以下、図1ないし図7に図示された本発明の一実施例に係る荷重検知装置1について説明する。
荷重検知装置1においては、荷重検知装置1のケース1a(以下、荷重検知装置ケースとする)は中空で細長く形成され、その頂部には、圧縮コイルスプリング5の弾性変形量を検知する角度センサ2が一体に配置されている。
本実施例では、図1はケース1aの前面を図示した図面を正面図とし、上下左右は図1の上下左右を意味し、手前側、奥側とは紙面より手前側、奥側を意味している。
角度センサ2はセンサケース2aに枢支された回転軸2bの回転角度を検知するもので、回転軸2bにセンサアーム2cが一体に取付けられ、センサアーム2cの下端には2叉状切欠き2dが形成されている。
また、本実施例では、図1はケース1aの正面を図示した正面図であると定義する。
本実施例では、変速装置20は、多板摩擦クラッチ21と、多段歯車変速機22と、変速シフト機構23と、アクチュエータモジュール24よりなり、アクチュエータモジュール24におけるアクチュエータ61によって駆動される荷重部材3は、荷重検知装置1の第3ラック10のケース1a内の左側に配置され、この荷重部材3の荷重を受けて駆動される負荷部材4は荷重検知装置1のケース1a内の右側に配置されており、負荷部材4はアクチュエータモジュール24内に設けられたリフタレバーを押圧するようになっている。
図1のII−II線に沿って切断したケース1aの横断面(図2参照)に図示されるように、ケース1a中空底部の左右には、略正方形の第1保持部材6と第2保持部材7とがそれぞれ左右に移動可能に挿入され、左方の第1保持部材6の頂部と右方の第2保持部材7の頂部には、それぞれ歯部を対向した状態で第1ラック8と第2ラック9とが一体に装着され、両第1保持部材6,第2保持部材7の間に圧縮コイルスプリング5が介装されており、この圧縮コイルスプリング5は請求項における弾性伸縮部材に相当するものである。
さらに、ケース1aの頂部下面に隣接する両内側面上部にガイド溝1bが形成され、このガイド溝1bに第3ラック10が移動可能に取付けられている。
さらにまた、ケース1aの奥側壁面から手前側に向かって回転軸14が一体に突設され、この回転軸14に回転可能に枢支された第2ピニオン13は、第2ラック9と第3ラック10に挟まれて噛み合っており、第2ラック9が左右に移動すると第3ラック10は第2ラック9の移動方向と逆の右左に第2ラック9の移動量と同じ距離だけ移動できるようになっている。
しかも、第1ピニオン11は第1ラック8と第3ラック10に挟まれて噛み合った状態で、第1ピニオン11と一体の回転軸12はセンサアーム2cの2叉状切欠き2dに挿入されており、第1ラック8と第3ラック10の移動に応じて第1ピニオン11が回転移動しセンサアーム2cを回転させる。
図1ないし図7に図示の実施例は前述したように構成されているので、荷重部材3には右方向への荷重が加えられず、負荷部材4にも左方向への負荷が加えられない図4に図示した状態において、荷重部材3に右方向へ荷重を加え、負荷部材4の移動を阻止する拘束力が負荷部材4に働いて負荷部材4が静止した図5に図示の状態に移行した場合には、荷重部材3に加えられる右方向の荷重により、圧縮コイルスプリング5の弾性変形反力に抵抗して荷重部材3が右方へ移動し、これと一体的に第1保持部材6および第1ラック8が右方へ移動して圧縮コイルスプリング5が短縮する。
この時には、負荷部材4が静止しているため、負荷部材4に密接している第2保持部材7とこれと一体の第2ラック9とは共に静止し、第2ラック9に噛合っている第2ピニオン13も回転せず、第2ピニオン13に噛合っている第3ラック10も静止している結果、右方へ移動する第1ラック8に噛合っている第1ピニオン11は、静止状態の第3ラック10の歯に噛合いつつ、反時計方向へ回転し、図5に図示されるように、荷重部材3,第1保持部材6,第1ラック8と連動しながら第1ピニオン11は右方へ移動し、第1ピニオン11の移動量は荷重部材3,第1保持部材6,第1ラック8の移動量の半分となる。
負荷部材4は静止しているので荷重部材3の移動量は圧縮コイルスプリング5のたわみ量すなわち荷重に比例した値であるため、第1ピニオン11の移動量も荷重に比例した値となる。
