JP2004220794A - 燃料電池の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アノード圧力センサ及びカソード圧力センサを備えなくてもアノード圧力とカソード圧力との圧力差を一定に制御する。
【解決手段】目標燃料圧力算出手段21と目標酸化剤圧力算出手段22とは、運転条件に応じてそれぞれ燃料ガス(水素)の目標圧力、酸化剤ガス(空気)の目標圧力を算出する。電流−電圧マップ(IVマップ)23は、燃料電池の電流−電圧特性を記憶する。IVマップから読み出した基準電圧と実際に電圧計で検出した出力電圧(以下、実電圧)とを比較し、閾値以上の差があればパラメータ補正手段25は、目標値補正手段26のパラメータを補正する。目標値補正手段26は、圧力応答が速い方のガス制御系の目標値である目標水素圧力値または目標空気圧力値を、遅い方に圧力変化が一致するように補正する。
【選択図】 図2
【解決手段】目標燃料圧力算出手段21と目標酸化剤圧力算出手段22とは、運転条件に応じてそれぞれ燃料ガス(水素)の目標圧力、酸化剤ガス(空気)の目標圧力を算出する。電流−電圧マップ(IVマップ)23は、燃料電池の電流−電圧特性を記憶する。IVマップから読み出した基準電圧と実際に電圧計で検出した出力電圧(以下、実電圧)とを比較し、閾値以上の差があればパラメータ補正手段25は、目標値補正手段26のパラメータを補正する。目標値補正手段26は、圧力応答が速い方のガス制御系の目標値である目標水素圧力値または目標空気圧力値を、遅い方に圧力変化が一致するように補正する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の制御装置に係り、特に運転条件に応じて燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力を制御する燃料電池の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素ガスなどの燃料ガスと酸素を有する酸化ガスとを電解質を介して電気化学的に反応させ、電解質両面に設けた電極間から電気エネルギを直接取り出すものである。特に固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池は、動作温度が低く、取り扱いが容易なことから電動車両用の電源として注目されている。すなわち、燃料電池車両は、高圧水素タンク、液体水素タンク、水素吸蔵合金タンクなどの水素貯蔵装置を車両に搭載し、そこから供給される水素と、酸素を含む空気とを燃料電池に送り込んで反応させ、燃料電池から取り出した電気エネルギで駆動輪につながるモータを駆動するものであり、排出物質は水だけであるという究極のクリーン車両である。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、燃料極(アノード)に供給される燃料ガスの圧力と酸化剤極(カソード)に供給される酸化剤ガスの圧力との差が大きくなると、発電効率が低下するとともに、固体電解質膜を劣化させるおそれがあるため、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を許容値内となるように、燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力が制御される。
【0004】
このような燃料極と酸化剤極とのガス圧力制御技術として、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。この従来技術によれば、燃料ガスとしての水素は水素吸蔵合金タンクから水素圧力調整弁を介して燃料極へ供給され、また酸化剤ガスとしての空気はコンプレッサから酸化剤極へ供給される。そして、水素圧力は、水素圧力調整弁で制御され、空気圧力はコンプレッサ回転数と酸化剤極出口に設けた空気圧力調整弁で制御されており、燃料極と酸化剤極では応答性が異なるアクチュエータで制御されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−45525号公報(第3ページ、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、燃料極及び酸化剤極のガス圧力制御には、圧力センサを用いてそれぞれの圧力を計測し、燃料極及び酸化剤極の圧力差が所定値以下となるように、フィードバック制御を行う構成になっていたため、圧力センサが予期しない動作をしたときに、制御自体が出来なくなる場合が発生するという問題点があった。
【0007】
さらに、一方のガス圧力の測定値に基づいて、他方のガス圧力の目標圧力値を求める構成では、圧力センサの応答特性、圧力センサのフィルタ、圧力制御プラントの応答性などの様々な遅れ要因が介在し、過渡的な圧力差が発生するという問題点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、運転条件に応じて燃料電池のアノードに供給する燃料ガスの目標圧力である目標燃料圧力を算出する目標燃料圧力算出手段と、運転条件に応じて燃料電池のカソードに供給する酸化剤ガスの目標圧力である目標酸化剤圧力を算出する目標酸化剤圧力算出手段と、前記アノードにおける燃料ガス圧力が前記目標燃料圧力となるようにアノード圧力を制御するアノード圧力制御手段と、前記カソードにおける酸化剤ガス圧力が前記目標酸化剤圧力となるようにカソード圧力を制御するカソード圧力制御手段と、アノード及びカソードのそれぞれのガス圧力制御系の目標圧力の変化に対して応答の遅い方のガス圧力制御系の圧力変化に、応答が速い方のガス圧力制御系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力の補正を行う目標値補正手段と、を備えたことを要旨とする燃料電池の制御装置である。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、アノード圧力制御手段とカソード圧力制御手段のそれぞれの目標圧力変化に対して、応答の遅い系の圧力変化に、応答が速い系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力を補正する目標値補正手段を備えたので、アノード圧力センサ及びカソード圧力センサを備えなくてもアノード圧力とカソード圧力との圧力差を一定に制御することができるという効果がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される燃料電池システムの構成例を説明するシステム構成図であり、以下の第1実施形態から第5実施形態までに共通である。
【0011】
図1において、燃料電池システムは、高圧ガスタンクや水素吸蔵合金タンクに水素を貯蔵した燃料タンク1と、燃料タンク1から供給される水素の圧力を調整するアノード圧力調整バルブ2と、アノード圧力調整バルブ2から供給される水素とアノードオフガスとを混合してアノード5に供給するエゼクタ3と、アノード5及びカソード6を備える燃料電池4と、アノードオフガスを系外へ排出する水素パージバルブ7と、空気を圧縮してカソード6へ供給するコンプレッサ8と、カソード6の出口から系外へ排出する空気を絞ってカソード圧力を調整するカソード圧力調整バルブ9と、燃料電池4の出力電圧を検出する電圧計10と、同出力電流を検出する電流計11と、燃料電池4の発電電力を消費する負荷装置12と、燃料電池の制御装置であるコントローラ20とを備えている。
【0012】
酸化剤ガスとしての空気は、大気からコンプレッサ8で加圧され、図示しない空気加湿器で加湿された後、カソード6へ供給される。カソード6で未使用の空気は、カソード圧力調整バルブ9から大気へ排出される。
【0013】
燃料電池4のカソード6へ供給される空気の流量と圧力は、コンプレッサ8の回転数およびカソード圧力調整バルブ9の開度により制御される。
【0014】
コンプレッサ8は、図示しないモータにより駆動され、コントローラ20はモータ回転数を参照して、モータが目標の回転数となるようにモータを制御する。
【0015】
燃料ガスとしての水素は、燃料タンク1からアノード圧力調整バルブ2を介して、エゼクタ3に供給される。エゼクタ3は、アノード5の出口から排出されるアノードオフガスとアノード圧力調整バルブ2から供給される水素とを混合して、図示しない水素加湿装置で加湿してアノード5へ供給する。
【0016】
アノード5で未使用の水素は、エゼクタ3によって、新たに供給される水素と混合されて、アノード5へ循環される。アノード5へ供給される水素の圧力は、アノード圧力調整バルブ2により制御される。
【0017】
コントローラ20は、燃料電池のアノード5へ供給される水素の圧力が目標の圧力となるようにアノード圧力調整バルブ2を制御する。
【0018】
水素パージバルブ7は、燃料電池の状態に応じて開閉することにより、燃料電池4内部の水つまりからの回復や、カソード6からアノード5への空気のリークによる出力低下および効率低下を防止するために使用するものである。
【0019】
燃料電池車両では、燃料電池の発電量は基本的にドライバが要求する駆動力に応じて決定される。駆動力はアクセルやシフトの操作や車速等によって時々刻々演算されるので、燃料電池の発電量もそれに応じて変化する。
【0020】
燃料電池は前述のように、燃料ガスと酸化ガスとを反応させて電気エネルギを取り出すものであるので、燃料電池へのガス供給量を発電量にしたがって変化させるのが効率的である。
【0021】
コントローラ20は、図示しない出力要求装置からの出力要求信号に応じて、燃料電池の発電量(発電電力)を算出し、この発電電力に応じた燃料ガス(水素)圧力の目標値、酸化剤ガス(空気)圧力の目標値を算出し、この目標値を実現するように、アノード圧力調整バルブ2及びカソード圧力調整バルブ9に対して開度制御信号、コンプレッサ8に対して回転速度指示信号を出力する。
