以下、本発明を適用したポリマー改質アスファルト組成物の実施の形態について詳細に説明する。
本発明を適用したポリマー改質アスファルト組成物は、ベースアスファルトと、第1のスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(第1のSBS)と、上記第1のSBSよりも分子量が小さく、スチレン含有量が高い第2のスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(第2のSBS)とを含有する。必要に応じて剥離防止剤(樹脂酸や脂肪酸アミド)が添加される。
第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して3.0〜6.0重量%であり、剥離防止剤は0.2〜2重量%含有している。
ベースアスファルト
本発明におけるアスファルトとしては、例えば、ストレートアスファルト(JIS K 2207 参照)、ブローンアスファルト(JIS K 2207 参照)、セミブローンアスファルト(「アスファルト舗装要綱」,社団法人日本道路協会発行,平成9年1月13日,p.51,表−3.3.4 参照)、溶剤脱瀝アスファルト(「新石油辞典」,石油学会編,1982年,p.308 参照)等のアスファルト又はこれらの混合物、並びにこのような各種アスファルトに芳香族系重質鉱油等が添加されたもの等を使用することができる。
本発明ではアスファルトの針入度グレードごとに検討し、ストレートアスファルト40/60〜200/300相当品まで使用することができる。
一般に針入度グレードが低いほど、DS(Dynamic Stability)値に代表される機械的強度が高いが、一方で曲げ仕事量と曲げスティフネスに代表される低温性状が悪くなる。
また、本発明では使用するベースアスファルトとしては、ストレートアスファルトに溶剤脱瀝アスファルトおよび芳香族系重質鉱油を添加したアスファルトが好ましい。
溶剤脱瀝アスファルトとしては、溶剤としてプロパン、または、プロパンとブタンを使用したプロパン脱瀝アスファルトを使用することができる。
芳香族系重質鉱油としては、石油系溶剤抽出油やJISK6200に規定されている、芳香族炭化水素を少なくとも35質量%含むアロマ系の炭化水素系プロセスオイル等や、原油の減圧蒸留残油をプロパン等により脱瀝して得られた溶剤脱瀝油を更にフルフラール等の極性溶剤を用いて溶剤抽出することにより、ブライトストック(重質潤滑油)を得る際の溶剤抽出油、すなわち、エキストラクトがある。
本発明では、芳香族重質鉱油としては、エキストラクトを添加することが好ましい。
本発明におけるエキストラクトの役割は、熱可塑性エラストマーのアスファルトへの溶解性を高め、貯蔵安定性において分離の発生を防ぐもので、熱可塑性エラストマーの添加量が多いとエキストラクトの必要な添加量も増加する。また、熱可塑性エラストマーの添加量に対して必要以上のエキストラクトを添加すると強度が低下する。
アスファルト組成物全体に対するベースアスファルトの含有量は、90〜96.1重量%とされていることが望ましい。
アスファルト組成物全体に対するエキストラクトの含有量は、針入度、軟化点、貯蔵安定性、強度を示す複素弾性率とホイールトラッキング試験における動的安定度(DS値)、及び、低温性状を示す曲げ仕事量と曲げスティフネスを考慮して決められるが、本発明で検討した範囲では、アスファルト組成物全体に対するエキストラクトの含有量は2〜12重量%が好ましい。
SBS
第1のSBSは、ベースアスファルトへの補強材として添加される熱可塑性エラストマーである。
第1のSBSの分子量は、12万〜25万とされている。この第1のSBSは、後述する第2のSBSと比較して分子量が大きく、一方のポリスチレンブロック(以下、スチレンブロックともいう。)からポリブタジエンブロック(以下、ブタジエンブロックともいう。)を経て他方のスチレンブロックを含む分子長が、第2のSBSより長く構成されている。
第1のSBSは、スチレン含有量が第1のSBS全体の25〜35質量%であり、好ましくは27〜33質量%である。ここでいうスチレン含有量とは、第1のSBS中に含まれているスチレンの質量%である。第1のSBSの添加量が1質量%未満の場合は、アスファルトの強度を発現することができなくDS値が小さくなる。また第1のSBSの添加量が3.55質量%超では、粘度が高くなり施工性が低下する。 第2のSBSは、第1のSBSと同様に、ベースアスファルトへの補強材として添加される熱可塑性エラストマーである。
第2のSBSの分子量は、6万〜10万とされている。即ち、この第2のSBSは、第1のSBSよりも低分子量とされているため、一方のスチレンブロックからブタジエンブロックを経て他方のスチレンブロックを含む分子長が、第1のSBSより短く構成されている。
第2のSBSは、スチレン含有量が第2のSBS全体の40〜50質量%であり、好ましくは42〜48質量%である。ここでいうスチレン含有量とは、第2のSBS中に含まれているスチレンの質量%である。第2のSBSの添加量が1.25質量%未満の場合は、アスファルトの強度を発現することができなくDS値が小さくなる。また第2のSBSの添加量が6質量%超では、貯蔵安定性が悪くなる。
図1は、第1のSBS及び第2のSBSの形状及びサイズの詳細を示す図である。上段の第1のSBSにおいて図中“S”で示したスチレンブロックの長さをLS1とし、第1のSBSの分子長をL1とし、図中“B”で示したブタジエンブロックの長さLB1は、L1−2×LS1で表される。
下段の第2のSBSにおいて図中“S”で示したスチレンブロックの長さをLS2とし、第2のSBSの分子長をL2とし、図中“B”で示したブタジエンブロックの長さLB2は、L2−2×LS2で表される。
