JP2015125404A - 電子写真用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、トナーには、多様な機能を有することが求められており、例えば、トナーの低温定着性に加え、トナーの保存性も要求されている。近年、トナーは、従来の溶融混練粉砕法に代わり、懸濁重合法や乳化凝集法などのケミカル法により、いわゆるケミカルトナーとして製造されており、コアシェル構造といった構造制御も行われている。
特許文献1には、ポリエステルによるコアシェルトナーの製造方法が開示されており、ポリエステルと反応可能な成分を用いることにより、保存性が良好で非オフセット域が拡張したケミカルトナーを製造する技術が開示されている。一方で、特許文献2には、非オフセット域を拡大しつつ低温定着性を保持するため、オキサゾリン基を有する化合物を用いて粉砕トナーを製造する技術が開示されている。
しかし、特許文献1及び2に示される方法で製造されるトナーでは、低温定着トナーとしては充分とは言えず、さらに低温定着性と保存性との両立が求められる。すなわち、ポリエステルによるケミカルトナーでは製造時の加熱によりコアシェル間で相溶が生じ、その結果、トナー表面のTg低下を引き起こし、保存性が悪化することがあった。一方、粉砕法によるトナーでは、原料を均質に分散することから、保存性を確保するのに必要な表面Tgを考慮した樹脂を用いねばならず、低温定着性に限界があった。
本発明は、優れた耐熱保存性と優れた低温定着性とを両立する電子写真用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
工程(1):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が50℃未満であるポリエステル(a)を含有する樹脂を乳化し、樹脂粒子(A)を得る工程、
工程(2):前記樹脂粒子(A)を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(I)を得る工程、
工程(3):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が55℃以上である非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を、前記凝集粒子(I)の表面に凝集させて、凝集粒子(II)を得る工程、及び、
工程(4):前記凝集粒子(II)を、前記非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度−5℃からガラス転移温度+10℃の範囲に保持して、前記凝集粒子(II)を融着し、コアシェル粒子を得る工程、を有する電子写真用コアシェルトナーの製造方法であって、
前記工程(3)の前に、重量平均分子量が1000以下であり、オキサゾリン基を少なくとも2つ有するオキサゾリン化合物を添加する工程を有し、
前記ポリエステル(a)と前記非晶質ポリエステル(c)とのFedors法による溶解度パラメータ(SP値)の差が0.6以上1.8未満である、電子写真用トナーの製造方法。
本発明の電子写真用トナーの製造方法は、
工程(1):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が50℃未満であるポリエステル(a)を含有する樹脂を乳化し、樹脂粒子(A)を得る工程、
工程(2):前記樹脂粒子(A)を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(I)を得る工程、
工程(3):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が55℃以上である非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を、前記凝集粒子(I)の表面に凝集させて、凝集粒子(II)を得る工程、及び、
工程(4):前記凝集粒子(II)を、前記非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度−5℃からガラス転移温度+10℃の範囲に保持して、前記凝集粒子(II)を融着し、コアシェル粒子を得る工程、を有する電子写真用コアシェルトナーの製造方法であって、
前記工程(3)の前に、重量平均分子量が1000以下であり、オキサゾリン基を少なくとも2つ有するオキサゾリン化合物を添加する工程を有し、
前記ポリエステル(a)と前記非晶質ポリエステル(c)とのFedors法による溶解度パラメータ(SP値)の差が0.6以上1.8未満である。
なお、ポリエステル(a)のFedors法による溶解度パラメータを「SPa」ともいい、非晶質ポリエステル(c)のFedors法による溶解度パラメータを「SPc」と称することがある。さらに、ポリエステル(a)と非晶質ポリエステル(c)とのFedors法による溶解度パラメータの差(|SPa−SPc|)を「△SP」と称することがある。
本発明の電子写真用トナーの製造方法では、水系媒体を用いて、コアを構成する樹脂とシェルを構成する樹脂とを含むコアシェル構造のケミカルトナーを製造する。なお、以下、コアを構成する樹脂を「コア樹脂」、シェルを構成する樹脂を「シェル樹脂」と称することがある。コア樹脂として、Tgが50℃未満のポリエステル(a)を含有する樹脂を用い、トナーを低温定着し易くしつつ、シェル樹脂として、Tgが55℃以上の非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂を用い、トナーの耐熱保存性を高めて、機能分離したトナーを製造する。
従来、コア樹脂及びシェル樹脂として、それぞれ性質の異なるポリエステルを用いると、トナーを製造した後に、コア樹脂とシェル樹脂とが分離することがあった。また、コア樹脂とのシェル樹脂との分離を抑制するために、互いの相溶性を高めると、コア樹脂とシェル樹脂とが一体化して、低温定着性と保存安定性の両立が不十分であった。従って、トナーがコアとシェルの機能を発現し低温定着性と保存安定性の両立するためには、コア樹脂及びシェル樹脂が相溶せず、かつ、コア樹脂とシェル樹脂とが分離しないことが求められる。
このとき、本発明のオキサゾリン化合物を導入した後、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度−5℃からガラス転移温度+10℃の範囲でシェル樹脂を融着することで、コア樹脂及びシェル樹脂に含まれるポリエステルの分子運動を適度に抑えつつ、オキサゾリンとコアシェル間のポリエステルとの反応を進めることができるため、相分離した樹脂同士の化学結合を容易にすると考えられる。
そのため、コア樹脂とシェル樹脂との相分離を維持したまま、コア樹脂とシェル樹脂とを互いに結びつけることができ、トナーが、コアシェル構造を維持すると考えられる。その結果、トナーは、低温溶融し易いコア樹脂が、耐熱保存性に優れるシェル樹脂で保護されたコアシェル構造を維持し、優れた耐熱保存性と優れた低温定着性を両立することができると考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分及び工程等について説明する。
工程(1)は、少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が50℃未満であるポリエステル(a)を含有する樹脂を乳化し、樹脂粒子(A)を得る。
ポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化は、公知の方法で行えばよい。
例えば、ポリエステル(a)を含有する樹脂と塩基性水溶液とを混合して樹脂中和物を得る工程と、得られた樹脂中和物に水系媒体を添加して、樹脂中和物を乳化し、樹脂粒子分散液を得る工程により、ポリエステル(a)を含有する樹脂を乳化し、樹脂粒子(A)分散液を得ることができる。
樹脂粒子(A)は、ポリエステル(a)を含有する樹脂以外に、例えば、着色剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
ポリエステル(a)は、少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が50℃未満である。
ポリエステル(a)が酸基を有することで、ポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化を容易にし、樹脂粒子(A)の分散安定性を高める。酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられ、樹脂の分散安定性と得られるトナーの耐熱保存性とを両立させる観点から、カルボキシ基が好ましい。
本明細書における「溶解度パラメータ値(SP値)」とは、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors,Polymer Engineering and Science,14,147-154(1974)〕により、下記の式に基づいて求められた値δである。
Fedorsの式: δ =(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
〔単位:(cal/cm3)1/2〕
〔ここで、Δei:原子及び原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)、Δvi:モル体積(cm3/mol)である。〕