【0022】
このとき、コントローラ20は、アノード圧力制御系及びカソード圧力制御系のそれぞれの目標圧力の変化に対して、相対的に応答の遅い方のガス圧力制御系の圧力変化に、相対的に応答が速い方のガス圧力制御系の圧力変化が一致するように、応答が速い方のガス圧力制御系の目標圧力の補正を行う。
【0023】
これにより、アノードの水素圧力を検出するアノード圧力センサ、及びカソードの空気圧力を検出するカソード圧力センサを設けなくても、アノードとカソードとの圧力差を一定に保持することができる。
【0024】
コントローラ20は、特に限定されないが、本発明ではメモリとCPUとI/Oインタフェースを備えたマイクロプロセッサで構成されているものとする。
【0025】
〔第1実施形態〕
アノードの水素圧力制御の応答性及びカソードの空気圧力制御の応答性は、配管径や配管長さ、バルブの応答性、コンプレッサの応答性など、さまざまな要因から決定されるが、これらの応答性は、設計段階で決まる要因がほとんどであり、あらかじめ実験や設計値などから算出することができる。
【0026】
このようにあらかじめ算出しておいたガス供給系の応答性の数式モデルかマップなどを用いて、速い応答性を持つガス圧力制御系の目標圧力を補正して、遅い応答性を持つガス圧力制御系との応答性と一致させ、常に同じガス圧力の応答性を実現する。
【0027】
上記の手法により、水素圧力センサ及び空気圧力センサを用いなくても水素圧力と空気圧力との圧力差を一定に保つことができる燃料電池の制御装置を実現することができる。
【0028】
次に、どのようにして応答性の数式モデルを算出するのか実施の形態を示す。尚、本実施形態では、カソード側の応答性が遅い場合、言い換えればアノード側の応答性が速い場合の実施の形態を示すが、アノード側の応答性がカソード側の応答性よりも遅い場合にも同様に実施可能であることは明らかである。
【0029】
まずカソード側の応答性を算出する。このカソード側の応答性とは、カソード側の目標ガス圧力指令値(目標水素圧力)から燃料電池スタックのカソード側出口のガス圧力の応答性を算出したものである。
【0030】
上記の系を算出するためには、実験段階では燃料電池のカソード側出口に圧力センサを取り付け、その圧力値を計測しておく。その後、実験結果より、カソード側目標圧力指令値を入力、カソード側出口の圧力を出力として、システム同定を行いカソード圧力制御系のプラントの特性を算出する。
【0031】
その実験結果をこの実施形態では下記の式とする。
【0032】
【数1】
【0033】
上記は算出結果の最も簡単な結果である。もしシステム同定の結果の精度を高めたければ、上式の次数を高めることも考えられる。
【0034】
また実際の応答性を下記のように示す。
【0035】
【数2】
カソード側応答性=Gc(s) …(3)
アノード側応答性=Ga(s) …(4)
上記の式を用いてアノード側圧力とカソード側圧力との圧力差が一定であることを表現すると、
【数3】
Gc(s)=Ga(s) …(5)
式(5)となればよい。
【0036】
したがって、カソード側及びアノード側の実際の応答性がシステム同定で算出した応答性とそれぞれほぼ等しいことから、
【数4】
Gc(s)≒GIc(s) …(6)
Ga(s)≒GIa(s) …(7)
より、式(6)の両辺を式(7)の両辺でそれぞれ除算すると、カソード側応答性Gc(s) は、次の式(8)となる。
【0037】
【数5】
【数6】
【0038】
この式(10)を目標水素圧力に乗じて目標圧力を補正し、補正後の目標圧力に基づいて水素圧力を制御すれば、圧力センサを用いることなく、水素圧力と空気圧力との圧力差を一定に制御することができる。
【0039】
図3は、本発明に係る燃料電池の制御装置の第1実施形態を説明するフローチャートであり、水素圧力制御系及び空気圧力制御系を上記のようにシステム同定した結果より、アノードの水素圧力とカソードの空気圧力との圧力差を一定に制御する実施の形態である。このフローチャートは、コントローラ20によって、一定の制御周期(例えば10mS)毎に実行されるものとする。
【0040】
まず、ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。燃料電池車両であれば、図示しないアクセルペダルの操作量に基づく駆動力と車速等によって時々刻々演算される要求電力に応じて、燃料電池の発電量が演算される。目標空気圧力は、この発電量に応じて算出される。
【0041】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0042】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0043】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。燃料電池車両であれば、S10で算出した燃料電池の発電量に応じて、アノードの水素圧力の目標値である目標水素圧力が算出される。
【0044】
S18では、S16で算出した目標水素圧力に、GIc(s)/GIa(s)を乗算して目標水素圧力を補正する。この目標値の補正により、応答性の速いアノード圧力は、応答性の遅いカソード圧力との圧力差を一定に保つことができる。
【0045】
S20では、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0046】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、アノード圧力制御手段とカソード圧力制御手段のそれぞれの目標圧力変化に対して、応答の遅い系の圧力変化に、応答が速い系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力を補正する目標値補正手段を備えたので、アノード圧力センサ及びカソード圧力センサを備えなくてもアノード圧力とカソード圧力との圧力差を一定にすることができるという効果がある。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第2実施形態について説明する。
【0049】
第2実施形態では、応答情報検出手段により、燃料電池の圧力応答特性に関する情報を収集し、この情報に基づいて目標値補正手段のパラメータであるゲイン(Gain)を可変とすることにより、目標値補正手段の補正特性を動的に変更して、圧力センサや流量センサを設けることなく、また圧力制御系のアクチュエータの特性が変化して、数式モデルと実際の圧力制御特性との間にズレが生じても、アノードとカソードの圧力応答の動特性を一致させ、圧力差を一定に保つことができる。
【0050】
応答情報検出手段は、図1の電圧計10と電流計11である。燃料電池のアノード及びカソードの圧力応答特性に関する情報として、燃料電池の出力電流と出力電圧とを検出する。そして、予め記憶した燃料電池の標準的な電流−電圧特性を参照して、出力電流に対応する基準電圧値を読み出し、基準電圧値と検出した出力電圧値(以下、実電圧値)とを比較する。この比較結果、実電圧が基準電圧より小さかった場合、燃料ガス(水素)または酸化剤ガス(空気)の圧力を増加するように目標値補正手段のゲイン(Gain)を補正する。
【0051】
図4は、燃料電池の電流−電圧特性を示す図である。図4に示すように、燃料電池の出力電圧は、出力電流の増加とともに低下する傾向にある。また、同一出力電流においても、燃料電池へ供給する水素あるいは空気の供給量や圧力が燃料電池の出力電流で決まる値を下回った場合には、燃料電池の出力電圧が低下するという電流−電圧特性を有する。標準的な水素及び空気の供給状態における燃料電池の電流−電圧特性をマップとして予めコントローラに記憶しておき、燃料電池の出力電流に対応する実際の出力電圧を計測し、マップに記憶した基準電圧値と照合すれば、水素又は空気の供給が不足しているか否かを判定することができる。
【0052】
逆に、出力電流に対して、水素及び空気の供給が過剰であれば、出力電圧は、マップに記憶した値よりも高くなる。しかし、水素及び空気の流量・圧力を増加させると、空気を圧縮するコンプレッサの消費電力が増加し、燃料電池システム全体としての発電効率の低下などを招く。従って、システム効率を考慮し、水素・空気の供給量や圧力の設定値は決められる。
【0053】
このような燃料電池システムにおいて、環境変化やコンプレッサなどアクチュエータの特性変化などにより、事前に定めたアクチュエータの動作指令値では、水素及び空気の所望の圧力や流量が実現できない場合も生じる。
【0054】
このような場合においても、アノード及びカソードの圧力センサや流量センサ等を用いることなく、アクチュエータ等の特性変化に応じた適正な流量・圧力を定常状態あるいは過渡状態までも含めて補償する方法を以下に示す。
【0055】
図4の示している「燃料電池の電流−電圧特性」と実際の電流、電圧の検出結果とを比較し、電流を基準として実際の電圧値が図示「変化許容下限値」を下回った場合、図6のゲイン補正マップよりゲイン(Gain)の補正を行う。この変化許容値は、電流−電圧特性のとして記憶された電流値や基準電圧値から計算式に基づいて算出してもよいし、基準電圧値とは別に、変化許容下限値をマップに記憶しておいてもよい。
【0056】
