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Description
本発明は燃料電池システムに関する。
電解質並びに電解質の両側にそれぞれ配置されるカソード極及びアノード極を備えた膜電極接合体と、カソード極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路とを有する燃料電池セルと、酸化剤ガス通路の入口に連結された酸化剤ガス供給路と、酸化剤ガス供給路内に配置されてカソード極に酸化剤ガスを送るための酸化剤ガス供給器とを備えた、燃料電池システムが従来から知られている。
燃料電池セル、特に電解質ないし電極の湿潤度合いが低くなると、燃料電池セルの発電量ないし効率が低くなるおそれがある。ここで、燃料電池セルの湿潤度合いは燃料電池セルの出力電流値により表される。すなわち、燃料電池セルの湿潤度合いが低くなるにつれて燃料電池セルの出力電流値は小さくなる。一方、燃料電池セルに酸化剤ガスが送られると、燃料電池セルから流出する酸化剤ガスないしカソードオフガスによって燃料電池セルから水分が持ち去られる。燃料電池セルに送られる酸化剤ガス量が少なくなると、燃料電池セルから持ち去られる水分量が少なくなる。
そこで、燃料電池セルの出力電流があらかじめ定められたしきい電流値よりも小さいときに、酸化剤ガス供給器を制御して燃料電池セルに送られる酸化剤ガス量を減少するようにした、燃料電池システムが公知である(特許文献1参照)。その結果、カソードオフガスにより持ち去られる水分量が低減され、したがって燃料電池セルの湿潤度合いが次第に高められる、すなわち回復される。
しかしながら、特許文献1では、燃料電池セルからの水分の持ち去りが抑制されるにすぎない。このため、燃料電池セルの発電量を増大ないし回復させるのに長時間を要するという問題点がある。
本発明によれば、電解質並びに電解質の両側にそれぞれ配置されるカソード極及びアノード極を備えた膜電極接合体と、カソード極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路とを有する燃料電池セルと、酸化剤ガス通路の入口に連結された酸化剤ガス供給路と、酸化剤ガス供給路内に配置されてカソード極に酸化剤ガスを送るための酸化剤ガス供給器とを備えた、燃料電池システムにおいて、前記カソード極が導電性材料と、触媒と、これら導電性材料及び触媒を覆うアイオノマとを含んでおり、燃料電池セルの出力電圧値があらかじめ定められたしきい電圧値よりも低くかつ燃料電池セルの電気抵抗値があらかじめ定められたしきい抵抗値よりも高いときには、酸化剤ガス供給器を制御して燃料電池セルに送られる酸化剤ガス量を増大する酸化剤ガス増量制御を行う、燃料電池システムが提供される。
燃料電池セルの湿潤度合いの低下により燃料電池セルの発電量が減少したときに燃料電池セルの発電量を短時間で増大させることができる。
図1を参照すると、燃料電池システムAは燃料電池セル1を備える。燃料電池セル1は膜電極接合体2を有する。図2に示されるように、膜電極接合体2は膜状の電解質2eと、電解質2eの一側に形成されたアノード極2aと、電解質2eの他側に形成されたカソード極2cとを備える。これらアノード極2a及びカソード極2cは図1に示されるように、一方ではDC/ACコンバータ3を介して例えば車両駆動用の電気モータ4に電気的に接続され、他方ではAC/ACコンバータ5を介して蓄電器6に電気的に接続される。図1に示される燃料電池システムAでは蓄電器6はバッテリから構成される。また、図1及び図2に示されるように燃料電池セル1内には、アノード極2aに燃料ガスを供給するための燃料ガス通路10と、カソード極2cに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路20とが形成される。燃料電池セル1内には更に、燃料電池セル1に冷却水を供給するための冷却水通路30が形成される。
なお、図1に示される燃料電池システムAでは、複数の燃料電池セル1が設けられ、これら燃料電池セル1が互いに直列的に積層されることにより燃料電池スタックが形成されている。この場合、上述の燃料ガス通路10、酸化剤ガス通路20及び冷却水通路30はそれぞれ互いに連結される。
燃料ガス通路10の入口には燃料ガス供給路11が連結され、燃料ガス供給路11は燃料ガス源12に連結される。本発明による実施例では燃料ガスは水素から形成され、燃料ガス源12は水素タンクから形成される。燃料ガス供給路11内には燃料ガス供給路11内を流れる燃料ガスの量を制御する燃料ガス制御弁13が配置される。一方、燃料ガス通路10の出口にはアノードオフガス通路14が連結され、アノードオフガス通路14内にはアノードオフガス通路14内を流れるアノードオフガスの量を制御するアノードオフガス制御弁15が配置される。燃料ガス制御弁13が開弁されると、燃料ガス源12内の燃料ガスが燃料ガス供給路11を介して燃料電池セル1内の燃料ガス通路10内に供給される。このとき燃料ガス通路10から流出するガス、すなわちアノードオフガスはアノードオフガス通路14内に流入する。
また、酸化剤ガス通路20の入口には酸化剤ガス供給路21が連結され、酸化剤ガス供給路21は酸化剤ガス源22に連結される。本発明による実施例では酸化剤ガスは空気から形成され、酸化剤ガス源22は大気から形成される。酸化剤ガス供給路21内には酸化剤ガスを圧送する酸化剤ガス供給器ないしコンプレッサ23が配置される。一方、酸化剤ガス通路20の出口にはカソードオフガス通路24が連結される。コンプレッサ23が駆動されると、酸化剤ガス源22内の酸化剤ガスが酸化剤ガス供給路21を介して燃料電池セル1内の酸化剤ガス通路20内に供給される。このとき酸化剤ガス通路20から流出するガス、すなわちカソードオフガスはカソードオフガス通路24内に流入する。
