JP2015124342A - インクジェット記録用インキセット - Google Patents

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Abstract

【課題】疎水性の高い基材を使用するインクジェット印刷において、基材の風合いや印刷物の耐性を変えることなく、優れた画像を得るためのアンカー剤とインキのインクジェット記録用セットを提供すること。【解決手段】水と、水溶性有機溶剤と、ポリエーテル変性シロキサンとを含有するインクジェット記録用アンカー剤と、顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、水分散性樹脂微粒子と、ポリエーテル変性シロキサンとを含有する水性インキ組成物とからなるインクジェット記録用インキセットであって、前記アンカー剤中のポリエーテル変性シロキサンの含有量が、アンカー剤全重量に対して0.05〜0.4重量%であり、水性インキ組成物中の水分散樹脂微粒子の含有量が、水性インキ組成物全重量に対して6重量%以上であり、水分散樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)が50℃以上であることを特徴とするインクジェット記録用インキセット。【選択図】なし

Description

本発明は、被記録面がプラスチックフィルム等のように疎水性の高い基材への印刷を行う場合に使用されるものであり、被記録面への水性インキ組成物の印刷に先立って塗布されるアンカー剤と水性インキとの組み合わせを有するインキセットに関する。また、該インキセットを用いたインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方法は、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有し、オフィス、家庭や産業用途での出力機として広く用いられている。記録媒体としては、一般的に紙が使用されてきたが、近年、プラスチックフィルムやガラスなどの様々な記録媒体への要求が高まっている。
水性インキを用いる場合、プラスチックフィルムなどの基材表面にインキ受理層を設けたインクジェット印刷専用のものが使用されている。
しかしながら、インキ受理層を設けたインクジェット印刷専用基材は、設けないものと比較して基材の風合い(光沢、透明度等)が異なるという問題があった。また、専用基材の種類が少ないという問題もあった。
インクジェット記録専用の表面処理を施していないプラスチックフィルムに、水性インキでインクジェト記録すると、水性インキは、濡れ広がり性が悪いため、画像の埋りが悪化し白抜けが生じる問題があった。埋りを改善しようと、インキの液滴量を増やすと、白抜けは改善するが、乾燥性が低下してビーディングや色ムラ、色間滲みが生じるという問題が発生する。
そのため、インクジェット記録専用の表面処理を施していないプラスチックフィルムを使用する場合については、特許第4173579号公報(特許文献1)に、インキ中にシロキサン界面活性剤およびフッ素化界面活性剤を添加することで、濡れ性を高めることで疎水性基材に印字する方法が提案されている。特開2006−272933号公報(特許文献2)に、インキ中に低表面張力有機溶剤を添加し、表面張力と基材への接触角を規定することで疎水性基材に印字する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、プラスチックフィルムでの濡れ性が十分でなく、目的としている画像が得られない。さらに、インキ中に多量の界面活性剤や低表面張力有機溶剤を添加すると、インキの安定性を確保することが難しい。
また、特開2003−11486号公報(特許文献3)に、前処理液を用いるインクジェット記録方法や、特開2011−4605号公報(特許文献4)に、顔料を含有するインキと、多価金属塩及びカチオン性樹脂の少なくとも一方を含有する反応液のインキセットが提案されている。しかしながら、この記録方法は、一般的な紙基材に対して、インキの浸透を抑制するためにインキを凝集させ、高画質の記録を行うことを目的としたものであり、プラスチックフィルムへの印字を目的とするものでない。特許4656506号公報(特許文献5)に、水、環状エステル化合物、熱化可塑性樹脂、水溶性有機溶剤を含有するプラスチックフィルム用印刷下地液が提案されている。しかし、この方法は、画像の密着性、耐水性を上げる目的のものであり、プラスチックフィルムでの水性インキの濡れ性は考慮されておらず、目的としている画像が得られない。特開2010−6062号公報(特許文献6)に、インキ非吸収性および低吸収性の記録媒体に対して、着色剤を含有するインキと、着色剤を含有せず樹脂粒子を含有する樹脂インキからなるインキセットが提案されている。しかし、この方法は、画像の密着性、耐水性を上げる目的のものであり、プラスチックフィルムでの水性インキの濡れ性は考慮されておらず、目的としている画像が得られない。また、着色剤を含有しないインキに、樹脂粒子を含有するため基材の風合い(光沢や透明度など)を変えてしまうといった問題があった。
