JP2015137814A - 匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法 - Google Patents
匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2015137814A JP2015137814A JP2014010251A JP2014010251A JP2015137814A JP 2015137814 A JP2015137814 A JP 2015137814A JP 2014010251 A JP2014010251 A JP 2014010251A JP 2014010251 A JP2014010251 A JP 2014010251A JP 2015137814 A JP2015137814 A JP 2015137814A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- powder
- mortar
- side wall
- metal
- nickel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
- Furnace Charging Or Discharging (AREA)
Abstract
【課題】電子工業製品の原料となる金属やセラミックス等の粉末製造用の金属製の匣鉢と、それを用いることで、積層セラミックスコンデンサ(以後、MLCCという)や電磁波シールド、二次電池、燃料電池等の原料粉末を高品質かつ効率よく大量生産できる粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】金属粉末または金属化合物粉末の前駆体を加熱しながら酸化および/または還元反応させるのに用いる匣鉢であって、底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部が解放され、該側壁の上部には少なくとも2ヵ所以上の切欠きを有した箱状本体と、該箱状本体の側壁上端より内側の3ヵ所以上に起立した台座と、該台座が起立した側壁外側3ヵ所以上に、該台座より上方に先端が突出したストッパーとを付設してなり、前記箱状本体が、融点700℃以上、かつ最高加熱温度より150℃以上高い金属材料で構成され、しかも切欠き高さと側壁高さの比が、2.5:97.5〜45:55であることを特徴とする匣鉢などにより提供する。
【選択図】図1
【解決手段】金属粉末または金属化合物粉末の前駆体を加熱しながら酸化および/または還元反応させるのに用いる匣鉢であって、底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部が解放され、該側壁の上部には少なくとも2ヵ所以上の切欠きを有した箱状本体と、該箱状本体の側壁上端より内側の3ヵ所以上に起立した台座と、該台座が起立した側壁外側3ヵ所以上に、該台座より上方に先端が突出したストッパーとを付設してなり、前記箱状本体が、融点700℃以上、かつ最高加熱温度より150℃以上高い金属材料で構成され、しかも切欠き高さと側壁高さの比が、2.5:97.5〜45:55であることを特徴とする匣鉢などにより提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は、匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法に関し、より詳しくは、電子工業製品の原料となる金属やセラミックス等の粉末製造用の金属製の匣鉢と、それを用いることで、積層セラミックスコンデンサ(以後、MLCCという)や電磁波シールド、二次電池、燃料電池等の原料粉末を高品質かつ効率よく大量生産できる粉末の製造方法に関する。
従来、電子工業製品の原料となる金属や金属化合物の粉末を作製する場合には、匣鉢と呼ばれる窯道具の内部に前駆体粉末を収納して所定の雰囲気下で加熱しながら酸化および/または還元反応で処理するのが一般的である。工業的には所定の雰囲気下で所定の熱処理温度カーブが形成された連続炉の一端から筐体を順次炉内に入れ、炉内を移動させつつ熱処理を行い、他端から取り出す連続熱処理が実施されている。例えば、ニッケル粉の製造方法では、水酸化ニッケル粉を焙焼して、酸化ニッケル粉とし、得られた酸化ニッケル粉(被還元物)を特定の厚みに保持しながら、還元温度まで加熱し、水素含有ガスを特定の流速で供給して、酸化ニッケル粉を還元している(特許文献5を参照)。
これらの粉末からは、加熱処理温度に達する前の昇温域において多様なガスが発生する。例えば、MLCC用の粉末からはH2Oが発生し、リチウムイオン電池用からは、アルカリ性ガスや金属リチウムの蒸発ガスなどが発生する。そのため、このような粉末の熱処理方法においては、粉末の温度分布の均一化を図ることや、前記の発生ガスを速やかに排気することと、外部から供給される反応用の供給ガスを粉末と均一に接触させることが重要となる。
しかし、通常、前駆体粉末は匣鉢の内部に収納されているだけであるから、匣鉢の表面に近い部分は加熱されやすいが中心部は加熱されにくく、温度分布の不均一が発生し易い。また、雰囲気は粉末表面と接しているため、粉末の中央部では発生ガスの廃棄や雰囲気と粉末との接触が緩やかに進行し、熱処理の長時間化や焼成特性の劣化に繋がっていた。
これらの問題に対し、昇温域の炉内に炉内雰囲気ガスの吸引筒を一定間隔で吊り下げ、発生ガスを速やかに吸引するとともに、炉床部から炉内雰囲気ガスの排気を行なう技術(特許文献1)や、匣鉢を複数の粒度分布からなるセラミック粒子により構成された多孔質のものとし、粉末から発生する発生ガスの拡散が容易に行なわれるようにする技術(特許文献2)が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、粉末内部の発生ガスは排気が滞留し易いので吸引では不十分である。また、匣鉢に載せる量を減らせばより排気し易くなるが生産性が減少し工業的に利用することが困難となる。
また、特許文献2ではセラミックスを原料とした匣鉢ゆえに熱処理し作製した粉末中に匣鉢原料由来の不純物の混入が予想され、還元雰囲気で熱処理した場合、長期的に匣鉢の劣化が懸念される。
また、特許文献2ではセラミックスを原料とした匣鉢ゆえに熱処理し作製した粉末中に匣鉢原料由来の不純物の混入が予想され、還元雰囲気で熱処理した場合、長期的に匣鉢の劣化が懸念される。