次に図4に図示した状態において、荷重部材3に右方向へ荷重を加え、負荷部材4の移動を阻止する拘束力がなく、図6に図示した状態へ至り荷重されなくなった場合には、荷重部材3へ加えられる右方向への荷重により荷重部材3は右方向へ移動し、負荷部材4には拘束力が働かないため圧縮コイルスプリング5が伸縮することなく、荷重部材3と一体的に第1保持部材6,第1ラック8,圧縮コイルスプリング5,第2保持部材7,第2ラック9,負荷部材4が右方向へ移動する。
このときには、第2ラック9の右方向へ移動により、第2ラック9に噛み合っている第2ピニオン13は反時計回りに回転し、これと噛み合っている第3ラック10を左方向へ移動させ、第3ラック10の移動量は荷重部材3,第1保持部材6,第1ラック8,圧縮コイルスプリング5,第2保持部材7,第2ラック9,負荷部材4の移動量に等しく、左方へ移動する第3ラック10と、第3ラック10と同じ移動量で右方へ移動する第1ラック8に挟まれて噛み合った第1ピニオン11は、反時計回りに回転するものの移動することはない。
また図6に図示した状態において、荷重部材3に右方向へ荷重を加え、負荷部材4の移動を阻止する拘束力が荷重部材4に働いて荷重部材4が静止した、図7に図示した状態へ移行した場合には、前記図4から図5に移行した場合と同様に荷重検知装置1は動作し第1ピニオン11は荷重に比例して移動する。
さらに図5に図示した状態において、荷重が変化することが無く、負荷部材4が右方へ移動し図7に図示した状態に移行した場合には、前記図4から図6に移行した場合と同様に荷重検知装置1は動作し、第1ピニオン11は移動しない。
このように荷重検知装置1では、荷重が変化せず負荷部材4が移動する場合には第1ピニオン11の位置は変化せず、また負荷部材4の位置によらず負荷部材4が固定され荷重が変化する場合には、荷重に応じて第1ピニオン11の位置が変化するので、第1ピニオン11の移動量を、第1ピニオン11と一体の回転軸12を2叉切欠き2dに挿入されたセンサアーム2cの回転角として角度センサ2で検知することにより荷重を検知することが可能となる。
また、本荷重検知装置1の荷重部材3をアクチュエータにより押圧し、負荷部材4で多板摩擦クラッチ21を断接するリフタアーム70を押圧する様に配置すれば、多板摩擦クラッチ21の摩耗や温度変化により、リフタアーム70の初期位置が変動した場合でも、アクチュエータ61の荷重を正確に検知することができ、円滑に多板摩擦クラッチ21を断接することが可能となる。
図1ないし図7に図示された荷重検知装置1を適用した図8ないし図21に図示の変速装置20について説明する。
自動二輪車に搭載される内燃機関に付設された本実施例の変速装置20は、その概略を図示した図1に示されるように、多板摩擦クラッチ21と6段歯車変速機構22と変速シフト機構23とアクチュエータモジュール24とを具備している。
歯車変速機構22は、内燃機関の左右の機関ケース28に車体幅方向(左右方向)に指向した図示されないクランク軸と平行に、変速入力軸であるメイン軸40と変速出力軸であるカウンタ軸41とが、ベアリング29を介して回転可能に軸支され、これらのメイン軸40とカウンタ軸41との間に歯車変速機構22が構成されているが、まず、クランク軸の動力を接続、遮断する多板摩擦クラッチ21について説明する。
図8において、右方の機関ケース28より突出したメイン軸40に多板摩擦クラッチ21が設けられており、図示されない内燃機関のクランク軸により回転駆動される入力歯車30の回転トルクを歯車変速機構22のメイン軸40に連結または遮断可能に連結する機能を多板摩擦クラッチ21は有している。
前記多板摩擦クラッチ21においては、歯車変速機構22のメイン軸40に回転可能に嵌装された入力歯車30はトルクダンパ31を介してクラッチアウタ32に連結され、このクラッチアウタ32に複数枚の駆動摩擦板34が軸方向には移動できるが回転できないように嵌合されており、前記クランク軸の回転力がクラッチアウタ32および駆動摩擦板34に伝達されるようになっている。