図2は、第2実施形態におけるコントローラ20の制御構成を説明する制御ブロック図である。図2において、コントローラ20は、運転条件に応じて燃料電池のアノードに供給する燃料ガス(水素)の目標圧力を算出する目標燃料圧力算出手段21と、運転条件に応じて燃料電池のカソードに供給する酸化剤ガス(空気)の目標圧力を算出する目標酸化剤圧力算出手段22と、図4のような燃料電池の電流−電圧特性を記憶した電流−電圧マップ(以下、IVマップとも略す)23と、IVマップから読み出した基準電圧と実際に電圧検出手段で検出した燃料電池の出力電圧(以下、実電圧)とを比較する比較手段24と、パラメータ補正手段25と、目標燃料圧力算出手段21または目標酸化剤圧力算出手段22が算出した目標水素圧力値または目標空気圧力値を補正する目標値補正手段26と、目標水素圧力に基づいてアノード圧力調整バルブの開度指示信号を演算するアノード圧力制御信号演算手段27と、目標空気圧力に基づいてコンプレッサ作動信号及びカソード圧力調整バルブの開度信号を演算するカソード圧力制御信号演算手段28とを備えている。
【0057】
パラメータ補正手段25は、本実施形態においては、IVマップ23から読み出したマップ電圧から実電圧を差し引いた値からゲイン(Gain)を算出し、このGainで目標値補正手段26におけるGainを補正するものである。
【0058】
次に、第2実施形態におけるコントローラ20の制御動作を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
図5において、まず、S10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0060】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0061】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0062】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0063】
次いで、S30で目標水素圧力(Tph )に、Gain×(GIc(s)/GIa(s))を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。
【0064】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0065】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0066】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0067】
S34では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S36へ進み、マップ電圧−実電圧を算出して、S38へ進む。S34で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0068】
S38では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図6に示すような換算表、または演算式により、目標値補正手段26のパラメータであるGainを算出し、算出した値をGain記憶用の領域に格納し、Gainを更新(補正)する。算出したGainは、次回のS30の演算に利用される。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池の出力電流と出力電圧とを検出し、予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性から出力電流に対応するマップ電圧を読み出して、実際の出力電圧がマップ電圧より低ければ、目標水素圧力を補正する際に乗じるパラメータであるGainを補正して水素の供給量を増やす構成にしたので、空気圧力制御系及び水素圧力制御系のアクチュエータ等の動作特性変化やアノード供給ガス成分及びカソード供給ガス成分の変化等により、圧力制御系の数式モデルにズレが生じてもアノードとカソードとの圧力制御系の動特性を一致させ、両極の圧力差を一定に保持させることができるという効果がある。
【0070】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第3実施形態について説明する。本実施形態におけるコントローラ20の制御構成は、図2に示した第2実施形態と同様である。
【0071】
第3実施形態では、S32の要求電流取り出しステップの次に、燃料電池の出力電流の今回値と前回値との差がある閾値以上か否かを判定し、ある閾値未満であれば、過渡状態ではないとして、パラメータ補正を省略する点に特徴がある。
【0072】
図8は、第3実施形態におけるコントローラ20の動作を説明するフローチャートであり、図9、図10は、第3実施形態におけるパラメータ補正を説明する図である。
【0073】
図8において、まず、S10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0074】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0075】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0076】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0077】
次いで、S50で、目標水素圧力(Thp )に、式(10)を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。これにより、差圧を抑えるためのダイナミックスを持たせることができる。
【0078】
本実施形態では、式(1)GIc(s)、式(2)GIa(s)の各パラメータC,D,E,Fを用いて、
【数7】
2ζω=(CF+DE)/CE …(11)
ω^2=DF/CE …(12)
とすると、
ζ=(CF+DE)/(2・(CE・DF)^0.5) …(13)
ω=(DF/CE)^0.5 …(14)
である。
【0079】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0080】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0081】
S52では、燃料電池の過渡判断をおこなう。これは、前回の出力電流を記憶した値を読み出し、S32で検出した今回の出力電流とを比較し、電流値の差の絶対値がある閾値以上か否かを判断することにより行われる。電流値の差の絶対値がある閾値未満であれば、定常状態と判定して処理を終了する。電流値の差の絶対値がある閾値以上であれば、過渡状態であるとしてS54へ進む。
【0082】
S54では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S56へ進み、マップ電圧−実電圧を算出して、S58へ進む。S54で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0083】
S58では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図9,図10に示すような換算表、または演算式によりζ,ωを算出し、算出した値をζ,ω記憶用の領域にそれぞれ格納し、ζ,ωを更新(補正)する。算出したζ,ωは、次回のS50の演算に利用される。このように、ζとωを動的に変化させることにより、システムを動的に最適化した目標水素圧力値の補正をおこなうことができる。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池の出力電流と出力電圧とを検出し、予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性から出力電流に対応するマップ電圧を読み出して、実際の出力電圧がマップ電圧より低ければ、目標水素圧力を補正する際のパラメータであるζ,ωを補正して水素の供給量を増やす構成にしたので、空気圧力制御系及び水素圧力制御系のアクチュエータ等の動作特性変化やアノード供給ガス成分及びカソード供給ガス成分の変化等により、圧力制御系の数式モデルにズレが生じてもアノードとカソードとの圧力制御系の動特性を一致させ、両極の圧力差を一定に保持させることができるという効果がある。
【0085】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第4実施形態について説明する。本実施形態におけるコントローラ20の制御構成は、図2に示した第2実施形態と同様である。第4実施形態の特徴は、第2実施形態において目標値補正手段のゲイン(Gain)を補正しても圧力補償が改善されない場合、燃料電池の出力電流を制限する点にある。
【0086】
図11は、第4実施形態におけるコントローラ20の動作を説明するフローチャートであり、図12は、第4実施形態におけるパラメータ補正を説明する図である。
【0087】
図11において、まず、S10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0088】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0089】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0090】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0091】
次いで、S30で目標水素圧力(Tph )に、Gain×(GIc(s)/GIa(s))を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。
