JP2015138651A - 非水電解質二次電池の制御方法及び非水電解質二次電池システム - Google Patents

非水電解質二次電池の制御方法及び非水電解質二次電池システム Download PDF

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Abstract

【課題】Liの析出(デンドライト)を抑制・防止できる非水電解質二次電池の制御方法及びそれを用いた非水電解質二次電池システムを提供すること。【解決手段】本発明は、LiFexM01−xPO4(M0:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≰1)と、LiNixMnyCozO2(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNixM1yO2(M1:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、非水電解質と、を有する非水電解質二次電池に対して、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池の制御方法、及びそれを用いた非水電解質二次電池システムに関する。
ノート型コンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ等電子機器の普及に伴い、これら電子機器を駆動するための二次電池の需要が拡大している。近年、これら電子機器においては、高機能化の進展に伴い消費電力が増大していることや、小型化が期待されていることから、二次電池の容量の増大が求められている。二次電池の中でも非水電解質二次電池(特に、リチウムイオン二次電池)が高容量化が可能であることから、種々の電子機器への利用が進められている。
非水電解質二次電池は、一般に、正極活物質を有する正極活物質層を正極集電体の表面に形成した正極と、負極活物質を有する負極活物質層を負極集電体の表面に形成した負極とが、非水電解質(非水電解液)を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
正極活物質としてLiFePOを、負極活物質として黒鉛を使用する二次電池を、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)の代表的な例としてあげることができる。この代表的な非水電解質二次電池では、黒鉛へのLiの挿入反応が遅いため、高レートの電流で急速充電させるようにした場合に、充電反応時の分極が増大して十分な充電容量が得られなくなる問題があった。さらには、負極活物質の黒鉛上にLiが析出して、サイクル特性が低下したりするという問題があった。
この問題に対して、特許文献1には、LiFePOにLiMnを加えた正極活物質とする二次電池が記載されている。
特開2009−93924号公報
特許文献1に記載の二次電池は、正極の充電反応が3.5V以上で進行するLiMnを混合することで、正極の電位を速やかに所定の電圧に到達させることができる。そして、早期に充電末期での充電電流を小さくする(絞る)ことで(すなわち、早期に定電圧充電に切り替えることによって)、Liのデンドライト発生の問題を解決する。
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池において、LiMnの充電反応が開始する3.5V付近では、LiFePOの充電末期であり、いずれも抵抗が高い状態となっている。
この状態では、正極電位が上昇せず、負極電位が低下するようになる。すなわち、LiMnを添加しても、その効果が低く、Li析出の抑制の効果が不十分となっていた。
本発明は上記実状を鑑みてなされたものであり、LiFePOを正極活物質として有する非水電解質二次電池において、Liの析出(デンドライト)を抑制・防止できる非水電解質二次電池の制御方法及びそれを用いた非水電解質二次電池システムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者等は、LiFePOの充電末期に正極活物質の抵抗値が上昇することがLiの析出(デンドライト)を生じさせることに着目し、LiFePOの充電末期における正極の抵抗の増加を抑えることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の非水電解質二次電池の制御方法は、LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)と、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、正極及び負極との間に介在する非水電解質と、を有する非水電解質二次電池の制御方法であって、非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電することを特徴とする。
本発明の制御方法で制御される非水電解質二次電池は、正極活物質として、LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)(以下、リン酸鉄リチウムと称する)に加えて、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)(以下、両者を総称してリチウム複合酸化物と称する)を有する。そして、リチウム複合酸化物の充電電位は、リン酸鉄リチウムのそれよりも高い。具体的には、リン酸鉄リチウムの充電末期(およそ3.5V)が、リチウム複合酸化物の充電初期と重なり合うようになっている。このため、本発明の制御方法で制御される非水電解質二次電池は、より高い電圧まで充電が可能となっている。