また、クラッチアウタ32の右側に位置してメイン軸40にクラッチインナ33が一体に嵌着され、このクラッチインナ33に複数枚の従動摩擦板35が前記駆動摩擦板34と軸方向に交互に重ねられた状態で、スプライン嵌合されており、クラッチアウタ32に軸方向には移動できるが回転できないように嵌合された加圧板36とクラッチインナ33とに介装されたクラッチスプリング38の弾性復元力により、前記クラッチアウタ32に軸方向には移動できるが回転できないように嵌合された駆動摩擦板34が、メイン軸40と一体のクラッチインナ33に向って左方へ押付けられ、駆動摩擦板34と従動摩擦板35とが相互に圧接され、その摩擦力でもって、入力歯車30の回転トルクがメイン軸40に伝達されて、メイン軸40が回転駆動されるようになっている(この状態はクラッチインである)。
なお、後記クラッチリフタ84は、中空のメイン軸40に摺動可能に嵌装されており、クラッチリフタ84に右方向クラッチオフ力が働くと、クラッチスプリング38の弾性復元力に打勝ち、加圧板36が右方へ押返されて、多板摩擦クラッチ21はクラッチオフとなり、入力歯車30の回転トルクはメイン軸40には伝達されず、遮断されるようになっている。
次に、歯車変速機構22について説明する。
歯車変速機構22は、常時噛合い式の変速歯車機構であり、対応する駆動歯車42と従動歯車43とが常時噛合っている。
メイン軸40には、右側から左へ1速駆動歯車421,5速駆動歯車425,4速駆動歯車424,3速駆動歯車423,6速駆動歯車426,2速駆動歯車422が順に配列されており、1速駆動歯車421はメイン軸40に一体に形成され、5速駆動歯車425はメイン軸40に回転可能に軸支されたアイドル歯車であり、4速駆動歯車424と3速駆動歯車423は相互に一体に形成されてメイン軸40にスプライン嵌合したシフタ歯車であり、6速駆動歯車426はメイン軸40に回転可能に軸支されたアイドル歯車であり、2速駆動歯車422はメイン軸40に嵌合されている。
他方、カウンタ軸41には、右側から、左へ1速従動歯車431,5速従動歯車435,4速従動歯車434,3速従動歯車433,6速従動歯車436,2速従動歯車432が順に配列されており、1速従動歯車431はカウンタ軸41に回転可能に軸支されたアイドル歯車であり、5速従動歯車435はカウンタ軸41にスプライン嵌合したシフタ歯車であり、4速従動歯車434と3速従動歯車433はそれぞれカウンタ軸41に回転自在に軸支されたアイドル歯車であり、6速従動歯車436はカウンタ軸41にスプライン嵌合したシフタ歯車であり、6速従動歯車432はカウンタ軸41に回転自在に軸支されたアイドル歯車である。
そして、メイン軸40上でシフタ歯車である一体の3速駆動歯車423と5速従動歯車435およびカウンタ軸41上でシフタ歯車である5速従動歯車435と6速従動歯車436が、軸方向に移動し、歯車相互のドグクラッチが段接することにより、いずれか1対の歯車列(駆動歯車と従動歯車との噛合い)が有効に動力伝達することになって1個の変速段位が確立し、確立した変速段位の変速比でメイン軸40からカウンタ軸41に動力が伝達される。
前記カウンタ軸41の左端にドライブスプロケット44がスプライン嵌合され、図示されない後輪と一体のドリブンスプロケット(図示されず)とドライブスプロケット44とに無端チェン45が巻掛けられており、ドライブスプロケット44が回転すると、後輪が回転駆動されて、自動二輪車が走行できるようになっている。
なお、本歯車変速機構22には、すべての歯車列が無効となって動力伝達が行われないニュートラル位置が存在する。
歯車変速機構22のシフタ歯車を軸方向に移動させて変速を行わせる変速シフト機構23について、以下説明する。
本変速シフト機構23は、シフトドラム50を回転することにより、シフトフォーク軸51,シフトフォーク軸52に摺動自在に軸支されたシフトフォーク53,シフトフォーク54,シフトフォーク55がシフトドラム50の外周面に形成されたシフト溝50vに案内されて軸方向に移動させ、シフトフォーク55がメイン軸40にスプライン嵌合したシフタ歯車である3速駆動歯車433と4速駆動歯車434を一体に移動し(図1ではシフトフォーク55がカウンタ軸41に係合した状態が示されているが、実際には3速従動歯車433と4速従動歯車434の間の溝に係合している)、シフトフォーク53がトルクダンパ31にスプライン嵌合したシフタ歯車である5速従動歯車435を移動させ、シフトフォーク54がシフタ歯車である6速従動歯車436を移動させて変速段位の切換えを行うようになっている。
