JP5571357B2 - アスファルト組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、道路舗装、防水材、粘着剤等に適用されるアスファルト組成物に関し、特に安定性と強度を向上させる上で好適なアスファルト組成物に関する。
従来より、アスファルトは、道路舗装及び防水等の幅広い分野で使用されている。このアスファルトの補強材としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)が一般に利用されている。しかしながら、このSBSは、アスファルト中に分散させた際に安定性が低下してしまい、特に商業利用時の貯蔵温度(150〜180℃程度)においてアスファルトとSBSとがすぐに分離し、SBSが浮上してしまうという問題点があった。
このため、このアスファルト中にSBSを混合することによりこれを補強する際には、このアスファルト中にSBSを安定化させるための安定剤としては、従来において、例えば硫黄、ポリオキシエチレンノニルフェノール、過酸化物、カーボンブラックや、アロマ系オイル等が提案されていた。
しかしながら、安定剤として添加する硫黄は、硫化水素発生の危険を伴うものであり、ポリオキシエチレンノニルフェノールは環境ホルモンの観点からはその適用を回避すべきであり(例えば、特許文献1参照。)、更に有機過酸化物は、高温で取り扱う際において、分解や爆発の危険性があった。またカーボンブラックは、アスファルトに比べ高価であることから現実にアスファルト製品として市場へ供給する上での妨げとなっていた(例えば、特許文献2参照。)。またアロマ系オイルの添加は、SBSにおけるスチレンブロックを溶解することで安定性を向上させることができる一方、スチレンブロックの存在によって初めて発現させることが可能な弾性率の向上が期待できなくなり、アスファルト製品において期待する強度を得ることが困難になるという問題点があった。
このようにアスファルト組成物の安定性と強度の双方を向上させるための技術に対する要望が従来から特に高まっていた。
特開2000−53865号公報 特開平10−237309号公報
土屋、岩田、「高速道路における路面性状の実態分析」高速道路と自動車、(財)高速道路調査会、p.27、(1986.7)
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、道路舗装、防水材、粘着剤等に適用されるアスファルト組成物において、特に安定性と強度の双方をともに向上させることが可能なアスファルト組成物を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明者は、あくまでスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンを含有し、残部がアスファルトからなるアスファルト組成物において、貯蔵安定性試験後の上部軟化点と下部軟化点との差分絶対値が3℃以下であり、DS値が6300以上であるアスファルト組成物を新たに発明した。
即ち、本発明に係るアスファルト組成物は、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンを190〜210℃で混合し結合させ、残部がアスファルトからなり、前記アスファルトは原油の減圧蒸留残油を脱れきして得られた溶剤脱れき油を溶剤抽出して得られたエキストラクトを含み、貯蔵安定性試験後の上部軟化点と下部軟化点との差分絶対値が3℃以下であり、DS値が6300以上であることを特徴とする。
本発明によれば、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンを含有するアスファルト組成物において、貯蔵安定性試験後の上部軟化点と下部軟化点との差分絶対値が3℃以下であることから、貯蔵安定性の向上を図ることができ、DS値が6300以上とすることによる強度の向上の双方を同時に実現することが可能となる。
アスファルト組成物における角周波数ωに対する複素弾性率G並びに損失正接(tanδ)の関係を示す図である。 動的粘弾性試験機の測定部を模式的に示す斜視図である。 DS値の測定方法の詳細について説明するための図である。 DS値の測定試験開始時刻を起点としたときの試験時間(分)に対する沈下量(mm)の例を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、アスファルト組成物及びその製造方法について、詳細に説明する。
本発明者は、上述した問題点を解決し、所望の安定性と強度を発現できるように、アスファルト組成物を製造するために鋭意実験研究を行った。その結果、本発明者は、アスファルト中に、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)と、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)とを所定重量%の範囲で添加することにより、アスファルトとSBSとが分離することなく安定性を発揮することができ、またアスファルト組成物自体の強度をより向上することができることを見出した。具体的には、SBSと樹脂酸とを混合することにより、ブタジエンブロックを構成する二重結合にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンを結合させることができ、その結果、スチレンブロック同士が凝集してしまうのを解くことができ、最終的に得られる本発明を適用したアスファルト組成物(以下、本発明アスファルト組成物という。)自体の安定性をより向上させることができることを見出した。
即ち、本発明アスファルト組成物は、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)が2〜8重量%未満、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)0.3〜3重量%が含有されてなる。この本発明アスファルト組成物は、残部がアスファルトからなるようにしてもよい。なお、ここでいうアスファルトは、あくまで最終生成物である本発明アスファルト組成物を構成する一要素であり、これにSBS、樹脂酸を添加することによって初めて本発明アスファルト組成物が生成されるものである。
スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)は、アスファルト中に添加される、いわゆる熱可塑性エラストマーである。このSBSは、アスファルト組成物の製造温度及び使用温度、加工温度(150〜210℃程度)において分解による貯蔵せん断弾性係数、および動粘度をはじめとした物理的強度の低下が少なく、後述する水添熱可塑性エラストマーに比べて安価なエラストマーである。SBSは、スチレンブロックの間にブタジエンブロックが挟まれた化学構造からなり、このブタジエンブロックを構成する二重結合にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)を付加させることにより、アスファルト組成物中でのSBSの安定性、すなわち分離し浮上しない傾向、性能を向上させることが可能となる。
本発明においては、アスファルトに対して混合すべきSBSの混合比を調節することにより、本発明アスファルト組成物の物性や性状が最適になるように調製している。
アスファルトは、温度変化による物理性状の変化が極めて大きい材料である。すなわち、このアスファルトは、感温性の大きい材料である。このため常温で使用する材料を形成する場合、約100〜200℃程度まで加熱し溶融させ、液体状にすることで、任意の形状に形成する事が可能になる。しかし、このアスファルトを常温で使用する場合においても、使用する場所や季節等に応じて使用温度が変わり、アスファルトの物性が変化し、所定の性能を発現しない場合がある。
このため、本発明アスファルト組成物では、アスファルトに比べて温度変化による物理性状の変化が小さい、すなわち感温性の小さいSBSを、アスファルトに添加、混合し、アスファルトの感温性を小さくする事が行われている。さらにこのSBSは、アスファルトに比べて常温での弾性率が大きいため、本発明では、物理強度の向上の観点からも、このSBSを添加、混合する。
しかしながら、本発明アスファルト組成物全重量あたりのSBS含有量が2重量%未満の場合、SBS添加による感温性の改善や物理強度向上の程度が実用上十分でなく、アスファルトの物性及び性状の温度依存性を改善する事ができず、広い温度範囲で適切な物性及び性状を得ることが困難になるという問題点が生じる。これに対して、SBS含有量が8重量%を超える場合、最終的に得られるアスファルト組成物の粘度が大きくなり過ぎてしまい、実際にこれを道路に敷設する際の施工性を著しく悪化させることにもなる。また、このSBS含有量が8重量%以上では、最終的に得られるアスファルト組成物の熱安定性及び貯蔵安定性が悪化し、均一な組成物を得られなくなる。このため、SBSの含有量は2〜8重量%未満とする。
カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)は、例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸等が含まれるが、これに限定されるものではなく、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンという定義の下でのいかなる樹脂酸も含まれる。これらカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンは、一般にロジンに含まれている。
ここでロジンとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどが使用される。これらロジンは、原産地、原材料、採取方法の違いにより上述したガムロジン、ウッドロジン等の如き分類が可能となるが、少なくとも松脂の水蒸気蒸留時の残渣成分として得られるものである。このロジンでは、成分としてアビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、サンダラコピマール酸、イソピマール酸等を含む混合物である。このロジンは、通常約80℃で軟化し、90〜100℃で溶融する。なお、ロジン中にはアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸などの各種樹脂酸が含まれているが、これら樹脂酸をそれぞれ精製して単独で使用するようにしてもよい。
本発明においては、以下、このカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)としてガムロジンを使用する場合を例にとり説明をする。このガムロジンは、採取した生松脂をろ過して不純物を除去し、その後、蒸留することにより、低沸点成分のテレピン油を分離して得られるロジンである。このガムロジンは、一般的に、アビエチン酸が20〜40重量%、ネオアビエチン酸が15〜25重量%、パラストリン酸が20〜30重量%、ピマール酸が3〜8重量%、イソピマール酸が10〜20重量%、デヒドロアビエチン酸が3〜8重量%含まれている。
また、ロジンをそのまま適用する代わりに、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸等のうち何れか1種以上を単独で添加するようにしてもよい。
このカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)は、本発明アスファルト組成物の全重量に対して、0.3〜3重量%を含有する。仮にこの樹脂酸の含有量が0.3重量%未満では、SBSにおけるブタジエンブロックに対する、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸等)の付加が十分ではなく、最終生成物としての本発明アスファルト組成物の安定性の向上を図ることができない。これに対して、この樹脂酸の含有量が3重量%を超えてしまうと、この安定性向上という効果が飽和してしまうばかりでなく、高価な樹脂酸の添加量が増加することによる原料コストの上昇が著しくなるという問題が生じる。即ち、樹脂酸の含有量を3重量%を超えて添加しても、安定性はこれ以上大幅に向上するものではなく、却って原料コストの面において不利となる。
またこのカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)は、本発明アスファルト組成物の全重量に対して、0.3〜1重量%未満の範囲で含有されていることが望ましい。この樹脂酸の含有量の上限を1重量%未満とすることにより、原料コストの上昇を極力低めに抑えつつ、本発明アスファルト組成物の安定性向上を図ることが可能となり、費用対効果を向上させることができる。
アスファルトは、原油を減圧蒸留した残油として得られるストレートアスファルト、原油の減圧蒸留残油をプロパン等により脱れきして得られたプロパン脱れきアスファルト、或いは原油の減圧蒸留残油をプロパン等により脱れきして得られた溶剤脱れき油を溶剤抽出して得られたエキストラクト等で構成される。このエキストラクトの代わりに、アロマ系オイルで構成するようにしてもよい。このアロマ系オイルは、JISK6200に規定されているものであり、芳香族炭化水素を、少なくとも35質量%含む炭化水素系プロセスオイルである。
アスファルトは、上述した減圧蒸留法、ブローイング(空気吹き込み法)、調合法(ブレンド法)の何れかの方法により製造される。即ち、このアスファルトは、プロパン脱れきアスファルト、ストレートアスファルト、エキストラクトのうち何れか1種以上が含まれるものである。
プロパン脱れきアスファルトは、減圧蒸留残油に対して、プロパン、又はプロパンとブタンの混合物を溶剤として使用し、脱れき処理して得られた、いわゆる溶剤脱れきアスファルトである。またこのプロパン脱れきアスファルト以外には、例えばストレートアスファルトや、ブローンアスファルト等のいかなるアスファルトを使用するようにしてもよい。
このプロパン脱れきアスファルトは、例えばJISK2207の下で25℃における針入度が8(1/10mm)、軟化点が66.5℃、15℃における密度が1028kg/mであるのものを使用するようにしてもよい。
また、ストレートアスファルトとしては、例えば、25℃における針入度が65(1/10mm)、軟化点が48.5℃、15℃における密度が1034kg/mであるのものを使用するようにしてもよい。
エキストラクトは、原油の減圧蒸留残油をプロパン等により脱れきして得られた溶剤脱れき油を更に極性溶剤を用いて溶剤抽出することにより、重質潤滑油を精製油として得る際の抽出油である。エキストラクトは、100℃における動粘度が61.2mm/s、40℃における動粘度が3970mm/s、15℃における密度が976.4kg/mであるのものを使用するようにしてもよい。ちなみに、このエキストラクトの含有量は、本発明アスファルト組成物全体の重量に対して、5重量%以下含まれていることが望ましい。その理由として、このエキストラクトの含有量が5重量%を超えてしまうと、得られる本発明アスファルト組成物の強度を、アスファルトとしての適用を考える上で十分な程度まで向上させることができないためである。
なお、上述した構成からなる本発明アスファルト組成物を実際に製造する際には、上述したアスファルトを最初に準備する。このアスファルトは、ストレートアスファルト、プロパン脱れきアスファルト、及びエキストラクトのうち1種以上の混合物である。このアスファルトを195℃程度の温度で維持した状態で、SBSを2〜8重量%未満添加し、更に、上述した樹脂酸を0.3〜3重量%添加し、ホモミキサーにより、温度を190〜210℃、回転数を1500〜6000回転/分として2〜3時間程度、混合並びに攪拌する。ちなみに、この混合時間については、特に2〜3時間の範囲から逸脱してもよいが、混合温度は上述した190〜210℃の範囲で行う必要がある。
混合温度が190℃未満であると、SBS中のブタジエンブロックを構成する二重結合にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)が付加しにくくなり、アスファルト組成物中でのSBSの安定性、すなわち分離し浮上しない傾向、性能を向上させることができず、アスファルトとSBSが結果として分離してしまうことになる。
また、混合温度が210℃以上であると、SBSそのものが分解し変質してしまい、SBSをアスファルトに添加、混合することで発現しようとする強度の向上、および感温性の低下(感温性の改善)が達成できなくなる。このため、混合温度は、上述した範囲に限定することとした。
なお図1は、アスファルト組成物における角周波数ωに対する複素弾性率G並びに損失正接(tanδ)の関係を示している。アスファルト組成物に正弦波振動を一定ひずみで加え、その角周波数ωを徐々に増加させてゆき、その角周波数ωに対して複素弾性率G並びに損失正接(tanδ)をそれぞれ測定した。
本発明において規定している複素弾性率Gは、動的粘弾性試験機により測定することができる。具体的には、図2に示すようにアスファルトバインダー1を2枚の平行円盤2a,2b間に挟み、一方の円盤2aに所定の周波数の正弦波歪みを加え、アスファルトバインダー1を介して他方の円盤2bに伝わる正弦的応力σを測定する。その際の測定条件は、円盤2a,2bの直径が25mm、アスファルトバインダー1の厚さが1mm、歪みが10%である。そして、その測定結果に基づき、下記数式(1)から複素弾性率Gを求める。ここで、下記数式(1)におけるγは円盤に加えた最大歪みである。
Figure 0005571357
損失正接(tanδ)は、正弦波歪みγをアスファルト組成物に加えた際に、アスファルト組成物中で失われるエネルギーの大きさを示す指標である。
損失正接(tanδ)が大きいということは、ひずみを加えた際にエネルギー損失が大きい、すなわち変形しやすく、与えたひずみを取り除くと、元の形状にもどらないことを意味する。また損失正接(tanδ)が小さいということは、ひずみを加えた際にエネルギー損失が小さい、すなわち変形しにくく、与えたひずみを取り除くと、元の形状に戻りたがる物性を意味する。
