以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
<鞍乗り型車輌の構成>
図1は、本発明の実施の形態1のシフト機構を備えた変速装置を搭載する車輌を示す図である。図1に示す車輌1は、運転者がシート2にまたがって搭乗する鞍乗り型車輌であり、例えば、自動二輪車である。図2は、本発明の実施の形態1のシフト機構を適用した変速装置の説明に供するエンジンユニットの左側面図であり、部分的に覆蓋等を取り外した状態を示した図である。図3は、同エンジンユニットの右側面図であり、部分的に覆蓋等を取り外した状態を示した図である。また、図4は、図2におけるA−B−C−D−E−A線断面を展開した図であり、図5は、図3におけるG−H−I−J−G線断面を展開した図である。
図1に示す車輌1は、ハンドル3と、前輪4と、後輪5と、エンジン6、クラッチ90及び変速機構7を備えるエンジンユニット8と、シフトスイッチ(変速操作子)9と、ECU(Engine Control Unit)10等とを備える。
エンジンユニット8は、チェーンやベルトを介して後輪5に接続されており、エンジン6による駆動力は、変速機構7の出力軸からチェーンやベルトを介して後輪5に伝えられる。変速機構7は、エンジンユニット8の筐体(ユニットケース)に内蔵され、出力軸の一端部をユニットケースから外へ露出させている。変速機構7についての詳細は後述する。
シフトスイッチ9は、ハンドル3に設けられ、運転者の操作によりエンジンユニット8に変速動作させる。なお、シフトスイッチ9は、シフトアップボタン及びシフトダウンボタン(図示省略)を有する。シフトアップボタンが運転者に押下されることによって、ECU10にシフトアップ操作情報を出力する。また、シフトダウンボタンが運転者に押下されることによって、ECU10にシフトダウン操作情報を出力する。
ECU10は、車輌1の各部の動作、特に、エンジンユニット8の駆動に関わる制御を主に行う。特に、ECU10は、シフトスイッチ9からの変速操作の操作情報を受けて、エンジンユニット8の変速機構7(図1、4参照)、シフト機構80(図3、5参照)を制御して、駆動力を伝達する変速ギア段の変更を行う。なお、ECU10、変速機構7、シフト機構80、シフトアクチュエータ81、クラッチ90、クラッチアクチュエータ98は、変速装置を構成する。
ECU10は、シフトスイッチ9を介して運転者によってシフトチェンジ要求が入力されると、変速制御(シフトチェンジ制御)を開始する。ECU10は、まず、クラッチアクチュエータ98(図4参照)を駆動してクラッチ90(図4参照)のトルク容量を減じて駆動力の伝達を遮断して、クラッチを非接続状態とする。そして、次に、シフトアクチュエータ81(図5参照)を駆動して、シフト機構80を介して変速機構7、詳細にはシーケンシャルシフト機構72(図4参照)を動作して、変速機構7において運転者の要求に応じた一組の変速ギア74、75(図4参照)を選択させる。その後、再びクラッチアクチュエータ98を駆動して、クラッチ90のトルク容量を増して、駆動力の伝達を再開する(クラッチを接続状態とする)。
変速機構7は、エンジンのクランクシャフト(図示省略)に接続され、クランクシャフトから伝達されるトルクを可変して後輪5(図1参照)側に伝達する。また、シフト機構80(図3参照)は、シーケンシャルシフト機構72を介して変速機構7における可変動作(減速比を変更する動作)を行うとともに、次の可変動作を行うまでの間、選択したギア段(減速比)を保持するように動作する。
<変速装置の構成>
変速装置では、クラッチ90を介してエンジン6(図1参照)からの駆動力が伝達される。
クラッチ90は、ここでは、多板摩擦クラッチであり、筒状のクラッチハウジング91と、筒状のクラッチボス92と、摩擦板である複数のフリクションプレート93及びクラッチプレート94と、プレッシャプレート95とを備える。
クラッチ90は、エンジン6のクランク軸のギアに噛み合う入力ギア96を備える。なお、クラッチ90は、多板式クラッチに限定されず、例えば、遠心ウエイトを用いた自動遠心クラッチであっても良い。
クラッチハウジング91は、主軸52に相対回転可能に取り付けられている。クラッチハウジング91の内部には、リング状の薄板状に形成された複数のフリクションプレート93が配置されている。なお、フリクションプレート93の外周には、複数の外歯が形成されており、これらの外歯は、クラッチハウジング91の内周面で主軸52の軸方向に延びる複数の内歯(溝)に係合している。この構成により各フリクションプレート93は、クラッチハウジング91に相対回転不能で、且つ、主軸52の軸方向に変位可能に取り付けられた状態となっている。
クラッチハウジング91の基部には、主軸52の端部が挿通されている。主軸52の端部には、クラッチボス92の基部が固定されている。
クラッチボス92の外周には、リング状の薄板状に形成された複数のクラッチプレート94が配設されている。リング状のクラッチプレート94の内径部には複数の内歯が形成され、クラッチボス92の外周面で、主軸52の軸方向に延びる複数の外歯(溝)と係合している。これにより、各クラッチプレート94は、クラッチボス92に相対回転不能で、且つ、主軸52の軸方向に変位可能に取り付けられた状態となっている。
各フリクションプレート93と各クラッチプレート94とは、主軸52の軸方向において交互に配置されており、互いに押圧することで、クラッチハウジング91からクラッチボス92、つまり、入力ギア96から主軸52へ動力を伝達する。
プレッシャプレート95は、略円盤形状に形成されており、クラッチボス92に対して、主軸52の軸方向に変位可能に設けられている。このプレッシャプレート95には軸受け95aを介してロッド531が回動自在に接続されている。プレッシャプレート95は、レリーズリンク53のロッド531を介して、クラッチアクチュエータ98により、主軸52の軸方向に移動自在となっている。このプレッシャプレート95がクラッチボス92の基端側(図4において左側)に軸方向に移動することで、各フリクションプレート93と各クラッチプレート94とが互いに押圧する。これらの押圧により生じる摩擦力によって、クラッチハウジング91とクラッチボス92とを接続して、エンジン6からクラッチボス92、つまり、主軸52へ駆動力を伝達したり(クラッチの締結)、駆動力を切断(クラッチの切断)したりする。
クラッチアクチュエータ98は、ECU10に接続されており、ECU10によって駆動制御される。
変速機構7は、有段式の変速機構であって、主軸52と、主軸52と平行に配置された出力軸54と、シーケンシャルシフト機構72とを備えている。シーケンシャルシフト機構72は、シフトカム110、シフトフォーク114、115、116、及びシフトフォーク114、115、116の移動をガイドするガイド軸56、57で構成される。
主軸52には、複数の変速ギア74が装着されている。一方、出力軸54には、複数の変速ギア74に対応する複数の変速ギア75が装着されている。変速機構7は、複数の変速ギア74と複数の変速ギア75と、において、組み合わせの決められた一対のギア同士で常時噛合している機構、所謂、常時噛合式変速機構である。
変速機構7において、駆動力を伝達するギア組(変速ギア74と75)の選択は、シーケンシャルシフト機構72を構成するシフトカム110の回動によって行われる。シフトカム110の外周面には、カム溝111、112、113が形成され、カム溝111〜113には、それぞれシフトフォーク114〜116が装着されている。シフトフォーク114〜116は、シフトカム110の回転軸と平行にユニットケースに固定されたガイド軸56、57上を軸方向に移動自在に配置され、それぞれ主軸52及び出力軸54の所定の変速ギア74及び75のうちの所定の変速ギアに連結されている。
変速ギア74、75のうちの所定の変速ギアは、主軸52或いは出力軸54に対して回転方向で固定され、且つ、主軸52及び出力軸54の軸方向に移動可能である。各変速ギア(所定の変速ギア)は、シフトフォーク114〜116を介してシフトカム110の外周面のカム溝111〜113によって、軸方向の位置を操作される。すなわち、シフトフォーク114〜116が連結された所定の変速ギアは、シフトフォーク114〜116により軸方向の位置を移動される。移動された所定の変速ギアのドッグと、当該移動された所定の変速ギアに隣接して、主軸52或いは出力軸54に対して軸方向には移動が固定され、且つ、相対回転自在な所定の変速ギアのドッグと、が噛合することによって、駆動力を伝達するギア組が選択される。
変速機構7では、シフトカム110がカム溝111〜113の形状と連携した所定の位相に回転することによって、複数のシフトフォーク114〜116が連結された所定の変速ギア74、75を主軸52及び出力軸54の軸方向に移動する。所定の変速ギアの主軸52及び出力軸54の軸方向への移動は、駆動力を伝達する所定のギア組を選択する。このとき、カム溝111〜113の形状により、唯一の所定のギア組が選択される。このように、唯一のギア組が機械的に選択される(いかなる場面でも、同時に複数のギア組に対して駆動力を伝達可能な状態にしない)構成をシーケンシャルシフトと言う。
これにより、変速ギア74及び変速ギア75のうちの一対の変速ギア(74と75)の組みが選択される。具体的には、複数の変速ギア74及び75のうち、シフトカム110の位相に応じたギア段(第1速〜第6速)の一対の変速ギア74、75のみが、主軸52及び出力軸54に対して、それぞれドッグを介してスプラインによる固定状態となる。またニュートラルではいずれの変速ギア74、75も主軸52及び出力軸54に対して固定されない。これにより、変速ギア段(ここでは、ニュートラル及び第1速〜第6速)が決定され、当該変速ギア74及び75を介して、主軸52と出力軸54との間で所定の変速比で駆動力の伝達が行われる。
シフトカム110は、図5に示すように、シフト機構80により駆動する。
シフト機構80は、シフトアクチュエータ81の駆動を伝達するシフトロッド82と、シフトシャフト83と、間欠送り部120と、カム位相保持部140(図6(b)参照)と、を有する。
シフト機構80では、シフトアクチュエータ81の駆動により、その駆動力が、シフトロッド82を介してシフトシャフト83に回転力(トルク)として伝達される。
シフトアクチュエータ81は、ECU10に接続されており、ECU10によって駆動制御される。
シフトアクチュエータ81は、搭乗者によるシフトスイッチ9の操作によってECU10に入力されるシフトチェンジ要求に基づいて、シフトチェンジ要求に対応するシフトチェンジ動作の駆動を行う。具体的には、シフトアクチュエータ81は、ユニットケースに回動自在に取り付けられたシフトシャフト83を所定方向に回転させる。前記所定方向は、シフトチェンジのシフトアップ時とシフトダウン時とで、正反対の回転方向となる。シフトアクチュエータ81は、シフトシャフト83を所定の回動範囲で回動させる。
シフトシャフト83は、一端側で、リンクを介してシフトロッド82に接続され、他端側で間欠送り部120を介してシフトカム110に接続されている。シフトシャフト83は、回転することで、間欠送り部120を介して、シフトカム110に軸心回りの回転力を付与する。このシフトシャフト83は、所定の回動範囲を回動して間欠送り部120を駆動する。
間欠送り部120は、シフトアクチュエータ81の駆動により回転するシフトシャフト83の回転力をシフトカム110に伝達し、シフトカム110を間欠的に回転(所定角度にて回転)する。なお、間欠的に回転(所定角度で回転)することを、シフトカム送り、間欠送りともいう。間欠送り部120は、ユニットケース内で、シフトカム110を軸支するとともにシフトカム110の軸方向の位置を規制する壁部8bよりも外側に配置されている(図5参照)。なお、シフトカム110は、ユニットケースの壁部8bに取り付けられた軸受99に挿入されている。これにより、シフトカム110は、軸心C2回りに安定した回転を行うことができる。また、シフトフォーク114〜116は、カム溝111〜113によってシフトカム110に対して軸方向の位置を設定されている。すなわち、シフトフォーク114〜116は、シフトカム110、軸受99、及びユニットケースの壁部8bを介して、主軸52及び出力軸54に対する軸方向の位置を設定されている。
図6は、図3に示すシフト機構の要部の説明に供する図であり、図6(a)は図3に示す間欠送り部120の要部拡大図、図6(b)は、間欠送り部120におけるカム位相保持部の要部拡大図である。なお、図6(a)では、付勢スプリング86のコイル部分と、スプリング88、142とを図示省略している。図7は、インデックスカム130の説明に供する図であり、エンジンユニットでは右側面図に相当する。
間欠送り部120は、図6(a)に示すように、シフトアーム84と、送り爪部85と、シフトカム110に一体に固定されるインデックスカム130と、を有する。
図3、図5及び図6(a)に示すように、シフトアーム84は、シフトシャフト83の他端部に、シフトシャフト83の軸心C1回りに回動自在に取り付けられ、シフトシャフト83に対して直交する方向に延出する。また、シフトアーム84の基部には、トーションスプリングである付勢スプリング86のコイル部分が外装されている。
シフトシャフト83の他端には、シフトアーム84との間で付勢スプリング86を挟むように、フランジ831が固定されている。付勢スプリング86は、巻回したコイル部分より導出した巻端部である左辺部86a及び右辺部86bを有する。付勢スプリング86は、左辺部86a及び右辺部86bで、フランジ831の一端部をシフトアーム84側に折曲してなる係止部83aと、シフトアーム84の基部における一端部をフランジ831側に折曲して設けられた係止部84aと、を挟む。すなわち、フランジ831の係止部83a及びシフトアーム84の係止部84aは、軸心C1の半径方向で離間して互いに対向した状態で、付勢スプリング86の左辺部86a及び右辺部86bによって挟まれる。