次に、図8ないし図14を参照してアクチュエータモジュール24について説明する。
アクチュエータモジュール24のアクチュエータモジュールケース60は、図示されない取付け手段により機関ケースに一体に装着されている。
アクチュエータモジュール24は、リフタ84を介して多板摩擦クラッチ21の加圧板36に接続されるとともに、歯車シフト装置63のシフト軸90を介して変速シフト機構23のシフトドラム50に接続されており、クラッチ断切装置62のリフタ84が図8で右方へ(図9で上方へ)押されると、多板摩擦クラッチ21が切断され、また、歯車シフト装置63のシフト軸90が回転駆動されると、変速シフト機構23の変速段位が変更されるようになっている。
また、図10は、アクチュエータモジュール4の要部拡大断面であり、アクチュエータ61の回転駆動力により、減速歯車64,減速歯車65,減速歯車66を介して主駆動軸67が減速回転駆動されるようになっている。
さらに、主駆動軸67には主駆動板68が一体に装着され、この主駆動板68の外周部には、図10に示されるように、アーム駆動ピン69が突設されるとともに、アーム駆動ピン69の突設側で主駆動板68に隣接してへ字状のリフタアーム70が、主駆動軸67に回転可能に枢着されている。
さらにまた、図11に示されるように、アクチュエータモジュールケース60の空間内上部に位置した圧縮弾性体71は、シリンダ72と、シリンダ72に摺動可能に装入されたピストン73と、シリンダ72の外周に遊嵌されて、シリンダ72の基端(図3で左端)の鍔部72aとピストン73の鍔部73a(図3で右端)とに挟まれたコイルスプリング74と、ピストン73に一体に設けられたフック75とよりなり、シリンダ72の突起72bがアクチュエータモジュールケース60の凹部60aに係止されるとともに、リフタアーム70とフック75とでもってアーム駆動ピン69を挟んだ状態で、連結ピン76を介してリフタアーム70とフック75が枢着されている。
しかも、アクチュエータモジュールケース60の下方空間内に位置して荷重検知ユニット77が配設され、この荷重検知ユニット77は、アクチュエータモジュールケース60内で一体に設けられた検知ユニットガイド78と、この検知ユニットガイド78内に摺動可能に装入された摺動体79と、リフタアーム70の他端部70bに当接し、図11ないし図14に示されるように、リフタアーム70の時計方向の回転で摺動体79に案内されながら摺動する受圧片80と、摺動体79および受圧片80に介装されたコイルスプリング81と、受圧片80,コイルスプリング81の摺動方向に対し直角方向(図11ないし図14において略上下方向)に指向してアクチュエータモジュールケース60に回転可能に支持されたリフタレバー軸82と、先端が摺動体79に当接した状態で基端がリフタレバー軸82に一体に装着されたリフタレバー83と、歯車変速機構22の中空メイン軸40内に摺動可能に挿入されて、一端がリフタレバー軸82の切欠き82aに係合されるとともに、他端が多板摩擦クラッチ21の加圧板36に当接されるリフタ84とよりなっている。
図8ないし図14に示されたアクチュエータモジュール24のクラッチ断切装置62では、主駆動軸67の主駆動板68に突設されたアーム駆動ピン69が図11に示された第1角度位置にある場合では、連結ピン76の中心が、シリンダ72の突起72bと主駆動軸67とを結ぶX線より下方に位置しているため、伸びようとするコイルスプリング74の弾性復元力でもって、連結ピン76は下方へ押下げられ、リフタアーム70は検知ユニットガイド78の上端片78aに押付けられ、この状態が安定して保持される。すなわち、リフタ84が図8において右方へ突出されないので、多板摩擦クラッチ21は安定してクラッチオン状態を維持することができる。