本発明においては、この第1のSBSにおけるスチレンブロック長をLS1とし、第2のSBSにおけるスチレンブロック長をLS2としたとき、LS2/LS1が0.7〜1.4とされている必要がある。これにより、第1のSBSにおけるスチレンブロック長と、第2のSBSにおけるスチレンブロック長とが互いに大きく異なることが無くなる。このLS2/LS1は、望ましくは0.8〜1.25である。
また、第1のSBSにおける分子長L1は、第2のSBSにおける分子長L2の1.8倍以上とされている。これにより第1のSBSの分子長は、第2のSBSの分子長と比較して、相当長く構成することができる。なお、第1のSBSにおける分子長L1は、第2のSBSにおける分子長L2の2倍以上とされていることが望ましい。
図2は、SBSの具体的な化学構造を示している。この上述した分子長L1、L2は、スチレンブロックの長さLS×2と、ブタジエンブロックの長さLBの和とされる。
また、スチレンブロックの長さLS(LS1、LS2)は以下の手順に基づいて求めるものとする。先ずスチレンブロック中の、スチレン同士をつなぐC−C結合を図3に示すように直線上に整列させる。そして、スチレンモノマーに相当する分を「スチレン単位」としたとき、当該スチレン単位のC0〜C1〜C2に至る長さは、理論的には0.361nmである。またスチレン単位の分子量は、炭素原子C0、C1、C2およびベンゼン環、さらにそれらに結合する水素原子の数から、105(C8H9)である。
スチレンブロックはSBS分子の両端に、ほぼ同じ分子量で存在することから、スチレン単位の長さ、および両端それぞれのスチレンブロックの分子量から、以下の式に基づいてスチレンブロックの長さが算出される。
(スチレンブロックの長さ:LS)=(SBSの分子量)×(SBS分子中のスチレンの含有比率)/2/(スチレン単位の分子量)×(スチレン単位の長さ)
即ち、上式においてスチレン単位の分子量と、スチレン単位の長さが定数として一義的に決められるものであるから、これにSBSの分子量、及びSBS分子中のスチレン含有比率を代入することにより、スチレンブロックの長さ(LS)を算出することが可能となる。
またブタジエンブロックの長さは、以下の手順に基づいて求めるものとする。先ずブタジエンブロック中の、C−C結合を図3のように直線上に整列させ、またC=C結合をトランス体として直線上に整列させる。そして、ブタジエンモノマーに相当する「ブタジエン単位」としたとき、当該ブタジエン単位のC2〜C6に至る長さは、理論的には0.638nmである。またブタジエン単位に含まれる分子量は、炭素原子C3〜C6およびそれに結合する水素原子の数から、54(C4H6)である。
このブタジエン単位の長さ、および分子量から、以下の式に基づいてブタジエンブロックの長さが算出される。
(ブタジエンブロックの長さ:LB)=(SBSの分子量)×(SBS分子中のブタジエンの含有比率)/(ブタジエン単位の分子量)×(ブタジエン単位の長さ)
即ち、上式においてブタジエン単位の分子量と、ブタジエン単位の長さが定数として一義的に決められるものであるから、これにSBSの分子量、及びSBS分子中のブタジエン含有比率を代入することにより、ブタジエンブロックの長さ(LB)を算出することが可能となる。
第1のSBSの長さL1は、以下の式で算出される。
L1=LB1+2×LS1
第2のSBSの長さL2は、以下の式で算出される。
L2=LB2+2×LS2
また、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量は、質量比で1.25〜3.0とされていることが望ましい。これにより、第2のSBSの含有量を第1のSBSの含有量よりも過多とすることが可能となる。この第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量は、更に質量比で1.5〜2.5とされていることが望ましい。
また、第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して3重量%以上とすることで所期の動的安定度(DS値)を実現することができる場合が多い。また、第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して8重量%を超えた場合には却って効果が飽和してしまう。このため、第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して3〜8重量%とされていることが望ましいが、かかる範囲から逸脱する場合においても、上述とほぼ同様の効果を奏する。中でも、この第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して3.0〜6.0質量%とされていることにより、耐轍掘れ性(DS値)を保ちつつ、180℃における粘度を更に低下させることが可能となり、施工性をより改善することが可能となる。更にこの第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して4.0〜5.3質量%とされていることにより、これらの性質を更に向上させることが可能となり、第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して4.5〜5.0質量%とされていることにより、これらの性質を更に顕著に向上させることが可能となる。
剥離防止剤
本発明では、アスファルト組成物と骨材の剥離を防止するために、剥離防止剤を添加することが好ましい。
剥離防止剤として極性基を有する化合物が使用でき、樹脂酸が好適に使用できるが、樹脂酸とはカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンであって、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸のうち何れか1種以上を含有するロジンのことである。
ここでロジンとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどが使用される。これらロジンは、原産地、原材料、採取方法の違いにより上述したガムロジン、ウッドロジン等の如き分類が可能となるが、少なくとも松脂の水蒸気蒸留時の残渣成分として得られるものである。このロジンでは、成分としてアビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、サンダラコピマール酸、イソピマール酸等を含む混合物である。このロジンは、通常約80℃で軟化し、90〜100℃で溶融する。なお、ロジン中にはアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸などの各種樹脂酸が含まれているが、これら樹脂酸をそれぞれ精製して単独で使用するようにしてもよい。
本発明では好ましいロジンとしてガムロジンを使用したが、これによって制限をうけるものではない。
仮にこの樹脂酸の含有量が0.2重量%未満では、樹脂酸の効果が充分ではなく、最終生成物としての剥離防止の向上を図ることができない。これに対して、この樹脂酸の含有量が1重量%を超えてしまうと、この剥離防止の向上という効果が飽和してしまうばかりでなく、高価な樹脂酸の添加量が増加することによる原料コストの上昇が著しくなるという問題が生じる。即ち、樹脂酸の含有量を2重量%を超えて添加しても、剥離防止の向上はこれ以上大幅に向上するものではなく、却って原料コストの面において不利となる。このため、樹脂酸の含有量は、0.2〜2.0重量%とされていることが望ましい。
また、脂肪酸又は脂肪酸アミドを使用することもできる。脂肪酸は、例えばステアリン酸、パルチミン酸、ミリスチン酸等の飽和脂肪酸や、オレイン酸、リノール酸、リシレノン酸等の不飽和脂肪酸に代表されるものであるがこれに限定されるものではない。
脂肪酸アミドは、例えばステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミド(EBS)等に代表されるものであるがこれに限定されるものではない。
仮にこの脂肪酸又は脂肪酸アミドの含有量が0.2重量%未満では、効果が充分ではなく、最終生成物としての剥離防止の向上を図ることができない。これに対して、この脂肪酸又は脂肪酸アミドの含有量が2重量%を超えてしまうと、この剥離防止の向上という効果が飽和してしまうばかりでなく、高価な脂肪酸、又は、脂肪酸アミドの添加量が増加することによる原料コストの上昇が著しくなるという問題が生じる。即ち、脂肪酸又は脂肪酸アミドの含有量が2重量%を超えても、剥離防止の向上はこれ以上大幅に向上するものではなく、却って原料コストの面において不利となる。
次に本発明を適用したポリマー改質アスファルト組成物による硬化温度制御方法につい
て説明する。
上述したように、本発明を適用したポリマー改質アスファルト組成物は、SBSが含有されている。このため、ポリマー改質アスファルト組成物自体を加熱した場合には、図4に示す“高温時”のようにSBSにおけるスチレンブロックが凝集することなく互いに遊離し、自由に動き回ることが可能となる。その結果、ポリマー改質アスファルト組成物自体の粘度が低下し、より流動性に優れたアスファルトとすることが可能となり、加工性をより向上させることができる。
これに対して、ポリマー改質アスファルト組成物自体を加熱状態から冷却させた場合には、SBSにおけるスチレンブロック同士が互いに凝集し、図4に示す“低温時”のように、SBS間で3次元的に連結されたネットワークを構成することとなる。これにより、低温時には、この形成されたSBSによる3次元ネットワークを介して弾性力を発揮させることが可能となる。換言すれば、この低温時は、ポリマー改質アスファルト組成物自体を路面上に舗装して冷却させた状態において、ゴムのような弾性を発揮させることが可能となる。
これら高温時における状態と、低温時における状態は互いに可逆的なものである。即ち、SBSによる3次元ネットワークが形成されている低温時から、更に高温に過熱した場合には、スチレンブロックにおける凝集が解ける結果、SBSは互いに遊離して流動性を向上させることが可能となる。このような高温状態から再びアスファルト組成物を冷却させた場合には、スチレンブロックの凝集が開始し、ゴム的な弾性を発揮する。
なお、低温時において、SBSによる3次元ネットワークの形成過程では、異なる3つ以上のSBSにおけるスチレンブロックが互いに凝集する。そして、その凝集した凝集体から3本以上のブタジエンブロックの分子鎖が伸びることとなる。また5つ以上のSBSにおけるスチレンブロックが互いに凝集することは、有機化学構造上安定ではない。
このような性質を持つSBSを、本発明では上述したように分子長の短い第2のSBSの含有量が、分子長の長い第1のSBSの含有量よりも過剰になるように添加する。かかる場合において、例えば第1のSBSに対して4倍の分子数からなる第2のSBSを添加し、高温に加熱するものとする。
かかる場合には、第1のSBSよりも数が多い第2のSBSのスチレンブロック同士が互いに凝集して、相互に3次元的なネットワークを形成するように作用する。ちなみに、スチレンブロック間の凝集は、略同一長さからなるスチレンブロックにおいて優先的に生じる。このため、互いに略同一長さからなる第2のSBSのスチレンブロック間で凝集が優先的に生じる。
第1のSBSにおけるスチレンブロック長LS1は、第2のSBSにおけるスチレンブロック長LS2との関係において、LS2/LS1が0.7〜1.4とされている。このため、LS2との関係においてLS1がかかる長さの範囲に収まる第1のSBSでは、そのスチレンブロックが第2のSBSのスチレンブロックとの間で互いに凝集し得る範囲にある。
このため、第2のSBSのスチレンブロック同士が互いに凝集して、相互に3次元的なネットワークを形成する過程において、第1のSBSのスチレンブロックが1以上に亘り凝集される可能性がある。その結果、3ないし4つの第2のSBSにおけるスチレンブロックが凝集して凝集体が形成される代わりに、例えば3つ以下の第2のSBSのスチレンブロックと、1つ以上の第1のSBSのスチレンブロックが凝集する可能性も出てくる。
