以下、本発明に係るスプライン結合装置の実施の形態を、油圧ショベルに搭載されたエンジンと油圧ポンプとの間のスプライン結合部に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図8は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示している。油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に作業機本体(車体、基体)を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に取付けられ土砂の掘削作業等を行う作業機(フロント装置、作業装置)4とにより構成されている。
ここで、下部走行体2には走行モータ(図示せず)が設けられると共に、上部旋回体3には旋回モータ(図示せず)が設けられている。下部走行体2は走行モータによって前進、後進等の走行動作を行い、上部旋回体3は旋回モータによって旋回動作するものである。
作業機4は、ブーム4A、アーム4B、バケット4Cによって構成され、ブーム4A、アーム4B、バケット4Cには、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fが取付けられている。これらのシリンダ4D,4E,4Fは、走行モータ、旋回モータと共に、後述の油圧ポンプ15から吐出する圧油により駆動される油圧アクチュエータを構成するものである。
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を形成する支持フレームであり、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム5には、後述のキャブ6、カウンタウエイト7、エンジン9、油圧ポンプ15、熱交換器37等が搭載されている。
ここで、旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びる左縦板5B、右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの左,右の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びる左サイドフレーム5D、右サイドフレーム5Eと、底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5Fとにより構成されている。各縦板5B,5Cの前側には作業機4(のブーム4Aおよびブームシリンダ4D)が俯仰動可能に取付けられている。
図2に示すように、旋回フレーム5の後側には、例えば、左縦板5Bと右縦板5Cとの間に位置して上側に延びる取付台座5Gが前,後方向に間隔をもって設けられている。各取付台座5Gには、後述するエンジン9が防振マウント36を介して制振状態で取付けられている。
キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に搭載されている。キャブ6は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等が配設されている。
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cの後端部に取付けられている。カウンタウエイト7は、作業機4との重量バランスをとるもので、略円弧状をした重量物として形成されている。
外装カバー8は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に配設されている。外装カバー8は、エンジンカバー8A、左カバー8B、右カバー8Cを含んで構成されている。外装カバー8は、後述するエンジン9、油圧ポンプ15、熱交換器37等の搭載機器を収容するものである。
9はカウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5の後端側に設けられた原動機としてのエンジンを示している。エンジン9は、例えばディーゼルエンジンとして構成され、後述する出力軸11の中心軸線が左,右方向に延在する横置き状態で上部旋回体3に搭載されている。
ここで、エンジン9は、エンジン本体10と、該エンジン本体10に設けられた複数(例えば6個)のシリンダ(図示せず)と、該各シリンダ内を往復動する複数(例えば6個)のピストン(図示せず)と、該各ピストンとコネクティングロッド(図示せず)を介して接続され各ピストンの往復動を回転力として出力する出力軸(クランク軸)11とを含んで構成されている。