このようなクラッチオン状態において、図11でアクチュエータ61が起動してアクチュエータ61の出力軸が時計方向へ回転し、主駆動軸67および主駆動板68も時計方向へ回転し、アーム駆動ピン49がフック55を上方へ移動させ、図12に図示されるように、連結ピン76の中心が前記X線より上方へ移動すると、伸びようとするコイルスプリング74の弾性復元力でもってリフタアーム70が時計方向へ付勢され、リフタアーム70の一端70aとこのリフタアーム一端70aの上方に位置するアーム駆動ピン69が上方へ押され、リフタアーム70は一気に時計方向へ回転して図13に示された状態となる。
図13および図2の鎖線に示された状態では、リフタアーム70bの左方向移動でもって、コイルスプリング81が圧縮されながら、摺動体79が左方へ移動し、リフタレバー83が図12の鎖線のように反時計方向へ回転し、リフタ84が上方へ押上げられ、クラッチオフの状態となる。
また、クラッチオフ状態において、図3に示されるアクチュエータ61の駆動歯車61aを逆転させると、多板摩擦クラッチ21のクラッチスプリング38および荷重検知ユニット77のコイルスプリング81の弾性復元力の助力を受けて圧縮弾性体71のコイルスプリング74が容易に短縮できて、主駆動板68,アーム駆動ピン69,リフタアーム70が反時計方向へ回転し、図4に図示のクラッチオンの状態に復帰できる。
また、図7に図示されるように、リフタアーム70のリフタアーム70bに隣接して手動切断レバー85が傾動可能に設けられており、アクチュエータ61による小さな回転トルクでもって、図4から図5を経由して図6に図示された場合と同様に、小さな操作力でもって手動切断レバー85を操作することによりクラッチオフの状態に軽快に切換えられる。そしてこの状態では、自動二輪車を押し歩きすることができる。
次に、図8および図9を参照して歯車シフト機構23について説明する。
図8において、矢印IX方向から歯車シフト装置63のみを視た図10では、アクチュエータ61の回転力は減速歯車64,減速歯車65,減速歯車66を介して主駆動板68にアクチュエータ61の駆動歯車61aと同一の方向に正逆転可能に伝達されるようになっている。
図15の主駆動板68の回転位置は、主駆動軸67が第1回転位置にあることを示し、また、歯車シフト装置63が変速段位2にあることを示している。
図8に示されるように、前記主駆動軸67は歯車シフト装置63のシフト軸90と平行で、アクチュエータモジュールケース60に回転可能に枢支され、主駆動軸67と直角に略円板状の主駆動板68が一体に取付けられている。
図15に示されるように、前記主駆動板68には、長板状の第1送り爪93と第2送り爪95が、その一端である第1送り爪93の突出端93a,第2送り爪95の突出端95aが主駆動板68の外周縁から外方へ突出するとともに、その他端である第1送り爪93の非突出端93b,第2送り爪95の非突出端95bが主駆動軸67に接触した状態で、主駆動板68と平行にそれぞれ配置され、第1送り爪と第2送り爪は、主駆動軸67と平行で主駆動軸67から所定のおのおの異なった距離を存して配置された第1送り爪93の回転軸93c,第2送り爪95の回転軸95cを中心に回転可能に主駆動板68に枢支されている。
さらにまた、第1送り爪93は第1付勢スプリング94により、図15において時計方向に付勢され、その付勢力で第1送り爪93の非突出端93bが主駆動軸67に押圧されることで、その回転位置を保持しており、この状態から反時計方向の範囲で回転可能である。
しかも、第2送り爪95は第2付勢スプリング96により、図15において、反時計方向に付勢され、その付勢力で第2送り爪95の非突出端95bが主駆動軸67に押圧されることで、その回転位置を保持しており、その状態から時計方向の範囲で回転可能である。
また、主駆動板68には、略へ字状に形成されたラッチ板97は、一端である突出端97aが主駆動板68の外周から突出するとともに、その他端である非突出端97bが主駆動軸67に接近した状態で、主駆動板68と平行に配置され、主駆動軸67と平行で主駆動軸67から所定の距離を存して配置された回転軸97cを中心に回転可能に主駆動板68に枢支されている。
さらに、ラッチ板97は、第3付勢スプリング98の付勢力により、反時計方向へ付勢され、その付勢力により突出端97aが後述の案内板99に当接することで、その回転位置を保持できるようになっている。