粉末内部の温度分布を均一とし発生ガスを排気し易くするために特許文献3では匣鉢内に収容された前駆体に凹部を設けている。
しかしながら、上からの加圧により凹部を形成する場合、一番の凹部は圧力が高いため雰囲気ガスが内部へ侵入し難く、発生ガスが外部に排気され難いことが推測される。
一方、品質を安定化させつつ生産性向上として特許文献4では底部に貫通孔を有し内部に筒体を具備している。
多連することで生産性の向上が為されるが、重ねた際や加熱処理中に転倒することが予測される。
しかしながら、上からの加圧により凹部を形成する場合、一番の凹部は圧力が高いため雰囲気ガスが内部へ侵入し難く、発生ガスが外部に排気され難いことが推測される。
一方、品質を安定化させつつ生産性向上として特許文献4では底部に貫通孔を有し内部に筒体を具備している。
多連することで生産性の向上が為されるが、重ねた際や加熱処理中に転倒することが予測される。
こうした状況の下、品質が均一化され生産性が良く、作製された粉末中に匣鉢由来の不純物が少ない粉末が切望されていた。
本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、金属や金属化合物の粉末を加熱しながら酸化および/または還元反応による得る製造方法であって、匣鉢を重ねた際に安定性が良い上に生産性が高く、品質が均一化され前駆体起因や匣鉢起因の不純物が少ない粉末を実現できるような匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属粉末または金属化合物粉末を加熱することで製造するのに用いられる匣鉢において、特定の切欠きと台座とストッパーを有し、材質を最高加熱温度より150℃以上高い融点を持つ金属で構成することで、生産性が高く品質も良好な粉末が得られることを見出した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、金属粉末または金属化合物粉末の前駆体を加熱しながら酸化および/または還元反応させるのに用いる匣鉢であって、
底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部が解放され、該側壁の上部には少なくとも2ヵ所以上の切欠きを有した箱状本体と、該箱状本体の側壁上端より内側の3ヵ所以上に起立した台座と、該台座が起立した側壁外側3ヵ所以上に、該台座より上方に先端が突出したストッパーとを付設してなり、
前記箱状本体が、融点700℃以上、かつ最高加熱温度より150℃以上高い金属材料で構成され、しかも切欠き高さと側壁高さの比が、2.5:97.5〜45:55であることを特徴とする匣鉢が提供される。
底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部が解放され、該側壁の上部には少なくとも2ヵ所以上の切欠きを有した箱状本体と、該箱状本体の側壁上端より内側の3ヵ所以上に起立した台座と、該台座が起立した側壁外側3ヵ所以上に、該台座より上方に先端が突出したストッパーとを付設してなり、
前記箱状本体が、融点700℃以上、かつ最高加熱温度より150℃以上高い金属材料で構成され、しかも切欠き高さと側壁高さの比が、2.5:97.5〜45:55であることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記箱状本体が、ニッケル基合金、コバルト基合金、またはタングステンから選ばれる少なくとも1種の金属材料で構成されていることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記金属材料が、ニッケル基合金であることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3の発明において、前記ストッパーの高さが、前記側壁高さよりも低いことを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4の発明において、前記切欠きの面積と側壁の面積の比が、2:98〜40:60であることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の発明において、前記箱状本体が、上部が解放された直方体状で、その4角に台座が配置されていることを特徴とする匣鉢が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6の発明において、前記箱状本体の底部および側壁の厚さは、0.5〜5.0mmであることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記金属材料が、ニッケル基合金であることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3の発明において、前記ストッパーの高さが、前記側壁高さよりも低いことを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4の発明において、前記切欠きの面積と側壁の面積の比が、2:98〜40:60であることを特徴とする匣鉢が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の発明において、前記箱状本体が、上部が解放された直方体状で、その4角に台座が配置されていることを特徴とする匣鉢が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6の発明において、前記箱状本体の底部および側壁の厚さは、0.5〜5.0mmであることを特徴とする匣鉢が提供される。
