JP5709615B2 - 変速装置 - Google Patents

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Description

本発明は、1個のアクチュエータで、クラッチ操作と、変速操作とを行うことができるとともに、発進と変速を1個のクラッチで行うことができる変速装置に関するものである。
多段変速ギヤを備えた変速装置において、クラッチ操作とギヤシフト操作とを、それぞれ電気モータのような2個のアクチュエータを用いて行う車両用変速装置があった(例えば、特開2002−067741号公報参照)。
また、変速用クラッチと発進用遠心クラッチを備えた変速装置において、1個のアクチュエータにより変速用クラッチ操作とギヤシフト操作を行う車両用変速装置があった(例えば、特開平11−082734号公報参照)。
特開2002−067741号公報 特開平11−082734号公報
前者の特開2002−067741号公報に記載の車両用変速装置では、2個のアクチュエータを必要とし、しかも、この2個のアクチュエータをそれぞれ動作させるための制御装置を必要とする結果、部品点数が多く、構造が複雑となり、コストアップを避けることが困難であった。
また、後者の特開平11−082734号公報に記載の車両用変速装置では、変速クラッチの外に、発進クラッチを必要とし、コストダウンが困難であった。
本発明は、このような難点を克服した変速装置の改良に係り、1個のアクチュエータで、クラッチ操作と変速操作を行うことができるとともに、発進と変速も行うことができる安価な変速装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クラッチおよび複数の変速段を備える変速機に結合され一つのアクチュエータによりクラッチの断接およびギヤのシフトアップダウンを行う変速装置において、前記アクチュエータにより回転駆動される主駆動軸と、前記主駆動軸に連動し、前記主駆動軸が第1回転位置にある時クラッチは許容伝達トルクが略最大となり、前記主駆動軸を回転させ第2回転位置を越えると切断状態を維持するクラッチ断接装置と、前記主駆動軸が第2回転位置を越えた位置以降の回転範囲で前記主駆動軸を揺動回転させることでギヤシフトを行う歯車シフト装置とを備え、前記クラッチ断接装置は、一端をケースに回転可能に支持された圧縮弾性体と、前記クラッチ断切装置の前記主駆動軸に回転自在に支持され、一端が前記圧縮弾性体(51)に回動可能に連結され、前記弾性体(51)により前記主駆動軸を中心として前記第1回転位置から前記第2回転位置へ回転する方向に付勢され、他端でクラッチリフタを押圧するリフタアームと、前記主駆動軸と一体に設けられ、前記主駆動軸が前記第1回転位置から前記第2回転位置への間に位置するときには、前記リフタアームを前記圧縮弾性体の付勢力に抗して押戻すアーム駆動ピンと、リフタアームの所定回転角度を超える回転を規制するリフタアームストッパとを備え、前記主駆動軸が前記第2回転位置までは、前記主駆動軸と前記リフタアームが一体回転するとともに、前記第2回転位置を超えて回転されると、前記リフタアームは前記リフタアームストッパにより回転が規制され、前記リフタ―アームにより前記クラッチの切断状態が維持され、前記主駆動軸のみが駆動されることを特徴とする変速装置である。
請求項2記載の発明は、前記リフタアームストッパは、前記圧縮弾性体のリフタアーム側の端部に前記リフタアーム側に解放した略L字状のフックであり、前記リフタアームと前記圧縮弾性体の連結点と前記リフタアームの回転中心と前記圧縮弾性体の押圧方向が直線状に位置する際、前記アーム駆動ピンは前記フックの空間内に位置するよう設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の変速装置である。
請求項3記載の発明は、ケースに回転可能または線形運動可能に支持され一端を人が操作可能な様にケースの外側に露出させた操作部材を備え、前記主駆動軸が第1回転位置に位置する際、前記操作部材を操作することにより前記リフタアームまたは前記主駆動軸を第2回転位置の方向に付勢しクラッチを切断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速装置である。
請求項4記載の発明は、前記歯車シフト装置は前記主駆動軸と平行に設けたシフト軸と、前記シフト軸の端部に接続されシフト軸と一体で回転する送りピン基部と、前記送りピン基部上にありシフト軸と平行でかつシフト軸を中心とする同一円周上に所定角度で等間隔に配置された複数の送りピンと、前記主駆動軸と一体に回転する円盤状の主駆動板と、前記主駆動板の外周部から径方向に突出して配置され主駆動板の回転に伴い前記送りピンを押圧しシフト軸をシフトアップ方向に回転させる第1送り爪とシフトダウン方向に回転させる第2送り爪とからなり、前記第1送り爪はシフトダウン方向に前記送りピンと当接する際これを逃げる方向で回転自在とされ、前記第2送り爪はシフトアップ方向に前記送りピンと当接する際これを逃げる方向で回転自在とされることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の変速装置である。
請求項5記載の発明は、前記歯車シフト装置が第i段にあるとき、第i−1送りピン外周と主駆動軸との距離は前記第1送り爪の突出端の先端と主駆動軸との距離に略等しいかわずかに長くかつ前記第2送り爪の突出端の先端と主駆動軸との距離より短く、第i送りピン外周と主駆動軸との距離は第1送り爪の突出端の先端と主駆動軸との距離よりも短いことを特徴とする請求項4に記載の変速装置である。
請求項6記載の発明は、前記第1、第2送り爪は板状で一方向に長い形状であり、前記主駆動板上に回転可能に支持され、ワンウェイ手段は、前記第1送り爪を一方向に付勢する第1付勢手段と、前記第2送り爪を一方向に付勢する第2付勢手段と、前記付勢力による第1、第2送り爪が所定の位置を超えて回転しない様に片方向にのみ回転を規制する送り爪ストッパ手段を備え、前記第1送り爪の付勢方向は主駆動軸がシフトアップ開始前の第3回転位置からシフトアップ完了後の第2回転位置に向かって回転する時に前記第1送り爪が送りピンに当接し受ける回転力の方向であり、前記第2送り爪(75)の付勢方向は前記第1送り爪の付勢方向と逆であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の変速装置である。