そして、リチウム複合酸化物は、充電初期における抵抗値の上昇が抑えられた化合物である。つまり、リン酸鉄リチウムとリチウム複合酸化物とを正極活物質として有することで、リン酸鉄リチウムの充電末期の電圧よりも高い電圧となるまで充電を行っても、リチウム複合酸化物の低抵抗により、正極の抵抗の上昇が抑えられる。
この結果、本発明の制御方法で制御される非水電解質二次電池がより高い電圧まで充電可能となり、本発明の制御方法は、このより高い電圧である3.5〜3.9Vを充電停止電圧として充電する。
すなわち、本発明の制御方法は、Liの析出(デンドライト)を抑制・防止できる非水電解質二次電池の充電を行うことができる。
また、本発明の非水電解質二次電池システムは、LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)と、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、正極及び負極との間に介在する非水電解質と、を有する非水電解質二次電池と、非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する充電制御装置と、を有することを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池システムは、上記の制御方法で制御される非水電解質二次電池と、上記の制御方法で制御(充電)する充電制御装置と、を有する。つまり、本発明の非水電解質二次電池システムは、上記の制御方法で得られる効果を発揮する。
実施例の非水電解質二次電池の充電時における正極及び負極の電位変化を示した概略図である。 比較例の非水電解質二次電池の充電時における正極及び負極の電位変化を示した概略図である。
[制御方法]
本発明の非水電解質二次電池の制御方法は、LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)と、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、正極及び負極との間に介在する非水電解質と、を有する非水電解質二次電池の制御方法である。以下、本発明の制御方法で制御される非水電解質二次電池を、本発明の非水電解質二次電池とも称する。
そして、本発明の制御方法では、非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する。
(非水電解質二次電池)
本発明の非水電解質二次電池は、正極,負極及び非水電解質を有する。
(正極)
正極は、正極活物質として、リン酸鉄リチウムと、リチウム複合酸化物と、を有する。
リン酸鉄リチウムは、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)の正極活物質として従来知られた物質である。このリン酸鉄リチウムの最大充電電圧は、およそ3.6Vであることが知られている。
リチウム複合酸化物も、それぞれ非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)の正極活物質として機能する。このリチウム複合酸化物は、作動電圧がリン酸鉄リチウムのそれよりも高電圧であり、その充電初期の電圧がリン酸鉄リチウムの充電末期の電圧と重なり合う。
そして、リチウム複合酸化物は、充電初期の電気抵抗が低い化合物である。本発明の非水電解質二次電池では、充電時に、まず、リン酸鉄リチウムでの充電反応が進行し、リン酸鉄リチウムへの充電末期に、リチウム複合酸化物の充電が開始する。リチウム複合酸化物は、充電初期の電気抵抗が低い化合物であるため、二つの複合酸化物の充電反応が重なり合う電圧域において、リチウム複合酸化物に起因する抵抗の大きな増加が生じない。
そうすると、正極電位の上昇が阻害されなくなり、負極電位の低下が抑えられる。すなわち、本発明の非水電解質二次電池は、上記のように、正極活物質としてリン酸鉄リチウムとリチウム複合酸化物の二つの複合酸化物を有することで、負極の電位の低下が抑えられた状態(負極の電位が0以上に保たれた状態)で、充電を行うことができる。
その結果、本発明の非水電解質二次電池は、負極において、導電種(リチウムイオン二次電池の場合はLi)の析出(デンドライト)を抑制できる。
本発明の非水電解質二次電池の正極において、リン酸鉄リチウムとリチウム複合酸化物の二つの複合酸化物の配合割合については限定されるものではなく、複合酸化物の材質により適宜に決定できる。好ましくは、二つの複合酸化物の合計を100mass%としたときに、リチウム複合酸化物が30mass%以下で含まれる態様である。
更に好ましくは、リン酸鉄リチウムがLiFePOであって、リチウム複合酸化物がLiNi1/3Mn1/3Co1/3の場合にはリチウム複合酸化物が10〜20mass%で含まれることが好ましく、リチウム複合酸化物がLiNiOの場合にはリチウム複合酸化物が10〜20mass%で含まれることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池の正極において、リン酸鉄リチウムとリチウム複合酸化物は、均一に混合して配されていることが好ましい。これにより、電極反応の部分的なムラの発生が抑えられる。
二つの複合酸化物を均一に混合する方法としては、それぞれの複合酸化物の粉末を均一に混合する態様であることが好ましい。この場合、それぞれの複合酸化物の平均粒径等の粉末特性は限定されるものではなく、同じ平均粒径の粉末を混合しても、一方の粉末の平均粒子径が他方よりも大きな状態で混合しても、いずれでもよい。