図1に示される実施例では、燃料電池セル1は対向流式燃料電池セルから形成される。すなわち、燃料ガス通路10の入口及び酸化剤ガス通路20の出口が互いに隣接し、燃料ガス通路10の出口及び酸化剤ガス通路20の入口が互いに隣接し、したがって燃料ガス及び酸化剤ガスは燃料電池セル1内を互いにほぼ平行にかつ逆方向に流れる。別の実施例では、燃料電池セル1は並行流式燃料電池セルから形成される。すなわち、燃料ガス通路10の入口及び酸化剤ガス通路20の入口が互いに隣接し、燃料ガス通路10の出口及び酸化剤ガス通路20の出口が互いに隣接し、したがって燃料ガス及び酸化剤ガスは燃料電池セル1内を互いにほぼ平行にかつ同方向に流れる。更に別の実施例では、燃料電池セル1は直行流式燃料電池セルから形成される。すなわち、燃料ガス及び酸化剤ガスは燃料電池セル1内を互いにほぼ直交して流れる。
更に図1を参照すると、冷却水通路30の入口には冷却水供給路31の一端が連結され、冷却水供給路31の出口には冷却水供給路31の他端が連結される。冷却水供給路31内には冷却水を圧送する冷却水ポンプ32と、ラジエータ33とが配置される。ラジエータ33上流の冷却水供給路31と、ラジエータ33と冷却水ポンプ32間の冷却水供給路31とはラジエータバイパス通路34により互いに連結される。また、ラジエータバイパス通路34内を流れる冷却水量をそれぞれ制御するラジエータバイパス制御弁35が設けられる。図1に示される燃料電池システムAではラジエータバイパス制御弁35は三方弁から形成され、ラジエータバイパス通路34の入口に配置される。冷却水ポンプ32が駆動されると、冷却水ポンプ32から吐出された冷却水は冷却水供給路31を介して燃料電池セル1内の冷却水通路30内に流入し、次いで冷却水通路30を通って冷却水供給路31内に流入し、ラジエータ33又はラジエータバイパス通路34を介して冷却水ポンプ32に戻る。この場合、ラジエータバイパス制御弁35によりラジエータ33に送られる冷却水量が増大されると冷却水温度が低下され、したがって燃料電池セル1の温度が低下される。あるいは、冷却水ポンプ32から吐出される冷却水量が増大されると、燃料電池セル1の温度が低下される。このように冷却水供給路31、冷却水ポンプ32、ラジエータバイパス制御弁35は燃料電池セル温度を制御する燃料電池セル温度制御器として作用する。
電子制御ユニット50はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス51によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)52、RAM(ランダムアクセスメモリ)53、CPU(マイクロプロセッサ)54、入力ポート55及び出力ポート56を具備する。燃料電池セル1内の冷却水通路30に隣接する冷却水供給路31には冷却水の温度を検出する温度センサ40が取り付けられる。温度センサ40により検出される冷却水温は燃料電池セル1の温度を表している。また、燃料電池セル1のアノード極2a及びカソード極2c間には燃料電池セル1の出力電圧値及び電気抵抗値をそれぞれ検出する電圧計41及び電気抵抗計42が設けられる。温度センサ40、電圧計41及び電気抵抗計42の出力信号は対応するAD変換器57を介して入力ポート55に入力される。一方、出力ポート56は対応する駆動回路58を介して燃料ガス制御弁13、アノードオフガス制御弁15、コンプレッサ23、冷却水ポンプ32、及びラジエータバイパス制御弁35に接続される。
図3はカソード極2cの部分拡大断面図を示している。図3に示されるように、カソード極2cは粒子状の導電性材料2c1と、導電性材料2c1を覆うアイオノマ2c2と、導電性材料2c1に担持された粒子状の触媒2c3とを含んでいる。また、図3に示される例では、導電性材料2c1はカーボンからなり、アイオノマ2c2は電解質2eと同一又は類似の電解質からなり、触媒2c3は白金からなる。なお、図3において、2c4はカソード極2cに形成される間隙を表している。
さて、燃料電池セル1内の燃料ガス通路10内に燃料ガスが供給されると共に酸化剤ガス通路20内に酸化剤ガスが供給されると、燃料電池セル1において電気エネルギが発生される。この発生された電気エネルギは車両駆動用電気モータ4に送られ、それによりモータ4が駆動される。あるいは、発生された電気エネルギは蓄電器6に送られ、蓄えられる。
この場合、カソード極2cでは次の電気化学反応(1)が行われる。
O2+4H++4e−→2H2O …(1)
O2+4H++4e−→2H2O …(1)
すなわち、図4に示されるように、水素イオンH+が電解質2eを通ってカソード極2c、特に触媒2c3の表面に到達する。また、酸素O2がアイオノマ2c2を透過して触媒2c3の表面に到達する。あるいは、カソード極2cに形成される間隙(図3)を通って触媒2c3に到達する。更に、電子e−が導電性材料2c1を介して触媒2c3の表面に到達する。その結果、上述の電気化学反応(1)が生じ、水分が発生する。
ところで、燃料電池セル1の温度が高くなると水分蒸発量の増大により燃料電池セル1、特に膜電極接合体2の湿潤度合いが低下し、燃料電池セル1の湿潤度合いが低下すると燃料電池セル1の発電量ないし効率が低くなるおそれがあることが従来から知られている。この現象のメカニズムについて本願発明者らが鋭意研究した結果、燃料電池セル1の発電量の低下にはアイオノマ2c2の酸素透過度が関与していることが判明したのである。このことを、図5を参照しながら説明する。