請求項7記載の発明は、前記送り爪ストッパ手段は、前記第1送り爪の非突出端が主駆動軸に接触することにより前記第1送り爪の回転を規制し、前記第2送り爪の非突出端が主駆動軸に接触することにより前記第2送り爪の回転を規制することを特徴とする請求項6に記載の変速装置である。
請求項8記載の発明は、前記歯車シフト装置は、前記第1送り爪が第1付勢手段により回転されることを阻止するラッチ手段を備え、前記ラッチ手段は、略L字形状でその一端を前記主駆動板の外周から突出させ、他端が前記第1送り爪の一端に接触した位置に配置され略中間部を主駆動板上で主駆動軸と平行で所定の距離離れた軸を中心に回転可能に支持され前記第1送り爪を押圧する回転方向に付勢されたラッチ板と、前記主駆動軸を中心とした凹円弧形状で主駆動板外周の外側に配置され主駆動軸を回転可能に支持するケースに固定され、前記主駆動板の回転位置に応じてラッチ板の一端と接触しこれ押圧することによりラッチ板を回転させあるいは第1送り爪と接触しこれを押圧することにより第1送り爪を送りピンが接触しなくなる回転位置まで回転させる案内板とから成り、前記主駆動軸がシフトダウン開始前の第5回転位置に移動した際に、第1送り爪が第1付勢手段で回転されるのを阻止する状態になり、第2回転位置に移動した際に第1送り爪が第1付勢手段で回転可能になることを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の変速装置である。
請求項9記載の発明は、前記主駆動軸が第1回転位置にある時、前記主駆動板と前記案内板が接触することにより主駆動板が第1回転位置を超えて第2回転位置の側と反対方向へ回転することを規制し、前記主駆動軸がシフトダウン完了後の第4回転位置にある時、前記主駆動板と案内板が接触することにより前記主駆動板が第4回転位置を超えて第3回転位置と反対方向へ回転することを規制することを特徴とする請求項8に記載の変速装置である。
請求項10記載の発明は、前記主駆動軸が第3回転位置から第2回転位置へ回転し変速段をi段に変速する場合において前記第1送り爪が第i−1送りピンから離れる瞬間の主駆動軸の位置を第6回転位置とすると、主駆動軸(47)が第6回転位置付近で変速段位が第i段位に有る時の前記主駆動板外周と第i送りピンの外周との距離が略0であるか、前記主駆動軸が第4回転位置で変速段がi段にある時、前記主駆動軸外周と第i−1送りピン外周の距離が略0であるか、少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれかに記載の変速装置である。
請求項11記載の発明は、前記変速装置は複数のドグクラッチを切り替えて変速段位を変更する変速装置であり、前記主駆動軸を第3回転位置から第2回転位置へ回転させることで変速段を変更する場合にダボ当たり状態を検知すると前記主駆動軸を一度第5回転位置に回転した後、第1回転位置と第2回転位置の間の前記クラッチが弱く接続される所定の位置に回動し、続いて第3回転位置にした後第2回転位置にすることでダボ当たりを解消し変速段の変更を行うことを特徴とする請求項4ないし請求項10のいずれかに記載の変速装置である。
請求項12記載の発明は、前記変速装置は第1段位と第2段位の間に変速機の入力と出力の間の動力伝達がおこなわれない中立段位を備え、第1段位から中立段位へ変速する場合および第2段位から中立段位へ変速する場合のシフト軸の回転角度が他の変速段位間のシフト軸の回転角度と異なる中立段位への変速を、前記主駆動軸47を第2回転位置から第3回転位置にした後、第2回転位置と第3回転位置の間であって第1送り爪により変速段位が中立段位となる第7回転位置にした後、第5回転位置にし、次に第2回転位置にするか、第2回転位置から、第4回転位置と第5回転位置の間であって第2送り爪により変速段位が中立段位となる第8回転位置にした後、第2回転位置にするか、少なくともいずれか一方で行うことを特徴とする請求項4ないし請求項11のいずれかに記載の変速装置である。
請求項1記載の発明によれば、主駆動軸の角度位置に応じてクラッチの断接が行われる角度範囲とクラッチが切れたままの状態を保つ角度範囲を分けることができ、クラッチが切れたままの状態を保つ角度範囲の主駆動軸の動作を他の用途例えばギヤシフトに利用することが可能となる。主駆動軸のおのおの異なった動作でクラッチの断接、アップ方向のギヤ組み替え、ダウン方向のギヤ組み替えを行わせることができ、一つのアクチュエータで車両の発進、停止、シフトアップ、シフトダウンを自在に行わせることが可能となる。
請求項2記載の発明によれば、前記主駆動軸が第1回転位置から第2回転位置に回転する時は第1回転位置近傍ではアーム駆動ピンがフックを押すことによりまた第1回転位置から離れると弾性伸縮部材の付勢力によりリフタアームが一体回転し、第2回転位置を超えて回転する時はフックの解放部を通りフックからアーム駆動ピンが離脱する。
請求項3記載の発明によれば、アクチュエータの動作によることなく人のわずかな力でクラッチの切断が可能となる。
請求項4記載の発明によれば、主駆動軸の第2回転位置からの往復揺動角の違いによりアップ方向およびダウン方向のギヤシフトを自在に行わせることが可能となる。
請求項5の発明によれば、請求項4の発明を実現する具体的な構造が示される。
請求項6の発明によれば、請求項4の発明を実現する具体的な構造が示される。
請求項7の発明によれば、請求項4の発明を実現する具体的な構造が示される。
請求項8の発明によれば、請求項4の発明を実現する具体的な構造が示される。
請求項9の発明によれば、簡単な構造で、主駆動軸が不要な角度位置になることを規制できる。
請求項10の発明によれば、ギヤシフト時ギヤが組変わった直後にシフト軸がその慣性力により過多に回転しようとすると送りピンが主駆動板に接触することにより過多な回転を防止し確実なギヤシフトを行うことができる。
請求項11の発明によれば、変速装置がダボ当たり状態となった場合でも正しく変速できる。
請求項12の発明によれば、自動二輪車で広く用いられている中立段位が変速段位1と変速段位2の間に設けられている変速機に本発明を適用できる。