エンジン本体10は、出力軸11を収容する中空容器として形成されたクランクケース10Aと、該クランクケース10Aの下側に設けられエンジンオイルを収容するオイルパン10Bと、クランクケース10A上に搭載されシリンダが形成されたシリンダブロック10Cと、該シリンダブロック10C上に搭載されたシリンダヘッド10Dとを含んで構成されている。
図2に示すように、エンジン本体10の一端側(図2の左側)には、後述する熱交換器37に冷却風を供給するための冷却ファン12が設けられている。エンジン本体10のシリンダブロック10Cおよびシリンダヘッド10Dには、エンジン冷却水が循環するウォータジャケット(図示せず)が形成され、該ウォータジャケットは、冷却水の熱を放出する熱交換器37に接続されている。
図3に示すように、出力軸11の他端側(図3の右側)で後述のフライホイールハウジング14内に突出した端部には、円板状のフライホイール13が設けられている。フライホイール13には、回転中心を中心とする円弧上の4箇所に、周方向に等間隔に離間してそれぞれ雌ねじ穴13Aが形成されている。これら各雌ねじ穴13Aには、後述する弾性体軸継手17のエンジン側ブロック18を取付けるためのボルト22が螺合される。
図2および図3に示すように、エンジン本体10の他端側(図2の右側)には、短尺な円筒状のフライホイールハウジング14が設けられている。フライホイールハウジング14内には、フライホイール13と弾性体軸継手17とが配置されている。フライホイールハウジング14の開口端は、後述する油圧ポンプ15のフランジ部15Bが取付けられるフランジ取付部14Aとなっている。このフランジ取付部14Aには、油圧ポンプ15のフランジ部15Bをボルト16を用いて取付けるための雌ねじ穴14B(図3参照)が周方向に複数個列設されている。
15はエンジン9によって回転駆動される油圧ポンプを示している。油圧ポンプ15は、フライホイールハウジング14を介してエンジン9に取付けられている。油圧ポンプ15は、エンジン9によって駆動されることにより、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油を吐出するものである。ここで、油圧ポンプ15は、例えば斜軸式油圧ポンプ、斜板式油圧ポンプにより構成されるポンプ機構(図示せず)と、該ポンプ機構を収容するポンプケーシング15Aと、該ポンプケーシング15Aの中央から突出して設けられポンプ機構に接続される後述の回転軸34とを含んで構成されている。
一方、ポンプケーシング15Aの基端側(図2ないし図3の左側)は、拡径してフランジ部(環状鍔部)15Bとなっている。ここで、フランジ部15Bは、油圧ポンプ15をエンジン9に取付けるための取付板となるもので、フライホイールハウジング14(の取付部14A)に対してボルト16を用いて取付けられる。このために、フランジ部15Bには、フライホイールハウジング14の取付部14Aの雌ねじ穴14Bと対応する位置に、それぞれボルト挿通孔15Cが設けられている。
次に、エンジン9の出力軸11と油圧ポンプ15の回転軸34とを連結する弾性体軸継手17について説明する。
17はエンジン9の出力軸11(より具体的には、出力軸11に設けられたフライホイール13)と油圧ポンプ15の回転軸34との間に設けられた弾性体軸継手を示している。弾性体軸継手17は、後述する弾性体20の弾性変形に基づいて、エンジン9の出力軸11(フライホイール13)と油圧ポンプ15の回転軸34との間のトルク変動、回転中心軸線のずれ等を吸収するものである。弾性体軸継手17は、フライホイールハウジング14の内部(弾性体軸継手室)に、フライホイール13と軸方向に隣り合って配置(収容)されている。ここで、弾性体軸継手17は、複数(4個)のエンジン側ブロック(原動機側ブロック)18と、弾性体20と、複数(4個)のポンプ側ブロック21と、ハブ32とにより構成されている。
4個のエンジン側ブロック18は、エンジン9の出力軸11側となるフライホイール13に、周方向(回転方向)に間隔をもって取付けられている。各エンジン側ブロック18は、略扇状のブロック体として形成され、軸方向に延びるボルト挿通孔18Aを有している。各エンジン側ブロック18は、ボルト挿通孔18Aに挿通したボルト19をフライホイール13の雌ねじ穴13Aに螺合することにより、フライホイール13の側面に一体的に設けられている。
エンジン側ブロック18には、外径側に位置して周方向の両側に、それぞれ周方向に延びる鍔部18Bが設けられている。これら各鍔部18Bは、後述するポンプ側ブロック21の鍔部21Bと共に、弾性体20の径方向の変位を規制するものである。即ち、エンジン側ブロック18の鍔部18Bとポンプ側ブロック21の鍔部21Bは、弾性体20の外周面との当接に基づいて、それ以上弾性体20が径方向外側に変位するのを阻止するものである。