一方、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、匣鉢に、金属粉末または金属化合物粉末の前駆体を充填し、炉内で300℃以上に加熱しながら酸化および/または還元反応を生起させ金属粉末または金属化合物粉末を得ることを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、酸化および/または還元反応を行う際に、酸素、窒素、水素から選ばれる少なくとも1種以上を含むガスまたは大気を供給した酸化および/または還元ガス雰囲気下とすることを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、酸化および/または還元反応により生成したガス成分を、前記供給ガスとともに炉外に排気することを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第9の発明において、得られる粉末中に含まれる不純物のうち、前記匣鉢起因のものが250質量ppm以下であることを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第9の発明において、金属粉末または金属化合物粉末の前駆体として、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)粉末を充填した後、非還元性雰囲気下で300〜700℃に加熱しながら酸化反応させ、得られた酸化ニッケル(NiO)粉末を水素を含むガス雰囲気下で350〜500℃に加熱しながら還元反応させてニッケル粉末を得ることを特徴とする請求項9に記載の粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、酸化反応の際に、炉内で生じた酸素含有ガスを循環し、還元反応の際に、炉内で生じた水素含有ガスを循環することを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、酸化および/または還元反応により生成したガス成分を、前記供給ガスとともに炉外に排気することを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第9の発明において、得られる粉末中に含まれる不純物のうち、前記匣鉢起因のものが250質量ppm以下であることを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第9の発明において、金属粉末または金属化合物粉末の前駆体として、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)粉末を充填した後、非還元性雰囲気下で300〜700℃に加熱しながら酸化反応させ、得られた酸化ニッケル(NiO)粉末を水素を含むガス雰囲気下で350〜500℃に加熱しながら還元反応させてニッケル粉末を得ることを特徴とする請求項9に記載の粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、酸化反応の際に、炉内で生じた酸素含有ガスを循環し、還元反応の際に、炉内で生じた水素含有ガスを循環することを特徴とする粉末の製造方法が提供される。
本発明の匣鉢は、融点が最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製で切欠きを有し、重ねたときに倒れない構造であるために、生産性が向上し、かつ品質が均一化で前駆体起因や匣鉢起因の不純物が少ない金属や金属化合物の粉末が作製可能となり、MLCCや電磁波シールド、二次電池、燃料電池等の電子素子等の原料として展開できる。
本発明は、加熱しながら少なくとも酸化および/または還元反応により前駆体から金属粉末または金属化合物粉末を製造する工程とそれに用いられる匣鉢である。さらに水酸化ニッケル粉末から酸化ニッケル粉末を経てニッケル粉末を製造する工程に適用できる。以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、特にこれらに限定されることはない。
1.匣鉢
本発明の匣鉢は、融点が700℃以上かつ最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製の匣鉢であって、積み重ねた際に供給ガスが匣鉢内に容易に侵入し発生ガスが匣鉢外に容易に排気できるように側壁上部に切欠きが側壁の高さと特定の比率で存在し、積み重ねた際に転倒しないように側壁にストッパーを設けている。
本発明の匣鉢は、融点が700℃以上かつ最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製の匣鉢であって、積み重ねた際に供給ガスが匣鉢内に容易に侵入し発生ガスが匣鉢外に容易に排気できるように側壁上部に切欠きが側壁の高さと特定の比率で存在し、積み重ねた際に転倒しないように側壁にストッパーを設けている。
A.材質
本発明において匣鉢は、融点が700℃以上かつ最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製であれば、純金属でも合金でも構わない。より好ましくはニッケル基合金、コバルト基合金、タングステン基合金またはタングステン基合金であり、いずれか一種でも二種以上の合金でもよい。特に好ましいのはニッケル基合金である。
本発明において匣鉢は、融点が700℃以上かつ最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製であれば、純金属でも合金でも構わない。より好ましくはニッケル基合金、コバルト基合金、タングステン基合金またはタングステン基合金であり、いずれか一種でも二種以上の合金でもよい。特に好ましいのはニッケル基合金である。
従来から用いられているアルミナやジルコニアなど酸化物系のセラミックス製匣鉢の場合、匣鉢に用いられている金属元素起因の不純物(以降、匣鉢起因不純物とも記載する)が混入してしまうことがあり、金属粉末を製造する場合には酸素濃度が高くなることがあった。
本発明の匣鉢はニッケル基合金、コバルト基合金、タングステンやタングステン基合金、あるいはステンレスなどの金属製としたので、匣鉢起因不純物濃度を低減することができる。酸化反応と還元反応を同一の匣鉢を用いて行う場合には、特にこの効果が有用である。匣鉢を構成する金属の融点が最高加熱温度より150℃高い温度未満の場合は、熱処理過程で変形する可能性があり好ましくない。匣鉢をニッケル基合金、コバルト基合金、タングステン基合金、またはタングステン基合金のいずれかで構成すると、匣鉢起因不純物濃度が一段と低減されるのでより好ましい。特にニッケル基合金の場合は、さらに匣鉢起因不純物濃度が低減される。ただし、本発明の範囲内で融点が700℃未満のアルミニウムなどの金属では、酸化および/または還元反応時の熱履歴により匣鉢が変形してしまうなどの問題がある。
B.形状
本発明の匣鉢は、底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部は解放された箱体(以下、箱状本体ともいう)である。
本発明の匣鉢は、底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部は解放された箱体(以下、箱状本体ともいう)である。