ともに分子長が同一の長さからなる第2のSBSのみ同士で凝集体を形成する場合には、SBSの分子鎖を介した安定的な3次元ネットワークが形成されることとなるが、第2のSBSよりも分子長が長い第1のSBSがこれに混ざることにより、SBSの分子鎖を介した安定的な3次元ネットワークの形成が困難となる。即ち、第1のSBSにおける一方のスチレンブロックが、第2のSBSのスチレンブロックとともに凝集した場合に、第1のSBSにおける他方のスチレンブロックは、分子長の異なる第2のSBSとの間で凝集することができなくなる。これに加えて、数の多い第2のSBS間で互いに凝集してネットワークを形成しようとするのを、第1のSBSがその長い分子長を介してあたかも阻害するように作用する。これは分子長の短い第2のSBSが、分子長の長い第1のSBSよりも含有量(分子数)が多いために起こりえる作用といえる。具体的には、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量は、質量比で1.25〜3.0とされていることにより起こりえる作用である。
このようにして第2のSBSによる強固なネットワークの形成が阻害される結果、加熱状態から冷却する過程において、当該ネットワーク形成による弾性の増加を抑える、すなわち粘度の上昇を抑えることが可能となる。このため、図5に示すようにSBSを単一種のみで構成した従来の改質アスファルトでは、例えば140℃未満となった場合には、施工が不可能になるほどアスファルトが硬くなるのに対して、本発明によれば、例えば140℃未満においても、施工を行う上で十分な程度まで粘度を下げることができる。
仮に、本発明を適用したポリマー改質アスファルト組成物において、140℃未満から更に冷却を行った場合においても、同様に第2のSBS間の凝集によるネットワークの形成が第1のSBSを介して阻害されることとなり、低粘度化を図ることにより施工は可能となるが、例えばポリスチレンのガラス転移温度(Tg)付近まで冷却をすると、第2のSBSを中心に硬化が開始され、粘度が上昇して施工が困難となる。
このように、本発明を適用したポリマー改質アスファルトによれば、粘度が上昇してアスファルトが硬化し、施工可能になる温度をガラス転移温度近辺まで下げることが可能となり、140℃から更に30℃程度まで低くしてもアスファルト混合物の施工および敷均しが可能となる。その結果、低温下でも低粘度化を図ることが可能となり、施工可能温度域の低温化に対する社会的な要望に応えることが可能となる。特に東日本大震災からの復興を目指す東北地方においても、冬場における低温下でのアスファルト舗装作業に対応することが可能となる。また遠方までアスファルトを搬送する過程でこれが低温でも硬化しないようにすることが可能となり、アスファルト舗装の密度を向上させ、舗装の耐久性を延長することができる。さらに平坦性を確保することができるため、振動低減による安全性の向上(荷物落下や、疲労による事故など)や、当該舗装された道路上を走行する車両の乗り心地の向上も実現できる。
また本発明を適用したポリマー改質アスファルトによれば、60℃以下において、目標としているアスファルトの強度を発現させることが可能となる。このため、舗装後の道路の高強度化、高耐久化と、施工可能温度域の低温化の両立を図ることが可能となる。
また本発明は、以下に説明するポリマー改質アスファルト組成物の粘度調整方法として具現化されるものであってもよい。
このポリマー改質アスファルト組成物の粘度調整方法では、140〜180℃において低粘度化を図る上で、いかにしてその粘度を調整するかを規定するものである。
先ず、第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせに対する施工性(120〜180℃における粘度)の関係を予め判別しておく。
次に、この予め判別した、第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせに対する施工性の関係に基づいて、所望の施工性を得るために必要な第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせを選定する。そして、この選定したスチレンブロック長の比率と分子長の比率の組合せからなる第1のSBS及び第2のSBSをベースアスファルトに対して混合する。
これにより、所望の施工性に応じて最適な第1のSBS及び第2のSBSを容易に選定することができる。このため、実際に施工する環境や求められる強度に応じて最適なポリマー改質アスファルト組成物を製造することも可能となる。
また、第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせのみならず、第1のSBSと第2のSBSとの含有比率と、施工性との関係を予め判別しておき、第1のSBS及び第2のSBSの種類に加えて、含有比率を選定するようにしてもよい。
ちなみに、施工性(120〜180℃における粘度)のみならず、DS値等の他のパラメータと、第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせを予め判別しておき、これらに基づいて、第1のSBS及び第2のSBSを選定するようにしてもよい。
以下に、本発明で使用した試験方法、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の例において単に%のみ記載されている場合は、質量%を示すものとする。
本発明では、実験的検討を行うために得たサンプルについて、表1に示すように、針入度(25℃)、軟化点、粘度(180℃)、DS値、施工性からなる性能試験を行う。以下、詳細な試験方法について説明をする。