これにより、シフトアーム84は、係止部84aにおいてフランジ831の係止部83aに対して付勢スプリング86により弾性的に拘束され、シフトシャフト83の回転により回転する。例えば、シフトアップ時のシフト操作である場合、図3ではシフトアーム84は先ず時計回りに回転する。
なお、付勢スプリング86は、シフトシャフト83がシフトチェンジ動作の回動を開始する以前の状態においてプリロードを有する。すなわち、付勢スプリング86は、シフトシャフト83の回転方向において、シフトアーム84の係止部84aが、常にフランジ831の係止部83aに向きを揃えた状態になるように、付勢している。
故に、シフトアップ時のシフト操作である場合は、シフトシャフト83の回転により回転するシフトアーム84は、付勢スプリング86を介して、その回転力が伝達される。
シフトアーム84の先端側には、送り爪部85が設けられている(図5、図6(a)参照)。この送り爪部85は、シフトアーム84の先端部に、軸心C1と平行な取付軸87で回動自在に取り付けられている。送り爪部85は、図6(a)の視において所定距離を空けて対向する左右側爪85a、85bを備える。送り爪部85のシフトアーム84に対する向きは、取付軸87に取り付けられたスプリング88によって、対向する左右側爪85a、85bの中央が常に軸心C1を向くように付勢されている。スプリング88はコイル部分を取付軸87に外装するトーションコイルスプリングであり、コイル部分から導出する左右辺部により、送り爪部85においてシフトアーム84の側に折曲して突出した一部と、シフトアーム84の係止部84bとを対向させて挟む。
ここで、インデックスカム130は、シフトカム110の、シフトアーム84が配設される側の端部に固定されており、シフトカム110とともに軸心C2を回転中心としている。インデックスカム130は、間欠送り部120が配設される側の側面(シフトカム110に接続される側とは反対側の側面)に、複数のピン160(ピン162及びピン164)を有する。
ピン160は、図7に示すように、インデックスカム130から突出して、シフトカム110の軸心C2を中心に一定のピッチ円上に設けられている。ピン160のうち、ピン164(長円凸部164)は、ここでは1本であり、表面側(図5において右側)から見て円弧状に反った長円を成している。ピン164は、図7中で「2」の符号を付けた箇所の凹部の底部近傍から表面側(図5において右側)に突出している。ピン164は以下において長円凸部164と称する。また、ピン162は、ここでは6本あり、図中で「1」、「N」、「6」、「5」、「4」、「3」の符号を付けた箇所の凹部の底部近傍から表面側に突出している。
これらピン162は、図5に示すように、シフトカム130の回転軸心C2方向において、送り爪部85の左右側爪85a、85b、外縁部851、852よりも端を、図5において右に、突出した高さを有する。一方、長円凸部164は、これらピン162よりも突出高さが小さく、軸心C2方向において、左右側爪85a、85b、及び外縁部851、852とは重ならず、且つ、シフトアーム84の係止部84bとは重なる高さに設定されている。
なお、図6(a)に示すシフトアーム84、送り爪部85、ピン160(ピン162、及び長円凸部164)の位置関係についての詳細は、後述する。
送り爪部85は、左右側爪85a、85bの外縁をテーパ状の外縁部851、852としている。外縁部851、852のテーパは、シフトアーム84の回動に伴って送り爪部85が変位して、外縁部851、852がインデックスカム130のピン162に当接した際に、送り爪部85がシフトアーム84の先端部において揺動することで、外縁部851、852がピン162を摺動可能な角度で形成されている。
係止部84bは、シフトアーム84の回転駆動によって、回転するシフトカム110の回転範囲を規制する。係止部84bは、シフトアーム84において、シフトカム110側に折曲して突出して設けられている。係止部84bは、シフトチェンジ動作によりシフトアーム84が回転する以前の状態において、インデックスカム130とともに軸心C2において回転するピン160(ピン162、長円凸部164)の回転軌道(軌跡円環)の内側に在る。このため、係止部84bは、シフトチェンジ動作によりシフトアーム84が回転する以前の状態ではインデックスカム130の回動に干渉しない。係止部84bは、シフトチェンジ動作を開始してシフトアーム84が回動すると、インデックスカム130とともに回転するピン160(ピン162、長円凸部164)の回転軌道(軌跡円環)に進入する。また、係止部84bは、シフトアーム84が送り爪部85によりシフトカム110を回転して所定の回転角度でシフトカム110を制動する際に、所望のピン160(ピン162、或いは長円凸部164)に当接して、インデックスカム130の回動を制止する位置に設けられる。すなわち係止部84bは、間欠送り部120において、シフトカム110が所定の回転角度を過ぎて回転するのを規制する位置に設けられる。
また、送り爪部85は、シフトアーム84の回転とともに、シフトシャフト83の軸心C1を回転中心として回転(公転)する。さらに、送り爪部85は、シフトアーム84の回転を受け、左右側爪85a、85bにおいてインデックスカム130のピン162を引っかけると、取付軸87を中心に回転(自転)しながら、インデックスカム130を軸心C2回りに回転する。すなわち、シフトアーム84を回転することで、送り爪部85、ピン162、インデックスカム130を介してシフトカム110が所定の角度で回転する。シフトカム110が略所定の角度で回転すると、係止部84bがピン160(ピン162または長円凸部164)に当接することでインデックスカム130の回動を規制して、シフトカム110の回転が停止する。
すなわち、ピン162は、シフトアーム84が回転した際に、送り爪部85に係合してインデックスカム130を軸心C2回りに回転させる。一方、長円凸部164は送り爪部85には接触せず、インデックスカム130に回転力を伝達しない。また、ピン160(ピン162及び長円凸部164)は、インデックスカム130(シフトカム110)が軸心C2回りに所定角度回転した際に、シフトアーム84の係止部84bに当接してインデックスカム130の回転を制動する。
カム位相保持部140は、インデックスカム130を所定の変速段に対応する位相に収束して保持する。これにより、インデックスカム130に固定されたシフトカム110は、変速段に対応する位相に収束して保持される。カム位相保持部140は、フォロワスプリング142と、フォロワアーム144と、フォロワ150と、を有する(図6(b)参照)。
フォロワスプリング142は、一端側が壁部8bに設けられたピン143に係止され、他端側は、フォロワアーム144に接続している。フォロワスプリング142は、例えば、引っ張りコイルスプリングである。フォロワスプリング142は、スプリングが引張状態として、ピン143とフォロワアーム144とに接続している。
フォロワアーム144は、シフトシャフト83の軸心C1回りで回転自在に、シフトアーム84の基部の一端側(図5における左側)に取り付けられている。そのため、フォロワスプリング142は、スプリングの短縮方向の付勢力によって、常にフォロワ150をインデックスカム130(詳細には図7(a)に示す凹部132及び山部134a〜134dを含むインデックスカム130の外周面)に当接させ、インデックスカム130を略軸心C2に向けて押圧している。
フォロワスプリング142の付勢力を受けたフォロワ150がインデックスカム130に当接していることで、インデックスカム130には回転力(トルク)が付与される。また、シフトアクチュエータ81が駆動入力したトルクは、シフトシャフト83、付勢スプリング86、シフトアーム84、送り爪部85を介してピン162からインデックスカム130へトルクとして伝達される。これらトルクの作用を受け、シフトカム110は軸心C2回りに安定して回転することができる。
また、これらフォロワスプリング142、フォロワアーム144及びフォロワ150は、インデックスカム130を所定の変速段の位相で保持するカム位相保持部140を構成する。
図7に示すインデックスカム130は、シフトカム110の一端部に、シフトカム110と同一軸心で固定されている。
インデックスカム130では、外周部が周方向に連続して凹凸(山谷)状に形成されており、凹凸状の凹状部分を構成する凹部132の位置が、シフトカム110における各変速ギアのギアポジション(入段位置)となっている。すなわち、インデックスカム130の外周部には、シフトカム110が間欠回動した際に、変速段に対応したシフトカム110の位相を規定する凹部132が外周に沿って設けられている。また、凹部132は、フォロワ150と係合することで、シフトカム110を、所定のギアポジションの位相で保持する。
凹部132は、インデックスカム130の外周部に、ニュートラルポジション(ニュートラル)に対応する符号「N」を付した凹部と1速ギアポジション(第1速段)に対応する符号「1」を付した凹部との間の回転角が、1速ギアポジション(第1速段)に対応する「1」を付した凹部と2速ギアポジション(第2速段)に対応する符号「2」を付した凹部との間の回転角と同じとなるように形成されている。加えて、凹部132は、トップギアである6速(最高速)ギアポジション(第6速段)に対応する符号「6」を付した凹部とニュートラルポジションに対応する「N」の凹部とで鋭角に挟まれる、シフトカム110が回動しない範囲の角度(挟み角)が、ニュートラルポジションの「N」の凹部と第1速の「1」の凹部との間の回転角より小さくなるように形成されている。
本実施の形態では、変速装置は、6段変速のボトムニュートラル式の変速装置であり、シフトパターンにおいて、ニュートラルポジションの位置は1速ギアポジションの位置の下側である。そのため、インデックスカム130の凹部132は、外周部において、ニュートラルポジションに対応する「N」の箇所から、第1速段を経て順に、反時計回りに第2速段、第3速段、・・・、第6速段に対応する位相に設けられている。なお、以下では、ニュートラルポジションに対応する位相に形成された凹部や各n(ここでは1〜6)速のギアポジションに対応する位相に形成された凹部を、便宜上、「ニュートラルの凹部」や「第n速の凹部」、或いは図中符号を引用して「「n」の凹部」、と称する。
このインデックスカム130におけるニュートラル「N」の凹部と第6速「6」の凹部とで鋭角に挟む一方側の円弧に形成する山部134aの高さ(軸芯C2から頂までの半径)は、第1速「1」の凹部が在る他方側の円弧で、周方向で隣接する凹部間に形成する山部134bの高さよりも小さい(図7参照)。
すなわち、インデックスカム130では、ニュートラル「N」の凹部と第1速「1」の凹部との間の回転角度は、第1速「1」の凹部と第2速「2」の凹部との間の回転角度と同じである。なお、第1速「1」の凹部と第2速「2」の凹部との間の回転角度は、第2速「2」の凹部と第3速「3」凹部との間の回転角度、第3速「3」の凹部と第4速「4」の凹部との間の回転角度、第4速「4」の凹部と第5速「5」の凹部との間の回転角度、第5速「5」の凹部と第6速の凹部との間の回転角度と同じである。
加えて、凹部132は、第6速「6」の凹部とニュートラル「N」の凹部とで鋭角に挟む角度が、ニュートラル「N」の凹部と第1速「1」の凹部との間の回転角度(ニュートラル「N」と第1速「1」との間のギアチェンジにおいてインデックスカム130を回転する角度)より小さくなっている。なお、第6速「6」の凹部とニュートラル「N」の凹部とで鋭角に挟む角度の範囲は、車輌1に搭載されるエンジンユニット8において、シフトカム110は回転しない。すなわち、第6速「6」から第5速「5」を経ずにニュートラル「N」へ、或いはニュートラル「N」から第1速「1」を経ずに第6速「6」へ、ギアチェンジするシフトカムの回動は、たとえば、シフトカム110の外周面に設けたカム溝111〜113の溝形状等、間欠送り部120以外の構造によって、規制されている。
ここでは、トップギアである第6速「6」の凹部とニュートラル「N」の凹部とで鋭角に挟む、シフトカムが回動しない範囲の角度を30°とし、「N」の凹部から「1」の凹部を含む側の周方向に「6」の凹部までの間において、周方向で隣接する凹部間の角度は55°としている。
ここで、図6(a)に示すシフトアーム84、送り爪部85、ピン160(ピン162、及び長円凸部164)の位置関係について、フォロワ150及び凹部の位置関係とともに説明する。
図6(a)に示すインデックスカム130において、フォロワ150は、ニュートラル「N」の凹部(図6(b)参照)に当接しつつ押圧して、つまり、係合して、シフトカム110の位相をニュートラル「N」に保持している。また、シフトシャフト83及びシフトアーム84はギアチェンジの動作を開始する前の所定の中立位置に位置している。これらの状態のとき、長円凸部164と、長円凸部164に対して反時計回りに隣り合うピン(「3」の凹部の底部近傍から表面側に突出するピン)162とは、送り爪部85の左右側爪85a、85bで抱えられるように位置する。このとき左右側爪85a、85bにおいて、ピン162が右側爪85bの側に、長円凸部164が左側爪85aの側に位置する。