ポリエステル(a)のFedors法による溶解度パラメータSPaと非晶質ポリエステル(c)のFedors法による溶解度パラメータSPcとの差(△SP)を0.6以上とすることで、ポリエステル(a)を含有する樹脂と、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂との相溶を抑制し、相分離状態を保つことができる。また、ポリエステル(a)を含有する樹脂のTgと、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂のTgが離れ易くなる。ポリエステル(a)を含有する樹脂はコアシェルトナーのコア樹脂として機能し、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂はシェル樹脂として機能し得る。そのため、コアシェル構造による機能分離を十分に果たすことができ、トナーの耐熱保存性を発現することができる。
△SPを1.8未満とすることで、ポリエステル(a)を含有する樹脂と、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂との相分離状態を保ちつつも、若干の相互拡散する余地を残すため、コア樹脂からシェル樹脂が剥がれる等のコアシェル構造の損壊を抑制することができる。
ポリエステル(a)と非晶質ポリエステル(c)の組合せにより異なるが、SPaは、低温定着に有効なポリエステル(a)の合成のし易さの観点から、好ましくは8.0以上、より好ましくは9.0以上、更に好ましくは10.0以上である。SPaの上限は、同様の観点から、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.5以下、更に好ましくは11.0以下である。
カルボン酸成分の好ましい具体例としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び、多価カルボン酸、並びに、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。中でも低温定着性を向上させる観点から、アルケニルコハク酸が好ましい。アルケニルコハク酸のアルケニル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。アルケニルコハク酸としては、ドデセニルコハク酸及びその酸無水物が好ましい。
多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸が挙げられる。
これらの中では、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸並びにそれらの酸無水物、より好ましくはフマル酸、アルケニルコハク酸、フタル酸、及びイソフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種、更に好ましくはフマル酸、アルケニルコハク酸及びイソフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種である。保存性と低温定着性の観点からアルケニルコハク酸および、イソフタル酸またはテレフタル酸を用いることが特に好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸及びその酸無水物と、芳香族ジカルボン酸及びその酸無水物との合計100モル%中の芳香族ジカルボン酸及びその酸無水物の割合は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは60モル%未満、より好ましくは57モル%以下、更に好ましくは55モル%以下であり、また、好ましくは40モル%以上である。
また、同様の観点から、これら低分子量の脂肪族ジオール、好ましくは1,2−プロパンジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは実質的に100モル%、更に好ましくは100モル%である。
ポリエステル(a)におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化を容易にし、分散安定性を高める観点から、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上であり、また、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下である。
ポリエステル(a)の軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
ポリエステル(a)の水酸基価は、樹脂粒子(A)の分散液中の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、また、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
ポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化には、塩基性水溶液を用いることが好ましい。
塩基性水溶液のpHは、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、8.5以上であり、好ましくは9.0以上、より好ましくは10.0以上、更に好ましくは11.0以上、より更に好ましくは12.0以上である。また、同様の観点から、13.5以下であり、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.8以下、更に好ましくは12.5以下である。
無機塩基化合物としては、カリウム、ナトリウム、リチウムといったアルカリ金属の水酸化物のほか、炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられ、その具体例として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。有機塩基としては、アンモニアのほか、ジエチルエタノールアミンといったアルカノールアミンが挙げられる。
中でも、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
また、中和の反応効率を落とさずに塩基性水溶液のpHを制御する観点から、強塩基と弱酸を混合することで得られる緩衝溶液を用いることが好ましく、水酸化カリウム及びリン酸を混合することで得られる緩衝溶液が好ましい。
樹脂粒子(A)分散液の中和度は、実施例に記載の方法で算出することができる。
ポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化には、ポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化を容易にし、樹脂粒子(A)の分散安定性を高める観点から、界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、樹脂粒子(A)の分散安定性を向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤を併用することがより好ましく、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを併用することが更に好ましい。
ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを併用する場合、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との質量比(ノニオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤)は、樹脂粒子(A)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルとしては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が挙げられる。
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。アルキル硫酸塩としては、ドデシル硫酸のアルカリ金属塩が好ましく、ドデシル硫酸ナトリウムがより好ましい。アルキルエーテル硫酸塩としては、ドデシルエーテル硫酸のアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルエーテル硫酸ナトリウムがより好ましい。
着色剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に用いられる着色剤としては、顔料及び染料が挙げられ、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。
シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましく、マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料の例としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂中和物には、本発明の効果を損なわない範囲で有機溶媒を含有してもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1以上5以下の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキル基の炭素数が1以上3以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等が挙げられる。