本発明の一実施例の変速装置の要部縦断面図である。 図1のアクチュエータの要部縦断面図である。 図1のII矢印方向からアクチュエータモジュールの要部を見た透視側面図である。 図2で圧縮弾性体と荷重検知ユニットを縦断し、主駆動軸,主駆動板,リフタアームを図1のII矢印方向から見た一部断面・透視側面図である。 図4で主駆動板が始動位置から僅かに時計方向へ回転した図4と同様な一部断面・透視側面図である。 図4で主駆動板が始動後、時計方向へ約100°回転した図4と同様な一部断面・透視側面図である。 手動切断レバーを備えた手動クラッチ断切装置の側面図である。 図3に図示された歯車シフト装置における主駆動軸,主駆動板の第1回転位置とこれに付設された第1送り爪,第1付勢スプリング,第2送り爪とシフト軸とを図示した側面図である。 歯車シフト装置における主駆動軸と主駆動板の第1回転位置から第5回転位置迄を左から右へ順次図示した側面図である。 クラッチオン・オフ動作を図示した説明図である。 シフトアップ動作を図示した説明図である。 シフトダウン動作を図示した説明図である。 変速段位1から中立段位への変速動作を図示した説明図である。 変速段位2から中立段位への変速動作を図示した説明図である。
以下、本発明の一実施例に係る変速装置0について説明する。
自動二輪車に搭載される内燃機関に付設された本実施例の変速装置0は、その概略を図示した図1に示されるように、多板摩擦クラッチ1と6段歯車変速機構2と変速シフト機構3とアクチュエータモジュール4とを具備している。
歯車変速機構2では、内燃機関の左右の機関ケース8に車体幅方向(左右方向)に指向した図示されないクランク軸と平行に、変速入力軸であるメイン軸20と変速出力軸であるカウンタ軸21とが、ベアリング9を介して回転可能に軸支され、これらのメイン軸20とカウンタ軸21との間に歯車変速機構2が構成されているが、まず、クランク軸の動力を接続、遮断する多板摩擦クラッチ1について説明する。
図1において、右方の機関ケース8より突出したメイン軸20に多板摩擦クラッチ1が設けられており、図示されない内燃機関のクランク軸により回転駆動される入力歯車10の回転トルクを歯車変速機構2のメイン軸20に連結または遮断可能に連結する機能を多板摩擦クラッチ1は有している。
前記多板摩擦クラッチ1においては、歯車変速機構2のメイン軸20に回転可能に嵌装された入力歯車10はトルクダンパ11を介してクラッチアウタ12に連結され、このクラッチアウタ12に複数枚の駆動摩擦板14が軸方向には移動できるが回転できないように嵌合されており、前記クランク軸の回転力がクラッチアウタ12および駆動摩擦板14に伝達されるようになっている。
また、クラッチアウタ12の右側に位置してメイン軸20にクラッチインナ13が一体に嵌着され、このクラッチインナ13に複数枚の従動摩擦板15が前記駆動摩擦板14と軸方向に交互に重ねられた状態で、スプライン嵌合されており、クラッチインナ13に軸方向には移動できるが回転できないように嵌合された加圧板16とクラッチインナ13とに介装されたクラッチスプリング18の弾性復元力により、前記クラッチアウタ12に軸方向には移動できるが回転できないように嵌合された駆動摩擦板14が、メイン軸20と一体のクラッチインナ13に向って左方へ押付けられ、駆動摩擦板14と従動摩擦板15とが相互に圧接され、その摩擦力でもって、入力歯車10の回転トルクがメイン軸20に伝達されて、メイン軸20が回転駆動されるようになっている(この状態はクラッチオンである)。
なお、後記クラッチリフタ64は、中空のメイン軸20に摺動可能に嵌装されており、クラッチリフタ64に右方向クラッチオフ力が働くと、クラッチスプリング18の弾性復元力に打勝ち、加圧板16が右方へ押返されて、多板摩擦クラッチ1はクラッチオフとなり、入力歯車10の回転トルクはメイン軸20には伝達されず、遮断されるようになっている。
次に、歯車変速機構2について説明する。
歯車変速機構2は、常時噛合い式の変速歯車機構であり、対応する駆動歯車22と従動歯車23とが常時噛合っている。
メイン軸20には、右側から左へ1速駆動歯車22,5速駆動歯車22,4速駆動歯車22,3速駆動歯車22,6速駆動歯車22,2速駆動歯車22が順に配列されており、1速駆動歯車22はメイン軸20に一体に形成され、5速駆動歯車22はメイン軸20に回転可能に軸支されたアイドル歯車であり、4速駆動歯車22と3速駆動歯車22は相互に一体に形成されてメイン軸20にスプライン嵌合したシフタ歯車であり、6速駆動歯車22はメイン軸20に回転可能に軸支されたアイドル歯車であり、2速駆動歯車22はメイン軸20に嵌合されている。
他方、カウンタ軸21には、右側から、左へ1速従動歯車23,5速従動歯車23,4速従動歯車23,3速従動歯車23,6速従動歯車23,2速従動歯車23が順に配列されており、1速従動歯車23はカウンタ軸21に回転可能に軸支されたアイドル歯車であり、5速従動歯車23はカウンタ軸21にスプライン嵌合したシフタ歯車であり、4速従動歯車23と3速従動歯車23はそれぞれカウンタ軸21に回転自在に軸支されたアイドル歯車であり、6速従動歯車23はカウンタ軸21にスプライン嵌合したシフタ歯車であり、2速従動歯車23はカウンタ軸21に回転自在に軸支されたアイドル歯車である。
そして、メイン軸20上でシフタ歯車である一体の3速駆動歯車22と4速駆動歯車224およびカウンタ軸21上でシフタ歯車である5速従動歯車23と6速従動歯車23が、軸方向に移動し、歯車相互のドグクラッチが段接することにより、いずれか1対の歯車列(駆動歯車と従動歯車との噛合い)が有効に動力伝達することになって1個の変速段位が確立し、確立した変速段位の変速比でメイン軸20からカウンタ軸21に動力が伝達される。
前記カウンタ軸21の左端にドライブスプロケット24がスプライン嵌合され、図示されない後輪と一体のドリブンスプロケット(図示されず)とドライブスプロケット24とに無端チェン25が巻掛けられており、ドライブスプロケット24が回転すると、後輪が回転駆動されて、自動二輪車が走行できるようになっている。
なお、本歯車変速機構2には、すべての歯車列が無効となって動力伝達が行われないニュートラル位置が存在する。
歯車変速機構2のシフタ歯車を軸方向に移動させて変速を行わせる変速シフト機構3について、以下説明する。
本変速シフト機構3は、シフトドラム30を回転することにより、シフトフォーク軸31,シフトフォーク軸32に摺動自在に軸支されたシフトフォーク33,シフトフォーク34,シフトフォーク35がシフトドラム30の外周面に形成されたシフト溝30vに案内されて軸方向に移動させ、シフトフォーク35がメイン軸20にスプライン嵌合したシフタ歯車である3速駆動歯車22と4速駆動歯車22を一体に移動し、シフトフォーク33がカウンタ軸21にスプライン嵌合したシフタ歯車である5速従動歯車23を移動させ、シフトフォーク34がシフタ歯車である6速従動歯車23を移動させて変速段位の切換えを行うようになっている。