損失正接(tanδ)は、上述の複素弾性率Gを測定する際に、一方の円盤に加えた所定の角周波数の正弦波歪みγと、アスファルト組成物を介して他方の円盤に伝わった正弦的応力σとの、位相差δから算出する。
なお上述の複素弾性率Gおよび損失正接(tanδ)は、舗装調査・試験法便覧(社団法人 日本道路協会編)に示される方法「A062 ダイナミックシアレオメータ試験方法」に基づいて測定しても良い。
ちなみに、この図1の例では、SBS4.5重量%、ガムロジン0.75重量%を含有し、残部がアスファルトからなるアスファルト組成物に、60℃において10%の正弦波歪みを加えた際の、複素弾性率Gおよび損失正接(tanδ)を示している。また、アスファルト組成物を調製する際の混合温度は、それぞれ180℃、185℃、190℃に異ならせたものをサンプルとして用いている。
特に道路舗装の現場において、アスファルト組成物を骨材(砕石、砂など)と共に道路上に敷設する際には、舗装面を重機(ローラーなど)および人力によって、平坦にし、交通走行時の乗り心地の向上、歩行時のつまづきの防止、水溜まり生成の防止をはかる必要がある。舗装面を平坦にするには、大きな力ゆっくりと舗装面に与え、いわゆるアイロン掛けをするようにして作業を行う。
この際アスファルト組成物には低い角周波数ωで振動を受けるため、かかる低い角周波数ωの下でのtanδが高いほど、アスファルト組成物が変形しやすく、復元力が小さくなり、現場での施工性、即ち、平坦な道を形成しやすくする上で適したものとなる。
混合温度が190℃のサンプルは、それ以外と比較して、低角周波数ωにおけるtanδが高くなる傾向が示されていた。これに対して、混合温度が185℃以下では低角周波数ωにおけるtanδが低下してしまう傾向が表れていた。このため、施工性の点からも、混合温度を190℃以上とすることが望ましいことが分かる。
また、複素弾性率Gも、低い角周波数ω帯域において小さいほうが望ましい。特にアスファルト組成物を締め固め、平坦にする際には、低い角周波数ω帯域でアスファルト組成物へ負荷がかかることになるが、このときは極力軟らかいほど、換言すれば弾性率が低いほど施工性が向上することになる。かかる複素弾性率の観点でみた場合においても、混合温度が190℃のサンプルは、それ以外と比較して、低い角周波数ωにおける複素弾性率Gが低くなる傾向が示されていた。これに対して、混合温度が185℃以下では低角周波数ωにおける複素弾性率Gが高くなり、施工性が悪化してしまう傾向が表れていた。このため、施工性の点から、混合温度を190℃以上とすることが望ましいことが分かる。
上述の如き製造方法を経ることにより生成された本発明アスファルト組成物は、アスファルトとSBSとが分離することなく共に安定させた状態で仕上ることができる。その理由として、SBSを構成するスチレンブロックは互いに他のSBSのスチレンブロックと互いに凝集しようとする性質を持つが、本発明では、ブタジエンブロックを構成する二重結合にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)を付加させることができる。特にスチレンブロック近傍に樹脂酸が付加することにより、嵩高い樹脂酸がスチレンブロックに作用し、ひいてはスチレンブロックの凝集を解くことが可能となるためである。このスチレンブロックの凝集を解くことにより、SBSがアスファルトとの間で分離することなく、十分な安定性を確保することが可能となる。
ちなみに、このアスファルト組成物が安定しているか否かは、貯蔵安定性試験を介して識別することが可能となる。この貯蔵安定性試験は、内径が5.2cm、高さが13cmのアルミニウム製円筒缶に、深さ12cmの位置まで本発明アスファルト組成物(約250g)を注入して密封し、170℃で48時間加熱する。その後、アルミニウム製円筒缶に注入されているアスファルト組成物の上部軟化点、下部軟化点における軟化点を測定することにより確認することができる。ここでいう上部軟化点とは、上部4cm以内における軟化点であり、ここでいう上部4cm以内の意味するところは、アルミニウム製円筒缶の深さ12cmの位置まで充填したアスファルト組成物のうち、表面から0cm〜4cmにあるもの、換言すれば、充填したアスファルト組成物の底から8cm〜12cmにあるものを採取したものである。ここでいう下部軟化点とは、下部4cm以内における軟化点であり、下部4cm以内の意味するところは、アルミニウム製円筒缶の深さ12cmの位置まで充填したアスファルト組成物のうち、底から0cm〜4cmにあるもの、換言すれば、充填したアスファルト組成物の表面から8cm〜12cmにあるものを採取したものである。
軟化点の測定は、JISK2207に示す方法に基づくものとしてもよい。そして、上部の軟化点と下部の軟化点の差の差分絶対値を介して安定性の判断を行う。この軟化点差としての差分絶対値が3.0℃以下のときに貯蔵安定性が良好であるものとした場合に、本発明アスファルト組成物は、いずれも軟化点の差分絶対値が3.0℃以下まで抑えることが可能となる。
JISK2207では、軟化点の繰り返し精度として軟化点が80℃以下の場合、軟化点の差分絶対値が1.0℃、軟化点が80℃を超えるものでは軟化点の差分絶対値が2.0℃を超えてはいけない旨が定められている。ここでいう軟化点の繰り返し精度とは、同一の場所で同一の人が同一の試料を用いて測定した際の許容差を示すものである。また安定性に関しては、軟化点の差分絶対値が2〜3℃以内であればほぼ安定である旨が一般的な基準となっており、この軟化点の差分絶対値が5℃以上は、まず不安定であると考えられている。ここで、貯蔵安定性が良好で完全に均一な試料が存在した場合、上部4cm以内、下部4cm以内における軟化点を測定し、それぞれの軟化点が上振れ、下振れしたとすると、試験誤差のみで2.0℃(軟化点が80℃以下の場合、上振れ分が1℃、下振れ分が1℃、合計2℃)乃至4.0℃(軟化点が80℃を超える場合、上振れ分が2℃、下振れ分が2℃、合計4℃)の差が生じることとなる。
