JP2015125408A - 電子写真用黒色トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像濃度と帯電性に優れる電子写真用黒色トナー、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】次の工程(1)〜(2)
工程(1):水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子を凝集させた後、融着する工程
を有し、工程(1)における中和時の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕が0.20以上0.40以下であり、前記カーボンブラックが、BET比表面積80m2/g以上120m2/g以下、pH6以上9以下、かつDBP吸油量35cm3/100g以上90cm3/100g以下のカーボンブラックである、電子写真用黒色トナーの製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真用黒色トナー、及びその製造方法に関する。
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用のトナーの開発が要求されている。
高画質化の観点からは、トナーを小粒径化する必要があり、従来の溶融混練法に代わり、懸濁重合法や乳化凝集法等のケミカル法により得られる、いわゆるケミカルトナーが提案されており、小粒径でかつ粒度分布がシャープである点から注目されている。
特許文献1には、帯電不良を改善する手段として、特定の平均一次粒径、BET比表面積、吸油量を有するカーボンブラックを含有する、フルカラー画像形成装置用黒色トナーが開示されている。
特許文献2には、帯電量の高い電子写真用トナーとして、特定の酸価、及び構成単位を有するポリエステルを含有する水系媒体中に分散された樹脂粒子を、凝集、合一して得られる電子写真用トナーが開示されている。
特許文献3には、低温定着性と保存安定性の向上を目的として、非晶質ポリエステル及び結晶性ポリエステルを含む樹脂を水系媒体中に分散して得た樹脂粒子からなる凝集粒子に、更に樹脂微粒子分散液を添加して得た樹脂微粒子付着凝集粒子を合一させる、電子写真用トナーの製造方法が開示されている。
特許文献4には、低温定着性と耐高温オフセット性の両立を目的として、特定の原料から得られた結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの混合樹脂に、水系媒体を添加して樹脂粒子分散液を作製し、該樹脂粒子からなる凝集粒子に、更に非晶質ポリエステルを添加してコアシェル粒子を得る、静電荷像現像用トナーの製造方法が開示されている。
特開平8−234492号公報 特開2011−39226号公報 特開2011−81241号公報 特開2013−25258号公報
特許文献1の技術では、カーボンブラックの分散性を改善することで帯電性の向上が図られているが、カーボンブラックの物性の制御のみでは、十分な分散状態が得られず、画像濃度及び帯電性について更なる改善が望まれていた。
特許文献2の技術では、水系媒体中で乳化凝集法によりトナーを調製するため、溶融混練や粉砕法で得られるトナーに比べ、原料混合時にかかる剪断力が弱く、顔料の分散性が十分ではない場合があった。
特許文献3の技術では、低温定着性と保存安定性を両立することができるが、特許文献2の技術と同様の理由で、顔料の分散性の向上が望まれていた。
特許文献4の技術では、低温定着性と耐高温オフセット性を両立することができるが、画像濃度や帯電性については、更なる改善が望まれる場合があった。
特に、カーボンブラックを顔料として用いる黒色トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造においては、乳化凝集法等のケミカル法によると、環境への影響が少ないと期待されるポリエステルを樹脂成分として用いた場合に、カーボンブラックの分散状態が悪くなる問題があった。この場合、カーボンブラックの分散状態悪化により画像濃度の低下や、トナー表面にカーボンブラックが局在し、導電パスが形成されることで、トナーの帯電性が低下する場合があり、改善が望まれていた。
本発明は、画像濃度と帯電性に優れる電子写真用黒色トナー、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、水系媒体を用いたケミカル法による黒色トナーの製造において、特定のBET比表面積、pH、及びDBP吸油量を有するカーボンブラックを用いること、及び、乳化工程の中和時における水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕を一定の範囲に制御することで、顔料の分散性を飛躍的に向上したものと考えられ、これによって、画像濃度と帯電性に優れる電子写真用黒色トナーが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]及び[2]を提供する。
[1]次の工程(1)〜(2)
工程(1):水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子を凝集させた後、融着する工程
を有し、工程(1)における中和時の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕が0.20以上0.40以下であり、前記カーボンブラックが、BET比表面積80m2/g以上120m2/g以下、pH6以上9以下、かつDBP吸油量35cm3/100g以上90cm3/100g以下のカーボンブラックである、電子写真用黒色トナーの製造方法。
[2]前記[1]に記載の製造方法により得られる電子写真用黒色トナー。
本発明によれば、画像濃度と帯電性に優れる電子写真用黒色トナー、及びその製造方法を提供することができる。
[電子写真用黒色トナーの製造方法]
本発明の電子写真用黒色トナーの製造方法は、
次の工程(1)〜(2)
工程(1):水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子を凝集させた後、融着する工程
を有し、工程(1)における中和時の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕が0.20以上0.40以下であり、前記カーボンブラックが、BET比表面積80m2/g以上120m2/g以下、pH6以上9以下、かつDBP吸油量35cm3/100g以上90cm3/100g以下のカーボンブラックである、電子写真用黒色トナーの製造方法である。
本発明の製造方法により、画像濃度及び帯電性に優れる電子写真用黒色トナーを製造できる理由は定かではないが、次のように考えられる。
水系媒体を用いたケミカル法による黒色トナーの製造においては、中和時の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕が高すぎる場合、水により膨潤した樹脂の粘度が低下し、一次分散されていたカーボンブラック同士が二次凝集すると考えられる。一方、〔水/樹脂〕が低すぎる場合は、樹脂の中和が進行しにくくなり、樹脂中の水の分散状態に偏りが生じ、カーボンブラックを十分に分散させるだけの攪拌トルクを得ることができず、カーボンブラックの凝集を十分に分散することができないものと考えられる。
本発明の製造方法によると、中和時の〔水/樹脂〕を特定の範囲に制御することで、カーボンブラックが樹脂と共に高粘度下で均一に混合されるため、カーボンブラックの分散状態を良好に保つことができ、その結果、黒色トナー中の吸光度が増し、高い画像濃度を発現することができたと考えられる。
更に、より疎水的な表面特性を有する、特定のBET比表面積、pH、DBP吸油量を有するカーボンブラックを用いることにより、カーボンブラックと樹脂との親和性を高めることができ、カーボンブラックがトナーの内部に入り易くなるため、トナー表面の導電パスを低減することができ、帯電性を改善することができたと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分及び工程について説明する。
<工程(1)>
工程(1)は、水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程である。
(非晶質ポリエステル(a))
非晶質ポリエステル(a)は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点、及びカーボンブラックを微細に分散させ、画像濃度及び帯電性を向上させる観点から、樹脂粒子の樹脂成分として用いられる。
本発明において、非晶質ポリエステルとは、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、[軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃)]で定義される結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。
非晶質ポリエステル(a)の結晶性指数は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは1.4を超え、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
非晶質ポリエステル(a)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
〔非晶質ポリエステル(a)の物性〕
非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点は、トナーの耐久性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは52℃以上、更に好ましくは54℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは68℃以下、更に好ましくは66℃以下である。
非晶質ポリエステル(a)の軟化点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは165℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
非晶質ポリエステル(a)の数平均分子量は、トナーの耐久性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは2,000以上であり、そして、好ましくは5万以下、より好ましくは1万以下、更に好ましくは4,000以下である。
非晶質ポリエステル(a)の酸価は、樹脂を水系媒体中に容易に乳化させる観点から、好ましくは6mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
