JP5824720B2 - 水性インキ組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの難吸収性の基材への印字適性に優れ、保存安定性、インクジェットノズルからの吐出安定性、印刷物の耐性に優れる水系インクジェット用インキに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィスや家庭での出力機として広く用いられている。
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機としての利用が期待され、溶剤インキやUVインキによる非吸収性の基材(PVC, PETなどのプラスチック基材)に対しても印刷が可能な印刷機が実際に市販されてきた。しかし、近年、環境面への対応といった点から水性インキの需要が高まっている。
インクジェット用の水性インキとしては特許文献1, 2, 3のように印刷対象を普通紙や写真光沢紙のような専用紙としたインキの開発が古くからなされている。しかし、産業用途、特に屋外広告などに使用されるような非吸収性の基材に対しては、これらのインキを使用しても十分な画質、耐性をもった印刷物を得ることはできず、実用上使用することができなかった。これは非吸収性の基材では水性インキは濡れ広がり難いことと、基材へのインキの浸透が起こりづらくドット同士が滲んでしまうことが原因である。
特許文献4, 5では水性インキによる難吸収性の基材への印刷を実現するために特定のアミド系溶剤を使用している。この溶剤を使用することで非吸収性の基材に対して浸透することで、ドット同士の滲みを防いでいる。しかしながら、これらのインキは安定性が悪く、増粘してしまうことでインクジェットヘッドからの吐出性が短期間で悪化してしまうため、運用の面から使用することはできなかった。
特開2001-354888号公報 特許第4595281号 特開2008-247941号公報 特開2010-168433号公報 特開2011-68838号公報
本発明の目的は、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの難吸収性の基材への印字適性に優れ、保存安定性、インクジェットノズルからの吐出安定性、印刷物の耐性に優れる水系インクジェット用インキを提供することにある。
すなわち本発明は、少なくともアルカンジオール系溶剤、式1で表される有機溶剤、バインダー樹脂、水を含むことを特徴とする水性インキ組成物に関する。
また、インキ中に含まれる式1で表される有機溶剤の含有量が0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする上記水性インキ組成物に関する。
また、インキ中に含まれるアルカンジオール系溶剤の含有量が15質量%以上、45%質量以下であることを特徴とする上記水性インキ組成物に関する。
さらに、アルカンジオール系溶剤が式2で表されるものであることを特徴とする上記水性インキ組成物に関する。
さらに、インクジェット用インキであることを特徴とする上記水性インキ組成物に関する。
さらに、上記インクジェット用インキで難吸収性の基材へ印刷する印刷方法に関する。
さらに、上記インキで印刷してなる印刷物に関する。
本発明により、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの難吸収性の基材への印字適性に優れ、保存安定性、インクジェットノズルからの吐出安定性、印刷物の耐性に優れる水系インクジェット用インキを提供することが可能となった。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。
難吸収性基材に対して水性インキで印刷を行うには、難吸収性基材へ浸透することが可能な溶剤を使用することが効果的である。これは浸透性の溶剤を使用しない場合にはインキが基材に対して濡れずに弾かれてしまうが、浸透性の溶剤を使用した場合にはこれが基材へ浸透することで、インキを定着させることが可能となるためである。本発明者らの検討では一般式1で表される有機溶剤のもつ浸透力が非常に高く、難吸収性の基材に対する定着性が上がることが確認された。また、インキが定着することによって色間のニジミが軽減される。
[一般式1]
Figure 0005824720
(式中R1は炭素数1〜10のエーテル結合を有しても良い炭化水素基を示し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のエーテル結合を有しても良い炭化水素基であり、互いに同一でも異なっていても良く、更に互いに結合して環構造を形成しても良い。)
しかしながら、一般式1で表される有機溶剤のみを使用したインキでは基材への浸透力が高すぎるため、ドットが濡れ広がる前に定着してしまいベタ印刷が埋まらず白抜けが発生してしまう。また、その高い溶解力によりインキの分散安定性を崩し、粘度が上がってしまうことから、長期の運用ができず実用化できるものではない。
一般式1で表される有機溶剤に加えアルカンジオール系溶剤を使用することで、これらの問題が解決されることが本発明者らの検討で確認された。正確な原理は不明であるが、次のようなことが推察される。アルカンジオール系溶剤は難吸収性の基材に対しては浸透し難い溶剤である。これらを併用することで一般式1で表される有機溶剤がある程度浸透することでインキを基材へ定着させ、その一方でアルカンジオール系溶剤が基材上で濡れ広がることで白抜けをなくしているものと考えられる。アルカンジオール系溶剤を一般式1で表される有機溶剤と併用せずに用いた場合には基材に対する浸透力が足らずに、ドットが定着しないため色ムラが発生する。安定性に関してもアルカンジオール系溶剤が溶解力を和らげることで、安定性を向上させているものと考えられる。