図5はアイオノマの周囲雰囲気の相対湿度(%)と、アイオノマの酸素溶解度との関係を示す実験結果である。この相対湿度はアイオノマの湿潤度合いを表している。図5からわかるように、相対湿度が低下すると、アイオノマの酸素溶解度が低下する。一方、アイオノマの酸素透過度はアイオノマの酸素溶解度とアイオノマの酸素拡散係数との積で表される。したがって、アイオノマの湿潤度合いが低下すると、アイオノマの酸素透過度が低下するということになる。
アイオノマの酸素透過度が低下すると、カソード極2cに到達する酸化剤ガス量ないし酸素量が減少する。その結果、上述の電気化学反応(1)が進みにくくなり、したがって燃料電池セル1の発電量が減少する。これが、燃料電池セル1の湿潤度合いが低下したときに生ずる燃料電池セル1の発電量の減少のメカニズムである。
そうすると、燃料電池セル1の湿潤度合いが低くなったときにアイオノマ2c2を透過する酸化剤ガスないし酸素の量を増大ないし回復させれば、燃料電池セル1の発電量を増大ないし回復させることができる。アイオノマ2c2を透過する酸化剤ガス量を増大させるためには、カソード極2c周りの酸化剤ガス量を増大させればよく、そのためには燃料電池セル1ないし酸化剤ガス通路20に送られる酸化剤ガス量を増大させればよい。
一方、燃料電池セル1の湿潤度合いは燃料電池セル1の電気抵抗値により表される。すなわち、燃料電池セル1の湿潤度合いが低くなるにつれて燃料電池セル1の電気抵抗値が大きくなる。
一方、通常の発電制御中には、燃料電池セル1の出力電流値が燃料電池セル1の目標発電量に応じて定まる目標電流値になるように燃料電池システムAが制御される。したがって、燃料電池セル1の発電量は燃料電池セル1の出力電流値及び出力電圧値の積により表されることを考えると、同一の出力電流値に対し、出力電圧値が低いときには出力電圧値が高いときに比べて、燃料電池セル1の発電量が減少しているといえる。
そこで本発明による実施例では、燃料電池セル1の出力電圧値があらかじめ定められたしきい電圧値よりも低くかつ燃料電池セル1の電気抵抗値があらかじめ定められたしきい抵抗値よりも高いときには、酸化剤ガス供給器23を制御して燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量を増大する酸化剤ガス増量制御を行うようにしている。その結果、酸化剤ガス通路20内の酸化剤ガス量ないし濃度が増大され、それによりアイオノマを透過してカソード極2cに到達する酸化剤ガス量が増大される。したがって、燃料電池セル1の発電量が速やかに増大される。
燃料電池セル1の発電量が増大されるということは、上述した電気化学反応(1)により生成される水分量が増大することを意味している。その結果、燃料電池セル1の湿潤度合いも上昇ないし回復される。燃料電池セル1の湿潤度合いが上昇されるとアイオノマの酸素透過度が上昇し、したがって燃料電池セル1の発電量が更に増大される。
ところで、燃料電池セル1の湿潤度合いが低くなったときに燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量を減少する酸化剤ガス量減少制御を行う従来技術が知られている。この従来技術では、カソードオフガスにより燃料電池セル1から持ち去られる水分量が減少されるので燃料電池セル1の湿潤度合いが高められ、したがって燃料電池セル1の発電量が増大ないし回復される。ところが、酸化剤ガス量が減少されるとカソード極2c周りの酸化剤ガス量が減少し、したがってアイオノマを透過してカソード極2cに到達する酸化剤ガス量が更に減少する。このため、燃料電池セル1の発電量は酸化剤ガス量減少制御の初期に更に減少し、その後に増大する。すなわち、酸化剤ガス量減少制御では、燃料電池セル1の発電量を増大させるのに長時間を要することになる。
一方、燃料電池セル1の湿潤度合いが低くなったときに燃料電池セル1の温度を低下させる燃料電池温度低下制御を行う別の従来技術も知られている。この別の従来技術では、燃料電池セル1のカソード極2c周りにおいて水蒸気の凝縮が促進されるので燃料電池セル1の湿潤度合いが高められ、したがって燃料電池セル1の発電量が増大ないし回復される。ところが、燃料電池セル1の冷却水温度を低下することにより燃料電池温度低下制御を行う場合には、燃料電池セル1の温度が低下するのに長時間を要する。あるいは、燃料電池セル1の温度を低下させると上述した電気化学反応(1)が進行しにくくなる。いずれにしても、燃料電池セル1の発電量を増大ないし回復するのに長時間を要することになる。
図6は上述の燃料電池温度低下制御を行ったときの燃料電池セル1の出力電圧値VFCを示す実験結果である。図6においてta1は燃料電池セル1の出力電圧値VFCがあらかじめ定められたしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値があらかじめ定められたしきい抵抗値よりも高くなった時間を示している。図6からわかるように、燃料電池セル1の出力電圧値VFCは燃料電池温度低下制御が開始されてもしばらくの間は低下し続け、しばらくした後に上昇し始める。すなわち、この場合には燃料電池セル1の発電量を増大ないし回復するのに長時間を要する。
これに対し、図7は酸化剤ガス増量制御を行ったときの燃料電池セル1の出力電圧値VFCを示す実験結果である。図7においてtb1は燃料電池セル1の出力電圧値VFCがあらかじめ定められたしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値があらかじめ定められたしきい抵抗値よりも高くなった時間を示している。図7からわかるように、酸化剤ガス増量制御が開始されると燃料電池セル1の出力電圧値VFCが直ちに上昇し、したがって短時間のうちに回復される。