弾性体20は、例えば弾性を有する樹脂材料、ゴム材料を用いて厚肉な円筒状に形成され、後述するハブ32を取囲んで配置されている。弾性体20には、その外周面20Aから径方向内側に向け、エンジン側ブロック18を収容するエンジン側ブロック係合溝部20Bと後述のポンプ側ブロック21を収容するポンプ側ブロック係合溝部20Cとが周方向に交互に形成されている。
即ち、弾性体20は、中央にハブ32が収容されるハブ収容部20Dを有し、該ハブ収容部20Dの周囲には、4個のエンジン側ブロック係合溝部(原動機側ブロック係合溝部)20Bと4個のポンプ側ブロック係合溝部20Cとが周方向に間隔をもって交互に配置されている。各エンジン側ブロック係合溝部20Bと各ポンプ側ブロック係合溝部20Cとの間は、それぞれエンジン側ブロック18とポンプ側ブロック21とにより周方向に圧縮(挟持)される圧縮部20Eとなっている。
4個のポンプ側ブロック21は、後述するハブ32の外周側に、該ハブ32から径方向外側に突出した状態で周方向に間隔をもって取付けられている。各ポンプ側ブロック21は、略扇状のブロック体として形成され、径方向に延びるボルト挿通孔21Aを有している。各ポンプ側ブロック21は、ボルト挿通孔21Aに挿通したボルト22をハブ32のねじ穴32Eに螺合することにより、該ハブ32の外周側32Dに一体的に設けられている。ポンプ側ブロック21には、外径側に位置して周方向の両側に、それぞれ周方向に延びる鍔部21Bが設けられている。これら各鍔部21Bは、エンジン側ブロック18の鍔部18Bと同様に、弾性体20の径方向の変位を規制している。
次に、油圧ポンプ15の回転軸34と弾性体軸継手17のハブ32とを含んで構成されるスプライン結合装置31について説明する。
31はエンジン9と油圧ポンプ15との間で回転力を伝達するスプライン結合装置を示している。スプライン結合装置31は、弾性体軸継手17のハブ32と、油圧ポンプ15の回転軸34と、クランピングねじ35とにより構成されている。
32は弾性体軸継手17を構成するハブで、該ハブ32は、厚肉な円筒体として形成され、弾性体20のハブ収容部20Dに収容されている。ハブ32は、回転軸34と共にスプライン結合装置31を構成し、エンジン9からの回転力により回転軸34を回転駆動する駆動部材となるものである。ハブ32の内周側には、一側面となる右面32Aと他側面となる左面32Bとの間にわたって軸方向に雌スプライン部32Cが設けられている。雌スプライン部32Cは、例えばハブ32の内周側に形成され、中心軸線O1−O1とする複数の雌スプライン歯32C1を有するインボリュートスプラインとなり、回転軸34の雄スプライン部34Aにスプライン結合されている。
一方、ハブ32の外周側32Dには、ポンプ側ブロック21をボルト22を用いて取付けるためのねじ穴32Eが、周方向の4箇所位置(90°の等間隔で)に設けられている。さらに、ねじ穴32Eとは異なる位置には、押圧具挿入穴としての径方向貫通穴32Fが設けられている。
径方向貫通穴32Fは、隣合うねじ穴32Eの間でハブ32の回転中心軸線O1−O1の方向に離間して2個設けられている。各径方向貫通穴32Fは、ハブ32の外周側32Dから径方向内側(雌スプライン部32C側)に向けて穿設されている。即ち、各径方向貫通穴32Fの中心軸線O2−O2は、雌スプライン部32Cの中心軸線O1−O1と直交する方向に延びている。また、径方向貫通穴32Fの内径側32F1(下部側)は、後述するメガネ状孔32Gによって連通している。径方向貫通穴32Fには、雌ねじが螺刻されており、後述するクランピングねじ35が螺合する。
雌スプライン部32Cと径方向貫通穴32Fとの間には、軸方向貫通孔としてのメガネ状孔32Gが設けられている。メガネ状孔32Gは、右面32Aと左面32Bとの間で貫通して設けられ、各径方向貫通穴32Fの内径側32F1と連通している。ここで、図6および図7に示すように、雌スプライン部32Cの中心軸線O1−O1と径方向貫通穴32Fの中心軸線O2−O2とを含む仮想平面を第1の仮想平面A−Aとした場合に、メガネ状孔32Gは、仮想平面A−Aの位置が挟幅部32G1となり、該挟幅部32G1の両側が円形部32G2として形成されている。
径方向貫通穴32Fと雌スプライン部32Cとの間には、薄肉部32Hが設けられている。具体的には、薄肉部32Hは、メガネ状孔32Gの挟幅部32G1の内径側部位32G3と雌スプライン部32Cとの間に形成されている。挟幅部32G1の内径側部位32G3は、平坦面となっており、後述するクランピングねじ35の先端面が当接し、該クランピングねじ35の先端面により押圧される。薄肉部32Hの周囲は、メガネ状孔32Gを形成したことに伴って変形しやすくなっている。従って、クランピングねじ35により薄肉部32Hを押圧したときに、小さい力で雌スプライン歯32C1と後述の雄スプライン歯34A1とを拘束させることができる構成となっている。しかも、メガネ状孔32Gにより、円形部32G2の周囲も変形しやすくなるので、後述するクランピングねじ35により薄肉部32Hを押圧したときに、より小さい力で雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とを拘束させることができる。
