以下、本発明に係るスプライン接続装置の実施形態を、油圧ショベルに搭載されたエンジンと油圧ポンプとの間のスプライン結合部に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図8は、本発明の第1実施形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に取付けられ土砂の掘削作業等を行うフロント装置4とにより構成されている。
フロント装置4は、上部旋回体3の前側に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端に取付けられたバケット4Cと、ブーム4Aを作動させるブームシリンダ4Dと、アーム4Bを作動させるアームシリンダ4Eと、バケット4Cを作動させるバケットシリンダ4Fとを含んで構成されている。これらのシリンダ4D,4E,4Fは、後述の油圧ポンプ15から吐出する圧油により駆動される油圧アクチュエータを構成する。
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を形成する支持フレームであり、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム5には、後述のキャブ6、カウンタウエイト7、エンジン9、油圧ポンプ15、熱交換器39等が搭載されている。
旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びる左縦板5B,右縦板5Cと、各縦板5B,5Cの左,右の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びる左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5Fとを含んで構成されている。各縦板5B,5Cの前側には、フロント装置4のブーム4Aが俯仰動可能に取付けられている。
図2に示すように、旋回フレーム5の後側には、左縦板5Bと右縦板5Cとの間に位置して上側に延びる取付台座5Gが前,後方向に間隔をもって設けられている。各取付台座5Gには、後述するエンジン9が制振状態で取付けられている。
キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に搭載されている。このキャブ6は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等が配設されている。カウンタウエイト7は、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cの後端部に取付けられている。カウンタウエイト7は、フロント装置4との重量バランスをとるもので、後端面が円弧状をした重量物として形成されている。
外装カバー8は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に配設されている。外装カバー8は、エンジンカバー8A、左側面カバー8B、および右側面カバー8Cを含んで構成されている。外装カバー8は、後述するエンジン9、油圧ポンプ15、熱交換器39等の搭載機器を収容するものである。
原動機としてのエンジン9は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5の後端側に設けられている。エンジン9は、例えばディーゼルエンジンからなり、後述する出力軸11の中心軸線が左,右方向に延在する横置き状態で上部旋回体3に搭載されている。エンジン9は、エンジン本体10と、エンジン本体10に設けられた複数(例えば6個)のシリンダ(図示せず)と、各シリンダ内を往復動する複数(例えば6個)のピストン(図示せず)と、各ピストンとコネクティングロッド(図示せず)を介して接続され各ピストンの往復動を回転力として出力する出力軸(クランク軸)11とを含んで構成されている。
エンジン本体10は、出力軸11を収容する中空容器として形成されたクランクケース10Aと、クランクケース10Aの下側に設けられエンジンオイルを収容するオイルパン10Bと、クランクケース10A上に搭載されシリンダが形成されたシリンダブロック10Cと、シリンダブロック10C上に搭載されたシリンダヘッド10Dとを含んで構成されている。
図2に示すように、エンジン本体10の一端側(図2の左側)には、後述する熱交換器39に冷却風を供給するための冷却ファン12が設けられている。エンジン本体10のシリンダブロック10Cおよびシリンダヘッド10Dには、エンジン冷却水が循環するウォータジャケット(図示せず)が形成されている。ウォータジャケットは、冷却水の熱を放出する熱交換器39に接続されている。