また、吐出についてもアルカンジオール系溶剤を使用することで安定性が増し、長時間の連続印字してもノズル抜けがほとんど起きないことが確認された。これはアルカンジオール系溶剤が程良い乾燥性と保湿性を有するためにインクジェットヘッドのノズル周辺での乾燥を防止しているためと考えられる。
一般式1で表される有機溶剤のR1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、EO変性(1〜3モル)メチル基、EO変性(1〜3モル)エチル基、EO変性(1〜3モル)ブチル基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、メチル基が最も好ましい。R2, R3の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシブチル基が挙げられる。特に好ましくはメチル基である。
一般式1で表される有機溶剤の配合量としては0.1%質量以上、10%質量以下が好ましい。配合量がこれよりも多い場合にはインキの安定性が低下することで実用に適さなくなる場合がある。特に好ましくは0.1質量%以上、5%質量以下の範囲である。
アルカンジオール系溶剤としては1, 2-プロパンジオール、1, 3-プロパンジオール、1, 2-ブタンジオール、1, 3-ブタンジオール、1, 4-ブタンジオール、1, 2-ペンタンジオール、1, 5-ペンタンジオール、1, 2-ヘキサンジオール、1, 6-ヘキサンジオール、2-メチル-2, 4-ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも一般式2のような1, 2-プロパンジオール、1, 2-ブタンジオール、1, 2-ペンタンジオール、1, 2-ヘキサンジオールといった1, 2-アルカンジオールを使用すると基材への濡れ性を向上させ、印刷品質を向上させることができるため好ましい。
[一般式2]
Figure 0005824720
(式中R4は炭素数1〜10の分岐を有しても良い炭化水素基を示す。)
アルカンジオール系溶剤の配合量としては15質量%以上、45質量%以下が好ましい。配合量がこれよりも少ない場合には乾燥性が高くなり吐出安定性が低下する場合や、インキの安定性が低下する場合がある。また、これよりも多い場合は逆に乾燥性が遅くなり印刷物にニジミ等が発生する場合がある。特に好ましくは20質量%以上、40質量%以下の範囲である。
本発明では乾燥性や粘度等の調整するために必要に応じて一般式1で表される有機溶剤とアルカンジオール系溶剤以外の溶剤も併用することができる。併用可能な溶剤としては下記に挙げられるようなものがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
併用可能な溶剤としてはジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤や、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-メチルオキサゾリジノン、N-エチルオキサゾリジノン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどの複素環化合物が挙げられる。これらの中でもグリコール系溶剤はインキの物性に悪影響を与えることが少ないため、好ましく使用することができる。
また、本発明ではこれらの溶剤と更にバインダー樹脂を併用することで高い印刷物の耐性を発揮することが可能となっている。本発明者らの検討では他の溶剤を使用した時よりも、一般式1で表される有機溶剤とアルカンジオール系溶剤を組み合わせることでより高い耐性を示すことが確認された。これは溶剤が浸透するのと同時に併用しているバインダー樹脂の一部が共に浸透し、基材と混和されるためと考えられる。
水性インキのバインダー樹脂としては大別して水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られているが、一般に樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であり、高い耐性を実現することができる。また、樹脂微粒子はインキ粘度を低くすることができ、より多量の樹脂をインキ中に配合することができることから、インクジェットインキの耐性を高めるのに適していると言える。樹脂の種類としてはアクリル系、ウレタン系、スチレンブタジエン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系等が挙げられる。インキの安定性、印刷物の耐性の面を考慮するとアクリル系の樹脂微粒子を使用することが望ましい。
バインダー樹脂のガラス転移点温度(Tg)を高くすることで耐擦性、耐薬品性等の耐性を向上させることが可能であり、好ましくは50〜120℃、より好ましくは80〜100℃の範囲である。50℃よりも低い場合には十分な耐性が得られず、実用にて印刷物からインキ塗膜が剥がれる場合がある。また、120℃よりも高い場合には塗膜が非常に硬くなり、印刷物を折り曲げた際に印刷面にワレ、ヒビが生じる場合がある。
上記したようなバインダー樹脂のインキ中における含有量は、固形分でインキの全質量の2質量%以上、30質量%以下の範囲であり、より好ましくは3質量以上、20質量%以下の範囲であり、特に好ましくは6質量%以上、15質量%以下の範囲である。
また、本発明のインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全質量に対して、0.05質量%以上、10質量%以下、好ましくは0.2質量%以上、5質量%以下が好適である。