以上より、軟化点の差分絶対値が3℃以下という限定は、軟化点が80℃以下の試験誤差(=2.0℃)と比較して実質1℃程度の差しかなく、事実上、安定性が良好と考えられ、また軟化点が80℃以上であった場合は、試験誤差(=4.0℃)以下の精度であることから同一の軟化点と判断できます。このため、本発明では、軟化点の差分絶対値の閾値を3℃以下としている。また、この軟化点の差分絶対値が2.5℃以下であると、更に貯蔵安定性が良好になることから望ましいものといえる。更にこの軟化点の差分絶対値が2.0以下であると貯蔵安定性をより強固なものとすることができるため望ましい。
また、上述の如き製造方法を経ることにより生成された本発明アスファルト組成物は、強度も向上させることが可能となる。このアスファルト組成物の強度は、舗装評価・試験法便覧(社団法人 日本道路協会編)に記載されているホイールトラッキング試験に基づいて、DS(Dynamic Stability)値から判断する。このDS値は、道路舗装体の強度を測定する指標として専ら使用されるものであるが、本発明アスファルト組成物を防水材、粘着材の用途等に適用する際においても、同様に強度の向上が求められる場合があることから、結果的にDS値を介してこれを評価することも十分に考えられる。このため、本件に関しては、DS値を評価指標としつつも、道路舗装のみならず、防水材、粘着材を始めとしたいかなる用途に適用するようにしてもよい。
以下、このDS値を測定する方法について説明をする。DS値(動的安定度)は、高温時のアスファルト組成物の耐流動性(わだち掘れしにくさ)を評価する指標であり、ホイールトラッキング試験機を用いて測定を行う。ホイールトラッキング試験は、夏場の路面を想定して60℃で実施する。アスファルト組成物を後述する表1に記載する所定の粒度に調整した骨材(岩石を砕いた石)と混合した供試体を60℃で5時間以上養生し、車輪を1時間走行させる。例えば図3に示すように、30×30×5cmからなる供試体5を養生した。実際に供試体を作製してから、DS値の測定を開始するまでの時間は特に限定されないが、長期間、高温で保管されたりした場合、性状が変化する可能性がある。このため、一般的には本発明アスファルト組成物を1.8kg調製した後、直径16cm、高さ17cm、板厚1mmの鉄缶に入れ、室温まで放冷し、アスファルト組成物の調整が完了してから48時間以内に、鉄缶に入れたまま、175℃に保った空気循環式オーブンにアスファルト組成物を入れ、3時間保持し加熱したものを使用する。
次に、この供試体5に対して、車輪11により686N(70kgf、もしくは70kg重)の下向きの荷重を負荷しつつ、図中矢印方向に向けて42回/分のペースで往復走行させる。ちなみに、この車輪11による走行位置は、ずらすことなく同一の走行路とする。
図4は、DS値の測定試験開始時刻を起点としたときの試験時間(分)に対する沈下量(mm)の例を示している。試験開始時刻を起点として試験時間が増加するにつれて、車輪11の往復走行による沈下量が増加する。この沈下量は、供試体5の表面から深さ方向への沈下深さ(mm)である。
DS値を測定する際には、最初の試験開始時点から45分経過前までの沈下量は考慮に入れない。その理由として、最初の試験開始時点から45分経過前までは、添加した骨材との噛み合わせ等の要因に基づいて沈下量が決まるため、本来的な意味での耐流動性を評価することができなくなるためである。
DS値を測定する際には、あくまで試験開始時刻を起点とし、45分経過後から60分経過後までの、15分間におけるアスファルト組成物の変形量d(mm)に着目する。このdは、試験開始時刻を起点として60分経過時における沈下量と、試験開始時刻を起点として45分経過時における沈下量との差を求めることにより算出することができる。DS値は、下記の式(2)から求めることができる。
DS値(回/mm)=45分経過時〜60分経過時までのタイヤ走行回数(回)/d(mm)・・・・・・・・・・(2)
から求めることができる。車輪11による往復頻度が、42(回/分)である場合、(2)式を変形すると以下の(2)´式に書き換えることができる。
DS値(回/mm)=630(回)/d(mm)・・・・・・・・・・(2)´
この(2)´式の分子は、42(回/分)×15(分)=630(回)を意味する。即ち、このDS値は、d(mm)に対する、15分間のタイヤ走行回数で求めることが可能となる。このDS値が高いほど、アスファルト組成物自体の変形量が少なく、轍掘れに強い材料となり、強度が高いことを意味している。
なおDS値は、アスファルト組成物のみを用いて試験するのではなく、実際の道路舗装と同様に、適切な粒度に調整した骨材(砕石、石灰岩粉など)と、アスファルト組成物を後述する所定の条件で混合し、成型した供試体を用いて測定する。
本発明アスファルト組成物では、特にエキストラクトを5%以下に抑えていることから、一般の道路舗装に使用される密粒混合物(骨材最大粒径13mm)において、上述したDS値をほぼ6300(回/mm)以上に調製することが可能となる。ちなみにDS値が6000(回/mm)以上であれば、アスファルト組成物としての強度面において殆ど問題が生じなくなる点については、舗装評価・試験法便覧(社団法人 日本道路協会編)において言及されている。ちなみに、このDS値は、更に7000以上とすることにより、より大型の車両の走行が考えられる道路へ使用する上で強度面をより強固なものとすることが可能となり、更に7800以上とすることにより、その強度を更に改善することが可能となる。
即ち、本発明によれば、軟化点差を3.0℃以下とすることによる貯蔵安定性の向上と、DS値を6300(回/mm)以上とすることによる強度の向上の双方を同時に実現することが可能となる。
本発明アスファルト組成物を用いてDS値を測定するための、具体的な方法を以下に示す。
骨材としては、硬質砂岩からなる砕石を使用し、細粒分(粒子径の小さい構成成分)の配合調製には石灰岩を粉砕した石粉を使用し、供試体を作製する。なお海砂や回収ダストなど、前記の砕石および石粉以外の材料は、DS値変動の要因となるので使用しない。