次に、ハブ32に設けられた矯正穴33について説明する。
33,33は雌スプライン部32Cの周囲に設けられた円形状の矯正穴で、該矯正穴33は、ハブ32の右面32Aと左面32Bとの間で貫通して設けられている。具体的には、図6および図7に示すように、雌スプライン部32Cの中心軸線O1−O1を含み、仮想平面A−Aと直交する仮想平面を第2の仮想平面B−Bとした場合に、矯正穴33は、仮想平面B−Bを挟んで径方向貫通穴32Fとは反対側で、仮想平面A−Aを挟んだ両側に対称に設けられている。
ここで、「仮想平面B−Bを挟んで径方向貫通穴32Fとは反対側」とは、矯正穴33が仮想平面B−Bから径方向貫通穴32Fとは反対側に離れて位置する場合に加えて、矯正穴33の一部が仮想平面B−Bよりも径方向貫通穴32Fとは反対側に位置する場合も含むものである。一方、「仮想平面A−Aを挟んだ両側」とは、矯正穴33が仮想平面A−Aから両側に離れて位置することを意味するものである(例えば、矯正穴33の一部が仮想平面A−Aと重なる(接する)ことは含まない)。そして、矯正穴33は、雌スプライン部32Cの雌スプライン歯32C1と回転軸34の雄スプライン部34Aの雄スプライン歯34A1との当接状態を矯正するものである。
即ち、矯正穴33は、後述するクランピングねじ35で薄肉部32Hを押圧することにより、雌スプライン歯32C1を拡開させ、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1との拘束を行ったときに、これら雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とが部分的に噛合う近傍位置に設けられている。
より具体的に説明すると、図13に示すように、クランピングねじ35の押圧に基づいて、ハブ32′の雌スプライン部32C′に(薄肉部32Hを介して)下向きの力F(クランピングねじ35による押圧力)が加わると、例えばハブ32′(の内周側)が略楕円状に変形する(雌スプライン部32C′が略楕円形に歪む)虞がある。一方、回転軸34′は、中実な円柱体であるので、雄スプライン部34A′はそのままの状態(断面が真円に近い状態)が維持される。このため、ハブ32′の変形に伴って、雌スプライン歯32C1′と雄スプライン歯34A1′との噛合いが部分的になる虞がある。即ち、例えば図13中に点線で示すように、Cの位置と、Dおよび/またはEの位置での部分的な噛合いになる虞がある。なお、図13では、ハブ32′の変形、雌スプライン歯32C1′と雄スプライン歯34A1′の噛合い状態(当接状態)等を誇張して示している。
これにより、複数の雌スプライン歯32C1′と複数の雄スプライン歯34A1′のうちの一部の歯、即ち、図13中のCの位置と、Dおよび/またはEの位置の歯同士だけが噛合う傾向となり、ハブ32′と回転軸34′との間の回転力の伝達が部分的に噛合った一部の歯で行われる虞がある。これにより、回転力の伝達が行われる一部の歯の面圧が大きくなり(偏荷重が大きくなり)、疲労強度の低下を招く虞がある。
これに対し、第1の実施の形態では、図6に示すように、矯正穴33を径方向貫通穴32Fの中心軸線O2−O2から90°〜180°(90°≦α<180°,90°≦β<180°)の位置、好ましくは、100°≦α≦150°,100°≦β≦150°の位置、より好ましくは、105°≦α≦130°,105°≦β≦130°の位置に設けている。また、矯正穴33は、ポンプ側ブロック21を取付けるねじ穴32Eとの干渉を避けるように、例えばねじ穴32Eと矯正穴33との間の肉厚を0.5mm以上確保している。即ち、矯正穴33は、径方向貫通穴32Fの中心軸線O2−O2から90°〜180°の範囲内でねじ穴32Eと干渉しない位置に設けられている。
ここで、矯正穴33の周囲は、該矯正穴33により肉抜きされたことに伴って、変形しやすくなる。これにより、クランピングねじ35による薄肉部32Hの押圧に基づいて、ハブ32の内周側が略楕円状に変形しても(雌スプライン部32Cが略楕円状に歪んでも)、ハブ32から回転軸34に向けて回転力を伝達するときに、ハブ32の矯正穴33の周囲が変形する(例えば、矯正穴33が回転方向に押し潰される)。これにより、ハブ32の内周側が略楕円形の状態から真円に近い状態に戻される。この結果、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とが全体的に噛合う傾向となり、一部の雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とに大きな面圧が加わること(偏荷重が加わること)を抑制することができる。