また、変速装置において、シフトアップ時の操作を行う場合、シフトアーム84の時計回りの回転により、右側爪85bは一つのピン162を係合して(引っ掛けて)、インデックスカム130を時計回りに回転させる。インデックスカム130のニュートラル「N」凹部のカム面が、フォロワ150と当接する位相では、送り爪部85に挟まれるピン162は1本である。フォロワ150が当接する凹部が第1速「1」からトップギアの一つ前のギアポジション(ここでは「6」−1=「5」)の間では、シフトアップ、シフトダウンを開始する際、送り爪部85は、左右側爪85a、85bで2本のピン162を抱えるように配置される(図9(a)、図11(a)参照)。
さらに、インデックスカム130において、フォロワ150が第6速「6」の凹部を当接しつつ押圧してシフトカム110の位相を第6速「6」に保持し、且つ、シフトシャフト83及びシフトアーム84がギアチェンジの動作を開始する前の所定の中立位置に在るとする。このとき、長円凸部164と、長円凸部164に対して時計回りに隣り合うピン(「1」速位置の凹部の底部近傍から表面側に突出するピン)162とが、送り爪部85の左右側爪85a、85bで抱えられるように位置する。このとき左右側爪85a、85bにおいて、長円凸部164が右側爪85bの側に、ピン162が左側爪85aの側に位置する(図11(c)参照)。
すなわち、図7(b)を参照して、インデックスカム130より突出するピン160は、長円凸部164において軸心C2を中心とした長円弧の両端を形成する小円164a、164bと、ピン162とは、軸心C2を中心とするピッチ円上に等間隔(同じ角度)で配設されている。
ピン162は、シフトカム110がニュートラルの位相にある状態において長円凸部164の小円164aを起点として、反時計回りに、変速ギア段の各1段を変更する際のシフトカム130を回動する角度の間隔で配設され、小円164aを含み8本目のピンの位置に小円164bが配設される。すなわち、長円凸部164における小円164aと小円164bは、軸心C2を中心に、1段の変速ギア段の変更においてシフトカム130を回動する角度と、変速ギア段を確立してインデックスカム130の回動を停止する位相の数を乗じた角度離間して配設されている。これら2つの小円164a、164bで挟む鋭角の範囲に、軸心C2を中心とする円弧を有する長円弧部164cが小円164a、164bと一体的に形成されている。
詳細には、図6(a)を参照して、ピン162は、間欠送り部120がニュートラル「N」の中立位置(シフトカム110はニュートラルの位相にある)において左側爪85aの側にある長円凸部164の円弧端の小円164aを起点として、反時計回りに、変速ギア段の各1段の変更においてシフトカム130を回動する角度(ここでは55°)の間隔で配設される。そして、小円164aを含み、8本目のピンの位置に、小円164bが配設される。すなわち、間欠送り部120がニュートラル「N」の中立位置(シフトカム110はニュートラルの位相にある)において、左側爪85aの側にある長円凸部164の円弧端の小円164aと、図11(c)を参照して間欠送り部120がトップギアである第6速「6」の中立位置(シフトカム110は第6速の位相にある)において、右側爪85bの側にある長円凸部164の円弧端の小円164bとは、図7(b)を参照して、1段の変速ギア段の変更においてシフトカム130を回動する角度(ここでは55°)と、変速ギア段を確立してインデックスカム130の回動を停止する位相の数(ここでは、ニュートラルを含み、第1速から第6速までの7回)を乗じた角度(ここでは、55°×7回=385°)離間して配設されている。そして、2つの小円で挟む鋭角(ここでは385°−360°=25°)の範囲を長円凸部164の円弧部で結んでいる。
次に本実施の形態の変速装置における間欠送り部120の変速動作を説明する。なお、間欠送り部120の動作説明で用いられる図8〜図14では、付勢スプリング86のコイル部分と、スプリング88、142とを図示省略する。また、図8〜図14のインデックスカム130の外周において、インデックスカム130を各速のギアポジションに対応する位相で保持する凹部には、便宜上、各速のギアポジションに対応する符号(N、1〜6)を付して示した。
<ニュートラルから第1速へのカム送り部の変速動作>
図8は、ニュートラルから第1速への変速におけるシフト機構の動作を説明するための図である。具体的には、ニュートラル中立位置から1速中立位置までの間の間欠送り部120の変速動作を説明するための図である。ここでニュートラル中立位置とは、インデックスカム130がニュートラル「N」の凹部で位相を保持されたN基準位相に在り、且つ、シフトシャフト83及びシフトアーム84がギアチェンジの動作を開始する前の所定の中立位置に在る状態を意味する。また、1速中立位置とは、インデックスカム130が第1速「1」の凹部で位相を保持される1速段基準位相まで回動し、且つ、シフトシャフト83及びシフトアーム84がギアチェンジの動作を完了して所定の中立位置に戻っている状態を意味する。なお、以下、図8〜図14を参照した説明におけるシフトカム110については図5を参照する。
まず、図6(a)に示す、ニュートラル中立位置(インデックスカム130はN基準位相)状態の間欠送り部120において、シフトアクチュエータ81を介して、シフトシャフト83(図6(a)ではシフトシャフト83のフランジ831)を時計回り(矢印F1方向)に回転移動する。
すると、フランジ831が付勢スプリング86を伴ってシフトアーム84を揺動し、シフトアーム84の先端に設けられた送り爪部85(詳細には右側爪85b)をピン160(162)に引っ掛けて(係合して)、インデックスカム130を回動して、シフトカム110(図5参照)を時計回りに回転する。
これにより、図8(a)に示すように、インデックスカム130では第1速段に対応する凹部132に、カム位相保持部140のフォロワ150が押圧され、シフトカム110は、1速段基準位相へ収束するように移動する。
このとき、シフトシャフト83は、シフトアクチュエータ81に設定された回転範囲の最大となるまで回転駆動される。シフトカム110は、シフトアクチュエータ81が最大回転角度に到達する前に、1速段基準位相を若干超えた位置で、シフトアーム84の係止部84bがピン160(ここでは、長円凸部164)に当接してインデックスカム130の時計回りの回動を規制することによって、回転を制動される。これにより、シフトカム110は、1速段基準位相を若干超える角度までの回転(回動)に規制される。一方、シフトシャフト83は、シフトアーム84に対して付勢スプリング86(図では86a、86bで示す)を介して回転力を伝達する構成である。
このため、シフトシャフト83に固定されたフランジ831は、軸心C1を中心にシフトアクチュエータ81のモータが停止するまで、右側爪85bがピン162に当接し、且つ、係止部84bに長円凸部164が当接することで、反時計回りの回動が規制されたシフトアーム84の、規制された回動範囲よりも大きく、シフトアクチュエータ81に設定された回動範囲で回動できる。なお、図8(a)では、シフトシャフト83の回動角度範囲をθ1で示し、シフトアーム84の回動角度範囲をθ2で示す。
そして、シフトカム110は、カム位相保持部140によって、1速段基準位相(第1速「1」)に収束する(図8(b)参照)。その後、シフトアクチュエータ81は逆転して、シフトシャフト83を反時計回り(矢印B1方向)に回転して、間欠送り部120を中立位置に戻す。
すると、図8(b)に示すように、シフトアーム84は、付勢スプリング86(86a、86b)によってフランジ831との相対回転を規制され、フランジ831とともに反時計回り(矢印B1方向)に回転して中立位置へ戻る。このとき、シフトアーム84に設けられた送り爪部85(詳細には、右側爪85bの外縁部852)がピン160(162)に当接する。このとき、インデックスカム130はカム位相保持部140により位相を保持されており、送り爪部85は取付軸87を中心に揺動するため、この後、テーパ状の外縁部852は、送り爪部85を揺動しながらピン162に沿って摺動する。これにより、送り爪部85は、ピン162を押してインデックスカム130の位相をニュートラルに戻すことなく、当該ピン160(162)を乗り超える(図8(c)参照)。
これにより、シフトカム110を第1速に対応する1速段基準位相に変更した間欠送り部120において、シフトシャフト83の反時計回りの回転に伴い間欠送り部120が中立位置に戻る際に、シフトカム110を連れ回すことがない。また、長円凸部164は、他のピン162により突出高さが低く、送り爪部85に対して、長円凸部164の高さ方向で隙間が形成されている。このため、図8cにおいて送り爪部85の移動途中に長円凸部164が配置されていても、送り爪部85は長円凸部164に干渉することがない。
その後、シフトシャフト83は反時計回りに移動することで、インデックスカム130において第1速に対応する凹部132にフォロワ150を位置させた1速段基準位相の状態で、シフトアーム84、送り爪部85を、中立位置、つまり、次のギアチェンジ動作の待機位置に位置させる。
これによりシフトカム110を、1速ギア(第1速段)ポジション、つまり、1速段基準位相に位置させる(図9(a)参照)ことができる。
<第1速から第2速へのカム送り部の変速動作>
図9及び図10は、1速中立位置(シフトカム110において1速段基準位相)から2速中立位置(2速段基準位相)への間欠送り部120の変速動作を説明するための図である。
図9(a)は、1速中立位置にある間欠送り部120を示す図であり、この状態において、時計回り(矢印F1方向)にシフトシャフト83を回転させる。すると、シフトアーム84は揺動し、シフトアーム84の先端に設けられた送り爪部85(詳細には右側爪85b)をピン160(162)に引っ掛けて(係合して)、インデックスカム130を回動する。これに伴い、シフトカム110は時計回りに回転する。
これにより、インデックスカム130では、第2速段に対応する「2」の凹部(第2速の凹部)132に、カム位相保持部140のフォロワ150が位置し、シフトカム110は、2速段基準位相状態となる(図9(b)参照)。
このとき、シフトシャフト83は、シフトアクチュエータ81に設定された回転範囲の最大となるまで回転駆動される。シフトカム110は、シフトアクチュエータ81が最大回転角度に到達する前に、2速段基準位相を若干超えた位置で、シフトアーム84の係止部84bがインデックスカム130のピン160(ここでは、長円凸部164から反時計回り方向で隣接するピン162)に当接する。これにより、シフトカム110は、2速段基準位相を若干超えた角度までの回転に規制される。一方、シフトシャフト83は、シフトアーム84に対して付勢スプリング86を介して回転力を伝達する構成である。
このため、フランジ831は、シフトアクチュエータ(モータ)81が停止するまで、時計回りの回動が規制されたシフトアーム84の、規制された回動範囲よりも大きく、軸心C1を中心にシフトアクチュエータ81に設定された回動範囲で回動できる。シフトアーム84の時計回りの回動範囲は、右側爪85bがピン(第3速の凹部近傍のピン)162に当接し、且つ、係止部84bにピン(第5速の凹部近傍のピン)162が当接することで規制される。その後、シフトカム110が位相保持部140により2速段基準位相に保持された状態で、アクチュエータ81は逆転して、シフトシャフト83とともにシフトアーム84を反時計回り(矢印B1方向)に回動する。これにより、アクチュエータ81は、間欠送り部120を元の位置(中立位置、待機位置)に戻す(図9(c)参照)。
図9(c)に示すように、シフトアーム84に設けられた送り爪部85(詳細には、右側爪85bの外縁部852)がピン162(第5速の凹部近傍のピン)に当接する。ここでシフトカム110はカム位相保持部140により2速段基準位相に保持された状態を保ち、送り爪部85は取付軸87を中心に揺動し、テーパ状の外縁部852は、送り爪部85の揺動に伴いピン(第5速の凹部近傍のピン)162に沿って摺動する。送り爪部85は、ピン(第5速の凹部近傍のピン)162を押してインデックスカム130の位相を第1速「1」に戻すことなく、当該ピン(第5速の凹部近傍のピン)162(160)を乗り超える(図10(a)参照)。
これにより、シフトカム110を第2速段に対応する2速段基準位相に変更した間欠送り部120において、シフトシャフト83の反時計回りの回転に伴い間欠送り部120が中立位置に戻る際に、シフトカム110を連れ回すことがない。
次いで、図10(b)に示すように、間欠送り部120は、2速中立位置(シフトカム110は2速段基準位相)に配置される。
ここでは、1速中立位置(シフトカム110において1速段基準位相)→2速中立位置(2速段基準位相)への変速について説明したが、2速中立位置→3速中立位置→4速中立位置→5速中立位置への変速動作も、変速元の凹部と変速先の凹部が異なる以外は、同様に動作する。
<第5速から第6速へのカム送り部の変速動作>
図11は、5速中立位置(シフトカム110において5速段基準位相)から6速中立位置(6速段基準位相)への間欠送り部120の変速動作を説明するための図である。