図3に示すように、出力軸11の他端側(右端側)には、出力軸11と共に一方向に回転する円板状のフライホイール13が設けられている。フライホイール13には、回転中心を中心とする円弧上の4箇所に、周方向に等間隔に離間してそれぞれ雌ねじ穴13Aが形成されている。これら各雌ねじ穴13Aには、後述する弾性体軸継手17のエンジン側ブロック18を取付けるためのボルト22が螺合される。
図2および図3に示すように、エンジン本体10の他端側(図2の右側)には、短尺な円筒状のフライホイールハウジング14が設けられている。フライホイールハウジング14内には、フライホイール13と弾性体軸継手17とが収納されている。フライホイールハウジング14の開口端は、後述する油圧ポンプ15のフランジ部15A1が取付けられるフランジ取付部14Aとなっている。
油圧ポンプ15は、エンジン9によって回転駆動され、フライホイールハウジング14を介してエンジン9に取付けられている。油圧ポンプ15は、エンジン9によって駆動されることにより、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油を吐出する。ここで、油圧ポンプ15は、例えば斜軸式油圧ポンプ、斜板式油圧ポンプにより構成されるポンプ機構(図示せず)と、ポンプ機構を収容するポンプケーシング15Aと、ポンプケーシング15Aの中央から突出して設けられポンプ機構に接続される後述の回転軸35とを含んで構成されている。
一方、ポンプケーシング15Aの基端側(図2ないし図3の左側)は、拡径したフランジ部(環状鍔部)15A1となっている。このフランジ部15A1は、油圧ポンプ15をエンジン9に取付けるための取付板となるもので、フライホイールハウジング14のフランジ取付部14Aに対してボルト16を用いて取付けられている。
次に、エンジン9の出力軸11と油圧ポンプ15の回転軸35とを連結する弾性体軸継手17について説明する。
弾性体軸継手17は、エンジン9の出力軸11(より具体的には、出力軸11に設けられたフライホイール13)と油圧ポンプ15の回転軸35との間に設けられている。この弾性体軸継手17は、後述する弾性体20の弾性変形により、エンジン9の出力軸11(フライホイール13)と油圧ポンプ15の回転軸35との間のトルク変動、回転中心軸線O−Oのずれ等を吸収する。
弾性体軸継手17は、フライホイールハウジング14の内部(弾性体軸継手室)に、フライホイール13と軸方向に隣り合って配置(収容)されている。そして、弾性体軸継手17は、複数(例えば、4個)のエンジン側ブロック(原動機側ブロック)18、弾性体20、複数(例えば、4個)のポンプ側ブロック21、およびハブ32により構成されている。
4個のエンジン側ブロック18は、エンジン9の出力軸11側に設けられたフライホイール13に、周方向(回転方向)に間隔をもって取付けられている。各エンジン側ブロック18は、扇形状のブロック体からなり、軸方向に延びるボルト挿通孔18Aを有している。各エンジン側ブロック18は、ボルト挿通孔18Aに挿通したボルト19をフライホイール13の雌ねじ穴13Aにそれぞれ螺合することにより、フライホイール13の側面に一体的に取付けられている。
エンジン側ブロック18には、外径側に位置して周方向の両側に突出する鍔部18Bが設けられている。これら各鍔部18Bは、後述するポンプ側ブロック21の鍔部21Bと共に、弾性体20の径方向の変位を規制する。即ち、エンジン側ブロック18の鍔部18Bとポンプ側ブロック21の鍔部21Bとは、弾性体20の外周面と当接することにより、弾性体20が径方向外側に変位するのを阻止する。
弾性体20は、例えば弾性を有する樹脂材料およびゴム材料を用いて厚肉な円筒状に形成され、後述するハブ32を取囲んで配置されている。弾性体20には、その外周面20Aから径方向内側に向けて窪むエンジン側ブロック係合溝部20Bとポンプ側ブロック係合溝部20Cとが周方向に交互に形成されている。エンジン側ブロック係合溝部20Bには、エンジン側ブロック18が嵌込まれ、ポンプ側ブロック係合溝部20Cには、後述のポンプ側ブロック21が嵌込まれる。
即ち、弾性体20は、中央にハブ32が収容されるハブ収容部20Dを有し、ハブ収容部20Dの周囲には、4個のエンジン側ブロック係合溝部20Bと4個のポンプ側ブロック係合溝部20Cとが周方向に間隔をもって交互に配置されている。この場合、各エンジン側ブロック係合溝部20Bと各ポンプ側ブロック係合溝部20Cとの間は、それぞれエンジン側ブロック18とポンプ側ブロック21とにより周方向に圧縮(挟持)される圧縮部20Eとなっている。
4個のポンプ側ブロック21は、後述のハブ32から径方向外側に突出した状態でハブ32の周方向に間隔をもって取付けられている。各ポンプ側ブロック21は、扇形状のブロック体からなり、径方向に延びるボルト挿通孔21Aを有している。各ポンプ側ブロック21は、ボルト挿通孔21Aに挿通したボルト22をハブ32のねじ穴32Bに螺合することにより、ハブ32の外周側32Aに一体的に取付けられている。ポンプ側ブロック21には、外径側に位置して周方向の両側に突出する鍔部21Bが設けられている。これら各鍔部21Bは、エンジン側ブロック18の鍔部18Bと同様に、弾性体20の径方向の変位を規制している。