なお、非晶質ポリエステル(a)として2種以上の非晶質ポリエステルを使用する場合は、軟化点の差が、好ましくは3℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは7℃以上であり、そして、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点、軟化点、数平均分子量及び酸価は実施例記載の方法によって求められる。
〔非晶質ポリエステル(a)の製造〕
非晶質ポリエステル(a)は、酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させることによって製造することができる。重縮合反応の際には触媒を用いることが好ましい。
非晶質ポリエステル(a)の製造に用いられる触媒は、特に限定されないが、縮重合反応の効率を向上させる観点から、好ましくは錫化合物又はチタン化合物、より好ましくは錫化合物、更に好ましくはジ(2−エチルヘキサン酸)錫又は酸化ジブチル錫である。
チタン化合物としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。
これらの触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
触媒の使用量は、非晶質ポリエステル(a)における酸成分とアルコール成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.15質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。
縮重合反応は、反応容器に酸成分及びアルコール成分を入れ、140℃以上、250℃以下で5時間以上、15時間以下維持して行うことが好ましく、その後、5.0kPa以上、20kPa以下に減圧して、1時間以上、10時間以下維持して行うことがより好ましい。
〔非晶質ポリエステル(a)の酸成分〕
非晶質ポリエステル(a)の酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸、3価以上のカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、トナーの帯電性、及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくはジカルボン酸であり、より好ましくはジカルボン酸及び3価以上のカルボン酸の併用である。また、ジカルボン酸としては、好ましくは脂肪族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸、より好ましくは脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の併用である。
前記脂肪族ジカルボン酸は、トナーの低温定着性及び帯電性を向上させる観点から、好ましくは炭素数9以上、14以下のアルキル基を有するアルキルコハク酸、炭素数9以上、14以下のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸以外の炭素数2以上、12以下の脂肪族ジカルボン酸である。
前記炭素数9以上、14以下のアルキル基を有するアルキルコハク酸及び炭素数9以上、14以下のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸の中でも、トナーの帯電性及び低温定着性の観点から、好ましくは炭素数9以上、14以下のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸である。
また、アルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸の、アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、トナーの帯電性及び低温定着性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは11以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下である。
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの帯電性及び低温定着性の観点から、好ましくはドデセニルコハク酸である。
前記アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸以外の炭素数2以上、12以下の脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくはフマル酸である。
前記芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性と耐熱保存性を両立し、帯電性が優れるトナーを得る観点から、好ましくはテレフタル酸である。
前記3価以上のカルボン酸としては、3〜5価の芳香族カルボン酸が挙げられる。3〜5価の芳香族カルボン酸の具体例としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくはトリメリット酸である。
これらの酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
〔非晶質ポリエステル(a)のアルコール成分〕
非晶質ポリエステル(a)のアルコール成分としては、特に制限はないが、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルの非晶質性を高める観点から、好ましくは芳香族ジオール、より好ましくはビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)、更に好ましくはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種、より更に好ましくはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物の混合物である。
これらのアルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明における工程(1)は、低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、結晶性ポリエステル(b)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程であることが好ましい。
(結晶性ポリエステル(b))
前記結晶性ポリエステル(b)の結晶性指数は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、より更に好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.3以下、より更に好ましくは1.2以下である。
結晶性ポリエステル(b)は、トナー製造時の樹脂粒子の分散液の分散を容易にし、分散安定性を高める観点から、分子末端に酸基を有することが好ましい。酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の分散性と得られるトナーの耐熱保存性とを両立させる観点から、好ましくはカルボキシ基である。
結晶性ポリエステル(b)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
〔結晶性ポリエステル(b)の物性〕
結晶性ポリエステル(b)の融点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させ、帯電性を向上させる観点から、好ましくは65℃以上、より好ましくは68℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
結晶性ポリエステル(b)の軟化点は、同様の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは73℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは83℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
結晶性ポリエステル(b)の数平均分子量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは5万以下、より好ましくは1万以下、更に好ましくは5,000以下である。
結晶性ポリエステル(b)の酸価は、トナーの樹脂粒子の分散安定性及びトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは22mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル(b)の融点、軟化点、数平均分子量及び酸価は、実施例記載の方法によって求められる。
〔結晶性ポリエステル(b)の製造〕
結晶性ポリエステル(b)は、酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させることによって製造することができる。重縮合反応の際には触媒を用いることが好ましい。好ましい触媒及び重縮合反応条件は非晶質ポリエステル(a)と同様である。
〔結晶性ポリエステル(b)の酸成分〕
結晶性ポリエステル(b)の酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電性を向上させる観点から、好ましくは脂肪族ジカルボン酸である。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、トナーの耐熱保存性を向上させ、帯電性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下である。
前記脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上さる観点から、好ましくはセバシン酸である。
前記脂環式ジカルボン酸の具体例としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性と耐熱保存性を両立し、帯電性が優れるトナーを得る観点から、好ましくはテレフタル酸である。
前記3価以上のカルボン酸の具体例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
なお、本明細書において、酸は、遊離酸のみではなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びアルキルエステルも含まれる。
これらの酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
〔結晶性ポリエステル(b)のアルコール成分〕