底部の形状は、正方形、長方形、円形、楕円形など特に限定されない。多くの前駆体を充填できて、縦横の長さが同一の方が連続炉に載せる向きの制約が小さいということから、底部の形状は正方形が好ましい。側壁の高さは、底部の最長径に対して10〜50%が好ましく、箱体の形状は薄肉の直方体が好ましい。
各部の厚さは、箱状本体の材質や大きさにも関係するので一概に規定しにくいが、それぞれ0.5〜5.0mmとするのが好ましい。0.5mmより薄いと強度が不足し、5.0mmよりも厚いと重くなるので作業性が悪化し、また製造コストの面で好ましくない。
また、図1では、側壁は底部に対して略垂直に形成されているが、前駆体を充填したり得られた粉末を取り出しやすいように、外側に広がるように傾斜をつけてもかまわない。底部と側壁とは一体化されていることが好ましいが、両者を溶接してもよい。
C.切欠き
本発明の匣鉢は、生産性向上のために匣鉢を複数個重ねて連続炉に通過させることもできる。その際、匣鉢の側壁上部に切欠きがあると、最上段以外の匣鉢では、酸化反応や還元反応に必要とする供給ガスが切欠きを通って前駆体粉末に供給され、また酸化反応や還元反応により発生したガスを排気できる。切欠きが1ヶ所の場合、供給ガスの流れや発生ガスの排気が十分とは言えない恐れもあるが使用できないレベルではない。好ましくは2か所以上の切欠きを設け、より好ましくは対向する側壁に少なくとも4ヶ所に切欠きを設ける。
本発明の匣鉢は、生産性向上のために匣鉢を複数個重ねて連続炉に通過させることもできる。その際、匣鉢の側壁上部に切欠きがあると、最上段以外の匣鉢では、酸化反応や還元反応に必要とする供給ガスが切欠きを通って前駆体粉末に供給され、また酸化反応や還元反応により発生したガスを排気できる。切欠きが1ヶ所の場合、供給ガスの流れや発生ガスの排気が十分とは言えない恐れもあるが使用できないレベルではない。好ましくは2か所以上の切欠きを設け、より好ましくは対向する側壁に少なくとも4ヶ所に切欠きを設ける。
切欠きの高さは、切欠きの高さと側壁の高さとの比が2.5:97.5〜45:55であることが望ましい。切欠きの高さの比が2.5未満であると供給ガスが匣鉢内部へ侵入や発生ガスの排気がし難く得られた粉末に前駆体起因の不純物濃度が高くなり、その比が45を超えると重ねたとしても生産性が向上し難い。
また、切欠きの面積と側壁の面積比は特に限定されないが、2:98〜40:60の範囲内であると供給ガスの匣鉢内部への侵入と発生ガスの匣鉢外部への排気が十分に行われる。なお、側壁の高さは底部から後述する台座下面までの高さである。
また、切欠きの面積と側壁の面積比は特に限定されないが、2:98〜40:60の範囲内であると供給ガスの匣鉢内部への侵入と発生ガスの匣鉢外部への排気が十分に行われる。なお、側壁の高さは底部から後述する台座下面までの高さである。
図示したように、側壁部材を切断して切り欠きを設けるのではなく、ストッパーの配置時に切欠きが形成されるようにするのが好ましい。また、ストッパーが突出した箱状本体を成形した後、ストッパーの中央部に台座を溶接してもよい。
D.台座
生産性を向上させるために匣鉢を複数個積み重ねることがある。側壁には厚さがあるので重ねることは可能だが、本発明の匣鉢には台座があることが望ましい。
生産性を向上させるために匣鉢を複数個積み重ねることがある。側壁には厚さがあるので重ねることは可能だが、本発明の匣鉢には台座があることが望ましい。
台座は、切欠き部位以外の側壁上端から内側に起立させた板状体であり、上に積み重ねられる別の匣鉢が安定するように少なくとも3ヵ所以上配置される。好ましくは対向する側壁に少なくとも4ヶ所あると安定性が増す。匣鉢の形状が直方体の場合には、その4角に台座を配置するのが好ましい。
台座の大きさに指定はないが、底部の面積の1/1000〜1/2が望ましい。特に側壁を底部から外側に広がるように傾斜をつけた場合には、台座をそれに載置される別の匣鉢が安定する程度の大きさにするのは言うまでもない。
図示したように、幅10〜30mmの台座を別途作製し、ストッパーと溶接することで取り扱いが容易になる。台座の材質は、匣鉢本体と同じが好ましいが、本発明の範囲内でアルミナやジルコニアなどのセラミックス材料を用いても良い。
E.ストッパー
重ねた際やその他の移動の際に積み重ねた匣鉢が倒れる可能性があるため、本発明の匣鉢には側壁の外側に上記台座より上方に突出した板状体のストッパーを付設する。
重ねた際やその他の移動の際に積み重ねた匣鉢が倒れる可能性があるため、本発明の匣鉢には側壁の外側に上記台座より上方に突出した板状体のストッパーを付設する。
ストッパーは、上に積み重ねられる別の匣鉢が安定するように少なくとも3か所以上配置される。好ましくは対向した側壁の外側にストッパーを少なくとも4ヶ所設ける必要がある。
板状体のストッパーの底部に対して垂直方向の寸法をストッパーの高さとした場合、ストッパーの高さは、匣鉢の高さより低いことが望ましい。それより高いと、積み重ねられた匣鉢のストッパー同士が干渉して、3段以上重ねるのが困難になる可能性がある。なおストッパーを付設する位置は、必ずしも台座の背後に限定されることはないが、好ましくは台座の背後である。またストッパーの付設位置を匣鉢ごとに変えて、積み重ねた際にストッパー同士が干渉しないようにすることも可能である。
図示したように、幅5〜20mmのストッパーを別途作製し、コーナー部に配置し、溶接あるいは接着やビス止めすることで切り欠きが設けられるようにするのが好ましい。ストッパーの材質は、匣鉢本体と同じでも良いが、本発明の範囲内でアルミナやジルコニアなどのセラミックス材料を用いても良い。
本発明では、以上の付設部品に加えて、必要に応じて、取っ手、識別用のプレートなどを取り付けることができる。
本発明では、以上の付設部品に加えて、必要に応じて、取っ手、識別用のプレートなどを取り付けることができる。
2.粉末の製造方法
本発明の匣鉢は、炉内で加熱しながら酸化反応または還元反応により、前駆体から金属粉末または金属化合物粉末を得る工程において、前駆体を充填する容器として使用できる。
本発明の匣鉢は、炉内で加熱しながら酸化反応または還元反応により、前駆体から金属粉末または金属化合物粉末を得る工程において、前駆体を充填する容器として使用できる。