次に、油圧ポンプ15の回転軸35と弾性体軸継手17のハブ32とを含んで構成されるスプライン接続装置31について説明する。
スプライン接続装置31は、エンジン9と油圧ポンプ15との間で回転力を伝達するものである。そして、スプライン接続装置31は、弾性体軸継手17のハブ32と、油圧ポンプ15の回転軸35とにより構成されている。
弾性体軸継手17を構成するハブ32は、エンジン9の回転と共に一方向に回転する厚肉な円筒状に形成され、弾性体20のハブ収容部20Dに収容されている。このハブ32は、エンジン9からの回転力により、油圧ポンプ15の回転軸35を回転駆動する駆動部材となるもので、エンジン9(駆動源)側に設けられている。図5に示すように、ハブ32の外周側32Aには、ポンプ側ブロック21を取付けるためのボルト22が螺合するねじ穴32Bが、周方向に離間した4箇所に設けられている。
図7に示すように、ハブ32の内周側には、フライホイール側の左面32Cから軸方向に向けて延びる雌スプライン部33と、雌スプライン部33から油圧ポンプ15側の右面32Dに向けて延びる雌側圧入嵌合部34とが設けられている。雌スプライン部33は、回転中心軸線O−Oに対してねじれたはす歯状の雌スプライン歯33Aにより構成されている。雌スプライン部33は、後述の回転軸35の雄スプライン部36にスプライン結合されている。
雌側圧入嵌合部34は、ハブ32の内周側で雌スプライン部33から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置に設けられている。雌側圧入嵌合部34は、後述の回転軸35の雄側圧入嵌合部37に締め代を持って嵌合する。雌側圧入嵌合部34は、右面32Dから雌スプライン部33に向けて近付くほど径方向寸法L1が小さくなる方向に傾斜したテーパ面34Aにより構成されている。即ち、雌側圧入嵌合部34は、右面32Dから雌スプライン部33に向けて縮径している。
回転軸35は、ハブ32と一緒に一方向に回転するもので、ハブ32と共にスプライン接続装置31を構成している。この回転軸35は、エンジン9によって駆動される油圧ポンプ15の回転軸となっている。即ち、回転軸35は、エンジン9からの回転力により弾性体軸継手17のハブ32を介して回転駆動される被駆動部材(被駆動軸)となっている。
図6、図7に示すように、回転軸35の外周側には、弾性体軸継手17のハブ32の雌スプライン部33とスプライン結合される雄スプライン部36が設けられている。雄スプライン部36は、回転中心軸線O−Oに対してねじれたはす歯状の雄スプライン歯36Aにより構成されている。
ここで、ハブ32の雌スプライン歯33Aおよび回転軸35の雄スプライン歯36Aは、回転力の伝達時に歯面に加わる荷重の軸方向分力がスプライン結合の噛み合いが増す方向にねじれている。即ち、ハブ32と回転軸35とが回転したときに、ハブ32が油圧ポンプ15側へ押込まれるように、ハブ32の雌スプライン歯33Aと回転軸35の雄スプライン歯36Aとがねじれている。
図8に示すように、ハブ32の雌スプライン歯33Aおよび回転軸35の雄スプライン歯36Aは、回転中心軸線O−Oに対して角度αだけねじれるように形成されている。この角度αは、ハブ32と回転軸35との回転力および雌スプライン歯33Aと雄スプライン歯36Aとの歯数等から実験、計算、シミュレーション等により設定される。また、図8中の紙面左側にエンジン9が配設され、紙面右側に油圧ポンプ15が配設されている。
次に、エンジン9の回転力によりハブ32に作用する力を図8により説明する。この場合、図8中の紙面左側にエンジン9が配設され、紙面右側に油圧ポンプ15が配設されている。エンジン9の作動によりハブ32および回転軸35が矢示A方向に回転する場合には、回転軸35の雄スプライン歯36Aにハブ32の雌スプライン歯33Aから歯面に対して垂直方向に押圧力Faが作用する。この場合、回転軸35の雄スプライン歯36Aには、周方向に反力Fbが作用し、軸方向に反力(軸方向分力)Fcが作用する。ハブ32は、この軸方向の反力Fcにより油圧ポンプ15側に向けて押付けられている。
雄側圧入嵌合部37は、回転軸35の外周側で雄スプライン部36から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置に設けられている。雄側圧入嵌合部37は、ハブ32の内周側で雌スプライン部33から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置(即ち、雌側圧入嵌合部34)に締め代を持って嵌合する。雄側圧入嵌合部37は、油圧ポンプ15に接続される円柱軸部38から雄スプライン部36に向けて近付くほど径方向寸法L2が小さくなる方向に傾斜したテーパ面37Aにより構成されている。即ち、雄側圧入嵌合部37は、円柱軸部38側から雄スプライン部36に向けて縮径している。