本発明の非水電解質二次電池の正極において、リン酸鉄リチウムは、LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)で表される化合物である。この化合物は、非水電解質二次電池の正極において、正極活物質として機能する。リン酸鉄リチウムは、化学式で示される化合物であれば具体的な化合物が限定されるものではない。好ましいリン酸鉄リチウムとしては、化学式中のxが1に相当するLiFePOをあげることができる。
本発明の非水電解質二次電池の正極において、リチウム複合酸化物のLiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)も、非水電解質二次電池の正極において、Ni,Mn,Coを含有する三元系として知られた正極活物質であり、正極活物質として機能する。この化合物も表記の化学式で示される化合物であれば、具体的な化合物が限定されるものではない。
リチウム複合酸化物は、LiNiMnCo(0.2≦x<0.8,0.05<y≦0.5,0.05<z≦0.5,x+y+z=1)であることが好ましい。より好ましくは、LiNi0.8Mn0.1Co0.1(x=0.33,y=0.33,z=0.33に相当)である。
本発明の非水電解質二次電池の正極において、リチウム複合酸化物のLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、表記の化学式で示される化合物であれば、具体的な化合物が限定されるものではない。
リチウム複合酸化物のLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、LiNiOであることが好ましい。
リチウム複合酸化物のLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、LiNiCoAl(0<x≦0.9,0<v≦0.3,0<w≦0.2)であることが好ましい。より好ましくは、LiNi0.85Co0.10Al0.05(M:CoおよびAl,x=0.85,v=0.10,w=0.05に相当)である。
本発明の非水電解質二次電池の正極は、二種類の複合酸化物を正極活物質として有すること以外は、従来の非水電解質二次電池の正極と同様の構成とすることができる。すなわち、本発明の非水電解質二次電池の正極は、従来の非水電解質二次電池用正極と同様の構成とすることができる。
本発明の非水電解質二次電池の正極は、従来公知の正極と同様に、正極活物質、導電材及び結着材を混合して得られた合材を集電体に塗布して活物質層を形成したものであることが好ましい。
導電材は、正極の電気伝導性を確保することができる材質よりなるものであれば、それ以外の構成が限定されるものではない。導電材としては、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素よりなる粒子(微粒子)をあげることができる。
結着剤は、Li含有酸化物、正極活物質や導電材を結着する。結着剤としては、たとえば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどをあげることができる。
正極合材は、Li含有酸化物、正極活物質、導電材及び結着材を混合して得られたものとすることができ、Li含有酸化物及び正極活物質等を溶媒に分散させて調製される。
溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶媒を使用できる。たとえば、NMP,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,酢酸メチル,アクリル酸メチル,ジエチルトリアミン,N−N−ジメチルアミノプロピルアミン,エチレンオキシド,テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどでLi含有酸化物(及び正極活物質)をスラリー化してもよい。
正極集電体は、たとえば、アルミニウム,ステンレスなどの金属を加工したもの、たとえば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
(負極)
本発明の非水電解質二次電池の負極は、負極活物質として炭素質材料を有する。炭素質材料とは、不可避不純物を除く主要成分が炭素(C)よりなる物質を示し、アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンブラック,黒鉛(グラファイト),アモルファスコート黒鉛などの物質をあげることができる。これらの物質のうち、黒鉛(グラファイト)を負極活物質とすることが最も好ましい。
負極は、上記の負極活物質を有していれば、それ以外の構成が限定されるものではなく、従来の非水電解質二次電池に用いられる負極と同様の構成とすることができる。
すなわち、負極は、従来の非水電解質二次電池の負極と同様に、負極活物質と結着剤とを混合して得られた合材を集電体の表面に塗布して活物質層を形成したものであることが好ましい。
負極合材は、負極活物質を結着剤溶液に分散させて、あるいは更に溶媒を加えて調整される。溶媒としては、溶液状の結着剤に用いられている有機溶媒や、結着剤を溶解可能な有機溶媒を使用できる。たとえば、NMP,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,酢酸メチル,アクリル酸メチル,ジエチルトリアミン,N−N−ジメチルアミノプロピルアミン,エチレンオキシド,テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