しかも、矯正穴33は、仮想平面(A−A)の両側に対称に設けているので、矯正穴33が変形する態様が仮想平面(A−A)を挟んだ両側で同様となり、バランスよくハブ32の内周側を略楕円形の状態から真円に近い状態に戻すことができる。
34は油圧ポンプ15を構成する回転軸で、該回転軸34は、中実な円柱体として形成されている。回転軸34は、エンジン9からの回転力により弾性体軸継手17のハブ32を介して回転駆動される被駆動部材(被駆動軸)となるものである。このために、回転軸34の外周側には、弾性体軸継手17のハブ32の雌スプライン部32Cとスプライン結合される雄スプライン部34Aが設けられている。雄スプライン部34Aは、例えば回転軸34の外周側に形成された複数の雄スプライン歯34A1を有するインボリュートスプラインとなっている。また、回転軸34は、ハブ32と共にスプライン結合装置31を構成するものである。なお、図示は省略するが、前述の特許文献1に記載されているように、回転軸34の雄スプライン部34Aの基端側にピニオンカッタで加工された加工用逃げ溝を設けたり、ホブカッタで加工された切り上がり形状部を設けたりすることができる。
35はハブ32の径方向貫通穴32Fに挿入される押圧具としてのクランピングねじを示している。クランピングねじ35は、径方向貫通穴32Fへの締付けに基づいて薄肉部32Hを押圧する(挟幅部32G1を拡開する方向の力を付与する)ことにより、雌スプライン部32Cの雌スプライン歯32C1と雄スプライン部34Aの雄スプライン歯34A1とを拘束するものである。この場合、クランピングねじ35が薄肉部32Hを押圧することに基づいてハブ32が変形し(例えば雌スプライン歯32C1が拡開し)、これにより、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とのがたつきを抑えることができる(回転軸34に対するハブ32の抜け止めを図ることができる)。
しかし、上述したように、クランピングねじ35が薄肉部32Hを押圧することにより、ハブ32の内周側が略楕円形に変形し、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1との噛合いが部分的、例えば図13中に点線で示すCの位置と、Dおよび/またはEの位置での部分的な噛合いになる虞がある。これに対し、上述のようにハブ32には、矯正穴33を設けているため、ハブ32から回転軸34に向けて回転力が伝達されるときに、ハブ32の矯正穴33の周囲が変形し(例えば矯正穴33が回転方向に押し潰され)、ハブ32の内周側が略楕円形の状態から真円に近い状態に戻される。これにより、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とを全体的に噛合う傾向とすることができる。
なお、図2中、36はエンジン9を旋回フレーム5上に制振状態で支持する防振マウントを示している。37はエンジン冷却水等を冷却する熱交換器を示している。38はエンジン9の排気マニホールド(図示せず)に接続される排気マフラ等の排気ガス処理装置を示している。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体3のキャブ6に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ15を駆動する。これにより、油圧ポンプ15から圧油が吐出され、この圧油はコントロールバルブ(図示せず)を介して、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4F、走行モータ、旋回モータ等の油圧アクチュエータに供給される。
キャブ6に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(図示せず)を操作したときには、下部走行体2により車両を前進または後退させることができる。一方、キャブ6内のオペレータが作業用の操作レバーを操作することにより、作業機4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
油圧ショベル1の稼働時、エンジン9の出力軸11から出力されたトルクは、弾性体軸継手17を介して、油圧ポンプ15の回転軸34に伝達される。この場合、ハブ32と回転軸34とは、がたつきの抑制と抜け止めのために、クランピングねじ35で薄肉部32Hを押圧することにより、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とを拘束している。