ハブ32の雌スプライン部33に回転軸35の雄スプライン部36を挿入(嵌合)した場合には、ハブ32の雌側圧入嵌合部34のテーパ面34Aと回転軸35の雄側圧入嵌合部37のテーパ面37Aとが接触する。ハブ32のテーパ面34Aと回転軸35のテーパ面37Aとは、ハブ32が油圧ポンプ15側に押付けられたときに圧入される。
なお、図2に示す熱交換器39は、冷却ファン12に対面して、エンジン冷却水等を冷却するものである。また、排気ガス処理装置40は、エンジン9と油圧ポンプ15との間で上方に位置し、エンジン9の排気マニホールド(図示せず)に接続される排気マフラ等を示している。
第1実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体3のキャブ6に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ15を駆動する。これにより、油圧ポンプ15から圧油が吐出され、この圧油はコントロールバルブ(図示せず)を介して、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、およびバケットシリンダ4F等の油圧アクチュエータに供給される。
キャブ6に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(図示せず)を操作したときには、下部走行体2により車両を前進または後退させることができる。一方、オペレータが作業用の操作レバーを操作することにより、フロント装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。油圧ショベル1の稼働時にエンジン9の出力軸11から出力されたトルクは、弾性体軸継手17を介して油圧ポンプ15の回転軸35に伝達される。
ところで、上述した従来技術に記載されたスプライン接続装置では、クランピングねじでハブの雌スプライン部を押圧することにより、ハブと回転軸とを一体的に固定している。しかし、このスプライン接続装置は、雌スプライン部を変形させているので、動力伝達時に各スプライン歯面にかかる面圧に偏りが発生して、ハブと回転軸との疲労強度の低下および寿命が低下する虞がある。
また、各スプライン歯面にかかる面圧に耐え得るように、ハブおよび回転軸を大型化しなければならない虞がある。さらに、雌スプライン部と雄スプライン部とを固定する力は、クランピングねじを締付けるトルクにより決定される。従って、クランピングねじのトルク調整作業が必要となり、雌スプライン部と雄スプライン部とを固定させる作業の作業性が低下する虞がある。
そこで、本実施形態では、ハブ32の雌スプライン部33と回転軸35の雄スプライン部36とを回転中心軸線O−Oに対してねじれたはす歯状に形成している。この場合、雌スプライン部33の雌スプライン歯33Aと雄スプライン部36の雄スプライン歯36Aとは、回転力の伝達時にハブ32が回転軸35に押込まれる方向に力が発生するようにねじれている。これにより、ハブ32の雌スプライン部33と回転軸35の雄スプライン部36とは、雌スプライン歯33Aと雄スプライン歯36Aとの歯面同士を密着させた状態で固定させることができるので、各スプライン歯面にかかる面圧の偏りを抑制することができる。
次に、ハブ32を回転軸35にスプライン結合させて固定する場合について説明する。
まず、エンジン9とハブ32とを接続させる前に、ハブ32の雌スプライン部33と回転軸35の雄スプライン部36とを噛合わせながらハブ32を回転軸35に挿入して、雌スプライン部33と雄スプライン部36とをスプライン結合させる。
この状態で、例えば油圧ポンプ15の性能試験を行うときに、ハブ32をエンジン9の仕様最大トルクよりも大きいトルク(例えば、10%増加)で回転させる。その結果、ハブ32は、回転軸35に向けて圧入されるので、ハブ32のテーパ面34Aと回転軸35のテーパ面37Aとが圧入状態で接触する。
この場合、油圧ショベル1の作業時にエンジン9が最大トルクを発生させるように回転したとしても、ハブ32が回転軸35に向けてこれ以上圧入されることがない。また、エンジン9の回転方向は、一方向回転であるので、油圧ショベル1の作業中にはハブ32が回転軸35から抜けるような力は作用しない。従って、ハブ32をエンジン9の仕様最大トルクよりも大きいトルクで回転させることで、回転軸35に対して位置決め固定を行うことができる。
