JP2015128368A - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータ10のロータに作用する電磁力変動を好適に抑制することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
【解決手段】ロータの極対数の2倍及びスロットの数の最小公倍数にスロットの数を加算した値とモータ10の機械角速度との乗算値、及び上記最小公倍数からスロットの数を減算した値と機械角速度との乗算値の双方を抑制対象角速度とする。また、上記最小公倍数に極対数を加算した値と機械角速度との乗算値、及び上記最小公倍数から極対数を減算した値と機械角速度との乗算値の双方を規定角速度とする。制御装置30は、ロータに作用する電磁力であって、抑制対象角速度を変動角速度とする電磁力を抑制すべく、スイッチング素子S¥#のオンオフ操作により、規定角速度を変動角速度とする高調波電流を基本波電流に重畳してステータ巻線12¥に流す。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回転機の制御装置に関する。
従来、下記特許文献1に見られるように、永久磁石回転機のトルク脈動を低減させる技術が知られている。この技術について説明すると、固定子鉄心の巻線スロットによる磁気パーミアンスの変化又はコギングトルクに起因するトルク脈動データをトルク脈動記憶装置に記憶させておく。そして、記憶されたトルク脈動データに基づき、固定子巻線に流れる正弦波電流を、上記トルク脈動を低減させるように補正する。
特開平11−55986号公報
ところで、回転機の固定子に巻回された巻線に通電されて回転機が駆動されると、回転機において電磁力変動が発生する。ここで、電磁力変動の発生により、回転子に作用する吸引力及び反発力の電磁力分布が回転子の共振モードと一致する場合、回転機が発生する騒音(磁気音)が増大する懸念がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転機の回転子に作用する電磁力変動を好適に抑制することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明は、極対数P(Pは正の整数)の磁極(14a;16a;18a)を有する回転子(14;16;18)と、S個(Sは3以上の整数)のスロット(12b;15b)が形成され、巻線(12¥)が巻回された固定子(12;15)と、を備える回転機(10)に適用され、前記極対数Pの2倍及び前記スロットの数Sの最小公倍数Kに正の整数Nを乗算した値を規定値とし、前記規定値に前記スロットの数Sを加算した値と前記回転機の機械角速度との乗算値、及び前記規定値から前記スロットの数Sを減算した値と前記機械角速度との乗算値の双方を抑制対象角速度とし、前記規定値に前記極対数Pを加算した値と前記機械角速度との乗算値、及び前記規定値から前記極対数Pを減算した値と前記機械角速度との乗算値のうち少なくとも一方を規定角速度とし、前記回転子に作用する電磁力であって、前記抑制対象角速度を変動角速度とする電磁力を抑制すべく、前記規定角速度を変動角速度とする高調波電流を基本波電流に重畳して前記巻線に流す電流流通手段を備えることを特徴とする。
「規定値+極対数P」及び機械角速度の乗算値、又は「規定値−極対数P」及び機械角速度の乗算値を変動角速度とする高調波電流を巻線に流すと、「規定値±スロットの数S」及び機械角速度の乗算値を変動角速度とする電磁力が回転子に作用する。これは、巻線に上記高調波電流を流すことによって回転子に作用する電磁力であって、規定値及び機械角速度の乗算値を変動角速度とする電磁力が、スロットの数S及び機械角速度の乗算値で周波数変調されるためである。
この点に鑑み、上記発明では、電流流通手段を備えた。このため、回転子に作用する電磁力変動を抑制することができ、ひいては回転機が発生する騒音を低減させることができる。