この場合、図13に示すように、ハブ32′の雌スプライン部32C′に(薄肉部32Hを介して)下向きの力F(クランピングねじ35による押圧力)が加わることにより、ハブ32′の内周側が略楕円形に変形する。一方、回転軸34′の雄スプライン部34A′は、中実な円柱体であるのでそのままの状態(断面が真円に近い状態)が維持される。
これにより、雌スプライン歯32C1′と雄スプライン歯34A1′とが、例えば図13中に点線で示すCの位置と、Dおよび/またはEの位置での部分的な噛合い状態となる虞がある。この状態で、ハブ32′から回転軸34′に向けて動力が伝達されると、ハブ32′と回転軸34′との回転力の伝達が、部分的に噛合っている一部の歯で行われる傾向となる。これにより、これらの歯に加わる面圧が大きくなる(偏荷重が大きくなる)虞がある。さらに、雌スプライン歯32C1′と雄スプライン歯34A1′との接触面積が小さい部分では、この小さい面積で動力伝達(トルクを伝達)をすることになる。その結果、雌スプライン歯32C1′と雄スプライン歯34A1′との接触面圧がさらに大きくなり、ハブ32および回転軸34の疲労強度の低下、寿命の低下を招く虞がある。
これに対し、本実施の形態では、ハブ32には、仮想平面(B−B)を挟んで径方向貫通穴32Fとは反対側で、仮想平面(A−A)を挟んだ両側に矯正穴33を設けている。この場合、ハブ32に設けられた矯正穴33の周囲が、ハブ32と回転軸34との間の回転力の伝達に伴って変形することにより、一部の雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1に大きな面圧が加わること(偏荷重が加わること)を抑制することができる。即ち、クランピングねじ35による薄肉部32Hの押圧に基づいて、ハブ32の内周側が略楕円状に変形しても(雌スプライン部32Cが略楕円状に歪んでも)、回転力を伝達するときに、ハブ32の矯正穴33の周囲が変形する(例えば矯正穴33が回転方向に押し潰される)。
これにより、ハブ32の内周側が略楕円形の状態から真円に近い状態に戻される。この結果、雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とが全体的に噛合う傾向となり、一部の雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1とに大きな面圧が加わること(偏荷重が加わること)を抑制することができる。これにより、各スプライン歯32C1,34A1の疲労強度の確保、耐久性、寿命の向上を図ることができる。
また、矯正穴33は、仮想平面(A−A)の両側に対称に設けているので、矯正穴33が変形する態様が仮想平面(A−A)を挟んだ両側で同様となり、バランスよくハブ32の内周側を略楕円形の状態から真円に近い状態に戻すことができる。
さらに、メガネ状孔32Gとして形成された軸方向貫通孔により薄肉部32Hの周囲をより変形しやすくでき、薄肉部32Hを押圧する力(押圧力)をより小さくすることができる。即ち、クランピングねじ35の押圧に基づく雌スプライン歯32C1と雄スプライン歯34A1との拘束を、より小さい押圧力で行うことができる。これにより、より高い水準で作業性の向上、クランピングねじ35の寿命の向上を図ることができる。
次に、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、押圧具挿入穴を有底穴としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
41は第1の実施の形態によるハブ32に代えて第2の実施の形態で用いられるハブで、該ハブ41は、厚肉な円筒体として形成され、弾性体20のハブ収容部20Dに収容されている。ハブ41は、回転軸34と共にスプライン結合装置を構成し、エンジン9からの回転力により回転軸34を回転駆動する駆動部材となるものである。
図9に示すように、ハブ41には、回転軸34の雄スプライン部34Aとスプライン結合する雌スプライン部41Aと、ポンプ側ブロック21を取付けるために外周側41Bから径方向内側に向けて穿設された4個のねじ穴41Cと、雌スプライン部41Aの雌スプライン歯41A1と回転軸34の雄スプライン部34Aの雄スプライン歯34A1との当接状態を矯正する矯正穴41Dと、ハブ41の外周側41Bでねじ穴41Cとは異なる位置に設けられた有底穴41Eとが形成されている。
押圧具挿入穴としての有底穴41Eは、隣合うねじ穴41Cの間でハブ41の回転中心軸線O1−O1の方向に離間して2個設けられている(図10参照)。各有底穴41Eは、ハブ41の外周側41Bから径方向内側(雌スプライン部41A側)に向けて穿設されている。即ち、各有底穴41Eの中心軸線O2−O2は、雌スプライン部41Aの中心軸線O1−O1と直交する方向に延びている。また、各有底穴41Eは、内径側41E1(下部側)が底部となった有底状に形成されている。そして、有底穴41Eには、クランピングねじ35が螺合する雌ねじが螺刻されている。