【0092】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0093】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0094】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0095】
S34では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S36へ進み、(マップ電圧−実電圧)=Vd を算出して、S60へ進む。S34で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0096】
S60では、前回の(マップ電圧−実電圧)=Vdpを算出する。S62では、|Vd|>|Vdp|か否かを判定する。S62で、 |Vd|>|Vdp|、即ち今回の電圧差の絶対値が前回の電圧差の絶対値より大きければ、目標圧力の補正の効果が少ない可能性があるので、S64へ進み、図12に示すような換算表、または演算式により、 |Vd|−|Vdp|から取り出し電流のGain−Kを求め、取り出し電流値にGain−Kを乗算して、新たな取り出し電流とすることにより取り出し電流の制限を行って、S66へ進む。S62の判定で、 |Vd|>|Vdp|でなければ、S66へ進む。
【0097】
S66では、S38では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図6に示すような換算表、または演算式により、目標値補正手段26のパラメータであるGainを算出し、算出した値をGain記憶用の領域に格納し、Gainを更新(補正)する。算出したGainは、次回のS30の演算に利用される。
【0098】
以上説明した本実施形態によれば、目標水素圧力を補正する際に乗じるパラメータであるGainを補正して水素の供給量を増やしても燃料電池電圧の回復がなければ、取り出し電流を制限するようにしたので、必ず圧力補償を実現することができるという効果がある。
【0099】
尚、本実施形態のS60、S62,S64を図8に示した第3実施形態のS56とS58との間に挿入することにより、第3実施形態でも目標値補正手段のパラメータとして位相特性を補正しても圧力位相が改善されない場合、燃料電池の出力電流に制限を設けて、確実に圧力位相補償を行うことができる。
【0100】
〔第5実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第5実施形態について説明する。本実施形態におけるコントローラ20の制御構成は、図2に示した第2実施形態と同様である。
【0101】
第5実施形態の特徴は、燃料電池の温度を測定する図示しない温度センサ(温度測定手段)を備え、この温度測定値により、図4のような予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性マップ(IVマップ)を補正する点にある。この温度センサは、燃料電池スタックに熱電対等の温度センサを直接埋め込んでもよいし、図示しない燃料電池冷却液の燃料電池出口付近の温度を測定して、燃料電池の温度としてもよい。
【0102】
実際の燃料電池の電流−電圧特性は、予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性(IVマップ)と必ず一致するとは限らず、温度により変化する。したがって高精度の制御を行うためには、燃料電池の温度を測定し、測定した温度と、IVマップが電流−電圧特性を示す温度との差に応じて、IVマップを補正しなければならない。
【0103】
図7は、第5実施形態におけるコントローラ20の制御動作を説明するフローチャートであり、図13は、第5実施形態におけるIVマップ補正量を説明する図である。
【0104】
図7において、まずS10で、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0105】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0106】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0107】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0108】
次いで、S30で目標水素圧力(Tph )に、Gain×(GIc(s)/GIa(s))を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。
【0109】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0110】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0111】
S40では、図示しない燃料電池の温度センサにより燃料電池の温度を検出する。S42では、図8で示したとおり、燃料電池温度が高ければ高いほどIVマップの電圧値の補正量が大きくなるように、補正量の演算を行う。S44では、実際にコントローラ20の内部に記憶したIVマップに補正を行う。
【0112】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0113】
S34では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S36へ進み、マップ電圧−実電圧を算出して、S38へ進む。S34で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0114】
S38では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図6に示すような換算表、または演算式により、目標値補正手段26のパラメータであるGainを算出し、算出した値をGain記憶用の領域に格納し、Gainを更新(補正)する。算出したGainは、次回のS30の演算に利用される。
【0115】
本実施形態によれば、燃料電池の温度を考慮して予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性を補正する構成にしたため、燃料電池の運転温度が変化しても、圧力センサを用いることなく正確なアノード圧力とカソード圧力との差圧制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される燃料電池システムの構成例を説明するシステム構成図である。
【図2】図1におけるコントローラの制御構成を説明する制御ブロック図である。
【図3】本発明に係る燃料電池の制御装置の第1実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図4】燃料電池の電流−電圧特性の例を示すIV特性図である。
【図5】本発明に係る燃料電池の制御装置の第2実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図6】第2実施形態において、IV特性図の電圧と実際の出力電圧との差からゲイン(Gain)を求めるマップの例である。
【図7】本発明に係る燃料電池の制御装置の第5実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明に係る燃料電池の制御装置の第3実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図9】第3実施形態における目標値補正手段のパラメータωの補正を説明する図である。
【図10】第3実施形態における目標値補正手段のパラメータζの補正を説明する図である。
【図11】本発明に係る燃料電池の制御装置の第4実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図12】第4実施形態における取り出し電流制限のためのGain−Kを説明する図である。
【図13】第5実施形態におけるIVマップ補正量を説明する図である。
【符号の説明】
1…燃料タンク
2…アノード圧力調整バルブ
3…エゼクタ
4…燃料電池
5…アノード
6…カソード
7…水素パージバルブ
8…コンプレッサ
9…カソード圧力調整バルブ
10…電圧計(電圧検出手段)
11…電流計(電流検出手段)
12…負荷装置
20…コントローラ(制御装置)
21…目標燃料圧力算出手段
22…目標酸化剤圧力算出手段
23…電流−電圧マップ
24…比較手段
25…パラメータ補正手段
26…目標値補正手段
27…アノード圧力制御信号演算手段
28…カソード圧力制御信号演算手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の制御装置に係り、特に運転条件に応じて燃料ガス圧力及び酸化剤ガス圧力を制御する燃料電池の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素ガスなどの燃料ガスと酸素を有する酸化ガスとを電解質を介して電気化学的に反応させ、電解質両面に設けた電極間から電気エネルギを直接取り出すものである。特に固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池は、動作温度が低く、取り扱いが容易なことから電動車両用の電源として注目されている。すなわち、燃料電池車両は、高圧水素タンク、液体水素タンク、水素吸蔵合金タンクなどの水素貯蔵装置を車両に搭載し、そこから供給される水素と、酸素を含む空気とを燃料電池に送り込んで反応させ、燃料電池から取り出した電気エネルギで駆動輪につながるモータを駆動するものであり、排出物質は水だけであるという究極のクリーン車両である。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、燃料極(アノード)に供給される燃料ガスの圧力と酸化剤極(カソード)に供給される酸化剤ガスの圧力との差が大きくなると、発電効率が低下するとともに、固体電解質膜を劣化させるおそれがあるため、燃料ガスと酸化剤ガスの圧力差を許容値内となるように、燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力が制御される。