樹脂中和物中における有機溶媒の含有量は、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%、より更に好ましくは0質量%である。
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂粒子(A)の分散安定性を高める観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは実質的に100質量%、より更に好ましくは100質量%である。水は、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1以上5以下の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキル基の炭素数が1以上3以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。
水系媒体の使用量は、トナーの生産性を向上させる観点から、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上であり、また、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1000質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
ここで、体積中位粒径(D50)は、実施例に記載の方法で求められる。
また、樹脂粒子(A)の粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、高画質のトナーを得る観点から好ましくは30%以下、より好ましくは26%以下、更に好ましくは24%以下、より更に好ましくは22%以下、より更に好ましくは20%以下であり、経済性、製造容易性の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。なお、CV値は、実施例に記載の方法で求められる。
工程(2)は、工程(1)で得られた樹脂粒子(A)を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(I)を得る工程である。
樹脂粒子(A)を含む樹脂粒子分散液を凝集させる際に、離型剤を含有する離型剤粒子、荷電制御剤を含有する荷電制御剤粒子、着色剤を含有する着色剤粒子等を一緒に凝集させてもよい。
着色剤は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、樹脂粒子(A)に含有させることが好ましい。また、トナーの低温定着性及び高温オフセット性を向上させる観点から、離型剤粒子を樹脂粒子(A)と共に凝集させることが好ましい。
離型剤粒子の製造にあたっては、離型剤粒子の凝集を抑制する観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を使用する場合の含有量は、離型剤粒子の凝集を抑制する観点から、離型剤100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、また、トナーの帯電性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
離型剤粒子の体積中位粒径は、トナーの帯電安定性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上であり、また、好ましくは1000nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
離型剤粒子のCV値は、高画質のトナーを得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下であり、また、生産性を向上させる観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン;シリコーンワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;鉱物又は石油系ワックス;エステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。
植物系ワックスとしては、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、カルナウバワックスが好ましい。
鉱物又は石油系ワックスとしては、モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、パラフィンワックスが好ましい。
これらの離型剤は、単独で又は2種以上を併用することができ、2種以上を併用することが好ましい。
本発明において、離型剤の融点は、実施例記載の方法によって求められる。2種以上併用する場合、融点は、得られるトナーに含有される離型剤中、最も質量比の大きい離型剤の融点を、本発明における離型剤の融点とする。なお、全てが同一の比率の場合は、最も低い値とする。
離型剤粒子の水系媒体への分散は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、及び後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
界面活性剤としては、離型剤の分散安定性を向上させる観点及び樹脂粒子(A)との凝集性を向上させる観点から、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、アニオン性界面活性剤が好ましく、カルボン酸塩がより好ましく、ポリカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩が更に好ましい。
界面活性剤の使用量は、離型剤の分散安定性を向上させる観点から、離型剤100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、また、樹脂粒子(A)との凝集性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散して離型剤粒子の分散液として得ることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、離型剤と水系媒体とを、界面活性剤の存在下、離型剤の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。用いる分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
工程(2)で用いる水系媒体の好ましい態様は、工程(1)におけるポリエステル(a)を含有する樹脂を乳化する際に用いる水系媒体と同様である。
離型剤粒子の分散液の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点及び樹脂粒子(A)分散液の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。なお、固形分は、離型剤、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
混合の順に制限はなく、いずれかを順に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
水系媒体は、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子(I)を得る観点から、混合分散液中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、また、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
離型剤粒子は、トナーの離型性及び低温定着性を向上させる観点から、樹脂粒子(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
混合温度は、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子(I)を得る観点から、0℃以上40℃以下が好ましい。
凝集剤は、過剰な凝集を防ぎつつ、所望の粒径のトナーを得る観点から、電解質であることが好ましく、塩であることがより好ましい。
凝集剤としては、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤、及び無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が用いられる。トナーの帯電安定性を向上させる観点から、無機系凝集剤が好ましく、無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましい。
無機系凝集剤のカチオンの価数は、過剰な凝集を防ぎつつ、所望の粒径のトナーを得る観点から、好ましくは1価以上5価以下、より好ましくは1価以上2価以下、更に好ましくは1価である。
無機系凝集剤の1価のカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、アンモニウムが好ましい。
無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。
無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
凝集剤としては、硫酸アンモニウムがより好ましい。