さらにまた、主駆動軸67を中心とする凹円弧形状の案内板99が、主駆動板68,第1送り爪93,第2送り爪95,ラッチ板97と同一平面で、主駆動板68の外周の一部を囲うように配置され、アクチュエータモジュールケース60に一体に固定されている。
また、図8において、前記シフト軸90の左端に厚円板状のピン基部91が、シフト軸90に対して直角に一体に取付けられ、ピン基部91の左端面には、図15に示されるように6本の第1送りピン921,第2送りピン922,第3送りピン923,第4送りピン924,第5送りピン925,第6送りピン926がシフト軸90を中心として周方向へ60°間隔を存してシフト軸90と平行に突設されている。
さらに、第1送りピン921,第2送りピン922,第3送りピン923,第4送りピン924,第5送りピン925,第6送りピン926は主駆動板68,第1送り爪93,第2送り爪95と同一平面に存在するように配置されている。
さらにまた、第1送り爪93の突出端93aと主駆動軸67との距離は第1送りピン921の外周と主駆動軸67との距離と略等しく設定されており、第2送り爪95の突出端95aと主駆動軸67との距離は、第1送りピン921の外周と主駆動軸67との距離よりも長く設定されている。
しかも、主駆動軸67と第1送りピン921との距離は、主駆動軸67と第2送りピン922との距離よりも長く設定されており、主駆動軸67と第3送りピン923,第4送りピン924,第5送りピン925,第6送りピン926の距離のいずれも第2送り爪95の突出端95aと主駆動軸67との距離よりも長く設定されている。
変速シフト機構23にはシフト軸90の回転位置が正しい変速段位にある場合には、その回転位置を保持する保持機能(ディテント機能)を具備しており、所定以上のトルクが加えられないと、シフト軸90は回転することができず、変速段位を変更することができない。
歯車シフト装置63が前述したように構成されているので、以下に説明するような動作を行なうことができる。
図16には、主駆動軸67が回転し、第1回転位置から第5回転位置の間を遷移する場合の動作が示されている。
図16の第1回転位置は、主駆動板68の第1端面48aが案内板99に当接し、その位置よりも反時計方向に主駆動板68が回転しないような位置を表している。第2回転位置は、主駆動軸47を第1回転位置よりも約97°時計回りに回転させた位置を表している。第3回転位置は、主駆動軸67を第2回転位置よりも約43°時計回りに回転させた位置を表している。第4回転位置は、主駆動軸67を第3回転位置よりも約31°時計回りに回転させた位置を表している。第5回転位置は、主駆動軸67を第4回転位置よりも約25°時計回りに回転させた位置を表していて、主駆動板68の第2端面48bが案内板99に当接しており、主駆動板68がその位置より時計回りに回転できないような状態である。
次に、図17に図示された動作について説明する。
主駆動軸67が図17の第1回転位置から同図の第2回転位置に時計方向へ回転し、その後、反時計方向に同図の第1回転位置に戻る場合を説明する。
主駆動軸67が図17の第1回転位置と同図の第2回転位置との間を往復回転する場合は、いずれの第1送り爪93,第2送り爪95も送りピン92に接することなく、シフト軸90が第1送り爪93,第2送り爪95により回転されることはない。
一方、前記クラッチ断切装置62により主駆動軸67が第2回転位置から第1回転位置に反時計方向へ回転すると、多板摩擦クラッチ21が接続され、第1回転位置から第2回転位置に時計方向へ回転すると、多板摩擦クラッチ21が切断される。
つまり、この場合では、変速段位を変えることなく、多板摩擦クラッチ21の断接を自由に行うことが可能となる。
次に、図18には、主駆動軸67と一体の主駆動板68が、第2回転位置から第3回転位置に時計方向へ回転した後、第2回転位置へ反時計方向へ反転する変速シフト機構23のシフトアップ動作が示されている。