【0004】
このような燃料極と酸化剤極とのガス圧力制御技術として、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。この従来技術によれば、燃料ガスとしての水素は水素吸蔵合金タンクから水素圧力調整弁を介して燃料極へ供給され、また酸化剤ガスとしての空気はコンプレッサから酸化剤極へ供給される。そして、水素圧力は、水素圧力調整弁で制御され、空気圧力はコンプレッサ回転数と酸化剤極出口に設けた空気圧力調整弁で制御されており、燃料極と酸化剤極では応答性が異なるアクチュエータで制御されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−45525号公報(第3ページ、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、燃料極及び酸化剤極のガス圧力制御には、圧力センサを用いてそれぞれの圧力を計測し、燃料極及び酸化剤極の圧力差が所定値以下となるように、フィードバック制御を行う構成になっていたため、圧力センサが予期しない動作をしたときに、制御自体が出来なくなる場合が発生するという問題点があった。
【0007】
さらに、一方のガス圧力の測定値に基づいて、他方のガス圧力の目標圧力値を求める構成では、圧力センサの応答特性、圧力センサのフィルタ、圧力制御プラントの応答性などの様々な遅れ要因が介在し、過渡的な圧力差が発生するという問題点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、運転条件に応じて燃料電池のアノードに供給する燃料ガスの目標圧力である目標燃料圧力を算出する目標燃料圧力算出手段と、運転条件に応じて燃料電池のカソードに供給する酸化剤ガスの目標圧力である目標酸化剤圧力を算出する目標酸化剤圧力算出手段と、前記アノードにおける燃料ガス圧力が前記目標燃料圧力となるようにアノード圧力を制御するアノード圧力制御手段と、前記カソードにおける酸化剤ガス圧力が前記目標酸化剤圧力となるようにカソード圧力を制御するカソード圧力制御手段と、アノード及びカソードのそれぞれのガス圧力制御系の目標圧力の変化に対して応答の遅い方のガス圧力制御系の圧力変化に、応答が速い方のガス圧力制御系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力の補正を行う目標値補正手段と、を備えたことを要旨とする燃料電池の制御装置である。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、アノード圧力制御手段とカソード圧力制御手段のそれぞれの目標圧力変化に対して、応答の遅い系の圧力変化に、応答が速い系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力を補正する目標値補正手段を備えたので、アノード圧力センサ及びカソード圧力センサを備えなくてもアノード圧力とカソード圧力との圧力差を一定に制御することができるという効果がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される燃料電池システムの構成例を説明するシステム構成図であり、以下の第1実施形態から第5実施形態までに共通である。
【0011】
図1において、燃料電池システムは、高圧ガスタンクや水素吸蔵合金タンクに水素を貯蔵した燃料タンク1と、燃料タンク1から供給される水素の圧力を調整するアノード圧力調整バルブ2と、アノード圧力調整バルブ2から供給される水素とアノードオフガスとを混合してアノード5に供給するエゼクタ3と、アノード5及びカソード6を備える燃料電池4と、アノードオフガスを系外へ排出する水素パージバルブ7と、空気を圧縮してカソード6へ供給するコンプレッサ8と、カソード6の出口から系外へ排出する空気を絞ってカソード圧力を調整するカソード圧力調整バルブ9と、燃料電池4の出力電圧を検出する電圧計10と、同出力電流を検出する電流計11と、燃料電池4の発電電力を消費する負荷装置12と、燃料電池の制御装置であるコントローラ20とを備えている。
【0012】
酸化剤ガスとしての空気は、大気からコンプレッサ8で加圧され、図示しない空気加湿器で加湿された後、カソード6へ供給される。カソード6で未使用の空気は、カソード圧力調整バルブ9から大気へ排出される。
【0013】
燃料電池4のカソード6へ供給される空気の流量と圧力は、コンプレッサ8の回転数およびカソード圧力調整バルブ9の開度により制御される。
【0014】
コンプレッサ8は、図示しないモータにより駆動され、コントローラ20はモータ回転数を参照して、モータが目標の回転数となるようにモータを制御する。
【0015】
燃料ガスとしての水素は、燃料タンク1からアノード圧力調整バルブ2を介して、エゼクタ3に供給される。エゼクタ3は、アノード5の出口から排出されるアノードオフガスとアノード圧力調整バルブ2から供給される水素とを混合して、図示しない水素加湿装置で加湿してアノード5へ供給する。
【0016】
アノード5で未使用の水素は、エゼクタ3によって、新たに供給される水素と混合されて、アノード5へ循環される。アノード5へ供給される水素の圧力は、アノード圧力調整バルブ2により制御される。
【0017】
コントローラ20は、燃料電池のアノード5へ供給される水素の圧力が目標の圧力となるようにアノード圧力調整バルブ2を制御する。
【0018】
水素パージバルブ7は、燃料電池の状態に応じて開閉することにより、燃料電池4内部の水つまりからの回復や、カソード6からアノード5への空気のリークによる出力低下および効率低下を防止するために使用するものである。
【0019】
燃料電池車両では、燃料電池の発電量は基本的にドライバが要求する駆動力に応じて決定される。駆動力はアクセルやシフトの操作や車速等によって時々刻々演算されるので、燃料電池の発電量もそれに応じて変化する。
【0020】
燃料電池は前述のように、燃料ガスと酸化ガスとを反応させて電気エネルギを取り出すものであるので、燃料電池へのガス供給量を発電量にしたがって変化させるのが効率的である。
【0021】
コントローラ20は、図示しない出力要求装置からの出力要求信号に応じて、燃料電池の発電量(発電電力)を算出し、この発電電力に応じた燃料ガス(水素)圧力の目標値、酸化剤ガス(空気)圧力の目標値を算出し、この目標値を実現するように、アノード圧力調整バルブ2及びカソード圧力調整バルブ9に対して開度制御信号、コンプレッサ8に対して回転速度指示信号を出力する。
【0022】
このとき、コントローラ20は、アノード圧力制御系及びカソード圧力制御系のそれぞれの目標圧力の変化に対して、相対的に応答の遅い方のガス圧力制御系の圧力変化に、相対的に応答が速い方のガス圧力制御系の圧力変化が一致するように、応答が速い方のガス圧力制御系の目標圧力の補正を行う。
【0023】
これにより、アノードの水素圧力を検出するアノード圧力センサ、及びカソードの空気圧力を検出するカソード圧力センサを設けなくても、アノードとカソードとの圧力差を一定に保持することができる。
【0024】
コントローラ20は、特に限定されないが、本発明ではメモリとCPUとI/Oインタフェースを備えたマイクロプロセッサで構成されているものとする。
【0025】
〔第1実施形態〕
アノードの水素圧力制御の応答性及びカソードの空気圧力制御の応答性は、配管径や配管長さ、バルブの応答性、コンプレッサの応答性など、さまざまな要因から決定されるが、これらの応答性は、設計段階で決まる要因がほとんどであり、あらかじめ実験や設計値などから算出することができる。
【0026】
このようにあらかじめ算出しておいたガス供給系の応答性の数式モデルかマップなどを用いて、速い応答性を持つガス圧力制御系の目標圧力を補正して、遅い応答性を持つガス圧力制御系との応答性と一致させ、常に同じガス圧力の応答性を実現する。
【0027】
上記の手法により、水素圧力センサ及び空気圧力センサを用いなくても水素圧力と空気圧力との圧力差を一定に保つことができる燃料電池の制御装置を実現することができる。
【0028】
次に、どのようにして応答性の数式モデルを算出するのか実施の形態を示す。尚、本実施形態では、カソード側の応答性が遅い場合、言い換えればアノード側の応答性が速い場合の実施の形態を示すが、アノード側の応答性がカソード側の応答性よりも遅い場合にも同様に実施可能であることは明らかである。
【0029】
まずカソード側の応答性を算出する。このカソード側の応答性とは、カソード側の目標ガス圧力指令値(目標水素圧力)から燃料電池スタックのカソード側出口のガス圧力の応答性を算出したものである。
【0030】
上記の系を算出するためには、実験段階では燃料電池のカソード側出口に圧力センサを取り付け、その圧力値を計測しておく。その後、実験結果より、カソード側目標圧力指令値を入力、カソード側出口の圧力を出力として、システム同定を行いカソード圧力制御系のプラントの特性を算出する。
【0031】
その実験結果をこの実施形態では下記の式とする。
【0032】
【数1】
【0033】
上記は算出結果の最も簡単な結果である。もしシステム同定の結果の精度を高めたければ、上式の次数を高めることも考えられる。