実際、本願発明者らの実験によれば、出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなってから回復するまでに必要な時間は図6の例では約2分であったのに対し、図7の例では約1秒であった。
次に、図8から図10を参照して本発明による実施例を更に説明する。
図8に示される例では、時間tc1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがあらかじめ定められたしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがあらかじめ定められたしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBから増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大され維持される。なお、ベース酸化剤ガス量QOFCBは酸化剤ガス増量制御が行われない通常制御時の酸化剤ガス量であって、例えば燃料電池セル1の目標発電量に応じて定められる。
図8に示される例では、時間tc1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがあらかじめ定められたしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがあらかじめ定められたしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBから増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大され維持される。なお、ベース酸化剤ガス量QOFCBは酸化剤ガス増量制御が行われない通常制御時の酸化剤ガス量であって、例えば燃料電池セル1の目標発電量に応じて定められる。
次いで、時間tc2において、燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上になると、すなわち燃料電池セル1の出力電圧値VFCが回復されると、酸化剤ガス増量制御が停止される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBまで戻される。なお、図8に示される例では、時間tc2において燃料電池セル1の電気抵抗値RFCはしきい抵抗値RFCTHよりも低くなっており、したがって回復されている。すなわち、このように酸化剤ガス増量制御が一時的に行なわれ、それによって燃料電池セル1の出力電圧値VFC及び電気抵抗値RFCが回復される。
図9に示される例では、時間td1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。次いで、時間td2において、電気抵抗値RFCがあらかじめ定められた上限抵抗値RFC1よりも高くなると、酸化剤ガス増量制御が停止される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBに戻される。また、時間td2において、燃料電池セル1の温度を低下させる燃料電池温度低下制御が開始される。その結果、燃料電池セル1の温度TFCがベース燃料電池セル温度TFCBから低下燃料電池セル温度TFCBLまで低下され維持される。なお、ベース燃料電池セル温度TFCBは燃料電池温度低下制御が行われない通常制御時の燃料電池セル温度であって、例えば一定値を越えないように制御されている。また、冷却水の温度低下及び冷却水の増量の一方又は両方により燃料電池温度低下制御が行われる。
酸化剤ガス増量制御が行われると、カソードオフガスにより燃料電池セル1から持ち去られる水分量が増大し、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが過度に高くなるおそれがある。そこで、図9に示される例では、酸化剤ガス増量制御中に電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなったときには、酸化剤ガス増量制御が停止される。その結果、電気抵抗値RFCが過度に高くなるのが阻止される。一方、依然として出力電圧値VFCを回復する必要がある。そこで、図9に示される例では、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなったことにより酸化剤ガス増量制御が停止されたときには、燃料電池温度低下制御が行われる。その結果、出力電圧値VFCが次第に上昇し、電気抵抗値RFCが次第に低下する。
次いで、時間td3において、燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上になりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTH以下になると、すなわち燃料電池セル1の出力電圧値VFC及び電気抵抗値RFCが共に回復されると、燃料電池温度低下制御が停止される。その結果、燃料電池セル1の温度がベース燃料電池セル温度TFCBまで戻される。
図10に示される例では、時間te1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。次いで、時間te2において、電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなると、酸化剤ガス増量制御が停止されると共に燃料電池温度低下制御が開始される。