凝集剤は、樹脂粒子(A)の凝集を制御して所望の粒径を得る観点から、水溶液として、滴下することが好ましい。凝集剤の水溶液の濃度は、樹脂粒子(A)の凝集を制御して所望の粒径を得る観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
凝集剤の滴下時間は、凝集を制御して所望の粒径を得る観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは3分以上であり、また、トナーの生産性を向上する観点から、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは10分以下である。
また、凝集剤を滴下する温度は、トナーの生産性を向上する観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、また、凝集を制御して所望の粒径を得る観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
更に、凝集を促進させ、所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子(I)を得る観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。維持する温度としては、50℃以上70℃以下が好ましい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂粒子(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、また、凝集停止剤のトナーへの残留を低減し、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。凝集停止剤は、生産性を向上させる観点から、水溶液で添加することが好ましい。
また、CV値は、高画質のトナーを得る観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは25%以下である。
工程(3)は、少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が55℃以上である非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を、工程(2)で得られた凝集粒子(I)の表面に凝集させて、凝集粒子(II)を得る工程である。
非晶質ポリエステル(c)は、少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度(Tg)が55℃以上であり、かつ、非晶質のポリエステルであれば特に制限されない。
ここで、ポリエステルが非晶質であるとは、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される結晶性指数が、1.4を超える、又は0.6未満である。
非晶質ポリエステル(c)の結晶性指数は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは0.6未満又は1.4を超え4以下、より好ましくは0.6未満又は1.5以上4以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上3以下、より更に好ましくは0.6未満又は1.5以上2以下である。ポリエステルの結晶性指数は、原料モノマーの種類とその比率、反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜決定することができる。
ポリエステル(a)と非晶質ポリエステル(c)の組合せにより異なるが、SPcは、非晶質ポリエステル(c)の合成のし易さの観点から、好ましくは9.0以上、より好ましくは10.0以上、更に好ましくは11.0以上である。SPcの上限は、同様の観点から、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.5以下、更に好ましくは12.0以下である。
非晶質ポリエステル(c)は、カルボン酸成分とアルコール成分とを、必要に応じてエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは180℃以上250℃以下で重縮合させることによって製造することができる。
中でも、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸並びにそれらの酸無水物、より好ましくはフマル酸、フタル酸、及びテレフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種、更に好ましくはフマル酸、及びテレフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種である。
また、脂肪族ジカルボン酸及びその酸無水物と、芳香族ジカルボン酸及びその酸無水物との合計100モル%中の芳香族ジカルボン酸及びその酸無水物の割合は、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは64モル%以上、更に好ましくは68モル%以上であり、また、好ましくは80モル%以下である。
非晶質ポリエステル(c)は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、テレフタル酸及びその酸無水物の少なくとも一方を含むカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られるポリエステルであることが好ましい。
非晶質ポリエステル(c)におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応、反応に用い得るエステル化触媒及びエステル化触媒の態様は、ポリエステル(a)と同様であり、好ましい態様も同様である。
非晶質ポリエステル(c)の軟化点は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
非晶質ポリエステル(c)の水酸基価は、樹脂粒子(C)の分散液中の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは15mgKOH/g以上、更に好ましくは20mgKOH/g以上であり、また、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
樹脂粒子(C)は、非晶質ポリエステル(c)とともに、更に、通常トナーに用いられる公知の樹脂、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を含有してもよい。
樹脂粒子(C)は、樹脂粒子(A)の製造方法と同様の方法によって得ることができるが、用いられる塩基性水溶液、界面活性剤、水系媒体も同様のものを好適に用いることができる。
また、樹脂粒子(C)の粒度分布の変動係数(CV値)(%)は、高画質のトナーを得る観点から、40%以下であることが好ましく、37%以下がより好ましく、34%以下が更に好ましく、31%以下がより更に好ましく、経済性、製造容易性の観点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。樹脂粒子(C)の体積中位粒径及びCV値は、樹脂粒子(A)と同様の方法で求められ、具体的には実施例記載の方法で求められる。
凝集粒子(I)分散液に樹脂粒子(C)分散液を添加するときには、凝集粒子(I)に樹脂粒子(C)を効率的に凝集させるために、前記凝集剤を用いてもよい。
凝集粒子(I)分散液に樹脂粒子(C)分散液を添加する場合の好ましい添加方法としては、凝集剤と樹脂粒子(C)分散液とを同時に添加する方法、凝集剤と樹脂粒子(C)分散液とを交互に添加する方法、凝集粒子(I)分散液の温度を徐々に上げながら、樹脂粒子(C)分散液を添加する方法が挙げられる。このようにすることで、凝集剤濃度低下による凝集粒子(I)及び樹脂粒子(C)の凝集性の低下を防ぐことができる。トナーの生産性を向上させる観点及び製造を簡便に行う観点から、凝集粒子(I)分散液の温度を徐々に上げながら、樹脂粒子(C)分散液を添加することが好ましい。
本発明では、工程(3)の前に、重量平均分子量が1000以下であり、オキサゾリン基を少なくとも2つ有するオキサゾリン化合物(本発明のオキサゾリン化合物)を添加する工程を有する。
かかる工程を有することで、コア樹脂として機能するポリエステル(a)を含有する樹脂と、シェル樹脂として機能する非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂とを化学結合により結び合わせる。相分離した樹脂同士を化学的に結合することにより、トナーのコアシェル構造を安定して維持することができる。
本発明のオキサゾリン化合物の添加時期は、工程(1)中、工程(1)後かつ工程(2)よりも前、工程(2)中、又は、工程(2)後かつ工程(3)よりも前であり、いずれかの添加時期のみに添加してもよいし、複数の添加時期にそれぞれ添加してもよい。
中でも、トナーのコアシェル構造を維持し易くする観点から、本発明のオキサゾリン化合物の添加時期は、好ましくは工程(2)の前、又は工程(1)中、更に好ましくは工程(1)中かつポリエステル(a)を含有する樹脂の乳化後である。