次に、図1ないし図6を参照してアクチュエータモジュール4について説明する。
アクチュエータモジュール4のアクチュエータモジュールケース40は、図示されない取付け手段により機関ケースに一体に装着されている。
アクチュエータモジュール4は、リフタ64を介して多板摩擦クラッチ1の加圧板16に接続されるとともに、歯車シフト装置43のシフト軸70を介して変速シフト機構3のシフトドラム30に接続されており、クラッチ断切装置42のリフタ64が図1で右方へ(図2で上方へ)押されると、多板摩擦クラッチ1が切断され、また、歯車シフト装置43のシフト軸70が回転駆動されると、変速シフト機構3の変速段位が変更されるようになっている。
また、図2は、アクチュエータモジュール4の要部拡大断面であり、アクチュエータ41の回転駆動力により、減速歯車44,減速歯車45,減速歯車46を介して主駆動軸47が減速回転駆動されるようになっている。
さらに、主駆動軸47には主駆動板48が一体に装着され、この主駆動板48の外周部には、図4に図示されるように、アーム駆動ピン49が突設されるとともに、アーム駆動ピン49の突設側で主駆動板48に隣接してへ字状のリフタアーム50が、主駆動軸47に回転可能に枢着されている。
さらにまた、図4に図示されるように、アクチュエータモジュールケース40の空間内上部に位置した圧縮弾性体51は、シリンダ52と、シリンダ52に摺動可能に装入されたピストン53と、シリンダ52の外周に遊嵌されて、シリンダ52の基端(図3で左端)の鍔部52aとピストン53の鍔部53a(図3で右端)とに挟まれたコイルスプリング54と、ピストン53に一体に設けられたフック55とよりなり、シリンダ52の突起52bがアクチュエータモジュールケース40の凹部40aに係止されるとともに、リフタアーム50とフック55とでもってアーム駆動ピン49を挟んだ状態で、連結ピン56を介してリフタアーム50とフック55が枢着されている。
しかも、アクチュエータモジュールケース40の下方空間内に位置して荷重検知ユニット57が配設され、この荷重検知ユニット57は、アクチュエータモジュールケース40内で一体に設けられた検知ユニットガイド58と、この検知ユニットガイド58内に摺動可能に装入された摺動体59と、リフタアーム50の他端部50bに当接し、図3ないし図6に図示されるように、リフタアーム50の時計方向の回転で摺動体59に案内されながら摺動する受圧片60と、摺動体59および受圧片60に介装されたコイルスプリング61と、受圧片60,コイルスプリング61の摺動方向に対し直角方向図3ないし図6において略上下方向)に指向してアクチュエータモジュールケース40に回転可能に支持されたリフタレバー軸62と、先端が摺動体59に当接した状態で基端がリフタレバー軸62に一体に装着されたリフタレバー63と、歯車変速機構2の中空であるメイン軸20内に摺動可能に挿入されて、一端がリフタレバー軸62の切欠き62aに係合されるとともに、他端が多板摩擦クラッチ1の加圧板16に当接されるリフタ64とよりなっている。
図2ないし図6に図示されたアクチュエータモジュール4のクラッチ断切装置42では、主駆動軸47の主駆動板48に突設されたアーム駆動ピン49が図4に図示された第1角度位置にある場合では、連結ピン56の中心が、シリンダ52の突起52bと主駆動軸47とを結ぶX線より下方に位置しているため、伸びようとするコイルスプリング54の弾性復元力でもって、連結ピン56は下方へ押下げられ、リフタアーム50は検知ユニットガイド58の上端片58aに押付けられ、この状態が安定して保持される。すなわち、リフタ64が図1において右方へ突出されないので、多板摩擦クラッチ1は安定してクラッチオン状態を維持することができる。
このようなクラッチオン状態において、図3でアクチュエータ41が起動してアクチュエータ41の出力軸が時計方向へ回転し、主駆動軸47および主駆動板48も時計方向へ回転し、アーム駆動ピン49がフック55を上方へ移動させ、図4に図示されるように、連結ピン56の中心が前記X線より上方へ移動すると(図5参照)、伸びようとするコイルスプリング54の弾性復元力でもってリフタアーム50が時計方向へ付勢され、リフタアーム50の一端50aとこの一端50aの上方に位置するアーム駆動ピン49が上方へ押され、リフタアーム50は一気に時計方向へ回転して図6に示された状態となる。
図6および図2の鎖線に示された状態では、リフタアーム50の他端50bの左方向移動でもって、コイルスプリング61が圧縮されながら、摺動体59が左方へ移動し、リフタレバー63が図2の鎖線のように反時計方向へ回転し、リフタ64のリフタ64aが上方へ押上げられ、クラッチオフの状態となる。
また、クラッチオフ状態において、図3に示されるアクチュエータ41の駆動歯車41aを逆転させると、多板摩擦クラッチ1のクラッチスプリング18および荷重検知ユニット57のコイルスプリング61の弾性復元力の助力を受けて圧縮弾性体51のコイルスプリング54が容易に短縮できて、主駆動板48,アーム駆動ピン49,リフタアーム50が反時計方向へ回転し、図4に図示のクラッチオンの状態に復帰できる。
また、図7に図示されるように、リフタアーム50の他端50bに隣接して手動切断レバー65が傾動可能に設けられており、アクチュエータ41による小さな回転トルクでもって、図4から図5を経由して図6に図示された場合と同様に、小さな操作力でもって手動切断レバー65を操作することによりクラッチオフの状態に軽快に切換えられる。そしてこの状態では、自動二輪車を押し歩きすることができる。
次に、図8および図9を参照して歯車シフト装置43について説明する。
図1において、矢印II方向から歯車シフト装置43のみを図示した図8では、アクチュエータ41の回転力は減速歯車44,減速歯車45,減速歯車46(図2、図3参照)を介して主駆動板48にアクチュエータ41の駆動歯車41aと同一の方向に正逆転可能に伝達されるようになっている。
図8と、図9の左端位置の主駆動板48の回転位置は、主駆動軸47が第1回転位置にあることを示し、また、歯車シフト装置43が変速段位2にあることを示している。
図3に図示されるように、前記主駆動軸47は歯車シフト装置43のシフト軸70と平行で、アクチュエータモジュールケース40に回転可能に枢支され、主駆動軸47と直角に略円板状の主駆動板48が一体に取付けられている。