特許第4173579号公報 特開2006−272933号公報 特開2003−11486号公報 特開2011−4605号公報 特許4656506号公報 特開2010−6062号公報
本発明は、上記に鑑みされたものであり、被記録面がプラスチックフィルム等のように疎水性の高い基材を使用するインクジェット印刷において、基材の風合い(光沢や透明度等)や印刷物の耐性(密着性や耐水性)を変えることなく、優れた画像を得るためのアンカー剤とインキのインクジェット記録用セットの提供を目的とする。また、該インキセットを用いたインクジェット記録方法の提供を目的とする。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、
(1)少なくとも水と、水溶性有機溶剤と、ポリエーテル変性シロキサンとを含有するインクジェット記録用アンカー剤と、少なくとも顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、水分散性樹脂微粒子と、ポリエーテル変性シロキサンとを含有する水性インキ組成物とからなるインクジェット記録用インキセットであって、前記アンカー剤中のポリエーテル変性シロキサンの含有量が、アンカー剤全重量に対して0.05〜0.4重量%であり、
前記水性インキ組成物中の水分散樹脂微粒子の含有量が、水性インキ組成物全重量に対して6重量%以上であり、水分散樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)が50℃以上であることを特徴とするインクジェット記録用インキセットに関する。
(2)(1)に記載のインクジェット記録用インキセットを用いるインクジェット記録方法であって、記録媒体上に、前記アンカー剤を塗布する工程と、その後に前記のインキ組成物の液滴を吐出する工程を有するインクジェット記録方法に関する。
(3)前記記録媒体上に塗布されたアンカー剤を乾燥させる工程を有する(2)に記載のインクジェット記録方法に関する。
(4)前記記録媒体がプラスチックフィルムである(2)又は(3)に記載のインクジェット記録方法に関する。
(5)(2)から(4)に記載のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法によって記録された記録物に関する。
本発明によれば、被記録面がプラスチックフィルム等のように疎水性の高い基材を使用するインクジェット印刷において、基材の風合い(光沢や透明度等)や印刷物の耐性(密着性や耐水性等)を変えることなく、優れた画像を得ることが可能となるインキセットを提供できる。また、本発明によれば、該インキセットを用いることで、前記優れた画像を得ることが可能となるインクジェット記録方法が提供できる。
本発明の特徴は、アンカー剤とインキの両方にポリエーテル変性シロキサンを含有させ、インキに水分散性樹脂微粒子を含有させることで、本発明の目的を達成することである。
上記の構成を有する本発明のインキセットによって効果が得られるメカニズムを、以下のように推定している。通常、ポリエーテル変性シロキサンは、インキ中に添加され、印刷時にインキ液滴中を移動し、記録媒体へ配向することで濡れ性を改善する。そのため、添加量が少ない場合は、インキ中に含まれる顔料や定着樹脂に移動を阻害され、記録媒体への配向スピードが低下し濡れ性が悪化する。
また、濡れ性を改善するためにインキ中の添加量を増やすと、インキの安定性が低下してしまうという問題があった。
これに対して、本発明によれば、顔料や定着樹脂を含まないアンカー剤に、ポリエーテル変性シロキサンを添加するため、顔料や定着樹脂に移動を阻害されることがなく、少量の添加で記録媒体へ効果的に配向させることができる。そのため、基材の風合い(光沢や透明度等)やあとから印刷されるインキの耐性(密着性や耐水性等)を変えることなく、インキの濡れ性を大幅に改善でき、目的の画像を得ることが達成できたと考える。
以下、本発明のインキセットを構成するアンカー剤とインキの各成分についてさらに詳細に説明する。
<アンカー剤>
(ポリエーテル変性ポリシロキサン)
本発明に用いられるポリエーテル変性シロキサンとしては、好ましくは、一般式(1)で表わされる化合物、又は、一般式(2)で表わされる化合物を用いることができる。

一般式(1)



(式中、aおよびbは0以上の整数で且つa+bが1以上の整数を表し、X1は一般式(3)で表わされる。)
一般式(3)




(式中、R2は水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表し、EOはエチレンオキシド基を表し、POはプロピレンオキシド基を表し、cは、0以上の整数を表し、d及びeは0以上の整数で且つd+eは、1以上の整数を表し、EO及びPOの順序はその順序を問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
一般式(2)