第1の実施形態にかかるモータ制御システムの全体構成図。 同実施形態にかかるモータの断面図。 同実施形態にかかるロータの共振モードを示す図。 同実施形態にかかる回転次数に対応する電磁力を示す図。 比較技術にかかる音圧レベルを示す図。 電磁力変動を抑制した場合の音圧レベルを示す図。 第2の実施形態にかかるモータ制御システムの全体構成図。 同実施形態にかかるモータに印加する台形波を示す図。 第3の実施形態にかかるモータの断面図。 同実施形態にかかるモータの断面図。 その他の実施形態にかかるモータの断面図。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置を、車載空調装置を構成するブロワ用モータに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車載モータ制御システムは、モータ10、「電力変換回路」としての3相インバータ20及び制御装置30を備えている。モータ10は、インバータ20を介して「直流電源」としてのバッテリ40に電気的に接続されている。
インバータ20は、上アーム用スイッチング素子S¥p(¥=U,V,W)及び下アーム用スイッチング素子S¥nの直列接続体を3組備えている。スイッチング素子S¥p,S¥nの接続点は、モータ10のステータ12(固定子)を構成するU相のステータ巻線12U,V相のステータ巻線12V,W相のステータ巻線12Wの一端に接続されている。U,V,W相のステータ巻線12U,12V,12Wの他端は、これらが中性点Nで接続されることによりスター結線されている。スイッチング素子S¥#には、フリーホイールダイオードD¥#が逆並列に接続されている。ちなみに、上記スイッチング素子S¥#(#=p,n)としては、例えば、電圧制御形のスイッチング素子(例えばIGBT、又はMOSFET)を用いることができる。
ここで、本実施形態では、モータ10として、永久磁石同期機を用いている。なお、モータ10としては、集中巻きのものを用いてもよいし、分布巻きのものを用いてもよい。
本実施形態では、モータ10として、図2に示すように、アウタロータ型のモータを採用する。ここで、図2は、モータ10の軸方向(ロータ14の回転軸方向)と直交する面でモータ10を切断した横断面図を示している。なお、図2に示す中心点Oは、回転軸が通る点である。また、図2において、断面を表示するハッチングは省略している。
モータ10は、1つのステータ12と、ステータ12に対して回転可能に配置された円環状のロータ14を備えている。ロータ14は、ロータ14及びステータ12の径方向において、ステータ12の外側にステータ12に対してギャップを有して配置されている。
ロータ14は、複数(10個)の永久磁石14aと、これら永久磁石14aを連結する軟磁性体からなるバックヨーク14bとを備えている。これら永久磁石14aのそれぞれは、互いに同一形状をなしており、1つの磁極を構成している。永久磁石14aは、ロータ14の径方向に着磁され、かつ、周方向に隣り合う永久磁石14aの極性は、互いに異なる、つまり、S極とN極とが交互に配置されている。なお、図2において、永久磁石14aに記載されている矢印の矢の部分はN極を示している。
ステータ12は、12個のティース12aを備えている。これにより、ステータ12には、12個のスロット12bが形成されている。12個のティース12aは、スロット12bを介してステータ12の周方向に等ピッチで配列されている。すなわち、本実施形態では、極対数Pが「5」で、スロット数Sが「12」のモータ10を採用している。
図1の説明に戻り、制御装置30は、マイコンを主体として構成され、モータ10の制御量(本実施形態では回転角速度)をその指令値(以下、指令角速度ω*)に制御すべく、インバータ20を操作する。詳しくは、制御装置30は、インバータ20を構成する上,下アーム用スイッチング素子S¥p,S¥nを操作すべく、上,下アーム用操作信号g¥p,g¥nを生成して上,下アーム用スイッチング素子S¥p,S¥nに対して出力する。ここで、上アーム用操作信号g¥pと、対応する下アーム用操作信号g¥nとは、互いに相補的な信号となっている。すなわち、上アーム用スイッチング素子S¥pと、これに直列接続された下アーム用スイッチング素子S¥nとは、交互にオン状態とされる。ちなみに、指令角速度ω*は、例えば、車両おいて制御装置30の外部に設けられ、制御装置30よりも上位の外部装置から出力される。
制御装置30には、ロータ14の回転角(電気角θe)を検出する回転角センサ42(例えばレゾルバ)や、モータ10のV相,W相を流れるV相電流,W相電流を検出するV相,W相電流センサ44V,44Wの検出信号が入力される。なお、電気角θeを極対数Pで除算した値が機械角θmとなる。