図11(a)に示す5速中立位置状態の間欠送り部120において、シフトシャフト83を時計回り(矢印F1方向)に回動する。これにともないシフトアーム84も時計回り(矢印F1方向)に回動する。シフトアーム84の回動に伴い移動する送り爪部85の右側爪85bは、移動途中に位置するピン(第1速の凹部近傍のピン)162を引っ掛けて、インデックスカム130、つまり、シフトカム110を、6速段基準位相に回動する(図11(b)参照)。その際、送り爪部85は、図11bに示すように長円凸部164と重なるように変位するが、送り爪部85は長円凸部164に干渉することがなく移動する。これは、長円凸部164が、上述したように他のピン162により突出高さが低く、送り爪部85に対して、長円凸部164の高さ方向で隙間が形成されているためである。また、間欠送り部120を中立位置へ戻す際に、シフトアーム84の反時計回りの回転に伴い、送り爪部85は、長円凸部164と重なるように変位する(図11(b)参照)。この場合も上記理由で送り爪部85は長円凸部164に干渉することがなく移動する。これにより、第6速段に対応する「6」の凹部132に、フォロワ150を位置させた状態で、シフトアーム84、送り爪部85は、中立位置、つまり、待機位置に位置する。このように、シフトカム110を、5速段基準位相から6速段基準位相に変更して位置させる(図11(c)参照)。
<第6速から第5速へのカム送り部の変速動作>
図12は、6速中立位置(シフトカム110において6速段基準位相)から5速中立位置(5速段基準位相)への間欠送り部120の変速動作を説明するための図である。
ギアポジションにおいて第6速(シフトカム110において6速段基準位相)から第5速(5速段基準位相)への変速は、図11(c)に示す6速中立位置(6速段基準位相)にある間欠送り部120において、先ず、シフトシャフト83を反時計回り(図12(a)のB1方向)に回転駆動する。
これにより、送り爪部85の左側爪85aは、移動途中に位置するピン(第1速の凹部近傍のピン)162(長円凸部164から時計回り方向で隣接するピン162)を引っ掛けて移動する。これにより、左側爪部85aは、インデックスカム130、つまり、シフトカム110を、第5速に対応する位相へ回動する(図12(a)参照)。
そして、図12(b)に示すようにカム位相保持部140のフォロワ150が第5速段に対応する「5」の凹部132に係合することで、シフトカム110の位相が5速段基準位相に収束する。そして、シフトアクチュエータ81(図5参照)は、間欠送り部120を基準位置に戻すべく、シフトシャフト83を時計回り(矢印F1方向)に回動させることでシフトアーム84を時計回り(矢印F1方向)に回転させる。このシフトアーム84の時計回りの回転に伴い、送り爪部85の左側爪85aの外縁部851がピン162に当接しても(図12(b)参照)、送り爪部85のシフトアーム84に対する揺動によって、送り爪部85は、外縁部851でピン162を摺動し、ピン162を乗り超える(図12(c)参照)。また、図12(c)に示すように、送り爪部85は、長円凸部164と重なるように変位するが、送り爪部85は長円凸部164に干渉することがなく移動する。
これにより、第5速段に対応する「5」の凹部132に、フォロワ150を位置させた状態で、シフトアーム84、送り爪部85は、中立位置、つまり、待機位置に位置する。このように、シフトカム110を、6速段基準位相から5速段基準位相へ変更して位置させる(図11(a)参照)。
<第5速から第4速へのカム送り部の変速動作>
図13は、5速中立位置(シフトカム110において5速段基準位相)から4速中立位置(4速段基準位相)への間欠送り部120の変速動作を示す図である。
ギアポジションにおいて第5速(シフトカム110において5速段基準位相)から第4速(4速段基準位相)への変速は、図11(a)に示す5速中立位置にある間欠送り部120において、シフトシャフト83を反時計回り(図13(a)の矢印B1参照)に回転駆動する。
これにより、送り爪部85の左側爪85aは、移動途中に位置するピン162を引っ掛けて、インデックスカム130、つまり、シフトカム110を、第4速段に対応する位相へ回動する(図13(a)参照)。
このとき、シフトシャフト83は、シフトアクチュエータ81(図5参照)に設定された回転範囲の最大(図8(a)参照)となるまで回転駆動される。シフトアクチュエータ81が最大回転角度に到達する前に、図13(a)に示すようにインデックスカム130の位相が4速段基準位相を3速段位相側に若干超えた位置で、シフトアーム84の係止部84bが、インデックスカム130のピン160(長円凸部164から時計回り方向で隣接する第1速の凹部近傍のピン162)に当接する。
これにより、インデックスカム130を介して、シフトカム110は、4速段基準位相を若干超えた角度までの回転に規制される。シフトシャフト83のフランジ831は、軸心C1を中心に、シフトアクチュエータ81(図5参照)であるモータが停止するまで回動する。このフランジ831は、左側爪85aがピン162に当接し、且つ、係止部84bにピン162が当接することで、反時計回りの回動が規制されたシフトアーム84の回動範囲よりも大きく、シフトアクチュエータ81に設定された回動範囲の最大範囲まで回動する。
その後、シフトカム110がカム位相保持部140により4速段基準位相に保持された状態で、アクチュエータ81は逆転して、シフトシャフト83とともにシフトアーム84を時計回り(矢印F1方向)に回動する。この回動により、間欠送り部120を元の位置(中立位置、待機位置)に戻す。このとき、図13(b)に示すように、カム位相保持部140のフォロワ150は第4速段に対応する「4」の凹部132に係合して、シフトカム110の位相が4速段基準位相に収束する。シフトアーム84の時計回りの回転に伴い、送り爪部85の左側爪85aがピン(第6速の凹部近傍のピン)162に当接するが、送り爪部85のシフトアーム84に対する揺動によって、送り爪部85は、ピン(第6速の凹部近傍のピン)162を乗り超えて移動する。
これにより、第4速段に対応する「4」の凹部132に、フォロワ150を位置させた状態で、シフトアーム84、送り爪部85は、中立位置、つまり、待機位置に位置する。このように、シフトカム110を、5速段基準位相から4速段基準位相へ変更して位置させる(図13(c)参照)。
ここでは、5速中立位置(シフトカム110において5速段基準位相)→4速中立位置(4速段基準位相)への変速について説明したが、4速中立位置→3速中立位置→2速中立位置→1速中立位置への変速動作も、変速元の凹部132と変速先の凹部が異なる以外は、同様に動作する。
<第1速からニュートラルNへのカム送り部の変速動作>
図14は、1速中立位置(シフトカム110において1速段基準位相)からニュートラル中立位置(N基準位相)への間欠送り部120の変速動作を説明するための図である。
1速中立位置(シフトカム110において1速段基準位相)からニュートラル中立位置(N基準位相)への変速は、図9(a)に示す1速中立位置(1速段基準位相)にある間欠送り部120において、シフトシャフト83を反時計回り(図9(a)の矢印B1参照)に回転駆動する。
これにより、送り爪部85の左側爪85aは、図14(a)に示すように、移動途中に位置するピン(第3速の凹部近傍のピン)162を引っ掛けて、インデックスカム130、つまり、シフトカム110をニュートラル基準位相に回動する(図14(b)参照)。このとき、送り爪部85は、長円凸部164と重なるように変位する(図14(c)でも同様)。長円凸部164は、他のピン162により突出高さが低く、送り爪部85に対して、長円凸部164の高さ方向で隙間が形成されている。このため、送り爪部85は長円凸部164に干渉することがなく移動する。
その後、図14(c)に示すように、シフトシャフト83及びシフトアーム84を時計回り(矢印F1方向)に回動して、シフトアーム84及び送り爪部85を元の位置(中立位置、待機位置)に戻す。
このとき、カム位相保持部140のフォロワ150はニュートラルに対応する「N」の凹部132に係合する。
これにより、ニュートラルに対応する「N」の凹部132に、フォロワ150を位置させた状態で、シフトアーム84、送り爪部85は、中立位置、つまり、待機位置に位置する。このように、シフトカム110を、1速段基準位相からニュートラル基準位相へ変更して位置させる(図14(c)及び図6(a)参照)。
本実施の形態1によれば、シフトカム110は、外周面に、シフトフォーク114〜116を移動するカム溝111l、112、113を有する。このシフトカム110は、シフトパターンにおいてニュートラルポジションに対応するニュートラル位相から1速ギアポジションに対応する第1速段位相を経てトップギアである6速ギアポジションに対応する第6速段位相まで回転して、位相が変更自在である。シフト機構80は、変速操作に応じて、シフトカム110を間欠的に回転し、シフトカム110をニュートラル及び第1速からトップギアに相当する第6速までの各変速段に対応する各位相で保持する。このシフト機構80は、シフトカム110を、ニュートラル位相と第1速段位相との間の回転角が、第1速段位相と第2速段位相との間の回転角と同じであり、且つ、トップギアである第6速段位相とニュートラル位相とで鋭角に挟まれる、シフトカム110が回動しない範囲の角度(余角)が、ニュートラル位相と第1速段位相との間の回転角より小さい、各位相で保持する。これにより、ボトムニュートラル式のシフトカム110を6速段に対応して回転させる構成であっても、各変速段間でシフトカムを回動する角度を大きく狭めることなく、各ギアポジションに対応してシフトカム110を保持する位相を周方向に一定の間隔で設定できる。よって、シフトカムを回転させる際に必要なトルクの増大を抑制して、好適に変速できる。
(実施の形態2)
図15は、実施の形態2のシフト機構を備える変速装置の説明に供するエンジンユニットの右側図であり、部分的に覆蓋等を取り外した状態を示した図である。なお、実施の形態2のシフト機構を含むエンジンユニットの左側部分の構成は、実施の形態1の左側部分と同様であるため、以下では図2を参照して説明する。図16は、本実施の形態2の変速装置の要部構成を示す図であり、この図では、図15に示すエンジンユニットにおいて、図2のA−B−C−D−E−A線で示す部位の断面に相当する部分の断面を主に、展開して示す。図17は、図15におけるL−M−N−O−L線断面を展開した図である。また、図18は、図15におけるQ−Q線断面図である。
図15〜図18に示すエンジンユニット8Aは、実施の形態1の車輌1において、エンジンユニット8に替えて搭載される。
なお、この実施の形態2の変速装置の説明に供するエンジンユニット8Aは、図2に示す実施の形態1に対応するエンジンユニット8と比較して、間欠送り部120Aの構成が異なり、その他の基本的構成は同様である。よって、以下では、異なる構成要素を説明し、その他の同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図15〜図17に示すように、エンジンユニット8Aは、エンジン6と、ECU10と、シフトアクチュエータ81と、クラッチ90と、クラッチアクチュエータ98と、変速機構7A、シフト機構80Aとを有する。変速機構7Aは、変速機構7と略同様の構成、機能を有する有段式の変速機構であり、主軸52と、主軸52と平行に配置された出力軸54と、シーケンシャルシフト機構72とを備える。また、シフト機構80Aは、シフトアクチュエータ81の駆動を伝達するシフトロッド82と、シフトシャフト83と、間欠送り部120Aと、カム位相保持部140と、を有する。ECU10、変速機構7A、シフト機構80A、シフトアクチュエータ81、クラッチ90、クラッチアクチュエータ98は、変速装置を構成する。
エンジンユニット8Aでは、搭乗者によるシフトスイッチ9の操作を介して、シフトチェンジ指令が入力されると、ECU10は、変速制御を開始する。ECU10は、クラッチアクチュエータ98を駆動し、クラッチ90を非接続状態として、クラッチ90における回転力の伝達を切断する。次いで、ECU10は、シフトアクチュエータ81を介して、シフト機構80Aを駆動して、シフトカム110を所定角度にて回転(シフトカム送り)する。これにより、シフトフォーク114〜116を介して、所望の変速ギア74、75が選択される。その後、ECU10は、再びクラッチアクチュエータ98を駆動して、クラッチ90を接続状態として、クラッチ90における回転力の伝達を再開する。
図15及び図17に示すシフト機構80Aでは、間欠送り部120Aが、シフトアクチュエータ81の駆動により回転するシフトシャフト83の回転力を、シフトカム110に伝達する。
間欠送り部120Aは、付勢スプリング86と、アーム基部121と、第1送りアーム部122と、第2送りアーム部123と、付勢部材124と、シフトカム110の軸方向の一端部で一体に固定されるインデックスカム130Aと、を有する(図17、18、19参照)。
図19は、図15に示す変速装置の間欠送り部120Aの要部拡大図である。図19では、付勢部材124、フォロワスプリング142は図示省略している。なお、図19では、図20〜図24とともに、便宜上、インデックスカム130Aにおいて、外周部に形成される各凹部近傍に、各凹部が対応する各ギアポジションの符号(N、1〜6)を付している。
図15、図18及び図19に示すアーム基部121は、シフトシャフト83の他端部に、シフトシャフト83の軸心C1に、回動自在に取り付けられている。アーム基部121は、図18及び図19に示すように、シフトシャフト83に対して直交する方向で、且つ、互いに逆方向に延出する延出部121aを有する。すなわち延出部121aは、シフトシャフト83の軸心C1を中心に周方向に変位する。
延出部121aには、第1送りアーム部122と、第2送りアーム部123とがそれぞれ、シフトシャフト83と平行な軸で回動自在に取り付けられている。ここでは、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123は、図18に示すようにカシメ部材121bでアーム基部121の延出部121aに回動自在にかしめられている。