すなわち、本発明の匣鉢は、前駆体を充填した匣鉢を複数個用意し、さらに積み重ねたとしても切欠きからの供給ガスの侵入と発生ガスの排気が容易に行われるため、前駆体起因の不純物濃度が低減される。また、匣鉢の材質に融点が700℃以上で、最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属を用いるため、加熱処理した際に揮発したり、供給ガスや反応による発生ガスの影響を受けることが抑えられ、匣鉢起因の不純物濃度も低減される。
加熱に用いられる炉は、一般的なものでよく、静置式焙焼炉、バーナー炉、連続炉等を用いればよい。連続炉を用いれば、炉の一端から前駆体を充填した匣鉢を順次炉内に入れ、炉内を移動させつつ加熱処理を行い、他端から取り出すことができるので、生産性を高めることができる。
加熱温度は、所望の反応に応じて設定されるものではあるが、300℃以上が好ましい。供給ガスは、酸化反応または還元反応に必要な雰囲気とするためであり、その成分は所望の反応に応じて設定されるものではあるが、酸素、窒素、水素から選ばれる少なくとも1種以上を含むガスまたは大気とするのが好ましい。上記反応により発生したガスは、滞留すると反応効率が低下したり前駆体由来の不純物濃度が高くなったりするため、炉外に排気するのが好ましい。
本発明において作製される金属や金属化合物の粉末は、特に限定されないが、MLCCの内部や外部電極、電磁波シールド、二次電池、燃料電池などの低不純物が要求される電子素子の原料として使用することが可能である。
通常、匣鉢内部に多量の前駆体粉末を入れ、熱処理して金属や金属化合物の粉末を作製すると品質が均一化され難い。しかし、本発明では、少量の前駆体粉末を入れた匣鉢を所定の段数重ねて熱処理して作製することで品質の均一化と生産性の向上が実現できる。
また、匣鉢の材質を加熱処理した際に揮発し難い金属にすることで出来上がった金属や金属化合物の粉末の匣鉢起因不純物濃度は低減され、250質量ppm以下となる。
3.ニッケル粉末の製造方法
本発明の匣鉢を用いた粉末の製造方法は、特に、水酸化ニッケル粉末からニッケル粉末を製造する場合に、より好ましく適用することができる。
本発明の匣鉢を用いた粉末の製造方法は、特に、水酸化ニッケル粉末からニッケル粉末を製造する場合に、より好ましく適用することができる。
第1の工程として、水酸化ニッケル粉末を匣鉢に充填し、炉内で300〜700℃3時間程度加熱しながらガスを供給して酸化反応により酸化ニッケル粉末を得る。反応により発生する水蒸気は炉外に排気する。供給ガスは非還元性ガスであればいずれのガスを用いてもよいが、コストや扱いやすさの面から大気を供給するのが好ましい。水酸化ニッケル粉末の匣鉢への充填量は、充填高さとして、20〜70mmとすることが好ましい。
第2の工程として、酸化ニッケル粉末を匣鉢に充填し、炉内で350〜500℃に6時間程度加熱しながらガスを供給して還元反応によりニッケル粉末を得る。反応により水蒸気が発生するので炉外へ排気する。供給ガスは、還元性ガスであればいずれのガスを用いてもよいが、入手しやすさと環境への影響を考慮すると、水素含有窒素ガス等の含水素ガスとするのが好ましい。なお水酸化ニッケル粉末は、ニッケル塩を溶解させた溶液にアルカリを加えて中和晶析により生成したものを用いてもよい。ガスの供給は横方向でも縦方向でもよい。
また、匣鉢の材質が、加熱処理した際に揮発し難い金属にしたので出来上がったニッケル粉末の匣鉢起因不純物濃度は低減され、250質量ppm以下となる。特に匣鉢の材質をニッケル基合金、コバルト基合金、及びタングステンやタングステン基合金で構成すると、匣鉢起因不純物濃度は120質量ppm以下に低減されより好ましく、匣鉢の材質をニッケル基合金で構成すると、匣鉢起因不純物濃度は90質量ppm以下と一段と低減されてさらに好ましい。
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、粉末製造時に生じる酸素の濃度、匣鉢に起因する不純物の濃度、生産性などは、下記の方法で測定し評価した。
(1)酸素濃度
前駆体起因の不純物である酸素濃度について、上述した匣鉢を使用して作製したニッケル粉末をICP発光分光分析法で測定した。
前駆体起因の不純物である酸素濃度について、上述した匣鉢を使用して作製したニッケル粉末をICP発光分光分析法で測定した。
(2)匣鉢起因不純物濃度
上述した匣鉢を使用して作製したニッケル粉末の匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で測定した。
上述した匣鉢を使用して作製したニッケル粉末の匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で測定した。
(3)生産性
用意した前駆体の水酸化ニッケル1600g全量を2個の匣鉢で処理しニッケル粉末まで得られた場合を良(○)とし、得られなかった場合を不可(×)とした。
用意した前駆体の水酸化ニッケル1600g全量を2個の匣鉢で処理しニッケル粉末まで得られた場合を良(○)とし、得られなかった場合を不可(×)とした。
(4)総合評価
上記の3項目において酸素濃度が2.0%以下、匣鉢起因不純物濃度が250ppm以下、生産性が良(○)を全て満たしたもののみ良(○)とし、1つでも満たさないものがある場合は不可(×)とした。
上記の3項目において酸素濃度が2.0%以下、匣鉢起因不純物濃度が250ppm以下、生産性が良(○)を全て満たしたもののみ良(○)とし、1つでも満たさないものがある場合は不可(×)とした。
(実施例1)
融点が1320℃のニッケル基合金からなる匣鉢(インコネル625)を使用し、320×320×40mmの上部を解放した厚さ2.0mmの直方体状で、4角に台座(20×10×2mmのL字金具)を具備し、対向する側壁に4ヶ所の切欠きが有る図1の形状の匣鉢を作製した。材質および切欠きと側壁の高さや面積の比は表1に示した。
次に、この匣鉢を2個用意し、前駆体粉末として水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の1600gを2個の匣鉢に均等に充填し、それを2段に重ねてから連続炉に入れ、酸化温度が520℃×3h(大気雰囲気)、還元温度が410℃×6h(40%水素/60%窒素雰囲気)で処理してニッケル粉末を得た。
なお、酸化反応時及び還元反応時に発生する水蒸気(H2O)は、連続炉から排気しながら処理を行った。この処理の生産性と得られたニッケル粉末の不純物濃度を評価した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