【0034】
また実際の応答性を下記のように示す。
【0035】
【数2】
カソード側応答性=Gc(s) …(3)
アノード側応答性=Ga(s) …(4)
上記の式を用いてアノード側圧力とカソード側圧力との圧力差が一定であることを表現すると、
【数3】
Gc(s)=Ga(s) …(5)
式(5)となればよい。
【0036】
したがって、カソード側及びアノード側の実際の応答性がシステム同定で算出した応答性とそれぞれほぼ等しいことから、
【数4】
Gc(s)≒GIc(s) …(6)
Ga(s)≒GIa(s) …(7)
より、式(6)の両辺を式(7)の両辺でそれぞれ除算すると、カソード側応答性Gc(s) は、次の式(8)となる。
【0037】
【数5】
【数6】
【0038】
この式(10)を目標水素圧力に乗じて目標圧力を補正し、補正後の目標圧力に基づいて水素圧力を制御すれば、圧力センサを用いることなく、水素圧力と空気圧力との圧力差を一定に制御することができる。
【0039】
図3は、本発明に係る燃料電池の制御装置の第1実施形態を説明するフローチャートであり、水素圧力制御系及び空気圧力制御系を上記のようにシステム同定した結果より、アノードの水素圧力とカソードの空気圧力との圧力差を一定に制御する実施の形態である。このフローチャートは、コントローラ20によって、一定の制御周期(例えば10mS)毎に実行されるものとする。
【0040】
まず、ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。燃料電池車両であれば、図示しないアクセルペダルの操作量に基づく駆動力と車速等によって時々刻々演算される要求電力に応じて、燃料電池の発電量が演算される。目標空気圧力は、この発電量に応じて算出される。
【0041】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0042】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0043】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。燃料電池車両であれば、S10で算出した燃料電池の発電量に応じて、アノードの水素圧力の目標値である目標水素圧力が算出される。
【0044】
S18では、S16で算出した目標水素圧力に、GIc(s)/GIa(s)を乗算して目標水素圧力を補正する。この目標値の補正により、応答性の速いアノード圧力は、応答性の遅いカソード圧力との圧力差を一定に保つことができる。
【0045】
S20では、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0046】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、アノード圧力制御手段とカソード圧力制御手段のそれぞれの目標圧力変化に対して、応答の遅い系の圧力変化に、応答が速い系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力を補正する目標値補正手段を備えたので、アノード圧力センサ及びカソード圧力センサを備えなくてもアノード圧力とカソード圧力との圧力差を一定にすることができるという効果がある。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第2実施形態について説明する。
【0049】
第2実施形態では、応答情報検出手段により、燃料電池の圧力応答特性に関する情報を収集し、この情報に基づいて目標値補正手段のパラメータであるゲイン(Gain)を可変とすることにより、目標値補正手段の補正特性を動的に変更して、圧力センサや流量センサを設けることなく、また圧力制御系のアクチュエータの特性が変化して、数式モデルと実際の圧力制御特性との間にズレが生じても、アノードとカソードの圧力応答の動特性を一致させ、圧力差を一定に保つことができる。
【0050】
応答情報検出手段は、図1の電圧計10と電流計11である。燃料電池のアノード及びカソードの圧力応答特性に関する情報として、燃料電池の出力電流と出力電圧とを検出する。そして、予め記憶した燃料電池の標準的な電流−電圧特性を参照して、出力電流に対応する基準電圧値を読み出し、基準電圧値と検出した出力電圧値(以下、実電圧値)とを比較する。この比較結果、実電圧が基準電圧より小さかった場合、燃料ガス(水素)または酸化剤ガス(空気)の圧力を増加するように目標値補正手段のゲイン(Gain)を補正する。
【0051】
図4は、燃料電池の電流−電圧特性を示す図である。図4に示すように、燃料電池の出力電圧は、出力電流の増加とともに低下する傾向にある。また、同一出力電流においても、燃料電池へ供給する水素あるいは空気の供給量や圧力が燃料電池の出力電流で決まる値を下回った場合には、燃料電池の出力電圧が低下するという電流−電圧特性を有する。標準的な水素及び空気の供給状態における燃料電池の電流−電圧特性をマップとして予めコントローラに記憶しておき、燃料電池の出力電流に対応する実際の出力電圧を計測し、マップに記憶した基準電圧値と照合すれば、水素又は空気の供給が不足しているか否かを判定することができる。
【0052】
逆に、出力電流に対して、水素及び空気の供給が過剰であれば、出力電圧は、マップに記憶した値よりも高くなる。しかし、水素及び空気の流量・圧力を増加させると、空気を圧縮するコンプレッサの消費電力が増加し、燃料電池システム全体としての発電効率の低下などを招く。従って、システム効率を考慮し、水素・空気の供給量や圧力の設定値は決められる。
【0053】
このような燃料電池システムにおいて、環境変化やコンプレッサなどアクチュエータの特性変化などにより、事前に定めたアクチュエータの動作指令値では、水素及び空気の所望の圧力や流量が実現できない場合も生じる。
【0054】
このような場合においても、アノード及びカソードの圧力センサや流量センサ等を用いることなく、アクチュエータ等の特性変化に応じた適正な流量・圧力を定常状態あるいは過渡状態までも含めて補償する方法を以下に示す。
【0055】
図4の示している「燃料電池の電流−電圧特性」と実際の電流、電圧の検出結果とを比較し、電流を基準として実際の電圧値が図示「変化許容下限値」を下回った場合、図6のゲイン補正マップよりゲイン(Gain)の補正を行う。この変化許容値は、電流−電圧特性のとして記憶された電流値や基準電圧値から計算式に基づいて算出してもよいし、基準電圧値とは別に、変化許容下限値をマップに記憶しておいてもよい。
【0056】
図2は、第2実施形態におけるコントローラ20の制御構成を説明する制御ブロック図である。図2において、コントローラ20は、運転条件に応じて燃料電池のアノードに供給する燃料ガス(水素)の目標圧力を算出する目標燃料圧力算出手段21と、運転条件に応じて燃料電池のカソードに供給する酸化剤ガス(空気)の目標圧力を算出する目標酸化剤圧力算出手段22と、図4のような燃料電池の電流−電圧特性を記憶した電流−電圧マップ(以下、IVマップとも略す)23と、IVマップから読み出した基準電圧と実際に電圧検出手段で検出した燃料電池の出力電圧(以下、実電圧)とを比較する比較手段24と、パラメータ補正手段25と、目標燃料圧力算出手段21または目標酸化剤圧力算出手段22が算出した目標水素圧力値または目標空気圧力値を補正する目標値補正手段26と、目標水素圧力に基づいてアノード圧力調整バルブの開度指示信号を演算するアノード圧力制御信号演算手段27と、目標空気圧力に基づいてコンプレッサ作動信号及びカソード圧力調整バルブの開度信号を演算するカソード圧力制御信号演算手段28とを備えている。
【0057】
パラメータ補正手段25は、本実施形態においては、IVマップ23から読み出したマップ電圧から実電圧を差し引いた値からゲイン(Gain)を算出し、このGainで目標値補正手段26におけるGainを補正するものである。
【0058】
次に、第2実施形態におけるコントローラ20の制御動作を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
図5において、まず、S10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0060】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0061】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0062】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0063】
次いで、S30で目標水素圧力(Tph )に、Gain×(GIc(s)/GIa(s))を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。
【0064】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0065】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0066】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0067】
S34では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S36へ進み、マップ電圧−実電圧を算出して、S38へ進む。S34で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0068】