中でも、ポリエステルの酸基との反応性及びトナーのコアシェル構造を維持する観点から、好ましくは2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、及び2,2′−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)であり、より好ましくは2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)、及び、2,2′−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)であり、更に好ましくは2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)である。
本発明のオキサゾリン化合物の重量平均分子量(Mw)は、1000以下であれば特に制限されないが、ポリエステルの酸基との反応性及びトナーのコアシェル構造を維持する観点から、好ましくは600以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは250以下である。なお、オキサゾリン基を2つ有するオキサゾリン化合物の最小の重量分子量は、140〔2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)〕である。
Oxz当量が0.02当量(Eq)以上であることで、オキサゾリン基と、ポリエステル(a)中の酸基及び後に添加される非晶質ポリエステル(c)の酸基との反応が進み易く、安定なコアシェル構造を形成し易い。また、Oxz当量が0.65当量(Eq)以下であることで、本発明のオキサゾリン化合物の過剰添加を抑制することができる。
Oxz当量は、より好ましくは0.03当量以上、更に好ましくは0.04当量以上、より更に好ましくは0.05当量以上である。また、Oxz当量の上限は、より好ましくは0.55当量以下、更に好ましくは0.50当量以下、より更に好ましくは0.45当量以下である。
工程(4)は、工程(3)で得られた凝集粒子(II)を、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度−5℃からガラス転移温度+10℃の範囲に保持して、凝集粒子(II)を融着し、コアシェル粒子を得る工程である。工程(4)により、凝集粒子(II)中のポリエステル(a)同士及び非晶質ポリエステル(c)同士が融着されて、それぞれ一体となり、コアシェル構造のトナー粒子(コアシェル粒子)が形成される。このとき、コア樹脂とシェル樹脂との間に介在する本発明のオキサゾリン化合物により、コア樹脂とシェル樹脂との結合がより十分に進行し、トナー粒子のコアシェル構造がより維持され易くなる。
非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度を「Tgs」とすると、凝集粒子(II)の保持温度は、(Tgs−5)℃以上(Tgs+10)℃以下と表すことができる。
また、トナーの低温定着性を向上する観点から、工程(4)においては、好ましくは離型剤の融点以下、より好ましくは3℃低い温度以下、更に好ましくは5℃低い温度以下の温度で保持する。なお、トナーが離型剤を複数含む場合は、最も融点が高い離型剤を基準にする。
工程(4)における保持時間は、凝集粒子の融着を確実に行う観点から、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは8分以上であり、また、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、更に好ましくは3時間以下、より更に好ましくは1.5時間以下である。
なお、工程(4)で得られるコアシェル粒子の平均粒径は、凝集粒子(II)の平均粒径以下であることが好ましい。すなわち、本工程において、凝集粒子(II)同士の凝集、融着が生じないことが好ましい。
本発明においては、工程(4)の後に後処理工程を行ってもよく、単離することによってコアシェル粒子を得ることが好ましい。
工程(4)で得られたコアシェル粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。樹脂粒子の製造の際にノニオン性界面活性剤を用いた場合、添加したノニオン性界面活性剤も除去することが好ましいため、ノニオン性界面活性剤の曇点以下で水性溶液により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
コアシェル粒子を乾燥等することによって得られたトナー粒子を本発明の電子写真用トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものを電子写真用トナーとして用いることが好ましい。
トナー(粒子)の体積中位粒径は、トナーの帯電安定性を向上させる観点及び高画質の画像を得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー(粒子)のCV値は、高画質のトナーを得る観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは26%以下であり、また、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上である。
トナー(粒子)の窒素吸着法によるBET比表面積は、得られるトナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは1.0m2/g以上、より好ましくは1.1m2/g以上である。また同様の観点から、BET比表面積は、好ましくは2.5m2/g以下、より好ましくは2.0m2/g以下、更に好ましくは1.9m2/g以下である。
トナー(粒子)の円形度は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは0.965以上、より好ましくは0.968以上、更に好ましくは0.970以上である。また、同様の観点から、トナー(粒子)の円形度は、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.988以下、更に好ましくは0.986以下である。
本発明の電子写真用トナーは、トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
工程(2):前記樹脂粒子(A)を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(I)を得る工程、
工程(3):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が55℃以上である非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を、前記凝集粒子(I)の表面に凝集させて、凝集粒子(II)を得る工程、及び、
工程(4):前記凝集粒子(II)を、前記非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度−5℃からガラス転移温度+10℃の範囲に保持して、前記凝集粒子(II)を融着し、コアシェル粒子を得る工程、を有する電子写真用コアシェルトナーの製造方法であって、
前記工程(3)の前に、重量平均分子量が1000以下であり、オキサゾリン基を少なくとも2つ有するオキサゾリン化合物を添加する工程を有し、
前記ポリエステル(a)と前記非晶質ポリエステル(c)とのFedors法による溶解度パラメータ(SP値)の差(△SP)が0.6以上1.8未満である、電子写真用トナーの製造方法。
<3> 前記ポリエステル(a)と前記非晶質ポリエステル(c)とのFedors法による溶解度パラメータ(SP値)の差(△SP)が、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、より更に好ましくは1.0以上であり、また、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、更に好ましくは1.3以下である、<1>又は<2>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<4> 前記ポリエステル(a)のFedors法による溶解度パラメータ(SPa)が、好ましくは8.0以上、より好ましくは9.0以上、更に好ましくは10.0以上であり、また、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.5以下、更に好ましくは11.0以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<5> 前記ポリエステル(a)のガラス転移温度(Tg)が、好ましくは46℃以下であり、より好ましくは42℃以下であり、更に好ましくは38℃以下であり、また、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上である、<1>〜<4>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<6> 前記ポリエステル(a)の酸価が、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、また、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<7> 前記ポリエステル(a)が、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、<1>〜<6>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<8> 