前記主駆動板48には、長板状の第1送り爪73と第2送り爪75が、その一端である第1送り爪73の突出端73a,第2送り爪75の突出端75aが主駆動板48の外周縁から外方へ突出するとともに、その他端である第1送り爪73の非突出端73b,第2送り爪75の非突出端75bが主駆動軸47に接触した状態で、主駆動板48と平行にそれぞれ配置され、第1送り爪と第2送り爪は、主駆動軸47と平行で主駆動軸47から所定のおのおの異なった距離を存して配置された第1送り爪73の回転軸73c,第2送り爪75の回転軸75cを中心に回転可能に主駆動板48に枢支されている。
さらにまた、第1送り爪73は第1付勢スプリング74により、図8,図9において時計方向に付勢され、その付勢力で第1送り爪73の非突出端73bが主駆動軸47に押圧されることで、その回転位置を保持しており、この状態から反時計方向の範囲で回転可能である。
しかも、第2送り爪75は第2付勢スプリング76により、図8,図9において、反時計方向に付勢され、その付勢力で第2送り爪75の非突出端75bが主駆動軸47に押圧されることで、その回転位置を保持しており、その状態から時計方向の範囲で回転可能である。
また、主駆動板48には、略へ字状に形成されたラッチ板77は、一端である突出端77aが主駆動板48の外周から突出するとともに、その他端である非突出端77bが主駆動軸47に接近した状態で、主駆動板48と平行に配置され、主駆動軸47と平行で主駆動軸47から所定の距離を存して配置された回転軸77cを中心に回転可能に主駆動板48に枢支されている。
さらに、ラッチ板77は、第3付勢スプリング78の付勢力により、反時計方向へ付勢され、その付勢力により突出端77aが後述の案内板79に当接することで、その回転位置を保持できるようになっている。
さらにまた、主駆動軸47を中心とする凹円弧形状の案内板79が、主駆動板48,第1送り爪73,第2送り爪75,ラッチ板77と同一平面で、主駆動板48の外周の一部を囲うように配置され、アクチュエータモジュールケース40に一体に固定されている。
また、図1において、前記シフト軸70の左端に厚円板状のピン基部71が、シフト軸70に対して直角に一体に取付けられ、ピン基部71の左端面には、図8に図示されるように6本の第1送りピン72,第2送りピン72,第3送りピン72,第4送りピン72,第5送りピン72,第6送りピン72がシフト軸70を中心として周方向へ60°間隔を存してシフト軸70と平行に突設されている。
さらに、第1送りピン72,第2送りピン72,第3送りピン72,第4送りピン72,第5送りピン72,第6送りピン72は主駆動板48,第1送り爪73,第2送り爪75と同一平面に存在するように配置されている。
さらにまた、第1送り爪73の突出端73aと主駆動軸47との距離は第1送りピン72の外周と主駆動軸47との距離と略等しく設定されており、第2送り爪75の突出端75aと主駆動軸47との距離は、第1送りピン72の外周と主駆動軸47との距離よりも長く設定されている。
しかも、主駆動軸47と第1送りピン72との距離は、主駆動軸47と第2送りピン72との距離よりも長く設定されており、主駆動軸47と第3送りピン72,第4送りピン72,第5送りピン72,第6送りピン72の距離のいずれも第2送り爪75の突出端75aと主駆動軸47との距離よりも長く設定されている。
変速シフト機構3にはシフト軸70の回転位置が正しい変速段位にある場合には、その回転位置を保持する保持機能(ディテント機能)を具備しており、所定以上のトルクが加えられないと、シフト軸70は回転することができず、変速段位を変更することができない。
歯車シフト装置43が前述したように構成されているので、以下に説明するような動作を行なうことができる。
図9には、主駆動軸47が回転し、第1回転位置から第5回転位置の間を遷移する場合の動作が示されている。
図9の第1回転位置は、主駆動板48の第1端面48aが案内板79に当接し、その位置よりも反時計方向に主駆動板48が回転しないような位置を表している。第2回転位置は、主駆
動軸47を第1回転位置よりも約97°時計回りに回転させた位置を表している。第3回転位置は、主駆動軸47を第2回転位置よりも約43°時計回りに回転させた位置を表している。第5回転位置は、主駆動軸47を第3回転位置よりも約31°時計回りに回転させた位置を表している。第4回転位置は、主駆動軸47を第5回転位置よりも約25°時計回りに回転させた位置を表していて、主駆動板48の第2端面48bが案内板79に当接しており、主駆動板48がその位置より時計回りに回転できないような状態である。
次に、図10に図示された動作について説明する。
主駆動軸47が図10の第1回転位置から同図の第2回転位置に時計方向へ回転し、その後、反時計方向に同図の第1回転位置に戻る場合を説明する。
主駆動軸47が図10の第1回転位置と同図の第2回転位置との間を往復回転する場合は、いずれの第1送り爪73,第2送り爪75も送りピン72に接することなく、シフト軸70が第1送り爪73,第2送り爪75により回転されることはない。
一方、前記クラッチ断切装置42により主駆動軸47が第2回転位置から第1回転位置に反時計方向へ回転すると、多板摩擦クラッチ1が接続され、第1回転位置から第2回転位置に時計方向へ回転すると、多板摩擦クラッチ1が切断される。
つまり、この場合では、変速段位を変えることなく、多板摩擦クラッチ1の断接を自由に行うことが可能となる。
次に、図11には、主駆動軸47と一体の主駆動板48が、第2回転位置から第3回転位置に時計方向へ回転した後、第2回転位置へ反時計方向へ反転する変速シフト機構3のシフトアップ動作が示されている。
図11では、シフト軸70は、図11の第2回転位置から第3回転位置へ主駆動板48が時計方向に回転してから、逆に主駆動板48が反対方向へ逆転して第2回転位置に復帰しようとすると、第1送り爪73の突出端73aが第2送りピン72に当接し、第1送り爪73は第2送りピン72の静止反力により、第1送り爪73の回転軸73cを中心として時計方向へ回転しようとするが、第1送り爪73の非突出端73bが主駆動軸47に当接し、主駆動軸47の静止反力により、第3回転位置における突出端73aの突出状態でもって第2送りピン72は右方に押され、ピン基部71は時計方向へ60°回転されて、変速段位1から変速段位2にシフトアップされる。
このようなアクチュエータ41を正逆転させるシフトアップ動作を反復させることにより、変速装置0を所要の変速段位にシフトアップさせることができる。
また、図12を参照して変速シフト機構3のシフトダウン動作を説明する。