融点が1320℃のニッケル基合金からなる匣鉢(インコネル625)を使用し、320×320×40mmの上部を解放した厚さ2.0mmの直方体状で、4角に台座(20×10×2mmのL字金具)を具備し、対向する側壁に4ヶ所の切欠きが有る図1の形状の匣鉢を作製した。材質および切欠きと側壁の高さや面積の比は表1に示した。
次に、この匣鉢を2個用意し、前駆体粉末として水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の1600gを2個の匣鉢に均等に充填し、それを2段に重ねてから連続炉に入れ、酸化温度が520℃×3h(大気雰囲気)、還元温度が410℃×6h(40%水素/60%窒素雰囲気)で処理してニッケル粉末を得た。
なお、酸化反応時及び還元反応時に発生する水蒸気(H2O)は、連続炉から排気しながら処理を行った。この処理の生産性と得られたニッケル粉末の不純物濃度を評価した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
(実施例2〜4)
表1に記載したように切欠き高さと側壁高さの比や切欠き面積と側壁面積の比を変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
表1に記載したように切欠き高さと側壁高さの比や切欠き面積と側壁面積の比を変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
(実施例5)
表1に記載したように匣鉢の材質を融点が1270℃のCo基合金(ステライトNo.1)に変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
表1に記載したように匣鉢の材質を融点が1270℃のCo基合金(ステライトNo.1)に変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
(実施例6)
表1に記載したように匣鉢の材質を融点が3380℃のタングステンに変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
表1に記載したように匣鉢の材質を融点が3380℃のタングステンに変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
(実施例7)
表1に記載したように匣鉢の材質を融点が1371℃のステンレス鋼(SUS316)に変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
表1に記載したように匣鉢の材質を融点が1371℃のステンレス鋼(SUS316)に変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表1に併記した。
(比較例1、2)
表2に記載したように切欠き高さと側壁高さの比や切欠き面積と側壁面積の比を変えた以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
表2に記載したように切欠き高さと側壁高さの比や切欠き面積と側壁面積の比を変えた以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
(比較例3)
表2に記載したように匣鉢の材質をアルミニウムに変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
表2に記載したように匣鉢の材質をアルミニウムに変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
(比較例4)
表2に記載したように匣鉢の材質をジルコニア変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
表2に記載したように匣鉢の材質をジルコニア変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
(比較例5)
表2に記載したように匣鉢の材質をアルミナに変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
表2に記載したように匣鉢の材質をアルミナに変えた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度をICP発光分光分析法で分析した。この結果は表2に併記した。
「評価」
上記結果を示す表1から明らかなように、実施例1〜7のニッケル粉末は、融点が最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製の匣鉢を使用して、切欠き高さと側壁高さの比を所定の範囲となるようにしているので、作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度がいずれも優れていることがわかる。なお、実施例7は酸素濃度がやや高いが、実用上問題のないレベルである。匣鉢の材質をニッケル基合金、コバルト基合金、タングステンとした実施例1〜6は、匣鉢起因不純物濃度が120質量ppm以下であり、一段と優れていた。さらに匣鉢の材質をニッケル基合金とした実施例1〜4は、匣鉢起因不純物濃度が90質量ppm以下であり、特に優れていた。
上記結果を示す表1から明らかなように、実施例1〜7のニッケル粉末は、融点が最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製の匣鉢を使用して、切欠き高さと側壁高さの比を所定の範囲となるようにしているので、作製したニッケル粉末の酸素濃度と匣鉢起因不純物濃度がいずれも優れていることがわかる。なお、実施例7は酸素濃度がやや高いが、実用上問題のないレベルである。匣鉢の材質をニッケル基合金、コバルト基合金、タングステンとした実施例1〜6は、匣鉢起因不純物濃度が120質量ppm以下であり、一段と優れていた。さらに匣鉢の材質をニッケル基合金とした実施例1〜4は、匣鉢起因不純物濃度が90質量ppm以下であり、特に優れていた。