かくして、第1実施形態によるスプライン接続装置31は、内周側に雌スプライン部33が設けられ、一方向に回転する円筒状のハブ32と、外周側に前記雌スプライン部33とスプライン結合される雄スプライン部36が設けられ、前記ハブ32と一緒に一方向に回転する回転軸35とを備えている。
そして、前記雌スプライン部33は、回転中心軸線O−Oに対してねじれたはす歯状の雌スプライン歯33Aにより構成されており、前記雄スプライン部36は、回転中心軸線O−Oに対してねじれたはす歯状の雄スプライン歯36Aにより構成されており、前記雌スプライン歯33Aおよび前記雄スプライン歯36Aは、回転力の伝達時に歯面に加わる荷重の軸方向分力がスプライン結合の噛み合いが増す方向に加わるようにねじれており、前記回転軸35の外周側で前記雄スプライン部36から軸方向に外れた位置には、前記ハブ32の内周側で前記雌スプライン部33から軸方向に外れた位置に締め代を持って嵌合する雄側圧入嵌合部37が設けられており、前記ハブ32の内周側で前記雌スプライン部33から軸方向に外れた位置には、前記回転軸35の前記雄側圧入嵌合部37に締め代を持って嵌合する雌側圧入嵌合部34が設けられている。
また、前記雌側圧入嵌合部34および前記雄側圧入嵌合部37は、前記雌スプライン部33および前記雄スプライン部36に近付く程径方向寸法が小さくなる方向に傾斜したテーパ面34A,37Aにより構成されている。また、前記ハブ32は、建設機械(油圧ショベル1)の駆動源(エンジン9)側に設けられており、前記回転軸35は、前記駆動源によって駆動される油圧ポンプ15の回転軸である。
これにより、ハブ32は、エンジン9の回転により回転軸35に押込まれる方向にのみ力が作用するので、ハブ32と回転軸35とを安定した状態で固定させることができる。また、ハブ32と回転軸35とが位置決め固定された状態では、ハブ32の雌スプライン歯33Aと回転軸35の雄スプライン歯36Aとが互いに密着状態で嵌合している。従って、エンジン9および油圧ポンプ15の振動、衝撃による各スプライン歯33A,36Aの摩耗を抑制させることができ、ハブ32と回転軸35との寿命を向上させることができる。
また、ハブ32と回転軸35とを固定する場合に、ハブ32の雌スプライン部33を変形させていないので、各スプライン歯33A,36Aの面圧の偏りを抑制することができる。即ち、各スプライン歯33A,36Aの面圧を均一にすることができるので、ハブ32と回転軸35との寿命を向上させることができる。さらに、ハブ32には、クランピングねじを挿入するねじ穴を形成していないので、ハブ32の強度を向上させることができる。
次に、図9は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態の特徴は、ハブ32の雌側圧入嵌合部41と回転軸35の雄側圧入嵌合部42とを径方向寸法が一定の円弧状に形成したことにある。なお、第2実施形態では、上述した第1実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
雌側圧入嵌合部41は、ハブ32の内周側で雌スプライン部33から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置に設けられている。雌側圧入嵌合部41は、回転軸35の雄側圧入嵌合部42に締め代を持って嵌合する。雌側圧入嵌合部41は、径方向寸法L3が一定の円周面41Aにより構成されている。
雄側圧入嵌合部42は、回転軸35の外周側で雄スプライン部36から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置に設けられている。雄側圧入嵌合部42は、ハブ32の雌側圧入嵌合部41に締め代を持って嵌合する。雄側圧入嵌合部42は、径方向寸法L4が一定の円周面42Aにより構成されている。この円周面42Aは、油圧ポンプ15に接続される円柱軸部38と同じ径方向寸法となっている。
かくして、第2実施形態によるスプライン接続装置31は、前記雌側圧入嵌合部41および前記雄側圧入嵌合部42は、径方向寸法L3,L4が一定の円周面41A,42Aにより構成されている。そして、第2実施形態においても、その基本的作用については、上述した第1実施形態によるものと格別差異はない。また、第2実施形態においても第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
次に、図10は、本発明の第3実施形態を示している。第3実施形態の特徴は、ハブ32の雌側圧入嵌合部51と回転軸35の雄側圧入嵌合部52に第1の圧入部51A,52Aと第2の圧入部51B,52Bとをそれぞれ設けたことにある。なお、第3実施形態では、上述した第1実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