針入度(25℃)は、JIS K 2207「石油アスファルト−針入度試験方法」で測定した。この値は40(0.1mm)以上が好ましい。
軟化点は、JIS K 2207「石油アスファルト−軟化点試験方法」で測定した。この値は56(℃)以上が好ましい。
粘度(180℃)は、JPI−5S−54−99「アスファルト−回転粘度計による粘度試験方法」の条件の下、測定温度180℃、使用スピンドルSC4−21、スピンドル回転数20回転/分で測定した。
また、上述の如き製造方法を経ることにより生成されたアスファルト組成物は、強度も向上させることが可能となる。このアスファルト組成物の強度は、舗装評価・試験法便覧(社団法人 日本道路協会編)に記載されている「B003ホイールトラッキング試験方法」に基づいて、DS値から判断する。このDS値は、道路舗装体の強度を測定する指標として専ら使用されるものであるが、アスファルト組成物を防水材、粘着材の用途等に適用する際においても、同様に強度の向上が求められる場合があることから、結果的にDS値を介してこれを評価することも十分に考えられる。このため、本件に関しては、DS値を評価指標としつつも、道路舗装のみならず、防水材、粘着材を始めとしたいかなる用途に適用するようにしてもよい。
以下、このDS値を測定する方法について説明をする。DS値(動的安定度)は、高温時のアスファルト組成物の耐流動性(轍掘れしにくさ)を評価する指標であり、ホイールトラッキング試験機を用いて測定を行う。ホイールトラッキング試験は、夏場の路面を想定して60℃で実施する。アスファルト組成物を後述する表1に記載する所定の粒度に調整した骨材(岩石を砕いた石)と混合した供試体を60℃で5時間以上養生し、車輪を1時間走行させる。例えば図6に示すように、30×30×5cmからなる供試体5を養生した。
次に、この供試体5に対して、車輪11により686Nの下向きの荷重を負荷しつつ、図中矢印方向に向けて42回/分のペースで往復走行させる。ちなみに、この車輪11による走行位置は、ずらすことなく同一の走行路とする。
図7は、DS値の測定試験開始時刻を起点としたときの試験時間(分)に対する沈下量(mm)の例を示している。試験開始時刻を起点として試験時間が増加するにつれて、車輪11の往復走行による沈下量が増加する。この沈下量は、供試体5の表面から深さ方向への沈下深さ(mm)である。
DS値を測定する際には、最初の試験開始時点から45分経過前までの沈下量は考慮に入れない。その理由として、最初の試験開始時点から45分経過前までは、添加した骨材との噛み合わせ等の要因に基づいて沈下量が決まるため、本来的な意味での耐流動性を評価することができなくなるためである。
DS値を測定する際には、あくまで試験開始時刻を起点とし、45分経過後から60分経過後までの、15分間におけるアスファルト組成物の変形量d(mm)に着目する。このdは、試験開始時刻を起点として60分経過時における沈下量と、試験開始時刻を起点として45分経過時における沈下量との差を求めることにより算出することができる。DS値は、下記の式(2)から求めることができる。
DS値(回/mm)=45分経過時〜60分経過時までのタイヤ走行回数(回)/d(mm)・・・・・・・・・・(2)
から求めることができる。車輪11による往復頻度が、42(回/分)である場合、(2)式を変形すると以下の(2)´式に書き換えることができる。
DS値(回/mm)=630(回)/d(mm)・・・・・・・・・・(2)´
この(2)´式の分子は、42(回/分)×15(分)=630(回)を意味する。即ち、このDS値は、d(mm)に対する、15分間のタイヤ走行回数で求めることが可能となる。このDS値が高いほど、アスファルト組成物自体の変形量が少なく、轍掘れに強い材料となり、強度が高いことを意味している。
なおDS値は、アスファルト組成物のみを用いて試験するのではなく、実際の道路舗装と同様に、表2に示すような骨材(砕石、石灰岩粉など)と、アスファルト組成物を後述する所定の条件で混合し、成型した供試体を用いて測定する。
このDS値が高いほど、アスファルトの強度が高く、轍掘れに強い舗装材料を提供できることを意味している。前記の舗装調査・試験法便覧にはDS値が6000回/mm以上となった場合は、DS値が6000回/mm以上と報告することになっているが、本発明では実際に得られたDS値を用いた。また、前述の複素弾性率の結果も勘案して、望ましいDS値は3000回/mm以上、好ましくは6000回/mm以上とした。
本実施例、比較例において、施工性は、マーシャル供試体を作製し締固め度を測定し、評価した。具体的には混合温度を170℃とした際の、締固め温度120℃における締固め度が99%以上の場合に、施工性が良好「○」とし、99%に満たない場合は施工性が不良(×)とした。
マーシャル供試体は舗装調査・試験法便覧「B001マーシャル安定度試験方法」に則り作製した。骨材配合、アスファルト量および混合物作製条件は、DS値を測定する際と同様とした。ここで基準密度は混合温度を170℃、締固め温度を160℃として作製したマーシャル供試体の密度とした。なお突き固め回数は両面50回とした。
上述した混合温度とは、骨材とアスファルトを混合することにより、アスファルト組成物を製造する温度をいう。
マーシャル供試体は、マーシャル供試体(101.5mmφ×高さ63.5mmの円柱状)作製用モールドにアスファルト組成物を1.2kg程度入れ、マーシャルランマーと呼ばれるハンマーで突き固める。この突き固めは50回行う。次にこの供試体を上下逆にして更に突き固めを50回行う。このような突き固めることで作製用モールド中のアスファルト組成物は圧密され、供試体の密度が上昇する。
上述の「締固め温度」とは、突き固める際のアスファルト混合物の温度をいう。締固め温度が低下すると、アスファルト混合物の硬さが上昇するため、圧密しにくくなり、結果としてマーシャル供試体の密度が低下する。