図18では、シフト軸90は、図18の第2回転位置から第3回転位置へ主駆動板68が時計方向に回転してから、逆に主駆動板68が反対方向へ逆転して第2回転位置に復帰しようとすると、第1送り爪93の突出端93aが第2送りピン922に当接し、第1送り爪93は第2送りピン922の静止反力により、第1送り爪93の回転軸93cを中心として時計方向へ回転しようとするが、第1送り爪93の非突出端93bが主駆動軸67に当接し、主駆動軸67の静止反力により、第3回転位置における突出端93aの突出状態でもって第2送りピン922は右方に押され、ピン基部91は時計方向へ60°回転されて、変速段位1から変速段位2にシフトアップされる。
このようなアクチュエータ61を正逆転させるシフトアップ動作を反復させることにより、変速装置20を所要の変速段位にシフトアップさせることができる。
また、図19を参照して変速シフト機構23のシフトダウン動作を説明する。
図19の第2回転位置から第3回転位置を経由して、第4回転位置に主駆動板68を時計方向に回転させると、第2送り爪95の突出端95aが第1送りピン921に接近し、さらに、主駆動軸67を時計方向へ回転させると、第2送り爪95の突出端95aが第1送りピン921に当接し、第1送りピン921の反力で第2送り爪95が回転軸95cを中心として反時計方向へ回転しようとするが、第2送り爪95非突出端95bが主駆動軸67に当接し、その静止反力により、第5回転位置に図示されるように、第1送りピン921は左方に押され、ピン基部91は反時計方向へ60°回転されて、変速段位2から変速段位1にシフトダウンされる。
同時に第1送り爪93の突出端93aが案内板99と接触し、第1送り爪93を反時計回りに回転させ、これによりラッチ板97が反時計回りの回転を妨げることにより第1送り爪93の突出端93aが主駆動板68の外周縁から突出しない状態を維持する。
その後、主駆動板68が第4回転位置に回転した状態では、第2送り爪95の突出端95aが第6送りピン926の左方から右方へ移動して第6送りピン926に当接するが、第6送りピン926の静止反力により第2送り爪95が回転軸95cを中心として時計方向へ回転される状態となり、第2送り爪95の非突出端95bが主駆動軸67から離れることで、第6送りピン926には時計方向の回転力が働かない結果、シフト軸90は静止状態を維持できるので、変速段位1の状態を保持できる。
変速段位1の状態の第5回転位置から、さらに主駆動板68が反時計方向に回転して第2回転位置に反時計方向に回転する迄の間では、第1送り爪93の突出端93aは、主駆動板68の外周縁から突出しないので、突出端93aは送りピン92に係合せず、シフト軸90は静止状態を維持でき、変速段位1の状態保持できる。
第2回転位置に戻るとラッチ板97の突出端97aが案内板99と接触し、ラッチ板97を時計方向へ回転させ、非突出端97bが第1送り爪93の非突出端93bと乖離することにより第1送り爪93が時計回りに回転し、突出端93aが主駆動板68の外周縁から突出した状態に戻る。
このように、主駆動軸67を第2回転位置から第4回転位置に向け時計方向へ約110°回転させることで、シフト軸90を60°反時計方向へ回転させて、変速シフト機構23の変速段位を変速段位2から変速段位1にシフトダウンさせることができ、次に主駆動板68を第5回転位置から第2回転位置に向け反時計方向へ約110°反転させることで、変速シフト機構23の変速段位を変更することなく、変速段位を変速段位1に維持したまま、主駆動板68を第2回転位置へ復帰させることができ、この一連の動作で、変速段位2から変速段位1へのシフトダウンを実行することができる。
この図19の変速段位のシフトダウン動作を反覆することで、その反覆の度ごとに1段位ずつ変速段位をシフトダウンすることができる。
ドグクラッチを切替えることで変速段位を変更する変速機の場合、シフト時にダボ当たり状態、いわゆるハーフニュートラル状態になった場合、一旦クラッチを弱く接続しドグクラッチを噛み合い可能な位置に回転させ、その後改めてシフトを行う方法が知られている。シフトアップのため主駆動軸67を第3回転位置から第2回転位置へ向かって反時計回転させ第1送り爪93が送りピン92を押圧しているときダボ当たり状態になると、ドグクラッチが噛み合い位置まで移動しないため、主駆動軸67は第2回転位置まで回せなくなる。この場合は一旦主駆動軸67を時計回りに第3回転位置を越えて第4回転位置まで回転し、第1送り爪93の突出端93aが主駆動板68の外周縁から突出しない状態にした後第2回転位置と第1回転位置の所定の位置にして弱くクラッチを接続するとともに第1送り爪93の突出端93aが主駆動板68の外周縁から突出した後、改めて主駆動軸67を時計回りに第3回転位置まで回転させ続いて第2回転位置まで反時計回転させることでシフトアップを行う。