(式中、fは1以上の整数を表し、X2およびX3は、一般式(3)で表わされ同一でも異なっていてもよい。)
前記の一般式(1)又は(2)で表わされるポリエーテル変性シロキサンは、市販されており、それらを用いることできる。例えば、東レダ・ダウコーニング社製の8019ADDITIVE、8032 ADDITIVE、8054 ADDITIVE、FZ-2123、FZ-2162、L−77、L−7001、L−7002、SF8427、SH8400、SH8700、ビックケミー社製のBYK−333、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、エボニックデグサ社製のTEGO WET 250、TEGOWET 260、TEGO WET270、TEGO WET 280、TEGOGLIDE 410、TEGO GLIDE432、TEGO GLIDE 435、TEGOGLIDE 440、TEGO GLIDE450、信越化学工業社製のKF−351A,KF−352A,KF−353,KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独でも2種以上併用して用いても良い。
アンカー剤に含まれるポリエーテル変性シロキサンは、後述するインキ組成分において使用されるポリエーテル変性シロキサンと同じ成分でも異なる成分であってもよいが、アンカー剤とインキとの親和性を高めるために、同じ成分であることが好ましい。
本発明において、ポリエーテル変性シロキサンのアンカー剤中の含有量は、0.05重量%から0.4重量%の範囲であり、好ましくは0.1重量%から0.3重量%の範囲である。アンカー中の含有量が0.05重量%より少ないと、インキの濡れ性が低下し、所望の画像が得られない。また、含有量が0.4重量%より多いと、インキの濡れ性は良くなるが、基材の風合い(光沢や透明度等)の変化や、あとから印刷されるインキの密着性や耐水性が低下する。
(水溶性有機溶剤)
本発明のアンカー剤に含まれる水溶性有機溶剤としては、従来既知のものが使用できる。
本発明で使用することができる水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテル類、ジオール類が良く、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオールが好ましい。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ジオール類の具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
この中でも好ましいのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。
これらの溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
さらに記録媒体の種類によっては、その溶解性の向上を目的に、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミドなどの含窒素化合物を添加することもできる。
本発明のアンカー剤に含まれる水溶性有機溶剤の量は、5重量%から40重量%の範囲であり、好ましくは10〜30重量%の範囲である。
(水)
本発明のアンカー剤に含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
さらに、本発明のアンカー剤は、上述の成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて水分散樹脂微粒子、防腐剤、防黴剤、消泡剤、表面調整剤、pH調整剤、増粘剤等を適宜に添加することができる。これらの添加量の例としては、アンカー剤の全量に対して、0.05〜2重量%の範囲である。
<インキ>
(顔料)
本発明に使用される顔料は、従来既知のものが使用できる。無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。本発明で使用することができるブラックの顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、
No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、400R、660R、MOGULL(以上、キャボット製)、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
本発明で使用することができるイエローの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、55、74、81、83、109、113、120、128、150、151、155、183等が挙げられる。
本発明で使用することができるマゼンタの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Red5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122;キナクリドン固溶体、146、147、150、238、269、C.I.PigmentViolet 19等が挙げられる。
本発明で使用することができるシアンの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Blue1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.VatBlue 4、6等が挙げられる。
これらの顔料は、各色インキにおいて、1種または2種以上を併用して使用することができる。
本発明で使用することができる顔料の含有量としては、特に制限はないがインキ中に、重量比で、0.1〜10重量%の範囲である。
顔料の分散方式としては、顔料粒子の表面にアニオン性基を直接又は他の原子団を介して結合させ、分散剤を用いることなく分散可能な自己分散型顔料や、樹脂や界面活性剤などの分散剤により顔料を分散させる樹脂分散型顔料などが挙げられる。
(水溶性有機溶剤)
本発明のインキ中に含まれる水溶性有機溶剤としては、従来既知のものが使用できる。
本発明で使用することができる水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテル類、ジオール類が良く、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオールが好ましい。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ジオール類の具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
この中でも好ましいのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。
これらの溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
さらに印刷する記録媒体の種類によっては、その溶解性の向上を目的に、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミドなどの含窒素化合物を添加することもできる。
本発明のインキに含まれる水溶性有機溶剤の量は、5重量%から60重量%の範囲であり、好ましくは10から50重量%の範囲である。
(水)
本発明のインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
(水分散性樹脂微粒子)
本発明のインキに含まれる水分散性樹脂微粒子としては、従来既知のものが使用できる。
水分散性樹脂微粒子は、特に制限はなく、熱可塑性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリエステル系、シリコン系、塩化ビニル系樹脂等、あるいはそれらの共重合体の水分散性樹脂微粒子が使用できる。インキの安定性と塗膜の耐性の観点から、アクリル系、アクリルシリコン系水分散性樹脂微粒子が好ましい。
本発明で使用することができる水分散性樹脂微粒子の含有量は、インキの全量の6重量%以上であり、好ましくは、7重量%から20重量%の範囲であり、更に好ましくは、8重量%から15重量%の範囲である。含有量が少ないと十分な耐性が得られず、実用にて印刷物から印刷が剥がれる場合がある。多すぎるとインキの安定性が低下する場合がある。