負極合材は、ポリアクリル酸系化合物よりなる結着剤に、更に別の結着剤を混合してもよい。別の結着剤としては、リチウムイオン二次電池の負極に使用されている従来公知の結着剤である。たとえば、PTFE,PVDF,フッ素樹脂共重合体(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体),SBR,アクリル系ゴム,フッ素系ゴム,ポリビニルアルコール(PVA),スチレン・マレイン酸樹脂,ポリアクリル酸塩,CMCなどを挙げることができる。
負極集電体は、従来公知の集電体を用いることができ、銅,ステンレス,チタンあるいはニッケルからなる箔,メッシュなどを用いることができる。
(非水電解質)
非水電解質は、正極と負極の間に介在する。非水電解質は、電気伝導を担う物質(リチウムイオン)を伝達する。特に、正極に含まれるLi含有酸化物から脱離したLi(リチウムイオン)を負極に伝導することが好ましい。
非水電解質は、その材料構成で特に限定されるものではなく、従来の非水電解質を用いることができる。非水電解質(一般的には、非水電解液とも称される)は、従来の非水電解質と同様に、支持塩が有機溶媒に溶解してなるものであることが好ましい。
非水電解質の支持塩は、その種類が特に限定されるものではなく、たとえば、LiPF,LiBF,LiClO及びLiAsFから選ばれる無機塩,これらの無機塩の誘導体,LiSOCF,LiC(SOCF及びLiN(SOCF,LiN(SO,LiN(SOCF)(SO),から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。これらの支持塩は、電池性能を更に優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においても更に高く維持することができる。支持塩の濃度についても特に限定されるものではなく、支持塩及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
支持塩が溶解する有機溶媒(非水溶媒)は、従来の非水電解質に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、たとえば、カーボネート類,ハロゲン化炭化水素,エーテル類,ケトン類,ニトリル類,ラクトン類,オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,1,2−ジメトキシエタン,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ビニレンカーボネート等及びそれらの混合溶媒が好ましい。これらの有機溶媒のうち、特にカーボネート類,エーテル類からなる群より選ばれた1種以上の非水溶媒を用いることが、支持塩の溶解性、誘電率及び粘度において優れ、リチウムイオン二次電池の充放電効率が高くなるため好ましい。
最も好ましい非水電解質は、支持塩(LiPF)が有機溶媒(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒)に溶解したものである。
(非水電解質二次電池の態様)
本発明の非水電解質二次電池は、上記の正極,負極,セパレータ及び非水電解質を有すること以外の構成が限定されるものではなく、従来の構成のものを用いることができる。
たとえば、非水電解質二次電池は、正極及び負極がセパレータを介した状態で、非水電解質とともにケースに封入されて形成されることが好ましい。これらの要素以外に、その他必要に応じた要素を有することができる。
非水電解質二次電池は、上記の要素以外に、その他必要に応じた要素を有することが好ましい。非水電解質二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状の電池や、ラミネート外装体に封入した不定形状の電池とすることができる。
本発明の非水電解質二次電池は、種々の二次電池とすることができるが、リチウムイオン二次電池であることが最も好ましい。
本発明の非水電解質二次電池は、その開放電圧が3.7Vのときの抵抗値が、開放電圧が3.3Vの時の抵抗値の3倍以下であることが好ましい。本発明の非水電解質二次電池は、開放電圧が高くなったときの抵抗値のそれぞれが3倍以下に抑えられている。これにより、上記の効果を発揮できる。
具体的には、本発明の非水電解質二次電池は、リン酸鉄リチウムを正極活物質として有している。リン酸鉄リチウムは、充電末期になると電位が上昇する。そして、この電位の上昇に伴って、抵抗値も上昇する。非水電解質二次電池の開放電圧が3.7Vの状態は、リン酸鉄リチウムの充電末期の状態を過ぎてリチウム複合酸化物の充電が行われている状態(電圧域)に当たる。つまり、正極活物質のリン酸鉄リチウムの充電末期の前後(充電中,充電後)の抵抗値が3倍以下になることは、リン酸鉄リチウムの充電後の電位での抵抗値の増加量が過剰に大きくなることが抑えられていることを示す。この結果、上記の効果をより確実に発揮できる。
(制御方法)
本発明の制御方法は、上記した非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する。
上記した非水電解質二次電池は、リン酸鉄リチウムでの充電末期が、リチウム複合酸化物の充電初期に重なっており、リン酸鉄リチウムでの充電電位よりも大きな電圧での充電が可能になる。
その上で、本発明の制御方法では、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する。つまり、通常のリン酸鉄リチウムのみの二次電池よりも高電圧となるまで充電を行う。これにより、本発明の制御方法で充電の制御が行われた非水電解質二次電池は、より高い電圧の二次電池となる効果を発揮する。