結晶性ポリエステル(b)のアルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、ビスフェノールAの水素添加物、3価以上のアルコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルの結晶化を促進させ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは脂肪族ジオール、より好ましくはα,ω−アルカンジオールである。
α,ω−アルカンジオールの炭素数は、得られるトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させ、帯電性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω−アルカンジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、より好ましくは1,9−ノナンジオールである。
芳香族ジオールの例としては、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。
3価以上のアルコールの例としては、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、ポリエステルの結晶化を促進する観点から、アルコール成分中、炭素数2以上、18以下のα,ω−アルカンジオールの含有量が、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
結晶性ポリエステル(b)は、好ましくは酸成分が脂肪族ジカルボン酸かつアルコール成分が脂肪族ジオールであり、より好ましくは酸成分がセバシン酸かつアルコール成分が脂肪族ジオールであり、更に好ましくは酸成分がセバシン酸かつアルコール成分が1,9−ノナンジオールである。
((a)及び(b)の総量)
非晶質ポリエステル(a)及び結晶性ポリエステル(b)の総量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、樹脂粒子を構成する樹脂中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
(質量比〔(a)/(b)〕)
非晶質ポリエステル(a)と結晶性ポリエステル(b)との質量比〔(a)/(b)〕は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、より更に好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは90/10以下、より更に好ましくは87/13以下である。
このように非晶質ポリエステル(a)を結晶性ポリエステル(b)より多く含むことで、非晶質ポリエステル(a)相中に結晶性ポリエステル(b)が微細に分散する構造となり、低温定着時には圧力がかかることによって、融解した結晶性ポリエステル(b)が定着に寄与し、高温定着時には、表面に多く存在する非晶質ポリエステル(a)によってオフセットが抑制できるものと考えられる。
(カーボンブラックを含有する樹脂)
本発明に用いるカーボンブラックを含有する樹脂(以下「マスターバッチ」ともいう)は、カーボンブラックの分散性を高める観点から用いられる。
〔カーボンブラック〕
本発明に用いるカーボンブラックは、画像濃度及び帯電性の観点から、BET比表面積が80m2/g以上120m2/g以下、pHが6以上9以下、かつDBP吸油量が35cm3/100g以上90cm3/100g以下のカーボンブラックである。
上記カーボンブラックは、疎水的な表面特性を有しているため、カーボンブラックと樹脂との親和性を高めることができ、これによって、カーボンブラックがトナー粒子の内部に入りやすくなり、トナー粒子表面の導電パスを低減することができ、帯電量を改善することができると考えられる。
カーボンブラックのBET比表面積は、画像濃度及び帯電性の観点から、80m2/g以上120m2/g以下であり、好ましくは84m2/g以上、より好ましくは88m2/g以上、更に好ましくは92m2/g以上であり、そして、好ましくは117m2/g以下、より好ましくは115m2/g以下、更に好ましくは112m2/g以下である。
カーボンブラックのpHは、画像濃度及び帯電性の観点から、6以上9以下であり、好ましくは6.2以上、より好ましくは6.4以上、更に好ましくは6.6以上、より更に好ましくは6.8以上であり、そして、好ましくは8.9以下、より好ましくは8.8以下、更に好ましくは8.7以下、より更に好ましくは8.6以下である。
カーボンブラックのDBP吸油量は、画像濃度及び帯電性の観点から、35cm3/100g以上、90cm3/100g以下であり、好ましくは40cm3/100g以上、より好ましくは45cm3/100g以上、更に好ましくは50cm3/100g以上、より更に好ましくは53cm3/100g以上であり、そして、好ましくは85cm3/100g以下、より好ましくは80cm3/100g以下、更に好ましくは75cm3/100g以下である。
商業的に入手できるカーボンブラックの具体例としては、キャボット社製のREGAL330R、CSX921等が挙げられる。
これらのカーボンブラックは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カーボンブラックのBET比表面積、pH、DBP吸油量は実施例記載の方法により求めることができる。
〔カーボンブラックの含有量〕
カーボンブラックを含有する樹脂中における、カーボンブラックと樹脂との質量比〔カーボンブラック/樹脂〕は、後工程で安定な分散性を保ちつつ、トナーの帯電性を向上させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは25/75以上であり、そして、好ましくは50/50以下、より好ましくは45/55以下、更に好ましくは40/60以下、より更に好ましくは35/65以下である。
また、樹脂粒子中におけるカーボンブラックの含有量は、画像濃度及び帯電性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは11質量%以下、より更に好ましくは9質量%以下である。
〔カーボンブラックを含有する樹脂中の樹脂成分〕
前記カーボンブラックを含有する樹脂中の樹脂成分は、画像濃度及び帯電性の観点から、好ましくは前記非晶質ポリエステル(a)又は結晶性ポリエステル(b)、より好ましくは前記非晶質ポリエステル(a)である。これらの樹脂成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
〔カーボンブラックを含有する樹脂の製造方法〕
カーボンブラックを含有する樹脂は、溶融させた前記樹脂成分と、カーボンブラックとを溶融混合することにより製造することができる。
前記溶融混合は、カーボンブラックを樹脂中に均一に包含させる観点から、溶融前の樹脂とカーボンブラックとを予めブレンドしておいて、樹脂を溶融させながら混合する方法が好ましい。具体的には、例えば、粉末状の非晶質ポリエステル(a)とカーボンブラックとを、ヘンシェルミキサー等の公知の混合機を用いて、粉末状態でブレンドする方法が挙げられる。
溶融混合する温度としては、カーボンブラックを樹脂中に均一に包含させる観点から、非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点以上の温度であることが好ましい。具体的には、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上、より更に好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは130℃以下、より更に好ましくは110℃以下である。
溶融混合する時間に特に制限はないが、カーボンブラックの変質を防ぎ、樹脂の粘度を維持する観点から、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは20分間以上、より更に好ましくは30分間以上であり、そして、好ましくは120分間以下、より好ましくは100分間以下、更に好ましくは60分間以下である。
溶融混合する装置に特に制限はないが、ニーダー型ミキサー、加熱三本ロール等が好ましく用いられる。
このようにして得られたマスターバッチは、後の工程に用い易くするために、冷却しておくことが好ましく、更に粉砕して粉末状又はペレット状にしておくことがより好ましい。
(ポリエステル以外の樹脂(c))
本発明における工程(1)において、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル以外の樹脂(c)を樹脂粒子の原料として用いてもよい。ポリエステル以外の樹脂(c)としては、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
また、本発明に用いる樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤、帯電制御剤を含有させてもよく、必要に応じて、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を含有させてもよい。
<樹脂粒子の分散液の製造>
本発明の製造方法において、樹脂粒子の分散液は、水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化して製造する。
具体的には、非晶質ポリエステル(a)、カーボンブラックを含有する樹脂、アルカリ水溶液、水系媒体、及び界面活性剤等の前記任意成分を溶融して均一に混合することにより樹脂混合物を得る工程(以下「中和工程」ともいう)、及び該樹脂混合物に水系媒体を徐々に添加して転相乳化させる工程(以下「転相工程」ともいう)により製造することができる。
(水系媒体)
前記水系媒体は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点及び環境性の観点から、好ましくは水を主成分とするものである。水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。水としては、好ましくは脱イオン水又は蒸留水である。
水系媒体に含まれる水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数1以上3以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、有機溶媒のトナーへの混入を防止する観点から、好ましくはポリエステルを溶解しない炭素数1以上5以下のアルキルアルコール、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールである。
(中和工程)
中和工程は、非晶質ポリエステル(a)、カーボンブラックを含有する樹脂、アルカリ水溶液、水系媒体、及び界面活性剤等の前記任意成分を溶融して均一に混合することにより樹脂を中和して樹脂混合物を得る工程である。