前記カルボン酸成分が、好ましくは脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸並びにそれらの酸無水物、より好ましくはフマル酸、アルケニルコハク酸、フタル酸、及びイソフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種、更に好ましくはフマル酸、アルケニルコハク酸及びイソフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種である、<7>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<9> 前記アルコール成分が、好ましくは炭素数2以上4以下の脂肪族ジオールであり、より好ましくは1,2−プロパンジオールである、<7>又は<8>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<10> 前記ポリエステル(a)における前記カルボン酸成分と前記アルコール成分との当量比(COOH基/OH基)が、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上であり、また、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下である、<7>〜<9>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<11> 前記ポリエステル(a)が、アルケニルコハク酸及びその酸無水物の少なくとも一方を含むカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、<7>〜<10>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<13> 前記樹脂粒子(A)の体積中位粒径(D50)が、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下である、<1>〜<12>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<15> 前記非晶質ポリエステル(c)のFedors法による溶解度パラメータ(SPc)が、好ましくは9.0以上、より好ましくは10.0以上、更に好ましくは11.0以上であり、また、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.5以下、更に好ましくは12.0以下である、<1>〜<14>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<16> 前記非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度(Tg)が、好ましくは57℃以上、より好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは70℃以下であり、より好ましくは67℃以下である、<1>〜<15>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<17> 前記非晶質ポリエステル(c)の酸価が、好ましくは6mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、また、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である、<1>〜<16>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<18> 前記非晶質ポリエステル(c)が、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、<1>〜<17>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<19> 前記カルボン酸成分が、好ましくは脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸並びにそれらの酸無水物、より好ましくはフマル酸、フタル酸、及びテレフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種、更に好ましくはフマル酸、及びテレフタル酸並びにそれらの酸無水物の少なくとも1種である、<18>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<20> 前記アルコール成分が、好ましくは炭素数2以上4以下の脂肪族ジオールであり、より好ましくは1,2−プロパンジオールである、<18>又は<19>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<21> 前記非晶質ポリエステル(c)が、テレフタル酸及びその酸無水物の少なくとも一方を含むカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、<18>〜<20>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<23> 前記樹脂粒子(C)の体積中位粒径(D50)が、好ましくは70nm以上、より好ましくは85nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは170nm以下、更に好ましくは140nm以下である、<1>〜<22>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<24> 前記樹脂粒子(C)と前記樹脂粒子(A)との質量比(樹脂粒子(C)/樹脂粒子(A))が、好ましくは0.1〜1.5、より好ましくは0.2〜1.0、更に好ましくは0.3〜0.75となる量である、<1>〜<23>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<26> 前記オキサゾリン化合物の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは600以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは250以下である、<1>〜<25>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
<27> 前記オキサゾリン化合物の添加量が、ポリエステル(a)中の酸基のモル数に対する前記オキサゾリン化合物のオキサゾリン基のモル数が、好ましくは0.02当量以上、より好ましくは0.03当量以上、更に好ましくは0.04当量以上、より更に好ましくは0.05当量以上であり、また、好ましくは0.65当量以下、より好ましくは0.55当量以下、更に好ましくは0.50当量以下、より更に好ましくは0.45当量以下となる範囲である、<1>〜<26>のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
JIS K0070に従って測定した。但し、測定溶媒はクロロホルムとした。
ポリエステルの溶解度パラメータ(SP値)は、既述のFedorsの式〔δ =(ΣΔei/ΣΔvi)1/2 〕に基づき、算出した。
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計「Pyris 6 DSC」(PerkinElmer社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度50℃/minで0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/minで測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。
測定対象が非晶質ポリエステルの場合に、吸熱ピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて20℃から昇温速度10℃/minで測定し、最大ピーク温度を融点とした。
凝集粒子及び樹脂粒子の体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(堀場製作所社製)
・測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径(Dv)を測定した。
また、粒度分布として、CV値(%)を、前記粒径測定機で表示される体積平均粒径(Dv)と標準偏差から下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径(Dv))×100
赤外線水分計「FD−230」((株)ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、水分%を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:乾燥前の試料質量(初期試料質量)
W0:乾燥後の試料質量(絶対乾燥質量)
・分散液の調製:トナーの分散液は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王社製、HLB:13.6)の5質量%水溶液5mlにトナー50mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させたのち、蒸留水20mlを添加し、さらに超音波分散機にて1分間分散させて調製した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)