本発明の制御方法では、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電することができる充電方法であれば特に限定されるものではなく、定電圧充電,定電流充電,定電流定電圧充電(CC−CV),定電力充電,定電力定電圧充電(CP−CV),パルス充電等の充電方法を用いることができる。これらのうち、リン酸鉄リチウムでの充電末期での充電が、定電圧充電となる充電態様であることが好ましい。
定電圧充電での充電が行われることが好ましい。定電圧充電で充電されることで、リン酸鉄リチウムでの充電末期において、負極側に本発明の非水電解質二次電池が3.5〜3.9Vの充電停止電圧まで充電することができる。また、リン酸鉄リチウムでの充電末期において、負極において、導電種(リチウムイオン二次電池の場合はLi)の析出(デンドライト)を抑制できる。
本発明の制御方法では、定電圧充電での充電が行われることが好ましいが、この定電圧充電は非水電解質二次電池の充電域の全てであっても、充電域の一部であってもいずれでもよい。好ましくは、リン酸鉄リチウムでの充電末期での充電が定電圧充電である。すなわち、本発明の制御方法は、いわゆる定電圧充電(CV充電)や、定電流定電圧充電(CC−CV充電),定電力定電圧充電(CP−CV)で非水電解質二次電池の充電を行うことがより好ましい。
本発明の制御方法で定電圧充電での充電が行われるときの電圧値は限定されるものではないが、3.6〜3.8Vの定電圧で充電されることが好ましい。充電がこれらの定電圧充電で行われることで、負極において、導電種(リチウムイオン二次電池の場合はLi)の析出(デンドライト)を抑制できる。
また、本発明の制御方法で定電圧充電での充電が行われるときの電流値についても限定されるものではないが、1C以上の定電流で充電されることが好ましい。充電がこれらの定電圧・定電流で行われることで、負極において、導電種(リチウムイオン二次電池の場合はLi)の析出(デンドライト)を抑制しつつ、充電時間を短縮することができる。
[非水電解質二次電池システム]
本発明の非水電解質二次電池システムは、LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)と、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、正極及び負極との間に介在する非水電解質と、を有する非水電解質二次電池と、非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する充電制御装置と、を有する。
本発明の非水電解質二次電池システムの非水電解質二次電池は、上記した本発明の非水電解質二次電池である。
本発明の非水電解質二次電池システムは、更に、非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する充電制御装置を有する。すなわち、上記の本発明の制御方法での制御(充電)を行う。すなわち、上記の効果を発揮する。
充電制御装置は、非水電解質二次電池に対して本発明の制御方法での制御(充電)を行うことができる装置であれば、その構成が限定されるものではない。つまり、充電のみを制御する制御装置だけではなく、従来の充放電を制御する制御装置を用いることができる。
本発明の非水電解質二次電池システムは、上記した本発明の制御方法により非水電解質二次電池の制御を行うものであり、本発明の制御方法の好ましい態様を適用できる。
非水電解質二次電池の開放電圧が3.7Vのときの抵抗値が、開放電圧が3.3Vの時の抵抗値の3倍以下であることが好ましい。
定電圧充電での充電が行われることが好ましい。
3.6〜3.8Vの定電圧で充電されることが好ましい。
1C以上の定電流で充電されることが好ましい。
正極活物質は、正極活物質全体を100mass%としたときに、リチウム複合酸化物を、20mass%以下で含有することが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明の実施例として、リチウムイオン二次電池を作成した。
[実施例]
(正極の製造)
まず、正極活物質として、表1に示したように、LiFePO(上記のリン酸鉄リチウムに相当),LiNi1/3Mn1/3Co1/3,及びLiNi0.85Co0.15Al0.05(上記のリチウム複合酸化物に相当)を準備した。なお、これらは、従来公知の製造方法で製造された。
そして、LiFePO粉末と、LiNi1/3Mn1/3Co1/3粉末又はLiNi0.85Co0.15Al0.05粉末を、表1に記載の割合(mass%)となるように秤量し、均一に混合した。
その後、混合粉末(正極活物質粉末)と、導電材であるアセチレンブラックと、バインダであるPVDFとを、85:5:10の質量比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、正極活物質ペーストを調製した。リン酸鉄リチウムとリチウム複合酸化物は、正極活物質全体を100mass%としたときの質量比が表1に示した割合で含まれる。
調製された正極活物質ペーストを集電体であるアルミ箔(15mm角、厚さ;5μm)よりなる集電体1aに塗布し、真空乾燥後、0.18mg/mm,2.0g/cmの正極活物質層を表面に有する実施例の正極を作製した。
Figure 2015138651
(リチウムイオン二次電池の製造)
次に、負極活物質として、黒鉛(和光純薬工業株式会社製,商品名:グラファイト、粉末)を準備した。