混合する方法としては、非晶質ポリエステル(a)、カーボンブラックを含有する樹脂、アルカリ水溶液、水系媒体、及び界面活性剤等の前記任意成分を容器に入れ、撹拌器によって撹拌しながら、樹脂を溶融して均一に混合する方法が好ましい。
なお、結晶性ポリエステル(b)等の非晶質ポリエステル(a)以外の樹脂を含む場合には、予め、非晶質ポリエステル(a)とその他の樹脂を混合したものを用いてもよいが、他の成分を添加する際に同時に添加してもよい。
〔水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕〕
中和工程時における水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕は、画像濃度及び帯電性の観点から、0.20以上0.40以下であり、好ましくは0.22以上、より好ましくは0.24以上、更に好ましくは0.26以上であり、そして、好ましくは0.38以下、より好ましくは0.36以下、更に好ましくは0.34以下である。
中和工程時の〔水/樹脂〕を上記範囲に制御することで、カーボンブラックと樹脂とが高粘度下で均一に混合されるため、カーボンブラックの分散状態を良好に保つことができ、トナー中の吸光度が増し、高い画像濃度が得られると考えられる。
なお、前記〔水/樹脂〕における樹脂は、中和工程時に系内に存在する樹脂成分、すなわち、非晶質ポリエステル(a)、カーボンブラックを含有する樹脂中の樹脂成分、並びに任意で用いられる結晶性ポリエステル(b)及び前記ポリエステル以外の樹脂(c)の総量を意味する。ただし、後述する界面活性剤は樹脂の総量に算入しないものとする。
〔中和工程時におけるカーボンブラックの含有量〕
中和工程時におけるカーボンブラックの含有量は、画像濃度及び帯電性の観点から、樹脂成分の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは13質量部以下、更に好ましくは11質量部以下、より更に好ましくは9質量部以下である。
〔アルカリ〕
アルカリ水溶液中のアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;アンモニア、アミン等を用いることができる。これらの中でも、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる1種以上、より好ましくは水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。
アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、生産性及び樹脂粒子分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
また、アルカリ水溶液のpHは、生産性及び樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下である。アルカリは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
〔界面活性剤〕
本発明における樹脂粒子の分散液は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは非イオン性界面活性剤、より好ましくは非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤の併用、更に好ましくは非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の併用である。
非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を併用する場合、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との質量比〔非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤〕は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.6以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1以下である。
非イオン性界面活性剤としては、好ましくはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマーである。
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル類の具体例としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類の具体例としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコ−ルモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくはポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル類、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテルである。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アニオン性界面活性剤としては、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩である。塩の種類としては、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩である。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はラウリルエーテル硫酸ナトリウム、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。これらのアニオン性界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カチオン性界面活性剤としては、好ましくは四級アンモニウム塩である。四級アンモニウム塩の具体例としては、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の含有量は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは2質量部以上であり、トナーの耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
〔溶融条件〕
中和工程における溶融温度は、樹脂を溶融し各成分均一に混合することができる温度であれば特に限定されないが、樹脂同士を微細に混合させ、画像濃度と帯電性を両立させる観点から、非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点より高い温度が好ましい。具体的には、非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点より、好ましくは5℃高い温度以上、より好ましくは10℃高い温度以上、更に好ましくは15℃高い温度以上であり、そして、好ましくは50℃高い温度以下、より好ましくは40℃高い温度以下、更に好ましくは35℃高い温度以下である。
(転相工程)
次に、前記中和後の樹脂混合物に水系媒体を徐々に添加して、転相し、樹脂粒子の分散液を得る。
水系媒体を添加する際の温度は、均質な樹脂粒子を得る観点から、非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点以上、かつ、水系媒体に含まれる最も沸点の低い溶媒の沸点未満の温度が好ましい。
(水系媒体の添加速度)
水系媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子を得る観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部/分以上、より好ましくは0.1質量部/分以上、更に好ましくは0.3質量部/分以上、より更に好ましくは0.5質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは10質量部/分以下、より更に好ましくは5質量部/分以下である。転相後、樹脂粒子が得られた後の水系媒体の添加速度には制限はない。
(水系媒体の使用量)
水系媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは170質量部以上であり、そして、好ましくは900質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である。
(架橋処理)
転相後は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂を架橋することが好ましい。
ポリエステル樹脂の架橋は、オキサゾリン基を有する化合物により行うことができる。
オキサゾリン基を有する化合物としては、ポリエステル樹脂との反応性の観点から、好ましくは分子内にオキサゾリン基を複数含有するもの、より好ましくはオキサゾリン基を含有するポリマーである。
オキサゾリン基を含有するポリマーの数平均分子量は、ポリエステルとの反応性を高める観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下である。
オキサゾリン基を含有するポリマーの市販品としては、(株)日本触媒製の「エポクロスWSシリーズ」(水溶性タイプ、主鎖アクリル)、「Kシリーズ」(エマルションタイプ、主鎖スチレン/アクリル)等が挙げられる。
前記オキサゾリン基を有する化合物の含有量あるいは添加量は、樹脂との架橋反応性を高め、生産性を向上させる観点から、樹脂粒子を構成する樹脂の総量100質量部に対して、固形分として好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.4質量部以上、より更に好ましくは0.6質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下である。
前記架橋反応は、樹脂粒子の分散液に、オキサゾリン基を有する化合物を添加し、加熱混合することにより行うことができる。
架橋反応時の温度は、反応性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは96℃以下である。なお、架橋の存在は、赤外吸収スペクトル分析等でアミド基の存在を分析することにより確認できる。
(樹脂粒子の分散液の固形分濃度)
工程(1)によって得られる樹脂粒子の分散液の固形分濃度は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点、取扱いを容易にする観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。なお、固形分は樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