これに対し、比較例1は、切欠き高さと側壁高さの比を本発明よりも小さくしたため、供給ガスが侵入し難く、また、排気ガスが排出され難く、酸素濃度が高くなり不可となった。また、得られたニッケル粉末を確認すると、一部未反応の酸化ニッケル(NiO)も見られた。比較例2は、切欠き高さと側壁高さの比を本発明よりも大きく、用意した前駆体である水酸化ニッケル全量を2個の匣鉢では充填しきれず余剰が出たため、匣鉢を重ねて粉末を作製する際の生産性向上の効果が薄く不可となった。比較例3は、匣鉢の材質を融点が660℃のアルミニウムにしたため、融点が最高加熱温度である520℃(酸化温度)に対して140℃高い温度でしかないため、酸化焙焼時に匣鉢の変形が見られニッケル粉末が作製困難となった。比較例4は、匣鉢の材質をジルコニアにしたため、酸素濃度と匣鉢起因の不純物濃度が高くなり不可となった。比較例5は匣鉢の材質をアルミナにしたため、酸素濃度と匣鉢起因の不純物濃度が高くなり不可となった。
本発明によれば、融点が最高加熱温度より150℃高い温度以上の金属製の匣鉢で、切欠き高さと側壁高さの比を特定の範囲にし、重ねた際の転倒防止として側壁にストッパーを有することで、それを使用して作製した金属やセラミックス粉末などは前駆体起因の不純物濃度と匣鉢起因の不純物濃度を低減させ、生産性を向上することができ、各種電子素子の原料として適用できる。
本発明の匣鉢を用いて作製した金属やセラミックス粉末などは、MLCCの内部や外部電極、電磁波シールド、二次電池、燃料電池の原料として、駆体起因の不純物濃度や匣鉢起因の不純物濃度が低く、生産性が向上できコストメリットを実現できるため、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の匣鉢を用いて作製した金属やセラミックス粉末などは、MLCCの内部や外部電極、電磁波シールド、二次電池、燃料電池の原料として、駆体起因の不純物濃度や匣鉢起因の不純物濃度が低く、生産性が向上できコストメリットを実現できるため、その工業的価値は極めて大きい。
1 ストッパー
2 台座
3 切欠き高さ
4 底部
5 側壁高さ
6 前駆体粉末
2 台座
3 切欠き高さ
4 底部
5 側壁高さ
6 前駆体粉末
Claims (13)
- 金属粉末または金属化合物粉末の前駆体を加熱しながら酸化および/または還元反応させるのに用いる匣鉢であって、
底部と底部から起立する側壁とを有し、かつ上部が解放され、該側壁の上部には少なくとも2ヵ所以上の切欠きを有した箱状本体と、該箱状本体の側壁上端より内側の3ヵ所以上に起立した台座と、該台座が起立した側壁外側3ヵ所以上に、該台座より上方に先端が突出したストッパーとを付設してなり、
前記箱状本体が、融点700℃以上、かつ最高加熱温度より150℃以上高い金属材料で構成され、しかも切欠き高さと側壁高さの比が、2.5:97.5〜45:55であることを特徴とする匣鉢。 - 前記箱状本体が、ニッケル基合金、コバルト基合金、またはタングステンから選ばれる少なくとも1種の金属材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の匣鉢。
- 前記金属材料が、ニッケル基合金であることを特徴とする請求項1に記載の匣鉢。
- 前記ストッパーの高さが、前記側壁高さよりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の匣鉢。
- 前記切欠きの面積と側壁の面積の比が、2:98〜40:60であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の匣鉢。
- 前記箱状本体が、上部が解放された直方体状で、その4角に台座が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の匣鉢。
- 前記箱状本体の底部および側壁の厚さは、0.5〜5.0mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の匣鉢。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の匣鉢に、金属粉末または金属化合物粉末の前駆体を充填し、炉内で300℃以上に加熱しながら酸化および/または還元反応を生起させ金属粉末または金属化合物粉末を得ることを特徴とする粉末の製造方法。
- 酸化および/または還元反応を行う際に、酸素、窒素、水素から選ばれる少なくとも1種以上を含むガスまたは大気を供給した酸化および/または還元ガス雰囲気下とすることを特徴とする請求項8に記載の粉末の製造方法。
- 酸化および/または還元反応により生成したガス成分を、前記供給ガスとともに炉外に排気することを特徴とする請求項9に記載の粉末の製造方法。
- 得られる粉末中に含まれる不純物のうち、前記匣鉢起因のものが250質量ppm以下であることを特徴とする請求項9に記載の粉末の製造方法。
- 金属粉末または金属化合物粉末の前駆体として、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)粉末を充填した後、非還元性雰囲気下で300〜700℃に加熱しながら酸化反応させ、得られた酸化ニッケル(NiO)粉末を水素を含むガス雰囲気下で350〜500℃に加熱しながら還元反応させてニッケル粉末を得ることを特徴とする請求項9に記載の粉末の製造方法。
- 酸化反応の際に、炉内で生じた酸素含有ガスを循環し、還元反応の際に、炉内で生じた水素含有ガスを循環することを特徴とする請求項12に記載の粉末の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014010251A JP2015137814A (ja) | 2014-01-23 | 2014-01-23 | 匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014010251A JP2015137814A (ja) | 2014-01-23 | 2014-01-23 | 匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015137814A true JP2015137814A (ja) | 2015-07-30 |
Family
ID=53768927
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014010251A Pending JP2015137814A (ja) | 2014-01-23 | 2014-01-23 | 匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015137814A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017193471A (ja) * | 2016-04-22 | 2017-10-26 | ユミコア | ニッケルリチウム金属複合酸化物の製造方法 |