骨材の粒度を調整するために使用する石灰岩を粉砕した石粉は、JIS A 5008「舗装用石灰石粉」に適合する、通過質量百分率がふるい目600μmで100%、150μmで90〜100%、75μmで70〜100%であり、水分が1%以下であるものを使用する。
石粉以外の骨材は硬質砂岩からなる砕石を使用し、以下(1)〜(6)に示す性状を満足するものを使用する。
(1)吸水率1.5%未満、望ましくは1.0%未満。(JIS A 1110)
ここでは吸水率0.64%の砕石を使用している。骨材の吸水率が高いと、被覆されたアスファルトを骨材が吸収し、結果的に混合物中のアスファルト量が少ない配合となる。また吸水率の高い骨材は、使用時の湿度や表面の湿潤状態によってアスファルトの吸収量が大きく変化し、結果として混合物中のアスファルト量が変動することになる。
従って、混合物中のアスファルト量を一定に保つために、吸水率は1.5%未満、望ましくは1.0%未満とする必要がある。
(2)見掛密度2.60g/cm 以上、2.70g/cm 以下(JIS A 1110)
ここでは見掛密度2.66g/cmの砕石を使用した。
(3)安定性6%以下、望ましくは3%以下(JIS A 1122)
ここでは安定性2.4%の砕石を使用した。ここでいう安定性とは、凍結融解に対する安定性を規定したものである。この安定性の数値が小さいほど、凍結融解時の骨材破壊が少ない。舗装設計施工指針では12%以下と規定しているが、骨材の性状のばらつきを抑制するために、当該指針の規定の半分としている。
(4)すり減り減量20%以下、望ましくは15%以下(JIS A 1121)
ここではすり減り減量12.6%の砕石を使用した。すり減り減量試験は、骨材の硬さおよびすり減りに対する抵抗、すなわち骨材の耐久性を評価する試験である。すり減り減量が20%を越えるとわだち掘れが大きくなるので(非特許文献1参照。)、ここではすり減り減量を20%以下、望ましくは15%以下とした。
(5)軟石量5.0%以下、望ましくは3.0%以下(JIS A 1126)
ここでは軟石量2.5%の砕石を使用した。軟石量は、黄銅の棒(モース硬度3〜4)によりひっかき跡が付くかを判定する試験で、骨材が黄銅よりも硬いか、軟らかいかを判定する試験である。軟石量はすり減り減量試験と同様に、骨材の硬さおよびすり減りに対する抵抗、すなわち骨材の耐久性を評価する試験である。軟石量は一般的に5%以下である必要がある。(舗装調査・試験法便覧A008参照。)
(6)細長,あるいは扁平な石片の含有量10.0%以下、望ましくは5.0%以下(舗装設計施工指針(規制値)および舗装調査・試験法便覧A008(試験法))
ここでは細長、あるいは扁平な石片の含有量2.8%の砕石を使用した。ここでいう石片は、一般には長軸/短軸比が3以上のものを細長、あるいは扁平な石片として使用する。細長,あるいは扁平な石片が混入すると、舗装もしくは試験用の供試体が、ある方向からの荷重に対して、変形しやすくなる可能性がある。すなわち細長,あるいは扁平な石片が多く混入していると、それらが向きを揃えて配向し、その向きと平行な荷重に対しては、垂直な荷重に対するよりも変形しやすくなる。
従って、耐わだち掘れ性能(DS値)を測定する際には、細長あるいは扁平な石片の混入量を制限しないと、得られる値が大きく変動する事となる。
これらの性状を満足する砕石、および石粉を骨材として使用し、また表1に示す骨材配合を調整し、表2に示す条件で供試体を作製した。
実際に供試体の作製は、大きく分類してアスファルト組成物と骨材との混合、転圧の2段階からなる。混合に関しては、175℃に加熱されているアスファルト組成物を604g、185℃に加熱されてなるとともに上述した粒度に合成した(以下、その調整した粒度を合成粒度という。)骨材を10176g準備する。
まず骨材をミキサーに入れ、骨材のみを60秒間混合し、均一にした。混合を一時止め、604gのアスファルト組成物をミキサーに投入した後、これらアスファルト組成物と骨材とを120秒に亘って混合した。
混合を終了した、これらアスファルト組成物と骨材を、ホイールトラッキング試験用型枠(内寸 縦30.0cm,横30.0cm、深さ5.0cm)に入れ、転圧した。
転圧に関しては、下記表2の転圧温度の下で、半径460mmの円柱状ローラを転がすことにより、混合後のアスファルトに転圧を負荷する。この転圧に関しては、一次転圧、二次転圧の2段階に亘り行う。その後8時間に亘り乾燥させる。
この混合後の供試体の空隙率、締め固め度は下記の表2に示すとおりである。
Figure 0005571357
Figure 0005571357
なお、本発明アスファルト組成物は、道路舗装に適用される場合を前提としているが、これに限定されるものではなく、防水材、粘着剤等に適用することも可能であることは勿論である。
以下、本発明の実施例について詳細に説明をする。表3に示すように、ストレートアスファルト、プロパン脱れきアスファルト(PDA)、エキストラクトのうち何れか1種以上が含まれるアスファルトに対して、195℃程度の温度で維持した状態で、SBSを4.5重量%添加した。
SBSとしては、臭素価が220(g/100g:JIS K0070)、分子量が約150000、スチレン含有量が32質量%であり、エラストマー分子の両端部に存在するスチレンのブロック共重合体の量が16質量%であるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を使用した。
そして、これらに対して酸A(直鎖)を混合した比較例1〜6で示されるアスファルト組成物と、ロジンBを混合した実施例1〜5と、ロジンCを混合した実施例6と、アビエチン酸を混合した実施例7と、デヒドロアビエチン酸を混合した実施例8とからなる本発明アスファルト組成物を製造した。なお、これら実施例及び比較例の各アスファルト組成物においては、針入度が40〜50になるように、ストレートアスファルト、プロパン脱れきアスファルト(PDA)、エキストラクトの配合割合を調製している。