(樹脂粒子の体積中位粒径)
樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質のトナーを得る観点から、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.08μm以上、より更に好ましくは0.10μm以上であり、そして、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.7μm以下、より更に好ましくは0.4μm以下である。
なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径であり、具体的には実施例記載の方法によって求められる。
また、樹脂粒子の粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、経済性及び製造容易性の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは32%以下である。なお、樹脂粒子のCV値は、下記式で表される値であり、具体的には実施例記載の方法によって求められる。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)]×100
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られた樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子を凝集(以下「凝集工程」ともいう)させた後、融着(以下「融着工程」ともいう)する工程である。
(凝集工程)
凝集工程は、工程(1)で得られた樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を得る工程である。
本工程においては、トナーの画像濃度及び帯電性を向上させる観点から、樹脂粒子と共に、離型剤粒子、凝集剤、及びその他の任意成分を水系媒体中で混合して凝集させて、凝集粒子を分散液として得ることが好ましい。
〔離型剤粒子〕
前記離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散して離型剤粒子の分散液として得ることが好ましい。
離型剤粒子中の離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン;加熱により軟化点を有するシリコーンワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、得られるトナーの離型性、低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、パラフィンワックス及びカルナウバワックスが好ましい。これらの離型剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができ、2種以上を併用することが好ましい。これらの中でも、得られるトナーの離型性、低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは植物系ワックス及び鉱物系又は石油系ワックスの併用、より好ましくはパラフィンワックス及びカルナウバワックスの併用である。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは73℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、より更に好ましくは85℃以下である。
なお、離型剤の融点は、実施例記載の方法によって求められる。
離型剤の使用量は、トナーの離型性、低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、トナー中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
離型剤粒子は、離型剤を水系媒体中に分散して離型剤粒子の分散液として得ることが好ましい。離型剤粒子の分散液は、離型剤を水系媒体中、界面活性剤の存在下、離型剤の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。
分散機としては、低温定着性及び画像濃度の観点から、好ましくはホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機、より好ましくは超音波分散機である。分散時間は用いる分散機により適宜設定すればよい。
超音波分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザーが挙げられ、市販される装置としては「US−600T」(日本精機(株)製)が挙げられる。
また、前記分散機を使用する前に、離型剤、水系媒体、及び任意で用いられる界面活性剤を、予めホモミキサー、ボールミル等の混合機で予備分散させておくことが好ましい。
水系媒体としては前記樹脂粒子の分散液の製造方法に用いられるものと同様のものを好適に用いることができる。
離型剤粒子の水系媒体への分散は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、及び後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
離型剤粒子の製造に用いる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、離型剤粒子と樹脂粒子の凝集性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、好ましくは親水基としてカルボキシ基を有する界面活性剤、より好ましくはポリカルボン酸塩である。
ポリカルボン酸塩としては、トナー作製時の離型剤粒子の凝集性の向上及び遊離を防止する観点から、好ましくはポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体の塩、ポリマレイン酸塩、より好ましくはアクリル酸−マレイン酸共重合体の塩である。塩としては、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。これらの界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
ポリカルボン酸塩の重量平均分子量は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは1万以上であり、そして、好ましくは9万以下、より好ましくは5万以下、更に好ましくは3万以下である。
ポリカルボン酸塩の市販品としては、花王(株)製の「ポイズ530」(ポリアクリル酸ナトリウム水溶液、重量平均分子量38,000、有効濃度40質量%)、「ポイズ521」(アクリル酸ナトリウム−マレイン酸ナトリウム共重合体水溶液、重量平均分子量2万、有効濃度40質量%)等が挙げられる。
離型剤分散液中の界面活性剤の含有量は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
また、同様の観点から、離型剤分散液中の界面活性剤の含有量は、離型剤合計量100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点、得られるトナーの耐久性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.6μm以下である。
離型剤粒子のCV値は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点、得られるトナーの耐久性を向上させる観点及び帯電性を向上させる観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上であり、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。
離型剤粒子分散液の固形分濃度は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、取扱いを容易にする観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
〔凝集剤〕
凝集剤としては、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が用いられる。
無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくは無機アンモニウム塩、より好ましくは硫酸アンモニウムである。
〔凝集粒子の製造〕
凝集工程においては、まず、樹脂粒子及び離型剤粒子を水系媒体中で混合して、混合分散液を得る。
また、本工程において、工程(1)で得られた樹脂粒子以外の樹脂粒子を混合してもよく、工程(1)で得られた樹脂粒子以外の樹脂粒子としては、非晶質ポリエステル(a)を含む樹脂粒子が好ましい。
混合の順に制限はなく、いずれかを順に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
混合分散液中の樹脂粒子の含有量は、トナーの低温定着性及び生産性を向上させる観点から、樹脂粒子及び離型剤粒子を含む混合分散液100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、より更に好ましくは20質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下、より更に好ましくは30質量部以下である。
混合分散液中の水系媒体の含有量は、樹脂粒子及び離型剤粒子を含む混合分散液100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは65質量部以上、より更に好ましくは70質量部以上であり、そして、好ましくは95質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、より更に好ましくは80質量部以下である。
離型剤粒子の含有量は、トナーの離型性、低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは13質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
混合温度は、凝集を制御して目的の粒径の凝集粒子を得る観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
次に、上記で得られた混合分散液に凝集剤を添加することにより粒子を凝集させて、凝集粒子の分散液を得る。
凝集剤の使用量は、樹脂粒子の凝集性を向上させる観点から、樹脂粒子を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