図12の第2回転位置から第3回転位置を経由して、第5回転位置に主駆動板48を時計方向に回転させると、第2送り爪75の突出端75aが第1送りピン72に接近し、さらに、主駆動軸47を時計方向へ回転させると、第2送り爪75の突出端75aが第1送りピン72に当接し、第1送りピン72の反力で第2送り爪75が回転軸75cを中心として反時計方向へ回転しようとするが、第2送り爪75非突出端75bが主駆動軸47に当接し、その静止反力により、第4転位置に図示されるように、第1送りピン72は左方に押され、ピン基部71は反時計方向へ60°回転されて、変速段位2から変速段位1にシフトダウンされる。
同時に第1送り爪73の突出端73aが案内板79と接触し、第1送り爪73を反時計回りに回転させ、これによりラッチ板77が反時計回りの回転を妨げることにより第1送り爪73の突出端73aが主駆動板48の外周縁から突出しない状態を維持する。
その後、主駆動板48が第5回転位置に回転した状態では、第2送り爪75の突出端75aが第6送りピン72の左方から右方へ移動して第6送りピン72に当接するが、第6送りピン72の静止反力により第2送り爪75が回転軸75cを中心として時計方向へ回転される状態となり、第2送り爪75の非突出端75bが主駆動軸47から離れることで、第6送りピン72には時計方向の回転力が働かない結果、シフト軸70は静止状態を維持できるので、変速段位1の状態を保持できる。
変速段位1の状態の第5回転位置から、さらに主駆動板48が反時計方向に回転して第2回転位置に反時計方向に回転する迄の間では、第1送り爪73の突出端73aは、主駆動板48の外周縁から突出しないので、突出端73aは送りピン72に係合せず、シフト軸70は静止状態を維持でき、変速段位1の状態保持できる。
第2回転位置に戻るとラッチ板77の突出端77aが案内板79と接触し、ラッチ板77を時計方向へ回転させ、非突出端77bが第1送り爪73の非突出端73bと乖離することにより第1送り爪73が時計回りに回転し、突出端73aが主駆動板48の外周縁から突出した状態に戻る。
このように、主駆動軸47を第2回転位置から第4回転位置に向け時計方向へ約110°回転させることで、シフト軸70を60°反時計方向へ回転させて、変速シフト機構3の変速段位を変速段位2から変速段位1にシフトダウンさせることができ、次に主駆動板48を第4回転位置から第2回転位置に向け反時計方向へ約110°反転させることで、変速シフト機構3の変速段位を変更することなく、変速段位を変速段位1に維持したまま、主駆動板48を第2回転位置へ復帰させることができ、この一連の動作で、変速段位2から変速段位1へのシフトダウンを実行することができる。
この図12の変速段位のシフトダウン動作を反覆することで、その反覆の度ごとに1段位ずつ変速段位をシフトダウンすることができる。
ドグクラッチを切替えることで変速段位を変更する変速機の場合、シフト時にダボ当たり状態、いわゆるハーフニュートラル状態になった場合、一旦クラッチを弱く接続しドグクラッチを噛み合い可能な位置に回転させ、その後改めてシフトを行う方法が知られている。シフトアップのため主駆動軸47を第3回転位置から第2回転位置へ向かって反時計回転させ第1送り爪73が送りピン72を押圧しているときダボ当たり状態になると、ドグクラッチが噛み合い位置まで移動しないため、主駆動軸47は第2回転位置まで回せなくなる。この場合は一旦主駆動軸47を時計回りに第3回転位置を越えて第5回転位置まで回転し、第1送り爪73の突出端73aが主駆動板48の外周縁から突出しない状態にした後第2回転位置と第1回転位置の所定の位置にして弱くクラッチを接続するとともに第1送り爪73の突出端73aが主駆動板48の外周縁から突出した状態にした後、改めて主駆動軸47を時計回りに第3回転位置まで回転させ続いて第2回転位置まで反時計回転させることでシフトアップを行う。
シフトダウン中にダボ当たり状態になった場合、主駆動軸47は反時計回りに回転可能なので、第2回転位置と第1回転位置の所定の位置にして弱くクラッチを接続した後、改めて時計回りに第4回転位置まで回転させ、続いて第2回転位置まで反時計回りに回転させるシフトダウンを行う。
前記歯車変速機2は変速段位1と変速段位2の間に中立段位を備えており、変速段位1からはシフト軸70を時計回りに30°回すことで、変速段位2からはシフト軸70を反時計回りに30°回すことで中立段位にすることができる。図13、図14はこれらの動作について示したものである。
図13に図示されるように、変速段位1から中立段位へ変速させる場合は、まず主駆動軸47を第2回転位置から第3回転位置まで時計回りに回転させ、続いて第3回転位置から反時計回りに回転させることで、第1送り爪73が第1送りピン72を押圧しシフト軸70が時計回りに回転する。シフト軸70が時計回りに30°回り、変速段位1から中立段位に変速するときの主駆動軸47の位置を第7回転位置として、この位置まで主駆動軸47を回転させる。続いて主駆動軸47を第5回転位置まで時計回りに逆転させ、第1送り爪73が第1送りピン72を押圧不可能な状態にした後、再び第2回転位置まで反時計回りに回転させることで、第1送り爪73が初期位置に戻り、変速が完了する。
また、図14に図示されるように、変速段位2から中立段位への変速を行う場合には、まず主駆動軸47を変速段位2から時計回りに回転させる。そして主駆動軸47が第5回転位置を越え、第2送り爪75が第1送りピン72に接触するとこれを押圧しシフト軸が反時計回りに回転する。シフト軸70が反時計回りに30°回り、変速段位2から中立段位に変速するときの主駆動軸47の位置を第8回転位置として、この位置まで主駆動軸47を回転させる。続いて主駆動軸47を反時計回りに逆転させ、第2回転位置まで戻すことで中立段位への変速が完了する。
本実施例は歯車変速機2および変速シフト機構3とは別体にアクチュエータモジュール4を構成し、このアクチュエータモジュール4を歯車変速機2に取り付けた例であるが、歯車変速機2または変速シフト機構3と一体に構成し歯車変速機2内にアクチュエータモジュール4を設けてもよい。
最後にアクチュエータモジュール4の動作を実際の運転と関連づけて説明する。