Figure 0005571357
ここでいう酸Aは、酸価190(mgKOH/g:JIS K0070)、ヨウ素価110(g/100g:JIS K0070)で、直鎖の炭素数18のモノマー酸7重量%、炭素数36のダイマー酸76重量%、炭素数54のトリマー酸7重量%よりなる混合物で、平均分子量は約590である。またロジンBは、酸価156(mgKOH/g:JIS K0070)、軟化点77.0℃(JIS K2207)の不均化ガムロジンである。またロジンCは、酸価170(mgKOH/g:JIS K0070)、ケン化価178(mgKOH/g:JIS K0070)で、軟化点77.0℃(JIS K2207)のトール油ロジンである。
この表3における成分の段において、表中の数値は何れも重量%を示す。
比較例1は、アスファルト中のエキストラクトを12重量%としたものであり、比較例2は、アスファルト中のエキストラクトを8重量%としたものであり、比較例3は、アスファルト中のエキストラクトを6重量%としたものであり、比較例4〜6は、アスファルト中のエキストラクトを4重量%としたものである。なお比較例1〜4は何れも酸A(直鎖)を0.3重量%とし、比較例5は、酸A(直鎖)を0重量%、比較例6は、酸A(直鎖)を0.5重量%混合させたものである。また、実施例1〜5は、比較例1〜6において混合すべき酸A(直鎖)の代わりに、ロジンBを添加したものである。この実施例1〜5においてロジンBの含有率は互いに異ならせている。実施例6は、ロジンCを0.75重量%、実施例7は、アビエチン酸を0.75重量%、実施例8は、デヒドロアビエチン酸を0.75重量%混合したものである。
製造条件として、何れの組成においても、混合温度は195℃とし、ホモミキサーにより回転数を3500回転/分として2時間程度、混合並びに攪拌した。また、製造量は何れも1.8kgとした。
また製造した各比較例並びに各実施例について、物性を測定した結果も表3に示す。この物性は、針入度(1/10mm)、軟化点(℃)、180℃における粘度(mPa.s)、貯蔵安定性、DS値について測定したものである。針入度については、JISK2207の下で測定した25℃のデータとしている。また、軟化点についても、JISK2207の条件の下で測定を行った。粘度はJPI−5S−54−99「アスファルト−回転粘度計による粘度試験方法」の条件の下、測定温度180℃、使用スピンドルSC4−21、スピンドル回転数20回転/分で測定を行った。
また貯蔵安定性は、内径が5.2cm、高さが13cmのアルミニウム製円筒缶に、深さ12cmの位置まで本発明アスファルト組成物(約250g)を注入して密封し、170℃で48時間加熱した。その後、アルミニウム製円筒缶に注入されているアスファルト組成物の上部4cm以内、下部4cm以内における軟化点をJISK2207に基づいて測定した。表3では、この上部の軟化点と、上部の軟化点と下部の軟化点との差分値の絶対値をとった、即ち軟化点の差分絶対値を示している。
DS値は、ホイールトラッキング試験に基づいて測定をした。このDS値は、各アスファルト組成物と密粒度アスファルト混合物(13)の配合となる骨材とを使用し、アスファルト組成物を5.6重量%として作製した縦30cm、横30cm、厚さ5cmのシート状の供試体を使用し、舗装評価・試験法便覧(社団法人 日本道路協会編)に定義されている方法に基づいて行った。日本の道路は、夏場には60℃程度の温度になることが実験的に確認されている。この状態で、その上を車が通過すると、流動変形して轍掘れ等が発生する。ホイールトラッキング試験は、この轍掘れの発生の程度を実験的に確認するために考案された試験であり、舗装材における耐流動性の指標である動的安定度を評価するために実施される試験である。具体的には、60℃に保持された恒温槽の中で、試験体(供試体)上に所定の荷重をかけたタイヤを1時間往復走行させ、その変形量を測定した。そして、上述した数式(2)に基づき、試験開始から45分の時点から60分の時点までの、15分間の変形量から、DS値を算出した。
上述した表3において、先ず比較例1〜4の傾向からは、エキストラクトを減らすにつれて、DS値が向上することが示されている。しかしながら、エキストラクトを減少させるにつれて、上部の軟化点と下部の軟化点との差分絶対値が大きくなる傾向が示されていた。特に比較例4では、エキストラクトを4重量%まで低減させているが、その結果、DS値を7875(回/mm)まで向上させることができる一方で、軟化点の差分絶対値が19.9℃まで悪化してしまうのが示されている。
また、比較例5、6に示すように、エキストラクトを4重量%まで低減させた場合には、酸A、即ちカルボン酸の含有率を増減させても、貯蔵安定性を向上させることができないことを意味している。
また、実施例1では、エキストラクトの含有率を4重量%とした上で、ロジンBを0.3重量%含有させているが、DS値を7000(回/mm)以上まで向上させることができるとともに、軟化点の差分絶対値を極力小さくすることができ、強度と貯蔵安定性の双方を向上させることができることが分かる。同様に、実施例2〜5においても、ロジンBをそれぞれ0.6重量%、0.75重量%、1重量%、1.5重量%とすることにより、DS値を7000(回/mm)以上に維持しつつ、軟化点の差分絶対値を1.3℃以下に抑えることが可能となり、強度と貯蔵安定性の双方を向上させることができることが分かる。但し、この貯蔵安定性については、ロジンBの添加量を増加させても、軟化点の差分絶対値についてあまり変化が出ないことが分かった。仮に、このロジンAを3重量%超に亘って添加した場合においても、この軟化点の差分絶対値は殆ど変化が無いものと考えられる。
