿試験を行い、その後に、成膜後の反射率及び密着性評価と同様の手順により、反射率と密着性評価を実施した。
耐湿試験後の反射率の測定結果を、図8に示す。
耐湿試験後の反射率の測定結果では、図8に示すように、対比例3のほか、Znの添加量が多い実施例5、6に、短波長域を主とする反射率の低下がみられた。Znの添加量が多い実施例での反射率の低下は、SiO−ZnO薄膜からなる低屈折率膜40b中のZnOに起因しているものと考えられる。
実施例1〜6では、SiO−ZnO薄膜を成膜する際、酸素及びプラズマの影響を少なくするため、不活性ガスであるアルゴンガスのみで成膜を行った。従って、低屈折率膜40b中のZnOは、酸素ガスを用いずに、やや酸素不足の状態で成膜されたため、不安定な状態にある。
この不安定な状態のZnOを多く含有する実施例5、6では、耐湿試験中に、湿度雰囲気中に曝されたことで、SiO−ZnO薄膜が水分吸着により体積が膨張し、また、充填率が増加するなどにより、屈折率が高めにシフトして光学膜厚が増加したと考えられる。
また、耐湿試験後の実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板について、密着性評価をおこなった結果を、表7の中央及び右列(20h、200h)に示す。
実施例1と対比例3を除いて、実施例2〜6は、成膜後、湿度試験後において、密着性について良好な結果が得られていた。
(実施例1〜6及び対比例2、3の加熱恒温試験後の反射率及び密着性評価)
実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板を、120℃の恒温雰囲気中に20時間、200時間放置する加熱恒温試験を行い、その後に、成膜後の反射率及び密着性評価と同様の手順により、反射率と密着性評価を実施した。
加熱恒温試験後の反射率の測定結果を、図9に示す。
図9に示した加熱恒温試験後の分光反射率では、湿度試験後に見られた短波長域での反射率の低下がみられなかった。反射率は、SiO−ZnO薄膜のZnの添加量に依存する傾向がみられ、特に、SiO−ZnO薄膜からなる低屈折率膜40b中のZnの含有量の多い実施例5、6に、顕著な反射率の向上がみられた。
この現象は、SiO−ZnO薄膜の成膜が、銀膜30への酸素の影響を避ける目的でアルゴンガスのみのスパッタにより行われた結果、成膜直後には、ZnOが若干吸収を帯びた薄膜となっているところ、加熱雰囲気中で酸素と結合することにより、膜中の吸収が低下したことによって、反射率が向上したために起こったと考えられる。
また、加熱恒温試験後の実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板について、密着性評価をおこなった結果を、表8の中央及び右列(20h、200h)に示す。なお、表8の左列には、成膜後の密着性評価の結果を示している。
表7、表8の結果を総合すると、実施例1と比較例2を除いて、実施例2から実施例6までは、成膜後、湿度試験後、加熱恒温試験後のいずれも、密着性について良好な結果が得られた。
この結果より、SiO−ZnO薄膜からなる低屈折率膜40bのZn+Siに対するZnの添加量の割合が、実施例2と同程度以上であれば、密着性が改善されることが分かった。
実施例2のSiOカソードとZnOカソードの投入電力は、表1に示すように、実験例2と同様であるため、実施例2の低屈折率膜40bにおけるZn+Siに対するZnの添加量の割合が、表3に示す実験例2と同じ0.53at%以上であれば、密着性が良いことがわかった。
また、表7、8に示すように、対比例3では、成膜後、耐湿試験後、加熱恒温試験後のいずれにおいても、基板10と銀膜30との間に形成されたSiO−ZnO薄膜と、基板10との界面から剥離が発生していた。従って、基板10と銀膜30との間の密着性向上膜としては、SiO−ZnO薄膜よりも、Ti膜が高い密着効果を奏することが分かった。
(耐硫化性評価として、生ゴムを投入した高温雰囲気中における変色の確認)
生ゴムを投入した高温雰囲気中(大気中80℃)に、実施例1〜6及び対比例2、3の膜付き基板を、20〜200時間放置して、変色が起こるかどうかを確認した。
その結果、対比例2では、表面が茶色から黒く変色することを確認したが、実施例2から実施例6及び対比例3では、変色していないことを確認できた。
1 高反射膜付き基板
10 基板
20 密着性向上膜
30 銀膜
40 誘電体多層膜
40a 高屈折率膜
40b 低屈折率膜

Claims (9)

  1. 基板上に設けられ、銀膜と、該銀膜上に前記銀膜に接して設けられた誘電体多層膜と、を備えた高反射膜であって、
    前記誘電体多層膜は、低屈折率の無機誘電体膜と高屈折率の無機誘電体膜が、少なくとも2層以上交互に積層されることにより形成され、
    前記誘電体多層膜のうち、前記銀膜に隣接する層は、前記低屈折率の前記無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有することを特徴とする高反射膜。
  2. 前記銀膜に隣接する前記無機誘電体膜における、ZnとSiの和に対するZnの含有量の割合Zn/(Zn+Si)が、0.53at%〜18.52at%であることを特徴とする請求項1記載の高反射膜。
  3. 前記銀膜に隣接する前記無機誘電体膜は、屈折率が、1.480〜1.694であり、消衰係数が、0.086以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の高反射膜。
  4. 前記銀膜は、前記基板との間に、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はこれらの金属が任意の組み合わせで混合された合金からなる密着性向上膜を、一層以上備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の高反射膜。
  5. 前記銀膜は、Agを主成分とする膜又はAgとその他の金属との合金膜であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の高反射膜。
  6. 前記銀膜に隣接する前記無機誘電体膜及び前記密着性向上膜が、酸素プラズマにさらされることなく成膜されてなることを特徴とする請求項4又は5記載の高反射膜。
  7. 基板と、該基板上に設けられた、銀膜と、該銀膜上に前記銀膜に接して設けられた誘電体多層膜と、を備えた高反射膜付き基板であって、
    前記誘電体多層膜は、低屈折率の無機誘電体膜と高屈折率の無機誘電体膜が、少なくとも2層以上交互に積層されることにより形成され、
    前記誘電体多層膜のうち、前記銀膜に隣接する層は、前記低屈折率の前記無機誘電体膜であって、SiOを主成分としてZnOを含有することを特徴とする高反射膜付き基板。
  8. 基板上に、Agを主成分とする膜又はAgとその他の金属との合金膜からなる銀膜を成膜する銀膜成膜工程と、
    前記銀膜の上に、SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜を酸素プラズマにさらすことなく成膜する工程と、
    前記SiOを主成分としてZnOを含有する低屈折率の無機誘電体膜の表面上に、高屈折率の無機誘電体膜と、低屈折率の無機誘電体膜とを、少なくとも1層以上交互に積層する工程と、を備えることを特徴とする高反射膜の製造方法。
  9. 前記銀膜成膜工程の前に、前記基板上に、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はこれらの金属が任意の組み合わせで混合された合金からなる密着性向上膜を、一層以上成膜する工程を備えることを特徴とする請求項8記載の高反射膜の製造方法。
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