車両が停車状態に有る場合において主駆動軸47は第2回転位置にある。この状態でクラッチは切断されており内燃機関を始動させても車両は動き出すことは無い。停車中に変速を行うにはシフトアップ・シフトダウンに応じて主駆動軸47を第2回転位置から第3回転位置にし、第2回転位置に戻す、あるいは第2回転位置から第4回転位置にした後、再び第2回転位置に戻すことにより行う。これによりクラッチが切断されたままシフトアップ、シフトダウンを任意に行うことができる。停車状態から発進するためには主駆動軸47を第2回転位置から第1回転位置に回転させる。これによりクラッチが接続され車両は発進する。第2回転位置から第1回転位置への変化をゆっくり行えばスムーズな発進となり好ましい。定常走行中は第1回転位置を維持する。走行中に変速を行うにはシフトアップ・シフトダウンに応じて第1回転位置から第3回転位置にして、再び第1回転位置に戻すか、第1回転位置から第4回転位置にし第1回転位置に戻す。これによりクラッチ切断、変速、クラッチ接続の一連の動作がおこなうことができ、かつシフトアップ、シフトダウンを任意に行うことができる。また第1回転位置に戻すとき、第2回転位置から第1回転位置への変化をゆっくり行えばスムーズな変速となり好ましい。停車する時には主駆動軸47を第1回転位置から第2回転位置に回転させる。これによりクラッチは切断され停車しても内燃機関は止まることは無い。また圧縮弾性体51の付勢力とアクチュエータの力を合わせてクラッチを切断するので素早くクラッチを切断でき、急停車しても内燃機関が止まることは無い。
0…変速装置、1…多板摩擦クラッチ、2…歯車変速機構、3…変速シフト機構、4…アクチュエータモジュール、8…機関ケース、9…ベアリング、10…入力歯車、11…トルクダンパ、12…クラッチアウタ、13…クラッチインナ、14…駆動摩擦板、15…従動摩擦板、16…加圧板、17…受圧板、18…クラッチスプリング、
20…メイン軸、21…カウンタ軸、22…駆動歯車、23…従動歯車、24…ドライブスプロケット、25…無端チェン、
30…シフトドラム、31…シフトフォーク軸、32…シフトフォーク軸、33…シフトフォーク、34…シフトフォーク、35…シフトフォーク、
40…アクチュエータモジュールケース、41…アクチュエータ、42…クラッチ断切装置、43…歯車シフト装置、44…減速歯車、45…減速歯車、46…減速歯車、47…主駆動軸、48…主駆動板、49…アーム駆動ピン、
50…リフタアーム、51…圧縮弾性体、52…シリンダ、53…ピストン、54…コイルスプリング、55…フック、56…連結ピン、57…荷重検知ユニット、58…検知ユニットガイド、59…摺動体、
60…受圧片、61…コイルスプリング、62…リフタレバー軸、63…リフタレバー、64…リフタ、65…手動切断レバー、
70…シフト軸、71…ピン基部、72…送りピン、73…第1送り爪、74…第1付勢スプリング、75…第2送り爪、76…第2付勢スプリング、77…ラッチ板、78…第3付勢スプリング、79…案内板、

Claims (12)

  1. クラッチ(1)および複数の変速段を備える変速機(2)に結合され一つのアクチュエータ(41)によりクラッチ(1)の断接およびギヤのシフトアップダウンを行う変速装置(0)において、
    前記アクチュエータ(41)により回転駆動される主駆動軸(47)と、
    前記主駆動軸(47)に連動し、前記主駆動軸(47)が第1回転位置にある時クラッチ(1)は許容伝達トルクが略最大となり、前記主駆動軸(47)を回転させ第2回転位置を越えると切断状態を維持するクラッチ断接装置(42)と、
    前記主駆動軸(47)が第2回転位置を越えた位置以降の回転範囲で前記主駆動軸(47)を揺動回転させることでギヤシフトを行う歯車シフト装置(43)とを備え、
    前記クラッチ断接装置(42)は、一端をケース(40)に回転可能に支持された圧縮弾性体(51)と、
    前記クラッチ断切装置(42)の前記主駆動軸(47)に回転自在に支持され、一端(50a)が前記圧縮弾性体(51)に回動可能に連結され、前記弾性体(51)により前記主駆動軸(47)を中心として前記第1回転位置から前記第2回転位置へ回転する方向に付勢され、他端(50b)でクラッチリフタ(64)を押圧するリフタアーム(50)と、
    前記主駆動軸(47)と一体に設けられ、前記主駆動軸(47)が前記第1回転位置から前記第2回転位置への間に位置するときには、前記リフタアーム(50)を前記圧縮弾性体(51)の付勢力に抗して押戻すアーム駆動ピン(49)と、
    リフタアーム(50)の所定回転角度を超える回転を規制するリフタアームストッパ(55)とを備え、
    前記主駆動軸(47)が前記第2回転位置までは、前記主駆動軸(47)と前記リフタアーム(50)が一体回転するとともに、前記第2回転位置を超えて回転されると、前記リフタアーム(50)は前記リフタアームストッパ(55)により回転が規制され、前記リフタ―アーム(50)により前記クラッチ(1)の切断状態が維持され、前記主駆動軸(47)のみが駆動されることを特徴とする変速装置。
  2. 前記リフタアームストッパ(55)は、前記圧縮弾性体(51)のリフタアーム(50)側の端部に前記リフタアーム(50)側に解放した略L字状のフック(55)であり、
    前記リフタアーム(50)と前記圧縮弾性体(51)の連結点(56)と前記リフタアーム(50)の回転中心と前記圧縮弾性体(51)の押圧方向が直線状に位置する際、前記アーム駆動ピン(49)は前記フック(55)の空間内に位置するよう設けられたことを特徴とする請求項1に記載の変速装置。
  3. ケース(40)に回転可能または線形運動可能に支持され一端を人が操作可能な様にケースの外側に露出させた操作部材(65)を備え、前記主駆動軸(47)が第1回転位置に位置する際、前記操作部材(65)を操作することにより前記リフタアーム(50)または前記主駆動軸(47)を第2回転位置の方向に付勢しクラッチを切断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速装置。
  4. 前記歯車シフト装置(43)は前記主駆動軸(47)と平行に設けたシフト軸(70)と、
    前記シフト軸(70)の端部に接続されシフト軸(70)と一体で回転する送りピン基部(71)と、
    前記送りピン基部(71)上にありシフト軸(70)と平行でかつシフト軸(70)を中心とする同一円周上に所定角度で等間隔に配置された複数の送りピン(72)と、
    前記主駆動軸(47)と一体に回転する円盤状の主駆動板(48)と、
    前記主駆動板(48)の外周部から径方向に突出して配置され主駆動板(48)の回転に伴い前記送りピン(72)を押圧しシフト軸(70)をシフトアップ方向に回転させる第1送り爪(73)とシフトダウン方向に回転させる第2送り爪(75)とからなり、