次いで、時間te3において燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTH以下になったにも関わらず、すなわち電気抵抗値RFCが回復されたにも関わらず、燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低いときには、燃料電池セル1の出力電圧値を上昇させるための別制御が開始される。すなわち、この場合には燃料電池セル1の湿潤度合いの低下とは異なる理由、例えばフラッディングにより、燃料電池セル1の出力電圧値VFCが低下していると考えられる。そこで図10に示される例では、フラッディングを解消するための別制御が行われる。
次いで、時間te4において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上になると、すなわち出力電圧値VFCが回復されると、上述の別制御が停止される。
なお、図8から図10に示される例では、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高くなった後に燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなっている。別の例では、出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなった後に電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高くなる。
燃料電池セル1の出力電圧値及び電気抵抗値は燃料電池セル1の目標電流値ないし出力電流値と、燃料電池セル1の温度とに依存する。本発明による実施例では、しきい電圧値VFCTH及びしきい抵抗値RFCTHはそれぞれ、例えば燃料電池セル1の目標電流値及び燃料電池セル1の温度の関数としてあらかじめ定められており、マップの形でROM52内に記憶されている。ところで、燃料電池セル1の出力電圧値及び電気抵抗値は燃料電池セル1の経時劣化の程度に応じて変動しうる。そこで、本発明による別の実施例では、しきい電圧値VFCTH及びしきい抵抗値RFCTHは燃料電池セル1の経時劣化の程度により補正される。
図11及び図12は上述した本発明による実施例の回復制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは一定時間ごとの割り込みによって実行される。
図11及び図12を参照すると、ステップ100では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低いか否かが判別される。VFC≧VFCTHのときには処理サイクルを終了する。VFC<VFCTHのときには次いでステップ101に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高いか否かが判別される。RFC>RFCTHのときには次いでステップ102に進み、酸化剤ガス増量制御が開始される。続くステップ103では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上か否かが判別される。VFC≧VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが回復したときには次いでステップ104に進み、酸化剤ガス増量制御が停止される。次いで処理サイクルを終了する。これに対し、VFC<VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが未だ回復しないときにはステップ105に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高いか否かが判別される。RFC≦RFC1のときにはステップ102に戻り、酸化剤ガス増量制御が継続される。RFC>RFC1のときには次いでステップ106に進み、酸化剤ガス増量制御が停止される。次いでステップ107に進む。
図11及び図12を参照すると、ステップ100では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低いか否かが判別される。VFC≧VFCTHのときには処理サイクルを終了する。VFC<VFCTHのときには次いでステップ101に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高いか否かが判別される。RFC>RFCTHのときには次いでステップ102に進み、酸化剤ガス増量制御が開始される。続くステップ103では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上か否かが判別される。VFC≧VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが回復したときには次いでステップ104に進み、酸化剤ガス増量制御が停止される。次いで処理サイクルを終了する。これに対し、VFC<VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが未だ回復しないときにはステップ105に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高いか否かが判別される。RFC≦RFC1のときにはステップ102に戻り、酸化剤ガス増量制御が継続される。RFC>RFC1のときには次いでステップ106に進み、酸化剤ガス増量制御が停止される。次いでステップ107に進む。