凝集の方法としては、混合分散液の入った容器に、凝集剤を好ましくは水溶液として添加する。凝集剤は一時に添加してもよいし、断続的あるいは連続的に添加してもよいが、連続的に添加するのが好ましく、添加時及び添加終了後には、十分な撹拌を行うことが好ましい。
凝集剤の添加時間は、凝集を制御して目的の粒径の凝集粒子を得る観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは5分以上、より更に好ましくは7分以上であり、そして、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは15分以下である。
また、添加温度は、凝集を制御して目的の粒径の凝集粒子を得る観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
凝集剤を添加した後の凝集系内の温度は、凝集粒子の粒径を制御し粗大粒子の生成を抑制する観点から、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移点より、好ましくは25℃低い温度以上、より好ましくは20℃低い温度以上、更に好ましくは15℃低い温度以上であり、そして、好ましくは30℃高い温度以下、より好ましくは25℃高い温度以下、更に好ましくは20℃高い温度以下である。前記温度範囲にて、凝集粒子の体積中位粒径(D50)をモニタリングすることによって、凝集の進行を確認することが好ましい。体積中位粒径(D50)の測定は実施例記載の方法によって求められる。
〔凝集粒子の体積中位粒径〕
凝集粒子の体積中位粒径(D50)は、トナー粒子を小粒径化する観点及びトナー飛散を抑制する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
また、CV値は、凝集粒子の分散液の生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、トナーの離型性、低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは25%以下である。
(融着工程)
融着工程は、前記凝集工程で得られた凝集粒子を融着させて、融着粒子を得る工程である。本工程では、前記凝集工程で得られた凝集粒子中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、融着粒子が形成される。
〔融着条件〕
融着工程における保持温度は、凝集粒子の融着性を向上させる観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点より5℃低い温度以上、より好ましくはガラス転移点以上、更に好ましくはガラス転移点より5℃高い温度以上であり、そして、好ましくは非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点より60℃高い温度以下、より好ましくは50℃高い温度以下、更に好ましくは40℃高い温度以下、より更に好ましくは30℃高い温度以下である。
融着工程における保持時間は、凝集粒子の融着性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点、並びにトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは0.2時間以上、より好ましくは0.4時間以上、更に好ましくは0.6時間以上、より更に好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、更に好ましくは6時間以下、より更に好ましくは2時間以下である。
〔融着粒子の体積中位粒径〕
本工程で得られる融着粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
なお、本工程で得られる融着粒子の体積中位粒径は、凝集粒子の体積中位粒径以下であることが好ましい。すなわち、本工程において、融着粒子同士の凝集、融着が生じないことが好ましい。
<後処理工程>
本発明においては、融着工程の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子を得ることが好ましい。
融着工程で得られた融着粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、従来公知の方法を用いることができるが、遠心分離法、加圧分離法、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
また、前記固液分離後には、洗浄を行うことが好ましい。樹脂粒子の製造の際に界面活性剤を用いた場合、添加した界面活性剤も除去することが好ましく、水系媒体により洗浄することが好ましい。添加した界面活性剤が非イオン性界面活性剤の場合には、非イオン性界面活性剤の曇点以下で水系媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に、乾燥を行うことが好ましいが、乾燥時の温度は、融着粒子自体の温度が、融着粒子を構成する非晶質ポリエステル(a)のガラス転移点より、好ましくは5℃低い温度以下、より好ましくは10℃低い温度以下、更に好ましくは15℃低い温度以下である。乾燥方法としては、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等を用いることが好ましい。
本発明の製造方法によって得られた電子写真用黒色トナーは、前記トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、任意の微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカ、ポリマー微粒子が好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、外添剤による処理前のトナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
[電子写真用黒色トナー]
本発明の電子写真用黒色トナーは、本発明の製造方法により得られる、電子写真用黒色トナーである。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、トナーの画質を向上させる観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、より更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下、より更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、トナーの画質を向上させる観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは25%以下である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値は、実施例記載の方法によって求められる。
トナー(粒子)の円形度は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは0.965以上、より好ましくは0.968以上、更に好ましくは0.970以上である。また、同様の観点から、トナー(粒子)の円形度は、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.988以下、更に好ましくは0.986以下である。
トナー粒子の軟化点は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
本発明により得られる電子写真用黒色トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
ポリエステル、樹脂粒子、トナー等の各性状値は次の方法により測定、評価した。
[ポリエステルの軟化点、吸熱の最大ピーク温度、ガラス転移点及び融点、結晶性指数]
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱の最大ピーク温度、ガラス転移点及び融点
示差走査熱量計「Pyris 6 DSC」(PerkinElmer社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度50℃/minで0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/minで測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)とした。結晶性ポリエステルの時には該ピーク温度を融点とした。また、非晶質ポリエステルの場合に吸熱ピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移点とした。
(3)結晶性指数
示差走査熱量計「Pyris 6 DSC」(PerkinElmer社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温した。観測されるピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度(2)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(2)(℃))により、結晶性指数を求めた。
[ポリエステルの酸価]
JIS K0070に従って測定した。但し、測定溶媒はクロロホルムとした。
[ポリエステルの数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、ポリエステルをクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP−200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量分布測定
溶解液としてクロロホルムを1ml/minの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の分子量は、予め作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量))を標準試料として作製したものを用いた。なお測定装置等は下記の通りである。
・測定装置:CO−8010(東ソー(株)製)
・分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも東ソー(株)製)
[離型剤の融点]
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて20℃から昇温速度10℃/minで測定し、最大ピーク温度を融点とした。
[離型剤粒子、樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及び粒度分布]