S38では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図6に示すような換算表、または演算式により、目標値補正手段26のパラメータであるGainを算出し、算出した値をGain記憶用の領域に格納し、Gainを更新(補正)する。算出したGainは、次回のS30の演算に利用される。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池の出力電流と出力電圧とを検出し、予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性から出力電流に対応するマップ電圧を読み出して、実際の出力電圧がマップ電圧より低ければ、目標水素圧力を補正する際に乗じるパラメータであるGainを補正して水素の供給量を増やす構成にしたので、空気圧力制御系及び水素圧力制御系のアクチュエータ等の動作特性変化やアノード供給ガス成分及びカソード供給ガス成分の変化等により、圧力制御系の数式モデルにズレが生じてもアノードとカソードとの圧力制御系の動特性を一致させ、両極の圧力差を一定に保持させることができるという効果がある。
【0070】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第3実施形態について説明する。本実施形態におけるコントローラ20の制御構成は、図2に示した第2実施形態と同様である。
【0071】
第3実施形態では、S32の要求電流取り出しステップの次に、燃料電池の出力電流の今回値と前回値との差がある閾値以上か否かを判定し、ある閾値未満であれば、過渡状態ではないとして、パラメータ補正を省略する点に特徴がある。
【0072】
図8は、第3実施形態におけるコントローラ20の動作を説明するフローチャートであり、図9、図10は、第3実施形態におけるパラメータ補正を説明する図である。
【0073】
図8において、まず、S10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0074】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0075】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0076】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0077】
次いで、S50で、目標水素圧力(Thp )に、式(10)を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。これにより、差圧を抑えるためのダイナミックスを持たせることができる。
【0078】
本実施形態では、式(1)GIc(s)、式(2)GIa(s)の各パラメータC,D,E,Fを用いて、
【数7】
2ζω=(CF+DE)/CE …(11)
ω^2=DF/CE …(12)
とすると、
ζ=(CF+DE)/(2・(CE・DF)^0.5) …(13)
ω=(DF/CE)^0.5 …(14)
である。
【0079】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0080】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0081】
S52では、燃料電池の過渡判断をおこなう。これは、前回の出力電流を記憶した値を読み出し、S32で検出した今回の出力電流とを比較し、電流値の差の絶対値がある閾値以上か否かを判断することにより行われる。電流値の差の絶対値がある閾値未満であれば、定常状態と判定して処理を終了する。電流値の差の絶対値がある閾値以上であれば、過渡状態であるとしてS54へ進む。
【0082】
S54では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S56へ進み、マップ電圧−実電圧を算出して、S58へ進む。S54で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0083】
S58では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図9,図10に示すような換算表、または演算式によりζ,ωを算出し、算出した値をζ,ω記憶用の領域にそれぞれ格納し、ζ,ωを更新(補正)する。算出したζ,ωは、次回のS50の演算に利用される。このように、ζとωを動的に変化させることにより、システムを動的に最適化した目標水素圧力値の補正をおこなうことができる。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池の出力電流と出力電圧とを検出し、予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性から出力電流に対応するマップ電圧を読み出して、実際の出力電圧がマップ電圧より低ければ、目標水素圧力を補正する際のパラメータであるζ,ωを補正して水素の供給量を増やす構成にしたので、空気圧力制御系及び水素圧力制御系のアクチュエータ等の動作特性変化やアノード供給ガス成分及びカソード供給ガス成分の変化等により、圧力制御系の数式モデルにズレが生じてもアノードとカソードとの圧力制御系の動特性を一致させ、両極の圧力差を一定に保持させることができるという効果がある。
【0085】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第4実施形態について説明する。本実施形態におけるコントローラ20の制御構成は、図2に示した第2実施形態と同様である。第4実施形態の特徴は、第2実施形態において目標値補正手段のゲイン(Gain)を補正しても圧力補償が改善されない場合、燃料電池の出力電流を制限する点にある。
【0086】
図11は、第4実施形態におけるコントローラ20の動作を説明するフローチャートであり、図12は、第4実施形態におけるパラメータ補正を説明する図である。
【0087】
図11において、まず、S10において、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0088】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0089】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0090】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0091】
次いで、S30で目標水素圧力(Tph )に、Gain×(GIc(s)/GIa(s))を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。
【0092】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0093】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0094】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0095】
S34では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S36へ進み、(マップ電圧−実電圧)=Vd を算出して、S60へ進む。S34で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0096】
S60では、前回の(マップ電圧−実電圧)=Vdpを算出する。S62では、|Vd|>|Vdp|か否かを判定する。S62で、 |Vd|>|Vdp|、即ち今回の電圧差の絶対値が前回の電圧差の絶対値より大きければ、目標圧力の補正の効果が少ない可能性があるので、S64へ進み、図12に示すような換算表、または演算式により、 |Vd|−|Vdp|から取り出し電流のGain−Kを求め、取り出し電流値にGain−Kを乗算して、新たな取り出し電流とすることにより取り出し電流の制限を行って、S66へ進む。S62の判定で、 |Vd|>|Vdp|でなければ、S66へ進む。
【0097】
S66では、S38では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図6に示すような換算表、または演算式により、目標値補正手段26のパラメータであるGainを算出し、算出した値をGain記憶用の領域に格納し、Gainを更新(補正)する。算出したGainは、次回のS30の演算に利用される。
【0098】
以上説明した本実施形態によれば、目標水素圧力を補正する際に乗じるパラメータであるGainを補正して水素の供給量を増やしても燃料電池電圧の回復がなければ、取り出し電流を制限するようにしたので、必ず圧力補償を実現することができるという効果がある。
【0099】
尚、本実施形態のS60、S62,S64を図8に示した第3実施形態のS56とS58との間に挿入することにより、第3実施形態でも目標値補正手段のパラメータとして位相特性を補正しても圧力位相が改善されない場合、燃料電池の出力電流に制限を設けて、確実に圧力位相補償を行うことができる。
【0100】
〔第5実施形態〕
次に、本発明に係る燃料電池の制御装置の第5実施形態について説明する。本実施形態におけるコントローラ20の制御構成は、図2に示した第2実施形態と同様である。
【0101】
第5実施形態の特徴は、燃料電池の温度を測定する図示しない温度センサ(温度測定手段)を備え、この温度測定値により、図4のような予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性マップ(IVマップ)を補正する点にある。この温度センサは、燃料電池スタックに熱電対等の温度センサを直接埋め込んでもよいし、図示しない燃料電池冷却液の燃料電池出口付近の温度を測定して、燃料電池の温度としてもよい。