本発明で使用することができる水分散性樹脂微粒子のガラス転移点温度(Tg)は、50℃以上であり、好ましくは、60℃から100℃の範囲であり、更に好ましくは、70℃から90℃の範囲である。50℃よりも低い場合には十分な耐性が得られず、実用にて印刷物から印刷が剥がれる場合がある。100℃よりも高い場合には塗膜が非常に硬くなり、印刷物を折り曲げた際に印刷面にワレ、ヒビが生じる場合がある。
(ポリエーテル変性シロキサン)
インキ中に含まれるポリエーテル変性シロキサンは、前述したようにアンカー剤で使用されるポリエーテル変性シロキサンと同じ成分でも異なる成分であってもよいが、アンカー剤とインキとの親和性を高めるために、同じ成分であることが好ましい。
本発明において、インキ中のポリエーテル変性シロキサンの含有量は、0.3重量%から2重量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.5重量%から1.5重量%であり、更に好ましくは、0.8重量%から1.2重量%の範囲である。インキ中の含有量が0.3重量%より少ないと、インキの濡れ性が低下し、所望の画像が得られない。また、インキ中の含有量が2重量%より多いと、インキの濡れ性は良くなるが、インキの安定性が低下してしまう。
また、本発明のインキは、上述の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、表面調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、増粘剤、水分散ワックス等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全量に対して、0.05〜5重量%の範囲であり、好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
本発明によるインクジェット記録方法は、前記したように、被記録面がプラスチックフィルム等のように疎水性の基材に、アンカー剤を塗布した後、インキ組成物を吐出させ、印刷を行うものである。
アンカーを塗布する工程では、本発明によるアンカー剤を、記録媒体の被記録面に塗布する。この工程は、少なくとも、インクジェット記録を行う次の工程でインキを印字する部分に、予め塗布することが望ましい。
本発明において、アンカー剤の塗布方法は、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター等の公知の接触方式で塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド等の用いて非接触方式で塗布する方法等が挙げられる。
本発明においては、アンカー剤の塗布方法は、液滴を吐出させて記録媒体の被記録面に塗布するインクジェット記録方法が好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインクジェット記録方法は、インキを付着させる前に、塗布したアンカー剤の乾燥工程を含む。この乾燥工程により、記録媒体上にポリエーテル変性シロキサンが配向し、インキの濡れ性が向上し、より高画質な画像を得ることができる。
アンカー剤の乾燥方法は、特に制限されるわけでなく、既存の方法を用いることができる。例えば、記録媒体に熱源を直接接触させて加熱するプリントヒーターや、記録媒体に直接接触させないで赤外線やマイクロウェーブなどを照射したり、温風を吹き付けたりするドライヤーなどが挙げられる。乾燥条件は、使用するアンカー剤の組成、塗布量等により適宜変更することができる。
次に、本発明においては、アンカー剤塗布面にインキを付着させる。
本発明の記録方法は、被記録面がプラスチックフィルム等のように疎水性の高い記録媒体への印刷に適している。この様な記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。また、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙も挙げられる。さらに、アルミ、SUS、ガラスなども含まれる。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中、「部」は、「重量部」を、「%」は、「重量%」をそれぞれ表す。
<アンカー剤の調整>
下記表1に示す組成にて、アンカー剤を調整した。各アンカー剤の調整は、各成分を混合し、充分に攪拌したのち、1μmのメンブランフィルターを用いて濾過を行った。
<インキ組成物の調整>
(顔料分散樹脂の製造例)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、顔料分散樹脂1の溶液を得た。顔料分散樹脂1の重量平均分子量は約16000であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を293.4部添加し、水性化した。その後、ブタノールを除去した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、顔料分散樹脂1の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
(水分散樹脂微粒子の製造例)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水55部と乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)0.4部とを仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート9部、メチルメタクリレート58部、スチレン30部、アクリル1部、アクリルアミド1部、フタル酸ジアリル1部、イオン交換水30部および乳化剤としてアクアロンKH−10 0.6部をホモミキサーで攪拌混合して調製した乳化液を、5部分取して加えた。内温を70℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液4.0部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液5.0部を添加して重合を開始した。反応開始後、内温を75℃に保ちながら上記の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液1.5部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液5.8部を1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノールを添加して、pHを8.9とした。さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して、理論ガラス転移点80℃の水分散樹脂微粒子1の水分散体を得た。
2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートの比率を変えた以外は、同様の方法で、ガラス転移点が60℃の水分散樹脂微粒子2と30℃の水分散樹脂微粒子3を得た。
(顔料分散液の製造例)
顔料としてPigment Blue15:3を20部、顔料分散樹脂1の水溶化液を42.9部、水37.1部をマヨネーズ瓶に仕込み、ディスパーで予備分散した後、直径0.8mmのジルコニアビーズ250部を分散メディアとして仕込み、ペイントシェイカーにて本分散を行い、顔料分散液1を得た。
(インクの製造例)
得られた顔料分散体を20部、水分散性樹脂微粒子1の水分散体を15部、1,2−ブタンジオールを20部、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミドを3部、2−ピロリドンを3部、FZ−2123を0.8部、プロキセルGXLを0.1部、水を38.1部混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することで、インク1を作製した。
表2に記載した組成に従い、上記製造例と同様にして、インキを作成した。
<評価>
(印字物の作成)
表3に示すように、調整したアンカー剤とインキとを組み合わせて、インキセットとした。各インキセットを、インクジェットプリンタVJ−1608HSJ(武藤工業株式会社製)に充填した。記録媒体としてポリ塩化ビニル(メタマーク社製MD−5)を用いて、記録時に記録媒体が50℃となるようにプリントヒーターを調整し、アンカー剤を塗布した。次いで、インキを印字し、70℃で1分間乾燥させた。
(基材への濡れ性評価)
インキの印字率100%のベタ印刷部において、目視で、白抜けがないものを○、若干白抜けスジが発生しているものを△、明らかに白抜けが発生しているものを×とした。