有底穴41Eの内径側41E1(底部側)と雌スプライン部41Aとの間は、薄肉部41Fとなっている。薄肉部41Fの周囲は、該薄肉部41Fの肉厚が小さいことに伴って、変形しやすくなっている。従って、クランピングねじ35で薄肉部41Fを押圧することにより、雌スプライン歯41A1と雄スプライン歯34A1とを拘束させることができる構成となっている。
この場合、クランピングねじ35が薄肉部41Fを押圧することにより、ハブ41の内周側が略楕円形に変形し、雌スプライン歯41A1と雄スプライン歯34A1との噛合いが部分的、例えば図13中に点線で示すCの位置と、Dおよび/またはEの位置での部分的な噛合いになる虞がある。これに対し、ハブ41には、矯正穴41Dを設けているため、ハブ41から回転軸34に向けて回転力が伝達されるときに、ハブ41の矯正穴41Dの周囲が変形し(例えば、矯正穴41Dが回転方向に押し潰され)、ハブ41の内周側が略楕円形の状態から真円に近い状態に戻される。これにより、雌スプライン歯41A1と雄スプライン歯34A1とを全体的に噛合う傾向とすることができる。
第2の実施の形態は、上述の如きハブ41を用いてエンジン9から油圧ポンプ15にトルク伝達を行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第2の実施の形態は、押圧具挿入穴を有底穴41Eとして形成しているので、例えば軸方向貫通孔を設ける工程が必要ない。これにより、製造加工の簡素化を図ることができ、製造コストを低減できる。
なお、上述した第1の実施の形態では、ハブ32の外周側32Dに取付けられるポンプ側ブロック21を周方向に4箇所(90°の等間隔で)設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例のように、ポンプ側ブロック51をハブ52の外周側52Aの周方向に3箇所(120°の等間隔で)設けてもよい。この場合、矯正穴52Bは、仮想平面B−Bを挟んでメガネ状孔52Cおよび径方向貫通穴52Dとは反対側で、ねじ穴52Eを避けた位置に適宜設けることができる。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、矯正穴33は、仮想平面B−Bを挟んで径方向貫通穴32Fとは反対側で、ねじ穴32E寄りに位置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に示す第2の変形例のように、矯正穴61の中心を仮想平面B−B上に位置させてもよい。即ち、矯正穴の位置を定める「仮想平面B−Bを挟んで径方向貫通穴(押圧具挿入穴)とは反対側」とは、矯正穴の一部が仮想平面B−Bを挟んで径方向貫通穴(押圧具挿入穴)とは反対側に位置していればよいというものである。このことは、第2の実施の形態、第1の変形例についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、矯正穴33を円形状とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば矯正穴を楕円形状や、まゆ形状、多角形状等、スプライン歯に偏荷重が加わることを抑制できる各種の形状を採用することができる。このことは、第2の実施の形態、第1の変形例、および第2の変形例についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、矯正穴33をハブ32の右面32Aと左面32Bとの間を貫通する貫通穴とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば矯正穴を貫通させずに、ハブの一側面(右面または左面)から他側面(左面または右面)に向けて穿設された有底状の溝部の如き矯正穴としてもよい。このことは、第2の実施の形態、第1の変形例、および第2の変形例についても同様である。
また、上述した実施の形態では、油圧ショベル1の原動機としてエンジン9を用いる構成とし、このエンジン9と油圧ポンプ15との間(より具体的には、弾性体軸継手17と油圧ポンプ15との間)で回転力を伝達するスプライン結合装置31を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば原動機として電動モータ、発電モータ(アシスト発電モータ)等の電動機を用い、これら電動機と油圧ポンプとの間で動力を伝達するスプライン結合装置等、ハブと回転軸との間で回転力を伝達する各種の機器のスプライン結合装置として広く適用することができる。