【0102】
実際の燃料電池の電流−電圧特性は、予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性(IVマップ)と必ず一致するとは限らず、温度により変化する。したがって高精度の制御を行うためには、燃料電池の温度を測定し、測定した温度と、IVマップが電流−電圧特性を示す温度との差に応じて、IVマップを補正しなければならない。
【0103】
図7は、第5実施形態におけるコントローラ20の制御動作を説明するフローチャートであり、図13は、第5実施形態におけるIVマップ補正量を説明する図である。
【0104】
図7において、まずS10で、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のカソードに供給する空気圧力の目標値である目標空気圧力(Tap )を算出する。
【0105】
次いで、S12では、目標空気圧力(Tap )を実現するために、コンプレッサ8の目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ9の開度(Tc_tvo)を調整するための制御量を算出している。これらコンプレッサ目標回転数(Tc_rev)と、カソード圧力調整バルブ開度(Tc_tvo)は、S10で算出した目標空気圧力(Tap )から、計算式または制御マップ等により一意的に算出されるものである。
【0106】
S14では、S12で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換し、図1のコントローラ20から、コンプレッサ8およびカソード圧力調整バルブ9へ出力する。
【0107】
S16では、燃料電池の運転条件に応じて、燃料電池のアノードに供給する水素圧力の目標値である目標水素圧力(Thp )を算出する。
【0108】
次いで、S30で目標水素圧力(Tph )に、Gain×(GIc(s)/GIa(s))を乗算して、目標水素圧力の補正を行う。
【0109】
次いで、S20において、補正後の目標水素圧力に基づいて、アノード圧力調整バルブ2の開度(Ta_tvo)を算出する。
【0110】
S22では、S20で算出したアノード圧力調整バルブの開度を実現するための制御信号を算出している。これは、S20で算出した結果をPWM信号やアナログ信号に変換して、図1のコントローラ20からアノード圧力調整バルブ2へ出力する。
【0111】
S40では、図示しない燃料電池の温度センサにより燃料電池の温度を検出する。S42では、図8で示したとおり、燃料電池温度が高ければ高いほどIVマップの電圧値の補正量が大きくなるように、補正量の演算を行う。S44では、実際にコントローラ20の内部に記憶したIVマップに補正を行う。
【0112】
S32では、要求電流を取り出した状態で、電圧計10と電流計11により、燃料電池4の出力電圧及び出力電流を検出する。
【0113】
S34では、S32で検出した出力電流に対応する電圧をIVマップから読み出し(この電圧をマップ電圧とする)、マップ電圧と電圧計で検出した実電圧とを比較する。そして実電圧が許容下限値を下回っていたら、S36へ進み、マップ電圧−実電圧を算出して、S38へ進む。S34で実電圧が許容下限値以上であれば、処理を終了する。
【0114】
S38では、(マップ電圧−実電圧)に基づいて、図6に示すような換算表、または演算式により、目標値補正手段26のパラメータであるGainを算出し、算出した値をGain記憶用の領域に格納し、Gainを更新(補正)する。算出したGainは、次回のS30の演算に利用される。
【0115】
本実施形態によれば、燃料電池の温度を考慮して予め記憶した燃料電池の電流−電圧特性を補正する構成にしたため、燃料電池の運転温度が変化しても、圧力センサを用いることなく正確なアノード圧力とカソード圧力との差圧制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される燃料電池システムの構成例を説明するシステム構成図である。
【図2】図1におけるコントローラの制御構成を説明する制御ブロック図である。
【図3】本発明に係る燃料電池の制御装置の第1実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図4】燃料電池の電流−電圧特性の例を示すIV特性図である。
【図5】本発明に係る燃料電池の制御装置の第2実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図6】第2実施形態において、IV特性図の電圧と実際の出力電圧との差からゲイン(Gain)を求めるマップの例である。
【図7】本発明に係る燃料電池の制御装置の第5実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明に係る燃料電池の制御装置の第3実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図9】第3実施形態における目標値補正手段のパラメータωの補正を説明する図である。
【図10】第3実施形態における目標値補正手段のパラメータζの補正を説明する図である。
【図11】本発明に係る燃料電池の制御装置の第4実施形態の制御動作を説明するフローチャートである。
【図12】第4実施形態における取り出し電流制限のためのGain−Kを説明する図である。
【図13】第5実施形態におけるIVマップ補正量を説明する図である。
【符号の説明】
1…燃料タンク
2…アノード圧力調整バルブ
3…エゼクタ
4…燃料電池
5…アノード
6…カソード
7…水素パージバルブ
8…コンプレッサ
9…カソード圧力調整バルブ
10…電圧計(電圧検出手段)
11…電流計(電流検出手段)
12…負荷装置
20…コントローラ(制御装置)
21…目標燃料圧力算出手段
22…目標酸化剤圧力算出手段
23…電流−電圧マップ
24…比較手段
25…パラメータ補正手段
26…目標値補正手段
27…アノード圧力制御信号演算手段
28…カソード圧力制御信号演算手段
Claims (8)
- 運転条件に応じて燃料電池のアノードに供給する燃料ガスの目標圧力である目標燃料圧力を算出する目標燃料圧力算出手段と、
運転条件に応じて燃料電池のカソードに供給する酸化剤ガスの目標圧力である目標酸化剤圧力を算出する目標酸化剤圧力算出手段と、
前記アノードにおける燃料ガス圧力が前記目標燃料圧力となるようにアノード圧力を制御するアノード圧力制御手段と、
前記カソードにおける酸化剤ガス圧力が前記目標酸化剤圧力となるようにカソード圧力を制御するカソード圧力制御手段と、
アノード及びカソードのそれぞれのガス圧力制御系の目標圧力の変化に対して応答の遅い方のガス圧力制御系の圧力変化に、応答が速い方のガス圧力制御系の圧力変化が一致するように、応答が速い系の目標圧力の補正を行う目標値補正手段と、
を備えたことを特徴とする燃料電池の制御装置。 - 前記カソード圧力制御手段は、
カソード出口に備えた開度調整可能な空気絞り弁であることを特徴とする請求項1項記載の燃料電池の制御装置。 - 燃料電池の圧力制御系の応答に関する情報を検出する応答情報検出手段と、
燃料電池の基準応答情報を予め記憶する記憶手段と、
前記応答情報検出手段が検出した圧力制御系の応答情報と前記基準応答情報とを比較する比較手段と、
該比較手段の比較結果に基づいて、前記目標値補正手段のパラメータを補正するパラメータ補正手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池の制御装置。 - 前記応答情報検出手段は、燃料電池の出力電流を検出する電流検出手段及び燃料電池の出力電圧を検出する電圧検出手段であり、
前記記憶手段は、予め燃料電池の電流−電圧特性を記憶する電流電圧特性記憶手段であり、
燃料電池からある電流値を取り出した時に検出された実電圧値と、該電流値に対応する前記電流電圧特性記憶手段に記憶した基準電圧値とを比較し、
前記実電圧値が前記基準電圧値より小さかった場合に、
燃料ガスまたは酸化剤ガスの圧力を増加するように前記目標値補正手段のゲインを補正することを特徴とする請求項3記載の燃料電池の制御装置。 - 前記目標値補正手段のゲインを補正しても、圧力補償が改善されない場合は、燃料電池の出力電流に制限を設けることを特徴とする請求項4記載の燃料電池の制御装置。
- 前記応答情報検出手段は、燃料電池の出力電流を検出する電流検出手段及び燃料電池の出力電圧を検出する電圧検出手段であり、
前記記憶手段は、予め燃料電池の電流−電圧特性を記憶する電流電圧特性記憶手段であり、
燃料電池からある電流値を取り出した時に検出された実電圧値と、該電流値に対応する前記電流電圧特性記憶手段に記憶した基準電圧値とを比較し、
前記実電圧値が前記基準電圧値より小さかった場合に、
燃料ガスまたは酸化剤ガスの圧力を増加するように前記目標値補正手段の位相特性を補正することを特徴とする請求項3記載の燃料電池の制御装置。 - 前記目標値補正手段の位相特性を補正しても、圧力位相が改善されない場合は、燃料電池の出力電流に制限を設けることを特徴とする請求項6記載の燃料電池の制御装置。
- 燃料電池の温度を測定する温度測定手段を備え、
予め記憶した燃料電池の電流電圧特性を燃料電池温度が上昇すればするほど、同じ取り出し電流でも電圧を高くする補正をかけることを特徴とする請求項3乃至請求項7の何れか1項に記載の燃料電池の制御装置。
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