続いて、制御装置30によって実行されるモータ10の制御について説明する。
U相電流算出部31は、キルヒホッフの法則に基づき、V相、W相電流センサ44V,44Wによって検出されたV相電流iVr,W相電流iWrからU相電流iUrを算出する。
電気角速度算出部32は、回転角センサ42によって検出された電気角θeの時間微分値として電気角速度ωeを算出する。なお、電気角速度ωeを極対数Pで除算した値が機械角速度ωmとなる。
記憶部33は、指令角速度ω*、電気角θe及び電気角速度ωeに基づき、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電流iU*,iV*,iW*を算出する。本実施形態において、記憶部33は、不揮発性メモリによって構成されている。なお、本実施形態において、記憶部33が「記憶手段」に相当する。また、記憶部33については、後に詳述する。
U相偏差算出部34Uは、U相電流算出部31から出力されたU相電流iUrからU相指令電流iU*を減算することで、U相偏差ΔUを算出する。V相偏差算出部34Vは、V相電流センサ44Vによって検出されたV相電流iVrからV相指令電流iV*を減算することで、V相偏差ΔVを算出する。W相偏差算出部34Wは、W相電流センサ44Wによって検出されたW相電流iWrからW相指令電流iW*を減算することで、W相偏差ΔWを算出する。
指令電圧算出部35は、U,V,W相偏差ΔU,ΔV,ΔWに基づき、U,V,W相電流iUr,iVr,iWrをU,V,W相指令電流iU*,iV*,iW*にフィードバック制御するための操作量として、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を算出する。本実施形態において、指令電圧算出部35は、U,V,W相偏差ΔU,ΔV,ΔWに基づく比例積分制御によってU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を算出する。
PWM操作部36は、インバータ20のU,V,W相の出力電圧をU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を模擬した電圧とするための操作信号gU#,gV#,gW#を生成する。本実施形態では、指令電圧VU*,VV*,VW*及びキャリア信号tc(例えば、三角波信号)との大小比較に基づくPWM処理によって操作信号gU#,gV#,gW#を生成する。なお、本実施形態において、PWM操作部36が「操作手段」に相当する。また、本実施形態において、PWM操作部36に加えて、記憶部33が「電流流通手段」を構成する。
ところで、モータ10において回転磁界が生成されると、ロータ14に電磁力が作用する。詳しくは、スロット数Sの正の整数倍に機械角速度ωmを乗算した値(12ωm,24ωm,36ωm,48ωm,60ωm,72ωm…)を変動角速度とする電磁力がロータ14に作用する。ここで、ロータ14に作用する吸引力及び反発力の電磁力分布がロータ14の円環モードと一致する場合、モータ10が発生する騒音(磁気音)が増大し得る。ここで、円環モードとは、ロータ14の径方向に加わる加振力に起因して、弾性体としてのロータ14に生じる周期的な変動のモードのことである。以下、円環モードについて説明する。
図3に、1〜4次の円環モードを示す。図示されるように、1次の円環モードは、加振力が加わらない状態での図中破線にて示す形状(以下、原形状)を維持しつつ、節を基準として振れまわるようにロータ14が変位するモードである。ここで、節とは、図中2点鎖線にて示される部分であり、この部分は原形状からほとんど変化しない。
2次の円環モードは、原形状に対して、互いにπだけ離間した2箇所が径方向に伸張するとともに、それら伸張する箇所からπ/2だけ離間した2箇所が径方向に収縮するモードである。径方向に伸縮する箇所は、「腹」である。また、3次の円環モードは、原形状に対して同時に伸張する箇所の数が3個のモードであり、4次の円環モードは、形状に対して同時に伸張する箇所の数が4個のモードである。