本発明では単色のみの使用ではなく、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインキを組み合わせた4色以上のインキセットとしても利用することができる。インキセットとして使用する場合には、インキ間の組成を微調整し粘度や表面張力などを揃え、印刷時の基材上での濡れ広がりや乾燥性を全色で均一にすることで、印刷品質を更に向上させることができる。
それぞれの色に使用する顔料を例示するとシアンの顔料としては、例えば、C. I. Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、 C. I. Vat Blue 4、6等が挙げられる。マゼンタ顔料としてはC. I. Pigment Red 5、7、9、12、31、48、49、52、53、57、97、112、120、122、147、149、150、168、177、178、179、202、206、207、209、238、242、254、255、269、C. I. Pigment Violet 19、23、29、30、37、40、50等が挙げられる。イエロー顔料としてはC. I. Pigment Yellow 74, 120, 150, 151, 154, 155, 180, 185, 213等が挙げられる。
ブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビアンカーボン製)、REGA330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット製)、Nipex90、Nipex150T、Nipex160IQ、Nipex170IQ、Nipex75、Printex85、Printex95、Printex90、Printex35、PrintexU(以上、エボニックデグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
上述の中でもカラー顔料についてはシアン顔料としてC.I.Pigment Blue 15:3、15:4、マゼンタ顔料としてC. I. Pigment Red 122、202、C. I.Pigment Violet 19、イエロー顔料としてC. I. Pigment Yellow 120, 150, 155を用いるのが好ましい。これらを使用することで高い耐候性、広い色域を実現できる。
本発明では上述した顔料の限定されるものではなく、その他の顔料を使用してオレンジ、グリーン、ホワイト、シルバー等の特色も組み合わせたインキセットとして使用することができる。また、印刷物の光沢を出すために顔料を除いたクリアインキも使用することができる。
上記したような成分からなる本発明のインキの作製方法としては、下記のような方法が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。先ず初めに、分散剤と水とが混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、サンドミル等の分散機を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の顔料分散液を得る。次に、必要に応じてこの顔料分散液に、バインダー樹脂、水溶性溶剤、或いは、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌、必要に応じて濾過して本発明のインキとする。
[実施例]
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
(分散樹脂1の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV-601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V-601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。分散樹脂1の重量平均分子量は約16000であった。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し、水性化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、分散樹脂1の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
(バインダー樹脂1の製造)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)0.2部とを仕込み、別途、2-エチルヘキシルアクリレート10部、メチルメタクリレート57部、スチレン30部、ジメチルアクリルアミド2部、メタクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して樹脂微粒子水分散体を得た。得られた樹脂微粒子水分散体をバインダー樹脂1とした。バインダー樹脂1の計算上のガラス転移点温度は80℃である。
(顔料分散体Aの製造)
顔料としてPigment Blue 15:3を20部、分散樹脂1を40部、水40部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間分散を行い、顔料分散体Aを得た。
(顔料分散体Bの製造)
顔料としてPigment Red 122を30部、分散樹脂1を40部、水30部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間分散を行い、顔料分散体Bを得た。
(顔料分散体Cの製造)
顔料としてPigment Yellow 120を30部、分散樹脂1を30部、水40部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間分散を行い、顔料分散体Cを得た。
(顔料分散体Dの製造)