・測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」((株)堀場製作所製)
・測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で測定し、相対屈折率1.2にて、体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径(Dv)を算出した。
また、粒度分布として、CV値(%)を、前記粒径測定機で表示される体積平均粒径(Dv)と標準偏差から下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径(Dv))×100
[樹脂粒子の分散液、離型剤粒子分散液の固形分濃度]
赤外線水分計「FD−230」((株)ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5min/変動幅0.05%)にて、水分%を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:乾燥前の試料質量(初期試料質量)
0:乾燥後の試料質量(絶対乾燥質量)
[カーボンブラックのpH、BET比表面積、DBP吸油量]
カーボンブラックのpHは、20質量%のカーボンブラックの水溶性懸濁液或いは泥状物を調製し、JIS Z8820の方法により測定した。
また、カーボンブラックの比表面積はJIS K6217−2、DBP吸油量はISO1126(JIS K6217−4)に準拠して測定した。
[アルカリ水溶液のpH]
アルカリ水溶液のpHは、pHメーター(メトラー社製)SG2を用いて、自動終点モード、自動温度補償条件下で測定した。
[トナーの体積中位粒径(D50)、及び粒度分布]
トナーの体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザーIIIバージョン3.51」(ベックマンコールター社製)
・電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王(株)製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mlにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mlに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
また、粒度分布として、CV値(%)を、前記解析ソフトで表示される体積平均粒径(Dv)と標準偏差から下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径(Dv))×100
[トナー粒子のBET比表面積]
「Micromeritics FlowSorbIII」(((株))島津製作所製)を用いて、下記条件で窒素吸着によるBET多点法により、BET比表面積を測定した。
・トナーサンプル量:0.09〜0.11g
・脱気条件:40℃、10分間
・吸着ガス:窒素ガス
[トナーの円形度]
・分散液の調製:トナーの分散液は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王(株)製、HLB:13.6)の5質量%水溶液5mlにトナー50mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させた後、蒸留水20mlを添加し、さらに超音波分散機にて1分間分散させて調製した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス(株)製)
・測定モード:HPF測定モード
[画像濃度]
上質紙(富士ゼロックス(株)製、J紙A4サイズ)に市販のプリンタ((株)沖データ製、商品名:MicroLine5400)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42〜0.48mg/cm2となるベタ画像を出力し、印刷物を得た。
印刷物の下に上質紙((株)沖データ製、エクセレントホワイト紙A4サイズ)を30枚敷き、出力した印刷物のベタ画像部分の反射画像濃度を、測色計(商品名:SpectroEye,Gretag−Macbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて、画像上の任意の3点を測定した値を平均し画像濃度とした。画像濃度の値が大きいほど、画像濃度に優れる。
[帯電量(NN帯電量)]
気温25℃、相対湿度50%にてトナー2.1gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業(株)製、平均粒子径:40μm)27.9gとを50mlの円筒形ポリプロピレン製ボトル((株)ニッコー製)に入れ、縦横に10回ずつ振り、その後、ボールミルを用いて混合時間が10分間における帯電量を、q/mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。該帯電量を「常温常湿度下での帯電量(NN帯電量)」とした。帯電量の絶対値が高いほど、帯電性が良好である。
なお測定機器、設定等は下記の通りである。
・測定機器:EPPING社製 q/m−meter
・設定:メッシュサイズ:635メッシュ(目開き:24μm、ステンレス製)
ソフトブロー、ブロー圧(600V)
・吸引時間:90秒
・帯電量(μC/g)=90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)
[最低定着温度]
上質紙(富士ゼロックス(株)製、J紙A4サイズ)に市販のプリンタ((株)沖データ製、商品名:Microline5400)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42〜0.48mg/cm2となるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を90℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度で定着し、印刷物を得た。
同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ上げて、定着し、印刷物を得た。
印刷物の画像上の上端の余白部分に、メンディングテープ(3M社製、商品名:Scotchメンディングテープ810、幅18mm)を長さ50mmに切ったものを軽く貼り付けた後、500gのおもりを載せ、速さ10mm/秒で1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180度、速さ10mm/秒で剥がし、テープ剥離後の印刷物を得た。テープ貼付前及び剥離後の印刷物の下に上質紙((株)沖データ製、エクセレントホワイト紙A4サイズ)を30枚敷き、各印刷物のテープ貼付前及び剥離後の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計(GretagMacbeth社製、商品名:SpectroEye、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、下記の式で定着率を算出した。
定着率=(テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100
定着率が90%以上となる温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
[ポリエステルの製造]
製造例1
(結晶性ポリエステルX1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,9−ノナンジオール3936g、セバシン酸4848gを入れた。撹拌しながら、140℃に昇温し、140℃で3時間維持した後、140℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫50gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて4時間維持し、結晶性ポリエステルX1を得た。物性を表1に示す。
製造例2
(非晶質ポリエステルY1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3374g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン33g、テレフタル酸672g及び酸化ジブチル錫10gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、5時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸696g、tert−ブチルカテコール0.49gを加え、210℃の温度下で5時間維持した後に、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて4時間維持させて、ポリエステル樹脂Y1を得た。物性を表1に示す。
製造例3
(非晶質ポリエステルY2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3528g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1404g、テレフタル酸1248g、ドデセニルコハク酸無水物1541g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で6時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物300gを入れ、215℃で1時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて3時間維持させて、非晶質ポリエステルY2を得た。物性を表1に示す。
製造例4
(非晶質ポリエステルY3の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4090g、フマル酸1413g、tert−ブチルカテコール0.50g、及び酸化ジブチル錫15gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で5時間維持した後、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が100℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル樹脂Y3を得た。物性を表1に示す。
Figure 2015125408
製造例5
(マスターバッチA1の製造)