JP2020535612A (ja) * | 2017-09-28 | 2020-12-03 | ポスコPosco | 二次電池活物質焼成用耐火匣鉢及びこれを用いた二次電池活物質の製造方法 |
JP7090784B1 (ja) | 2021-11-18 | 2022-06-24 | 日本碍子株式会社 | 熱処理システム、それが備える匣鉢及び熱処理方法 |
JP7277662B1 (ja) | 2022-11-15 | 2023-05-19 | 日本碍子株式会社 | 匣鉢、匣鉢セット及び匣鉢の製造方法 |
-
2014
- 2014-01-23 JP JP2014010251A patent/JP2015137814A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017193471A (ja) * | 2016-04-22 | 2017-10-26 | ユミコア | ニッケルリチウム金属複合酸化物の製造方法 |
JP2020535612A (ja) * | 2017-09-28 | 2020-12-03 | ポスコPosco | 二次電池活物質焼成用耐火匣鉢及びこれを用いた二次電池活物質の製造方法 |
US11713925B2 (en) | 2017-09-28 | 2023-08-01 | Posco Holdings Inc. | Sagger for firing secondary battery active material and method for manufacturing secondary battery active material using same |
JP7090784B1 (ja) | 2021-11-18 | 2022-06-24 | 日本碍子株式会社 | 熱処理システム、それが備える匣鉢及び熱処理方法 |
JP2023074931A (ja) * | 2021-11-18 | 2023-05-30 | 日本碍子株式会社 | 熱処理システム、それが備える匣鉢及び熱処理方法 |
JP7277662B1 (ja) | 2022-11-15 | 2023-05-19 | 日本碍子株式会社 | 匣鉢、匣鉢セット及び匣鉢の製造方法 |
JP2024071872A (ja) * | 2022-11-15 | 2024-05-27 | 日本碍子株式会社 | 匣鉢、匣鉢セット及び匣鉢の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2015137814A (ja) | 匣鉢とそれを用いた粉末の製造方法 | |
US20130287590A1 (en) | Generatively produced turbine blade and device and method for producing same | |
EP2446986B1 (en) | Process for preparing tantalum powder for capacitors | |
KR101542607B1 (ko) | 자전연소반응을 이용한 티타늄 합금의 제조방법 | |
JP5722897B2 (ja) | 焼成用ラック | |
JP6349957B2 (ja) | リチウム遷移金属複合酸化物製造用匣鉢充填物およびリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法 | |
JP5365488B2 (ja) | ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法 | |
JP5341124B2 (ja) | リチウムイオン電池用正極活物質用熱処理容器 | |
JP7459478B2 (ja) | 匣鉢および匣鉢充填物、並びにリチウム金属複合酸化物の製造方法 | |
US20210154738A1 (en) | Getter device for sintering additively manufactured parts | |
US20140322063A1 (en) | Process for producing fept-based sputtering target | |
US20070292556A1 (en) | Industrial Plasma Reactor for Plasma Assisted Thermal Debinding of Powder Injection-Molded Parts | |
JP4858153B2 (ja) | 酸化ニッケル粉末とその製造方法 | |
JP5224668B2 (ja) | 窒化アルミニウムの焼成方法 | |
CN101522563A (zh) | 制造氮化铝的方法以及氮化铝薄片和粉末 | |
JP2017122252A (ja) | 表面処理銅粉およびその製造方法 | |
EP1512475A1 (en) | Method for producing metal powder and formed product of raw material for metal | |
US9431664B2 (en) | Method of preparing nickel-aluminum alloy powder at low temperature | |
KR102444771B1 (ko) | 마그네슘 증기를 이용한 니오븀 금속 또는 니오븀 합금의 제조방법 | |
JP4330007B2 (ja) | 磁歪素子の製造方法 | |
JP7378690B1 (ja) | 窒化ホウ素焼結体及びその製造方法、セッター、並びに容器 | |
CN105283579B (zh) | 溅射靶及使用该靶的薄膜的制造方法 | |
JPWO2016084441A1 (ja) | 二酸化バナジウム系蓄熱材料の製造方法 | |
JP4412482B2 (ja) | 焼結用容器、磁歪素子の製造方法 | |
JP2009074117A (ja) | ニッケル粉末の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20150511 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20150608 |