そして、負極活物質と、SBRよりなるバインダと、CMCよりなるバインダと、を、98:1:1の質量比となるように秤量し、水に分散させて負極活物質ペーストを調製した。
調整された負極活物質ペーストを、銅箔よりなる集電体に塗布し、真空乾燥後、8.9mg/cm,1.4g/cmの負極活物質層を表面に有する負極を作製した。
非水電解質は、エチレンカーボネート(EC)30体積%とジメチルカーボネート(DMC)30体積%とエチルメチルカーボネート(EMC)40体積%との混合溶媒に、LiPFを1モル/リットルとなるように溶解させて調製された非水電解液を用いた。
上記の正極及び負極を、セパレータを介した状態で非水電解質とともに電池ケースに封入して実施例(試料1〜4)のリチウムイオン二次電池を製造した。
[比較例]
正極活物質がLiFePOのみからなること以外は、実施例の試料1〜4のリチウムイオン二次電池と同様にして、比較例(試料11)のリチウムイオン二次電池が製造された。
[評価]
(負極最低電位)
実施例及び比較例の評価として、リチウムイオン二次電池を充放電制御装置に接続してリチウムイオン二次電池システムを組み立て、二次電池システムの充電を行った。充電時の負極の電位を測定し、負極最低電位として表1に合わせて示した。
具体的には、まず、実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池の内部に、リチウムよりなる参照電極を挿入し、このリチウムイオン二次電池を充放電制御装置に接続した。充放電制御装置は、リチウムイオン二次電池に対して、予め設定した充電条件で充電を行う従来の装置である。
そして、充放電制御装置を用いてリチウムイオン二次電池の充電率(SOC)を0%になるまで放電する。その後、3Cの電流値で3.9Vを充電停止電位に設定してCC−CV充電を行った。この充電時の負極の電位を測定し、最低値を負極最低電位とする。また、実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池の正極及び負極の充電時の電位変化を図1〜図2に模式的に示した。図1は、実施例(試料1)のリチウムイオン二次電池の電位変化を示した図である。図2は、比較例(試料11)のリチウムイオン二次電池の電位変化を示した図である。
表1及び図1に示したように、実施例(試料1〜4)のリチウムイオン二次電池システムの負極最低電位はいずれも0.1Vであった。具体的には、図1に示したように、充電が進行して充電末期に至るまでは、正極の電位は徐々に上昇する。そして、充電末期になると正極の電位が急に高くなる。そして、負極の電位は、充電が進行しても、負極最低電位の正の値(0.1V)を下回ることがなく、電位の急激な変化がないことがわかる。なお、図1では、正極及び負極の電位を模式的に示しているが、実際の負極の電位は、負極最低電位まで徐々に低下している。しかし、図2で示したマイナスの電位になるまでの急激な電位の変化と比較してその変化がごく僅かであり、Liの析出(デンドライトの析出)を生じさせる、あるいはリチウムイオン二次電池の充電電圧に大きな影響を及ぼすものではないため、このような僅かな電位の変化は省略している。
対して、比較例(試料11)のリチウムイオン二次電池システムの負極最低電位は−0.2Vであった。具体的には、具体的には、図2に示したように、充電が進行して充電末期に、正極の電位がほぼ一定になっている。このとき、負極の電位が、急激に低下し、マイナスの電位(−0.2V)になっていることが確認できる。リチウムイオン二次電池の電圧は正極と負極の電位の差であることが知られている。つまり、比較例のリチウムイオン二次電池では、負極の電位が低下することで、電池の電圧が確保される。しかし、図2に示したように、実際には負極の電位が低下しており、電極反応とは異なる反応が進行していることが分かる。つまり、Liの析出(デンドライトの析出)が生じるおそれとなっている。なお、図2も図1と同様に、正極及び負極の電位を模式的に示しており、僅かな電位の変化は省略している。
以上から、正極活物質にLiFePO粉末だけでなく、LiNi1/3Mn1/3Co1/3粉末又はLiNi0.85Co0.15Al0.05粉末を含有させることで、充電時に負極の電位の低下が抑えられることが確認できる。
その結果、実施例の二次電池システムは、デンドライトの発生が抑えられたものとなっている。
(正極の抵抗の測定)
次に、リチウムイオン二次電池システムで充電を行い、リチウムイオン二次電池の開放電圧が3.3V及び3.7Vのときの正極の抵抗値を測定した。3.3Vのときの抵抗値を、3.3Vのときの抵抗値で除した値を抵抗値比として求めた。得られた抵抗値比を表1に合わせて示した。
表1に示したように、実施例(試料1〜4)のリチウムイオン二次電池システムの抵抗値比はいずれも3以下であった。対して、比較例(試料11)のリチウムイオン二次電池システムの抵抗値比は10と、3よりも大きな値となっていた。
このことから、つまり、正極活物質にLiFePO粉末だけでなく、LiNi1/3Mn1/3Co1/3粉末又はLiNi0.85Co0.15Al0.05粉末を含有させることで、正極の電位が3.5V以上の高電位となっても、正極の抵抗値が過剰に高くならない(導電性の低下が抑えられた)ことが確認できる。
このことからも、実施例では負極の電位の低下が抑えられ、その結果として、デンドライトの発生が抑えられたものとなることがわかる。

Claims (18)

  1. LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)と、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、
    炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、
    該正極及び該負極との間に介在する非水電解質と、
    を有する非水電解質二次電池の制御方法であって、
    該非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電することを特徴とする非水電解質二次電池の制御方法。
  2. 前記非水電解質二次電池の開放電圧が3.7Vのときの抵抗値が、該開放電圧が3.3Vの時の抵抗値の3倍以下である請求項1記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  3. 定電圧充電での充電が行われる請求項1〜2のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  4. 3.6〜3.8Vの定電圧で充電される請求項3記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  5. 1C以上の定電流で充電される請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  6. 前記正極活物質は、該正極活物質全体を100mass%としたときに、前記LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)を、30mass%以下で含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  7. 前記LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)は、LiNiMnCo(0.2≦x<0.8,0.05<y≦0.5,0.05<z≦0.5,x+y+z=1)である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  8. 前記LiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、LiNiOである請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  9. 前記LiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、LiNiCoAl(0<x≦0.9,0<v≦0.3,0<w≦0.2)である請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の制御方法。
  10. LiFe 1−xPO(M:Mn,Co,Niより選ばれる少なくとも一種,0<x≦1)と、LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)と、を有する正極活物質を備えた正極と、
    炭素質材料よりなる負極活物質を備えた負極と、
    該正極及び該負極との間に介在する非水電解質と、
    を有する非水電解質二次電池と、
    該非水電解質二次電池を、3.5〜3.9Vの充電停止電圧で充電する充電制御装置と、
    を有することを特徴とする非水電解質二次電池システム。
  11. 前記非水電解質二次電池の開放電圧が3.7Vのときの抵抗値が、該開放電圧が3.3Vの時の抵抗値の3倍以下である請求項10記載の非水電解質二次電池システム。
  12. 定電圧充電での充電が行われる請求項10〜11のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
  13. 3.6〜3.8Vの定電圧で充電される請求項12記載の非水電解質二次電池システム。
  14. 1C以上の定電流で充電される請求項10〜13のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
  15. 前記正極活物質は、該正極活物質全体を100mass%としたときに、前記LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)又はLiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)を、20mass%以下で含有する請求項10〜14のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
  16. 前記LiNiMnCo(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)は、LiNiMnCo(0.2≦x<0.8,0.05<y≦0.5,0.05<z≦0.5,x+y+z=1)である請求項10〜15のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
  17. 前記LiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、LiNiOである請求項10〜16のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
  18. 前記LiNi (M:Co,Alより選ばれる少なくとも一種,0<x<1,0<y<1,x+y=1)は、LiNiCoAl(0<x≦0.9,0<v≦0.3,0<w≦0.2)である請求項10〜16のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
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