(基材の風合い)
アンカー剤の塗布部において、目視で、非塗布部と比較して風合いに変化がないものを○、若干変化しているものを△、明らかに変化しているのを×。
(密着性)
セロテープ(登録商標)(ニチバン製)を印刷部に貼り、指で5回擦った後に、テープを引き剥がし、印刷部の状態を目視で観察した。インキの剥離がないものを○、インキが一部剥離するものを△、インキが完全に剥離するものを×とした。
(耐水性)
ラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)で、試験用布片(金巾3号)に水道水を1滴たらし加重200g、50回印刷面を擦った。インキの剥離がなく、試験用布片も着色してないものを○、インキが一部剥離し、試験用布片が着色したものを△、インキの完全に剥離し、試験用布片が着色したものを×とした。


Claims (5)

  1. 水と、水溶性有機溶剤と、ポリエーテル変性シロキサンとを含有するインクジェット記録用アンカー剤と、
    顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、水分散性樹脂微粒子と、ポリエーテル変性シロキサンとを含有する水性インキ組成物
    とからなるインクジェット記録用インキセットであって、
    前記アンカー剤中のポリエーテル変性シロキサンの含有量が、アンカー剤全重量に対して0.05〜0.4重量%であり、
    水性インキ組成物中の水分散樹脂微粒子の含有量が、水性インキ組成物全重量に対して6重量%以上であり、水分散樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)が50℃以上であることを特徴とするインクジェット記録用インキセット。
  2. 請求項1に記載のインクジェット記録用インキセットを用いるインクジェット記録方法であって、記録媒体上に、前記アンカー剤を塗布する工程と、その後に前記のインキ組成物の液滴を吐出する工程とを有することを特徴とする、インクジェット記録方法。
  3. 前記記録媒体上に塗布されたアンカー剤を乾燥させる工程を有することを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記記録媒体がプラスチックフィルムであることを特徴とする、請求項2又は3に記載のインクジェット記録方法。
  5. 請求項2から4に記載のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法によって記録された記録物。
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