上述の「締固め度」は、評価しようとするマーシャル供試体の密度を、基準とするマーシャル供試体の密度で割ったものである。本実施例では、120℃で締め固めた際の密度を、160℃で締め固めた際の密度で割ることとしている。
なお「締固め」しやすいバインダ配合を、「施工性が良い」とした。
以下、本発明を適用した改質アスファルト組成物において、効果を検証するための実施例と比較例について、詳細に説明をする。
表1の実施例1〜5、並びに比較例1〜3に示す配合比率からなる、ストレートアスファルト、プロパン脱瀝アスファルト、エキストラクト、SBS、剥離防止剤からなる試料を準備した。
ストレートアスファルトの性状は、例えば、25℃における針入度が65(1/10mm)、軟化点が48.5℃、15℃における密度が1034kg/m3であるのものを使用するようにしてもよい。
使用したプロパン脱れきアスファルトの性状は、代表的な性状が針入度が13(1/10mm)、軟化点が61.5℃、15℃における密度が1066kg/m3であるものである。また、使用したエキストラクトは、代表的な性状が100℃における動粘度が61.2mm2/s、40℃における動粘度が3970mm2/s、15℃における密度が976.4kg/m3であるのものである。
使用したSBSは、表3に示すように、第1のSBS、第2のSBS、並びにこれらとは性状の異なる第3のSBSを使用している。第1のSBSは、分子量が150000であり、スチレン含有比率が30%である。また第2のSBSは、分子量が80000であり、スチレン含有比率が45%である。また第3のSBSは、分子量が90000であり、スチレン含有比率が30%である。
また、これら分子量並びにスチレン含有比率から計算されるスチレンブロック長LSは、表3に示すとおりである。即ち、第1のSBSのスチレンブロック長LS1は、154.7nmであり、第2のSBSのスチレンブロック長LS2は、123.8nmであり、第3のSBSのスチレンブロック長LS3は、92.8nmである。
また、これらスチレンブロック長LSから計算される、LS2/LS1は、0.8であり、LS3/LS1は、0.6である。
これらSBSの各ブタジエンブロック長LBと、スチレンブロック長LSから算出される、各SBSの分子長は、第1のSBSにおいて1550nm、第2のSBSにおいて、767nm、第3のSBSにおいて930nmであった。
以上より、第1のSBSと第2のSBSは、スチレンブロック長の比、並びにSBS分子長の比が、本発明において規定した範囲内に入る組合せであるのに対して、第1のSBSと第3のSBSは、スチレンブロック長の比、並びにSBS分子長の比が、本発明において規定した範囲から逸脱する組合せである。
実施例1では、第1のSBSと第2のSBSを2.5%ずつとし、実施例2では、第1のSBSを2%、第2のSBSを3%とし、実施例3では、第1のSBSを1.7%、第2のSBSを3.3%とし、実施例4では、第1のSBSを1.4%、第2のSBSを3.6%としている。また実施例5では、第1のSBSを1%、第2のSBSを4%とし、比較例1では、第1のSBSを2.5%、第3のSBSを2.5%とし、比較例2では、第1のSBSを1.7%、第3のSBSを3.3%とし、比較例3では、第1のSBSを1.4%、第3のSBSを3.6%としている。なお、表中にSBSの重量比率を併記しているが、これは、分子量の小さい第2のSBS又は第3のSBSを分子とし、分子量の大きい第1のSBSを分母とした場合における比率を示している。
使用した剥離防止剤は、酸価156(mgKOH/g:JIS K0070)、軟化点77.0℃(JIS K2207)の不均化ガムロジンである。
このガムロジンは、採取した生松脂をろ過して不純物を除去し、その後、蒸留することにより、低沸点成分のテレピン油を分離して得られるロジンである。このガムロジンは、一般的に、アビエチン酸が20〜40重量%、ネオアビエチン酸が15〜25重量%、パラストリン酸が20〜30重量%、ピマール酸が3〜8重量%、イソピマール酸が10〜20重量%、デヒドロアビエチン酸が3〜8重量%含まれている。本実施例では、このガムロジンを添加する場合において、組成物全体に対する含有量を0.75重量%としている。
上述した構成からなる実施例1〜5、比較例1〜3からなるポリマー改質アスファルト組成物の製造方法について以下で述べる。
ストレートアスファルト、プロパン脱瀝アスファルトを150℃程度の温度で溶融した状態で、エキストラクトが上述した配合比率となるように混合し、同様な手順にて上述した第1のSBS〜第3のSBSを所定量添加し、更に、上述したガムロジンを添加する。混合はホモミキサーを用いて行い、回転数を1500〜5000回転/分として3〜5時間程度、混合並びに攪拌した。混合終了時のアスファルトの温度は200〜215℃に調整した。また製造量はいずれも1.8kgとした。
作製した実施例1〜5、比較例1〜3についてそれぞれ測定した物性を表1に示す。物性の測定項目は、性状試験と、混合物性能試験に大別される。性状試験では、針入度(0.1mm)、軟化点(℃)、180℃における粘度(mPa・s)の各項目について試験を行っている。また混合物性能試験では、DS値、施工性について評価を行っている。
これら測定する各物性値において、本発明で好ましい範囲は以下に示すとおりである。
針入度(25℃)及び軟化点は、日本改質アスファルト協会の定める、ポリマー改質アスファルトII型の品質規格のうち、針入度(25℃)が40以上、軟化点56.0℃以上とする。
粘度(180℃)は、200mPa.s以下とされている。この値を超えてしまうと、粘度が高すぎて、施工が困難になる。
夏季の轍掘れのしにくさの指標として、ホイールトラッキング試験結果より得られるDS値が3000回/mm以上とした。重交通道路の舗装として十分な値であり、これを下回る場合は轍掘れが発生する恐れがあることを示唆する。