アーム基部121は、シフトシャフト83を内嵌する基部において外装する付勢スプリング86によって、シフトシャフト83に対して所定の位置に戻るように付勢される。具体的には、アーム基部121は、シフトシャフト83と直交する方向で突出する先端部を折曲して形成された係止部121cを有する。係止部121cは、シフトシャフト83の他端部に固定されたフランジ831の係止部83aと軸心C1に対する半径方向で離間して互いに対向した状態である(図17参照)。
そして、図19に示すように、係止部121cと係止部83aとが、付勢スプリング86のコイル部分から延出した左辺部86a及び右辺部86bに挟まれている。これにより、アーム基部121は、係止部121cにおいてフランジ831の係止部83aに対して付勢スプリング86により弾性的に拘束され、係止部121cが、常に係止部83aに向きを揃えた状態になるように付勢される。この構成により、アーム基部121は、シフトシャフト83の回転により回転する。なお、図19では、間欠送り部120Aが変速動作を開始する以前の中立位置にある際の、係止部121c及び係止部83aの中心線を延長した中立位置の中心線を「中立位置での中心線」として図示している。また、間欠送り部120Aの中立位置とは、間欠送り部120Aが、インデックスカム130Aをシフトアップ或いはシフトダウンのいずれかの方向に送ることができる位置である。
アーム基部121は、シフトシャフト83の回転により回転する。例えば、アーム基部121は、例えば、シフトアップ時のシフト操作である場合、図15及び図19ではアーム基部121は時計回りに回転する。
第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123は、それぞれ先端に向かって、互いに接近するように湾曲した形状を成す竿部を有する。ここでは、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123は、インデックスカム130Aに重なる位置で、インデックスカム130Aのピン170(171、172)を囲むように湾曲している。
第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123の竿部の内側辺部には、シフトシャフト83の回転に伴って回動するアーム基部121が、シフトシャフト83の最大回動位置まで回動することを規制するストッパー部1223、1233が設けられている。また、第1及び第2送りアーム部122、123の竿部の内側辺部は、ストッパー部1223、1233よって段差を有する形状をなしている。これにより、ストッパー部1223、1233より先端側の形状は、間欠送り部120Aが基準位置に戻る際に、ストッパー部1223、1233がインデックスカム130Aのピン170(171、172等)に係合して、シフトカム110が連れ回りすることのない形状をなしている。なお、間欠送り部120Aは、変速動作によりシフトシャフト83が回転して間欠送り部120Aが所定の回動動作を行った後、シフトシャフト83が逆転することで基準位置に戻る。
第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123の先端部には、インデックスカム130Aのピン170(171、172等)に係合する鉤爪部1221、1231が形成されている。第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123には、付勢部材(引張コイルバネ)124が懸架され、この付勢部材124によって、互いの鉤爪部1221、1231の外縁部が重なって当接するように付勢されている。この付勢部材124(図15参照)は、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123を、ピン170を囲んで引き寄せるように付勢している。
第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123は、軸心C1を中心としたアーム基部121の回転によりアーム部122、123の揺動中心を移動するとともに、延出部121aに対する回転とにより揺動する。これにより、鉤爪部1221、1231の一方が、揺動方向に位置するインデックスカム130Aのピン170(171、172等)に係合して(引っ掛けて)、引っ掛けたピン170を軸心C2回りに周方向に変位することで、シフトカム110を回転させる。
なお、インデックスカム130Aは、実施の形態1と同様にカム位相保持部140により、所定の変速段に対応する位相で保持される。これにより、インデックスカム130Aに固定されたシフトカム110が、変速段に対応する位相で保持される。
すなわち、図17に示すカム位相保持部140では、フォロアアーム144を介してフォロワスプリング142の付勢力を受けたフォロワ150がインデックスカム130Aに当接され、インデックスカム130Aを略軸心C2に向けて押圧する(図19参照)。これにより、インデックスカム130Aには、回転力(トルク)が付与される。また、シフトアクチュエータ81が駆動入力したトルクは、鉤爪部1221、1231を経てピン170からインデックスカム130Aへトルクとして伝達される。これらトルクの作用を受け、シフトカム110は軸心C2回りに安定して回転することができる。
図20は、インデックスカム130Aの説明に供する図であり、エンジンユニット8Aでは右側面図に相当する。
インデックスカム130Aは、シフトカム110の一端部に、シフトカム110の軸心と同一軸心で固定されている。
インデックスカム130Aでは、実施の形態1のインデックスカム130と同様に、外周部が周方向に連続し、且つ、インデックスカム130Aの軸心に対して凹凸(山谷)状に形成されている。これら凹凸状の凹状部分を構成する凹部132Aの位置が、シフトカム110における各変速ギアのギアポジション(入段位置)となっている。すなわち、インデックスカム130Aの外周部における凹部132Aは、シフトカム110が間欠回動した際に、フォロワ150と係合する(図17参照)ことで、カム位相保持部140によって変速段に対応したシフトカム110の位相を規定する。
インデックスカム130Aは、6段変速のボトムニュートラル式の変速装置で用いられるものである。インデックスカム130Aは、実施の形態1のインデックスカム130と比較して、各凹部132Aの配置位相、つまり、各1段の変速におけるインデックスカム130Aの回転角度、及びピン170の配置が異なる。
すなわち、複数の凹部132Aは、インデックスカム130Aの外周部に、ニュートラル「N」と第1速段「1」との間の回転角R2が第1速段「1」と第2速段「2」との間の回転角R2と同じとなるように、形成されている。なお、回転角度R2は、第2速段「2」と第3速段「3」との間の回転角度、第3速段「3」と第4速段「4」との間の回転角度、第4速段「4」と第5速段「5」との間の回転角度、第5速段「5」と第6速段「6」との間の回転角度とそれぞれ同じである。
加えて、複数の凹部132Aでは、トップギア(ここでは第6速段「6」)の凹部とニュートラル「N」の凹部とで鋭角に挟む、シフトカムが回動しない範囲の角度R1が、ニュートラル「N」の凹部と第1速段「1」の凹部との間の回転角度R2より小さくなるように形成されている。ここでは、角度R1が角度R2の1/2となっている。
ここでインデックスカム130Aの外周部に形成された外周カム面において、ニュートラルの「N」から第1速段の「1」を経てトップギアに相当する第6速段の「6」に至る周方向で、凹部132Aを、等間隔で配置する角度R2と、第6速段の「6」とニュートラルの「N」とで鋭角に挟まれる間の角度R1は、下記式(3)、(4)で表される。
M=Q×K−S ―式(1)
P=360°÷M ―式(2)
R2=P×Q ―式(3)
R1=P×S ―式(4)
ここで、Kは、ニュートラルを含み、第1速段からトップギア段までの間にインデックスカム130Aの回動を停止する位相の数、すなわち凹部132の数、すなわち変速機構7で可変するギアの段数+1(ニュートラルポジション)、である。このとき、Mは、インデックスカム130Aに配置するピン170の総本数を表す。なお、Mは、別言すれば、間欠送り部120Aの被駆動側に設定する従動部の総数である。360°はシフトカム110の1周の角度であり、Pは、ピン170が周方向に配置される間隔(角度)を表す。Qは、各1段の変速でインデックスカム130Aを回動する角度が、ピン170の配置の間隔で何本分に相当するか(1段の送りに必要なピン数)、を表す自然数であり、設計事項であるが、特にQ=2とすることが望ましい。また、Qは、別言すれば、間欠送り部120Aの駆動側が各1段の変速において送る(回転する)従動部側の係合受動部(ピン170)のコマ数である。Sは、角度R1に含まれるピン170の本数を表し、Qより小さい自然数であり、設計事項であるが、Q=2とした場合、S=1に特定される。
例えば、ここでは変速装置は6段変速のボトムニュートラル方式であり、上式においてKは7、となる。Qに2を設定すると、Sは1であり、ピン170の総本数Mは13となる。さらに、ピン170の間隔Pは27.69°となるから、R1及びR2は、上式にあてはめて以下のように算出される。角度R1、つまり、トップギア(ここでは第6速段「6」)の凹部とニュートラル「N」の凹部とで鋭角に挟まれる間の角度R1は、27.69°となる。また、角度R2、つまり、他の凹部(他の変速段(「1」〜「6」)に対応する凹部)において周方向で隣接する凹部間の角度R2は、55.38°となる。
インデックスカム130Aは、シフトカム110の軸心C2を中心として回転する。インデックスカム130Aにおける複数のピン170は、外周カム面を挟んでシフトカム110とは反対側の側面に、軸心C2から一定の半径で周方向に沿ってそれぞれ突出した状態で配置されている。
これらピン170は、第1送りアーム部122の鉤爪部1221或いは、第2送りアーム部123の鉤爪部1231に係合して、インデックスカム130自体を軸心C2回りに回転させる。ピン170の数(式(1)で算出される数Mに相当)は、ここでは13本であり、軸心C2を中心に周方向に等間隔(式(2)で算出される角度Pに相当)を空けて配置される。また、各1段の変速において、これらピン170は、式(1)〜(4)を満たすQ本分(ここでは2本分)回転されて、ギア段を変更、つまり、フォロワ150に係合させる凹部132を周方向で隣り合う凹部132に変更するように、形成されている。
このインデックスカム130Aでは、図19に示すように、間欠送り部120Aが回転前の所定の中立位置、つまり、フォロワ150がニュートラル「N」の凹部に位置しているとき、各ピン170は、第2速段に対応する「2」の凹部の底部近傍から表面側に突出するピン171と、そのピン171に周方向の第3速段「3」の凹部側で隣り合うピン172とが、鉤爪部1221、1231に抱えられるように位置する。
シフト機構80A(図17参照)が、シフトアップ時の操作を行う場合、アーム基部121の時計回りの回転により、第1アーム部122は一つのピン170を係止して、インデックスカム130Aを時計回りに回転させる。また、シフト機構80A(図17参照)が、シフトダウン時の操作を行う場合、アーム基部121の反時計回りの回転により、第2アーム部122は、一つのピン170を係止して、インデックスカム130Aを反時計回りに回転させる。
このようにシフト機構80A(図17参照)によるシフトアップ時の操作及びシフトダウン時の操作のいずれの場合も、インデックスカム130Aが回転される角度は、ピン170の本数に換算して上式(1)〜(4)を満たすQ本分である。シフト機構80Aが駆動するシフト動作を、以下で具体的に説明する。
<シフトアップ動作>
変速装置の間欠送り部120Aによるシフトアップ動作を、図21及び図22を用いて説明する。ここでは、シフト機構80A(図17参照)においてニュートラル中立位置(シフトカム110におけるニュートラル基準位相)から第1速中立位置(1速段基準位相)に変速する場合を一例にして説明する。なお、図21〜22では、図23〜図25とともに、インデックスカム130Aの外周において、インデックスカム130Aを各速のギアポジションに対応する位相で保持する凹部には、便宜上、各速のギアポジションに対応する符号(N、1〜6)を付して示した。
図21(a)に示すニュートラル中立位置状態の間欠送り部120Aでは、間欠送り部120Aは待機位置(アーム基部121が中立位置)に位置している。図21(a)に示す間欠送り部120Aにおいて、シフトシャフト83を時計廻り(矢印F1方向)で回転駆動する。これにより、シフトシャフト83と一体のフランジ部831、付勢スプリング86を介して、アーム基部121も、時計廻り(矢印F1方向)に回動する。このアーム基部121の回動に伴い、図21(b)に示すように、第1送りアーム部122の先端の鉤爪部1221が移動途中に位置するピン(ここでは第2速の凹部近傍のピン)171に係合する。そして、鉤爪部1221は、ピン171を引っ掛けてインデックスカム130Aを時計廻りに回転駆動する。これにより、第1速「1」の凹部132内に、カム位相保持部140のフォロワ150が転動される、つまり、シフトカム110は、第1速段の位相に移動する。