ステップ107では燃料電池温度低下制御が開始される。続くステップ108では燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTH以下か否かが判別される。RFC>RFCTHのとき、すなわち電気抵抗値RFCが未だ回復されていないときにはステップ107に戻り、燃料電池温度低下制御が継続される。RFC≦RFCTHのとき、すなわち電気抵抗値RFCが回復されたときには次いでステップ109に進み、燃料電池温度低下制御が停止される。続くステップ110では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上か否かが判別される。VFC≧VFCTHのときには処理サイクルを終了する。ステップ101及びステップ110においてVFC<VFCTHのとき、すなわちVFC<VFCTHかつRFC≦RFCTHのときにはステップ111に進み、上述の別処理が行われる。
図13は本発明による別の実施例を示している。図13に示される別の実施例では、カソードオフガス通路24内の圧力、すなわち燃料電池セル1の背圧を制御する背圧制御弁25がカソードオフガス通路24内に配置される。背圧制御弁25は通常は燃料電池セル1の背圧が一定に維持されるように制御されており、背圧制御弁25の開度が小さくされると燃料電池セル1の背圧が上昇される。
本発明による別の実施例では、上述した酸化剤ガス増量制御と共に、燃料電池セル1の背圧を上昇させる背圧上昇制御が行われる。この場合、背圧制御弁25の開度を小さくすることにより背圧上昇制御が行われる。酸化剤ガス増量制御と共に背圧上昇制御が行われると、燃料電池セル1、特にカソード極2c周りの酸化剤ガス量ないし濃度が更に高められる。その結果、燃料電池セル1の発電量を更に速やかに増大ないし回復させることができる。
次に、図14から図16を参照して本発明による別の実施例を更に説明する。
図14に示される例では、時間tf1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがあらかじめ定められたしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがあらかじめ定められたしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、まず上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBから増大される。
図14に示される例では、時間tf1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがあらかじめ定められたしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがあらかじめ定められたしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、まず上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBから増大される。
次いで、時間tf2において、酸化剤ガス量QOFCが増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大されると、背圧上昇制御が開始される。その結果、燃料電池セル1の背圧PBがベース背圧PBBから上昇背圧PBRまで上昇され維持される。酸化剤ガス量QOFCが増大される前に背圧上昇制御が行われると、燃料電池セル1のカソード極2c周りの酸化剤ガス量がかえって減少するおそれがある。そこで図14に示される例では、酸化剤ガス量QOFCが増大された後に背圧上昇制御が開始される。なお、ベース背圧PBBは背圧上昇制御が行なわれない通常制御時の背圧であって、コンプレッサ23からの酸化剤ガス量に応じて定まる。
次いで、時間tf3において、燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上になると、すなわち燃料電池セル1の出力電圧値VFCが回復されると、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBまで戻され、燃料電池セル1の背圧PBがベース背圧PBBまで戻される。なお、図14に示される例では、時間tf3において燃料電池セル1の電気抵抗値RFCはしきい抵抗値RFCTHよりも低く、したがって回復されている。
図15に示される例では、時間tg1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。次いで、時間tg2において、酸化剤ガス量QOFCが増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大されると、背圧上昇制御が開始される。次いで、時間tg3において、電気抵抗値RFCがあらかじめ定められた上限抵抗値RFC1よりも高くなると、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止される。その結果、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBに戻され、燃料電池セル1の背圧PBがベース背圧PBBまで戻される。また、時間tg3において、燃料電池温度低下制御が開始される。その結果、燃料電池セル1の温度TFCがベース燃料電池温度TFCBから低下燃料電池温度TFCBLまで低下され維持される。その結果、出力電圧値VFCが次第に上昇し、電気抵抗値RFCが次第に低下する。
次いで、時間tg4において、燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上になりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTH以下になると、すなわち燃料電池セル1の出力電圧値VFC及び電気抵抗値RFCが共に回復されると、燃料電池温度低下制御が停止される。その結果、燃料電池セル1の温度がベース燃料電池温度TFCBまで戻される。