シフトダウン中にダボ当たり状態になった場合、主駆動軸67は反時計回りに回転可能なので、第2回転位置と第1回転位置の所定の位置にして弱くクラッチを接続した後、改めて時計回りに第4回転位置まで回転させ、続いて第2回転位置まで反時計回りに回転させるシフトダウンを行う。
前記歯車変速機2は変速段位1と変速段位2の間に中立段位を備えており、変速段位1からはシフト軸90を時計回りに30°回すことで、変速段位2からはシフト軸90を反時計回りに30°回すことで中立段位にすることができる。図20,図21はこれらの動作について示したものである。
図20に図示されるように、変速段位1から中立段位へ変速させる場合は、まず主駆動軸67を第2回転位置から第3回転位置まで時計回りに回転させ、続いて第3回転位置から反時計回りに回転させることで、第1送り爪93が第1送りピン921を押圧しシフト軸90が時計回りに回転する。シフト軸90が時計回りに30°回り、変速段位1から中立段位に変速するときの主駆動軸67の位置を第7回転位置として、この位置まで主駆動軸67を回転させる。続いて主駆動軸67を第4回転位置まで時計回りに逆転させ、第1送り爪93が第1送りピン921を押圧不可能な状態にした後、再び第2回転位置まで反時計回りに回転させることで、第1送り爪93が初期位置に戻り、変速が完了する。
また、図21に図示されるように、変速段位2から中立段位への変速を行う場合には、まず主駆動軸67を変速段位2から時計回りに回転させる。そして主駆動軸67が第5回転位置を越え、第2送り爪95が第1送りピン921に接触するとこれを押圧しシフト軸が反時計回りに回転する。シフト軸90が反時計回りに30°回り、変速段位2から中立段位に変速するときの主駆動軸67の位置を第8回転位置として、この位置まで主駆動軸67を回転させる。続いて主駆動軸67を反時計回りに逆転させ、第2回転位置まで戻すことで中立段位への変速が完了する。
本実施例は歯車変速機20および変速シフト機構23とは別体にアクチュエータユニット24を構成し、このアクチュエータユニット24を歯車変速機20に取り付けた例であるが、歯車変速機22とまたは変速シフト機構23と一体に構成し歯車変速機22内にアクチュエータユニット24を設けてもよい。
最後にアクチュエータユニット24の動作を実際の運転と関連づけて説明する。
車両が停車状態に有る場合において主駆動軸67は第2回転位置にある。この状態でクラッチは切断されており内燃機関を始動させても車両は動き出すことは無い。停車中に変速を行うにはシフトアップ・シフトダウンに応じて主駆動軸67を第2回転位置から第3回転位置にし、第2回転位置に戻す、あるいは第4回転位置から第5回転位置にした後、再び第2回転位置に戻すことにより行う。これによりクラッチが切断されたままシフトアップ、シフトダウンを任意に行うことができる。停車状態から発進するためには主駆動軸67を第2回転位置から第1回転位置に回転させる。これによりクラッチが接続され車両は発進する。第2回転位置から第1回転位置への変化をゆっくり行えばスムーズな発進となり好ましい。定常走行中は第1回転位置を維持する。走行中に変速を行うにはシフトアップ・シフトダウンに応じて第1回転位置から第3回転位置にして、再び第1回転位置に戻すか、第1回転位置から第4回転位置にし第1回転位置に戻す。これによりクラッチ切断、変速、クラッチ接続の一連の動作がおこなうことができ、かつシフトアップ、シフトダウンを任意に行うことができる。また第1回転位置に戻すとき、第2回転位置から第1回転位置への変化をゆっくり行えばスムーズな変速となり好ましい。停車する時には主駆動軸67を第1回転位置から第2回転位置に回転させる。これによりクラッチは切断され停車しても内燃機関は止まることは無い。また圧縮弾性体71の付勢力とアクチュエータの力を合わせてクラッチを切断するので素早くクラッチを切断でき、急停車しても内燃機関が止まることは無い。