このとき、シフトシャフト83は、シフトアクチュエータ81に設定された回転範囲の最大範囲(中立位置の中心線からの角度θ1で示す角度に相当)まで回転駆動する。このシフトシャフト83の回転によって、アーム基部121及び第1送りアーム部122によりシフトカム110は回転して、第1速段の位相に移動する。このときシフトカム110は、シフトアクチュエータ81が最大回転角度(中立位置の中心線からの角度θ1)に達する以前に、1速段基準位相を若干超えた角度まで回転するが、第2送りアーム部123の竿部の縁eにピン173(170)が当接する。これによりインデックスカム130Aの回動が規制され、シフトカム110の時計廻り(シフトアップ方向)の回転を停止する。更にこのとき、第1送りアーム部122の先端部において、鉤爪部1221が牽引するピン171から反時計回りに隣接するピン174(170)が、鉤爪部1221の外縁部に当接する。さらに、第2送りアーム部123のストッパー部1233にも別のピン175(170)が当接する。これにより、シフトカム110は反時計回り方向にも、時計回り方向にも、回動を規制されるとともに、アーム基部121は、更なる時計回り方向の回動が規制されて、回転を停止する。
すなわち、アーム基部121は、シフトアップ動作において、第1アーム部122を介してインデックスカム130Aを1速段位相まで回転駆動し、インデックスカム130Aが1速段位相まで回転すると、アーム基部121自身が回転を停止する。このときのアーム基部121の回動角がシフトアップ動作における回転作動範囲(θ2)となる。なお、シフトシャフト83(シフトシャフト83のフランジ831)は、付勢スプリング86を介してアーム基部121に回転力を伝達している。このため、シフトシャフト83(フランジ831)は、シフトアクチュエータ81(図17参照)が停止するまで、付勢スプリング86が撓みを増すことにより、アーム基部121の回転作動範囲以上の回動範囲で回転することができる。なお、図21(b)に示すシフトシャフト83の回動角度範囲θ1は、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123により規制されるアーム基部121の回動角度範囲θ2よりも大きい角度(θ1>θ2)となっている。
そして、シフトカム110は、カム位相保持部140を介して、その回転が収束されて、1速段基準位相で保持される。この状態からアーム基部121を反時計回り(矢印B1方向)に回転することで、間欠送り部120Aを中立位置に戻していく。これにより、アーム基部121に接続された第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123も追従して、それぞれピン170に当接しつつ摺動して、中立位置に戻るように移動する。その際、第2送りアーム部123は、図21(c)に示すように、内側辺部でピン170に当接して摺動しつつ案内され、ピン170(175等)に係合することなく移動する。また、第1送りアーム部122は、アーム基部121に対して揺動することで、先端の鉤爪部1221の外縁部がピン170(174等)に当接しても係合することなく、ピン170を乗り越えて移動する(図21(c)→図22(a)→図22(b)参照)。
このように、間欠送り部120A(アーム基部121、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123)が中立位置に戻る際に、シフトカム110を連れ廻りさせることがない。これにより、間欠送り部120Aが第1速中立位置、且つ、インデックスカム130Aが1速段基準位相に配置(図22(c)参照)されて、駆動前の待機状態である中立位置に戻り、シフトカム110を回転してニュートラル基準位相から1速段基準位相へ変更して位置させるまでの一連の動作が完了する。
なお、シフトアップ動作の一例として、ニュートラルから第1速段への変速について説明したが、第1速段から第2速段へ、第2速段から第3速段へ、乃至、トップギア(ここでは第6速段)への変速においても同様に動作する。
<シフトダウン動作>
変速装置の間欠送り部120Aによるシフトアップ動作を図23〜図25を用いて説明する。ここでは、シフト機構80A(図17参照)において第6速中立位置(シフトカム110において6速段基準位相)から第5速中立位置(5速段基準位相)に変速する場合を一例にして説明する。
図23(a)は、間欠送り部120Aが第6速中立位置、且つ、シフトカムが6速段基準位相にある状態の、間欠送り部120Aを示す図である。図23(a)の間欠送り部120Aは、待機状態(アーム基部121が中立位置に位置)にある。ここからシフトダウン動作では、図23(b)に示すように、シフトシャフト83を反時計廻り(矢印B1方向)で回転駆動する。これにより、シフトシャフト83と一体のフランジ部831、付勢スプリング86を介して、アーム基部121も反時計廻り(矢印B1方向)に回動する。これにより、第2送りアーム部123の先端の鉤爪部1231が、移動途中に位置するピン171に係合して、ピン171を引っ掛けてインデックスカム130Aを反時計廻りに回転駆動させる。これにより、第5速段「5」の凹部132内に、カム位相保持部140のフォロワ150が転動される、つまり、シフトカム110は、第5速段の基準位相に移動する(図23(c)参照)。
このとき、シフトシャフト83は、図23(c)に示すように、シフトアクチュエータ81に設定された回転範囲の最大範囲(中立位置からの角度θ1で示す角度に相当)まで回転駆動する。このシフトシャフト83の回転によって、アーム基部121及び第2送りアーム部123は回転し、インデックスカム130Aを介してシフトカム110を回転して、第5速段の位相に移動する。このときシフトカム110は、シフトアクチュエータ81が最大回転角度(中立位置の中心線からの角度θ1)に達する以前に、5速段基準位相を若干超えた角度まで回転する。一方、第1送りアーム部122の竿部の縁fにピン175(170)が当接してインデックスカム130Aの回動が規制され、シフトカム110の反時計廻り(シフトダウン方向)の回転を停止する。更にこのとき、第2送りアーム部123の先端部において、鉤爪部1231が牽引するピン171から時計回りに隣接するピン176(170)が、鉤爪部1231の外縁部に当接する。さらに、第1送りアーム部122のストッパー部1223にも別のピン173(170)が当接する。これにより、シフトカム110は時計回り方向にも、反時計回り方向にも、回動を規制されるとともに、アーム基部121は、更なる反時計回り方向の回動が拘束されて、回転を停止する。
すなわち、アーム基部121は、シフトダウン動作において、第2アーム部123を介してインデックスカム130Aを第5速段位相まで回転駆動し、インデックスカム130Aが第5速段位相まで回転すると、アーム基部121自身が回転を停止する。このときのアーム基部121の回動角がシフトダウン動作における回転作動範囲(θ2)となる。なお、シフトシャフト83(シフトシャフト83のフランジ831)は、付勢スプリング86を介してアーム基部121に回転力を伝達している。このため、シフトシャフト83(フランジ831)は、シフトアクチュエータ81が停止するまで、付勢スプリング86が撓みを増すことにより、アーム基部121の回転作動範囲以上の回動範囲で回転することができる。なお、図23(c)に示すシフトシャフト83の回動角度範囲θ1は、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123により規制されるアーム基部121の回動角度範囲θ2よりも大きい角度(θ1>θ2)となっている。
そして、シフトカム110は、カム位相保持部140によって、その回転が収束されて、5速段位相で保持される。この状態からアーム基部121を時計回り(図24(a)に示す矢印F1方向)に回転することで、間欠送り部120Aを中立位置に戻していく。これにより、アーム基部121に接続された第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123も追従して、それぞれピン170に当接しつつ摺動して、中立位置に戻るように移動する。その際、第1送りアーム部122は、図23(c)、図24(a)、図24(b)の順で示すように、内側辺部でピン170(173、175等)に当接しつつ摺動して案内され、ピン170に係合することなく移動する。
一方、図23(c)及び図24(a)に示すように、第2送りアーム部123の鉤爪部1231の外縁部が、ピン170のうち「1」の凹部と「2」の凹部の間にあるピン176に当接する。しかし、第2送りアーム部123自体が揺動することで、鉤爪部1231は、ピン176(170)に引っかかることなく、ピン176(170)を乗り超える(図24(b)参照)。
こうして、間欠送り部120Aの中で駆動側を構成するアーム基部121、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123は、間欠送り部120Aの中では被駆動側であるインデックスカム130Aと、インデックスカム130Aに固定されたシフトカム110と、を所定の位相に位置させる(カム送りする)。次いで、間欠送り部120Aにおけるアーム基部121、第1送りアーム部122及び第2送りアーム部123は、カム送りした後、被駆動側(インデックスカム130A及びシフトカム110)を連れ廻りさせることなく、中立位置に戻る(図25(a)参照)。
このように、間欠送り部120Aは、図25(b)に示すように、シフトカム110を5速段基準位相に配置するとともに、駆動前の待機状態である中立位置に戻る。こうして、シフトカム110を回転して第6速中立位置(6速段基準位相)から第5速中立位置(5速段基準位相)へ変更して位置させるまでの一連の動作が完了する。
なお、シフトアップ動作の一例として、第6速中立位置(シフトカム110において6速段基準位相)から第5速中立位置(5速段基準位相)への変速について説明したが、第5速段から第4速段へ、第4速段から第3速段へ、乃至、ニュートラルへの変速においても同様に動作して、各変速ギア段のギアポジション、基準位相に移動させることができる。
このように本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、ボトムニュートラル式のシフトカム110を6速に対応して回転させる構成であっても、各変速段間でシフトカムを回動する角度を大きく狭めることなく、各ギアポジションに対応してシフトカム110を保持する位相を周方向に一定の間隔で設定できる。よって、シフトカムを回転させる際に必要なトルクの増大を抑制して、好適に変速できる。
(実施の形態3)
図26は、本発明の実施の形態3のシフト機構を適用した変速装置の説明に供するエンジンユニット8Bの右側図であり、部分的に覆蓋等を取り外した状態を示した図である。図27は、本発明の実施の形態3のシフト機構を適用した変速装置の説明に供するエンジンユニットの左側図であり、部分的に覆蓋等を取り外した状態を示した図である。また、図28は、図27におけるR−S−T−U−V−R線断面を展開した図であり、図29は、図27におけるY−Z−A1−T−Y線断面を展開した図である。
図26に示すエンジンユニット8Bは、実施の形態1のエンジンユニット8と比較して、間欠送り部を含むシフト機構の構成が異なり、その他の基本的構成は同様である。よって、以下では、異なる構成要素を説明し、その他の同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
エンジンユニット8Bは、実施の形態1の車輌1において、エンジンユニット8に替えて搭載される。
図26〜図29に示すように、エンジンユニット8Bは、エンジン6と、ECU10Bと、シフトアクチュエータ(モータ)81Bと、クラッチ90と、クラッチアクチュエータ98と、変速機構7と、シフト機構200とを有する。ECU10B、変速機構7、シフト機構200、シフトアクチュエータ81B、クラッチ90、クラッチアクチュエータ98は、変速装置を構成する。
変速機構7は、図28に示すように、有段式の変速機構であって、主軸52と、主軸52と平行に配置された出力軸54と、シーケンシャルシフト機構72とを備えている。
シフト機構200は、図29に示すように、モータ81Bの駆動力が入力されるシフトカム駆動装置300を備える。シフトカム駆動装置300は、入力されるモータ81Bの駆動力を、シフトカム110Bを回転させるための付勢力として蓄勢した後印可することで、シフトカム110Bを間欠的に回転駆動する。
図30はシフトカム駆動装置300の分解見取り図である。
図29及び図30に示すシフトカム駆動装置300は、インデックスカム130B(図28及び図29参照)と、回転入力部310と、蓄勢部320と、回転部330と、規制部材340と、カム位相保持部450とを有する。なお、シフトカム110B、インデックスカム130B(図28及び図29参照)、回転入力部310、蓄勢部320、回転部330は、それぞれ同一軸心C2で回転する。また、シフトカム駆動装置300は、実施の形態1の間欠送り部120等の機能を含む。
回転入力部310は、アクチュエータ81Bであるモータにより、シフトロッド82を介して、駆動力が入力される。
回転入力部310は、円環状の本体部312及び連結部314を有する。規制筒部材360は、ケースに固定される筒状の収容部材410に回動自在に挿通して軸支持される筒状をなし、第1円筒部361、第2円筒部362及び第3円筒部363を有する。回転入力部310の本体部312は基部において筒状をなし、孔スプラインを有し、規制筒部材360における円筒部363の軸スプラインに外嵌して噛合して、規制筒部材360に固定されている。回転入力部310は、規制筒部材360とともに、収容部材410に軸支持され、モータの回転によって、シフトカム110Bと同軸心C2で正逆回転自在に配置されている。
回転入力部310の連結部314は、本体部312の外周部から上方に向かって延びるように形成され、上端部においてシフトロッド82Bの一端に連結されている。シフトロッド82Bの他端は、アクチュエータ81Bにおいてモータの回転を減速歯車により減速した出力軸81B1に固定された揺動アーム62に連結されている。連結部314には、本体部312の基部開口方向の一端側に延びるように板状の係止部316が形成されている。