図16に示される例では、時間th1において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低くなりかつ燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高くなると、上述した酸化剤ガス増量制御が開始される。次いで、時間th2において、酸化剤ガス量QOFCが増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大されると、背圧上昇制御が開始される。次いで、時間th3において、電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなると、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止されると共に燃料電池温度低下制御が開始される。
次いで、時間th4において燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTH以下になったにも関わらず、すなわち電気抵抗値RFCが回復されたにも関わらず、燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低いときには、上述の別制御、例えばフラッディングを解消するための別制御が行われる。
次いで、時間th5において燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上になると、すなわち出力電圧値VFCが回復されると、上述の別制御が停止される。
図17及び図18は上述した本発明による別の実施例の回復制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは一定時間ごとの割り込みによって実行される。
図17及び図18を参照すると、ステップ100では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低いか否かが判別される。VFC≧VFCTHのときには処理サイクルを終了する。VFC<VFCTHのときには次いでステップ101に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高いか否かが判別される。RFC>RFCTHのときには次いでステップ102に進み、酸化剤ガス増量制御が開始される。続くステップ102aでは、酸化剤ガス量QOFCが増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大された後に、背圧上昇制御が開始される。続くステップ103では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上か否かが判別される。VFC≧VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが回復したときには次いでステップ104aに進み、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止される。次いで処理サイクルを終了する。これに対し、VFC<VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが未だ回復しないときにはステップ105に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高いか否かが判別される。RFC≦RFC1のときにはステップ102に戻り、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が継続される。RFC>RFC1のときには次いでステップ106aに進み、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止される。次いでステップ107に進む。
図17及び図18を参照すると、ステップ100では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTHよりも低いか否かが判別される。VFC≧VFCTHのときには処理サイクルを終了する。VFC<VFCTHのときには次いでステップ101に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTHよりも高いか否かが判別される。RFC>RFCTHのときには次いでステップ102に進み、酸化剤ガス増量制御が開始される。続くステップ102aでは、酸化剤ガス量QOFCが増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大された後に、背圧上昇制御が開始される。続くステップ103では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上か否かが判別される。VFC≧VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが回復したときには次いでステップ104aに進み、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止される。次いで処理サイクルを終了する。これに対し、VFC<VFCTHのとき、すなわち出力電圧値VFCが未だ回復しないときにはステップ105に進み、燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高いか否かが判別される。RFC≦RFC1のときにはステップ102に戻り、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が継続される。RFC>RFC1のときには次いでステップ106aに進み、酸化剤ガス増量制御及び背圧上昇制御が停止される。次いでステップ107に進む。