ここで、各円環モードに応じた加振力とは、ステータ巻線12¥に回転磁束を生成する電流を流すことで、機械角の1周期において生じる吸引力及び反発力の分布の周期で機械角の1周期を除算した値が、円環モードの次数となる力のことである。すなわち、例えば、2次の円環モードを生じさせる加振力は、機械角の1周期において、吸引力が増加する箇所と減少する箇所との角度間隔がπ/2となる力である。このため、吸引力が増加する一対の箇所によって区画される上記分布の周期は「π」となる。したがって、上記分布の周期「π」で機械角の1周期「2π」を除算した値は、円環モードの次数「2」となる。
これら各円環モードはそれぞれ固有の共振周波数を有している。そして、各円環モードに応じた加振力の周波数が、各円環モードに応じた共振周波数と一致することで、ロータ14の共振現象が生じる。
加振力の実際の周波数が共振周波数と一致する場合、モータ10が発生する磁気音が増大し、可聴周波数帯域におけるノイズレベルが大きくなる等の問題が発生し得る。
こうした問題に対処すべく、本実施形態では、制御装置30に記憶部33を備えている。記憶部33には、磁気音の要因となる電磁力変動を抑制するための¥相指令電流i¥*が記憶されている。以下、電磁力変動を抑制するための電流について説明する。
ロータ14の磁極に発生する加振力Fは、磁極の磁束φと、ステータ巻線12¥の起磁力Hとのそれぞれに比例するため、下式(eq1)にて表すことができる。
Figure 2015128368
上記起磁力Hは、パーミアンスA、ステータ巻線12¥の巻数N及びステータ巻線12¥に流れる電流Iのそれぞれに比例する。このため、上式(eq1)は、下式(eq2)のように変形できる。
Figure 2015128368
パーミアンスAは、スロット数Sのm倍(mは正の整数)の周期で変動するため、下式(eq3)にて表すことができる。
Figure 2015128368
上式(eq3)において、「A0」は、パーミアンスAの平均値を示す。一方、ステータ巻線12¥に流す高調波電流Ikを下式(eq4)にて表す。
Figure 2015128368
上式(eq4)において、「t」は時間を示し、「Ia」は高調波電流Ikの振幅を示し、「K」は極対数Pの2倍とスロット数Sとの最小公倍数を示す。上記高調波電流Ikをステータ巻線12¥に流すことにより、ロータ14の磁極に発生する加振力Fkは、上式(eq2)〜(eq4)を用いて、下式(eq5)のように表すことができる。
Figure 2015128368
本実施形態では、「S=12,P=5,K=60」であるから、これらを上式(eq5)に代入すると、下式(eq6)が得られる。
Figure 2015128368
ここで、ロータ14が機械角速度ωmで回転する場合、機械角θm及び機械角速度ωmの関係が「θm=ωm・t」となる。このため、上式(eq6)は、下式(eq7)のように表すことができる。
Figure 2015128368
三角関数の積和の公式から、上式(eq7)は、下式(eq8)のように表すことができる。
Figure 2015128368
上式(eq6),(eq8)は、「最小公倍数K−極対数P」及び機械角速度ωmの乗算値(以下、「K−P」次の角速度)を変動角速度とする高調波電流(以下、「K−P」次の高調波電流)、又は「K+P」次の高調波電流をステータ巻線12¥に流すと、「最小公倍数K±スロットの数S」及び機械角速度ωmの乗算値、並びに最小公倍数K及び機械角速度ωmの乗算値のそれぞれを変動角速度とする電磁力がロータ14に作用することを表している。これは、ステータ巻線12¥に「K−P」次の高調波電流、又は「K+P」次の高調波電流を流すことにより、ロータ14に作用するK次の電磁力が、スロットの数S及び機械角速度ωmの乗算値で周波数変調されるためである。
すなわち、上式(eq6),(eq8)は、「K−P」次の高調波電流、又は「K+P」次の高調波電流をステータ巻線12¥に流すことにより、「K−S」次,K次,「K+S」次の電磁力を制御できることを表している。なお、本実施形態において、「最小公倍数K±極対数P」及び機械角速度ωmの乗算値が「規定角速度」に相当し、「最小公倍数K±スロットの数S」及び機械角速度ωmの乗算値が「抑制対象角速度」に相当する。
本実施形態では、極対数「P=5」及びスロット数「S=12」であるから、極対数Pの2倍及びスロット数Sの最小公倍数Kは「60」となる。このため、55次又は65次の高調波電流をステータ巻線12¥に流すことにより、48,60,72次の電磁力を制御できる。