顔料としてカーボンブラックを20部、分散樹脂1を40部、水40部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間分散を行い、顔料分散体Dを得た。
(実施例1)
顔料分散体Aを用いて表1記載のとおりの原料をディスパーにて撹拌を行いながら混合し、十分に均一になるまで攪拌した後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去しシアンインキを作成した。同様にして顔料分散体B〜Dを用いてマゼンタ、イエロー、ブラックインキを作成した。これらのインキを用いて安定性、印刷評価を行った。
(実施例2〜18、比較例1〜19)
表1、表2記載の原料を用いて実施例1と同様にしてインキの作成を行い、インキの評価を行った。
Figure 0005824720
Figure 0005824720
(保存安定性評価)
作成したシアンインキの粘度をE型粘度計(東機産業社製TVE-20L)を用いて、25℃において回転数50rpmという条件で測定した。このインキを70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化を評価した。評価基準は下記のとおりであり、A、 B、 C評価が実用可能領域である。
A : 四週間保存後の粘度変化率が±10%未満
B : 二週間保存後の粘度変化率が±10%未満
C : 一週間保存後の粘度変化率が±10%未満
D : 一週間保存後の粘度変化率が±10〜20%
E : 一週間保存後の粘度変化率が±20%以上
(印刷物作成)
上記で作成した4色のインクジェット用インキを、25℃環境下でセイコーアイ・インフォテック社製ソルベントインクインクジェットプリンタColor Painter 64SPlusに充填し、基材を50℃に加温しながら画像を印刷した。基材にインキを塗布後、80℃、3分で加熱乾燥を行い、評価用印字物を得た。この印刷物を用いて耐性評価、印刷品質の確認、耐性試験を行った。基材としてはPVCメディア(メタマーク社製 MD-5)を使用した。
(吐出性)
上記プリンタにて1m×1mのベタ印字を行い、印字前後でノズルチェックパターンを印字してノズル抜け本数をカウントし、その本数で評価を行った。
○:ノズル抜け無し
△:ノズル抜け1〜10本
×:ノズル抜け11本以上
(印刷品質1)
下記の基材に対して印字率100%にてベタ印刷したサンプルを目視で確認し、色ムラ、白抜けの発生を評価した。色ムラ、白抜け全く見られなかったものは◎、わずかに色ムラが見られたものは○、白抜けが見られるが画質に影響ない程度のものは△、何れの現象も見られ画質低下を起こしているものは×とした。
(印刷品質2)
下記の基材に対して印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のニジミを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
(耐性試験)
印刷基材としてPVCを使用して印刷を行ったサンプルを綿棒にエタノールを染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が51回以上のものは○、20〜50回のものは△、20回未満のものは×とした。
実施例ではアルカンジオール系溶剤と式1で表される有機溶剤を使用することによって保存安定性、吐出安定性、印刷品質、耐性を満足するインキを得ることが出来ている。特にアルカンジオール系溶剤として1,2-アルカンジオールを使用した場合には非常に良好な印刷品質が得られている。
一方、比較例では請求項の要件を満たしていないため、何れかの性能が低くなり、実用上使用できないことが確認された。比較例1〜4, 9〜13では式1で表される有機溶剤を使用していないため印刷品質が低い。比較例5〜8, 14〜18ではアルカンジオール系溶剤を使用していないため安定性が低い。比較例9〜18のとおりアルカンジオール系溶剤もしくは式1で表される有機溶剤とその他の溶剤を組み合わせても、全ての性能を満足するインキはできず、アルカンジオール系溶剤と式1で表される有機溶剤の組み合わせのみで性能を発揮することが示された。

Claims (5)

  1. 少なくともアルカンジオール系溶剤、一般式1で表される有機溶剤、バインダー樹脂、水を含むことを特徴とする水性インキ組成物であって、
    アルカンジオール系溶剤が一般式2で表されるものであり、
    インキ中に含まれるアルカンジオール系溶剤の含有量が15質量%以上、45質量%以下であることを特徴とする水性インキ組成物。
    [一般式1]
    Figure 0005824720
    (式中R1は炭素数1〜10のエーテル結合を有しても良い炭化水素基を示し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のエーテル結合を有しても良い炭化水素基であり、互いに同一でも異なっていても良く、更に互いに結合して環構造を形成しても良い。)
    [一般式2]
    Figure 0005824720
    (式中R4は炭素数1〜10の分岐を有しても良い炭化水素基を示す。)
  2. インキ中に含まれる一般式1で表される有機溶剤の含有量が0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の水性インキ組成物。
  3. インクジェット用インキであることを特徴とする請求項1または2記載の水性インキ組成物。
  4. 請求項記載のインクジェット用インキで難吸収性の基材へ印刷する印刷方法。
  5. 請求項1〜3何れか記載のインキで印刷してなる印刷物。

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