伝達受動部370は、円盤状の本体部372及びその本体部372の上部に形成される断面略L字状の係止部374を有する。係止部374は、先端部が係止部316の延出方向とは逆方向に延びるように、且つ、シフトカム110Bの回転軸から、回転入力部310の係止部316と半径方向に離間して、形成されている。
回転部330は、ロータ部331及びそのロータ部331の軸方向に沿ってシフトカムから遠ざかる方向に延びるように形成されるシャフト部332を有する。シャフト部332は規制筒部材360の内径に回転自在に挿通して軸支持されるとともに、シャフト部332の一端部は第3円筒部363の一端から突出している。
伝達受動部370の本体部372は基部において孔スプラインを有し、第3円筒部363の一端から突出するシャフト部332の軸スプラインに外嵌して噛合して、回転部330に固定されている。すなわち、伝達受動部370は、回転部330とともに、規制筒部材360及び入力部310に対して、回転軸回りに相対回転自在であるとともに、シフトカム110Bと同軸心で回転自在に配置されている。
蓄勢部320はトーションバネであり、第1係止部321及び第2係止部322を有する。第1係止部321は、蓄勢部320のトーションバネのコイル部より延出する、一方の巻線端で構成され、第2係止部322は、他方の巻線端で構成される。なお、蓄勢部320は、ここでは、コイル部の巻線方向と巻径が異なる2つのトーションバネを、一方のコイル部に他方のコイル部を内嵌して、組み合わせて構成されている。第1係止部321と第2係止部322は、相互に略平行に配置されている。
蓄勢部320は、シフトカム110Bの回転軸方向において、回転入力部310と伝達受動部370の間に配置される。本体部312及び本体部372が蓄勢部320のコイル部の内径に嵌め込まれることで、本体部312及び本体部372が蓄勢部320の略回転軸となる。
回転入力部310の係止部316と伝達受動部370の係止部374は、それぞれの回転軸の周方向において、蓄勢部320の第1係止部321と第2係止部322とで挟まれ、蓄勢部320の付勢力(トルク)により周方向の相対回転を拘束されている。
すなわち、係止部316と係止部374の向きが常に揃うように、蓄勢部320により付勢されている。ここで蓄勢部320はプリロードを有し、これにより、伝達受動部370及び回転部330は、回転入力部310に対して蓄勢部320により弾性的に拘束される。回転入力部310がシフトカム110Bの回転軸C2回りに回転する際には、蓄勢部320が係止部374へ付勢する付勢力(トルク)を介して、回転入力部310の回動に追従するように回転する。
回転部330は、規制部材340、インデックスカム130Bとともに、シフトカム110Bを間欠的に送る間欠送り部として機能する。回転部330は、規制部材340とともに、間欠送り部の駆動側部分として機能し、被駆動側であるインデックスカム130Bを回転駆動する。
具体的には、回転部330は、ロータ部331及びそのロータ部331の軸方向に延びるように形成されるシャフト部332を有する。ロータ部331の軸心部には、シフトカム110Bに向いた側の軸端に開口した、円柱状の穴が形成されている。
ロータ部331は、第1ラチェット保持部381、第2ラチェット保持部382、及び第1ラチェット保持部381と第2ラチェット保持部382とを連結する連結軸部383を含む。
第1ラチェット保持部381には爪板3811、3812が取り付けられ、第2ラチェット保持部382には爪板3821、3822が取り付けられる。(図30参照)
第1ラチェット保持部381には、中心軸を挟んで両側に中心軸に向かって湾曲するように凹部が形成されている。これら凹部内に爪板3811、3812が配置されている。
爪板3811の一端部は、凹部の上側の湾曲する隅部に嵌め込まれている。爪板3811は、一端部を揺動中心として揺動可能に設けられている。また、爪板3812の一端部は,もう一方の凹部の上側の湾曲する隅部に嵌め込まれている。爪板3812は、一端部を揺動中心として揺動可能に設けられている。なお、以下では、爪板3811の他端を爪板3811の先端とし、爪板3812の他端を爪板3812の先端とする。
第1ラチェット保持部381では、凹部の下側部分に、爪板3811、3812の先端を回転部330の回転軸から離れる方向へ開くように付勢するキャップ付バネ3815が配置されている。
なお、回転部330の回転軸方向において、第1ラチェット保持部381は、インデックスカム130Bの円筒部135(図28参照)に内嵌されている。また、爪板3811、3812の幅は、第1ラチェット保持部381の幅より大きく設定されており、爪板3811、3812の先端を、インデックスカム130Bの円筒部135の内径部と規制部材340の第1凹部344にまたがって配置されている。
第2ラチェット保持部382は、第1ラチェット保持部381と同様に構成されるとともに、シフトカム110Bの軸方向において、第1ラチェット保持部と並べて、伝達受動部370が取り付けられる側に、配置されている。
第2ラチェット保持部382は、中心軸を挟んで両側に中心軸に向かって湾曲するように凹部が形成されている。これら凹部内に爪板3821、3822が配置されている。
爪板3821の一端部は、凹部の上側の湾曲する隅部に嵌め込まれている。爪板3821は、一端部を揺動中心として揺動可能に設けられている。また、爪板3822の一端部は,もう一方の凹部の上側の湾曲する隅部に嵌め込まれている。爪板3822は、一端部を揺動中心として揺動可能に設けられている。なお、以下では、爪板3821の他端を爪板3821の先端とし、爪板3822の他端を爪板3822の先端とする。
第2ラチェット保持部382では、凹部の下側部分に、爪板3821、3822の先端を回転部330の回転軸から離れる方向へ開くように付勢するキャップ付バネ3825が配置されている。
なお、回転部330の回転軸方向において、第2ラチェット保持部382は、規制筒部材360の第1円筒部361に内嵌されている。また、爪板3821、3822の幅は、第2ラチェット保持部382の幅より大きく設定されており、爪板3821、3822の先端を、規制筒部材360の第1円筒部361の内径部と規制部材340の第2凹部346にまたがって配置されている。
ロータ部331の軸心部の穴には、インデックスカム130Bをシフトカム110Bに締結するボルトとしての機能を有し、回転軸330を軸支持するシャフト392が挿入されている。それにより、シフトカム110Bの回転軸に対して、インデックスカム130B及び回転部330、規制筒部材360、の回転軸が同一直線上に設けられる。
規制筒部材360は、収容部材410内に回転自在に取り付けられている。第1円筒部361及び第2円筒部362は、収容部412内に収容されている。第3円筒部363は、収容部材410の一端から突出している。
収容部材410は、筒状の収容部412を有する。収容部材410は、ケースに取り付けられている。それにより収容部材410が固定されている。規制部材340は収容部材410に固定されている。
規制部材340は円板形状を有し、回転部330の回転を規制する。規制部材340のシフトカム110B側の面の中心部には、第1凹部344が形成されている。また、規制部材340の第1凹部344と逆側の面の中心部には、第2凹部346が形成されている。規制部材340は、第2凹部346の凹み形状の輪郭を成す内周面で、回転部330の正逆双方の回転を規制、或いは開放するとともに、第1凹部344の凹み形状の輪郭を成す内周面で、回転部330からインデックスカム130Bへの回転力の伝達、或いは遮断を行う。
この規制部材340には、中心部から上方に向かって延びるように切り込み部が形成されている。切り込み部に回転部330の連結部383が嵌め込まれている。
カム位相保持部450は、シフトカム110Bの位相を保持するものであり、バネ452、移動部材454と、ボール456とを有し、インデックスカム130Bの外周面形状(山部134、凹部132)とともに、シフトカム110Bを一定の回転角度(本実施の形態では、360°÷13×2=55.38°)毎の位相に保持する。
バネ452は、インデックスカム130Bの外周面に向かって開口して、シフトカム110Bの回転軸C2に直交するユニットケース8の穴部内に配設されている。バネ452の一端には、移動部材454が当接されている。移動部材454は、バネ452の軸方向に移動可能に設けられている。
移動部材454とインデックスカム130Bの外周面(山部134及び凹部132が形成される領域)との間にはボール456が設けられている。ボール456は、移動部材454を介してバネ452によりインデックスカム130Bの中心軸(シフトカム110Bの回転軸C2)に向けて付勢されている。
これらバネ452、移動部材454、ボール456、山部134及び凹部132の組み合わせにより、回転中のシフトカム110Bに回転力(トルク)を供給可能となっている。
図31にシフトカム110Bの回転軸方向(図29において左側)から見たインデックスカム130Bの形状を示す。なお、図31では、インデックスカム130Bの外周において、インデックスカム130Bを各速のギアポジションに対応する位相で保持する凹部近傍には、便宜上、各速のギアポジションに対応する符号(N、1〜6)を付して示している。また、図32〜図40でも同様に、符号(N、1〜6)を便宜上付して示している。
図28、図29及び図31に示すインデックスカム130Bは、シフトカム110Bの一端部に、シャフト392を介して、シフトカム110Bと同一軸心で固定されている。なお、シフトカム110Bの他端部は、軸受け99を介してユニットケースの壁部8bに回動自在に軸支され、ギアポジションセンサ部590により、軸方向の位置を固定されている。
インデックスカム130Bでは、外周部が周方向に連続して、且つ、インデックスカム130Bの軸心に対して凹凸(山谷)状に形成されている。凹凸状の凹状部分を構成する凹部132の位置が、シフトカム110Bにおける各変速ギアのギアポジション(入段位置)となっている。すなわち、インデックスカム130Bの外周部には、シフトカム110Bが間欠回動した際に、変速段に対応したシフトカム110Bの位相を規定する凹部132が外周に沿って設けられている。また、凹部132は、カム位相保持部450のボール456と係合することで、シフトカム110Bを、所定の位相に収束して保持する。
凹部132は、インデックスカム130Bの外周部に、ニュートラル「N」と第1速段「1」との間の回転角R2が、第1速段「1」と第2速段「2」との間の回転角R2と同じとなるように形成されている。加えて、凹部132は、トップギア(ここでは第6速段「6」)に対応する凹部とニュートラル「N」の間で鋭角に挟まれる角度R1が、ニュートラル「N」と第1速段「1」との間の回転角R2より小さくなるように形成されている。
本実施の形態では、変速装置は、6段変速のボトムニュートラル式の変速装置であり、シフトパターンにおいて、ニュートラルポジションの位置は、1速ギアポジションの下側である。そのため、インデックスカム130Bの凹部132は、外周部において、ニュートラル「N」から、第1速段を経て順に、反時計回りに第2速段、第3速段、・・・、第6速段に対応する位相に、順に設けられている。なお、以下では、ニュートラル対応位置に形成された凹部や各n変速段対応位置に形成された凹部を、便宜上、「ニュートラルの凹部」や「第n速の凹部」とも称する。
このインデックスカム130Bにおけるニュートラル「N」の凹部と第6速段「6」の凹部とで鋭角に挟む一方側の円弧に形成する山部(凸部)134cの高さは、第1速段「1」の凹部がある他方側の円弧で、周方向で隣接する凹部間に形成する山部134dの高さよりも低い(図31参照)。
すなわち、インデックスカム130Bでは、ニュートラルの位相と第1速段の位相との間の回転角度は、第1速段の位相と第2速段の位相の間の回転角度と同じである。なお、第1速段の位相と第2速段の位相の間の回転角度は、第2速段と第3速段の間、第3速段と第4速段の間、第4速段と第5速段の間、第5速段と第6速段の間の回転角度と同じである。
図32は、本実施の形態の間欠送り部における従動部側の係合受動部に設定される、略V字型の断面を有する凹面138の配置を示す。図32に示す凹面138は、インデックスカム130Bの円筒部135(図28、図29参照)の内周面135aに沿って形成される。ここで、円筒部135の内周面は、下式Mで表される数の凹面138が、下式Pで表される角度で、等間隔に配置されて形成されている。
また、ここでインデックスカム130Bの外周部に形成された外周カム面において、ニュートラル「N」から第1速段「1」を経てトップギアに相当する第6速段「6」に至る周方向で、凹部132を、等間隔で配置する角度R2と、第6速段「6」とニュートラル「N」とで鋭角に挟まれる間の角度R1は、下記式(3)、(4)で表される。
M=Q×K−S ―式(1)
P=360°÷M ―式(2)
R2=P×Q ―式(3)
R1=P×S ―式(4)
ここで、Kは、ニュートラルを含み、第1速段からトップギア段までの間にインデックスカム130Bの回動を停止する位相の数、すなわち、変速機構7で可変するギアの段数+1(ニュートラルポジション)、である。このとき、Mは、インデックスカム130Bに配置する凹面138の総数を表し、別言すれば、間欠送り部の従動部側に設定する係合受動部の総数を表す。360°はシフトカム110Bの1周の角度であり、Pは、凹面138が周方向に配置される間隔(角度)を表す。