以上説明した事項に基づき、本実施形態では、ロータ14に作用する電磁力のうち、48次,72次の電磁力を抑制可能な55次,65次の高調波電流が記憶部33に記憶されている。詳しくは、記憶部33には、下式(eq9)に示すように、U,V,W相それぞれについて、電気角速度ωeを変動角速度とする正弦波信号としての基本波電流に、上記抑制可能な55次,65次の高調波電流IkU,IkV,IkWが重畳された電流が記憶されている。
Figure 2015128368
上式(eq9)において、右辺第1項が基本波電流を示している。U,V,W相の基本波電流は、電気角θeで位相が互いに120°ずれた波形となっている。また、U,V,W相の高調波電流Ik¥(¥=U,V,W)は、48,72次の電磁力を打ち消すように設定されている。具体的には、高調波電流Ik¥は、48,72次の電磁力を打ち消すように、上式(eq5)に示した高調波電流の位相及び振幅が調整された波形となっている。また、本実施形態において、U,V,W相の高調波電流Ik¥は、波形形状が互いに同一であってかつ、電気角θeで位相が互いに120°ずれた波形となっている。基本波電流に高調波電流Ik¥が重畳されてなる¥相指令電流i¥*は、指令角速度ω*、電気角θe(機械角θm)及び電気角速度ωe(機械角速度ωm)と関係付けられて記憶部33にマップデータとして記憶されている。記憶部33は、都度(例えば、制御装置30の制御周期毎に)入力された指令角速度ω*、電気角θe及び電気角速度ωeに基づき、該当する指令電流i¥*を選択し、¥相偏差算出部34¥に出力する。
図4〜図6を用いて、基本波電流に55次の高調波電流を重畳した場合の効果について説明する。ここで、図4は、55次の高調波電流を重畳しない場合の各周波数に対応する電磁力を示し、図5は、55次の高調波電流を重畳しない比較技術にかかる騒音の実測結果を示し、図6は、55次の高調波電流を重畳した場合における騒音の実測結果を示す。
図5,図6に示すように、基本波電流に55次の高調波電流を重畳させることで、共振周波数近傍における騒音(音圧)のピーク値を13dBA低減できた。なお、図5,図6は、2次の円環モードにおける結果である。また、本実施形態において、共振周波数近傍の音圧の突出ピークの周波数2.3kHzは、50次の角速度に対応する周波数(50×ωm/(2π))である。これは、48次の電磁力の周波数と2次の円環モードに対応する共振周波数2.2kHzとが一致したとき、増幅された2次の円環モードのロータ振動が回転移動することで、音圧の周波数が2次(円環モードの次数)に対応する周波数で変調されていることを示している。このことから、本実施形態によって低減効果の得られる突出ピークの周波数は、共振周波数と一致する電磁力の周波数が、円環モードの次数に対応する周波数で変調された周波数である。すなわち、本実施形態において、高調波電流Ik¥は、円環モードの次数「2」と機械角速度ωmとの乗算値を48次の角速度(抑制対象角速度)に加算した50次の角速度に対応する周波数(以下、第1周波数f1)でモータ10が発生する騒音を低減できるように設定されている。
なお、低減対象とする騒音の周波数は、上述した第1周波数f1に限らず、円環モードの次数と機械角速度ωmとの乗算値を48次の角速度から減算した46次の角速度に対応する周波数(以下、第2周波数f2)の場合もある。このとき、高調波電流Ik¥は、第2周波数f2でモータ10が発生する騒音を低減できるように設定すればよい。また、低減対象とする騒音の周波数が第1,第2周波数f1,f2の双方である場合、高調波電流Ik¥は、第1,第2周波数f1,f2でモータ10が発生する騒音を低減できるように設定すればよい。
ちなみに、本実施形態では、実際の電磁力の周波数が共振周波数に近づくにつれて高調波電流Ik¥の重畳量(具体的には振幅)を増加させ、実際の電磁力の周波数が共振周波数から離れるにつれて高調波電流Ik¥の重畳量を減少させるように高調波電流Ik¥が設定されている。ここで、高調波電流Ik¥が電気角速度ωeと関係付けられて記憶されていることから、実際の電磁力の周波数が共振周波数に近づいたり離れたりすることは、例えば電気角速度ωeによって把握されることとなる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)48次,72次の電磁力を抑制すべく、55次,65次の高調波電流を基本波電流に重畳した。このため、ロータ14に作用する電磁力変動を抑制することができ、ひいてはモータ10が発生する磁気音を低減させることができる。