・測定モード:HPF測定モード
「Micromeritics FlowSorbIII」(島津製作所社製)を用いて、下記条件でBET比表面積を測定した。
・トナーサンプル量:0.09〜0.11g
・脱気条件:40℃、10分間
・吸着ガス:窒素ガス
凝集粒子及びトナーの体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザーIIIバージョン3.51」(ベックマンコールター社製)
・電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王社製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
また、粒度分布として、CV値(%)を、前記解析ソフトで表示される体積平均粒径(Dv)と標準偏差から下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径(Dv))×100
内容積100mlの広口ポリエチレン製ボトルにトナー20gを入れて密封し、温度45℃の環境下で48時間静置した。その後、25℃の温度下で密封したまま12時間以上静置して冷却した。次いで、粉体特性評価装置「パウダーテスター」(ホソカワミクロン(株)製)の振動台に、目開き250μmのフルイをセットし、その上に前記トナー20gを乗せ30秒間振動を行い、フルイ上に残ったトナー質量を測定した。数値が小さいほど、トナーが耐熱保存性に優れることを表す。
内容積100mlの広口ポリエチレン製ボトルにトナー20gを入れて密封し、温度50℃の環境下で48時間静置した。その後、25℃の温度下で密封したまま12時間以上静置して冷却した。次いで、粉体特性評価装置「パウダーテスター」(ホソカワミクロン(株)製)の振動台に、目開き250μmのフルイをセットし、その上に前記トナー20gを乗せ30秒間振動を行い、フルイ上に残ったトナー質量を測定した。数値が小さいほど、トナーが耐熱保存性に優れることを表す。
上質紙(富士ゼロックス(株)製、J紙A4サイズ)に市販のプリンタ((株)沖データ製、商品名:Microline5400)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42〜0.48mg/cm2となるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を90℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度で定着し、印刷物を得た。
同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ上げて、定着し、印刷物を得た。
印刷物の画像上の上端の余白部分に、メンディングテープ(3M社製、商品名:Scotchメンディングテープ810、幅18mm)を長さ50mmに切ったものを軽く貼り付けた後、500gのおもりを載せ、速さ10mm/秒で1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180度、速さ10mm/秒で剥がし、テープ剥離後の印刷物を得た。テープ貼付前及び剥離後の印刷物の下に上質紙((株)沖データ製、エクセレントホワイト紙A4サイズ)を30枚敷き、各印刷物のテープ貼付前及び剥離後の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計(GretagMacbeth社製、商品名:SpectroEye、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、下記の式で定着率を算出した。
定着率=(テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100
定着率が90%以上となる温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
製造例1、2、及び3
(非晶質ポリエステルa、b、及びcの製造)
表1に示すフマル酸以外の原料、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫及び没食子酸を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃に昇温した。180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、その後210℃で7時間縮重合反応させた。その後、フマル酸および4−tert−ブチルカテコールを添加して、210℃で5時間常圧にて反応させた後、8.3kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応させ、非晶質ポリエステルa、b、及びcを得た。非晶質ポリエステルa、b、及びcの物性を表1に示す。
(塩基性水溶液1の製造)
炭酸カリウム100gおよび脱イオン水400gを1Lビーカーに入れて、マグネチックスターラーにて30分間撹拌し、25℃におけるpHが12.4である20質量%炭酸カリウム水溶液を調製した。
製造例5
(樹脂粒子分散液Em−1の製造)
2リットル容のステンレス釜に、ポリエステルa(600g)、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業(株)製)30g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG−15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)40.0g、ノニオン性界面活性剤「エマルゲン430」(花王(株)製、ポリオキシエチレン(26mol)オレイルエーテル、HLB:16.2)6.0g、塩基性水溶液1(68g;中和度100モル%相当)、及び脱イオン水150gを混合し、カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃まで混合液を加熱した。カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃にて2時間保持し、樹脂中和物を得た。
次に、カイ型の撹拌機で7.3m/sの撹拌下、95℃にて、脱イオン水1162gを6g/分で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュ(目開き:105μm)の金網を通し、脱イオン水を添加して、固形分濃度を28質量%に調整し樹脂粒子分散液Em−1を得た。物性を表2に示す。
(樹脂粒子分散液Em−2の製造)
2リットル容のステンレス釜に、ポリエステルa(600g)、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業(株)製)30g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG−15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)40.0g、ノニオン性界面活性剤「エマルゲン430」(花王(株)製、ポリオキシエチレン(26mol)オレイルエーテル、HLB:16.2)6.0g、塩基性水溶液1(68g;中和度100モル%相当)、及び脱イオン水150gを混合し、カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃まで混合液を加熱した。カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃にて2時間保持し、樹脂中和物を得た。
次に、カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃にて、脱イオン水1162gを6g/分で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュ(目開き:105μm)の金網を通し、脱イオン水を添加して、固形分濃度を30質量%に調整した後、1800g秤量し、25℃で撹拌しながら、2,2′−ビス−(2−オキサゾリン) 47g(樹脂粒子中のカルボキシ基のモル数に対する当量は0.0625Eq)を添加し、その後95℃に温度を上げ95℃で1時間保持した。次に、25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュ(目開き105μm)の金網を通した後、脱イオン水を加えて固形分を28質量%に調整して、樹脂粒子分散液Em−2を得た。物性を表2に示す。
(樹脂粒子分散液Em−3、Em−4、Em−5、及びEm−6の製造)
製造例6において、使用する2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)の量を表2記載のものに変更した以外は製造例6と同様の手法により、樹脂粒子分散液Em−3、Em−4、Em−5、及びEm−6を作製した。物性を表2に示す。
(樹脂粒子分散液Em−7の製造)
2リットル容のステンレス釜に、ポリエステルb(600g)、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG−15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)40.0g、ノニオン性界面活性剤「エマルゲン430」(花王(株)製、ポリオキシエチレン(26mol)オレイルエーテル、HLB:16.2)6.0g、塩基性水溶液1(64g;中和度100モル%相当)、及び脱イオン水160gを混合し、カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃まで混合液を加熱した。カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃にて2時間保持し、樹脂中和物を得た。