実施例1〜5は、本発明において規定した範囲に包含される、第1のSBSと第2のSBSの組合せである。また実施例1〜5は、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が、質量比で1〜5の範囲に入るものとされている。
このため、実施例1〜5は、何れも180℃粘度が200mPa・s以下であり、DS値が3000回/mm以上であった。また、施工性は何れも“○”であり優れたものとなっていた。
比較例1〜3は、何れも本発明において規定した範囲から逸脱した、第1のSBSと第3のSBSとの組合せである。このため、比較例1および2は、何れも180℃粘度が200mPa・s以下、DS値が6000回/mm以上を満たすものの、施工性が悪化していた。比較例3は、180℃粘度が200mPa・s以下を満たすものの、施工性が悪化していた。また比較例3は、軟化点も低下してしまっていた。
先ず、上述した表1、表3に示すような第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせと、施工性との関係を予め調査しておき、これらをデータベース化しておく。このとき、更に第1のSBSと第2のSBSとの含有比率と、施工性との関係も調査して、これらをデータベース化しておくようにしてもよい。このとき、施工性のみならず、DS値の関係も調査して、これをデータベース化しておくようにしてもよい。更に施工性、DS値のみならず、他のいかなる物性値との関係を調査してこれをデータベース化するようにしてもよい。
次に実際に施工に使用するポリマー改質アスファルト組成物を製造する際には、これらデータベース化した施工性と関連させて記憶させてある第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせ、或いは、これに加えて第1のSBSと第2のSBSとの含有比率に基づき、施工性、又はこれに加えてDS値をはじめとした各種物性を得るために必要な第1のSBS及び第2のSBSのスチレンブロック長の比率と分子長の比率との組み合わせ、或いは第1のSBSと第2のSBSとの含有比率を選定する。例えば表1に示す例では、実施例2に示す施工性のレベルを希望する場合、これに応じた表3に示す第1のSBSと第2のSBSの組み合わせを選定し、更に表1に示す第1のSBSと第2のSBSの含有量を選択する。
これにより、実施例2に示す施工性を得ることが可能な程度に、第1のSBS及び第2のSBSを容易に選定することができる。
本実施例では、第1のSBSと第2のSBSとの含有量の合計アスファルト組成物全体に対する比率が各種性能試験の結果に与える影響を調査したものである。本実施例においても同様に、針入度(25℃)、軟化点、粘度(180℃)、DS値、施工性からなる性能試験を行う。詳細な試験方法は、上述と同様であるため、以下での説明を省略する。
以下、本発明を適用した改質アスファルト組成物において、効果を検証するための実施例と比較例について、詳細に説明をする。
表4の実施例6〜10、並びに比較例4〜5に示す配合比率からなる、ストレートアスファルト、プロパン脱瀝アスファルト、エキストラクト、SBS、剥離防止剤からなる試料を準備した。
ストレートアスファルトの性状、プロパン脱れきアスファルトの性状は表1の実施例と同様である。また使用したSBSは表3に示すとおりのものである。
この表4においては、第1のSBSと第2のSBSとの含有量の合計を何れも4.75%としている。具体的には、比較例4では、第1のSBSを3%、第2のSBSを1.75%とし、実施例6では、第1のSBSを2.25%、第2のSBSを2.5%とし、実施例7では、第1のSBSを1.9%、第2のSBSを2.85%とし、実施例8では、第1のSBSを1.59%、第2のSBSを3.16%とし、実施例9では、第1のSBSを1.3%、第2のSBSを3.45%としている。また実施例10では、第1のSBSを1%、第2のSBSを3.75%とし、比較例5では、第1のSBSを0.75%、第2のSBSを4%としている。なお、表中にSBSの重量比率を併記しているが、これは、分子量の小さい第2のSBS又は第3のSBSを分子とし、分子量の大きい第1のSBSを分母とした場合における比率を示している。
使用した剥離防止剤は、酸価156(mgKOH/g:JIS K0070)、軟化点77.0℃(JIS K2207)の不均化ガムロジンである。このガムロジンの詳細については表1の実施例と同様である。また上述した構成からなる実施例6〜10、比較例4〜5からなるポリマー改質アスファルト組成物の製造方法は、表1におけるサンプルの実験条件と同一である。
実施例6〜10は、本発明において規定した範囲に包含される、第1のSBSと第2のSBSの組合せである。また実施例6〜10は、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が、質量比で1〜4の範囲に入るものとされている。
このため、実施例6〜10は、何れも180℃粘度が180mPa・s以下であり、DS値が3000回/mm以上であった。また、施工性は何れも“○”であり優れたものとなっていた。
比較例4は、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が0.58である。このため、DS値が6000回/mm以上を満たしていたが、施工性が悪化していた。比較例5は、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が5.33である。このため、180℃粘度が136mPa・sと良好だったものの施工性が悪化していた。
なお、実施例6〜10、比較例4〜5は何れも25℃における針入度が48又は49(0.1mm)であり良好な値を示すものである。これらの値を満足するために、ストレートアスファルトとプロパン脱瀝アスファルトについて表4に示す比率となるように調整している。