特に、本実施形態では、55次,65次の双方の高調波電流を基本波電流に重畳させた。こうした構成によれば、55次,65次の高調波電流のそれぞれに、48次,72次の電磁力を打ち消す役割を担わせることができる。このため、本実施形態によれば、55次,65次のいずれか一方の高調波電流を基本波電流に重畳させる構成と比較して、電磁力変動の抑制効果をより大きくできる。
(2)最小公倍数K「60」±スロット数S「12」の値が、極対数Pの正の整数倍とならないような10極12スロットのモータ10を採用した。これに対し、上記特許文献1に記載されたモータは、8極48スロットのモータである。このため、極対数の2倍及びスロット数の最小公倍数は「48」となり、最小公倍数±スロット数の値は「0,96」となる。すなわち、上記特許文献1に記載された技術は、最小公倍数±スロット数の値が、極対数の正の整数倍となるモータに適用されるものである。ここで、上記特許文献1に記載された技術を、本実施形態にかかるモータ10に適用したとしても、スロット数の正の整数倍及び機械角速度の乗算値を変動角速度とする電磁力を適切に低減できない。したがって、10極12スロットのモータ10に対しては、電磁力変動を抑制する本実施形態にかかる構成を適用するメリットが大きい。
(3)ロータ14が中空形状をなすアウタロータ型のモータ10を採用した。こうした構成では、共振現象発生時におけるロータ14の変形量が大きく、可聴周波数帯域におけるノイズレベルが大きくなりやすい。このため、アウタロータ型のモータ10に対しては、電磁力変動を抑制する本実施形態にかかる構成を適用するメリットが大きい。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、電磁力を抑制すべく、台形波状の電圧をステータ巻線12¥に印加する。
図7に、本実施形態にかかるモータ制御システムを示す。なお、図7において、先の図1に示した部材等については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、制御装置30は、電気角速度算出部32及びPWM操作部36に加えて、「指令電圧算出手段」としての指令電圧算出部35aを備えている。
指令電圧算出部35aは、台形波状のU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を算出する。ここで、台形波状の指令電圧V¥*は、上記第1の実施形態で説明した48次、72次の電磁力変動を打ち消すための高調波電流を基本波電流に重畳した電流を、ステータ巻線12¥に流すための電圧である。ここで、U,V,W相の指令電圧V¥*は、同一の波形であり、位相が電気角θeで互いに120°ずれた波形となっている。
具体的には、指令電圧算出部35aは、メモリ(例えば、不揮発性メモリ)によって構成され、指令角速度ω*、電気角θe及び電気角速度ωeと関係付けてU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を記憶している。指令電圧算出部35aは、都度入力された指令角速度ω*、電気角θe及び電気角速度ωeに基づき、該当する¥相指令電圧V¥*を選択し、PWM操作部36に出力する。以下、台形波状の指令電圧V¥*について説明する。
本実施形態では、スイッチング素子S¥#のオン操作指令及びオフ操作指令が電気角θeで180°ずれてかつ、U,V,W相でオン操作指令の切り替えタイミングが電気角θeで互いに120°すれた矩形波制御で用いられる矩形波をベースとして、図中実線にて示す台形波状の信号を指令電圧V¥*として設定する。
ここで、台形波状の信号とするのは、基本波電流に55次,65次の高調波電流を重畳した電流をステータ巻線12¥に流すためである。つまり、図8に示すように、矩形波の急峻な立ち上がり及び立ち上がりをスロープ状とすることで、電磁力変動を打ち消し可能なように55次,65次の高調波電流の振幅及び位相を調整することができる。