次に、カイ型の撹拌機で1.2/sの撹拌下、95℃にて、脱イオン水1155gを6g/分で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュ(目開き:105μm)の金網を通し、脱イオン水を添加して、固形分濃度を28質量%に調整し樹脂粒子分散液Em-7を得た。物性を表2に示す。
(樹脂粒子分散液Em−8の製造)
2リットル容のステンレス釜に、ポリエステルc(600g)、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG−15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)40.0g、ノニオン性界面活性剤「エマルゲン430」(花王(株)製、ポリオキシエチレン(26mol)オレイルエーテル、HLB:16.2)6.0g、塩基性水溶液1(81g;中和度100モル%相当)、及び脱イオン水160gを混合し、カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃まで混合液を加熱した。カイ型の撹拌機で1.2m/sの撹拌下、95℃にて2時間保持し、樹脂中和物を得た。
次に、カイ型の撹拌機で1.2/sの撹拌下、95℃にて、脱イオン水1156gを6g/分で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュ(目開き:105μm)の金網を通し、脱イオン水を添加して、固形分濃度を30質量%に調整した後、1800g秤量し、25℃で撹拌しながら、2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)94g(樹脂粒子中のカルボキシ基のモル数に対する当量は0.125Eq)を添加し、その後95℃に温度を上げ95℃で1時間保持した。次に、25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュ(目開き105μm)の金網を通した後、脱イオン水を加えて固形分を28質量%に調整して、樹脂粒子分散液Em−8を得た。物性を表2に示す。
製造例13
(離型剤粒子分散液W−1の製造)
1リットル容のビーカーで、脱イオン水200gにポリカルボン酸ナトリウム水溶液としてアクリル酸ナトリウム−マレイン酸ナトリウム共重合体水溶液「ポイズ521」(花王社製、有効濃度40質量%)3.8gを溶解させた後、これにカルナウバワックス「カルナウバワックス1号」(加藤洋行社製、融点83℃)5g及びパラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞社製、融点75℃)45gを添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、カルナウバワックスとパラフィンワックスとが一体となって溶融した溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を含んだ水溶液を更に90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US−600T」(日本精機社製)で30分間分散処理を行った後に室温まで冷却し、ここに脱イオン水を加え、離型剤固形分20質量%に調整し、離型剤粒子分散液を得た。離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は450nm、CV値は30%であった。
実施例1
(シアントナーAの作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積2リットルの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液Em−4(200g)、脱イオン水32g、及び離型剤粒子分散液W−1(20g)を温度25℃下で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム15gを脱イオン水195gに溶解した水溶液を25℃で10分かけて滴下した後、45℃まで昇温し、凝集粒子の体積中位粒径が5.1μmになるまで、45℃で保持し、凝集粒子分散液(1)を得た。
前記凝集粒子(1)分散液の温度を45℃から50℃まで5時間かけて昇温しながら、樹脂粒子分散液Em−7(97g)と脱イオン水19gを混合した分散液を毎分0.4mlの速度で滴下し、凝集粒子分散液(2)を得た。
凝集粒子分散液(2)にアニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)13g、脱イオン水511gを混合した水溶液を添加した。その後、1.5時間かけて65℃まで昇温し、65℃下で1時間保持して、凝集粒子を融着して、コアシェル粒子を得た。
得られたコアシェル粒子分散液を25℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、28℃で乾燥を行って、トナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシールTS720」(キャボット社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのふるいを通過させてシアントナーAを得た。シアントナーAの物性及び評価を表3に示す。
(シアントナーB、Cの作製)
実施例1において、融着温度を表3に記載の温度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、シアントナーB、及びCを得た。トナーの物性及び評価を表3に示す。
(シアントナーD、E、F、及びGの作製)
実施例1において、樹脂粒子分散液Em−4を表4に記載の樹脂粒子分散液Em−2、3、5、及び6に変更した以外は実施例1と同様にして、シアントナーD、E、F、及びGを得た。トナーの物性及び評価を表4に示す。
(シアントナーH、Iの作製)
実施例1において、融着温度を表5記載の温度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、シアントナーH、及びIを得た。トナーの物性及び評価を表5に示す。
(シアントナーJ、Kの作製)
実施例1において、樹脂粒子分散液Em−4を表5に記載の樹脂粒子分散液Em−1、及びEm−8に変更した以外は実施例1と同様にして、シアントナーJ、及びKを得た。トナーの物性及び評価を表5に示す。
また、「トナーのTg」欄に「A/B」と示されるとき、ガラス転移温度測定において2つのTgが測定されたことを表す。
Claims (5)
- 工程(1):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が50℃未満であるポリエステル(a)を含有する樹脂を乳化し、樹脂粒子(A)を得る工程、
工程(2):前記樹脂粒子(A)を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(I)を得る工程、
工程(3):少なくとも酸基を有し、ガラス転移温度が55℃以上である非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を、前記凝集粒子(I)の表面に凝集させて、凝集粒子(II)を得る工程、及び、
工程(4):前記凝集粒子(II)を、前記非晶質ポリエステル(c)のガラス転移温度−5℃からガラス転移温度+10℃の範囲に保持して、前記凝集粒子(II)を融着し、コアシェル粒子を得る工程、を有する電子写真用コアシェルトナーの製造方法であって、
前記工程(3)の前に、重量平均分子量が1000以下であり、オキサゾリン基を少なくとも2つ有するオキサゾリン化合物を添加する工程を有し、
前記ポリエステル(a)と前記非晶質ポリエステル(c)とのFedors法による溶解度パラメータ(SP値)の差が0.6以上1.8未満である、電子写真用トナーの製造方法。 - 前記ポリエステル(a)が、アルケニルコハク酸及びその酸無水物の少なくとも一方を含むカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記非晶質ポリエステル(c)が、テレフタル酸及びその酸無水物の少なくとも一方を含むカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られる、請求項1又は2に記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記オキサゾリン化合物の添加量が、ポリエステル(a)中の酸基のモル数に対する前記オキサゾリン化合物のオキサゾリン基のモル数が0.02当量以上0.65当量となる範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記オキサゾリン化合物が2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)である、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
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