雌側圧入嵌合部51は、ハブ32の内周側で雌スプライン部33から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置に設けられている。雌側圧入嵌合部51は、回転軸35の雄側圧入嵌合部52に締め代を持って嵌合する。この場合、雌側圧入嵌合部51は、雌スプライン部33側に位置する第1の圧入部51Aと、第1の圧入部51Aからハブ32の右面32Dに向けて延びる第2の圧入部51Bとにより段付状に形成されている。第1の圧入部51Aは、第2の圧入部51Bから雌スプライン部33側に向けて縮径するテーパ面となっている。一方、第2の圧入部51Bは、ハブ32の右面32Dから第1の圧入部51Aに向けて縮径するテーパ面となっている。
雄側圧入嵌合部52は、回転軸35の外周側で雄スプライン部36から軸方向の油圧ポンプ15側に外れた位置に設けられている。雄側圧入嵌合部52は、ハブ32の雌側圧入嵌合部51に締め代を持って嵌合する。この場合、雄側圧入嵌合部52は、雄スプライン部36側に位置する第1の圧入部52Aと、第1の圧入部52Aから回転軸35の円柱軸部38に向けて延びる第2の圧入部52Bとにより段付状に形成されている。第1の圧入部52Aは、第2の圧入部52Bから雄スプライン部36側に向けて縮径するテーパ面となっている。一方、第2の圧入部52Bは、円柱軸部38から第1の圧入部52Aに向けて縮径するテーパ面となっている。
ハブ32の雌側圧入嵌合部51と回転軸35の雄側圧入嵌合部52とは、締め代の大きさが異なる2段に形成されている。具体的には、雌側圧入嵌合部51の第2の圧入部51Bと雄側圧入嵌合部52の第2の圧入部52Bの締め代は、雌側圧入嵌合部51の第1の圧入部51Aと雄側圧入嵌合部52の第1の圧入部52Aの締め代よりも大きく形成されている。
これにより、ハブ32の雌側圧入嵌合部51の第1の圧入部51Aと回転軸35の雄側圧入嵌合部52の第1の圧入部52Aとを圧入状態で接触させて、ハブ32を回転軸35に仮止め状態とすることができる。この場合、雌側圧入嵌合部51の第1の圧入部51Aと雄側圧入嵌合部52の第1の圧入部52Aとの締め代は、作業者が手作業でハブ32にトルクをかけて仮止め状態を行うことができる大きさに設定されている。具体的には、雌側圧入嵌合部51の第1の圧入部51Aと雄側圧入嵌合部52の第1の圧入部52Aとの締め代は、ハブ32を回転軸35に仮止めした状態で油圧ポンプ15を吊り上げたときに、ハブ32が回転軸35から抜け落ちない大きさに設定されている。
そして、油圧ポンプ15の性能試験を行うときに、ハブ32を作業者が手作業でかけたトルクよりも大きく、またエンジン9の仕様最大トルクよりも大きいトルク(例えば、10%増加)で回転させる。これにより、ハブ32は、仮止め状態から回転軸35に向けて圧入され、ハブ32の雌側圧入嵌合部51の第2の圧入部51Bと回転軸35の雄側圧入嵌合部52の第2の圧入部52Bとが圧入状態で接触する。
かくして、第3実施形態によるスプライン接続装置31は、前記雌側圧入嵌合部51および前記雄側圧入嵌合部52は、締め代を持って嵌合する第1の圧入部51A,52Aと前記第1の圧入部51A,52Aよりも大きな締め代を持って嵌合する第2の圧入部51B,52Bとの2つの圧入部を有している。
そして、第3実施形態においても、その基本的作用については、上述した第1実施形態によるものと格別差異はない。また、第3実施形態においても第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。さらに、第3実施形態では、ハブ32を回転軸35に固定する前に、ハブ32を回転軸35に仮止め状態とすることができるので、ハブ32と回転軸35との組付作業の作業性を向上することができる。
なお、上述した第3実施形態では、ハブ32の第1の圧入部51Aと回転軸35の第1の圧入部52Aとによりハブ32を回転軸35に対して仮止め状態とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばハブ32を回転軸35に対して位置決め固定するときに影響がない程度の粘着力をもつ接着剤等により、ハブ32を回転軸35に仮止めしてもよい。このことは、第1,第2実施形態についても同様である。
また、上述した実施形態では、油圧ショベル1の原動機としてエンジン9を用いる構成とし、このエンジン9と油圧ポンプ15との間(より具体的には、弾性体軸継手17と油圧ポンプ15との間)で回転力を伝達するスプライン接続装置31を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば原動機として電動モータ、発電モータ(アシスト発電モータ)等の電動機を用い、これら電動機と油圧ポンプとの間で動力を伝達するスプライン接続装置等、ハブと回転軸との間で一方向に回転する各種の機器のスプライン接続装置として広く適用することができる。