さらに、本実施形態では、電磁力変動を打ち消し可能なように55次,65次の高調波電流の振幅及び位相を調整する手法として、図中γにて示すように、台形波状の波形の一部を欠く手法も用いた。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図9に示すように、インナロータ型のモータ10を採用する。なお、図9は、モータ10の軸方向と直交する面でモータ10を切断した横断面図を示している。また、図9において、断面を表示するハッチングは省略している。
図示されるように、モータ10は、ステータ15と、ステータ15に対して回転可能に配置されたロータ16を備えている。ロータ16は、ロータ16及びステータ15の径方向において、ステータ15の内側にステータ15に対してギャップを有して配置されている。
ロータ16は、複数(10個)の永久磁石16aと、永久磁石16aを連結するためのロータコア16bとを備えている。これら永久磁石16aのそれぞれは、互いに同一形状をなしており、1つの磁極を構成している。永久磁石16aは、ロータ16の径方向に着磁され、かつ、周方向に隣り合う永久磁石16aの極性は、互いに異なる。一方、ステータ15は、12個のティース15aを備えている。これにより、ステータ15には、12個のスロット15bが形成されている。12個のティース15aは、スロット15bを介してステータ15の周方向に等ピッチで配列されている。
ここで、ロータ16は、図10に示すように、慣性モーメントの低減等を目的として、ざぐりによって中空形状とされている。ここで、図10は、ロータ16の回転軸を通ってかつ回転軸に平行な平面でモータ10を切断した断面図を示している。また、図10の一点鎖線は、ロータ16の回転軸を示している。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1の実施形態において、図11に示すように、モータ10として、極対数Pが「7」に設定されてかつスロット数Sが「12」に設定されてなる14極12スロットのものを採用してもよい。ここで、図11は、先の図2に対応している。また、図11において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。図示されるように、モータ10は、円環状のロータ18を備えている。ロータ18は、14個の永久磁石18aと、これら永久磁石18aを連結するバックヨーク18bとを備えている。この場合、極対数(P=7)の2倍及びスロット数(S=12)の最小公倍数Kは「84」となる。このため、「K−P」次である77次、又は「K+P」次である91次の高調波電流をステータ巻線12¥に流すことにより、「K±S」次である72次,96次の電磁力を抑制できる。なお、14極12スロットのモータ10は、「K±S」の値が極対数7の正の整数倍とならないようなモータである。
・上記第1の実施形態において、55次又は65次のいずれか一方の高調波電流を基本波電流に重畳させてもよい。この場合であっても、ロータに作用する電磁力変動の抑制効果を得ることはできる。
・「規定値」としては、極対数Pの2倍及びスロットの数Sの最小公倍数Kに正の整数「1」を乗算した値に限らない。例えば、上記最小公倍数Kに2以上の整数を乗算した値を規定値としてもよい。具体的には例えば、上記第1の実施形態において、最小公倍数Kが「60」であることから、「120,180,240…」が規定値となる。ここで、規定値を120とする場合、規定角速度は、「(120±5)ωm」となり、抑制対象角速度は、「(120±12)ωm」となる。こうした場合であっても、ロータに作用する電磁力変動を抑制できることが本発明者によって調べられている。
・「モータ」としては、10極12スロット、又は14極12スロットのものに限らない。「K・n±S」(nは正の整数)が極対数Pの整数倍とならないような極対数P及びスロット数S(≧3)に設定されてなるモータであれば、10極12スロット、又は14極12スロット以外のモータを採用してもよい。こうした場合であっても、ロータに作用する電磁力変動を抑制できることが本発明者によって調べられている。
また、「モータ」としては、3相モータに限らず、4相以上の多相モータであってもよい。さらに、「モータ」としては、ロータに永久磁石を備える永久磁石界磁型同期機に限らず、例えば、ロータに界磁巻線を備える巻線界磁型同期機であってもよい。
10…モータ、12…ステータ、14…ロータ。

Claims (10)

  1. 極対数P(Pは正の整数)の磁極(14a;16a;18a)を有する回転子(14;16;18)と、