また実施例6では、エキストラクトを4重量%まで低減させた上で、ロジンCを0.75重量%添加した例であるが、これについても同様にDS値並びに軟化点の差分絶対値がともに良好であった。また樹脂酸としてアビエチン酸を単独で添加した実施例7、並びに樹脂酸としてデヒドロアビエチン酸を単独で添加した実施例8についても同様にDS値並びに軟化点の差分絶対値がともに良好であった。この実施例6〜8の結果からは、樹脂酸の種類を変更した場合においても、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸単体の添加により、DS値を高い水準に確保しつつ、貯蔵安定性を向上させることが可能となる。
このように、表3の結果から、DS値並びに軟化点の差分絶対値の双方を共に向上させるためには、エキストラクトを5重量%以下にするとともに、樹脂酸を0.3〜3重量%の範囲で添加することにより、実現できることが示されている。
また表3の結果から、同じSBS配合量であれば、アスファルト組成物の調製終了後(製造後)の軟化点が低くなると、貯蔵安定性が高くなることが分かる。これは、同じ熱可塑性エラストマーを同量配合した系においては、アスファルト組成物の調製終了後の軟化点が低いほど、SBS中のブタジエンブロックを構成する二重結合にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペン(樹脂酸)が付加しており、安定性が向上していると考えられるためである。
また、表4は、SBSの代替として、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)について、本発明所期の作用効果を発揮するかについての検証実験結果を示している。この検証実験において、アスファルト組成物の製造条件は、上述した表3の例と同様である。また、SBS、SEBS、SISの添加量は何れも4.3重量%とし、針入度、軟化点、150℃または180℃における粘度(mPa.s)を測定した。
Figure 0005571357
この表4においてサンプルR1、R2は、何れもSBSを用いた例を示している。サンプルR1は、ガムロジンを添加しない場合であり、本発明とは構成が異なる比較例である。これに対して、サンプルR2は、ガムロジンを0.75重量%に亘り添加した例であり、本発明例に相当する。このサンプルR1、R2の物性を比較すると、サンプルR2における軟化点がサンプルR1よりも大きく低下しており、ガムロジン添加による安定性が向上することから、本発明の期待している効果を奏していることがわかる。
これに対して、サンプルS1、S2は何れもSBSの代替として、SEBSを適用した例である。
SEBSは、SBSのブタジエンブロックにある二重結合に水素を付加し、単結合にしたもので、臭素価が5(g/100g:JIS K0070)、分子量が約150000、スチレン含有量が30質量%であり、エラストマー分子の両端部に存在するスチレンのブロック共重合体の量が15質量%であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用した。
サンプルS1は、ガムロジンを添加しない場合であり、サンプルS2は、ガムロジンを1重量%に亘り添加した例である。このサンプルS1、S2の物性を比較すると、両者で軟化点が殆ど変化無く、ガムロジン添加による安定性向上の効果が発現していないことが示されている。
またサンプルP1〜P6は何れもSBSの代替として、SISを添加した例を示している。
SISとしては、臭素価が220(g/100g:JIS K0070)、分子量が約220000、スチレン含有量が15質量%であり、エラストマー分子の両端部に存在するスチレンのブロック共重合体の量が7.5質量%であるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)を使用した。
P1〜P3は何れもガムロジンを添加した例であるが、ガムロジンの添加量、添加の有無に関わらず、軟化点は殆ど変化しなかった。また、P4〜P6は何れもトールロジンを添加した例であるが、トールロジンの添加量、添加の有無に関わらず、軟化点は殆ど変化しなかった。従って、このSISでは、ロジン添加による安定性向上の効果が発現していないことが示されている。
即ち、本発明は、SBSを添加することにより安定性向上の効果が発揮されるものであり、SBSの代替としてSEBSやSISを適用しても、所期の効果を発揮させることができないことが分かる。スチレンブロックの間にブタジエンブロックが挟まれSBSのみは、このブタジエンブロックを構成する二重結合に樹脂酸を付加させることにより自身の安定性を向上させることが可能となるが、SEBSやSISは、樹脂酸を付加させることができず、その結果、安定性の向上を図ることができないためである。
1 アスファルトバインダー
2 円盤
5 供試体
11 車輪

Claims (4)

  1. スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)にカルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンを190〜210℃で混合し結合させ、残部がアスファルトからなり、
    前記アスファルトは原油の減圧蒸留残油を脱れきして得られた溶剤脱れき油を溶剤抽出して得られたエキストラクトを含み、
    貯蔵安定性試験後の上部軟化点と下部軟化点との差分絶対値が3℃以下であり、
    DS値が6300以上であること
    を特徴とするアスファルト組成物。
  2. 上記貯蔵安定性試験後の上部軟化点と下部軟化点との差分絶対値が2.5℃以下であること
    を特徴とする請求項1記載のアスファルト組成物。
  3. 上記DS値が7000以上であること
    を特徴とする請求項1又は2記載のアスファルト組成物。
  4. 上記アスファルトは、原油の減圧蒸留残油を脱れきして得られた溶剤脱れき油を溶剤抽出して得られたエキストラクトが当該アスファルト組成物全重量に対して5重量%以下含まれていること
    を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載のアスファルト組成物。
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