表1に示す成分比率は、第1のSBSと第2のSBSとの含有量の合計を何れも5%としているのに対して、第1のSBSと第2のSBSとの含有量の合計を4.75%とした表4に示す成分比率では、特に実施例6〜10について、180℃における粘度を何れも160mPa・s以下まで低下させることが可能となり、施工性をより改善することが可能となることが分かる。このため、第1のSBSと第2のSBSの含有量の合計を4.85%以下、更に望ましくは4.75%以下とすることにで、施工性により優れたアスファルト組成物とすることが可能となる。
本実施例では、第1のSBSと第2のSBSとの含有量の合計が各種性能試験の結果に与える影響を更に調査したものである。本実施例においても同様に、針入度(25℃)、軟化点、粘度(180℃)、DS値、施工性からなる性能試験を行う。詳細な試験方法は、上述と同様であるため、以下での説明を省略する。
以下、本発明を適用した改質アスファルト組成物において、効果を検証するための実施例と比較例について、詳細に説明をする。
表5の実施例11〜18、並びに比較例6〜7に示す配合比率からなる、ストレートアスファルト、プロパン脱瀝アスファルト、エキストラクト、SBS、剥離防止剤からなる試料を準備した。
ストレートアスファルトの性状、プロパン脱れきアスファルトの性状は表1の実施例と同様である。また使用したSBSは表3に示すとおりのものである。
この表5においては、第1のSBSと第2のSBSとの含有量の重量比率はほぼ2となるように混合してなる。また第1のSBSと第2のSBSの合計量を何れも異ならせている。
具体的には、比較例6では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を2.5%とし、実施例11では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を3.0%とし、実施例12では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を3.8%とし、実施例13では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を4.0%とし、実施例14では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を4.3%とし、実施例15では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を4.5%とし、実施例16では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を4.75%とし、実施例17では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を5.0%とし、実施例18では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を6.0%とし、比較例7では、第1のSBSと第2のSBSの合計量を6.5%としている。
使用した剥離防止剤は、酸価156(mgKOH/g:JIS K0070)、軟化点77.0℃(JIS K2207)の不均化ガムロジンである。このガムロジンの詳細については表1の実施例と同様である。また上述した構成からなる実施例11〜18、比較例6〜7からなるポリマー改質アスファルト組成物の製造方法は、表1におけるサンプルの実験条件と同一である。
実施例11〜18は、本発明において規定した範囲に包含される、第1のSBSと第2のSBSの組合せである。また実施例11〜18は、第1のSBSと第2のSBSの含有量の合計が3.0〜6.0%の範囲に入るものとされている。
このため、実施例11〜18は、何れも180℃粘度が185mPa・s以下であり、DS値が3000回/mm以上であった。また、施工性は何れも“○”であり優れたものとなっていた。
比較例6は、第1のSBSと第2のSBSの含有量の合計が3〜6%の範囲から逸脱する。このため、DS値が2739回/mmとやや悪化していた。また、比較例7は、第1のSBSと第2のSBSの含有量の合計が3〜6%の範囲から逸脱する。このため、DS値は、9000回/mmと向上していたが、施工性がやや悪化していた。なお、実施例11〜18、比較例6〜7は何れも25℃における針入度が47〜49(0.1mm)であり良好な値を示すものである。これらの値を満足するために、ストレートアスファルトとプロパン脱瀝アスファルトについて表5に示す比率となるように調整している。
また、実施例13〜17は、第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して4.0〜5.0質量%とされていることにより、DS値が4500回/mm以上となり、180℃粘度が160mPa・s以下であり、強度と施工性の双方が好適なものとなる。
更に実施例15〜17は、第1のSBSと第2のSBSの合計がアスファルト組成物全体に対して4.5〜5.0質量%とされていることにより、DS値が6000回/mm以上となり、180℃粘度が160mPa・s以下であり、強度と施工性の双方が好適なものとなることが分かる。 但し、本発明は、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が、質量比で1〜4であれば、第1のSBSと第2のSBSの含有量の合計が3〜6%の範囲から逸脱するものであってもよい。このため、比較例6においても、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が、質量比で1〜4の範囲に含まれているため、DS値がやや悪化するものの施工性が優れており、本発明所期の効果を奏するものといえる。また比較例7においても、第2のSBSの含有量/第1のSBSの含有量が、質量比で1〜4の範囲に含まれているため、DS値が良好であり、施工性は若干悪化するものの、特段施工する上では問題の無い程度であった。