    S個(Sは3以上の整数)のスロット(12b;15b)が形成され、巻線(12¥)が巻回された固定子(12;15)と、
    を備える回転機(10)に適用され、
    前記極対数Pの2倍及び前記スロットの数Sの最小公倍数Kに正の整数を乗算した値を規定値とし、
    前記規定値に前記スロットの数Sを加算した値と前記回転機の機械角速度との乗算値、及び前記規定値から前記スロットの数Sを減算した値と前記機械角速度との乗算値の双方を抑制対象角速度とし、
    前記規定値に前記極対数Pを加算した値と前記機械角速度との乗算値、及び前記規定値から前記極対数Pを減算した値と前記機械角速度との乗算値のうち少なくとも一方を規定角速度とし、
    前記回転子に作用する電磁力であって、前記抑制対象角速度を変動角速度とする電磁力を抑制すべく、前記規定角速度を変動角速度とする高調波電流を基本波電流に重畳して前記巻線に流す電流流通手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
  2. 前記規定角速度は、前記規定値に前記極対数Pを加算した値と前記機械角速度との乗算値、及び前記規定値から前記極対数Pを減算した値と前記機械角速度との乗算値の双方である請求項1記載の回転機の制御装置。
  3. 前記高調波電流は、前記回転子の共振を表す円環モードの次数と前記機械角速度との乗算値を前記抑制対象角速度に加算した値に対応する周波数、及び前記円環モードの次数と前記機械角速度との乗算値を前記抑制対象角速度から減算した値に対応する周波数のうち、少なくとも一方の周波数で前記回転機が発生する音を低減できるように設定されている請求項1又は2記載の回転機の制御装置。
  4. 前記電流流通手段は、前記回転子に作用する実際の電磁力の周波数が前記回転子の共振周波数に近づくにつれて前記高調波電流の重畳量を増加させ、前記実際の電磁力の周波数が前記共振周波数から離れるにつれて前記高調波電流の重畳量を減少させる請求項3記載の回転機の制御装置。
  5. 前記回転機は、前記規定値に前記スロットの数Sを加算した値、及び前記規定値から前記スロットの数Sを減算した値の双方が前記極対数Pの正の整数倍とならないような前記極対数P及び前記スロットの数Sに設定されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  6. 前記回転機は、前記極対数Pが「5」に設定されてかつ前記スロットの数Sが「12」に設定され、又は前記極対数Pが「7」に設定されてかつ前記スロットの数Sが「12」に設定されてなる請求項5記載の回転機の制御装置。
  7. 前記回転子は、中空形状をなしている請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  8. 前記回転機は、前記回転子が円環状をなし、前記固定子が前記回転子の内側に配置されたアウタロータ型である請求項7記載の回転機の制御装置。
  9. 前記電流流通手段は、
    前記回転機の電気角速度を変動角速度とする正弦波信号としての前記基本波電流に、前記電磁力を抑制する前記高調波電流が重畳された電流を記憶する記憶手段(33)と、
    前記巻線に実際に流れる電流を、前記記憶手段によって記憶された電流に制御すべく、前記巻線に接続された電力変換回路(20)を構成するスイッチング素子(S¥#)を操作する操作手段(36)と、
    を備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
  10. 前記電流流通手段は、
    前記回転機の電気角速度を変動角速度とする正弦波信号としての前記基本波電流に前記高調波電流が重畳された電流を、前記巻線に流すための台形波状の指令電圧を算出する指令電圧算出手段(35a)と、
    前記指令電圧算出手段によって算出された指令電圧を前記巻線に印加すべく、前記巻線に接続された電力変換回路(20)を構成するスイッチング素子(S¥#)を操作する操作手段(36)と、
    を備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
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