ステップ107では燃料電池温度低下制御が開始される。続くステップ108では燃料電池セル1の電気抵抗値RFCがしきい抵抗値RFCTH以下か否かが判別される。RFC>RFCTHのとき、すなわち電気抵抗値RFCが未だ回復されていないときにはステップ107に戻り、燃料電池温度低下制御が継続される。RFC≦RFCTHのとき、すなわち電気抵抗値RFCが回復されたときには次いでステップ109に進み、燃料電池温度低下制御が停止される。続くステップ110では燃料電池セル1の出力電圧値VFCがしきい電圧値VFCTH以上か否かが判別される。VFC≧VFCTHのときには処理サイクルを終了する。ステップ101及びステップ110においてVFC<VFCTHのとき、すなわちVFC<VFCTHかつRFC≦RFCTHのときにはステップ111に進み、上述の別処理が行われる。
本発明による別の実施例のその他の構成及び作用は本発明による実施例の構成および作用と同様であるので、説明を省略する。
これまで述べてきた本発明による各実施例では、酸化剤ガス増量制御において燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCが継続的に増大される。これに対し、図19に示される実施例では、酸化剤ガス量QOFCが間欠的に増大される。すなわち、酸化剤ガス量QOFCはベース酸化剤ガス量QOFCBから増大酸化剤ガス量QOFCIまで増大されると共に維持され、次いで維持時間tFCIが経過するとベース酸化剤ガス量QOFCBに戻される。このような酸化剤ガスの増量作用が増量回数NFCIだけ行なわれる。
ここで、図20に示されるように、増大酸化剤ガス量QOFCIが上限ガス量QOFCI1よりも多くなると燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなる。したがって、増大酸化剤ガス量QOFCIは上限量QOFCI1以下に設定される。
また、図21に示されるように、維持時間tFCIが上限時間tFCI1よりも長くなると燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなる。したがって、維持時間tFCIは上限時間tFCI1以下に設定される。
更に、図22に示されるように、増量回数NFCIが上限値NFCI1よりも多くなると燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなる。したがって、増量回数NFCIは上限値NFCI1以下に設定される。
一方、これまで述べてきた各実施例では、酸化剤ガス増量制御中に燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなったときには、燃料電池セル1に送られる酸化剤ガス量QOFCがベース酸化剤ガス量QOFCBに戻される。別の実施例では、酸化剤ガス増量制御中に燃料電池セル1の電気抵抗値RFCが上限抵抗値RFC1よりも高くなったときには、酸化剤ガス量QOFCをベース酸化剤ガス量QOFCBよりも減少させる酸化剤ガス減量制御が行われる。酸化剤ガス減量制御が行なわれると、カソードオフガスにより燃料電池セル1から持ち去られる水分量が減少されるので燃料電池セル1の湿潤度合いが高められる。
次に、燃料電池システムAの別の実施例を説明する。燃料電池システムAの別の実施例では、アノードオフガス制御弁15上流のアノードオフガス通路14と燃料ガス制御弁13下流の燃料ガス供給路11とを互いに連結する循環通路と、循環通路内に配置されたアノードオフガスポンプとが更に設けられ、アノードオフガス通路14内のアノードオフガスの一部又は全部がアノードオフガスポンプにより循環通路を介して燃料ガス供給路11に戻される。
アノードオフガスには水分が含まれている。したがって、燃料電池システムAの別の実施例のようにアノードオフガス通路14内のアノードオフガスが燃料ガス供給路11に戻されると、この水分がガスと共に燃料電池セル1内に戻されることになる。その結果、燃料電池セル1の湿潤度合いが低くなりにくい。
これに対し、図1及び図13に示される燃料電池システムAでは、アノードオフガス通路14と燃料ガス供給路11とは互いに連結されておらず、したがってアノードオフガスはアノードオフガス通路14から燃料ガス供給路11に戻されることなくアノードオフガス通路14内を流れる。このようにすると、燃料電池システムAの構成を簡素化でき、コストを下げることができる。ところが、この場合、アノードオフガスに含まれる水分が燃料電池セル1に戻されない。このため、図1及び図13に示される燃料電池システムAでは、燃料電池セル1の湿潤度合いが低くなりやすい。そこで本発明による各実施例では、燃料電池セル1の出力電圧値が低下しかつ燃料電池セル1の湿潤度合いが低下したときに酸化剤ガス増量制御が行われる。無論、上述した燃料電池システムAの別の実施例にも本発明が適用される。
A 燃料電池システム
1 燃料電池セル
2 膜電極接合体
2c カソード極
2c1 導電性材料
2c2 アイオノマ
20 酸化剤ガス通路
21 酸化剤ガス供給路
23 コンプレッサ
41 電圧計
42 電気抵抗計
1 燃料電池セル
2 膜電極接合体
2c カソード極
2c1 導電性材料
2c2 アイオノマ
20 酸化剤ガス通路
21 酸化剤ガス供給路
23 コンプレッサ
41 電圧計
42 電気抵抗計
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