    前記第1送り爪(73)はシフトダウン方向に前記送りピン(72)と当接する際これを逃げる方向で回転自在とされ、前記第2送り爪(75)はシフトアップ方向に前記送りピン(72)と当接する際これを逃げる方向で回転自在とされることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の変速装置。
  5. 前記歯車シフト装置(43)が第i段にあるとき、
    第i−1送りピン外周と主駆動軸(47)との距離は前記第1送り爪(73)の突出端(73a)の先端と主駆動軸(47)との距離に略等しいかわずかに長くかつ前記第2送り爪(75)の突出端(75a)の先端と主駆動軸(47)との距離より短く、第i送りピン外周と主駆動軸(47)との距離は第1送り爪(73)の突出端(73a)の先端と主駆動軸(47)との距離よりも短いことを特徴とする請求項4に記載の変速装置。
  6. 前記第1、第2送り爪(73,75)は板状で一方向に長い形状であり、
    前記主駆動板(48)上に回転可能に支持され、
    ワンウェイ手段は、前記第1送り爪(73)を一方向に付勢する第1付勢手段(74)と、前記第2送り爪(75)を一方向に付勢する第2付勢手段(76)と、前記付勢力による第1、第2送り爪(73,75)が所定の位置を超えて回転しない様に片方向にのみ回転を規制する送り爪ストッパ手段(47)を備え、
    前記第1送り爪(73)の付勢方向は主駆動軸(47)がシフトアップ開始前の第3回転位置からシフトアップ完了後の第2回転位置に向かって回転する時に前記第1送り爪(73)が送りピン(72)に当接し受ける回転力の方向であり、
    前記第2送り爪(75)の付勢方向は前記第1送り爪(73)の付勢方向と逆であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の変速装置。
  7. 前記送り爪ストッパ手段(47)は、前記第1送り爪(73)の非突出端(73b)が主駆動軸(47)に接触することにより前記第1送り爪(73)の回転を規制し、前記第2送り爪(75)の非突出端(75b)が主駆動軸(47)に接触することにより前記第2送り爪(75)の回転を規制することを特徴とする請求項6に記載の変速装置。
  8. 前記歯車シフト装置(43)は、前記第1送り爪(73)が第1付勢手段(74)により回転されることを阻止するラッチ手段を備え、
    前記ラッチ手段は、略L字形状でその一端を前記主駆動板(48)の外周から突出させ、他端が前記第1送り爪(73)の一端に接触した位置に配置され略中間部を主駆動板(48)上で主駆動軸(47)と平行で所定の距離離れた軸(77c)を中心に回転可能に支持され前記第1送り爪(73)を押圧する回転方向に付勢されたラッチ板(77)と、
    前記主駆動軸(47)を中心とした凹円弧形状で主駆動板(48)外周の外側に配置され主駆動軸(47)を回転可能に支持するケース(40)に固定され、前記主駆動板(48)の回転位置に応じてラッチ板(77)の一端と接触しこれ押圧することによりラッチ板(77)を回転させあるいは第1送り爪(73)と接触しこれを押圧することにより第1送り爪(73)を送りピン(72)が接触しなくなる回転位置まで回転させる案内板(79)とから成り、
    前記主駆動軸(47)がシフトダウン開始前の第5回転位置に移動した際に、第1送り爪(73)が第1付勢手段(74)で回転されるのを阻止する状態になり、第2回転位置に移動した際に第1送り爪(73)が第1付勢手段(74)で回転可能になることを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の変速装置。
  9. 前記主駆動軸(47)が第1回転位置にある時、前記主駆動板(48)と前記案内板(79)が接触することにより主駆動板(48)が第1回転位置を超えて第2回転位置の側と反対方向へ回転することを規制し、
    前記主駆動軸(47)がシフトダウン完了後の第4回転位置にある時、前記主駆動板(48)と案内板(79)が接触することにより前記主駆動板(48)が第4回転位置を超えて第3回転位置と反対方向へ回転することを規制することを特徴とする請求項8に記載の変速装置。
  10. 前記主駆動軸(47)が第3回転位置から第2回転位置へ回転し変速段をi段に変速する場合において前記第1送り爪(73)が第i−1送りピンから離れる瞬間の主駆動軸(47)の位置を第6回転位置とすると、
    主駆動軸(47)が第6回転位置付近で変速段位が第i段位に有る時の前記主駆動板(48)外周と第i送りピンの外周との距離が略0であるか、
    前記主駆動軸(47)が第4回転位置で変速段がi段にある時、前記主駆動軸(47)外周と第i−1送りピン外周の距離が略0であるか、
    少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれかに記載の変速装置。
  11. 前記変速装置(0)は複数のドグクラッチを切り替えて変速段位を変更する変速装置(0)であり、前記主駆動軸(47)を第3回転位置から第2回転位置へ回転させることで変速段を変更する場合にダボ当たり状態を検知すると前記主駆動軸(47)を一度第5回転位置に回転した後、第1回転位置と第2回転位置の間の前記クラッチ(1)が弱く接続される所定の位置に回動し、続いて第3回転位置にした後第2回転位置にすることでダボ当たりを解消し変速段の変更を行うことを特徴とする請求項4ないし請求項10のいずれかに記載の変速装置。
  12. 前記変速装置(0)は第1段位と第2段位の間に変速機(2)の入力と出力の間の動力伝達がおこなわれない中立段位を備え、第1段位から中立段位へ変速する場合および第2段位から中立段位へ変速する場合のシフト軸(70)の回転角度が他の変速段位間のシフト軸(70)の回転角度と異なる中立段位への変速を、前記主駆動軸47を第2回転位置から第3回転位置にした後、第2回転位置と第3回転位置の間であって第1送り爪(73)により変速段位が中立段位となる第7回転位置にした後、第5回転位置にし、次に第2回転位置にするか、
    第2回転位置から、第4回転位置と第5回転位置の間であって第2送り爪(75)により変速段位が中立段位となる第8回転位置にした後、第2回転位置にするか、
    少なくともいずれか一方で行うことを特徴とする請求項4ないし請求項11のいずれかに記載の変速装置。
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