非晶質ポリエステルY3の微粉末1400g、カーボンブラック「CSX921」(キャボット社製)600gをヘンシェルミキサーを用いて1500r/minの攪拌回転数で1分間混合した後、二軸型連続混練機「PCM−30」((株)池貝製)を用いてフィード量10kg/hr、200r/min、混練温度100℃で溶融混練し、得られた混練物を冷却ベルトにて冷却後、2mmφのスクリーンを有するミルにて粗砕してマスターバッチA1を得た。
製造例6〜10
(マスターバッチA2〜A6の製造)
製造例5において、使用するカーボンブラックを表2に記載のものに変更した以外は、製造例5と同様の方法により、マスターバッチA2〜A6を得た。使用したカーボンブラックの物性を表2に示す。
Figure 2015125408
[樹脂粒子の製造]
製造例11
(樹脂粒子の分散液Em−1の製造)
(1)中和工程
撹拌機を装備したフラスコに、非晶質ポリエステルY1 285g、非晶質ポリエステルY2 210g、マスターバッチA2 150g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)8.5g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG−15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)80g、48質量%水酸化カリウム水溶液28.5g、さらに脱イオン水111gを添加(系内の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕=0.32)、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
(2)転相工程
次に、撹拌しながら、脱イオン水1244gを6g/minの速度で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、脱イオン水を加え、固形分濃度を30質量%に調整した後、1800g秤量し、25℃で撹拌しながら、オキサゾリン基含有ポリマー水溶液「エポクロスWS−700」(日本触媒(株)製、固形分25質量%、アクリル主鎖)19g(固形分換算4.75g)を添加し、その後、95℃に温度を上げ95℃で1時間保持した。次に、25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュ(目開き105μm)の金網を通した後、脱イオン水を加えて固形分を28質量%に調整して、樹脂粒子の分散液Em−1を得た。物性を表3に示す。
製造例12〜14(樹脂粒子の分散液Em−2〜4の製造)
製造例11において、使用するマスターバッチ、及び中和工程時の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕を表3に記載のとおりに変更した以外は、製造例11と同様の方法により、樹脂粒子の分散液Em−2〜4を得た。物性を表3に示す。
Figure 2015125408
製造例15
(樹脂粒子の分散液Em−5の製造)
(1)中和工程
撹拌機を装備したフラスコに、結晶性ポリエステルX1 90g、非晶質ポリエステルY3 405g、マスターバッチA2 150g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)8.5g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG−15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)80g、48質量%水酸化カリウム水溶液30.1g、さらに脱イオン水110gを添加(系内の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕=0.32)、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
(2)転相工程
上記で得られた樹脂混合物に対して、製造例11の転相工程と同様の操作を行い、樹脂粒子の分散液Em−5を得た。物性を表4に示す。
製造例16〜24
(樹脂粒子の分散液Em−6〜14の製造)
製造例15において、使用するマスターバッチ及び水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕を表4に記載のとおりに変更した以外は、製造例15と同様の方法により、樹脂粒子の分散液Em−6〜14を得た。物性を表4に示す。
Figure 2015125408
[離型剤粒子の製造]
製造例25
(離型剤粒子分散液W−1の製造)
1リットル容のビーカーで、脱イオン水200gにポリカルボン酸ナトリウム水溶液としてアクリル酸ナトリウム−マレイン酸ナトリウム共重合体水溶液「ポイズ521」(花王(株)製、重量平均分子量2万、有効濃度40質量%)3.8gを溶解させた後、これにカルナウバワックス「カルナウバワックス1号」((株)加藤洋行製、融点83℃)5g及びパラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞(株)製、融点75℃)45gを添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、カルナウバワックスとパラフィンワックスとが一体となって溶融した溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を含んだ水溶液を更に90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US−600T」(日本精機(株)製)で30分間分散処理を行った後に室温まで冷却し、ここに脱イオン水を加え、離型剤固形分20質量%に調整し、離型剤粒子分散液を得た。離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.45μm、CV値は30%であった。
[電子写真用黒色トナーの製造]
実施例1
(黒色トナーAの作製)
(1)凝集工程
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積2リットルの4つ口フラスコに、樹脂粒子の分散液Em−1 300g、脱イオン水28g、及び離型剤粒子分散液W−1 31gを温度25℃下で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム17gを脱イオン水261gに溶解した水溶液を25℃で10分かけて滴下した後、60℃まで昇温し、凝集粒子の体積中位粒径が5.1μmになるまで、60℃で保持し、凝集粒子分散液を得た。
(2)融着工程
凝集粒子分散液に、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)13g、脱イオン水1038gを混合した水溶液を添加した。その後、1.5時間かけて80℃まで昇温し、80℃下で1時間保持して、凝集粒子を融着して融着粒子を得た。
(3)後処理工程
得られた融着粒子分散液を25℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、33℃で乾燥を行って、トナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシールTS720」(キャボット社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのふるいを通過させて黒色トナーAを得た。黒色トナーAの物性及び評価結果を表5に示す。
実施例2、比較例1及び2
(黒色トナーB、C及びDの作製)
実施例1において、樹脂粒子の分散液Em−1を樹脂粒子の分散液Em−2、Em−3、及びEm−4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色トナーB、C及びDを得た。黒色トナーの物性及び評価結果を表5に示す。
実施例3〜6、比較例3〜8
(黒色トナーE、F、G、H、I、J、K、L、M、及びNの作製)
実施例1において、樹脂粒子の分散液Em−1を表6又は表7記載の樹脂粒子の分散液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色トナーE、F、G、H、I、J、K、L、M、及びNを得た。黒色トナーの物性及び評価結果を表6及び表7に示す。
Figure 2015125408
Figure 2015125408
Figure 2015125408
表5〜7から、実施例1〜6の黒色トナーは、比較例1〜8の黒色トナーに比べて、いずれも画像濃度と帯電量に優れることがわかる。

Claims (7)

  1. 次の工程(1)〜(2)
    工程(1):水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られた樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子を凝集させた後、融着する工程
    を有し、工程(1)における中和時の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕が0.20以上0.40以下であり、前記カーボンブラックが、BET比表面積80m2/g以上120m2/g以下、pH6以上9以下、かつDBP吸油量35cm3/100g以上90cm3/100g以下のカーボンブラックである、電子写真用黒色トナーの製造方法。
  2. 工程(1)が、水系媒体中で、非晶質ポリエステル(a)と、結晶性ポリエステル(b)と、カーボンブラックを含有する樹脂とを、アルカリ存在下で中和後に乳化し、樹脂粒子の分散液を得る工程である、請求項1に記載の電子写真用黒色トナーの製造方法。
  3. 工程(1)において、非晶質ポリエステル(a)と結晶性ポリエステル(b)との質量比〔(a)/(b)〕が55/45以上98/2以下である、請求項2に記載の電子写真用黒色トナーの製造方法。
  4. 前記カーボンブラックを含有する樹脂中のカーボンブラックと樹脂との質量比〔カーボンブラック/樹脂〕が10/90以上50/50以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用黒色トナーの製造方法。
  5. 工程(1)におけるアルカリが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる1種以上を含有するpH8以上14以下の水溶液である、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用黒色トナーの製造方法。
  6. 工程(1)における樹脂粒子中のカーボンブラックの含有量が、1質量%以上15質量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用黒色トナーの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる、電子写真用黒色トナー。
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