Qは、各1段の変速でインデックスカム130Bが回転する角度が、凹面138の配置の間隔で何個分に相当するか、を表す自然数である。Qは、設計事項であるが、特にQ=2とすることが望ましい。別言すれば、Qは、間欠送り部の駆動側である第1ラチェット保持部381が各1段の変速において送る従動部側の係合受動部(凹面138)のコマ数である。Sは、角度R1に含まれる凹面138の個数を表し、Qより小さい自然数であり、設計事項であるが、Q=2とした場合、S=1に特定される。
例えば、ここでは変速装置は6段変速のボトムニュートラル方式であり、上式においてKは7、となる。Qに2を設定すると、Sは1であり、Mは13となる。さらに、凹面138の間隔Pは27.69°となるから、これら数値を上式(1)〜(4)にあてはめて、回転角度R1及びR2は、トップギア(ここでは第6速段「6」)の凹部とニュートラル「N」の凹部とで鋭角に挟まれる間の角度R1を27.69°とし、他の凹部(他の変速段(「1」〜「6」)に対応する凹部)において周方向で隣接する凹部間の角度R2を55.38°とする構成が挙げられる。
これら凹面138は、間欠送り部を構成する回転部330の第1ラチェット保持部381における爪板3811或いは3812に係合して、回転部330が回転することで、インデックスカム130Bを回転させる。凹面138の数(上式M)は、ここでは13であり、軸心C2を中心に周方向に等間隔(上式角度P)を空けて配置される。また、各1段の変速において、これら凹面138は、上式Q個分(ここでは2箇所分)回転されて、ギア段を変更、つまり、ボール456に係合させる凹部132を、周方向で隣り合う凹部132に変更するように形成されている。
このシフト機構200では、回転入力部310は、シフトアクチュエータ(モータ)81Bの回転により、正逆の一方に回転し、この回転力は、蓄勢部320で、回転部330を回転する付勢力として蓄勢する。なお、回転部330は、インデックスカム130Bを介してシフトカム110Bを回転させるものである。
蓄勢された付勢力は、回転入力部310、規制部材340、規制筒部材360によって、回転入力部310及び規制筒部材360の回転角度が所定の角度になった際に、回転部330を回転させて、爪板3811及び3812とインデックスカム130Bを介してシフトカム110Bを回す。
ECU10Bは、制御対象をシフト機構80に替えて、シフト機構200とした点を除き、ECU10と同様の機能を有する。
ECU10Bは、クラッチアクチュエータ98及びシフトアクチュエータ81Bを駆動制御して、クラッチ90、シフト機構200を駆動制御する。
特にECU10Bは、シフト機構200のシフトロッド82Bを介して、回転入力部310を、シフトカム駆動装置300の軸を中心に、正逆方向の一方で所定の回転角度で回転させる。
ここでは、間欠送りする角度が、周方向に沿って形成された凹面138の間隔の整数(上式Q)倍の位置に配置されているため、シフトアクチュエータであるモータ81Bによる回転入力部310に対する回転角度範囲を一定にして効率良く変速を行うことができる。
特に、本実施の形態3によるシフト機構200では、シフト機構200が変速動作を開始する前の中立位置に在る状態から、シフトアップ或いはシフトダウンの動作として、ECU10Bによりシフトアクチュエータ81Bが駆動して回転入力部310に回転力が入力される。このとき、回転部330は、爪板3821或いは3822が規制部材340の第2凹部346に係止されることで、回動が規制される。この回動規制とともに回転部330には、回転入力部310の入力により蓄勢部320に蓄積する付勢力が伝達受動部370を介して付勢されている。そして、回転入力部310及び規制筒部材360の回転角度が所定の角度になった際に、爪板3821或いは3822の規制部材340の第2凹部346への係止が解除される。これにより、回転部330は、蓄勢部320に蓄積された付勢力により回転するとともに、爪板3811或いは3812を介して凹面138へ回転力を伝達して、インデックスカム130B及びシフトカム110Bを回転する。
ここで、回転部330の回動の規制は、規制部材340の第2凹部346へ係止されていた爪板3821或いは3822の先端が、回転部330の回転軸C2の方向へ折り畳まれるように変位することによって、解除される。なお、爪板3821或いは3822の先端の変位は、規制筒部材360とともに第1円筒部361の内径部の形状部分が回転することで生じる。つまり、回転部330の回動は、回転入力部310とともに回転する規制筒部材360の第1円筒部361の内径部の、規制部材340に対する相対的な所定一意の回転角により、規制或いは規制解除される。すなわち、回転入力部310が中立位置から回転して回転部330の回動の規制を解除するまでの間(角度)に、伝達受動部370に対して回転入力部310が相対回転する角度を所定の角度で設けている。これにより、回転部330の回動の規制を解除して回転部330とともにシフトカム110Bの回動を開始する時点で、蓄勢部320より付勢する付勢力(トルク)をいつも必ず十分大きく蓄積することが可能となる。よって、いずれの各ギア段(ギアポジション)への変速においても、効率よく変速を行うことができる。
<シフト機構の動作>
図33〜図40は、実施の形態3の変速装置の動作を説明するための図である。なお、これら図33〜図40における(a)〜(d)は、図29における断面Z1〜Z4に対応する部分の、同時(同じ瞬間)の各断面を示す。
ここでは、シフト機構200が中立位置であるニュートラル(N)中立位置から第1速中立位置に変速する際の動作を示す。
図33に示すシフトカム駆動装置300において、まず、シフトアクチュエータであるモータ81B(図29参照)を駆動して、シフトロッド82Bを介して、回転入力部310を移動する。ここでは、N→第1速段の変速なので、回転入力部310をシフトアップ方向(F2方向)に駆動する。これにより蓄勢部320であるトーションバネによって伝達受動部370は回転入力部310に拘束され、回転入力部310に追従して回転する(図33(d)参照)。
伝達受動部370には回転部330が一体的に設けられているため、伝達受動部370の回転に伴い回転部330も基準位相から回転する。
図34に示すように、回転部330は中立位置から若干回転すると、第2ラチェット保持部382(詳細には爪板3821)が規制部材340の第2凹部346における回転規制面3461に当接する。これにより回転部330の回転は規制される。このとき、第1ラチェット保持部381の爪板3811の先端とインデックスカム130Bの凹面138との間に、まだ間隙が残っており、インデックスカム130Bは回転されていない。
さらに、シフトアクチュエータ81Bにより回転入力部310は、回転する。回転入力部310は、規制筒部材360と一体であるため、回転入力部310とともに規制筒部材360も回転する。
すると、図35に示すように、規制筒部材360の第1円筒部361の内周面に形成された斜面であるトリガ面365が、回転部330の第2ラチェット保持部382(詳細には爪板3821)に当接する。規制筒部材360が回転入力部310とともに回転してトリガ面365に第2ラチェット保持部382が当接するまでの間、第2ラチェット保持部382は回転規制面3461に当接する。これにより、回転部330の回転は規制されており回転しない。このように回転部330と一体の伝達受動部370と回転入力部310との間に相対回転を生じて、蓄勢部320に、プリロードよりも大きなトルクが蓄積する。
さらに、回転入力部310の回転に伴い規制筒部材360が回転すると、図36に示すように、規制筒部材360のトリガ面365が、第2ラチェット保持部382を、規制部材340の回転規制面3461から押し出す。詳細には、トリガ面365は、第2ラチェット保持部382の爪板3821の先端を軸心C2の方向へ折り畳むように押圧する。これにより、爪板3821は、係合状態にある回転規制面3461から開放され、回転部330の回転規制が解除される。
このとき、回転部330には、伝達受動部370を介して蓄勢部320に蓄勢されたトルクが作用しているため、規制が解除されると、回転部330は、回転入力部310の回転方向へ回転駆動する。この回転部330の回動規制を解除する際の規制筒部材360の回転角は、ギアを1段変速する際にシフトカム110Bを回転する角度と、略等しく設定されている。
これにより、図37に示すように、回転部330は、第1ラチェット保持部381における一方の爪板3811を介してシフトカム110Bに固定されたインデックスカム130Bの凹面138にトルクを伝達して、シフトカム110Bを回転する。このとき、第1ラチェット保持部381の他方の爪板3812は、規制部材340の第1凹部344の輪郭形状にガイドされて、回転部330の回転とともに軸心C2方向へ折り畳まれる。
回転した回転部330は、第1ラチェット保持部381及び第2ラチェット保持部382のそれぞれの爪板3811、3821が、規制部材340の第1凹部344及び第2凹部346のそれぞれのストッパー面3444、3464に当接することで回転を停止する。
ここで、規制部材340の第1凹部344には、ストッパー面3443と3444の間に、規制部材340の中心に向けて凸部が突出して設けられている。第1ラチェット保持部381の爪板3811の先端部が、この凸部の側面3446に当接することで、爪板381が回転部330の回転軸中心方向へ折りたたまれることを阻止する。
この爪板3811の先端部は、シフトカム110B及びインデックスカム130Bの回転慣性によって、インデックスカム130Bの凹部138の側面1381から、回転部330の回転軸中心方向へ折りたたまれる方向に押圧される。しかしながら、爪板3811の先端部は凸部の側面3446と凹部138の側面1381とに挟まれるように位置することになり、インデックスカム130B(シフトカム110B)の回動は確実に制動される。
図36の状態から図37の状態へインデックスカム130B(シフトカム110B)が回転する間、カム位相保持部450は、ボール456を介して、インデックスカム130Bの外周カム面を軸心C2方向へ押圧する。インデックスカム130Bが図37の状態まで回転されると、カム位相保持部450がボール456を第1速段「1」の凹部へ押圧することにより、シフトカム110Bは第1速段の位相に収束して保持される。
シフトアクチュエータ81Bは回転入力部310及び規制筒部材360を、回転部330の回転角度より大きな所定の角度まで回転した後、中立位置方向に逆転した駆動を開始する。
これにより、回転入力部310は、逆方向(中立位置方向)に回転する。図38に示すように、回転入力部310の回転に伴い、蓄勢部320であるトーションバネに拘束された伝達受動部370も中立位置方向へ戻るように回転する。このとき、シフトカム110Bは、インデックスカム130Bを介して、カム位相保持部450に位相を保持されている。また、伝達受動部370と一体に回転する回転部330では、第1ラチェット保持部381において、爪板3811は、インデックスカム130Bの内周面135aの凹面138間の山部を乗りこえるように折り畳まれつつ、爪板3812は規制部材340の第1凹部344の輪郭形状により折り畳まれた状態にガイドされる。回転部330は、インデックスカム130B(詳細には凹面138)への回転の伝達を遮断されて回転する。このため、シフトカム110Bを連れ戻すことがない。
そして、図39に示すように、シフトアクチュエータ(モータ)81Bは、回転入力部310が中立位置を超えて逆転駆動し、第1ラチェット保持部381が先に係合した凹面138から2つめ(上式でQ番目)の凹面138を乗りこえる角度まで回転部330を回転する。このとき、回転部330では、第2ラチェット保持部382が第2凹部346において回転規制面3461に対して回動軸心を挟んで左右対称の回転規制面3462に当接する。これにより回転部330の回転は停止する。その後、アクチュエータであるモータ81Bは、回転入力部310を中立位置へ戻す方向(当初駆動したのと同じ方向)へ駆動する。この駆動に伴い、回転入力部310は中立位置方向に移動し、蓄勢部320であるトーションバネにより回転入力部310に拘束された伝達受動部370及び回転部330も中立位置に戻る方向に回転する。
このようにして、図40に示すように、シフトカム駆動装置300の各部は、ギア段を変速した後、中立位置に戻り、待機状態となる。
なお、第1速→第2速→第3速→第4速→第5速→第6速のそれぞれの変速段間のシフトアップ動作は、N→第1速のシフトアップ動作と同様に行う。また、第6速→第5速→第4速→第3速→第2速→第1速→Nへのシフトダウン動作は、シフトアップ動作の場合と比較して、中立位置から逆方向で動作し、シフトアップ動作と左右対称に行われる。
本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の作用効果を得ることが出来る。すなわち、本実施の形態3によれば、ボトムニュートラル式の6速AMTであって、多数段の変速装置であっても、6速MTと比較しても、シフトカムに設定するシフトフォーク移動溝のリード角度を急勾配にすることなく、多数段に対応した回転位置にシフトアーム(回転入力部310を含む)を移動させる際に、シフトカムを回転させる際のトルクの増大を抑制して、シフトカムを容易に回転して所望のギア段に変速させることができる。
なお、本実施の形態における変速装置は、6段変速のボトムニュートラル方式としたが、これに限らず、最高速ギアが、2段、3段、4段、5段変速のボトムニュートラル方式であってもよいし、7段変速以上のボトムニュートラル方式であってもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。